説明

掘り起こし残土の仮置き方法

【課題】 大きな手間やコストを要することなく、掘削ずりなどの掘り起こし残土からの汚染物質の流出を好適に防止することができる掘り起こし残土の仮置き方法を提供する。
【解決手段】 汚染物質を含有する掘削ずりの仮置きを行う。汚染物質捕捉流路分散層1として、仮置きヤードY上に吸着層11を形成する。また、吸着層11の上層に流路分散層12が形成されている。この流路分散層12の上の掘削ずりを積み上げていき、仮置き盛土Mを形成する。仮置き盛土Mから流下する水分には汚染物質が含まれる。仮置き盛土Mから流下する水分を吸着層11における吸着シートの吸着剤に吸着させて不溶化する。また、仮置き盛土Mから流下する水分は、流路分散層12によって広く均等に分散され、吸着シートの表面全体に満遍なく行き渡る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘り起こし残土を仮置きする掘り起こし残土の仮置き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル、ダム、造成などの土木工事を行う現場においては、地山の掘削によって掘り起こし残土としてたとえば掘削ずりが発生する。掘削ずりには、自然由来または人工的な汚染物質が含まれることがあり、これらの汚染物質に対しては、その汚染濃度に応じた処理が求められる。このため、掘削ずりにおける汚染の程度を溶出試験によって求め、溶出試験の結果に基づいて汚染物質の処理方法を決定する。ここで、溶出試験の結果が判明するまでにおよそ2週間程度の期間を要することから、試験結果が判明するまでの間、掘削ずりを所定の仮置きヤードなどに仮置きすることが必要となる。
【0003】
このように、掘削ずりを仮置きする際にも、掘削ずりから仮置きヤードに対する汚染物質の流出を防止することが必要となる。しかし、仮置きヤードにおける掘削ずりからの汚染物質の流出防止策としては、ビニールシートによる遮水対策程度であった。その一方、汚染物質を含む建設残土を用いた盛土や埋め立てを行う際に用いられる工法として、従来、たとえば以下の工法があった。
(1)汚染土層の下に遮水構造や集水構造を構築し、集水した水を処理する方法(以下「第1工法」という)。
(2)汚染物質を吸着して捕捉する薬剤(以下、「吸着剤」という)と土とを混ぜた吸着土層を汚染土層の下に敷設する方法(たとえば、特許文献1参照、以下「第2工法」という)。
(3)吸着剤を載せた不織布等で作製した吸着シートを汚染土層の下に敷設する方法(たとえば、特許文献2参照、以下「第3工法」という)。
【0004】
そして、実際に汚染物質を含む建設残土を用いた盛土や埋め立てを行う際には、上記第1工法または第2工法のいずれかによる構造物を構築している。また、第3工法については、実際の現場で施工された例は見受けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−212771号公報
【特許文献2】特開平5−253652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、掘削ずりを仮置きするにあたり、上記第1工法を用いると、遮水構造や集水構造を構築する必要があるため、非常に手間とコストが掛かるという問題がある。また、上記特許文献1に開示された第2工法を用いる場合には、吸着剤を現場で土に混ぜ込んで吸着土層を形成することとなる。このため、吸着剤を土に対して均一に分散させることが難しく、吸着土層における吸着性能にムラが生じてしまい、汚染物質が仮置きヤードの内外に浸出、流出してしまう可能性があるという問題があった。
【0007】
さらに、上記特許文献2に開示された第3工法を用いた場合、不織布等に吸着剤を担持させる必要がある。しかし、1枚の不織布等が担持できる吸着剤の量はあまり多くすることができないので、吸着物質を吸着させるのに十分な吸着能力を持った吸着シートの作製は困難である。また、土や岩などの盛土内の構成物や、盛土内への水の流れ込みが不均一に分布していた場合、汚染物質を含んだ水が吸着シートに均一に分散して流下せず、ある箇所に集中してしまうことがある。この場合、吸着シートでは汚染物質を十分捕捉して除去することができず、汚染物質が仮置きヤードの内外に浸出、流出してしまう可能性があるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、大きな手間やコストを要することなく、掘削ずりなどの掘り起こし残土からの汚染物質の流出を好適に防止することができる掘り起こし残土の仮置き方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明に係る掘り起こし残土の仮置き方法は、汚染物質を含有する掘り起こし残土を仮置きするにあたり、掘り起こし残土に含まれると想定される汚染物質を捕捉する汚染物質捕捉層と、掘り起こし残土に含まれる水分を均一に分散させる流路分散層と、を含む汚染物質捕捉流路分散層を仮置きヤードに形成し、汚染物質捕捉流路分散層の上に、掘り起こし残土を仮置き盛土として仮置きすることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る掘り起こし残土の仮置き方法においては、掘り起こし残土に含まれると想定される汚染物質を捕捉する汚染物質捕捉層を形成している。このため、掘り起こし残土から流出する水分に含まれる汚染物質を汚染物質捕捉層で吸着して不溶化することができるので、仮置きヤードの内外に対する汚染物質の浸出、流出を防止することができる。また、仮置きされた掘り起こし残土から流れ出す汚染物質を含む水分は、局所的に集中してムラが生じることがあるため、汚染物質捕捉層に流出する水分にムラが生じることが考えられる。この点、本発明に係る掘り起こし残土の仮置き方法では、掘り起こし残土に含まれる水分を均一に分散させる流路分散層を形成している。このため、仮置きされた掘り起こし残土から流出する水分を汚染物質捕捉層に対して均等に分散させることができる。したがって、汚染物質捕捉層における汚染物質の捕捉効率を高めることができる。しかも、遮水構造や集水構造を設ける必要もないので、大きな手間やコストを要することなく、掘削ずりなどの掘り起こし残土からの汚染物質の流出を好適に防止することができる。
【0011】
ここで、掘り起こし残土に含まれると想定される汚染物質を捕捉する汚染物質吸着シートを仮置きヤードに敷設し、汚染物質吸着シートの上層に流路分散層を形成して汚染物質捕捉流路分散層を形成する態様とすることができる。
【0012】
このように、汚染物質吸着シートの上層に流路分散層を形成して汚染物質捕捉流路分散層を形成することにより、汚染物質を含む水分を均等に汚染物質吸着シートに対して流出させることができる。その結果、汚染物質吸着シートにおける汚染物質の捕捉効率を高めることができる。
【0013】
また、掘り起こし残土に含まれる汚染物質が複数ある場合に、複数の汚染物質をそれぞれ捕捉する複数の汚染物質吸着シートを仮置きヤードに敷設する態様とすることができる。
【0014】
このように、複数の汚染物質をそれぞれ捕捉する複数の汚染物質吸着シートを仮置きヤードに敷設することにより、複数の汚染物質について、それぞれ好適に捕捉して除去することができる。
【0015】
さらに、仮置きヤードに緩衝層を形成し、緩衝層の上方に汚染物質捕捉流路分散層を形成する態様とすることができる。
【0016】
このように、緩衝層の上方に汚染物質捕捉流路分散層を形成することにより、仮置きヤードと汚染物質捕捉流路分散層との間に緩衝層が形成されることとなる。このため、仮置きヤードとの接触摩擦等による汚染物質吸着シートの損傷を防止することができる。
【0017】
また、流路分散層を形成する流路分散層形成材料に汚染物質を捕捉する汚染物質捕捉材料を含有させて汚染物質捕捉流路分散層を形成する態様とすることができる。
【0018】
このように、流路分散層を形成する流路分散層形成材料に汚染物質を捕捉する汚染物質捕捉剤料を含有させることにより、汚染物質捕捉流路分散層を単層として形成することもできる。
【0019】
また、土壌を挟み込む挟み込みシートを備え、挟み込みシートによって吸着剤が混ぜ合わされた土壌を挟み込んでおり、掘り起こし残土に含まれると想定される汚染物質を捕捉する汚染物質吸着マットを仮置きヤードに敷設し、汚染物質吸着シートの上層に流路分散層を形成して汚染物質捕捉流路分散層を形成する態様とすることもできる。
【0020】
このように、挟み込みシートによって吸着剤が混ぜ合わされた土壌を挟み込んでおり、掘り起こし残土に含まれると想定される汚染物質を捕捉する汚染物質吸着マットを用いることによっても、汚染物質捕捉流路分散層を形成することができる。
【0021】
さらに、仮置き盛土を防雨シートで覆う態様とすることができる。このように、仮置き盛土を防雨シートで覆うことにより、降雨による仮置き盛土からの汚染物質の流出を防止することができる。
【0022】
そして、仮置きヤードに仮置きされた仮置き残土および仮置きヤードと仮置き盛土との間における各層を縮小した仮置き盛土模擬土層を形成し、仮置き盛土模擬土層から流出した水分を分析して、水分に含まれる汚染物質の含有量を確認し、確認された汚染物質の含有量に基づいて、仮置き盛土の調整を行う態様とすることができる。
【0023】
このように、仮置きヤードと仮置き盛土との間における各層を縮小した仮置き盛土模擬土層を形成し、仮置き盛土模擬土層から流出した水分を分析して、水分に含まれる汚染物質の含有量を分析して確認することにより、仮置き盛土から流出する水分に含まれる汚染物質の含有量を把握することができる。このため、汚染物質の流出量などを調整するための仮置き盛土の盛り付け量などの調整を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る掘り起こし残土の仮置き方法によれば、大きな手間やコストを要することなく、掘削ずりなどの掘り起こし残土からの汚染物質の流出を好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態に係る掘り起こし残土の仮置き方法による仮置き盛土の側断面図である。
【図2】汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。
【図4】第3の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。
【図5】第4の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。
【図6】第5の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。
【図7】第6の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。
【図8】第7の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。
【図9】(a)は、掘り起こし残土の仮置き方法による仮置き盛土の側断面図、(b)は、仮置き盛土模擬土層の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0027】
図1は、第1の実施形態に係る掘り起こし残土の仮置き方法による仮置き盛土の側断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る掘り起こし残土の仮置き方法では、仮置きヤードYの上に仮置き盛土Mが形成される。仮置きヤードYは、トンネル、ダム、造成などの土木工事を行う現場における適宜の空き地に形成される。本実施形態における掘り起し残土は、トンネルの掘削によって発生した掘削ずりとなる。また、仮置きヤードYと仮置き盛土Mとの間に汚染物質捕捉流路分散層1が形成される。
【0028】
汚染物質捕捉流路分散層1は、図2にも示すように、汚染物質吸着層となる吸着層11および掘削ずりに含まれる水分を均一に分散させる流路分散層12を備えている。吸着層11は、複数の吸着シートが積層されて構成されている。ただし、吸着層11を構成する吸着シートは、2枚以上の複数枚であってもよいし、1枚であってもよい。ここで用いられる吸着シートの枚数は、事前の室内試験等によって検討しておくことが好適である。
【0029】
吸着層11を構成する吸着シートは、不織布などの基材シートの表面に汚染物質捕捉材料である吸着剤を載せた構造をなしている。吸着剤は、基材シートの表面全体に満遍なく載せられている。ここで用いられる吸着剤としては、仮置き盛土Mに含有されていると想定される汚染物質に対応し、対応する汚染物質を吸着して不溶化するものとされている。吸着シートは巻き取り可能とされており、仮置きヤードYに敷設される前の段階では、巻き上げられた状態とされており、吸着シートを仮置きヤードYに敷設する際には、吸着シートを巻き出しながら敷設する。
【0030】
たとえば、仮置き盛土Mに含有されている汚染物質がフッ素、カドミウム、鉛、砒素である場合には、酸化マグネシウム系の薬剤が適用できる。また、汚染物質が上記のものに加えて、セレンである場合には、酸化鉄系や多孔質セラミック系の薬剤が適用できる。その他の汚染物質に適用可能な吸着剤および処理方法については、表1に示すとおりである。
【表1】

【0031】
吸着層11の上層に形成された流路分散層12は、硅砂、バーミキュライト、パーライトなどを堆積させて形成する。流路分散層12の厚さは、たとえば20〜30cm程度とされている。流路分散層12は、この程度の厚さの硅砂などで形成されることにより、仮置き盛土Mから流出する水分を透過させる際に、平面視して前面に略均一となるように分散させている。また流路分散層12は、吸着層11と仮置き盛土Mとの間に形成される緩衝層としても機能している。
【0032】
仮置き盛土Mは、トンネルなどの土木工事によって生じた掘削ずりなどの土砂を盛り上げられて形成されている。掘削ずりには、土木工事を行う土壌に応じた自然由来または人工的な汚染物質が含有されることがある。仮置き盛土Mからは、流路分散層12に対して水分が流出する。仮置き盛土Mからは、仮置き盛土Mに含有される汚染物質が水分とともに流出する。
【0033】
さらに、仮置き盛土Mには、防雨シートSが覆設されている。防雨シートSは、防水性材料によって形成されたシートである。仮置きヤードYが屋外に設定されている場合、仮置き盛土Mが防雨シートSに覆われていることにより、仮置き盛土Mに対する雨水の流入が阻止される。
【0034】
次に、本実施形態に係る掘削ずりの仮置き手順について、図1を参照して説明する。掘削ずりを仮置きする際には、まず、仮置きヤードYを設定する領域を確保して、仮置きヤードYを設定する、仮置きヤードYを設定したら、次に、仮置きヤードYに吸着シートを順次敷設し、吸着層11を形成する。ここでは、仮置き盛土Mを形成する分の面積、たとえば5m四方に吸着層11を形成する。
【0035】
吸着層11を形成したら、流路分散層12を生成する。流路分散層12を生成する際には、吸着層11の表面側に硅砂などを所定の厚さとなるまで載せる。こうして、所定の厚さとなる流路分散層12を形成したら、トンネルの掘削に伴って発生する掘削ずりを順次流路分散層12の上に積み上げていく。そして、ある程度、たとえば2〜3m程度の高さに到達したときに、仮置き盛土Mとする。その後、仮置き盛土Mの表面に防雨シートSを覆設して、掘削ずりの仮置きが完了する。
【0036】
こうして掘削ずりの仮置きが行われて仮置き盛土Mが形成されると、仮置き盛土Mは、汚染物質濃度を求めるための溶出試験の結果が出るまでのおよそ2週間程度の間、仮置きヤードYに仮置きされることとなる。この間、仮置き盛土Mからは仮置きヤードYに向けて水分が流下する。このまま流下した水分が仮置きヤードYに到達すると、水分中に含まれる汚染物質が仮置きヤードYの内外に浸出、流出することとなってしまう。
【0037】
この点、本実施形態に係る掘削ずりの仮置きの際には、仮置きヤードYと仮置き盛土Mとの間に、複数の吸着シートからなる吸着層11を介在させている。このため、仮置き盛土Mから流下する水分を吸着層11における吸着シートの吸着剤に吸着させて捕捉することができる。したがって、仮置きヤードYの内外に対する汚染物質の浸出、流出を防止することができる。
【0038】
また、仮置き盛土Mと吸着層11との間に流路分散層12が形成されている。このため、仮置き盛土Mから流下する水分は、流路分散層12によって広く均等に分散される。したがって、吸着層11における吸着シートの表面全体に満遍なく行き渡り、吸着シートに載せられた吸着剤によって効率よく汚染物質を吸着して捕捉することができる。しかも、遮水構造や集水構造を設ける必要もないので、大きな手間を要することなく、掘削ずりからの汚染物質の流出を好適に防止することができる。
【0039】
さらに、本実施形態における流路分散層12は、硅砂などを堆積させて形成されており、流路分散作用を備えるとともに緩衝作用も備えている。このため、仮置き盛土Mを形成する際に、掘削ずりに岩石の尖頭部などがある場合でも、吸着層11における吸着シートの損傷を防止することができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る掘り起こし残土の仮置き方法は、上記第1の実施形態と比較して、汚染物質捕捉流路分散層の構造が主に相違する。以下、この相違点を中心に本実施形態について説明する。なお、以後の第3の実施形態〜第5の実施形態についても、汚染物質捕捉流路分散層の構造が主に相違する。図3は、第2の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。
【0041】
図3に示すように、本実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層2は、上記第1の実施形態と同様の吸着層21および流路分散層22を備えている。さらに、汚染物質捕捉流路分散層2は、緩衝層23を備える点において、上記第1の実施形態と主に異なっている。緩衝層23は、たとえば不織布などの緩衝性が高い素材を含むシートあるいは硅砂などによって構成されている。掘削ずりの仮置きの手順では、緩衝層23は、吸着層21を形成する前に仮置きヤードYに敷設し、敷設した緩衝層23の上層に吸着層21を形成する。その他の点は、上記第1の実施形態と同様である。
【0042】
以上の構成を有する本実施形態においては、上記第1の実施形態と同様、仮置き盛土Mから流下する水分に含まれる汚染物質を吸着層21によって好適に吸着し捕捉して除去することができる。また、吸着層21の上層として流路分散層22が形成されていることから、吸着層21における吸着シートの表面全体に満遍なく載せられた吸着剤によって効率よく汚染物質を吸着して除去することができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、吸着層21と仮置きヤードYとの間に緩衝層23が形成されている。このような緩衝層23が形成されていることにより、吸着層21と仮置きヤードYとが直接的に接触しないようにされている。したがって、仮置きヤードYの底面凹凸等がある場合などに、仮置きヤードYとの接触摩擦による吸着シートの破損等を防止することができる。
【0044】
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。図4は、第3の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。図4に示すように、本実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層3は、上記第2の実施形態と同様の吸着層31、流路分散層32、および緩衝層33を備えている。さらに、本実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層3は、保水層34を備える点において、上記第2の実施形態と主に異なっている。保水層34は、たとえば不織布などの保水性が高い素材を含むシートによって構成されている。本実施形態に係る掘削ずりの仮置きの手順では、保水層34は、吸着層31を形成した後、流路分散層32を形成する前に吸着層31の上層に形成し、その上層に流路分散層32を形成する。その他の点は、上記第2の実施形態と同様である。
【0045】
以上の構成を有する本実施形態では、上記第1の実施形態および第2の実施形態と同様の作用効果を奏する。さらに、本実施形態では、吸着層31と流路分散層32との間に保水層34が形成されている。この保水層34が形成されていることにより、仮置き盛土Mから流下する水分を保水している。
【0046】
このため、吸着層31に到達する水分を減らしたり遅らせたりすることができるので、吸着層31における吸着シートの性能をより有効に発揮させることができる。また、保水層34内において保水された水分が水平方向に流動するので、水分をさらに満遍なく吸着層31の全面に広げることができる。さらには、保水層34を不織布で形成することにより、緩衝層としての効果を得ることもできる。
【0047】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図5は、第4の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。図5に示すように、本実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層4は、上記第3の実施形態と同様、第1吸着層41、流路分散層42、緩衝層43、および保水層44を備えている。
【0048】
さらに、本実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層4は、第2吸着層45を備える点において、上記第2の実施形態と主に異なっている。第2吸着層45は、保水層44と流路分散層42との間に形成されている。第2吸着層45は、第1吸着層41と同様に、複数の吸着シートが積層されて形成されている。ただし、第2吸着層45を構成する吸着シートは、2枚以上の複数枚であってもよいし、1枚であってもよい。
【0049】
また、第2吸着層45における吸着シートに載せられている吸着剤は、第1吸着層41における吸着シートに載せられている吸着剤とは、異なる汚染物質を捕捉する吸着剤とすることも可能である。掘削ずりの仮置きの手順では、第2吸着層45は、保水層44を形成した後に保水層44の上層に形成し、第2吸着層45の上層に流路分散層42を形成する。その他の点は、上記第3の実施形態と同様である。
【0050】
以上の構成を有する本実施形態においては、上記第3の実施形態と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態においては、第1吸着層41と第2吸着層45とが形成されており、それぞれ異なる汚染物質を吸着する吸着剤が基材シートに載せられたものを使用することも可能である。このため、複数種類の汚染物質を吸着することができ、仮置きヤードYの内外への浸出、流出を防止することができる。
【0051】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図6は、第5の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。図6に示すように、本実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層5は、上記第4の実施形態と同様、第1吸着層51、流路分散層52、緩衝層53、保水層54、および第2吸着層55を備えているが、その積層順が異なっている。
【0052】
本実施形態では、第1吸着層51と第2吸着層55とは、いずれも流路分散層52および保水層54の下層として形成されている。このため、第1吸着層51および第2吸着層55に対して、いずれも満遍なく全面に広げることができる。したがって、第1吸着層51および第2吸着層55に高い吸着性能を発揮させることができ、複数種類の汚染物質の仮置きヤードYの内外への浸出、流出を防止することもできる。
【0053】
続いて、本発明の第6の実施形態について説明する。図7は、第6の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。図7に示すように、本実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層6は、汚染物質吸着流路分散部材61によって構成されている。汚染物質吸着流路分散部材61は、水分を均一に分散させる流路分散層形成材料、たとえば硅砂などを含み、緩衝性の高い基材であるため緩衝性も備えており、この緩衝性基材に吸着剤を含有させることによって形成されている。
【0054】
また、緩衝性基材には、浸入してきた水分を均一に分散させる流路分散作用も備えている。このように、汚染物質吸着流路分散部材61は、吸着層、流路分散層、および緩衝層として機能している。本実施形態に係る掘削ずりの仮置き手順としては、まず、仮置きヤードYの上方に汚染物質吸着流路分散部材61を載置して汚染物質捕捉流路分散層6を形成する。この汚染物質捕捉流路分散層6の上方に掘削ずりを積み上げていき、仮置き盛土Mを形成する。
【0055】
以上の構成を有する本実施形態においては、上記各実施形態に示された作用効果と同様の作用効果を奏する。吸着剤における汚染物質の吸着を行う際、汚染物質吸着流路分散部材61における流路分散作用によって水分を汚染物質捕捉流路分散層6の全面にわたって広くいきわたらせることができる。このため、吸着剤によって効率よく汚染物質を吸着して不溶化することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、汚染物質吸着流路分散部材61を仮置きヤードYに載置するのみで汚染物質捕捉流路分散層6を形成することができる。このため、汚染物質捕捉流路分散層6を非常に簡易に形成することができる。
【0057】
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。図8は、第7の実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層の側断面図である。図8に示すように、本実施形態に係る汚染物質捕捉流路分散層7は、吸着マット71および流路分散層72を備えている。その他の点は、上記第1の実施形態と同様である。
【0058】
吸着マット71は、吸着剤が混ぜ合わされた土壌材を備え、この土壌材の上下に不織布等が配置されており、不織布等の挟み込みシートによって土壌材が挟み込まれた構成をなしている。流路分散層72は、上記実施形態と同様、仮置き盛土Mから流出する水分を透過させる際に、平面視して前面に略均一となるように分散させる機能を有している。さらに、流路分散層72は、吸着マット71と仮置き盛土Mとの間に形成される緩衝層としても機能している。
【0059】
本実施形態では、第1の実施形態と比較して、吸着層11が形成されている代わりに吸着マット71が設けられている構成となっている。このように、吸着マット71が設けられた構成である場合でも、上記第1の実施形態と同様、仮置き盛土Mから流下する水分を、流路分散層72によって広く均等に分散させることができる。したがって、吸着マット71全体に満遍なく行き渡り、吸着マット71に含まれる吸着剤によって効率よく汚染物質を吸着して不溶化することができる。
【0060】
さらに、本実施形態における流路分散層72は、上記第1の実施形態における流路分散層12と同様、流路分散作用を備えるとともに緩衝作用も備えている。このため、仮置き盛土Mを形成する際に、掘削ずりに岩石の尖頭部などがある場合でも、吸着マット71の損傷を防止することができる。
【0061】
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。図9(a)は、本実施形態に係る掘り起こし残土の仮置き方法による仮置き盛土の側断面図、(b)は、仮置き盛土模擬土層の側断面図である。図9(a)に示すように、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様の汚染物質捕捉流路分散層1が仮置きヤードYに形成されており、汚染物質捕捉流路分散層1の上方に仮置き盛土Mが形成されている。
【0062】
また、本実施形態では、仮置き盛土Mの側方位置に、図9(b)に示す仮置き盛土模擬土層が形成されている。仮置き盛土模擬土層は、テーブルTの上に形成されている。仮置き盛土模擬土層は、模擬汚染物質捕捉流路分散層1iを備えている。模擬汚染物質捕捉流路分散層1iは、汚染物質捕捉流路分散層1を模したものであり、模擬吸着層11iおよび模擬流路分散層12iを備えている。模擬吸着層11iは、仮置きヤードYに吸着層11を形成する際に、テーブルT上に形成する。また、模擬流路分散層12iは、流路分散層12を形成する際にテーブルT上に載置する。
【0063】
模擬汚染物質捕捉流路分散層1iの上方に模擬仮置き盛土Miが形成される。模擬仮置き盛土Miは、汚染物質捕捉流路分散層1上に仮置き盛土Mを形成する際にテーブルTにおける模擬汚染物質捕捉流路分散層1iに形成される。また、模擬汚染物質捕捉流路分散層1iの下面側には、取水口Rが形成されており、テーブルT下における取水口Rの下方位置には、ビーカBが設置されている。
【0064】
模擬仮置き盛土Miから流下する水分は、模擬汚染物質捕捉流路分散層1iを透過して取水口Rから排出される。取水口Rから排出された水分は、ビーカBに溜められる。さらに、一定の期間が経過した後、ビーカB内の水分を回収し、回収したビーカB内の水分に含まれる汚染物質の濃度を測定する。また、模擬汚染物質捕捉流路分散層1iおよび模擬仮置き盛土Miは、それぞれ汚染物質捕捉流路分散層1および仮置き盛土Mの各層の縮尺を考慮して縮小した縮小モデルであり、その高さ方向の比率を実質的に同一として形成されている。
【0065】
本実施形態に係る仮置き方法においては、仮置き盛土Mを形成して掘削ずりを仮置きしている間、模擬仮置き盛土Miを形成し、模擬仮置き盛土Miから排出される水分をモニタリングし、汚染物質捕捉流路分散層1における汚染物質の捕捉性能を分析している。また、模擬仮置き盛土Miには、定期的に雨水を想定した散水を行い、実際の仮置き盛土Mよりも厳しい条件とする。模擬仮置き盛土Miが積み上げられている模擬汚染物質捕捉流路分散層1iは、汚染物質捕捉流路分散層1の高さ方向に比率を実質的に同一として形成されている。
【0066】
このため、模擬汚染物質捕捉流路分散層1iから排出される水分における汚染物質の濃度は、汚染物質捕捉流路分散層1から流出する汚染物質の濃度の指標となりえると考えられる。したがって、模擬仮置き盛土Miから排出される水分をモニタリングして水分に含まれる汚染物質の含有量を確認することにより、汚染物質捕捉流路分散層1における汚染物質の吸着性能を分析して把握することができる。
【0067】
模擬仮置き盛土Miから排出される水分をモニタリングする際、具体的には、ビーカBに溜まった水分に含まれる汚染物質の濃度を測定して確認する。この測定結果に基づいて、仮置き盛土Mや汚染物質捕捉流路分散層1の調整を行う。ここで、汚染濃度が低く収まっている場合には、汚染物質捕捉流路分散層1における汚染物質の捕捉性能が満たされていることとなる。したがって、この場合には、汚染物質捕捉流路分散層1を模擬仮置き盛土Miと同じ比率で利用することにより、十分な汚染物質捕捉性能を発揮することができる。
【0068】
逆に、汚染濃度が高い場合には、汚染物質捕捉流路分散層1における汚染物質の捕捉性能が不足していることとなる。この場合には、たとえば汚染物質捕捉流路分散層1の吸着層11における吸着シートの量を増やしたり、仮置き盛土Mにおける掘削ずりの量を減らしたりするなどの対処を行うことができる。さらには、模擬仮置き盛土Miに対する模擬汚染物質捕捉流路分散層1iの性状と、ビーカBに溜められた水分における汚染物質との関係を記録しておき、次回の土木工事を行う際にフィードバックさせることもできる。
【0069】
さらに、仮置き盛土Mの仮置き期間が終了すると、模擬仮置き盛土Miは廃棄される。このとき、模擬汚染物質捕捉流路分散層1iにおける吸着シートの汚染濃度が低かった場合には、汚染物質捕捉流路分散層1の吸着層11に用いた吸収シートの汚染濃度も低いと考えられる。この場合に、その吸着シートを再利用することもできる。
【0070】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、第1の実施形態について模擬仮置き盛土Miや模擬汚染物質捕捉流路分散層1iを形成するようにしているが、他の実施形態についても同様の模擬仮置き盛土Miおよび模擬汚染物質捕捉流路分散層1iを形成することもできる。
【0071】
また、上記実施形態においては、第1の実施形態において、仮置き盛土Mを防雨シートSで覆っているが、他の実施形態においても、仮置き盛土Mを防雨シートSで覆う態様とすることもできる。さらに、上記各実施形態において、吸着層11に複数の吸着シートを配置する場合、吸着させる汚染物質として同一種類の汚染物質とすることもできるし、異なる種類の汚染物質とする態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0072】
1,2,3,4,5,6,7…汚染物質捕捉流路分散層
1i…模擬汚染物質捕捉流路分散層
11,21,31,41,51…吸着層
11i…模擬吸着層
12,22,32,42,52,72…流路分散層
12i…模擬流路分散層
23,33,43,53…緩衝層
34,44,54…保水層
61…汚染物質吸着流路分散部材
71…吸着マット
B…ビーカ
M…仮置き盛土
Mi…模擬仮置き盛土
R…取水口
S…防雨シート
T…テーブル
Y…仮置きヤード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質を含有する掘り起こし残土を仮置きするにあたり、
前記掘り起こし残土に含まれると想定される汚染物質を捕捉する汚染物質捕捉層と、前記掘り起こし残土に含まれる水分を均一に分散させる流路分散層と、を含む汚染物質捕捉流路分散層を仮置きヤードに形成し、
前記汚染物質捕捉流路分散層の上に、前記掘り起こし残土を仮置き盛土として仮置きすることを特徴とする掘り起こし残土の仮置き方法。
【請求項2】
前記掘り起こし残土に含まれると想定される汚染物質を捕捉する汚染物質吸着シートを前記仮置きヤードに敷設し、
前記汚染物質吸着シートの上層に前記流路分散層を形成して前記汚染物質捕捉流路分散層を形成する請求項1に記載の掘り起こし残土の仮置き方法。
【請求項3】
前記掘り起こし残土に含まれる汚染物質が複数ある場合に、
複数の前記汚染物質をそれぞれ捕捉する複数の前記汚染物質吸着シートを前記仮置きヤードに敷設する請求項2に記載の掘り起こし残土の仮置き方法。
【請求項4】
前記仮置きヤードに緩衝層を形成し、
前記緩衝層の上方に前記汚染物質捕捉流路分散層を形成する請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の掘り起こし残土の仮置き方法。
【請求項5】
前記流路分散層を形成する流路分散層形成材料に前記汚染物質を捕捉する汚染物質捕捉材料を含有させて前記汚染物質捕捉流路分散層を形成する請求項1に記載の掘り起こし残土の仮置き方法。
【請求項6】
土壌を挟み込む挟み込みシートを備え、前記挟み込みシートによって吸着剤が混ぜ合わされた土壌を挟み込んでおり、前記掘り起こし残土に含まれると想定される汚染物質を捕捉する汚染物質吸着マットを前記仮置きヤードに敷設し、
前記汚染物質吸着シートの上層に前記流路分散層を形成して前記汚染物質捕捉流路分散層を形成する請求項1に記載の掘り起こし残土の仮置き方法。
【請求項7】
前記仮置き盛土を防雨シートで覆う請求項1〜請求項6のうちのいずれか1項に記載の掘り起こし残土の仮置き方法。
【請求項8】
仮置きヤードに仮置きされた仮置き残土および前記仮置きヤードと前記仮置き盛土との間における各層を縮小した仮置き盛土模擬土層を形成し、
前記仮置き盛土模擬土層から流出した水分を分析して、前記水分に含まれる汚染物質の含有量を確認し、
確認された前記汚染物質の含有量に基づいて、前記仮置き盛土の調整を行う請求項1〜請求項6のうちのいずれか1項に記載の掘り起こし残土の仮置き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−35224(P2012−35224A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179705(P2010−179705)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】