説明

掘削ヘッド

【課題】拡大翼の拡翼動作状況を確実に検知できる掘削ヘッドを提供する。
【解決手段】掘削ヘッド11は、正逆回転可能なシャフト12に、不変径の定径掘削部材としての螺旋羽根13を設け、この螺旋羽根13に対し、受圧板14を介し、逆回転時に掘削壁面からの抵抗により拡翼可能な拡大翼15を、軸部材16により回動自在に取付ける。拡大翼15は、後端部に受圧板14の係止部17によって係止される凸部18を備え、先端部19が螺旋羽根13の外径よりやや突出して逆回転時の掘削壁面からの抵抗を先端に受けることで拡翼動作ができるように形成されている。受圧板14は、凹状に形成した1対の拡大翼軸支板部間に拡大翼作動スペース23を備えている。この拡大翼作動スペース23に対して、拡大翼15の拡翼動作により毀損(変形または破壊)される拡翼確認部材としての確認ピン24を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡大翼を備えた掘削ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示されるように、拡大根固め工法に用いられるオーガ1の掘削ヘッド2は、中空回転軸3の周囲に螺旋状の螺旋羽根4が設けられ、その螺旋羽根4の一部を切欠いて拡大翼5が回動自在に軸支されている。この拡大翼5は、中空回転軸3の正回転で螺旋羽根4内に格納され、逆回転でこの拡大翼5に作用する掘削壁面からの抵抗、螺旋羽根上の掘削土の抵抗を受けて螺旋羽根4から突出するように拡翼される(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
そして、プレボーリング工法で施工する場合は、図7(a)に示されるように所定深度まで掘削ヘッド2の正回転で掘削した後、図7(b)に示されるように逆回転することで拡大翼5を拡翼させ、中空回転軸3を通してセメントミルク等の固化材を注入しつつ、拡大翼5により周囲の地盤を切崩して、混合撹拌することでソイルセメント状の拡大根固め球根7を形成し、図7(c)に示されるように掘削ヘッド2を正回転させて拡大翼5を螺旋羽根4内に格納した状態で掘削ヘッド2を削孔から引上げ、その後、図7(d)に示されるように中空パイルPを削孔に挿入して拡大根固め球根7と一体化を図る。
【0004】
また、中掘工法で施工する場合は、図8(a)に示されるように杭中空部に挿入した掘削ヘッド2を正回転させながらこの掘削ヘッド2により杭先端地盤を掘削しつつ、螺旋羽根4によって掘削土を上方に排出しながら中空パイルPを挿入し、所定深さまで掘進した時点で、図8(b)に示されるように掘削ヘッド2を逆回転させることで拡大翼5を拡翼させ、この拡大翼5により周囲の地盤を切崩して拡大根固め用穴6を形成するとともに、この拡大根固め用穴6の中に中空回転軸3を通してセメントミルク等の固化材を注入しつつ拡大翼5により土壌と混合攪拌し、ソイルセメントによる拡大根固め球根7を形成するとともに中空パイルPと拡大根固め球根7との一体化を図った後、図8(c)に示されるように掘削ヘッド2を正回転させて拡大翼5を螺旋羽根4内に格納した状態で、図8(d)に示されるように掘削ヘッド2を中空パイルPから引抜くようにしている。
【特許文献1】特開平11−002085号公報(第7−8頁、図8−11)
【特許文献2】特開平11−350473号公報(第3−4頁、図8)
【特許文献3】特開2004−308292号公報(第3頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、掘削ヘッド2を逆回転させることで、拡大翼5を地中で拡翼させるものでは、拡大翼5が拡翼動作したことを確認する有効な手段が、従来なかった。例えば、電気的なセンサを拡大翼5の作動部に設置して、拡大翼5の拡翼動作を確認することが試みられたが、地中深く挿入される掘削ヘッドから拡翼動作確認信号を取出すことは容易でなく、コストがかかるとともに、確実な電気信号が得られない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、拡大翼の拡翼動作状況を確実に検知できる掘削ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、正逆回転可能なシャフトと、このシャフトに設けられた不変径の定径掘削部材と、この定径掘削部材に対し逆回転時に掘削壁面からの抵抗や、螺旋羽根上の掘削土の抵抗により拡翼可能な拡大翼と、この拡大翼の拡翼動作により毀損(変形または破壊)される拡翼確認部材とを具備した掘削ヘッドである。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の掘削ヘッドにおける拡翼確認部材を、拡大翼の拡翼動作により変形または圧縮破壊もしくはせん断破壊される確認ピンとしたものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1記載の掘削ヘッドにおける拡翼確認部材を、拡大翼の拡翼動作により変形される可変形部材としたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された発明によれば、掘削作業に用いられた掘削ヘッドを外部に取出してその拡翼確認部材を観察し、この拡翼確認部材が毀損(変形または破壊)された痕跡から、シャフトが正回転から逆回転に転じたときに定径掘削部材に対し拡大翼が掘削壁面からの抵抗、螺旋羽根上の掘削土の抵抗により拡翼動作したことを確実に検知できるとともに、拡翼確認部材が毀損されていない場合は、拡大翼の拡翼動作不良を確実に検知できる。
【0011】
請求項2に記載された発明によれば、確認ピンが変形または圧縮破壊もしくはせん断破壊された痕跡から、逆回転時に拡大翼が拡翼動作したことを確実に検知できるとともに、確認ピンが変形されていない場合または圧縮破壊もしくはせん断破壊されていない場合は、拡大翼の拡翼動作不良を確実に検知できる。
【0012】
請求項3に記載された発明によれば、可変形部材が変形された痕跡から、逆回転時に拡大翼が拡翼動作したことを確実に検知できるとともに、可変形部材が変形されていない場合は、拡大翼の拡翼動作不良を確実に検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、図1乃至図3に示された一実施の形態、図4乃至図6に示された他の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示される掘削ヘッド11は、正逆回転可能なシャフト12に、不変径の定径掘削部材としての螺旋羽根13が設けられ、この螺旋羽根13に対し、受圧板14を介し、逆回転時に掘削壁面からの抵抗、螺旋羽根上の掘削土の抵抗により拡翼可能な拡大翼15が軸部材16により回動自在に取付けられている。
【0015】
この拡大翼15は、後端部に受圧板14の係止部17によって係止される凸部18を備え、先端部19が螺旋羽根13の外径よりやや突出して逆回転時の掘削壁面からの抵抗、螺旋羽根上の掘削土の抵抗を先端に受けることで拡翼動作ができるように形成されている。
【0016】
図1および図2に示されるように、受圧板14は、凹状に形成された1対の拡大翼軸支板部21,22間に拡大翼作動スペース23を備えているので、この拡大翼作動スペース23に対して、拡大翼15の拡翼動作により毀損(変形または破壊)される拡翼確認部材として、拡大翼15の拡翼動作により変形または圧縮破壊もしくはせん断破壊される確認ピン24が取付けられている。
【0017】
この確認ピン24としては、シャフトの正回転時には変形せずにその形状を保ち、シャフトの逆回転が所要の角度に至った時に毀損された痕跡(変形または圧縮破壊もしくはせん断破壊)を起こすように設計された金属製パイプ(ステンレス、鋼、黄銅、アルミニウム等)、金属棒(角形および丸形のステンレス、鋼、黄銅、アルミニウム等)、あるいは硬質樹脂類からなるパイプ及び棒などからなり、一方の拡大翼軸支板部21に穿設された小孔25から拡大翼作動スペース23を通して他方の拡大翼軸支板部22に穿設された小孔26に挿嵌する。
【0018】
そして、図3に示されるように、掘削作業に用いられた掘削ヘッド11を外部に取出してその確認ピン24を観察し、この確認ピン24が毀損された痕跡すなわち変形または圧縮破壊もしくはせん断破壊された痕跡から、シャフト12が正回転から逆回転に転じたときに螺旋羽根13に対し拡大翼15が掘削壁面からの抵抗、螺旋羽根上の掘削土の抵抗により図1に2点鎖線で示されるように拡翼動作したことを確実に検知できるとともに、確認ピン24が変形されていない場合や圧縮破壊もしくはせん断破壊されていない場合は、拡大翼15の拡翼動作不良を確実に検知できる。
【0019】
次に、図4乃至図6に示された他の実施の形態を説明する。
【0020】
図4に示される掘削ヘッド11は、正逆回転可能なシャフト12に、不変径の定径掘削部材としての螺旋羽根13が設けられ、この螺旋羽根13に対し、受圧板14を介し、逆回転時に掘削壁面からの抵抗、螺旋羽根上の掘削土の抵抗により拡翼可能な拡大翼15が軸部材16により回動自在に取付けられている。
【0021】
この拡大翼15は、後端部に受圧板14の係止部17によって係止される凸部18を備え、先端部19が螺旋羽根13の外径よりやや突出して逆回転時の掘削壁面からの抵抗、螺旋羽根上の掘削土の抵抗を受けることで拡翼動作ができるように形成されている。
【0022】
図4および図5に示されるように、受圧板14は、凹状に形成された1対の拡大翼軸支板部21,22間に拡大翼作動スペース23を備えているので、この拡大翼作動スペース23に対して、拡大翼15の拡翼動作により毀損される拡翼確認部材として、拡大翼15の拡翼動作により変形される可変形部材31が取付けられている。
【0023】
この可変形部材31としては、前述の確認ピン24と同等素材のうち例えばアルミニウム管などをボルト32の中心線上に穿設された小孔に嵌着して、このボルト32を拡大翼作動スペース23に臨むねじ穴33に螺着することで、アルミニウム管などの先端部が拡大翼作動スペース23に突出するように設ける。
【0024】
そして、図6に示されるように、掘削作業に用いられた掘削ヘッド11を外部に取出してその可変形部材31を観察し、この可変形部材31の突出端が毀損された痕跡すなわち圧壊変形された痕跡から、シャフト12が正回転から逆回転に転じたときに螺旋羽根13に対し拡大翼15が掘削壁面からの抵抗、螺旋羽根上の掘削土の抵抗により図4に2点鎖線で示されるように拡翼動作したことを確実に検知できるとともに、可変形部材31の突出端が圧壊変形されていない場合は、拡大翼15の拡翼動作不良を確実に検知できる。
【0025】
本発明は、拡大根固め工法に用いられるオーガの掘削ヘッド11に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る掘削ヘッドの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同上ヘッドに設けられた拡翼確認部材の取付状態を示す説明図である。
【図3】同上ヘッドに設けられた拡翼確認部材の変形状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る掘削ヘッドの他の実施の形態を示す断面図である。
【図5】同上ヘッドに設けられた拡翼確認部材の取付状態を示す説明図である。
【図6】同上ヘッドに設けられた拡翼確認部材の圧壊変形状態を示す説明図である。
【図7】プレボーリング工法による拡大根固め工法を示す説明図であり、(a)は掘削ヘッドを正回転させながら地盤を掘削する工程を示し、(b)は掘削ヘッドを逆回転させることで拡大翼を拡翼動作させた状態で混合攪拌する工程を示し、(c)は掘削ヘッドを正回転させて拡大翼を螺旋羽根内に格納して削孔から引抜く工程を示し、(d)は削孔に中空パイルを挿入した状態を示す。
【図8】中掘工法による拡大根固め工法を示す説明図であり、(a)は掘削ヘッドを正回転させながら地盤を掘削する工程を示し、(b)は掘削ヘッドを逆回転させることで拡大翼を拡翼動作させた状態で混合攪拌する工程を示し、(c)は掘削ヘッドを正回転させて拡大翼を螺旋羽根内に格納して中空パイルから引抜く工程を示し、(d)は掘削ヘッドを中空パイルから引抜いた状態を示す。
【符号の説明】
【0027】
12 シャフト
13 定径掘削部材としての螺旋羽根
15 拡大翼
24 拡翼確認部材としての確認ピン
31 拡翼確認部材としての可変形部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正逆回転可能なシャフトと、
このシャフトに設けられた不変径の定径掘削部材と、
この定径掘削部材に対し逆回転時に拡翼可能な拡大翼と、
この拡大翼の拡翼動作により毀損される拡翼確認部材と
を具備したことを特徴とする掘削ヘッド。
【請求項2】
拡翼確認部材は、拡大翼の拡翼動作により変形または圧縮破壊もしくはせん断破壊される確認ピンである
ことを特徴とする請求項1記載の掘削ヘッド。
【請求項3】
拡翼確認部材は、拡大翼の拡翼動作により変形される可変形部材である
ことを特徴とする請求項1記載の掘削ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−7400(P2010−7400A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169734(P2008−169734)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000228660)日本コンクリート工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】