説明

排泄管理システム、排泄検出装置及び受信装置

【課題】ユーザーに面倒な処置を強要することなく、使用済みの使い捨ておむつから送信される無線信号によって排泄があったと誤認識する可能性を低下できる排泄管理システム及び排泄検出装置を提供する。
【解決手段】排泄検出装置100は、温度センサー130によって検出された温度情報及び使い捨ておむつに固有なおむつ識別子を含む無線信号を送受信装置20に送信する無線送信部180を備える。送受信装置20は、排泄検出装置100から受信した無線信号に含まれるおむつ識別子を、当該無線信号の電界強度が所定の閾値よりも高い場合に認証するおむつ識別子認証部23と、認証されたおむつ識別子、及び当該おむつ識別子と対応付けられている温度情報の処理を実行する受信処理部25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつを装着した生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄管理システム、排泄検出装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつなどの吸収性物品に関して、尿や便などが吸収性物品の着用者(生体)から排泄されたことを検出する排泄検出装置が知られている。例えば、温度センサーとパッシブ型のICタグとを備える排泄検出装置を搭載した使い捨ておむつが提案されている(特許文献1参照)。このような排泄検出装置によれば、使い捨ておむつ近傍(例えば、被介護者のベッド下)に設置された受信装置から無線で与えられる電力によって温度センサー及びICタグが作動する。この結果、使い捨ておむつ内部の温度を示す情報が受信装置を経由してナースステーションなどに設置されている排泄管理サーバに送信される。
【0003】
また、イオン化傾向が異なる材料によって構成される電極に着用者の排泄物を接触させることによって起電させ、この起電力を用いて温度センサー及びアクティブ型のICタグを作動させる方法も提案されている(例えば、特許文献2及び3)。なお、排泄物を用いた起電に代えて、電解質を水などの溶媒に溶かした電解質溶液が入った袋から使い捨ておむつの使用開始時に電解質溶液を滲出させて起電することも考えられる。
【0004】
つまり、ボルタの電池の原理を利用することによってアクティブ型のICタグを使い捨ておむつに搭載することが可能となり、無線信号の送信電力を高めることができる。このため、パッシブ型のICタグのように使い捨ておむつ近傍に受信装置を設置する必要がなくなり、使い捨ておむつから比較的離れた場所(数m程度)に設置された受信装置を中継して、使い捨ておむつ内部の温度を示す情報を排泄管理サーバに送信できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−296566号公報(第5−6頁、第1図)
【特許文献2】特開2002−277435号公報(第3頁、第4図)
【特許文献3】特開平4−138155号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、排泄物または電解質溶液を用いて起電する従来の排泄検出装置には、次のような問題があった。すなわち、このような排泄検出装置の場合、着用者から取り外された使用済みの使い捨ておむつからも無線信号の送信が継続され得る。このような場合、排泄管理サーバは、使用済みの使い捨ておむつから送信された情報に基づいて、排泄があったと誤認識する可能性があるため都合が悪い。
【0007】
このような問題を回避するためには、使用済みの使い捨ておむつを受信装置から充分遠ざけたり、使用済みの使い捨ておむつに搭載されているICタグを折り曲げて破損させたりすればよい。或いは、使用済みの使い捨ておむつを電波遮蔽性を有する袋に入れて廃棄してもよい。しかしながら、このような処置は結構面倒であり、ユーザーにこのような処置を強要することは好ましくない。
【0008】
そこで、本発明は、排泄物などを用いて起電する場合において、ユーザーに面倒な処置を強要することなく、使用済みの使い捨ておむつから送信される無線信号によって排泄があったと誤認識する可能性を低下できる排泄管理システム及び排泄検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。すなわち、本発明の特徴は、使い捨ておむつ(使い捨ておむつ10A,10B)に搭載され、前記使い捨ておむつを装着した生体(着用者W)から排泄物(尿や便)の排泄があったことを検出する排泄検出装置(排泄検出装置100)と、前記排泄検出装置から送信された無線信号を受信する受信装置(送受信装置20)とを含む排泄管理システム(排泄管理システム1)であって、前記排泄検出装置は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極(電極121,電極122)を有する電源部(電源部160)と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報(例えば、温度情報)を検出する温度センサー(温度センサー130)と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記温度センサーによって検出された前記環境情報及び前記使い捨ておむつに固有なおむつ識別子(例えば、ID:0001)を含む無線信号を前記受信装置に送信する無線送信部(無線送信部180)とを備え、前記受信装置は、前記排泄検出装置から受信した前記無線信号に含まれる前記おむつ識別子を、所定の条件(例えば、無線信号の電界強度が所定の閾値よりも高い場合)に従って認証する識別子認証部(おむつ識別子認証部23)と、前記識別子認証部によって認証された前記おむつ識別子、及び認証された前記おむつ識別子と対応付けられている前記環境情報の処理を実行する受信処理部(受信処理部25)とを備えることを要旨とする。
【0010】
上述した実施形態において、前記識別子認証部は、前記無線信号の電界強度が所定の閾値よりも高い場合、前記おむつ識別子を認証することが好ましい。
【0011】
上述した実施形態において、前記おむつ識別子は、前記使い捨ておむつの製造ロットと対応付けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の他の特徴は、使い捨ておむつに搭載され、前記使い捨ておむつを装着した生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置であって、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極を有する電源部と、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報を検出する温度センサーと、前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記温度センサーによって検出された前記環境情報及び前記使い捨ておむつに固有なおむつ識別子を含む無線信号を前記受信装置に送信する無線送信部と
を備えることを要旨とする。
【0013】
本発明のさらに他の特徴は、使い捨ておむつに搭載され、前記使い捨ておむつを装着した生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置から送信された無線信号を受信する受信装置であって、前記排泄検出装置から受信した前記無線信号に含まれ、前記使い捨ておむつに固有なおむつ識別子を、所定の条件に従って認証する識別子認証部と、前記識別子認証部によって認証された前記おむつ識別子、及び認証された前記おむつ識別子と対応付けられている前記環境情報の処理を実行する受信処理部とを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の特徴によれば、ユーザーに面倒な処置を強要することなく、使用済みの使い捨ておむつから送信される無線信号によって排泄があったと誤認識する可能性を低下できる排泄管理システム及び排泄検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る排泄管理システム1の全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る排泄検出装置100が埋め込まれた使い捨ておむつ10Aの平面展開図、及び排泄検出装置100の外観を模式的に示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係る排泄検出装置100及び送受信装置20の機能ブロック構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る排泄管理システム1を用いた排泄管理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る排泄検出装置及び吸収性物品の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0017】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0018】
(1)排泄管理システムの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る排泄管理システム1の全体概略構成図である。図1に示すように、排泄管理システム1は、送受信装置20、排泄管理サーバ40及び排泄検出装置100によって構成される。
【0019】
使い捨ておむつ10A及び使い捨ておむつ10Bは、着用者W(生体)に装着され、着用者Wからの尿や便などの排泄物を吸収する吸収性物品である。使い捨ておむつ10A及び使い捨ておむつ10Bには、排泄検出装置100が搭載される。なお、使い捨ておむつ10A及び使い捨ておむつ10Bは、オープン型(テープ型)だが、パンツ型の使い捨ておむつであってもよい。
【0020】
排泄検出装置100は、着用者Wから排泄物の排泄があったことを検出する。排泄検出装置100は、送受信装置20に対して無線信号を送信可能なアクティブ型のICタグや温度センサーなどによって構成され、使い捨ておむつ内の温度情報(環境情報)を含む無線信号を所定の周期で繰り返し送信する。なお、排泄検出装置100の詳細構成については後述する。
【0021】
また、排泄検出装置100には、それぞれの排泄検出装置100に固有である、つまり、それぞれの使い捨ておむつに固有であるおむつ識別子が付与される。これにより、それぞれの使い捨ておむつを一意に特定することができる。本実施形態では、使い捨ておむつ10Aに「ID:0001」が割り当てられ、使い捨ておむつ10Bに「ID:0002」が割り当てられる。
【0022】
送受信装置20は、排泄検出装置100から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号を所定の通信方式に従った無線信号に変換する。また、送受信装置20は、当該無線信号に含まれるおむつ識別子を認証する。本実施形態では、送受信装置20は、排泄検出装置100から受信した無線信号をPersonal Handy Phone(PHS方式)の無線信号に変換し、当該無線信号を無線基地局30に向けて送信する。
【0023】
送受信装置20は、一辺が数cm以下の直方体であり、名札状にしてベッドに取り付けたり、着用者Wに取り付けたりすることができる。なお、送受信装置20と排泄検出装置100と無線通信を維持するため、送受信装置20と排泄検出装置100とは、一定距離(数m)内に位置する必要がある。なお、送受信装置20の詳細構成については後述する。
【0024】
無線基地局30は、送受信装置20から無線信号を受信する。本実施形態では、無線基地局30は、PHS方式に従った無線信号を送受信する。無線基地局30は、有線通信ネットワーク(不図示)を介して排泄管理サーバ40に接続される。
【0025】
排泄管理サーバ40は、排尿や排便に関する環境情報(温度、湿度及び臭気など)の変化パターンを複数記憶している。排泄管理サーバ40は、送受信装置20及び無線基地局30を介して排泄検出装置100から繰り返し送信された温度情報に基づいて、着用者Wによる排尿または排便の有無を判定する。排泄管理サーバ40は、排尿または排便があったと判定した場合、その旨を示す電子メールを予め登録された携帯電話端末50やパーソナルコンピュータ60に送信する。排泄管理サーバ40が携帯電話端末50やパーソナルコンピュータ60に対してこのような電子メールを予め登録された宛先に送信することによって、当該電子メールを確認した着用者Wの保護者(介護者)は、使い捨ておむつの交換など、速やかに適切な措置を取り得る。
【0026】
(2)排泄検出装置の配設位置及び構造
図2(a)は、排泄検出装置100が埋め込まれた使い捨ておむつ10Aの平面展開図である。図2(b)は、排泄検出装置100の外観を模式的に示した図である。
【0027】
図2(a)に示すように、使い捨ておむつ10A(使い捨ておむつ10B)は、表面シート11、裏面シート12及び吸収体13を備える。表面シート11は、着用者W(生体)の肌と接触する。表面シート11は、尿などの液体を透過する資材によって構成される。裏面シート12は、着用者Wの衣類と接触する。裏面シート12は、液体を透過しない資材によって構成される。吸収体13は、尿や便などの排泄物を吸収する。吸収体13は、粉砕パルプなどの親水性繊維などによって構成される。使い捨ておむつ10Aは、公知の方法(例えば、特開2003−339771号公報)に従って製造できる。
【0028】
排泄検出装置100は、表面シート11と吸収体13との間に設けられる。なお、排泄検出装置100は、裏面シート12と吸収体13との間に設けてもよいが、尿と比較して粘度が高い便を排泄検出装置100の電極部120に確実に接触させるためには、排泄検出装置100を表面シート11と吸収体13との間に設けることが好ましい。
【0029】
排泄検出装置100は、電解質溶液保持部110、電極部120、温度センサー130及びアクティブタグ150を備える。
【0030】
電極部120は、電解質溶液保持部110の下方(吸収体13寄り)に設けられる。温度センサー130は、電解質溶液保持部110から滲出する電解質溶液と接触することを回避するため、アクティブタグ150を基準として、電極121及び電極122の反対側に設けられる。電極121及び電極122は、着用者Wからの排泄物及び電解質溶液保持部110から滲出する電解質溶液に接触可能な位置に設けられる。つまり、電極121及び電極122は、尿などの排泄前においては電解質溶液保持部110から滲出する電解質溶液と接触可能である。
【0031】
アクティブタグ150は、電極部120及び温度センサー130と接続され、電解質溶液保持部110と重ならない位置に設けられる。
【0032】
(3)排泄検出装置100の機能ブロック構成
図3は、排泄検出装置100及び送受信装置20の機能ブロック構成図である。図3に示すように、排泄検出装置100は、電解質溶液保持部110、電極部120、温度センサー130及びアクティブタグ150を備える。また、アクティブタグ150は、電源部160、制御部170、おむつ識別子記憶部175及び無線送信部180によって構成される。
【0033】
電解質溶液保持部110は、電解質を水などの溶媒に溶かした電解質溶液を保持する。例えば、電解質溶液保持部110は、塩化ナトリウム(NaCl)を約1wt.%〜5wt.%含む水溶液を用いることができる。すなわち、尿成分と同等のNaCl水溶液を電解質溶液として用いる。電解質溶液保持部110は、液体を蓄えておける袋状の容器であり、本実施形態では、電解質溶液保持部110は、ポリオレフィン系の熱可塑性フィルムによって構成される。
【0034】
電解質溶液保持部110は、電解質溶液保持部110に対する所定の操作、例えば、電解質溶液保持部110を表面シート11側から押圧することによって、電解質溶液保持部110から電解質溶液を滲出させる。すなわち、電解質溶液保持部110を押圧することによって熱可塑性フィルムによって構成されている袋状の電解質溶液保持部110が破られ、電解質溶液が電極部120周辺に滲出する。この結果、電極121及び電極122に電解質溶液が接触する。
【0035】
なお、電解質溶液保持部110は水などの溶媒のみを蓄え、電解質溶液保持部110の近傍に塩化ナトリウムの粉末を配置してもよい。この場合、塩化ナトリウムの粉末が電解質溶液保持部110から滲出した水に溶解し、電解質溶液が生成される。
【0036】
電極部120は、電解質溶液保持部110の下方(吸収体13寄り)であって、吸収体13の上に設けられる。電極部120を構成する一対の電極121及び電極122は、電源部160に接続されている。電極121及び電極122は、イオン化傾向が異なる材料を用いて構成される。本実施形態では、電極121及び電極122として、アルミニウムと銀の組合せが用いられる。すなわち、このような電極部120を有する電源部160は、電解質溶液または排泄物が電極121と電極122との間に介在することによって、いわゆるボルタの電池として機能する。ボルタの電池とは、イオン化傾向が大きい金属と小さい金属とを使用した電極を電解液に浸けることによって電子を移動させて電流を発生させる電池である。
【0037】
上述したように、電極121及び電極122は、尿などの排泄前においては電解質溶液保持部110から滲出する電解質溶液と接触可能である。このため、排泄前においては電解質溶液、また、排泄後においては電解質溶液或いは排泄物によって、電極121と電極122との間に電位差が生じ、起電力が得られる。
【0038】
温度センサー130は、着用者Wからの排泄に伴って変化する環境情報を検出する。具体的には、温度センサー130は、使い捨ておむつ10Aのうち、排泄物が排泄される領域(吸収体13が設けられている領域)の温度を環境情報として検出する。温度センサー130は、電源部160によって生成された電力によって作動する。
【0039】
本実施形態では、温度センサー130は、薄膜サーミスタ(以下、サーミスタ)が用いられる。温度センサー130には、尿や便を検出するための電極と、サーミスタに電力を供給する電極とが導電性インクで印刷された合成樹脂フィルムが用いられる。温度センサー130としては、熱容量が小さく周囲の温度の影響を受けやすいサーミスタが好ましく、例えば、石塚電子株式会社製サーミスタET−103が挙げられる。
【0040】
アクティブタグ150は、電極部120及び温度センサー130が接続されたアクティブ型のICタグである。つまり、アクティブタグ150は、他の無線通信装置などに頼らずに無線信号を送信することができる。
【0041】
電源部160は、起電回路161及び蓄電回路162を有する。起電回路161には、電極121及び電極122が接続される。起電回路161は、電極121と電極122との間に生じた電位差により起電し、発生した電力を蓄電回路162に蓄える。蓄電回路162は、コンデンサなどによって構成される。
【0042】
制御部170は、電源部160によって生成された電力によって作動する。具体的には、制御部170は、温度センサー130から出力された値に基づいて、温度情報を示すデータを生成し、生成したデータを無線送信部180に出力する。
【0043】
おむつ識別子記憶部175は、排泄検出装置100に固有である、つまり、排泄検出装置100が搭載される使い捨ておむつ10A(または使い捨ておむつ10B)に固有であるおむつ識別子(例えば、ID:0001)を記憶する。本実施形態では、おむつ識別子は、使い捨ておむつの製造ロットと対応付けられている。例えば、ID:0001のうち、
上位2桁が製造ロットと対応付けられている。なお、おむつ識別子の桁数などは、本実施形態に限定されるものでなく、必要な情報量に応じて適宜変更することができる。
【0044】
無線送信部180は、電源部160によって生成された電力によって作動する。無線送信部180は、温度センサー130によって検出された温度情報及びおむつ識別子(例えば、ID:0001)を含む無線信号を送受信装置20に送信する。本実施形態では、無線送信部180は、当該無線信号を所定の周期(例えば、10秒)で繰り返し送信する。
【0045】
なお、排泄検出装置100は、上述したように排泄前及び排泄後において、ボルタの電池として機能するため、温度センサー130、制御部170及び無線送信部180を作動させるためのバッテリーを搭載していないバッテリーレス型である。
【0046】
(4)送受信装置20の機能ブロック構成
送受信装置20は、無線受信部21、おむつ識別子認証部23、受信処理部25及び無線送信部27を備える。
【0047】
無線受信部21は、排泄検出装置100から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号に含まれる温度情報を受信処理部25に出力する。また、無線受信部21は、当該無線信号に含まれるおむつ識別子をおむつ識別子認証部23に出力する。
【0048】
おむつ識別子認証部23は、排泄検出装置100から受信した無線信号に含まれるおむつ識別子を、所定の条件に従って認証する。具体的には、おむつ識別子認証部23は、受信した無線信号の電界強度が所定の閾値よりも高い場合、当該無線信号に含まれるおむつ識別子を認証する。
【0049】
おむつ識別子認証部23は、おむつ識別子を新たに認証した場合、LED表示部23aを一定時間(例えば、10秒間)に渡って、作動時(無線信号を定期的に受信している状態)と異なる色で点灯させる。なお、LED表示部23aは、送受信装置20の表面に設けられる(図1参照)。また、おむつ識別子を新たに認証した場合におけるLED表示部23aの表示形態は、作動時と異なる色による点灯に限らず、一定時間に渡って点滅させるなど、他の形態でもよい。
【0050】
受信処理部25は、おむつ識別子及び温度情報の処理を実行する。具体的には、受信処理部25は、認証されたおむつ識別子、及び当該おむつ識別子と対応付けられている温度情報を無線送信部27から送信するために必要な処理(データフレームの構成など)を実行する。
【0051】
より具体的には、受信処理部25は、おむつ識別子認証部23によって認証されたおむつ識別子と同一の無線信号に含まれている温度情報について処理を実行する。つまり、受信処理部25は、おむつ識別子認証部23によって新たなおむつ識別子(例えば、ID:0002)が認証された場合、当該認証以降、認証されたおむつ識別子と異なるおむつ識別子(例えば、ID:0001)を含む無線信号を無視し、当該無線信号に含まれる温度情報を排泄管理サーバ40に中継しないようにする。
【0052】
なお、受信処理部25は、このような処理に代えて、おむつ識別子認証部23によって新たなおむつ識別子(例えば、ID:0002)が認証されたことを排泄管理サーバ40に通知してもよい。この場合、おむつ識別子認証部23によって新たに認証されたおむつ識別子と異なる古いおむつ識別子と対応付けられている温度情報が排泄管理サーバ40に送信され続ける可能性があるが、排泄管理サーバ40は、新たに認証されたおむつ識別子と対応付けられている温度情報のみを対象として処理を実行すればよい。
【0053】
無線送信部27は、PHS方式に従った無線信号を無線基地局30に送信する。具体的には、無線送信部27は、受信処理部25から出力されたおむつ識別子及び温度情報を含む無線信号を送信する。
【0054】
(5)排泄管理システムを用いた排泄管理方法
図4は、上述した排泄管理システム1を用いた排泄管理フローを示す。具体的には、図4は、使い捨ておむつ10Aを着用した着用者Wが排尿または排便したことが排泄検出装置100に検出され、使い捨ておむつ10Bに交換されるまでのフローを示す。ここでは、着用者Wに使い捨ておむつ10A(ID:0001)が既に着用されているものとする。
【0055】
図4に示すように、ステップS10において、被介護者などの対象者への使い捨ておむつの着用を補助する保護者や介護者(以下、補助者)は、未使用の使い捨ておむつ10B(ID:0002)を包装パッケージなどから取り出す。
【0056】
ステップS20において、補助者は、使い捨ておむつ10Bの表面シート11下方に埋め込まれた電解質溶液保持部110の部分を押圧する。補助者によるこの動作によって、袋状の電解質溶液保持部110が破られる。
【0057】
ステップS30において、電解質溶液保持部110から電解質溶液(塩化ナトリウム溶液)が電極部120周辺に滲出する。
【0058】
ステップS40において、電源部160(起電回路161)は、電解質溶液が電極121と電極122との間に介在することによって起電し、電力を発生する。
【0059】
ステップS50において、電源部160が発生した電力によって排泄検出装置100が作動を開始する。
【0060】
ステップS60において、補助者は、新しい使い捨ておむつ10Bを送受信装置20に接近させる。
【0061】
ステップS70において、補助者は、使い捨ておむつ10Bを乳幼児などの対象者に着用させる。これにより、補助者の使い捨ておむつ10Bの着用作業が完了する。
【0062】
ステップS80において、送受信装置20は、新しい使い捨ておむつ10Bのおむつ識別子を取得する。
【0063】
ステップS90において、送受信装置20は、取得したおむつ識別子を認証するか否かを判定する。具体的には、送受信装置20は、おむつ識別子を含む無線信号の電界強度が所定の閾値よりも高い場合、当該無線信号に含まれるおむつ識別子を認証する。つまり、補助者がステップS60の処理において新しい使い捨ておむつ10Bを送受信装置20に接近させているため、送受信装置20は、通常の状態(使い捨ておむつと送受信装置20との距離が離れた状態(数m程度))よりも高い電界強度の無線信号を受信することができる。これにより、送受信装置20は、新しい使い捨ておむつ10Bに交換されることを判定できる。
【0064】
また、送受信装置20は、これまでおむつ識別子記憶部175に記憶されていたID:0001をID:0002に更新し、以降ID:0001と対応付けられている温度情報は送信せずに、ID:0002と対応付けられている温度情報のみを排泄管理サーバ40に送信する。
【0065】
ステップS100において、無線送信部180は、温度センサー130が取得した温度情報を定期的に排泄管理サーバ40に送信する。具体的には、無線送信部180は、上述したように送受信装置20及び無線基地局30を介して温度情報を排泄管理サーバ40に送信する。
【0066】
ステップS110において、排泄管理サーバ40は、受信した温度情報に基づいて、温度変化のパターンが予め記憶されたパターンと合致するか否かを判定する。本実施形態では、排泄管理サーバ40は、排尿に伴う温度変化のパターン、及び排便に伴う温度変化のパターンを記憶している。
【0067】
例えば、排便時と排尿時の温度変化パターンを比較すると、排尿時は、排便時よりも温度の立ち上がりが鋭く、温度変化の収束も早い。一方、排便の場合、排便時の温度の立ち上がりが遅く、温度変化の収束も遅い。排泄管理サーバ40は、このような温度変化パターンの相違に基づいて、排尿と排便とを識別する。
【0068】
受信した温度情報に基づく温度変化のパターンが排尿または排便の温度変化パターンと合致した場合(ステップS110のYES)、ステップS120において、排泄管理サーバ40は、排尿または排便があったことを示す電子メールを予め登録された宛先(携帯電話端末50やパーソナルコンピュータ60)に送信する。
【0069】
以上説明した排泄管理システム1によれば、排泄検出装置100から受信した無線信号に含まれるおむつ識別子が所定の条件に従って認証される。具体的には、使い捨ておむつの着用を補助する補助者が新しい使い捨ておむつを送受信装置20に接近させることによって、送受信装置20が受信する無線信号の電界強度が所定の閾値よりも高くなると、新しい使い捨ておむつのおむつ識別子が認証される。さらに、送受信装置20では、認証されたおむつ識別子、及び当該おむつ識別子と対応付けられている温度情報の処理が実行される。
【0070】
このため、補助者が新しい使い捨ておむつを送受信装置20に接近させるだけの極めて簡単な処置のみによって、使用済みの使い捨ておむつから送信される無線信号によって排泄があったと誤認識する可能性を確実に低減できる。
【0071】
また、おむつ識別子によって使い捨ておむつを個別に認証しているため、使い捨ておむつ毎の使用時間や排泄タイミングなどの実態を個別に把握でき、製品開発に資する情報を取得できる。
【0072】
本実施形態では、おむつ識別子は、使い捨ておむつの製造ロットと対応付けられている。このため、使い捨ておむつのトレーサビリティなどの精度を向上できる。
【0073】
本実施形態では、電極部120は、着用者Wの排泄物及び電解質溶液保持部110によって保持されていた電解質溶液に接触可能な位置に設けられる。さらに、電極部120は、着用者Wの排泄前においても電解質溶液と接触可能である。このため、排尿前や排便前においても電源部160による起電が可能となる。
【0074】
(6)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0075】
例えば、上述した実施形態では、送受信装置20が無線信号に含まれるおむつ識別子を認証したが、通信状態の悪化などによって、新しい使い捨ておむつを送受信装置20に接近させてもおむつ識別子を取得できない場合には、補助者が送受信装置20に対して直接おむつ識別子を入力するようにしてもよい。この場合、使い捨ておむつの適当な位置におむつ識別子が表示されるとともに、送受信装置20がおむつ識別子の入力部(テンキーなど)を備えればよい。
【0076】
上述した実施形態では、送受信装置20が温度情報を排泄管理サーバ40に中継する形態としたが、送受信装置20が、排泄管理サーバ40に中継することなく温度情報を管理するようにしてもよい。
【0077】
上述した実施形態では、無線送信部180を用いて温度情報を送信するようにしたが、無線送信部180による温度情報の送信に代えて、ブザーなどの報知器を作動させるようにしても構わない。
【0078】
上述した実施形態では、電解質溶液保持部110を表面シート11側から押圧することによって、電解質溶液保持部110が破れ、電解質溶液保持部110から電解質溶液を滲出させるようにしたが、押圧と異なる操作によって電解質溶液を滲出させるようにしてもよい。例えば、電解質溶液保持部110に連結された糸状部材を引っ張ることによって電解質溶液保持部110が破れるようにしてもよい。
【0079】
また、排泄検出装置100は、おむつに限らず、生理用ナプキンなどの吸収性物品に搭載してもよい。さらに、吸収性物品は、人間用に限らず、ペットなどの動物用でも構わない。
【0080】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0081】
1…排泄管理システム、10A,10B…使い捨ておむつ、11…表面シート、12…裏面シート、13…吸収体、20…送受信装置、21…無線受信部、23…おむつ識別子認証部、23a…LED表示部、25…受信処理部、27…無線送信部、30…無線基地局、40…排泄管理サーバ、50…携帯電話端末、60…パーソナルコンピュータ、100…排泄検出装置、110…電解質溶液保持部、120…電極部、121,122…電極、130…温度センサー、150…アクティブタグ、160…電源部、161…起電回路、162…蓄電回路、170…制御部、175…おむつ識別子記憶部、180…無線送信部、W…着用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨ておむつに搭載され、前記使い捨ておむつを装着した生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置と、
前記排泄検出装置から送信された無線信号を受信する受信装置と
を含む排泄管理システムであって、
前記排泄検出装置は、
イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極を有する電源部と、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報を検出する温度センサーと、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記温度センサーによって検出された前記環境情報及び前記使い捨ておむつに固有なおむつ識別子を含む無線信号を前記受信装置に送信する無線送信部と
を備え、
前記受信装置は、
前記排泄検出装置から受信した前記無線信号に含まれる前記おむつ識別子を、所定の条件に従って認証する識別子認証部と、
前記識別子認証部によって認証された前記おむつ識別子、及び認証された前記おむつ識別子と対応付けられている前記環境情報の処理を実行する受信処理部と
を備える排泄管理システム。
【請求項2】
前記識別子認証部は、前記無線信号の電界強度が所定の閾値よりも高い場合、前記おむつ識別子を認証する請求項1に記載の排泄管理システム。
【請求項3】
前記おむつ識別子は、前記使い捨ておむつの製造ロットと対応付けられている請求項1または2に記載の排泄管理システム。
【請求項4】
使い捨ておむつに搭載され、前記使い捨ておむつを装着した生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置であって、
イオン化傾向が異なる材料を用いて構成された電極を有する電源部と、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記生体からの排泄に伴って変化する環境情報を検出する温度センサーと、
前記電源部によって生成された電力によって作動し、前記温度センサーによって検出された前記環境情報及び前記使い捨ておむつに固有なおむつ識別子を含む無線信号を前記受信装置に送信する無線送信部と
を備える排泄検出装置。
【請求項5】
使い捨ておむつに搭載され、前記使い捨ておむつを装着した生体から排泄物の排泄があったことを検出する排泄検出装置から送信された無線信号を受信する受信装置であって、
前記排泄検出装置から受信した前記無線信号に含まれ、前記使い捨ておむつに固有なおむつ識別子を、所定の条件に従って認証する識別子認証部と、
前記識別子認証部によって認証された前記おむつ識別子、及び認証された前記おむつ識別子と対応付けられている前記環境情報の処理を実行する受信処理部と
を備える受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−147505(P2011−147505A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9305(P2010−9305)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】