説明

排泄物情報測定大便器

【課題】 下水配管内で他の水周り器具が使用されて水の流れが発生したとしても、その影響が測定される尿排泄情報に対して加わることが無く、上下水道に接続される衛生設備器具として動作信頼性を確保する他面も併せもつことを可能とする。
【解決手段】 本発明では、溜水貯留部を有する第一ボール部と、前記第一ボール部の上方に配置され使用者の排泄物を受けて測定のために測定溜水として貯留するボール面を有する第二ボール部と、前記第一ボール部と前記第二ボール部との間の連通路開閉手段を備え、前記第二ボール部に排泄され貯留された使用者の排泄物を前記第二ボール給水通路からの洗浄水の供給によって、前記連通路を介して前記第一ボール部に排出した後に、前記第一ボール部給水通路からの洗浄水の供給によって前記下水配管に排出することにより、排泄物の安定した排出を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄に使用する便器のボール面内において被験者の排泄物を採取してその量や成分、性状等の排泄物情報を得ることに係り、大便器に接続された下水配管内で発生する圧力変動等の不安定要素の影響が排泄物情報の測定精度に及ばないようにすると共に、便器としての動作信頼性をも十分に確保された排泄物情報測定機能付き大便器に関するものである。特に好適には、排泄された尿の量や成分等の測定に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
以下排泄物情報測定の一例である排尿に関する測定について説明する。
【0003】
従来の排泄物測定機能付き大便器は、排泄された尿を容器で受け、その容量を測定するというものがある(例えば、特許文献1参照)。
採尿器にこのような限られた大きさの容器を使用する場合、特に女性で見られるように排尿方向の個人差があると、採尿器に全尿を採取することが困難であり、その結果として正確な尿量測定を実施できないという問題があった。
【0004】
また、便器ボール部を採尿器として使用することによって前記の問題を解決して排尿の採取率を向上しようとするものもある(例えば、特許文献2、3参照)。
これらはいづれも、便器が接続される下水配管からの汚臭等の逆流を防止する封水の役割をも有する溜水を有し、その水量変化を測ることによって排泄された尿量を測定しようとするものである。
【0005】
しかしながら、実際の下水配管においては他の水周り器具の排水に伴う通水によって下水配管内には圧力変動が発生し、溜水水位面が移動するため測定タイミングによっては測定値に誤差が発生することがあった。
【0006】
また特許文献2の装置の場合は、溜水の排尿による増加によって尿が下水側に流出しないようにする必要があり、そのために便器のトラップ部を伸縮させているが、このような構造にすると伸縮部からの溜水の漏れが発生しやすく、長期間の使用という便器の特性を満たしにくいものであった。
【0007】
また特許文献3の装置の場合は、測定時にはボール部と下水配管を連通させて便器ボール部の溜水水位を下げているが、この場合も汚物排出路に水路固定部が露出するため、汚物詰まりなどの便器としての性能を低下させる恐れがあった。
【0008】
さらにまた、便器自体の構成として排水路にフラップ弁等の開閉手段を配する方法がある(例えば、特許文献4参照)。
この方式によれば、溜水に対して下水圧変動は伝わらないため測定に悪影響はない。 しかしながら、このように開閉手段を配置すると万一動作不良が発生した場合には、修理等のメンテナンスに手間がかかったり、開閉手段を駆動するモータや配線接続部等の充電部の被水防止のためにそれらの配置や構造に配慮が必要であった。
【0009】
【特許文献1】特開平07−259166号公報
【特許文献2】特開平08−299348号公報
【特許文献3】特開平10−082783号公報
【特許文献4】特開平11−061951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、一般に排泄を行うトイレで便器を使用して、性別にも関係なく、尿の量や排泄速度、性状等の排泄物情報を高精度に測定するだけでなく、衛生設備器具である便器としての排泄物搬送等の動作信頼性をも確保した排泄物情報測定大便器を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、下水配管に対して水封するトラップ構造部と、前記トラップ構造によって形成される溜水貯留部と、使用者の排泄物に関する情報を計測する排泄物測定手段と、を有する排泄物情報測定大便器において、
前記溜水貯留部を形成する第一ボール面を有する第一ボール部と、前記第一ボール部の上方に配置され使用者の排泄物を受けて測定のために貯留する第二ボール面を有する第二ボール部と、前記第一ボール部と前記第二ボール部との間を連通する連通路と、前記連通路を開閉する連通路開閉手段と、前記第一ボール部に洗浄水を供給する第一ボール部給水通路と、前記第二ボール部に洗浄水を供給する第二ボール給水通路と、を備え、
前記第二ボール部に排泄され貯留された使用者の排泄物を前記第二ボール給水通路からの洗浄水の供給によって、前記連通路を介して前記第一ボール部に排出した後に、前記第一ボール部給水通路からの洗浄水の供給によって前記下水配管に排出することを特徴とする。
【0012】
このことにより、下水配管内で発生する他の設備器具由来の通水に伴う圧力変動が発生しても、本発明の尿量測定便器に伝達されないようにすることを可能とすると共に、使用者の排泄物が落下する第ニボール部の洗浄・吐き出し動作と、第一ボール部から下水配管への排泄物の排出動作とを個別に制御可能な構成にすることによって、便器としての安定した動作をも可能とした。
【0013】
また、請求項2記載の発明によれば、前記第ニボール部に排泄された使用者の排泄物を下水配管に排出するに際して、前記第ニボール部への前記第二ボール給水通路からの洗浄水供給、次いで前記連通路開放、次いで前記第一ボール部への第一ボール部給水通路からの洗浄水供給の順で実施することを特徴とする。
【0014】
このことにより、使用者の排泄物が落下する第ニボール部の洗浄・吐き出し工程と、第一ボール部から下水配管への排泄物の安定した排出工程とを一連の動作で実施し、排泄物を下水配管に排出するため便器の動作信頼性の向上を可能とした。
【0015】
また、請求項3記載の発明によれば、前記排泄物測定手段は、排泄された使用者の排尿を受けた前記第二ボール面の水位変化を検出する水位測定手段を有し、測定される水位変化によって排尿情報を得るものであることを特徴とする。
【0016】
このことにより、排尿方向に個人差がある女性であっても、全尿を測定対象として回収することができ、性別に係わらない高信頼性の排尿情報を得ることができる。
めた連通路開閉手段の動作信頼性を向上させることを可能とした。
【0017】
また、請求項4記載の発明によれば、前記水位測定手段は前記第ニボール面の水位変化を測定する導圧路を有し、前記導圧路の開口部は前記第ニボール面を上方から見たときの開口投影領域の外側に設けられていることを特徴とする。
【0018】
このことにより、第ニボール部の溜水水位測定する開口部に対して、使用者の大便排泄、トイレットペーパー投入時、および排泄物を溜水と共に第一ボール部に搬送する時に、排泄物等の異物が導圧路が詰まったり、導圧路の管路面積を狭めたりすることが無く、水位計測の動作信頼性を向上させることを可能とした。
【0019】
また、請求項5記載の発明によれば、前記水位測定手段は前記第ニボール面の水位変化を測定する導圧路を有し、前記導圧路の開口部は前記連通路開閉手段に配設されていることを特徴とする。
【0020】
このことにより、排泄された大便や投入されたトイレットペーパー等の異物が開口部から侵入して詰まったり導圧管路面積が狭められたりした場合でも、連通路開閉手段とともに取り外して洗浄除去等の処置が容易となり、装置全体の生産性向上が図れ、またメンテナンス作業を容易にすることを可能とした。
【0021】
また、請求項6記載の発明によれば、前記導圧路は少なくとも第二ボール給水通路から第二ボール面に洗浄水を供給する時に導圧路内部を洗浄する配管洗浄水を通水することを特徴とする。
【0022】
このことにより、便器洗浄の都度通水して導圧路配管を清浄化するため、導圧路配管への排泄物の侵入があっても除去が可能となり、長期間に渡る機能・性能の信頼性を確保することを可能とした。
【0023】
また、請求項7記載の発明によれば、前記トラップ構造部にサイホン現象を発生させるゼット吐水口を設けたことを特徴とする。
【0024】
このことにより、下水配管への排泄物のより安定した排出を可能とし、便器としての動作信頼性を向上させることができる。
【0025】
また、請求項8記載の発明によれば、前記連通路開閉手段は電気によって駆動する充電機構部を有し、前記充電機構部を防水構造としたことを特徴とする。
【0026】
このことにより、通常の汚物排出動作、および、配管詰まり等による汚水溢れ動作時においても、充電機構部を構成する電動機などの充電部材が被水することが無くなり、安全性面を含めた連通路開閉手段の動作信頼性を向上させることを可能とした。
【0027】
また、請求項9記載の発明によれば、前記連通路開閉手段の充電機構部が第ニボール部の溢れ面の上方に配置されていることを特徴とする。
【0028】
このことにより、通常の汚物排出動作、および、配管詰まり等による汚水溢れ動作時においても、電動機などの充電部材の位置にまで水位が上昇することがなく、安全性面を含 また、請求項10記載の発明によれば、前記第ニボール面には便器使用待機中に溜水を有すると共に、所定時間経過後、または前記水位測定手段の水位測定結果によって溜水水位が減じたことを検知したときに、補給給水されることを特徴とする。
【0029】
このことにより、測定を行わない使用者も待ち時間無く通常の便器として使用することができ、その排泄物が便器乾燥面に付着して清掃負荷を増大させる恐れを無くすことを可能とした。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、便器としての各種機能を具備して、かつ、隣接する下水配管内の影響を遮断して排泄物に対して各種の測定を行う構成としているため、上下水道に接続される衛生設備器具としての動作信頼性を確保しながら高精度の測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態に関し、以下に詳説する。
以下に述べるのは排泄物情報として尿量の測定を例に挙げて説明しているが、本発明は尿中に含まれるグルコースなど特定成分の定性・定量値・性状、大便中に含まれる潜血など特定成分の定性・定量値・正常、および、吐瀉物のに含まれる潜血など特定成分の定性・定量値・正常等大便器内で検体サンプルを収集して行う各種測定に適用できる。
【実施例】
【0032】
図1は、本発明の排泄物情報として尿量の測定をを行う排泄物情報測定大便器の第1の実施例を示す斜視図である。機能部ユニットケース3は内機が確認できるよう透明で記載し、外形線のみを残している。
【0033】
機能部ユニットケース3の内部には、本排尿情報測定大便器をコントロールする制御部5と、洋風大便器1に対して供給する洗浄水を蓄えるロータンク10−1が配置されている。また市水をロータンク10−1や排尿情報測定機能部に分岐する金具や、電源用のコンセント、および、アース接続部材なども内部に配置されている。洋風大便器1の後背部の一部は機能ユニットケース3の中に干渉させることで、トイレブースのおける排尿情報測定大便器の奥行き占有面積が大きくなることが防止されている。前述の給水や電源接続部材、および、制御部5から連通路開閉機構6をはじめとする排尿情報測定機能実現のための各部と連結される電源・制御配線も内部に配置されることになり、見栄えが悪くなったり、清掃性が低下したりすることを防止している。
【0034】
機能ユニットケース3の材質としては、清掃方法として雑巾による水拭きが想定される家庭用としては木質の集成材が外観品位・コスト的にも推奨される。なお病院など公共のトイレに設置される場合は、使用者によるイタズラを配慮し塩ビ鋼板など耐火性のある材質が選定されるべきである。耐ノイズ性などの向上が要求される場合は、機能ケースの内側に電波ノイズの侵入を防止するノイズ吸収手段を配置すればよい。また、適宜、メンテナンスや収納を配慮した扉機構の採用なども設計的な任意事項である。
【0035】
大便器ユニット1は、洋風大便器10、尿量測定部4と制御部5を内蔵する機構ユニットケース3、および、前記洋風大便器10の上面であるリム面14に取り付けられる連通路開閉機構6によって構成されている。連通路開閉機構6は図示しない便座・便ふたを大便器10に組み付けるベースプレートと一体構成されてもよい。洋風大便器10の上方には、その内側に向けて使用者の排泄物を受ける鉢状に開口した第二ボール部12が構成されている。第二ボール部12には使用者の排泄物を受ける第二ボール部溜水13−2が貯えられる。また洋風大便器10のリム面14には、図示しない便座ユニットが当接するように配置される。
【0036】
壁には図示しない遠隔操作装置が設けられている。尿成分測定結果は、同じく図示しないプリンターや表示パネル等の端末装置に出力される。測定結果は使用者が個人的な生態情報として管理するだけでなく、測定結果を判読した医療スタッフが医療行為に使用することもできる。尿成分測定結果は、紙面で出力するだけでなく、無線や有線の通信回線を利用した情報伝送であったり、RFIDタグやIDカードや磁気カードや半導体メモリーなどの外部記憶媒体を利用した出力であったり、装置内部で情報を記憶する半導体メモリーやハードディスクなどの内部記憶媒体であってもよい。
【0037】
以下に、前述した本発明の第1実施例の詳細構成について図2および図3を使って説明する。
【0038】
図2は、第1の実施例の構成を示すシステム構成図であり、図3はそのブロック図である。
【0039】
前述した第二ボール部12の下方にはトラップ部15を介して図示しない下水配管へ連通している第一ボール部11が構成されている。第一ボール部11には下水配管からの汚臭等の逆流を防止する封水としての第一ボール部溜水13−1が貯留される。また、第一ボール部11と、その上方に配置された第二ボール部12の間には、排泄物が通過する連通路が構成されると共に、その間には排泄物の連通路開閉手段20が配置されている。連通路開閉手段20は、この例ではフラップ弁を用いた機構を使用しているが、設定された所定量に尿量が達するまで溢流を防止できるよう溢流面が上下動する堰構造のように他の開閉構造をとることも可能である。
【0040】
連通路開閉手段20は電動機によって駆動されており、洋風大便器10の便器開口10−2の外側に配置されているため、使用者から直接視認しにくくすることで外観品位を向上させると共に、直接大便等が付着する恐れが無いようにしている。
【0041】
第一ボール部11に貯留される排泄物は、ロータンク10−1からの給水による洗い落し現象、またはトラップ部15に発生するサイホン現象によって、溜水と共に下水配管に送出するようになっている。
【0042】
第二ボール部12の下端近傍には、第二ボール部溜水13−2の水位を圧力値として圧力センサー43に導く導圧路42が、大便等により詰まりや、異物侵入による狭窄を防止するために、連通路開閉手段20側に向けて開口している。
【0043】
また、連通路開閉機構6の電動機および圧力センサーは、制御・表示部70によってシーケンス動作を実施する。なお圧力センサーは排尿情報演算部71に接続されており、排尿開始前後の溜水量から尿量、またその時間当たり微係数から尿流率を演算する。
【0044】
第一ボール部11は、水位変化によって排泄された尿量を測定する第二ボール部12とは別体であり、両者は組合せによって洋風大便器10を構成するようになっている。第一ボール部11は下水配管接続部を兼ねており、形状実現の自由度的に塩化ビニールなどの樹脂で形成されることが勧められる。また、使用者が直接排泄を行い、洗剤やたわしなどで清掃される第二ボール部12は外郭である袴部と共に陶器で一体構成され、両者はパッキン部材7で連結されている。陶器部の外郭は一体構成であるため、隙間部に汚物汚れが侵入せず、衛生的に使用できるようになっている。
【0045】
第二ボール部12全体で尿を採集できるため、女性で見受けられるように排尿方向に個人差があったとしても、確実に全尿を採取することができる。なお、尿の一部を尿中の特定成分濃度測定用として、導圧路42を介して、他の測定媒体・測定手段に向けて送致する応用も考えられる。
【0046】
また、排泄物を受ける第二ボール部12に貯留される第二ボール部溜水13−2は、連通路開閉手段20を動作させることによって短時間で、かつ、全量を第一ボール部溜水13−1に排出して第二ボール部12のボール面を露出させることも可能である。したがって、本発明を適用した排泄物情報測定大便器は病院などの医療機関における全身の代謝状態を判定する尿量測定・尿検体採取という使い方だけでなく大便を溜水のない第二ボール部12に排泄することができるため、大便検体を容易に採取して各種医療検査のサンプルとして供することができる。
【0047】
止水栓17に導かれた市水は、分岐金具17−1によって第一ボール部11に洗浄水を供給するロータンク10−1と第二ボール部12側に分流される。ロータンク10−1の内部には、ボールタップ10−3が内蔵されている。ロータンク10−1に供給された市水は、ボールタップ10−3を経て所定量溜まるように調節され、電動機10−5で駆動される排水弁10−4を経て、第一ボール部11に導かれる。
【0048】
第二ボール部12側に分岐されされた市水の一方は開閉弁19に導かれ、他方は開閉弁33に導かれている。開閉弁19側に導かれた水はバキュームブレーカーやエアギャップなどの逆流防止手段32を経て、分岐金具17−2でさらに2方に分流され、一方は第二ボール部給水通路91の出口を形成するリム吐水ノズル8から第二ボール部に12に供給されボール面の洗浄に使用される。
【0049】
分岐金具17−2で分岐された他方は、電解水生成手段37、開閉弁33を経て水位測定する導圧路42に接続されている。
【0050】
便器洗浄時などに洗浄水を第二ボール部給水通路91を経由してリム吐水ノズル8から第二ボール部12に導く第二ボール部給水時は、給水の都度、開閉弁33を開放し、合わせて圧力センサー43を保護するために開閉弁35を閉止し、市水を導圧路42に導くことで導圧路42の内部を洗浄できる構成としている。 また、溜水の水位ヘッドによる水圧を測定する時には開閉弁33が閉止、開閉弁35が開放されて、圧力センサー43と第二ボール部12間の流路が連通するようになっている。
【0051】
また、導圧路42に連なる流路には電解水生成手段37が配置されていて、導圧路42の内側が塩素を含んだ市水を電気分解して生成した殺菌性のある次亜塩素イオンにより、配管内部で尿やトイレ内の環境起因の細菌等の繁殖で管路閉塞が生じることを防止している。
尚、電解水生成手段37の代わりに抗菌性のある銀イオンなどの金属イオンを供給するように装置を設置しても、配管路の雑菌の繁殖を抑えて閉塞を防止する考え方としては同じである。
【0052】
このようにして、第二ボール部12を洗浄するためにリム吐水ノズル8から供給された水と、導圧路42を洗浄した水は第二ボール部溜水13−2となり、排泄物と共に連通路開閉手段20を経て第一ボール部11の第一ボール部溜水13−1に排出されたあと、ロータンク10−1からの給水によって下水配管18に排出される。
【0053】
以下に、以上述べた構成を持つ本発明の排泄物情報測定大便器の第1の実施例を用いて排泄物情報のうちの一つである排尿情報測定を行う場合の動作を説明する。
【0054】
(1)使用者が排泄物情報の測定を行う場合
使用者が測定準備操作すると、連通路開閉手段20は開放され、第二ボール部に貯えられていた第二ボール部溜水13−2は第一ボール部11に落下する。次いで開閉弁33の閉止と開閉弁35の開放動作が実施され、第二ボール部12と圧力センサー43の間が水位検出する導圧路42として準備される。その状態で連通路開閉手段20が閉止され、使用者の排尿を待つ。この時、尿が第二ボール部12に存在しない排尿前の状態を圧力センサー43の測定基準として測定の原点を校正する。次に、使用者が排尿すると第二ボール部12に尿が溜まり、その水位は導圧路42を介して圧力センサー43によって測定される。このように、測定毎にセンサーの原点校正を行った後に尿が排泄された水位を圧力センサー43で測定するようにしているため、周囲温度の変化等の影響を受けず毎回の測定再現性が高い。
【0055】
この場合、排尿前水位を水位Y、排尿終了後の水位を水位Z、排尿中の水位を水位をXとすると、水位Yの時は第二ボール部12は空であるから、水位Xの時の第二ボール部12の溜水量がその時点での排尿量ということになる。測定中に下水配管中に他の設備器具などに起因する排水流れによって圧力変動が発生しても、この時は連通路開閉手段20が閉止しているため、第二ボール部溜水13−2の水位を測定している圧力センサー43に影響が伝わることが無く、高精度の水位Xの測定、引いては水位Zの測定によって総排尿量測定が可能となる。第二ボール部12の溜水水位と溜水量の関数関係は、設計値として設定されるだけでなく、製造・施工誤差が想定される場合には、施工時や定期点検時などに、定量給水に対する水位変化挙動を測定して、検量線や対照テーブルとして設定されるものであっても良い。
【0056】
単位時間当たりの溜水水量変化は、尿の排泄される速度に依存し医療分野では尿流速または尿流率と称されるものであるから、溜水量の時間変動挙動の微係数を演算することによって、尿流速または尿流率を演算してもよい。なお、尿流速または尿流率の演算は、単位圧力の増加に要する時間を計測することによっても行うことができる。また、これら尿流速または尿流率が最大値となるまでの排尿開始からの時間も記憶するようにして、結果として得られた、尿量,排尿時間、最大尿流速(最大尿流率)、最大尿流速(最大尿流率)に達するまでの時間といった情報と、予めデータベース化されて記憶されている各使用者の評価テーブルとの比較に基づいて、使用者の泌尿器疾病の可能性の推定を行うこともできる。
【0057】
次に、使用者が測定動作を終了して便器洗浄操作を実施すると、先ず開閉弁19が開放され、排尿が行われた第二ボール部12と水位計測を行った導圧路42に給水が行われる。次いで、連通路開閉手段20を開放して、排泄された尿と洗浄水が混ざった第二ボール部溜水13−2を第一ボール部11の溜水13に落下させた後、ロータンク10−1からの給水は図示しない電動機などのアクチュエータで駆動される排水弁10−4を経て、第一ボール部11に導かれる。
ロータンク10−1から排水弁10−4を経て導かれた水は、水の勢いや、トラップ部15の頂部を水が満たしたことによって発生するサイホン現象によって、図示しない下水配管に排泄物と一緒に送出されていくことになる。なお、本事例では第一ボール部11は、下水配管に接続する排水ソケット部まで一体として構成した例としているが、各々を別体として組合せるものであってもよい。
【0058】
下水配管に排出完了後、ロータンク10−1から供給される排水弁10−4経由のリフィール水は第一ボール部11に導かれ、第一ボール部溜水13−1は再びトラップ部15の溢流水位に復帰することになる。市水は分岐金具17−1によって分岐され、一方はボールタップ10−3を経てロータンク10−1に供給され、第一ボール部溜水13−1を信頼性高く排出できるだけの水量が溜まると給水が停止される。他方は、開閉弁19を経由して、リム吐水ノズル8から第二ボール部に供給され、第二ボール部溜水13−2が再び形成される。
【0059】
(2)使用者が排泄物情報の測定を行なわず通常の大便器としてのみ使用する場合。
【0060】
使用者が測定の準備操作をしなかった場合、連通路開閉手段20は閉止したままであり、大小便等を排泄する用便モードとして動作する。この状態で使用者が排便した場合、大便は直接、排出水位Wになている第二ボール部溜水13−2に落下するため、第二ボール面12−1に汚れが付着する恐れは少ない。使用者の便器洗浄操作に従い、第二ボール部12に設けられたリム吐水ノズル8は楕円状の第二ボール部12に対して接線方向に導流され、第二ボール面12−1を旋回する。旋回した流れは付着した大便を洗い落としながら、第二ボール部溜水13−2をも旋回させる。次に所定のタイミングで連通路開閉手段20を開放することにより、排泄物交じりの第二ボール部溜水13−2を第一ボール部溜水13−1に落下させる。次に、ロータンク10−1から導かれた水は、水の勢いやトラップ部15の頂部を水が満たしたことによって発生するサイホン現象によって、図示しない下水配管に排泄物交じりの第一ボール部溜水13−1を排出させる。
排出完了後、ロータンク10−1から供給される排水弁10−4経由のリフィール水は第一ボール部11に導かれ、第一ボール部溜水13−1は再びトラップ部15の溢流水位に復帰することになる。また、リム吐水ノズル8から第二ボール部12に給水することで、第二ボール部溜水13−2が再び形成される。
【0061】
特に第二ボール面12−1には、排尿採取時に誤って大便が排泄されて付着する可能性もあるため、セフィオンテクト(商標)と称されるような付着防止手段を配すると汚れが防止できる。併せてトルネード洗浄(商標)と称されるような、汚物剥離効果の高い旋回流による洗浄方式を利用することにより、排泄物は第二ボール部溜水溜水13に流れ落ちやすくなっている。
【0062】
図4は、本発明の第1の実施例の動作フローチャートであり、これに基づいてさらに詳しい動作を以下に説明する。
【0063】
S101は待機している尿量測定便器が使用者の近接を検知するステップである。第一ボール部はトラップ部の溢流水位まで溜水は満水となっている。また第一ボール部と第二ボール部の間の連通路開閉手段は閉止し、第二ボール部の内側には溜水が形成され、排便による汚れが付着し難いようになっている。水位測定する圧力センサーと水位測定を行う第二ボール部をつなぐ導圧管の管路は満水となっているが、中途にある開閉弁が閉止しているため、排泄物や洗剤等を含む汚れがセンサー部に拡散・侵入しないようになっている。
S102は使用者が測定のために準備スイッチを押したり、個人認証用のタグやIDカードをかざす等の所定の準備操作を行なったか否かを判断するステップである。準備スイッチ操作をせずに着座した場合は、尿量を測定するのではなく、排便用途と判断してS201ステップに移行する。なお、測定用途での使用か否かの判断は、例えば「測定」、「用便」といった表示の専用SWを設けて判断するようにしてもよい。
【0064】
S102ステップで尿量測定の意思を使用者が示したと判断された場合、S103ステップで連通路開閉手段が開放され、第二ボール部溜水13−2は第一ボール部に排出される。
S104ステップで使用者が排尿を行う第二ボールの水位による圧力測定するセンサー出力の原点校正をする。この時、連通路開閉手段が開放しているため水位は0であり、その圧力が原点として認識され、その時点の大気圧に圧力センサーが校正される。圧力センサーに周囲温度の影響等で絶対値のドリフトがあったとしても、S104ステップでキャンセルされる。
S105は第二ボールに排泄された尿が、第一ボールに落下することを防止するために連通路開閉手段20を閉止駆動するステップである。連通路開閉手段20の作動が完了すると、排尿に伴う水位変化の測定準備が完了するため、S106ステップで使用者に対して尿量測定準備が完了したことを制御表示部70に表示する。使用者の使い勝手を考えた場合、S101からS106までに要する時間は10秒以内とすると、排尿したいのに待たなければならないと使用者が感じることを防止することができる。
S107ステップで使用者は第二ボール部12に向けて排尿を実施する。女性の排尿は座位で実施されるが、男性の排尿は座位だと飛び散りの発生を防止できる。ただし尿流率の測定を行う時には、男性は腹筋が働きやすい立位で行うことが推奨される。男性の場合、測定の目的に合わせて排尿姿勢を選定すればよい。S108は尿中に含まれる特定成分濃度を測定するために尿を吸引し、所定のセンシング手段に向けて送出するステップである。尿量のみが必要な場合は不要であるが、尿検体による特定成分濃度測定が必要な場合は採尿手段を別途設けて直接に排尿を採取したり、第二ボール部12に貯留された尿を適宜採用すればよい。
排尿が終了すると、使用者はS109ステップで終了操作を実施する。終了スイッチを押したり、個人認証用のタグやIDカードをかざす等の所定の操作を行うことになる。S110は第二ボール部溜水13−2の水位を圧力値で測定するステップである。
S111は水位を尿量に換算するステップである。排尿前の溜水量は0であるから、測定した水位が表す溜水量がそのまま尿量として演算される。同時に時間当たりの微係数を演算して、経時的な尿流率変化を演算してもよい。水位と溜水量の関係は、設計値として設定するほか、施工や寸法的なバラツキを含む場合は所定水量ごとの水位を学習させて、水位と溜水量の関係を示す検量線や比較テーブルを設定してもよい。
S112は水位変化から演算した尿量を、使用者に開示するため正常な測定が行われたか否かを判断するステップである。例えば、排尿と同時に大便のような固形で体積を有するものが落下した場合、水位変化挙動に不連続点が発生したり、大きな波立ちが生じることから、このことを利用して正常な排尿動作か否かの判定をおこない、その結果、正常測定の場合はS113ステップにおいて測定結果のまま表示し、排尿中の大便の同時排泄等の異常測定が懸念される場合は、S114ステップにおいて尿量測定精度に疑念があることを警告を測定結果に付記して出力を行う。
【0065】
尿中の特定成分測定のための吸引動作が実施される場合、大便混入が懸念されると特定成分測定ができない項目については診断ミスを防止するため、および、器具保全のために検体としてのサンプル尿の吸引を中止する動作を行ってもよい。
S115は排便を終了した使用者が、便器洗浄操作をおこなうステップである。S116ステップはリム吐水による第二ボール部12の洗浄と、水位測定を実施した導圧路42の洗浄を行う。所定時間の洗浄が終了後、S117は第二ボール部の尿を第一ボール部の溜水に落下させるために、連通路開閉手段を駆動するステップである。第二ボール部から第一ボール部への吐き出しが終了すると、S118ステップで排泄物の排出飛沫による第二ボール部への汚れ侵入を防止するために、連通路開閉手段は閉止される。連通路開閉手段の閉止が完了すると、S119ステップで第一ボール部に第一ボール部給水通路から給水が実施され、第一ボール部の洗浄と排泄物の下水配管への排出が実施される。
排出が完了すると、S120ステップで第一ボール部に第一ボール部給水通路から給水が補給されて第一ボール部溜水が形成されてトラップ部が封水状態に復帰し、下水配管に対する衛生性の確保が実現される。次いで、S121ステップで第二ボール部にも第一ボール部給水通路から給水が補給され、第二ボール部溜水が形成されて次回の動作可能状態に復帰する。用便が終了した使用者の離座をS122ステップで検出する。
【0066】
測定を行わずに通常の排便を行う場合は準備操作を行わないため、S201で着座を検出して装置使用開始を判断する。S202で使用者が排便する時には、連通路開閉手段が閉止し、溜水が確保されているため、大便が落下して便器面に付着汚れが発生することがない。
【0067】
S203で便器洗浄操作を受付ける。
S204ステップはリム吐水による第二ボール部の洗浄と、水位測定を実施した導圧管の洗浄を行うステップである。所定時間の洗浄が終了後、S205は第二ボール部の尿を第一ボール部の溜水に落下させるために、連通路開閉手段を駆動するステップである。第二ボール部から第一ボール部への吐き出しが終了すると、S206ステップで排泄物の排出飛沫による第二ボール部への汚れ侵入を防止するために、連通路開閉手段は閉止される。連通路開閉手段の閉止が完了すると、S207ステップで第一ボール部に第一ボール部給水通路から給水が行われ、第一ボール部の洗浄と排泄物の下水配管への排出が実施される。
排出が完了すると、S208ステップで第一ボール部に再び第一ボール部給水通路から給水が補給されて第一ボール部溜水が形成されてトラップ部が封水状態に復帰し、下水配管に対する衛生性の確保が実現される。次いで、S209ステップで第二ボール部にも第二ボール部給水通路から給水が補給され、第二ボール部溜水が形成されて次回の動作可能状態に復帰する。用便が終了した使用者の離座をS210ステップで検出して装置の使用が終了したことを判断する。
【0068】
図5は、本発明の排尿情報測定大便器の第1の実施例の各部間の動作タイミングを示すタイミングチャートである。図5−aは測定関連の各動作を示し、図5−bは便器洗浄関連の各動作を示すものである。
【0069】
図5−aにおいて、使用者が測定を行うために準備操作を行うと、連通路開閉手段20が開放され、所定水位にあった第二ボール部の溜水は空となり、スタート水位Yとなる。次いで、圧力センサー43と第二ボール部間を連通すべく開閉弁35が作動する。圧力センサー43が起動され原点位置が構成された後、連通路開閉手段20が作動し第二ボール部12から第一ボール部11に尿が落下しないようにする。使用者が排尿を行うと第二ボール部12の水位が排尿後水位Zに上昇する。排尿が終了し、終了操作を実施するとすると尿量・尿流率などが演算・印刷等で使用者・データ管理者に開示され、水位を測定していた導圧路が開閉弁35によって閉止され、圧力センサー43も測定を中止する。
【0070】
使用者が測定動作が終わり便器洗浄を行うため便器洗浄操作を実施すると、先ずリム吐水ノズル8からの給水で第二ボール部が洗浄され、同時に導圧路42にも通水され、水位測定を行って汚染された管路が洗浄されて第二ボール部に排出される。その結果、第二ボール部溜水13−2は尿混じり水となって排出水位Wに上昇する。次いで連通路開閉手段20が作動して第二ボール部12に第二ボール部溜水13−2としてたまっている尿混じり水を第一ボール部11に落下させると、連通路開閉手段20が閉止される。その後、再び第二ボール部12にリム吐水が供給され第二ボール部溜水13−2は排出水位Wに復帰する。
【0071】
第二ボール部溜水13−2が第一ボール部11に排出されると、第一ボール部11にロータンク10−1から給水され、第一ボール部の排泄物混じりの溜水は下水配管に向けて排出される。その後、リフィール水によって第一ボール部11には再び第一ボール部溜水13−1が溜まることになる。
【0072】
図5−bは使用者が測定用途ではなく通常の便器として排便に使用する場合であり、測定のための準備操作を行わずに着座すると、連通路開閉手段20は閉止したままで排便を待つ。使用者が排便を終了し、便器洗浄操作を実施すると、先ずリム吐水ノズル8からの給水で第二ボール部12が洗浄され排出水位Wになる。次いで連通路開閉手段20が作動して、排泄物混じりの水を第一ボール部11に吐き出す。このとき同時に水位測定を行っていない導圧路42にも通水され、管路が洗浄される。
連通路開閉手段20が作動して第二ボール部12中の排泄物を第一ボール部11に排出させ終わると、連通路開閉手段20が閉止して再び、第二ボール部12にリム吐水が供給され第二ボール部溜水13−2が排出水位Wに復帰する。
【0073】
排泄物混じりの水が第一ボール部11に吐き出されると第一ボール部11にロータンク10−1から給水され、第一ボール部の排泄物混じりの溜水は下水配管に向けて排出される。その後、リフィール水によって第一ボール部11には再び第一ボール部溜水13−1が溢流水位まで溜まることになる。
【0074】
図6は本発明の排尿情報測定大便器に組み込まれた連通路開閉手段20の第1の実施例の詳細構造を示す断面図である。
【0075】
連通路開閉手段20の便器10への固定手段であるフレーム21は便器上面のリム面14近傍に取り付けられ、電動機23の回動によって動作するリンク機構24は、第二ボール部12の出口に形成された吐き出し口部材12−2に連通路開閉弁体22を離接する動作を行うようになっている。連通路開閉弁体22の便器の吐き出し口12−2との接触部には、ゴム材で形成されたシール部材22−1が設けられており第二ボール部溜水13−2の漏れが生じないよう配慮されている。
【0076】
なお連通路開閉弁体22とリンク24の連接部には自動調芯手段26が設けられており、連通路開閉弁体22と第二ボール部12の吐き出し口部材12−2の中心位置ズレが発生しても漏水が生じないよう配慮されている。またフレーム21と図示しない便器の取り付け部には長穴を構成し、フレーム21の位置を微動できるようにして、便器の焼成誤差を吸収している。
【0077】
また、充電部材の一つである電動機23は便器溢れ面であるリム面14の上方に配置されることになるため、万一、図示しない第一ボール部の排水流路に詰まりが発生しても、汚水によって電動機23が侵漬されることが無いため、安全性面の信頼性を確保している。
【0078】
図7は本発明の排尿情報測定大便器に組み込まれた連通路開閉手段20の第2実施例の閉止状態を示す断面図である。
【0079】
前述の第1実施例と同じくフレーム21は、便器上面のリム面14近傍に取り付けられ、電動機23の回動によって動作するリンク機構24は、第二ボール部12の吐き出し口部材12−2に連通路開閉弁体22を離接する動作を行うようになっている。前述の第1実施例とは異なって、充電部材である電動機23は便器溢れ面の下方に配置されているが、連通路開閉手段20を有する連通路開閉機構6は全体をシール被覆材25で覆われているため、万一、第一ボール面の流路に詰まりが発生しても、汚水が連通路開閉機構6に侵入することは無く、安全性面の信頼性を確保している。
【0080】
図8は前述の連通路開閉手段20の第2実施例の開放状態実施例を示す断面図である。
【0081】
稼動部に蛇腹状の構成を採用したシール被覆材25は、リンク機構24の動作に合わせて伸縮し、機構の動作を行いながら汚水が連通路開閉機構6に侵入することを防止している。なお蛇腹の谷間には汚物が侵入して排出できなくなる恐れがあるため、連通路開閉弁体22の閉止状態では蛇腹形状は伸びきるように設計されている。
【0082】
図9は本発明の排泄物情報測定大便器の第2の実施例の構成を示すシステム構成図である。
本実施例では便器に供給される洗浄水はすべてロータンクを経由して供給されるように構成されている。ここでは、前述の第1実施例と同じ構成は説明を省略して、異なる点を重点に説明する。
【0083】
止水栓17から供給された市水は、ロータンク10−1に供給されボールタップ10−3を経て所定量溜まるように調節される。貯留された水は図示しない電動機で開閉される排水弁10−4から外部へ供給される。排水弁10−4の出口には、三方切替弁39が設けられており、リム吐水ノズル8を経て第二ボール部12に導かれる第二ボール部給水通路13−2と、フラップ弁ユニット80に導かれる流れに分流される。三方切替弁39は一般的な電動式のものだけでなく、後述の図11で示すような機械式の分流路でもよい。
リム吐水ノズル8に向けた流れは途中、分岐金具17−2で分岐され、電解水生成手段37、および、開閉弁33を経て、第二ボール部溜水13−2の水位測定を行う導圧路42を洗浄する。第二ボール部12を洗浄するためにリム吐水ノズル8から供給された水と、導圧路42を洗浄した水は第二ボール部溜水13−2となり、排泄物と共に連通路開閉手段20を経てフラップ弁ユニット80を経由して第一ボール部11中の第一ボール部溜水13−1に排出される。その後、ロータンク10−1から第一ボール部給水通路13−1、フラップ弁ユニット80を経由して第一ボール部溜水13−1に供給される給水によってトラップ部15をから図示しない下水配管に排出される。圧力センサー43は排尿情報演算部に接続されており、排尿開始前後の溜水量から尿量、またその時間当たり微係数から尿流率を演算する。
【0084】
図10は本発明の第2の実施例で使用する三方切替弁39の第1の実施例を示す斜視図である。
【0085】
三方切替弁39の上方は排水弁10−4であり、排水弁10−4から導かれた水はリム吐水ノズル8とフラップ弁ユニット80に導かれる流れに分流される。排水弁10−4は二重構造となっており、中央部のリム吐水ノズル8のみへの給水と、その周辺に配置されるフラップ弁ユニット80のみへの給水が実現できる構成となっている。実際の便器洗浄動作において各種シーケンスタイミングの変更が可能であるため、使用水量の削減等の効果が期待できることになる。
【0086】
図11は本発明の第2の実施例で使用した三方切替弁の第2の実施例を示す断面図である。
【0087】
本実施例での三方切替弁38は前述した三方切替弁の第1の実施例におけるロータンク10−1の排水弁10−4と三方切替弁39とを一体化した形態のもので、ロータンク10−1の底部に配置されている。そして、三方切替弁38はフラップ弁38−1、38−2を有し、両者はロータンク10−1に設置された図示しない電動機で必要量だけ引き上げられ二つの流路をそれぞれ独立して開閉され、中央部のリム吐水ノズル8のみへの給水と、その周辺に配置されるフラップ弁ユニット80のみへの給水が実現できる構成となっている。
【0088】
図12は、前述した本発明の排尿情報測定大便器の第2の実施例の具体的構成を示す断面図である。
以下に、前述した第1実施例と異なる部分を主体として説明し、記述のない部分は第1実施例と同様な構成である。
【0089】
洋風大便器10の上面であるリム面14の上方に、ロータンク10−1が配置されている。ロータンク10−1には図示しない止水栓とボールタップへ経て、定量水位の水が供給されるようになっている。ロータンク10−1の下面には排水弁10−4が配置され、図示しない電動機動作によって排水動作が実施されるようになっている。
排水弁10−4の下方には三方切替弁39が配置されているが、本実施例では中央部のみの流路を開放してリム吐水ノズル8側に通水する場合と、周辺部の流路を開放してフラップ弁ユニット80側に水を通水する場合が切替できるようになっている。三方切替弁39は本例のような機械式の流路切替機構だけでなく、電動機や電磁弁を利用した流路切替弁であってもよい。
洋風大便器10の内側には、、連通路開閉手段20を内蔵したフラップ弁ユニット80が使用者の排泄物を受ける第二ボール部12の連通路への排出口に両者が水密状態で配設されている。また、フラップ弁ユニット80にはロータンク10−1からの配管と接続されて第一ボール部給水通路13−1を構成する開口部と第一ボール部11に接続される開口部とが設けられ、連通路開閉手段20近傍の汚水等の多量の水が合流する部分を全体として水密状に保つように構成されている。
また、フラップ弁ユニット80と第二ボール部12の吐き出し口との間を接続する吐き出し口部材12−2にはオーバーフロー流路12−3が設けられており、連通路開閉弁体22と吐き出し口部材12−2とが固着した時やリム吐水ノズル8からの給水が止まらなくなった故障状態でも、第二ボール部溜水13−2の汚水が便器のリム面14を超えないように配慮されている。
【0090】
さらにまた、フラップ弁ユニット80は上面部分を別体の蓋状のカバー部材80−1で構成している。
そのため、連通路開閉手段20の保守点検・部品交換等のメンテナンスがカバー部材81
を取り外すだけで簡単に行える。
【0091】
なお、本構成における排泄物の下水配管への排出動作は、トラップ部15が満水になることによって生じるサイホン現象と共に、ロータンク10−1からの給水が溜水13を排泄物と共に押し出していく洗い落し現象を想定している。
【0092】
図13は、本発明の排泄物情報測定大便器の第3実施例の具体的構成を示す断面図である。本例の場合も、前述した第2の実施例での記述同様に第1実施例および第2実施例と同じ部分は説明を省略する。
【0093】
第一ボール部11にロータンク10−1に蓄えられた水を三方切替弁39を直接供給する構成としている。トラップ部15に向けて流出する流れは直接サイホン現象を発生して、溜水13を排泄物と共に図示しない下水配管に吐きこんでいく構成としている。
図14は、ここまで述べてきた本発明の各実施例に適用されている動作制御とは異なる、本発明の排泄物情報測定大便器の便器洗浄時における第二ボール給水、連通路開放、および第一ボール給水の各動作のタイミングを示す、別の動作制御の変形例を示すタイミングチャートである。
【0094】
使用者が排泄物を排出した第二ボール部12への給水により、排泄物が旋回しながら流水の中央に集まっている時に連通路開閉手段20が開放され、第二ボール部12への給水の持つ運動エネルギーと流水水位が持つ位置エネルギーによって、排泄物は第一ボール部11に向かって落下する。排泄物に対して落下による運動慣性が加わっている間に、第一ボール部11への給水を行い、排泄物を下水配管に向けて排出するようになっている。
排泄物の落下タイミングと、第一ボール部11への給水タイミングを同調させる必要があるが、排泄物の搬出性能としては高い能力が期待できる。
図15は、本発明の排泄物情報測定大便器の便器洗浄時における第二ボール給水、連通路開放、および第一ボール給水の各動作のタイミングを示す、さらに別の動作制御の第2の変形例を示すタイミングチャートである。
【0095】
使用者が排泄物を排出した第二ボール部12への給水により、排泄物が旋回しながら流水の中央に集まっている時に連通路開閉手段20が開放され、第二ボール部12への給水の持つ運動エネルギーと流水水位が持つ位置エネルギーによって、排泄物は第一ボール部11に向かって落下する。排泄物が第一ボール部11への落下が終了し、連通路開閉手段20が閉止してから第一ボール部11への給水を行い、排泄物を下水配管に向けて排出するようになっている。
排泄物の落下タイミングと、第一ボール部11への給水タイミングを同調させる必要がないため、第二ボール給水、連通路開放、および第一ボール給水制御が単純であり、給水圧力の変動などを受けにくく安定した便器排出性能が期待できる。各機能の動作タイミングは、便器全体の動作状況を確認しながら適宜タイミングや動作時間を選定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の排泄物情報測定大便器の第1の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の排泄物情報測定大便器の第1の実施例の測定系システム図である。
【図3】本発明の排泄物情報測定大便器の第1の実施例のシステムブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施例のフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施例の動作タイミング示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の排泄物情報測定大便器に組み込まれた連通路開閉手段の第1の実施例の閉止状態を示す断面図である。
【図7】本発明の排泄物情報測定大便器に組み込まれた連通路開閉手段の第ニの実施例の閉止状態を示す断面図である。
【図8】本発明の排泄物情報測定大便器に組み込まれた連通路開閉手段の第ニの実施例の開放状態を示す断面図である。
【図9】本発明の排泄物情報測定大便器の第2の実施例の測定系システム図である。
【図10】本発明の排泄物情報測定大便器の第2の実施例で使用されている三方切替弁の第1の実施例を示す斜視図である。
【図11】本発明の排泄物情報測定大便器の第2の実施例で使用されている三方切替弁の第2の実施例を示す断面図である。
【図12】本発明の排泄物情報測定大便器の第2の実施例の断面図である。
【図13】本発明の排泄物情報測定大便器の第3の実施例を示す断面図である。
【図14】本発明の第1の実施例の動作タイミングの変形例を示すタイミングチャートである。
【図15】本発明の第1の実施例の動作タイミングの第2の変形例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0097】
1…大便器ユニット
2…便座装置本体
3…機構ユニットケース
5…制御部
6…連通路開閉機構
7…パッキン部材
8…リム吐水ノズル
10…洋風大便器
10−1…ロータンク
10−2…便器開口
10−3…ボールタップ
10−4…排水弁
10−5…電動機
11…第一ボール部
12…第二ボール部
12−1…第二ボール面
12−2…吐き出し口部材
12−3…オーバーフロー流路
13−1…第一ボール部溜水
13−2…第二ボール面溜水
14…リム面
15…トラップ部
17…止水栓
17−1…分岐金具
17−2…分岐金具
18…下水配管
19…開閉弁
20…連通路開閉手段
21…フレーム
22…連通路開閉弁体
22−1…シール部材
23…電動機
24…リンク
25…シール被覆材
26…自動調芯手段
32…逆流防止手段
33…開閉弁
35…開閉弁
37…電解水生成手段
38…三方切替弁
39…三方切替弁
39−1…フラップ弁
39−2…フラップ弁
42…導圧路
43…圧力センサー
70…操作・表示部
71…排尿情報演算部
80…フラップ弁ユニット
80−1…カバー部材
81…フラップ弁ユニット
91…第一ボール部給水通路
92…第二ボール部給水通路
W…排出水位
Y…スタート水位
Z…排尿後水位



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水配管に対して水封するトラップ構造部と、
前記トラップ構造部によって形成される溜水貯留部と、
使用者の排泄物に関する情報を計測する排泄物測定手段と、
を有する排泄物情報測定大便器において、
前記溜水貯留部を形成する第一ボール面を有する第一ボール部と、
前記第一ボール部の上方に配置され使用者の排泄物を受けて測定のために貯留する第二ボール面を有する第二ボール部と、
前記第一ボール部と前記第二ボール部との間を連通する連通路と、
前記連通路を開閉するための連通路開閉手段と、
前記第一ボール部に洗浄水を供給する第一ボール部給水通路と、
前記第二ボール部に洗浄水を供給する第二ボール給水通路と、
を備え、
前記第二ボール部に排泄され貯留された使用者の排泄物を前記連通路開閉手段によって前記連通路を開放して前記第一ボール部に排出した後に、
前記第一ボール部給水通路からの洗浄水の供給によって前記下水配管に排出する
ことを特徴とする排泄物情報測定大便器。
【請求項2】
前記第ニボール部に排泄された使用者の排泄物を下水配管に排出するに際して、
前記第ニボール部への前記第二ボール給水通路からの洗浄水供給、
次いで前記連通路開放、
次いで前記第一ボール部への第一ボール部給水通路からの洗浄水供給の順で実施する
ことを特徴とする請求項1に記載の排泄物情報測定大便器。
【請求項3】
前記排泄物測定手段は、
排泄された使用者の排尿を受けた前記第二ボール面の水位変化を検出する水位測定手段を有し、
測定される水位変化によって排尿情報を得るものである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排泄物情報測定大便器。
【請求項4】
前記水位測定手段は前記第ニボール面の水位変化を測定する導圧路を有し、
前記導圧路の開口部は前記第ニボール面を上方から見たときの開口投影領域の外側に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の排泄物情報測定大便器。
【請求項5】
前記水位測定手段は前記第ニボール面の水位変化を測定する導圧路を有し、
前記導圧路の開口部は前記連通路開閉手段に配設されている
ことを特徴とする請求項3に記載の排泄物情報測定大便器。
【請求項6】
前記導圧路は少なくとも第二ボール給水通路から第二ボール面に洗浄水を供給する時に導圧路内部を洗浄する配管洗浄水を通水する
ことを特徴とする請求項4または5に記載の排泄物情報測定大便器。
【請求項7】
前記トラップ構造部にサイホン現象を発生させるゼット吐水口を設けた
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の排泄物情報測定大便器。
【請求項8】
前記連通路開閉手段は電気によって駆動する充電機構部を有し、
前記充電機構部を防水構造とした
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の排泄物情報測定大便器。
【請求項9】
前記連通路開閉手段は電気によって駆動する充電機構部を有し、前記充電機構部が第ニボール部の溢れ面の上方に配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の排泄物情報測定大便器。
【請求項10】
前記第ニボール面には便器使用待機中に溜水を有すると共に、
所定時間経過後、または前記水位測定手段の水位測定結果によって溜水水位が減じたことを検知したときに、
補給給水される
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の排泄物情報測定大便器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−225966(P2006−225966A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40551(P2005−40551)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】