説明

排熱利用装置及び運転方法

【課題】従来の排熱利用装置に、一つの改善された、または、少なくとも一つの他の実施形態を提案すること
【解決手段】特に、車両の燃焼機関(3)用排熱利用装置であって、作業媒体が循環する排熱利用回路(2)、上記作業媒体を蒸発するために上記排熱利用回路(2)内に配置され、上記燃焼機関(3)から排ガスが供給可能な蒸発器(6)、上記蒸発器(6)の下流において上記排熱利用回路(2)内に配置され、上記作業媒体を膨張させる膨張機(7)、上記膨張機(7)の下流において上記排熱利用回路(2)内に配置され、上記作業媒体を凝縮させる凝縮器(8)、上記凝縮器(8)の下流において上記排熱利用回路(2)内に配置され、上記排熱利用回路(2)内の作業媒体を駆動する搬送装置(9)、および蓄熱器(12)を備え、上記蓄熱器(12)は、上記排熱利用回路(2)に内蔵され、上記作業媒体により供給可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、モータ車の燃焼機関用であって、請求項1の上位概念の特徴を有する排熱利用装置に関する。本発明は、また、対応する運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DE 10 2007 033 611A1により、排熱利用装置が知られている。これは、作業媒体が循環する排熱利用回路を備えている。
【0003】
上記作業媒体の流れ方向において、上記排熱利用回路内に、上記作業媒体を蒸発させるとともに、上記燃焼機関から排ガスが供給可能な蒸発器、上記作業媒体を膨張させるための膨張機、上記作業媒体を凝縮させるための凝縮器、ならびに、上記作業媒体を駆動するための搬送装置が連続して配置されている。さらに、上記既知の排熱利用装置では、蓄熱器が配置され、これは、上記蒸発器に通じている排ガス通路に内蔵されている。
【0004】
バルブ装置によって、上記排ガスの利用可能な熱エネルギを表す値に基づいて、排ガス流は、上記蓄熱器および上記蒸発器に分割される。
【0005】
例えば、基本的に、上記蒸発器には排ガスが供給される。利用可能な排ガス熱が蒸発に必要な熱よりも多い場合は、排ガス部分流を、上記蓄熱器から供給することが可能である。これに対して、利用可能な排ガス熱が蒸発に必要な熱よりも少なく、上記蓄熱器の温度が上記排ガスの温度より高い場合は、上記排ガス流は、先ず、上記蓄熱器を介し、その後、蒸発器に搬送することが可能である。上記既知の排熱利用装置では、このように、燃焼機関の排ガスシステムに内蔵された蓄熱器は、必要に応じて、上記排ガスの予熱に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ公報10 2007 033 611
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題に対応し、冒頭で述べたタイプの排熱利用装置に、一つの改善された、または、少なくとも一つの他の実施形態を提案するものであって、特に、上記排熱利用回路の利用価値が向上した、または、機能性が追加されたことを特徴としている。加えて、または、代わりに、上記排熱利用装置を備えた燃焼機関のエネルギー効率が向上するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上述の問題は独立請求項の主題によって解決される。好適な実施形態は従属請求項の主題である。
【0009】
上記問題を解決するために本発明の排熱利用装置は排ガスラインが熱需要段階、つまり、熱需要が大きな運転段階を有している場合、排熱利用回路の熱容量を、利用する上記排ガスラインに設定するという、基本的な考えに本発明は基づいている。そのような熱需要段階は、例えば、燃焼機関の冷起動段階、または、エンジンの運転休止時間、特に、ハイブリッド利用、または、小さなエンジン負荷での上記燃焼機関の運転状態、または、停止・発進運転において存在する。また、本発明は、上記排熱利用回路に蓄熱器を内蔵し、これに、上記排熱利用回路の作業媒体から熱を供給可能とすることを提案している。つまり、上記蓄熱器は、本発明では、上記排熱利用回路に直接内蔵され、これによって、上記排熱利用回路の蓄熱容量を、全体的に、大幅に向上させることが可能である。これにより、特に、上記燃焼機関の冷起動中に、上記排ガス利用回路の熱を、例えば、上記作業媒体を介して、上記蒸発器に供給し、かつ、上記蒸発器を介して、上記蒸発器の上を貫流する排ガスに伝達させることが可能である。これにより、上記蒸発器下流の上記排ガスラインに配置された排ガスシステムの部品は加熱され、例えば、上記冷起動段階で、より迅速に、運転温度に到達する。
【0010】
また、上記蓄熱器を、上記排熱利用回路に内蔵することによって、特に、上記排ガスが、上記蒸発器にも、上記蓄熱器にもいつでも貫流する必要がある、特別な実施形態が達成される。これにより、排ガスシステム内の排ガス逆圧が大幅に減少し、上記燃焼機関のエネルギー効率が向上する。
【0011】
好適な実施形態では、上記蓄熱器は、往路および復路を介して、上記排熱利用回路に接続することが可能である。これによって、上記蓄熱器に、上記作業媒体内の利用可能な熱に応じて蓄熱するか、上記作業媒体の熱需要に応じて、上記蓄熱器を介して、上記作業媒体を加熱する。実用的には、順方向バルブ装置を、上記往路を制御するために配置することが可能である。加えて、または、代わりに、逆方向バルブ装置を、上記復路を制御するために配置することが可能である。
【0012】
特に実用的には、上記往路は、上記蒸発器と上記膨張機との間で、上記排ガス利用回路に接続され、熱くて、過熱された、蒸気状の作業媒体を、上記蓄熱器の蓄熱に利用することが可能である。実用的には、上記復路は、上記膨張機と上記凝縮器との間で、上記排熱利用回路に接続される。この場合、上記蓄熱器は、完全に、上記排熱利用回路の蒸気側に配置され、これは内蔵するのを容易にする。
【0013】
好適な実施形態では、上記凝縮器をバイパスするための凝縮器バイパスが配置され、上記凝縮器バイパスは、一方では、上記膨張機と上記凝縮器の間において、他方では、上記凝縮器と上記搬送装置の間において、上記排熱利用回路に接続されている。上記蒸発器を介して、熱が上記排ガスに伝達される場合、この凝縮器バイパスを介して上記凝縮器はバイパスされ、これは上記排ガス利用回路内で、放熱器を表している。この運転状態の間、熱は、上記排熱利用回路から、上記排ガスシステムの排ガスに伝達され、上記蒸発器は、上記排熱利用回路の放熱器として利用される。実用的には、バイパス・バルブを、上記凝縮器バイパスを制御するために配置することが可能である。この場合、特に実用的な実施形態では、上記バイパス・バルブは、前述の復路バルブ装置に内蔵されている。これにより、特にコンパクトな設計が得られる。
【0014】
他の好適な実施形態では、上記凝縮器は、冷却回路に熱伝達的に接続され、また、上記蒸発器に供給するための排ガスを生成する燃焼機関に、熱伝達的に接続されている。この場合、特に、冷起動段階において、上記燃焼機関を、より迅速に、運転温度にまで上昇させる場合、熱は、上記凝縮器を介して、上記冷却回路に供給され、その結果、上記冷却回路を介して、上記燃焼機関を加熱することが可能である。
【0015】
他の好適な実施形態では、上記蒸発器を排ガス側でバイパスするための蒸発器バイパスを配置することが可能である。これにより、上記排ガス利用装置が必要とされない運転段階では、排ガス逆圧を、上記蒸発器をバイパスすることによって減少させることが可能である。
【0016】
他の好適な実施形態では、上記蓄熱器は、相変換材で作動する潜熱蓄熱器として形成することが可能である。そのような潜熱蓄熱器は、比較的高い蓄熱容量を特徴としている。各相変換材の組合わせを目的に合わせて選択することにより、所望の相変換温度を調整することが可能であり、これは、各使用において特に適している。特に好適な実施形態では、相変換材内の圧力を調整するための圧力調整装置が配置されている。相変換材内の圧力変化によって、相変換温度が変化し、これによって、蓄積能力が変化する。
【0017】
他の実施形態では、上記作業媒体内の圧力を調整するための、圧力調整装置を配置することが可能である。これにより、上記排ガスを加熱するために、上記排熱利用回路が利用される運転状態において、上記作業媒体内の圧力は、この運転状態において、蒸気相を一時的に除去するように調整され、その結果、上記排熱利用回路全体において、液状の作業媒体のみ循環する。これにより、熱伝達が大幅に改善する。
【0018】
他の好適な実施形態では、蓄圧器を配置することが可能で、これは、特に、上記作業媒体を貯蔵するのにも利用することが可能である。上記蓄圧器により、上記作業媒体内の圧力変動を吸収することが可能である。上記蓄圧器は、蒸気・ガス貯蔵器として形成し、上記排熱利用回路のガス側で、この排熱利用回路に接続可能である。同様に、上記蓄圧器は、液体・ガス貯蔵器、または、油空圧蓄圧器として形成することが可能で、実用的には、上記排熱利用回路の液体側に配置され、かつ、この排熱利用回路に接続される。実用的には、上記蓄圧器は、上記蓄熱器に内蔵することが可能である。
【0019】
他の好適な実施形態では、上記蓄熱器は、上記蒸発器に内蔵することが可能である。つまり、この場合、上記蒸発器は、蓄熱器として形成されている。これにより、上記蒸発器は、付加的な機能性を保持することになる。同時に、コンパクトな設計で、高い機能密度が得られる。特に好適な実施形態では、上記蓄熱器が上記排ガスから直接供給されるように、上記蓄熱器を上記蒸発器に内蔵することが可能である。その上、実用的には、上記蓄熱器内で、排ガスと作業媒体用の通路が分離して配置されており、上記蓄熱器の蓄熱材に、熱伝達的に接続されている。実用的には、排ガス通路と作業媒体通路は、それぞれ、上記蓄熱媒体に熱伝達的に接続されている。さらに、排ガス通路と作業媒体通路は、また、互いに、熱伝達的に接続されている。
【0020】
好適な実施形態では、既に先に述べた蒸発器バイパスは、上記蒸発器に内蔵することが可能で、これは上記蒸発器の機能密度をさらに向上させる。上記蓄熱器が上記蒸発器に内蔵され、かつ、上記蓄熱器は、また、上記排ガス通路に内蔵される場合、上記蒸発器バイパスは、また、特に、上記蓄熱器を排ガス側でバイパスするように配置することが可能である。
【0021】
実用的には、上記蒸発器は、熱伝達ブロックを有するハウジングを備えることが可能である。この熱伝達ブロックは、作業媒体通路と排ガス通路を互いに接続する。上記ハウジング内で、上記蒸発器バイパスは、上記熱伝達ブロックの上流側および下流側において、上記排ガス通路に接続されている。
【0022】
上記蒸発器に内蔵した蓄熱器の場合、前述した熱伝達ブロックは、蒸発部と、蓄熱部を備えることが可能である。その上、上記蒸発部内では、上記排ガス通路は、上記作業媒体通路に熱伝達的に接続される。上記蓄熱部内では、実用的には、上記排ガス通路と上記作業媒体通路は、上記蓄熱器の蓄熱材に熱伝達的に接続される。上記蒸発器バイパスは、上記蒸発部のみをバイパスするか、または、上記蒸発部と上記蓄熱部をバイパスするように配置することが可能である。特に、上記蓄熱部を、上記バイパスに接続するか分離するか、または、上記排ガスラインに接続するか分離するかの相互接続を適切に行うバルブ装置も配置することが可能である。
【0023】
前述の潜熱蓄熱器の代わりに、基本的には、他の蓄熱器も利用することが可能である。例えば、化学的な蓄熱器も利用することが可能である。化学的蓄熱器は、複数の物質の間の化学結合が、熱の作用下で分離するという原理に基づいている。この吸熱反応においては、このように、熱は吸収、つまり、蓄積される。上記物質を適切に選択すると、この吸熱反応は可逆的になることが可能で、その上、この場合、前述の物質が、再び、互いに結合する逆反応では、先に取り入れた熱は再び解放、つまり、放出することが可能である。この発熱逆反応は、このように、熱の供給に利用することが可能である。熱を貯蔵するには、実用的には、上記反応物、つまり、前述した、順反応の際に、互いに分離した物質
の空間的、または、物理的分離が生じる。逆反応では、上記物質、または、上記反応物が再び結合される。
【0024】
ここで紹介する本発明による好適な運転方法では、上記蓄熱器に貯蔵するために、上記作業媒体の少なくとも部分流を、上記蓄熱器を介して搬送することが可能である。上記燃焼機関の冷起動段階では、上記蓄熱器から熱が取り出され、上記凝縮器と上記冷却回路を介して、上記燃焼機関に供給される。加えて、または、代わりに、一般に、排ガスを昇温する場合、つまり、例えば、上記燃焼機関の冷起動段階のように、特に、熱需要が少ない段階では、上記蓄熱器から熱を取り出し、上記蒸発器を介して上記排ガスに供給することが可能である。上記排ガス温度が、排ガス清浄部品の運転温度を供給するのに十分ではない場合、上記排ガスの昇温は、例えば、上記燃焼機関の部分負荷運転中、または、停止・発進運転中にも実行することが可能である。
【0025】
上記運転方法の他の実用的な実施形態では、上記膨張機をバイパスしているときは、上記蓄熱器は、一方で、上記蒸発器と上記膨張機の間、他方で、上記膨張機と上記凝縮器の間で、上記排熱利用回路に接続することが可能である。上記排ガスを昇温するために、上記蓄熱器から熱が取り出されて、上記蒸発器を介して、上記排ガスに供給され、この場合、加えて、上記搬送装置による搬送は逆に行われる。この措置により、蓄熱器と蒸発器間の間で、極めて短いライン長が得られ、これは、上記排ガス内への熱の導入を促進する。
【0026】
上述した特徴、および以下に述べる特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、記載している各組み合わせにおいてだけでなく、他の組み合わせにおいて、あるいは、単独で利用できることは明白である。
【0027】
本発明の好適な実施例は図示されるとともに、以下に、詳細に説明されるが、同一か、類似しているか、または、機能的に同一の構成要素は同一の参照符号で示す。
【0028】
以下の図面は、それぞれ、概略的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態による、排熱利用装置を備えた燃焼機関の、非常に簡略化された、概念的原理図
【図2】第2の実施形態による、排熱利用装置を備えた燃焼機関の、非常に簡略化された、概念的原理図
【図3】特別な実施形態による排熱利用装置の蒸発器の、非常に簡略化された、概念的原理図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1および2は、それぞれ、異なる実施形態による排熱利用装置を備えた燃焼機関の、非常に簡略化された、概念的原理図である。図3は、特別な実施形態による排熱利用装置の蒸発器の、非常に簡略化された、概念的原理図である。図1および2では、排ガス利用装置1は、燃焼機関3に熱伝達的に接続された排熱利用回路2を備えている。また、燃焼機関3は、排ガスライン4を備えている。
【0031】
排熱利用回路2内では、作業媒体は回転矢印5の方向に循環し、排熱利用装置1は正常に作動する。上記作業媒体の流れ方向に関し、排熱利用回路2は、順に、蒸発器6、膨張機7、凝縮器8および搬送装置9を有している。蒸発器6は、上記作業媒体を蒸発するために利用される。膨張機7は、上記作業媒体を膨張させるために利用され、膨張機7は、ここでは、例えば、発生器10を駆動する。凝縮器8は、上記作業媒体を凝縮するために利用され、このために、凝縮器8は、例えば、冷却回路11に接続されている。搬送装置9は、排熱利用回路2内の上記作業媒体を駆動するために利用される。
【0032】
蒸発器6は熱伝達器として形成され、排ガスラインに内蔵されており、その結果、蒸発器6には、燃焼機関3の排ガスが供給可能である。
【0033】
排熱利用装置1には、また、蓄熱器12が備えられており、この蓄熱器は上記作業媒体から供給可能となるように、排熱利用回路2に内蔵されている。つまり、蓄熱器12の蓄熱材13は上記作業媒体に接続されているので、上記作業媒体と蓄熱材13の間で熱の交換が可能である。
【0034】
図1および2の実施形態では、蓄熱器12は、往路14および復路15を介して、蓄熱利用回路2に接続されている。この例では、往路バルブ装置16と復路バルブ装置17が配置され、それぞれを介して、蓄熱器12を通過する上記作業媒体の貫流は制御可能である。この場合、往路バルブ装置16は往路14を制御し、一方、復路バルブ装置17は復路15を制御する。実用的には、往路14は、蒸発器6と膨張機7の間で、排熱利用回路2に接続され、過熱された蒸気状の作業媒体は、蓄熱器12に蓄熱するために利用することが可能である。復路15は、実用的には、膨張機7と凝縮器8の間で、排熱利用回路2に接続される。これにより、蓄熱器12は、排熱利用回路2の蒸気側に存在し、上記蒸気側は、作業媒体の流れ方向において、蒸発器6から凝縮器8まで伸びている。これに対して、排熱利用回路2の液体側は、作業媒体の流れ方向において、凝縮器8から蒸発器6まで伸びている。
【0035】
図2に示す実施形態では、凝縮器バイパス18が配置され、これは、排熱利用回路2内の凝縮器8をバイパスする。凝縮器バイパス18は、また、一方で、膨張機7と凝縮器8の間、他方で、凝縮器8と搬送装置9の間で、排熱利用回路2に接続されている。凝縮器バイパス18を制御するために、バイパス・バルブ19が配置されており、これは、ここでは、復路バルブ装置17に内蔵されている。
【0036】
凝縮器8を冷却するために配置された冷却回路11は、好適な実施形態では、燃焼機関3に熱伝達的に接続されている。特に、冷却回路11として、ここでは、部分的にしか示されていないエンジン冷却回路20の一部が用いられている。
【0037】
さらに、ここで示す図1および2の実施形態では、蒸発器バイパス21が配置されており、これは、蒸発器6を排ガス側でバイパスする。この蒸発器バイパス21を制御するために、適切なバイパス・バルブ22が配置されている。
【0038】
図1に示す排熱利用装置1の実施形態は、また、蓄圧器23が備えられており、これは、排熱利用回路3の液体側に接続されている。この例では、蓄圧器23は、凝縮器8と搬送装置9の間で、排熱利用回路2に接続されている。特に、そのような蓄圧器23は、また、蓄熱器12にも内蔵することが可能で、これは、図2に示されている。この場合、蓄熱器23は、排熱利用回路2の蒸気側に位置している。
【0039】
蓄熱器12は、実用的には、潜熱蓄熱器として形成されている。蓄熱材13は、その上、実用的には、相変換材である。図1には圧力調整装置24が示されており、これにより、相変換材内、つまり、蓄熱材13内の圧力を調整することが可能である。相変換材内の圧力変化によって、相変換温度を変えることが可能である。これにより、蓄熱器12は、排熱利用装置1の実際の熱状態、または、燃焼機関3の実際の熱状態に対して、特に容易に適応することが可能である。
【0040】
同様に、図1には(他の)圧力調整装置25が示されており、これにより、排熱利用回路2の上記作業媒体内の圧力を調整することが可能である。排熱利用回路2の通常運転中は、上記作業媒体内の圧力は、一方では、搬送装置9を介して、他方では、膨張機7を介して調整することが可能である。例えば、燃焼機関3の加熱段階に存在するような特別な運転状態では、実用的には、上記作業媒体内の圧力を変化させ、例えば、排熱利用回路2の蒸気側の成分を減少させることが可能である。排熱利用回路2の上記蒸気側を一時的に、完全に除外し、液状の作業媒体のみを搬送可能にすることは特に実用的であり、これは、蓄熱器12と排ガス間の熱伝達を大幅に改善する。
【0041】
排熱利用装置1を運転するために、または、排熱利用装置1の、あるいは、燃焼機関3の移動可能で調整可能な部品を駆動するために、さらに、制御部26を配置することが可能である。制御部26は、燃焼機関3の制御装置27内にハードウエアとして内蔵するか、かつ/または、制御装置27内でソフトウエアとして実現することが可能である。
【0042】
図3では、特別な実施形態による蒸発器6は、熱伝達ブロック29が内部に配置されるハウジング28を備えることが可能である。熱伝達ブロック29は、矢印で示す排ガス通路30、作業媒体通路31、湾曲した括弧で示す蒸発部32、および、同じく、湾曲した括弧で示す蓄熱部33を備えている。蒸発部32では、排ガス通路30と作業媒体通路31は、互いに、熱伝達的に接続されている。蓄熱部33では、排ガス通路30と作業媒体通路31は、蓄熱材13に熱伝達的に接続され、蓄熱材13は、蓄熱構造34内の蓄熱部33の内部に収納されている。実用的には、排ガス通路30と作業媒体通路31も、蓄熱部33の内部で、互いに、熱伝達的に接続することが可能である。
【0043】
図3示す実施形態では、蒸発部32と蓄熱部33は、熱伝達ブロック29の長手方向に関し、軸上で、互いに隣接している。同様に、一体的に設計することが考えられる。
【0044】
図3の例では、蒸発器6には、また、蒸発器バイパス21がハウジング28内を通過するように、前述の蒸発器バイパス21が内蔵されている。蒸発器バイパス21は、この場合、第1の接続部35を介して、熱伝達ブロック29の上流で、排ガス通路30に接続され、熱伝達ブロック29の下流で、第2の接続部36を介して、排ガス通路30に接続されている。蒸発器バイパス21を制御するためのバイパス・バルブ22は図3には示されていないが、例えば、接続部35、36に内蔵することが可能である。
【0045】
制御部26は、実用的には、次に述べる、燃焼機関3または排ガス利用装置1の運転方法を実行するように形成するか、または、プログラムすることが可能である。
【0046】
燃焼機関3の通常運転中は、排熱利用装置1の通常運転も行われ、この間、排ガスと共に運ばれる排熱は、蒸発器6内で、上記作業媒体を蒸発するために利用され、この場合、蒸発された上記作業媒体は、発生器10を駆動するために膨張機7内で利用される。そして、凝縮器8を介して、膨張し、部分的に冷却された上記作業媒体の凝縮が起こる。搬送装置9は、蒸発器6を介して、再び、上記作業媒体を駆動する。この通常運転中は、このように、熱は、また、蓄熱器12に貯蔵するために利用することが可能である。これは、実用的には、上記作業媒体の部分流が、蓄熱部12を介して運ばれることによって行われる。
【0047】
今、例えば、蒸発器6の下流で排ガスライン4内に配置された上記排ガスシステムの部品を、所定の運転温度に昇温するために上記排ガスの昇温を行う場合、蓄熱部12から熱が取り出され、蒸発器6を介して、上記排ガスに供給することが可能である。また、例えば、図2では、凝縮器8は、一時的に、凝縮器バイパス18を介してバイパスされ、熱い作業媒体を蒸発器6に供給することが可能である。
【0048】
しかしながら、図1に示す実施形態において、そのような凝縮器バイパス18が配置されていない場合、例えば、冷却回路11を一時的に停止することが可能である。同様に、搬送装置9による搬送を、一時的に、逆に行い、できる限り短い経路で、熱い作業媒体を、蓄熱器12から蒸発器6に搬送することが可能である。
【0049】
そのような排ガスの昇温は、特に燃焼機関3の冷起動時が望ましく、これによって先ず、冷起動段階を通過する(燃焼機関3をより迅速に、運転温度にまで上昇させることができる)。冷起動は、燃焼機関3が実質的に周囲温度を有しているときに存在する。
【0050】
この冷起動段階では、前述のように、熱は、蓄熱器12から上記作業媒体を介して、蒸発器6に搬送し、蒸発器6を介して上記排ガスに供給し、排ガス処理部品を、より迅速に、運転温度に昇温することが可能である。
【0051】
加えて、この冷起動段階では、エンジン冷却回路20の一部として冷却回路11が備えられている場合、冷却回路11を介して、熱を燃焼機関3に供給することが可能である。凝縮器バイパス18が配置されている場合、これは停止される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明はモータ車の燃焼機関用の排熱利用装置に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 排熱利用装置
2 排熱利用回路
3 燃焼機関
4 接続部
5 回転矢印
6 蒸発器
7 膨張機
8 凝縮器
9 搬送装置
10 発生器
11 冷却回
12 蓄熱器
13 蓄熱材
14 往路
15 復路
16 往路バルブ装置
17 復路バルブ装置
18 凝縮器バイパス
19 バイパス・バルブ
20 エンジン冷却回路
21 蒸発器バイパス
22 適切なバイパス・バルブ
23 蓄圧器
24 圧力調整装置
25 (他の)圧力調整装置
26 制御部
27 制御装置
28 ハウジング
29 (熱伝達)ブロック
30 排ガス通路
31 作業媒体通路
32 蒸発部
33 蓄熱部
34 蓄熱構造
35 第1の接続部
36 第2の接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、車両の燃焼機関(3)用排熱利用装置であって、
作業媒体が循環する排熱利用回路(2)、
上記作業媒体を蒸発するために上記排熱利用回路(2)内に配置され、上記燃焼機関(3)から排ガスが供給可能な蒸発器(6)、
上記蒸発器(6)の下流において上記排熱利用回路(2)内に配置され、上記作業媒体を膨張させる膨張機(7)、
上記膨張機(7)の下流において上記排熱利用回路(2)内に配置され、上記作業媒体を凝縮させる凝縮器(8)、
上記凝縮器(8)の下流において上記排熱利用回路(2)内に配置され、上記排熱利用回路(2)内の作業媒体を駆動する搬送装置(9)、および
蓄熱器(12)を備え、
上記蓄熱器(12)は、上記排熱利用回路(2)に内蔵され、上記作業媒体により供給可能であることを特徴とする排熱利用装置。
【請求項2】
上記蓄熱器(12)は、往路(14)および復路(15)を介して、上記排熱利用回路(2)に接続され、特に、上記往路(14)を制御するための往路バルブ装置(16)、および/または、上記復路(15)を制御するための復路バルブ装置(17)が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の排熱利用装置。
【請求項3】
上記蒸発器(6)と上記膨張機(7)の間において、上記往路(14)は上記排熱利用回路(2)に接続されるとともに、上記膨張機(7)と上記凝縮器(8)の間において、上記復路(15)は上記排熱利用回路(2)に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の排熱利用装置。
【請求項4】
上記凝縮器(8)をバイパスするための凝縮器バイパス(18)が配置され、上記凝縮器(8)は、一方では、上記膨張機(7)と凝縮器(8)の間において、他方では、凝縮器(8)と搬送装置(9)の間において、上記排熱利用回路(2)に接続され、特に、上記凝縮器バイパス(18)を制御するためのバイパス・バルブ(19)が配置可能であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の排熱利用装置。
【請求項5】
上記凝縮器(8)は、冷却回路(11)に熱伝達的に接続され、また、上記蒸発器(6)に供給する排ガスを生成する燃焼機関(3)に、熱伝達的に接続されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の排熱利用装置。
【請求項6】
上記蒸発器(6)を排ガス側でバイパスするための蒸発器バイパス(21)が配置され、特に、上記蒸発器バイパス(21)を制御するためのバイパス・バルブ(22)が配置可能であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の排熱利用装置。
【請求項7】
上記蓄熱器(12)は、相変換材で作動する潜熱蓄熱器として形成され、かつ/または、
上記相変換材内の圧力を調整するための圧力調整装置(24)が配置され、かつ/または、
上記作業媒体内の圧力を調整するための圧力調整装置(25)が配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の排熱利用装置。
【請求項8】
上記蓄熱器(12)は、上記蒸発器(6)に内蔵されていることを特徴とする請求項1及び請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載の発熱利用装置。
【請求項9】
上記蒸発器バイパス(21)は、上記蒸発器(6)に内蔵されていることを特徴とする請求項6又は請求項8に記載の排熱利用装置。
【請求項10】
上記蒸発器(6)は熱伝達ブロック(29)を有し、上記熱伝達ブロック(29)は、排ガス通路(30)、作業媒体通路(31)、蒸発部(32)および蓄熱部(33)を有し、上記蒸発部(32)内で、上記排ガス通路(30)と上記作業媒体通路(31)は、熱伝達的に接続されるとともに、上記蓄熱部(33)内で、上記排ガス通路(30)と上記作業媒体通路(31)は、上記蓄熱器(12)の蓄熱材(13)に、熱伝達的に接続されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の排熱利用装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の排熱利用装置(1)を備える車両の燃焼機関(3)の運転方法であって、上記蓄熱器(12)に貯蔵するために、上記作業媒体の少なくとも部分流が、上記蓄熱器(12)を介して搬送されることを特徴とする運転方法。
【請求項12】
上記燃焼機関(3)の冷起動段階では、上記蓄熱器(12)から熱が取り出され、上記凝縮器(8)および上記冷却回路(11)を介して、上記燃焼機関(3)に供給されることを特徴とする請求項11に記載の運転方法。
【請求項13】
上記排ガスを昇温するために、上記蓄熱器(12)から熱が取り出され、上記蒸発器(6)を介して、上記排ガスに供給されることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の運転方法。
【請求項14】
上記膨張機(7)がバイパスされているとき、上記蓄熱器(12)は、一方で、上記蒸発器(6)と上記膨張機(7)の間において、他方で、上記膨張機(7)と上記凝縮器(8)の間において、上記排熱利用回路(2)に接続され、上記排ガスを昇温するために、上記蓄熱器(12)から熱が取り出され、上記蒸発器(6)を介して、上記排ガスに供給され、さらに、搬送装置(9)による搬送が逆に行われることを特徴とする請求項11〜請求項13にいずれか1項に記載の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−241718(P2012−241718A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−113243(P2012−113243)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【出願人】(505261612)ヨット・エーバーシュペッヒャー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー (53)
【Fターム(参考)】