説明

排泥ピット

【課題】 地中から泥土が排出される地盤改良工事において、地表面を掘削することなく排泥ピットを形成することにより、手間と費用を低減して迅速な工事を行うと共に、工事箇所が泥土で汚れる等の不都合を解消する。
【解決手段】 排泥ピット10は、箱状の本体部20と、地盤改良機のロッド(例えば、多孔管)を挿通すると共に地盤から噴出する泥土を通過させるための挿通孔40と、挿通孔40から下方へ向かって突出した突出管50と、泥土を排出するための掃出口60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良工事に伴い地中から排出される泥土を貯留するための排泥ピットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤改良工事では、改良対象となる地盤の地表面を掘削して排泥ピットを形成していた(特許文献1参照)。特許文献1に記載された地盤改良工法は、地盤中に固化材を注入して地盤改良工事や改善工事を行うための工法であり、改良対象となる地盤表面を掘削して排泥ピットを形成し、この排泥ピットを介して削孔を掘削切削する。そして、削孔にロッドを挿入し、ロッドの先端から固化材、高圧水、圧縮空気等を噴出させる。これに伴い、地盤中の排泥が削孔を介して地表へ噴出し、排泥ピット内へ溜まるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−115441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既に供用されている道路等において地盤改良工事を行う際には、地表面を掘削して排泥ピットを形成することができない場合がある。すなわち、既に供用されている道路等の地表面を掘削した場合には、地盤改良工事を行った後に掘削箇所を埋め戻す必要があり、迅速な工事を行うという要請に応えることができない。このため、排泥ピットを用いずに、地中から排出される泥土を処理しなければならず、工事箇所が泥土で汚れてしまう等、種々の不都合があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、地中から泥土が排出されるような地盤改良工事において、地表面を掘削することなく排泥ピットを形成することにより、手間と費用を低減して迅速な工事を行うと共に、工事箇所が泥土で汚れる等の不都合を解消することが可能な排泥ピットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排泥ピットは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の排泥ピットは、地盤改良工事に伴い地中から排出される泥土を貯留するための排泥ピットであって、箱状の本体部と、地盤改良機のロッドを挿通すると共に地盤から噴出する泥土を通過させるための挿通孔と、挿通孔から下方へ向かって突出した突出管と、泥土を排出するための掃出口と、を備えている。
【0007】
そして、挿通孔は、本体部の下面に開設され、突出管は、地盤中へ挿入される口元管の内部に挿通可能な外径を有し、掃出口は、本体部の側面に設けられて、泥土を貯留する状態では掃出口が閉塞されると共に、泥土を排出する状態では掃出口が開放される、ことを特徴とするものである。
【0008】
また、掃出口に、掃出口を開閉するためのシャッター部材を取り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排泥ピットは、工事対象となる地盤の地表面に箱状の本体部を設置し、挿通孔を介して地盤中から吹き出す泥土を本体部に貯留する。そして、本体部に泥土が溜まったら、掃出口を閉塞しているシャッター部材を動作させて掃出口を開放し、本体部から泥土を掃き出す。
【0010】
したがって、既に供用されている道路等のように地表面を掘削することが好ましくない場合であっても、地表面を掘削することなく排泥ピットを形成することができる。このため、工事に要する手間と費用を低減して迅速な工事を行うことができると共に、工事箇所が泥土で汚れる等の不都合を解消することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<排泥ピット>
以下、図面を参照して、本発明の排泥ピットの実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る排泥ピットを示すもので、図1は排泥ピットの斜視図、図2(a)は排泥ピットの平面図、図2(b)は排泥ピットの正面図、図2(c)は排泥ピットの右側面図である。
【0012】
本発明の実施形態に係る排泥ピット10は、地中から泥土が排出される地盤改良工事において、地中から排出される泥土を貯留するために使用されるものである。この排泥ピット10は、図1及び図2に示すように、箱状の本体部20と、地盤改良機の下方に対向する対向部30と、地盤改良機のロッド(例えば多孔管)を挿通すると共に地盤から噴出する泥土を通過させるための挿通孔40と、挿通孔40から下方へ向かって突出した突出管50と、泥土を排出するための掃出口60と、を備えている。
【0013】
本体部20は、上面が開放した箱状の部材で、例えば鋼板により形成されており、内部には本体部20を補強するための補強部材70が取り付けられている。この補強部材70は、例えばH型鋼等からなる。本体部20の上部の四隅には、排泥ピット10を吊り上げる際に使用する係止部80が設けられている。この係止部80は、工事対象箇所に排泥ピット10を設置したり、工事対象箇所から排泥ピット10を移動させたりする際に、吊り下げ用の鋼製ワイヤー等を取り付けるために使用される。
【0014】
対向部30は、本体部20の上面に設けられており、地盤改良機の下方に対向するようになっている。本実施形態では、挿通孔40を開設した部分の上方のみを対向部30として地盤改良機の下方に対向させ、掃出口60を設けた側の本体部20の上面は開放状態となっている。なお、本体部20に対する対向部30の位置や大きさは、地盤改良機の形状、大きさ等に応じて適宜変更することができる。
【0015】
挿通孔40は、本体部20の下面に開設されており、この挿通孔40から下方へ向かって円筒状の突出管50が設けられている。突出管50は、地盤中へ挿入される口元管90の内部に挿通可能な外径を有しており、地盤中に埋設される口元管90内に挿し込まれる。具体的には、例えば300mm程度の内径を有する口元管90を使用する場合には、255mm程度の外形を有する突出管50を用いることになる。なお、挿通孔40と口元管90の上部との間には、スポンジゴム等からなるパッキング(図示せず)を取り付け、挿通孔40と口元管90との隙間を塞ぐことが好ましい。
【0016】
掃出口60は、本体部20の側面に設けられており、泥土を貯留する状態では掃出口60が閉塞されると共に、泥土を排出する状態では掃出口60が開放されるようになっている。また、掃出口60には、本体部20の外方へ向かって突出した受け部材100が設けられている。この受け部材100は、掃出口60から泥土を掃き出す際に、本体部20の周辺に泥土がこぼれることを防止するための部材である。
【0017】
本実施形態では、掃出口60に、掃出口60を開閉するためのシャッター板110を取り付けている。このシャッター板110により、掃出口60を開放状態又は閉塞状態とすることができる。
シャッター板110は、例えば、鋼板からなり、上部に操作取っ手111が取り付けられている。本体部20の内面であって掃出口60の周囲には、シャッター板110を上下にスライド可能に支持するためのスライド支持部材120が設けられている。シャッター板110により掃出口60を閉塞するには、スライド支持部材120の上部からシャッター板110を下方に向かってスライドさせればよい。一方、掃出口60を開放するには、シャッター板110の操作取っ手111を持って、スライド支持部材120の上部へ向かってシャッター板110を引き上げればよい。
なお、シャッター板110及びスライド支持部材120が、シャッター部材として機能する。
【0018】
<地盤改良機>
本発明で用いる地盤改良機は、どのような構造であってもよいが、例えば、工事対象地盤に削孔した後、噴射ロッドを挿入し、噴射ロッドを前進後退移動させつつ高圧ジェット噴射により硬化材を周囲地盤に対して噴射し、円柱状の改良体を造成するような装置を用いることができる。この地盤改良機は、工事現場や工事対象となる地盤の状況に応じて、適切なものが使用される。
【0019】
<排泥ピットを用いた地盤改良工事>
次に、本発明の実施形態に係る排泥ピットを用いた地盤改良工事について説明する。図3は本発明の実施形態に係る排泥ピットを工事対象箇所に取り付けた状態を示す模式図、図4は地盤改良工事終了後の復旧イメージを示す模式図である。
【0020】
本発明の実施形態に係る排泥ピット10を用いて地盤改良工事を行うには、まず、工事対象となる地盤200中に口元管90を埋め込み、地表面に若干突出した口元管90の上部の周辺をコーキング材によりコーキングする。なお、必要に応じて、工事対象箇所に鋼矢板210を施工する等の事前工事を行う。
【0021】
続いて、排泥ピット10を設置する地表面に防水シート220を敷き詰めて、2次ピットを設置する。この際、口元管90の上部は、2次ピットから上方へ向かって突出した状態となっている。なお、2次ピットを複数の口元管90に共通して設けることにより、工事の効率化を図ることができる。
【0022】
続いて、口元管90内に突出管50が位置するようにして、工事対象箇所に排泥ピット10を設置し、対向部30の上方に地盤改良機230を対向させる。この際、排泥ピット10の周囲の適宜箇所に土台240となるH型鋼等を設置し、この土台240により地盤改良機230を下方から支持する。
【0023】
排泥ピット10の設置が完了すると、地盤改良機230の多孔管231を地盤200中に挿入して、地中に改良材等を注入することにより地盤改良工事を行う。この際、地中から排出される泥土250は、口元管90を介して排泥ピット10内に貯留される。排泥ピット10内にはサンドポンプ260が設置されており、このサンドポンプ260により流動性の泥土250が排泥ピット10の外に排出される。また、サンドポンプ260で排出することができなかった泥土250は、シャッター板110を引き上げて開放された掃出口60から掃き出される。
【0024】
1箇所の地盤改良が終了すると、図4に示すように、改良体300の上部に残された空隙と口元管90内にコンクリート等の充填材310を充填する。さらに、口元管90の上部を撤去して、地表部分にアスファルト320を充填して舗装盤を修復する。
【0025】
<他の実施形態>
本発明の排泥ピット10は、図示したものに限定されず、本体部20、対向部30、挿通孔40、突出管50、掃出口60の大きさ、形状、位置等は、工事対象となる現場や地盤改良工法の相違に応じて適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る排泥ピットの斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る排泥ピットの平面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)。
【図3】本発明の実施形態に係る排泥ピットを工事対象箇所に取り付けた状態を示す模式図。
【図4】地盤改良工事終了後の復旧イメージを示す模式図。
【符号の説明】
【0027】
10 排泥ピット
20 本体部
30 対向部
40 挿通孔
50 突出管
60 掃出口
70 補強部材
80 係止部
90 口元管
100 受け部材
110 シャッター板
111 操作取っ手
120 スライド支持部材
200 地盤
210 鋼矢板
220 防水シート
230 地盤改良機
231 多孔管
240 土台
250 泥土
260 サンドポンプ
300 改良体
310 充填材
320 アスファルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良工事に伴い地中から排出される泥土を貯留するための排泥ピットであって、
箱状の本体部と、地盤改良機のロッドを挿通すると共に地盤から噴出する泥土を通過させるための挿通孔と、挿通孔から下方へ向かって突出した突出管と、泥土を排出するための掃出口と、を備え、
前記挿通孔は、本体部の下面に開設され、
前記突出管は、地盤中へ挿入される口元管の内部に挿通可能な外径を有し、
前記掃出口は、本体部の側面に設けられて、泥土を貯留する状態では閉塞されると共に、泥土を排出する状態では開放される、
ことを特徴とする排泥ピット。
【請求項2】
前記掃出口に、掃出口を開閉するためのシャッター部材を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の排泥ピット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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