説明

排熱ボイラー設備付きドライフィルム製造装置

【課題】ドライフィルムの製造プロセスにおいて、触媒酸化設備の排出口の排熱の再利用を可能にすること。
【解決手段】溶剤を含む感光性樹脂組成物溶液をキャリアフィルムに塗工するための塗工設備1、該塗工された感光性樹脂組成物溶液に含まれる溶剤を乾燥させるための乾燥設備2、該乾燥設備から発生する排ガス中の該溶剤成分を酸化により処理するための触媒酸化設備3、及び該触媒酸化設備の排出口の排熱を利用する排熱ボイラー設備4、を含むドライフィルム製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱ボイラー設備付きドライフィルムレジスト(以下、単にドライフィルムともいう。)の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物として、例えば、電子回路用プリント基板に使用されるドライフィルムがある。ドライフィルムは製造段階で、感光性樹脂組成物であるフォトレジストをPET(ポリエチレンテレフタレート;ポリエステル)等のキャリアフィルムに担持する工程を経る。この際、感光性樹脂組成物の原料を溶剤に溶解する必要があるが、溶剤を含む感光性樹脂組成物はキャリアフィルムに担持され、その後乾燥される際に、溶剤が揮発し、排気ガスが発生する。その排気ガスの濃度は通常約100ppmから数%となるため、通常環境汚染を防止するため、排ガス処理設備を設置しており、排ガス処理設備としては、一般に、排ガスを燃焼による酸化処理する触媒酸化設備が使用されている。
【0003】
しかしながら、従来のドライフィルムの製造装置では、触媒酸化設備から排出される排熱は再利用されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ドライフィルムの製造プロセスにおいて、触媒酸化設備の排出口の排熱を再利用することを可能にする新規ドライフィルム製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、以下の構成の装置によりかかる課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりのものである。
【0006】
[1]以下の設備:
溶剤を含む感光性樹脂組成物溶液をキャリアフィルムに塗工するための塗工設備、
該塗工された感光性樹脂組成物溶液に含まれる溶剤を乾燥させるための乾燥設備、
該乾燥設備から発生する排ガス中の該溶剤成分を酸化により処理するための触媒酸化設備、及び
該触媒酸化設備の排出口の排熱を利用するための排熱ボイラー設備、
を含むドライフィルム製造装置。
【0007】
[2]前記触媒酸化設備は、排熱の排出口を2つ以上有する、前記[1]に記載のドライフィルム製造装置。
【0008】
[3]前記触媒酸化設備の一方の排出出口の排熱が、500℃以上である、前記[2]に記載のドライフィルム製造装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ドライフィルムの製造プロセスにおいて、触媒酸化設備の排出口の排熱の再利用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のドライフィルムの製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に、本発明のドライフィルム製造装置の一例を示す。
図1中、符号1は溶剤を含む感光性樹脂組成物溶液をキャリアフィルムに塗工するための塗工設備、符号2は塗工された感光性樹脂組成物溶液に含まれる溶剤を乾燥させるための乾燥設備、符号3は乾燥設備から発生する溶剤成分含有排ガス、符号4は乾燥設備から発生する排ガス中の溶剤成分を酸化により処理するための触媒酸化設備、符号5は触媒酸化設備から排出された排熱1、符号6は触媒酸化設備から排出された複数の排熱の内、排熱1よりも温度の低い排熱2、符号7は排熱1を利用するための排熱ボイラー設備、符号8は排熱ボイラー設備によって熱せられる前の水、符号9は排熱ボイラー設備によって熱せられた水蒸気、符号10は空気を水蒸気で加熱する熱交換器、符号11は熱交器に送り込まれる空気、そして符号12は熱交換器から送り出される熱風である。
【0012】
図1に示すドライフィルムの製造装置は、排熱ボイラー設備によって熱せられた水蒸気を乾燥設備において再利用するプロセスであるが、乾燥設備以外の設備においてもかかる水蒸気の利用は可能である。
【0013】
感光性樹脂組成物溶液は、塗工設備において、PET(ポリエチレンテレフタレート;ポリエステル)等のキャリアフィルムの表面に塗工される。塗工設備によって、キャリアフィルムに塗工された溶剤含有感光性樹脂組成物は、続く乾燥設備によって、その中に含まれる溶剤が揮発し、キャリアフィルムに感光性粘着組成物のみが残る。乾燥設備としては、溶剤が揮発するものであればいずれでもよく、例えば、ドライヤーが設置されていてもよい。
【0014】
本発明において、乾燥設備によって揮発した溶剤を含む排ガスは、触媒酸化設備に供給される。触媒酸化装置としては、白金触媒等を利用して脱着ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する触媒燃焼装置、白金触媒等と蓄熱体とを組み合わせて効率的に脱着ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する蓄熱式触媒燃焼装置等を使用することが可能である。ランニングコストの観点からは、触媒燃焼装置が好ましい。また、触媒酸化装置は、排出される排熱の排出口を2つ以上有することが好ましい。2つ以上有することにより、一方の排出口から排出される排熱の温度を500℃以上に設定することができ、効率よく排熱ボイラーにより水蒸気を製造することが可能になる。ここで、他方の排出口から排出される500℃未満の排熱は、例えば、温水の製造に利用することができる。
【0015】
本発明では、触媒酸化装置により排出される排熱が排熱ボイラー設備において再利用される。ここでの排熱ボイラー設備は利用効率をさらに高めるため、ヒートパイプやサーモコイル等を併用することが可能である。
【0016】
ドライフィルムに含まれる感光性樹脂組成物としては、(A)カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性高分子15〜70質量%、(B)付加重合性モノマー15〜60質量%、及び(C)光重合開始剤0.01〜10質量%を含有することが好ましい。
(A)成分のアルカリ可溶性高分子は、可とう性の観点から、ビニル共重合体が好ましく、さらに現像性の観点から、カルボン酸含有ビニル共重合体が好ましい。ここで、カルボン酸含有ビニル共重合体とは、α,β−不飽和カルボン酸の中から選ばれる少なくとも一種の第1単量体と、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドとその窒素上の水素をアルキル基又はアルコキシ基に置換した化合物、スチレン及びスチレン誘導体、(メタ)アクリロニトリル、及び(メタ)アクリル酸グリシジルの中から選ばれる少なくとも一種の第2単量体をビニル共重合して得られる化合物である。
【0017】
カルボン酸含有ビニル共重合体に用いられる第1単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸半エステル等が挙げられ、それぞれ単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせてもよい。カルボン酸含有ビニル共重合体における第1単量体の割合は、15質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上35質量%以下である。アルカリ現像性を保持させるため、第1単量体の割合は15質量%以上であることが好ましく、カルボン酸ビニル共重合体の溶解度の観点から40質量%以下であることが好ましい。カルボン酸含有ビニル共重合体に用いられる第2単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n―ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられ、それぞれ単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
【0018】
カルボン酸含有ビニル共重合体における第2単量体の割合は、60質量%以上85質量%以下が好ましく、より好ましくは65質量%以上80質量%以下である。カルボン酸含有ビニル共重合体は剥離性とはんだ耐性のバランスの観点から、異なる重量平均分子量を有するものを用いることが好ましい。さらに感光性樹脂は、(A)カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性高分子を、感光性樹脂全質量基準で15〜70質量%用いることが好ましい。
【0019】
(B)成分は公知の付加重合性モノマーを用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシド変性ジアクリレート、多価アルコールのエチレンオキシド変性ポリ(メタ)アクリレートなどを一種類又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。配合量は感光性樹脂の全質量基準で15質量%以上60質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。感光性樹脂層を十分に硬化させ、レジストとしての強度を維持するために、上記の含有量は、15質量%以上であることが好ましい。また、硬化後のクラックを防止するために、上記の付加重合性モノマーの総含有量は60質量%以下が好ましい。
【0020】
(C)成分は公知の光重合開始剤を用いることができる。ベンゾフェノン誘導体、ベンジルケタール誘導体、チオキサントン誘導体、アリールイミダゾール誘導体などを用いることができる。密着性の観点から、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が好ましい。光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂の全質量基準で0.01質量%以上20質量%以下で含まれることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。すなわち、十分な感度を得るためには0.01質量%以上が好ましく、感光性樹脂層の底の部分を十分に硬化させるためには、20質量%以下であることが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
図1に示すドライフィルム製造装置と同様のシステムによって実験を行なった。感光性樹脂組成物として、(A)カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性高分子、(B)付加重合性モノマー、及び(C)光重合開始剤を含む、メチルエチルケトンを含む感光性樹脂溶液を作製し、キャリアフィルムへ塗工した。
乾燥設備から出る排ガスの、排ガス処理装置としては、触媒酸化設備を使用した。
実験の結果、本発明の排熱ボイラー付きドライフィルム製造装置を使用した場合、排熱ボイラー設備を用いない場合に比べ、使用蒸気流量は約半分となった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、ドライフィルムの製造プロセスにおいて触媒酸化設備の排出口の排熱を再利用することを可能にするため、ドライフィルムの製造産業における利用価値は高い。
【符号の説明】
【0023】
1 塗工設備
2 乾燥設備
3 溶剤成分含有排ガス
4 触媒酸化設備
5 排熱1
6 排熱2
7 排熱ボイラー設備
8 水
9 水蒸気
10 熱交換器
11 空気
12 熱風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の設備:
溶剤を含む感光性樹脂組成物溶液をキャリアフィルムに塗工するための塗工設備、
該塗工された感光性樹脂組成物溶液に含まれる溶剤を乾燥させるための乾燥設備、
該乾燥設備から発生する排ガス中の該溶剤成分を酸化により処理するための触媒酸化設備、及び
該触媒酸化設備の排出口の排熱を利用するための排熱ボイラー設備、
を含むドライフィルム製造装置。
【請求項2】
前記触媒酸化設備は、排熱の排出口を2つ以上有する、請求項1に記載のドライフィルム製造装置。
【請求項3】
前記触媒酸化設備の一方の排出口の排熱が、500℃以上である、請求項2に記載のドライフィルム製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−220539(P2012−220539A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82990(P2011−82990)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】