説明

排風循環型穀粒乾燥機

【課題】
本発明は、高速乾燥および高効率乾燥を共に可能とする穀粒乾燥機を提供することを課題とする。
【解決手段】
バーナー(6a)で生成した熱風を熱風室(11)に供給すると共に、排風ファン(7a)で吸引し、排出した排風を熱風室(11)に供給する排風循環型穀粒乾燥機において、機体前側に備えるバーナー(6a)と対向する位置に、熱風が通過する熱風通路(4a)を設ける遠赤外線放射体を設け,熱風通路(4a)の終端側を熱風室(11)と連通する構成とし、機体後側に設ける排風ファン(7a)を備える吸引排出部(7)には、排風ファン(7a)から排出された排風を熱風室(11)に送出するダクト(21)を設け、該ダクト(21)を通過した排風を熱風室(11)の機体後側へ送出する構成とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風透過式の乾燥部に穀粒を循環することによって穀粒を乾燥する穀粒乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の排風循環式の穀粒乾燥機が知られている。この穀粒乾燥機は、バーナーの熱風を受けて循環穀粒を熱風乾燥する乾燥部と、その排風を熱風に混合可能に分流排出する吸引排出部とを備えて構成され、吸引排出部からの多湿な排風を熱風に混合した高温多湿の混合熱風により胴割れ等の乾燥障害なしに高速乾燥を可能とする。
【0003】
また、特許文献2に記載の遠赤波照射式の穀粒乾燥機が知られている。この穀粒乾燥機は、熱風乾燥する乾燥部から排出された穀粒を集めて循環させるための集穀部に遠赤外線放射体を内設して構成され、遠赤波の照射を合わせた高効率の穀粒乾燥を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−10247号公報
【特許文献2】特開2007−218583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、高速乾燥および高効率乾燥を共に可能とする穀粒乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、バーナー(6a)で生成した熱風を熱風室(11)に供給すると共に、排風ファン(7a)で吸引し、排出した排風を熱風室(11)に供給する排風循環型穀粒乾燥機において、機体前側に備えるバーナー(6a)と対向する位置に、熱風が通過する熱風通路(4a)を設ける遠赤外線放射体を設け,熱風通路(4a)の終端側を熱風室(11)と連通する構成とし、機体後側に設ける排風ファン(7a)を備える吸引排出部(7)には、排風ファン(7a)から排出された排風を熱風室(11)に送出するダクト(21)を設け、該ダクト(21)を通過した排風を熱風室(11)の機体後側へ送出する構成とすることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記ダクト(21)は、吸引排出部(7)の上部に排風の取り入れ口側を取り付けると共に、排風の送出側を熱風室(11)の機体後側と連通する構成とすることを特徴とする請求項1記載の排風循環型穀粒乾燥機とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明は、遠赤外線放射体内を通過した熱風と、排風ファンから排出された排風を熱風室(11)に供給することで、穀粒に遠赤波を照射するとともに、排風と熱風を混合して温度および湿度を調整した混合熱風を熱風室(11)に供給して循環穀粒を乾燥処理することにより、胴割れ等の乾燥障害のない高品質の乾燥を高速かつ効率よく行うことができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、機体前面部まで排風を送るための長大なダクトが不要となって機体構成を簡易化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】穀粒乾燥機の内部構成を表した要部縦断側面図(a)および要部背面図(b)
【図2】穀粒乾燥機の乾燥風流通による作用説明図
【図3】別構成の吸引排出部の要部縦断側面図(a)および要部背面図(b)
【図4】図1の穀粒乾燥機の内部構成を表した要部平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
穀粒乾燥機は、その内部構成を表した要部縦断側面図(a)および要部背面図(b)を図1に示すように、張込み穀粒を受ける貯留部2と、この貯留部2から穀粒を流下しつつ熱風乾燥する乾燥部3とを上下に重ねて配置し、乾燥部3の下部は排出穀粒を貯留部2に戻すための集穀部4とし、この集穀部4の穀粒に遠赤波を照射する遠赤外線放射体4aを配置する。
【0012】
乾燥部3の前面位置には、集穀部4から貯留部2上部に至るエレベータ部5、バーナー6aによる熱風供給部6、後面位置には、排風ファン7aと分流弁7bとによって排風を分流可能に排出する吸引排出部7、熱風と分流排風を合流混合して混合熱風を乾燥部3に案内する熱風ダクト8等を備え、穀粒を循環しつつ乾燥可能に構成される。
【0013】
詳細に説明すると、乾燥部3は、混合熱風を後面部の熱風ダクト8から受ける熱風室11と、吸引排出部7と接続する排風室12と、これら熱風室11と排風室12との間を透過可能に画成して熱風を受けつつ貯留部2から受けた穀粒を案内する対向多孔板による4レーンの乾燥網通路13…とから構成される。
【0014】
相互隣接の2レーンの乾燥網通路13,13を下端で合流してその合流位置に流量調節用の定量繰出弁14を介設して両乾燥網通路13,13を流下する穀粒の速度を調節する。乾燥網通路13,13は、乾燥部3の前後の両端面部間の全長に及んで構成し、合流する2レーンの乾燥網通路13,13の間を排風室12とするとともに同乾燥網通路13,13の外側を熱風室11とし、これを左右に並べることにより、乾燥部3の中央11aと左右11b、11bの3つの熱風ブロック構成の熱風室11および左右2つの排風室12,12を構成する。
【0015】
集穀部4は、定量繰出弁14の下方で排出穀粒を集合するための左右の傾斜板17,17と、その集合した穀粒をエレベータ部5に移送する移送螺旋18とによって構成する。この移送螺旋18の上方の中央の熱風ブロック11aに、バーナー6aから熱風ダクト8に連通する熱風通路4aを遠赤外線放射体によって構成する。この遠赤外線放射体による熱風通路4aは、バーナー6aから熱風を案内しつつその全長について遠赤波を放射することにより集穀部4の全穀粒を照射加熱する。
【0016】
熱風ダクト8は、遠赤外線放射体による熱風通路4aの終端と熱風室11との間に介設してバーナー6aの熱風を中央部と左右の両側部の熱風ブロック11a,11bに分配するように乾燥部3の背面部に設けるとともに、熱風ダクト8の左右中央部に上記吸引排出部7の分流ダクト7cを連結して分流排風を受けることにより熱風と合流混合する構成とする。また、必要により、外気を混合する外気導入口を設ける。
(排風循環運転)
次に、上記穀粒乾燥機による排風循環運転について説明する。
【0017】
穀粒乾燥機は、その乾燥風流通による作用説明図を図2に示すように、前面配置の熱風供給部6でバーナー6aによって熱風が生成され、この熱風は、集穀部4に設けた遠赤外線放射体による熱風通路4aによりその全長について遠赤波を放射しつつ後面配置の熱風ダクト8に案内される。この熱風ダクト8には後面配置の吸引排出部7の分流弁7bで所望の割合で分流ダクト7cに分流された高湿排風が流入し、熱風と排風とが合流混合されることにより多湿の混合熱風となって熱風室11の各ブロック11a,11bに至り、乾燥網通路13を透過して通過穀粒を乾燥しつつ排風室12から吸引排出部7によって吸引排出される。
【0018】
このような排風循環運転により、遠赤外線放射体による熱風通路4aは、集穀部4において熱風供給部6から高温熱風を受けることにより集穀部4の全穀粒に遠赤波を作用する。また、乾燥部3は、その熱風室11と連通する熱風ダクト8により、熱風通路4aからの高温熱風と吸引排出部7から分流した高湿排風とによる混合熱風を受けて循環穀粒を乾燥する。
【0019】
例えば、バーナー6aの風量を抑えて高温熱風を熱風通路4aに送出し、その遠赤外線放射体を高温(400℃程度)に保持して集穀部4の穀粒に遠赤波を照射するとともに、分流排風と導入外気を混合して温度および湿度を調整した混合熱風を乾燥部3に供給して循環穀粒を乾燥処理することにより、胴割れ等の乾燥障害のない高品質の乾燥を高速かつ効率よく行うことができる。
【0020】
また、乾燥部3の前面部に熱風供給部6、乾燥部3の後面部に吸引排出部7および熱風ダクト8を配置することにより、吸引排出部7の分流排風が最短経路の分流ダクト7cによって熱風ダクト8に送られ、この熱風ダクト8において熱風供給部6の熱風と合流混合されることから、機体前面部の熱風供給部6まで排風を送るための長大な還流ダクトが不要となって機体構成が簡易化されるとともに、排熱ロスが抑えられて混合熱風を効率よく乾燥部3に供給することができる。
【0021】
この場合において、熱風室11を構成する中央と左右の3つの熱風ブロック11a,11bにわたって熱風ダクト8を配置し、排風ファン7aから分流ダクト7cによって一部を取出した分流排風と中央位置の熱風通路4aからの高温風とを合流して混合した上で中央と左右の3つの熱風ブロック11a,11bにバランス良く送出するように構成する。その分流排風の合流量は乾燥条件によって分流弁7bで調節する。また、外気導入口によって機体後方から外気を導入することにより、分流排風の合流量の変動に対応するとともに、遠赤外線放射体による熱風通路4aからの高温風を通常の熱風温度に調節することができる。
【0022】
また、3つの熱風ブロック11a,11bに熱を均等に配分するために、上記熱風ダクト8の内部には、必要により、放射体4aと左右の熱風ブロック11b,11bとを個々に連結する分配通路8a、8aを配設する。上記放射体4aは、内部構成の要部平面図を図4に示すように、吸引をかけるために、その一部に中央の熱風ブロック11aで熱を開放する穴4bを形成する。放射体4aは、下部を開放して埃たまりが出ないように構成することにより、分流排風とともに還流された埃が溜まることによる火災を防止することができる。
【0023】
また、吸引排出部7については、その要部縦断側面図(a)および要部背面図(b)を図3に示すように、排風ファン7aから分流排風を上方に取出す分流ダクト21を設け、左右の分岐ダクト22,23を介して熱風室11の左右の熱風ブロック11b,11bに連通する。このような構成により、分流排風を左右の熱風ブロック11b,11bで混合することにより、放射体4aに排風が当たらないので、安全性を確保することができる。したがって、乾燥機の後面部で排風、高温風、外気を混合する構成について放射体4aの安全を確保しつつ、効率のよい乾燥処理が可能となる。
【符号の説明】
【0024】
2 貯留部
3 乾燥部
4 集穀部
4a 熱風通路(遠赤外線放射体)
6 熱風供給部
6a バーナー
7 吸引排出部
7a 排風ファン
7b 分流弁
7c 分流ダクト
8 熱風ダクト
11 熱風室
11a 中央ブロック
11b 外側ブロック
13 乾燥網通路
14 定量繰出弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナー(6a)で生成した熱風を熱風室(11)に供給すると共に、排風ファン(7a)で吸引し、排出した排風を熱風室(11)に供給する排風循環型穀粒乾燥機において、
機体前側に備えるバーナー(6a)と対向する位置に、熱風が通過する熱風通路(4a)を設ける遠赤外線放射体を設け,熱風通路(4a)の終端側を熱風室(11)と連通する構成とし、
機体後側に設ける排風ファン(7a)を備える吸引排出部(7)には、排風ファン(7a)から排出された排風を熱風室(11)に送出するダクト(21)を設け、該ダクト(21)を通過した排風を熱風室(11)の機体後側へ送出する構成とすることを特徴とする排風循環型穀粒乾燥機。
【請求項2】
前記ダクト(21)は、吸引排出部(7)の上部に排風の取り入れ口側を取り付けると共に、排風の送出側を熱風室(11)の機体後側と連通する構成とすることを特徴とする請求項1記載の排風循環型穀粒乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100988(P2013−100988A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−35937(P2013−35937)
【出願日】平成25年2月26日(2013.2.26)
【分割の表示】特願2008−144815(P2008−144815)の分割
【原出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】