説明

排泄検知装置

【課題】人体の動き等の影響を軽減して、排泄量を精度良く測定することができる排泄センサ及び排泄検知装置を提供する。
【解決手段】排泄物を吸収する吸収性物品の外側で且つ該吸収性物品の広範囲にわたって配置されたセンサ素子のインピーダンス変化の総量を検出する排泄センサ1aと、被介護者の姿勢を検知する姿勢センサ1bと、この姿勢センサからの姿勢センサ出力に基づき被介護者の姿勢を判定する姿勢判定部92と、姿勢判定部で得られた被介護者の姿勢に基づき、排泄センサの出力と尿量との関係を示す複数の検量線から該当する姿勢の検量線を選択し、選択された姿勢の検量線に基づき尿量を算出する尿量算出部93とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品への排泄の有無を検知する排泄検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
介護施設等では、寝たきりの尿失禁患者(以下、被介護者と略称する。)が入院しており、現状では、例えば50人の被介護者のおむつを1日に6〜8回の割合で予め定められた時刻に交換するというように介護者は被介護者のおむつを定期的に交換している。
【0003】
しかしながら、被介護者のおむつを予め定められた時刻に交換しようとした際に、おむつに排尿されておらず、おむつを交換する必要がない場合もある。その場合でも、介護される被介護者は定期的に交換チェックを受けるため、精神的にも負担となっていた。また、尿失禁後、適切におむつが交換されないと、被介護者にとっても不快、不衛生である。
【0004】
さらに、おむつ交換直後に排泄を行った被介護者は、おむつ交換まで、排泄物のある状態でおむつ交換を待たなければならなかった。排泄後の放置時間が長くなると、尿や便などによる局所の湿潤が続き、組織が浸軟し、組織障害が助長される。特に高齢者では、皮膚の浸透性が劣るため、組織障害がより生じ易く、肌荒れを起こし易くなる。また、不衛生な状態で放置されることにより、皮膚感染症、皮膚炎を起こしやすい。吸水ポリマーの入っているおむつでは、ポリマーが吸水して固くなり、局所的な圧迫が発生し褥そう原因となることが知られており、好ましい状況とはいえなかった。
【0005】
このような状況を解決するために、これまでの排泄センサでは、排泄後直ちに排泄を検知して介護者に知らせる排泄センサが提案されている。しかし、尿意回復等のトレーニングを行う場合には、排泄量がいつどのくらいあったかを精度良く知ることが重要である。
【0006】
一方、従来のこの種の技術としては、医用電子と生体工学(32ュ2.97/105 (1994))に記載された「尿失禁センサ付き紙おむつの開発」が知られている。この技術内容は、尿の拡がりから排尿量を測定し、100ml以上の尿が排尿されたときに警報を発するもので、吸水ポリマーを排泄側と外側の2つの電極で挟み、電極間に流れる電流から排泄量を測定するものである。
【0007】
また、複数の排泄センサを使用したものとしては、例えば、特開平5−245169号公報に記載された尿失禁病態記録装置が知られている。この尿失禁病態記録装置は、複数の温度センサを排尿部位に平面的に分散配置し、各温度センサからの温度信号に基づき排泄を検知するもので、患者の体位等によって尿失禁の部位に変化が生じても、排泄部位を外さずに精度良く排泄を検知できる。
【0008】
また、特開2000−185067号公報に記載された排泄監視装置、報知装置付おむつ、および排泄監視システムが知られている。この排泄監視システムは、導電体間の静電容量の変化と抵抗体の抵抗値変化とに基づき排泄の有無や排泄量を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−245169号公報
【特許文献2】特開2000−185067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した「尿失禁センサ付き紙おむつの開発」の技術にあっては、発汗等による誤動作を防止するものであり、排泄量を正確に測定するものではなかった。
【0011】
また、特開平5−245169号公報に記載された尿失禁病態記録装置にあっては、排泄部位を外さずに精度良く排泄を検知するのみで、排泄量を測定するものではなかった。
【0012】
また、特開2000−185067号公報に記載された排泄監視システムにあっては、被測定者の動きによって、静電容量が変化してしまうため、被測定者の動きによる変化を抵抗変化によりキャンセルしている。しかし、被測定者の排泄位置の変化により静電容量の誤差が生じており、正確に排泄量を測定できなかった。また、導電体と抵抗体とを有する樹脂フィルムがおむつの一部分に配置されているため、正確に排泄量を測定できなかった。
【0013】
本発明は、人体の動き等の影響を軽減して、排泄量を精度良く測定することができる排泄検知装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明の排泄検知装置は、排泄物を吸収する吸収性物品の外側で且つ該吸収性物品の広範囲にわたって配置されたセンサ素子のインピーダンス変化の総量を検出する排泄センサ1aと、被介護者の姿勢を検知する姿勢センサ1bと、この姿勢センサからの姿勢センサ出力に基づき被介護者の姿勢を判定する姿勢判定部92と、姿勢判定部で得られた被介護者の姿勢に基づき、排泄センサの出力と尿量との関係を示す複数の検量線から該当する姿勢の検量線を選択し、選択された姿勢の検量線に基づき尿量を算出する尿量算出部93とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、人体の動き等の影響を軽減して、排泄量を精度良く測定することができる排泄検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態のセンサー部を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の排泄検知装置を示す構成図である。
【図3】第1の実施の形態の排泄検知装置に設けられた周波数変換回路を示す構成図である。
【図4】排尿部付近に水を一定量ずつ注入したときに15分割容量式排泄センサからのセンサ出力がしきい値を超えた場合の各LEDの表示の第1実施例を示す図である。
【図5】図4に示す第1実施例における水の注入量とLEDの動作点数との関係を示す図である。
【図6】排尿部付近に水を一定量ずつ注入したときに15分割容量式排泄センサからのセンサ出力がしきい値を超えた場合の各LEDの表示の第2実施例を示す図である。
【図7】図6に示す第2実施例における水の注入量とLEDの動作点数との関係を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態のセンサー部を示す構成図である。
【図9】センサー部のおむつへの取り付けを示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の排泄検知装置を示す構成図である。
【図11】第2の実施の形態の排泄検知装置に設けられたインピーダンス変化検知部を示す構成図である。
【図12】センサー部の尿取りパッドへの取り付けを示す図である。
【図13】密着部材の一例を示す図である。
【図14】密着部材の使用例を示す図である。
【図15】密着部材及びスペーサの使用例の第1実施例を示す図である。
【図16】密着部材及びスペーサの使用例の第2実施例を示す図である。
【図17】被介護者が立状態又は座状態又は仰向き状態にあるときにおける密着部材又はスペーサを取り付けた場合のインピーダンスの変化率を示す図である。
【図18】図17に示すインピーダンスの変化率の立状態と座状態との変動量を示す図である。
【図19】水量とインピーダンス変化率との関係を示す図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態の排泄検知装置を示す構成図である。
【図21】寝たきりに近い人の場合の姿勢とセンサー出力と尿量との関係を示す図である。
【図22】姿勢センサのおむつへの取り付けを示す図である。
【図23】被介護者の右向き及び左向き状態における姿勢センサの出力を示す図である。
【図24】被介護者の座状態における姿勢センサの出力を示す図である。
【図25】排泄判定テーブルを示す図である。
【図26】被介護者の各状態におけるセンサー部及び姿勢センサのセンサ出力を示す図である。
【図27】第3の実施の形態の排泄検知装置による尿量算出処理を示すフローチャートである。
【図28】第3の実施の形態の排泄検知装置による排泄回数カウント処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の排泄検知装置の実施形態を図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態のセンサー部を示す構成図である。図2は本発明の第1の実施形態の排泄検知装置を示す構成図である。第1の実施形態の排泄検知装置は、同一のセンサをおむつ全体に多数配置し、排泄を検知したセンサの個数に基づいて排泄量を検知することを特徴とする。
【0019】
図1に示すセンサー部(本発明の排泄センサに対応)1は、尿又は便等の排泄物を吸収するおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品内の排泄の有無を検知するもので、吸収性物品の外側表面で且つ吸収性物品全体にわたって面状に分布して配置されている。
【0020】
このセンサー部1は、図1(a)の断面図に示すように、フィルム11、このフィルム11の一方の面に形成された複数の正電極12(12〜1225)、フィルム11の他方の面に形成された複数の負電極13(13〜13)を有し、複数の正電極12(12〜1225)とこの複数の正電極12(12〜1225)に対応する複数の負電極13(13〜13)とで複数のセンサ素子を構成している。各センサ素子は、正電極と負電極との間のインピーダンス変化を検知する。なお、センサ素子の数は、正電極の数に対応している。
【0021】
複数の正電極12(12〜1225)のそれぞれは、図1(c)の上面図に示すように、5行×5列で2次元配列されていて、各電極が長方形状をなす。この各電極12(12〜1225)には電極パターン14(14〜1425)が接続されていて、外部から各電極パターン14を通して各電極12に正電位が印加されている。
【0022】
複数の負電極13(13〜13)は、図1(b)の上面図に示すように、複数の正電極12の外側に配置され、各電極は略コの字状をなし、接地されている。負電極13を正電極12の外側に配置することにより、外部ノイズを軽減できることができ、これによって排泄量の測定精度を向上することができる。
【0023】
なお、図1(d)はセンサー部1の一部を拡大した上面図であり、図1(e)はその断面図であり、図1(f)はその下面図である。
【0024】
図2に示す第1の実施の形態の排泄検知装置は、複数のセンサ素子が面状に分散配置され各センサ素子がインピーダンス変化を検知するセンサー部1、センサー部1で検知されたインピーダンス変化を周波数変化に変換する周波数変換回路2、周波数変換回路2で変換された周波数変化データを周波数変化データに対応する電圧変化データに変換する電圧出力発生部3(本発明の電圧変換部に対応)、電圧変化データに基づき電圧変化値が予め定められたしきい値を超えたかどうかを判定し電圧変化値がしきい値を超えた場合に排泄があったことを示す点灯信号を出力する排泄判定部4、点灯信号の入力により点灯する発光ダイオード(LED)等の表示部5を備えて構成されている。表示部5は、本発明のデータ処理部を有し(図示せず)、このデータ処理部は、電圧がしきい値を超えたセンサ素子の数に基づいて、排泄時刻と排泄量を算出する。
【0025】
なお、周波数変換回路2、電圧出力発生部3、排泄判定部4、及び表示部5は、複数のセンサ素子の数に対応して設けられる。例えば、複数のセンサ素子が25個であれば、周波数変換回路2、電圧出力発生部3、排泄判定部4、表示部5等もそれぞれ25個設けられる。
【0026】
周波数変換回路2は、図3に示すように、センサー部1、インバータ21、インバータ21の入力端とセンサー部1とに接続された抵抗R2、インバータ21の出力端とセンサー部1とに接続された帰還抵抗Rを有し、インバータ21の出力端から、センサー部1のインピーダンスに応じた周波数を出力するRC発振回路から構成されている。
【0027】
次にこのように構成された第1の実施の形態の排泄検知装置の動作を説明する。まず、面状に分散配置された複数のセンサ素子を有するセンサー部1をおむつの外側に負電極が接するように配置する。
【0028】
そして、おむつ内に排尿又は排便による排泄があると、センサー部1において排尿があった部位に対応するセンサ素子のインピーダンスが大幅に変化する。すなわち、排尿が多く比較的広い範囲に広がった場合には、かなりの数のセンサ素子のインピーダンスが大幅に変化する。
【0029】
次に、各周波数変換回路2は、センサー部1で検知したインピーダンス変化に応じた周波数変化に変換する。各電圧出力発生部3は、周波数変換回路2で変換された周波数変化データを周波数変化データに対応する電圧変化データに変換する。本実施例では、排泄のない時の周波数を20kHzとした。
【0030】
各排泄判定部4は、電圧変化データに基づき電圧変化値が予め定められたしきい値を超えたかどうかを判定し電圧変化値がしきい値を超えた場合に排泄があったことを示す点灯信号を出力する。各表示部5は点灯信号の入力により点灯する。すなわち、排尿のあった部位に対応するセンサ素子のインピーダンスが大幅に変化し、これに伴ってそのセンサ素子に対応する表示部のみが点灯する。その結果、表示部の点灯数に応じて排尿量を精度良く測定することができる。
【0031】
本出願人は前述した排泄検知装置により排泄量の測定を行った。その実験結果を説明する。
【0032】
図4は排尿部付近に水を一定量ずつ注入したときに15分割容量式排泄センサからのセンサ出力がしきい値を超えた場合の各LEDの表示の第1実施例を示す図である。図4に示す第1の実施例では、表示部5として15個のLEDを用い、15個のLED51〜5115を3行(図4中の文字A〜C)×5列(番号1〜5)に分割配置した。なお、このLEDの分割配置に対応してセンサー部1の正電極が3行×5列に15分割配置されているものとする(15分割容量式排泄センサに対応)。すなわち、15個のセンサ素子があるものとする。
【0033】
この場合、被介護者は仰向けで足を肩幅に開き、おむつ全体にわたってセンサー部1を面状に分布して配置する。番号1のLEDは前側に配置し、番号5のLEDはお尻側に配置した。そして、内径4mmのチューブを排尿部付近に挿入し、注入器で水を50ccずつ注入する。注入速度は注射器のピストンが自然に落下していく程度の低速とする。
【0034】
また、電圧変化値と比較すべきしきい値は、15個のLEDの内の1列目〜3列目のLEDでは0.7Vとした。また、4列目〜5列目のLEDでは、センサー部1からのリード線で動作してしまうため、コンパレータ(排泄判定部4に相当)で感度を調整し、しきい値を0.9Vとした。
【0035】
図4に示す第1実施例では、50〜300ccまで50ccずつ6回にわたって水を注入していく処理を、3回にわたって行った。15個のLEDの内の●印は、電圧変化値がしきい値を超えてLEDが点灯したことを表す。また、図4中のヌレは、実験後にパッドのヌレ状態をチェックして表示したことを示す。
【0036】
図4からもわかるように、水の注入量が増加するに従って水がおむつの全体に拡がり、より多くのLEDが点灯していることがわかる。
【0037】
図5は図4に示す第1実施例における水の注入量とLEDの動作点数(点灯数に相当)との関係を示す図である。図5から、水の注入量とLEDの動作点数とが比例関係にあることがわかる。
【0038】
図6に示す第2実施例では、150〜300ccまで150ccずつ2回にわたって水を注入していく処理を、3回にわたって行った。図6からもわかるように、水の注入量が増加するに従って水がおむつの全体に拡がり、より多くのLEDが点灯していることがわかる。
【0039】
図7は図4に示す第2実施例における水の注入量とLEDの動作点数との関係を示す図である。図7から、水の注入量とLEDの動作点数とが比例関係にあることがわかる。
【0040】
従って、LEDの動作点数により、尿量等の排泄量を精度良く測定することができる。また、第1の実施の形態のセンサー部1がおむつ全体にわたって面状に配置されているため、被介護者の体が動いてもその動きの影響を軽減することができ、これによって排泄量を精度良く測定することができる。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態の排泄センサ及び排泄検知装置を説明する。第2の実施の形態の排泄検知装置は、排泄を検知したセンサー部のセンサ出力の変化量の総和に基づいて排泄量を検知するものである。また、第2の実施の形態の排泄検知装置は、被介護者が立ったり座ったりした場合における排泄センサのインピーダンス変化量を押さえて、排泄量の測定精度を向上したことを特徴とする。
【0042】
図8は本発明の第2の実施の形態のセンサー部を示す構成図である。図10は本発明の第2の実施の形態の排泄検知装置を示す構成図である。
【0043】
図8に示すセンサー部1aは、吸収性物品内の排泄の有無を検知するもので、吸収性物品の外側表面で且つ吸収性物品の複数箇所に配置されている。
【0044】
このセンサー部1aは、図8(b)に示すように、横サイズがL0で縦サイズが(2L1+L3)で幅がL1からなる帯状且つループ状のフィルム11aを有し、図8(a)の断面図に示すように、フィルム11aの一方の面に、フィルム11の長手方向に沿って正電極12aと負電極13aとが一定距離L2だけ離間して交互に(この例では3回)配置されている。
【0045】
また、図8(b)の上面図に示すように、前記長手方向に直交する方向に沿って正電極12aと負電極13aとが一定間隔距離L3だけ離間して配置されている。正電極12a及び負電極13aのそれぞれは、正方形状をなし、一辺がL1である。L0は例えば400mmであり、L1は25mmであり、L2は50mmであり、L3は20mmであるのが好ましい。
【0046】
正電極12aには正電位が印加され、負電極13aは接地されるようになっている。この例では、正電極12aと負電極13aとの合計電極数を12個とし、一対の正電極と負電極とで1つのセンサ素子を構成している。この例では、センサー部1aには6個のセンサ素子が設けられている。
【0047】
なお、合計電極数は12個に限定されることなく、合計電極数はいくつであっても良い。例えば、図9に示すように、2つの正電極12aと2つの負電極13aとを有するセンサー部1aを、おむつ18の外側で且つ排泄部位の広い範囲にわたって取り付ける。
【0048】
各正電極12aと各負電極13aとの間には図8(c)に示すように、電界が発生しており、排泄があったときに排泄部位に対応する正電極12aと負電極13aとの間のインピーダンスが変化する。このため、センサー部1aは、このインピーダンス変化の総量を検知するインピーダンスセンサである。
【0049】
図10に示す第2の実施の形態の排泄検知装置は、インピーダンス変化を検知するセンサー部1a、所定の周波数信号を発振する発振器6、この発振器6からの周波数信号を用いてセンサー部1aのインピーダンス変化の総量を検知するインピーダンス変化検知部2a、インピーダンス変化検知部2aで検知されたインピーダンス変化の総量を電圧変化データに変換するインピーダンス変化電圧変換部7、電圧変化データを記憶するデータ記憶部8、データ記憶部8に記憶された電圧変化データに基づいて排泄量を算出するデータ処理部9を備えて構成されている。
【0050】
インピーダンス変化検知部2aは、図11に示すような回路で構成されている。この回路は、端子ad間に設けられた抵抗R4と、端子bd間に設けられたセンサー部1a及び抵抗R5と、端子ac間に設けられたコンデンサC4及び抵抗R6と、端子bc間に設けられた抵抗R7と、端子cd間に設けられた抵抗R8と、端子ab間に所定の周波数信号(3Vで例えば500kHzの矩形波)を印加する発振器6とを有する。電圧整流部24は、インピーダンス変化電圧変換部7の一例であり、端子cd間に設けられた抵抗R8の両端の電圧、すなわち回路の非平衡による電圧を整流する。
【0051】
以上のように構成された第2の実施の形態の排泄検知装置によれば、おむつ内に排尿又は排便による排泄があると、センサー部1aにおいて排尿があった部位に対応するセンサ素子のインピーダンスが大幅に変化する。そして、センサー部1aは、複数のセンサ素子(例えば6個のセンサ素子)のインピーダンスの変化の総量を出力するので、排泄検知装置は、インピーダンスの変化の総量に基づいて排泄量を精度良く測定できる。
【0052】
また、センサー部1aを用いているので、被介護者が動いて(立ったり座ったりなど)センサー部1aがよじれて電極同士が近接しても、例えば正電極同士、あるいは負電極同士では電流リークが小さい。このため、被介護者が動いてもインピーダンス変化の誤差が非常に小さいため、排泄量の測定精度を向上することができる。
【0053】
なお、第2の実施の形態の排泄検知装置では、おむつ18の外側にセンサー部1aを取り付けたが、例えば、おむつ18の代わりに、図12に示すように、尿取りパッド19を用いても良く、尿取りパッド19の防水シート19b側にセンサー部1aを取り付けるのが好ましい。また、尿取りパッド19の外側のおむつ18は省略しても良い。
【0054】
また、第2の実施の形態の排泄検知装置では、被介護者のおしりにおむつ等の吸収性物品が密着するための密着部材を用いている。この密着部材の形状としては、例えば図13(a)に示すようなマジックテープ31bが取り付けられたテープおむつ31や、図13(b)に示すようなガードル(短パン)32や図13(c)に示すようなガードル(パンツ)33などを用いることができる。また、密着部材としては、例えばゴム、ハニカム構造のシート等を用いても良い。
【0055】
密着部材の使用例としては、図14に示すように、尿取りパッド19の外側にセンサー部1aを配置し、このセンサー部1aの外側に密着部材31等を配置してセンサー部1aの外側からセンサー部1aと尿取りパッド19とを押圧して尿取りパッド19を被介護者のおしりに密着させる。
【0056】
これにより、被介護者が立ったり座ったりしても、インピーダンスの変化量をさらに押さえることができ、これによって排泄量の測定精度をさらに向上することができる。
【0057】
また、図15に示すように、図14に示す構成にさらに、尿取りパッド19と被介護者のおしりとを一定距離になるようにするためのスペーサ35を追加しても良い。このようにスペーサ35を設けることで、図14に示す構成による効果よりもその効果が大となる。
【0058】
さらに、図16に示すように、密着部材31等に空気注入口36を設け、この空気注入口36を管37を介して外部のエアポンプに接続し、このエアポンプから空気を管37を介して空気注入口36に流入させて密着部材31を膨らませて、尿取りパッド19を被介護者のおしりに密着させても良い。このようにすることで、図15に示す構成による効果よりもその効果が大となる。
【0059】
なお、本出願人は、密着部材やスペーサを取り付けたときのインピーダンスの変化率の測定を行った。その実験結果を説明する。
【0060】
図17に、被介護者が立状態又は座状態又は仰向き状態にあるときにおける密着部材又はスペーサを取り付けた場合のインピーダンスの変化率を示す。図17において、「◆」は立状態を表し、「■」は仰向け状態を表し、「▲」は座状態を表す。「A」はスペーサ又は密着部材なしを表し、「B」はスペーサありを表し、「C」はガードル(短パン)ありを表し、「D」は競泳用サポータありを表し、「E」はガードル(パンツ)ありを表し、「F」はガードル(短パン+パンツ)ありを表し、「G」はガードル(短パン+パンツ)+スペーサありを表し、「H」はカバーありを表す。
【0061】
図18に図17に示すインピーダンスの変化率の立状態と座状態との変動量を示す。図18からもわかるように、密着部材又はスペーサがなしの場合にはインピーダンスの変動量が大きいが、密着部材又はスペーサを使用することでインピーダンスの変動量がかなり小さくなっている。また、密着部材及びスペーサを共に使用することでインピーダンスの変動量がさらに小さくなっていることがわかる。すなわち、密着部材やスペーサを使用することで、被介護者が立ったり座ったりしたときのインピーダンスの変動量が小さくなるので、排泄量の測定精度をさらに向上することができる。
【0062】
なお、図19に水量とインピーダンス変化率との関係を示す。図19において、「◆」は座状態を表し、「■」は立状態を表す。
【0063】
(第3の実施の形態)
次に本発明の第3の実施の形態の排泄検知装置を説明する。第3の実施の形態の排泄検知装置は、センサー部1a以外にさらに姿勢センサを設け、該姿勢センサで被介護者の姿勢を検知し、補助具なしに、インピーダンスセンサからのセンサ出力に基づき排泄量、排泄時間、排泄回数を測定可能とすることで、被介護者の排泄検知精度を向上させることを特徴とする。
【0064】
図20に示す第3の実施の形態の排泄検知装置は、センサー部1a、インピーダンス変化検知部2a、発振器6、インピーダンス変化検知部2aに接続されたセンサー本体10、このセンサー本体10に接続されたデータ処理部9aを有して構成されている。センサー本体10は、インピーダンス変化電圧変換部7、姿勢センサ1b、データ記憶部8aを有して構成されている。
【0065】
姿勢センサ1bは、被介護者の姿勢を検知するもので、例えば加速度センサである。図22(a)の上面図、図22(b)の側面図に示すように被介護者17のおむつ18の側に境界部位に姿勢センサ1bを含むセンサー本体10を取り付けるのが好ましい。なお、体と一緒に動かない可能性がある部位、例えば手や足等の部位は、好ましくなく、これ以外の部位であればいずれの部位であっても良い。
【0066】
図23は被介護者の右向き及び左向き状態における姿勢センサの出力を示す図である。図23において、姿勢センサの座標を決定する際に、被介護者17の体軸方向をY方向とし、体軸方向に直交する方向をX方向としている。姿勢センサ1bは、図23(b)の上面図の位置におけるセンサ出力を標準出力とすると、図23(a)の左向き状態(Xが増加する状態)ではX軸出力である電圧が増加し、図23(c)の右向き状態(Xが減少する状態)ではX軸出力である電圧が減少している。
【0067】
図24は被介護者の座状態における姿勢センサの出力を示す図である。図24(a)では被介護者17が寝ていてセンサ出力が標準出力であり、図24(b)では被介護者17が座状態(Yが減少する状態)でセンサのY軸出力である電圧が減少している。
【0068】
データ記憶部8aは、インピーダンス変化電圧変換部7からの電圧変化データ、すなわち排泄センサ出力を記憶するとともに、姿勢センサ1bからの姿勢センサ出力を記憶する。
【0069】
データ処理部9aは、データ記憶部8aからの排泄センサ出力及び姿勢センサ出力に基づきデータ解析を行うもので、姿勢判定テーブル91、姿勢判定部92、尿量算出部93、排泄センサ出力変化判定部95、姿勢センサ出力変化判定部96、排泄回数カウンタ97を有して構成される。
【0070】
姿勢判定テーブル91は、被介護者の姿勢を判定するためのテーブルであって、姿勢センサ1bからのセンサのX軸出力とY軸出力と被介護者の姿勢とを対応付けて格納したもので、例えば図25に示すようになっている。姿勢判定部92は、データ記憶部8aからの姿勢センサ出力に基づき、姿勢判定テーブル91を参照して、被介護者の姿勢を判定する。
【0071】
尿量算出部93は、姿勢判定部92で得られた被介護者の姿勢に基づき、該姿勢によるセンサ出力と尿量の検量線を選択し、選択された尿量の検量線に基づき尿量を算出する。図21は寝たきりに近い人の場合の姿勢とセンサー出力と尿量との関係を示す図である。図21において、横軸は水量(尿量に対応)であり、縦軸はセンサ出力である。「◆」は横向き状態を表し、「×」は仰向け状態を表し、「*」は座状態を表す。
【0072】
排泄センサ出力変化判定部95は、データ記憶部8aからの排泄センサ出力に基づき、排泄センサ出力の変化量が所定の変化量よりも大きいかどうかを判定し、その変化量が所定の変化量よりも大きいときにはそのときの時刻を抽出し、時刻信号を姿勢センサ出力変化判定部96に出力する。
【0073】
姿勢センサ出力変化判定部96は、姿勢センサ出力変化判定部96から時刻信号を入力した場合に、データ記憶部8aからの姿勢センサ出力に基づき、姿勢センサ出力の変化量が所定値を超えたかどうかを判定し、その変化量が所定値を超えた場合には姿勢による変化と判定し、その変化量が所定値を超えていない場合には、排泄と判定する。
【0074】
排泄回数カウンタ97は、姿勢センサ出力変化判定部96が排泄と判定する毎に、排泄回数を1だけインクリメントして排泄回数をカウントする。
【0075】
なお、図20に示す第3の実施の形態の排泄検知装置において、図10に示す第2の実施の形態の排泄検知装置と同一部分は、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0076】
次に、このように構成された第3の実施の形態の排泄検知装置の動作を説明する。まず、センサー部1a、インピーダンス変化検知部2a、発振器6、インピーダンス変化電圧変換部7の各処理は、第2の実施の形態の排泄検知装置において既に説明したので、それらの処理の説明は省略する。
【0077】
次に、センサー本体10では、インピーダンス変化電圧変換部7からの電圧変化値が排泄センサ出力としてデータ記憶部8aに記憶される。また、姿勢センサ1bが被介護者の姿勢を検知すると、姿勢センサ1bからの姿勢センサのX軸及びY軸出力がデータ記憶部8aに記憶される。
【0078】
次に、データ処理部9aによる尿量算出処理及び排泄回数カウント処理を図27及び図28のフローチャートを参照しながら説明する。
【0079】
最初に、図27を参照して尿量算出処理を説明する。まず、姿勢判定部92は、データ記憶部8aに記憶された排泄センサ出力と姿勢センサ出力を読み出す(ステップS11)。
【0080】
次に、読み出した姿勢センサ出力に基づき姿勢判定テーブル91を参照して、被介護者の姿勢を判定する(ステップS13)。例えば、読み出した姿勢センサ1bのX軸出力が「標準」となっていて、且つ姿勢センサ1bのY軸出力が「標準より減少」となっている場合には、姿勢判定テーブル91を参照することで、被介護者の姿勢を「座る」と判定することができる。
【0081】
次に、尿量算出部93は、被介護者の姿勢に基づき、該姿勢によるセンサ出力(尿量がないときのセンサ出力を100%としたときの百分率で表す。)と尿量の検量線を選択し(ステップS15)、選択された尿量の検量線に基づき尿量を算出する(ステップS17)。例えば、被介護者の姿勢が「座る」と判定された場合には、図21の座状態を表す「*」の検量線とセンサ出力とから尿量を算出することができる。すなわち、被介護者の姿勢情報を考慮して尿量を算出するので、排泄量を精度良く測定することができる。
【0082】
なお、図26に被介護者の各状態におけるセンサー部及び姿勢センサのセンサ出力を示す。図26において、姿勢センサ1bのセンサ出力は、右向き状態(X軸)で−0.13程度となり、立状態(Y軸)で+0.05程度となっている。また、センサー部1aにより尿量が測定されていることがわかる。
【0083】
次に、図28を参照して排泄回数カウント処理を説明する。まず、データ記憶部8aから排泄センサ出力及び姿勢センサ出力とを読み出す(ステップS31)。そして、排泄センサ出力変化判定部95は、排泄センサ出力の変化量が所定の変化量よりも大きいかどうかを判定し、その変化量が所定の変化量よりも大きいときにはそのときの時刻を抽出する(ステップS33)。例えば、微分値の大きい時刻を抽出する。図26に示す例では、排尿があった場合にはセンサー部のセンサ出力が初期値に対して下がるので、微分値が負の大きな値をとる時刻を抽出し、例えば12:11、15:14の時刻が抽出されてこの時刻が排泄時刻として求められる。その排泄時刻を示す時刻信号が姿勢センサ出力変化判定部96に出力される。
【0084】
次に、姿勢センサ出力変化判定部96は、姿勢センサ出力変化判定部96から時刻信号を入力した場合に、データ記憶部8aからの姿勢センサ出力に基づき、姿勢センサ出力の変化量が所定値を超えたかどうかを判定する(ステップS35)。例えば、寝る→座るの動作をしていないかどうかを判定し、寝る→座るの動作をしている場合には(ステップS35のYES)、姿勢による変化と判定し(ステップS37)、ステップS33の処理に戻る。
【0085】
一方、寝る→座るの動作をしていない場合には(ステップS35のNO)、排泄と判定する(ステップS39)。例えば、図26に示す例では、排泄時刻(12:11)前後に、姿勢センサ出力の変化がないことから、排泄と判定できる。
【0086】
そして、姿勢センサ出力変化判定部96が排泄と判定した場合には、排泄回数カウンタ97は、排泄回数を1だけインクリメントして排泄回数をカウントする(ステップS41)。
【0087】
このように第3の実施の形態の排泄検知装置によれば、センサー部1aからの排泄センサ出力と姿勢センサ1bからの姿勢センサ出力とを用いて、排泄量、排泄時刻、排泄回数を精度良く測定することができる。
【符号の説明】
【0088】
1a…センサー部、1b…姿勢センサ、2…周波数変換回路、2a…インピーダンス変化検知部、3…電圧出力発生部、4…排泄判定部、5…表示部、6,23…発振器、7…インピーダンス変化電圧変換部、8,8a…データ記憶部、9,9a…データ処理部、10…センサー本体、11,11a…フィルム、12,12a…正電極、13,13a…負電極、14…電極パターン、17…人体、18…おむつ、19…尿取りパッド、19a…尿取りパッド不織布面、19b…防水シート面、21…インバータ、24…電圧整流部、31,32,33…密着部材、35…スペーサ、51〜5115…LED、91…姿勢判定テーブル、92…姿勢判定部、93…尿量算出部、95…排泄センサ出力変化判定部、96…姿勢センサ出力変化判定部、97…排泄回数カウンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物を吸収する吸収性物品の外側で且つ該吸収性物品の広範囲にわたって配置されたセンサ素子のインピーダンス変化の総量を検出する排泄センサと、
被介護者の姿勢を検知する姿勢センサと、この姿勢センサからの姿勢センサ出力に基づき前記被介護者の姿勢を判定する姿勢判定部と、
前記姿勢判定部で得られた前記被介護者の姿勢に基づき、前記排泄センサの出力と尿量との関係を示す複数の検量線から該当する姿勢の検量線を選択し、選択された姿勢の検量線に基づき尿量を算出する尿量算出部と、
を備える排泄検知装置。
【請求項2】
排泄物を吸収する吸収性物品の外側で且つ該吸収性物品の広範囲にわたって配置されたセンサ素子のインピーダンス変化の総量を検出する排泄センサと、
被介護者の姿勢を検知する姿勢センサと、この姿勢センサからの姿勢センサ出力に基づき前記被介護者の姿勢を判定する姿勢判定部と、
前記排泄センサの出力の変化量が所定の変化量より大きいかどうかを判定する排泄センサ出力変化判定部と、
前記排泄センサの出力の変化量が所定の変化量より大きいと判定されたとき、前記姿勢センサ出力の変化量が所定値を超えた場合には姿勢による変化と判定し、前記姿勢センサ出力の変化がないときは排泄と判定する姿勢センサ出力変化判定部と、
を備える排泄検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−78791(P2011−78791A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240808(P2010−240808)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【分割の表示】特願2001−28468(P2001−28468)の分割
【原出願日】平成13年2月5日(2001.2.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】