掘削孔測定装置およびプログラム
【課題】より確実に孔壁の形状を測定することができる掘削孔測定装置およびプログラムを得る。
【解決手段】掘削孔測定装置20により、掘削孔50の内部の予め定められた位置から当該掘削孔50の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知するセンサ部12によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて掘削孔50の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって掘削孔50の壁面の位置を特定できなかった場合にセンサ部12による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返し、前記特定処理によって特定された掘削孔50の壁面の位置を示す情報を記憶する。
【解決手段】掘削孔測定装置20により、掘削孔50の内部の予め定められた位置から当該掘削孔50の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知するセンサ部12によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて掘削孔50の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって掘削孔50の壁面の位置を特定できなかった場合にセンサ部12による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返し、前記特定処理によって特定された掘削孔50の壁面の位置を示す情報を記憶する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削孔測定装置およびプログラムに係り、より詳しくは、掘削孔の壁面の形状を測定する掘削孔測定装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現場造成杭の築造においては、施工品質を確保する上で、地山掘削後の掘削孔の形状を、鉄筋籠建て込みやコンクリート打設の前に測定し、予め定められた形状となっていることを確認する必要がある。
【0003】
この際、一般的には、広く一般に用いられている市販の超音波側壁測定器を用い、掘削孔の中心部付近から掘削孔の壁面(以下、「孔壁」という。)までの水平距離を、超音波エコーを利用した方式で測定し、予め定められた深度毎の掘削孔中心部付近から孔壁までの距離を記録して、掘削孔の全体的な傾斜や、掘削孔の直径、孔壁の部分的な崩壊の有無等を確認している。
【0004】
しかしながら、従来の超音波側壁測定器を用いた測定では、孔壁が垂直面に対して大きく傾斜している場合は、傾斜した孔壁までの距離の測定精度が著しく悪く、測定自体ができない場合もある。これは、従来の超音波側壁測定器では、超音波を水平方向に発振しているため、傾斜の大きな孔壁に対しては反射波の音圧が著しく小さくなってしまうためである。以下、これに関して、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0005】
従来の超音波側壁測定器では超音波を水平方向に発振しているため、一例として図13(A)に示すように、測定対象が垂直な孔壁の場合は当該孔壁で反射された超音波(反射波)も180度進行方向を変えられ、超音波を発振した超音波振動子に対して垂直に戻ってくる結果、受振する超音波の音圧レベルが比較的高く、高精度で距離の測定を行うことができる。
【0006】
これに対し、一例として図13(B)に示すように、傾斜が比較的大きな孔壁に対しては上記反射波の進行方向が入射波の進行方向に対して180度とはならない。すなわち、発振された超音波は傾斜された孔壁に当たり、その多くが拡散ないし屈折され、超音波振動子に戻ってくる超音波(反射波)の音圧レベルが著しく小さくなり、乱反射や雑音との区別ができなくなる結果、距離の測定を行うことができない場合が多い。
【0007】
図14には、一部に比較的大きな傾斜部を有する掘削孔の頂部側から底部側に向けて超音波振動子を移動させつつ、反射波の音圧レベルを測定する場合の、Aモード表示の一例が示されている。同図に示すように、この場合、垂直な孔壁部分を測定する際には超音波振動子から孔壁までの水平方向の距離に応じた時間で反射波に相当する比較的大きな音圧レベルが検知されるため、予め定められた閾値以上となる音圧レベルを検出することによって反射波を特定することができる一方、上記傾斜部を測定する際には、当該孔壁からの反射波の音圧レベルが低すぎる結果、上記予め定められた閾値以上となる音圧レベルを検出することができず、反射波を特定できない場合が多い。
【0008】
これに対し、従来、掘削孔の傾斜状態を測定するための技術として、特許文献1には、掘削孔の掘削工事において、掘削機に設けられた深度計および傾斜センサからの、深度変化量に比例する上昇または下降の深度パルスおよび掘削予定の中心線に垂直なX,Y2方向における、掘削孔各点の中心線に対する傾斜角信号をうけて、掘削孔の現在深度、前記中心線からの偏位量を求める装置であって、傾斜センサの出力をAD変換する2チャネルAD変換器と、該AD変換器出力および前記深度パルスを入力する演算処理装置と、該演算処理装置の出力を表示する表示機器とからなり、前記演算処理装置は一定時間ごとにその時間範囲内の上昇・下降の深度パルスの増分カウント値の差を計算し、その差を累積して現在深度を計算する手段と、所定の計測深度範囲ごとに、前記AD変換器の出力信号からX,Y方向の平均傾斜角および偏位量増分を計算する手段と、前記X・Y方向偏位量増分を累積してX・Y方向偏位量を計算する手段と、前記各手段により得られた深度、X・Y方向平均傾斜角、X・Y方向偏位量を表示する出力手段と、を備えたことを特徴とする掘削孔の傾斜測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−253695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、その対象が掘削孔の全長での傾斜状態を測定するものとされているため、掘削孔の部分的な傾斜を測定することはできず、一部に傾斜を有する孔壁の形状を測定することができない、という問題点があった。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、より確実に孔壁の形状を測定することができる掘削孔測定装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の掘削孔測定装置は、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段と、前記検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返す位置特定手段と、前記位置特定手段によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶する記憶手段と、を備えている。
【0013】
請求項1記載の掘削孔測定装置によれば、位置特定手段により、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理が実行され、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向が変更されて前記特定処理が実行されることを予め定められた回数を上限として繰り返される。
【0014】
そして、本発明では、前記位置特定手段によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報が記憶手段によって記憶される。なお、上記記憶手段には、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュEEPROM(Flash EEPROM)等の半導体記憶素子、フレキシブル・ディスク等の可搬記録媒体やハードディスク等の固定記録媒体、或いはネットワークに接続されたサーバ・コンピュータ等に設けられた外部記憶装置が含まれる。
【0015】
このように、請求項1記載の掘削孔測定装置によれば、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返し、前記特定処理によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶しているので、より確実に孔壁の形状を測定することができる。
【0016】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記検知手段を、予め定められた複数の方向の各々に対して個別に超音波が送信可能に構成してもよい。これにより、より低コストで孔壁の形状を測定することができる。
【0017】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記位置特定手段が、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部および底部の何れか一方から他方に向けて移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を再度実行してもよい。これにより、より効率よく孔壁の形状を測定することができる。
【0018】
特に、請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記位置特定手段が、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部から底部に向けて往路移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行した後、前記検知手段を、前記掘削孔の底部から頂部に向けて復路移動させつつ、前記往路移動の際の前記特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更した状態で前記特定処理を再度実行してもよい。これにより、より効率よく孔壁の形状を測定することができる。
【0019】
さらに、本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記位置特定手段によって前記予め定められた回数だけ前記特定処理を実行しても前記位置が特定できなかった場合に、当該位置が特定できなかったことを報知する処理を実行する報知手段をさらに備えてもよい。これにより、孔壁の形状を測定できなかったことを容易に把握することができる。なお、本発明に係る報知手段による報知には、ディスプレイ装置等の表示装置による可視表示による報知、プリンタ等の画像形成装置による永久可視表示による報知、およびスピーカ等の発音装置による可聴表示による報知が含まれる。
【0020】
一方、上記目的を達成するために、請求項6記載のプログラムは、コンピュータを、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返す位置特定手段と、前記位置特定手段によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶する記憶手段と、として機能させるためのものである。
【0021】
従って、請求項6に記載のプログラムによれば、コンピュータに対して請求項1記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1記載の発明と同様に、より確実に孔壁の形状を測定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返し、前記特定処理によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶しているので、より確実に孔壁の形状を測定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る掘削孔測定システムの全体構成を示す側面断面図である。
【図2】実施の形態に係るセンサ部の要部構成を示す側面断面図である。
【図3】実施の形態に係る掘削孔測定装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る掘削孔測定装置に備えられた二次記憶部の主な記憶内容を示す模式図である。
【図5】実施の形態に係る掘削孔設計情報データベースの構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態に係る測定結果情報データベースの構成を示す模式図である。
【図7】実施の形態に係る掘削孔測定プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施の形態に係る掘削孔測定プログラムによる掘削孔の傾斜部分の測定法の説明に供する側面断面図である。
【図9】実施の形態に係る測定結果画面の一例を示す概略図である。
【図10】実施の形態に係る掘削孔測定プログラムの処理の説明に供する説明図である。
【図11】実施の形態に係るセンサ部の他の構成例を示す側面断面図である。
【図12】実施の形態に係る掘削孔測定法の他の例の説明に供する側面断面図である。
【図13】従来技術の問題点の説明に供する側面断面図である。
【図14】従来技術の問題点の説明に供する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0025】
まず、図1を参照して、本発明が適用された掘削孔測定システム10の全体構成を説明する。
【0026】
同図に示すように、本実施の形態に係る掘削孔測定システム10は、測定対象とする掘削孔50に安定液32が満たされた状態で当該掘削孔50の壁面(以下、「孔壁」という。)52の形状を測定するものであり、センサ部12、昇降装置16、および当該システム10の中核となる掘削孔測定装置20を備えている。
【0027】
センサ部12は、掘削孔50の内部の予め定められた位置(本実施の形態では、掘削孔50の平面視中央部)から孔壁52の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の孔壁52からの反射波を検知するものである。
【0028】
図2に示すように、センサ部12は、断面視楕円状の縦長の球状に構成されており、その周辺部の予め定められた複数の位置に超音波振動子が設けられている。なお、同図では、錯綜を回避するために図示を一部省略するが、本実施の形態に係るセンサ部12には、超音波の送信方向が水平方向とされた超音波振動子12Aと、超音波の送信方向が水平方向より下方に45度傾斜した方向となる超音波振動子12Bとの一対の超音波振動子(以下、「対構成超音波振動子群」という。)が、センサ部12の外周面における平面視90度毎の4箇所に対して設けられている。
【0029】
ここで、各超音波振動子12A,12Bは、各々、超音波を送信した後、当該超音波の孔壁52からの反射波を検知して当該反射波の音圧レベルを示す信号(以下、「音圧信号」という。)を出力するように構成されている。
【0030】
一方、昇降装置16は、中央部にセンサ部12が取り付けられた取付部14を鉛直方向に下降ないし上昇させるものであり、掘削孔50の頂部壁面と地面30とを仕切る表層ケーシング18に取り付けられている。なお、本実施の形態に係る昇降装置16には、センサ部12の深度を測定するための水圧計、エンコーダ等といった図示しない深度測定装置が設けられている。
【0031】
また、掘削孔測定装置20は、センサ部12における各超音波振動子12A,12Bによって超音波を送信した時点から反射波を受信した時点までの時間に基づいて孔壁52の位置を特定し、特定した位置を示す情報を記録するものであり、表層ケーシング18における昇降装置16の取り付け位置の近傍に取り付けられている。
【0032】
次に、図3を参照して、掘削孔測定システム10において特に重要な役割を有する掘削孔測定装置20の電気系の要部構成を説明する。
【0033】
同図に示すように、本実施の形態に係る掘削孔測定装置20は、掘削孔測定装置20全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)20Aと、CPU20Aによる各種処理プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM20Bと、各種パラメータ等が予め記憶されたROM20Cと、各種情報を記憶するために用いられる記憶手段として機能する二次記憶部(ここでは、ハードディスク装置)20Dと、各種情報を入力するために用いられる操作パネル20Eと、各種情報を表示するために用いられるディスプレイ20Fと、外部装置等との間で各種情報の授受を行う外部インタフェース20Gと、外部装置等との間で通信を行う通信部20Hと、が備えられており、これら各部はシステムバスBUSにより電気的に相互に接続されている。
【0034】
従って、CPU20Aは、RAM20B、ROM20C、および二次記憶部20Dに対するアクセス、操作パネル20Eを介した各種入力情報の取得、ディスプレイ20Fに対する各種情報の表示、外部インタフェース20Gを介した外部装置等との間の各種情報の授受、および通信部20Hを介した外部装置等との間の通信を各々行うことができる。
【0035】
なお、外部インタフェース20Gには、前述したセンサ部12および昇降装置16が電気的に接続されており、CPU20Aは、センサ部12の各超音波振動子12A,12Bに対する超音波の送信の制御、各超音波振動子12A,12Bから出力される音圧信号の受信、昇降装置16に設けられた図示しない深度測定装置によるセンサ部12の深度の把握、および昇降装置16によるセンサ部12の下降および上昇の制御を各々行うことができる。
【0036】
一方、図4には、掘削孔測定装置20に備えられた二次記憶部20Dの主な記憶内容が模式的に示されている。
【0037】
同図に示すように、二次記憶部20Dには、各種データベースを記憶するためのデータベース領域DBと、掘削孔測定装置20の各部を制御するための制御プログラムや各種処理を行うためのアプリケーション・プログラム等を記憶するためのプログラム領域PGと、が設けられている。
【0038】
また、データベース領域DBには、掘削孔設計情報データベースDB1および測定結果情報データベースDB2が含まれる。以下、各データベースの構成について詳細に説明する。
【0039】
掘削孔設計情報データベースDB1は、掘削孔50の設計上の形状を示す情報が予め登録されたものであり、一例として図5に示されるように、深度および直径の各情報が記憶されるように構成されている。
【0040】
上記深度は、掘削孔50の頂部からの深さを示す情報であり、上記直径は、掘削孔50の対応する深度の位置における直径を示す情報である。例えば、図5に示す例では、深度が1.0cmの位置における掘削孔50の設計上の直径が2.0mであることを示している。
【0041】
一方、測定結果情報データベースDB2は、掘削孔測定システム10による掘削孔50に対する測定結果を示す情報が記憶されるものであり、一例として図6に示されるように、深度および水平距離の各情報が記憶されるように構成されている。
【0042】
上記深度は、掘削孔設計情報データベースDB1における深度と同様の情報であり、上記水平距離は、センサ部12が掘削孔50の対応する深度に位置されている状態で当該センサ部12に設けられた4組の対構成超音波振動子群の各々による測定によって得られた、センサ部12から孔壁52までの水平距離を示す情報である。例えば、図6に示す例では、各対構成超音波振動子群による、深度が1cmの位置におけるセンサ部12から孔壁52までの水平距離の測定結果が、各々1.01m、1.02m、1.02m、1.01mであったことを示している。
【0043】
次に、図7を参照して、本実施の形態に係る掘削孔測定システム10の作用を説明する。なお、図7は、掘削孔測定装置20の操作パネル20E等を介して実行指示が受け付けられた際に、掘削孔測定装置20のCPU20Aによって実行される掘削孔測定プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。また、ここでは、錯綜を回避するために、掘削孔設計情報データベースDB1が予め構築されており、さらに、センサ部12が掘削孔50の平面視中央部における頂部に位置されている場合について説明する。
【0044】
同図のステップ100では、掘削孔50の頂部からのセンサ部12の予め定められた速度(本実施の形態では、1.0cm/s)での下降動作を開始するように昇降装置16を制御し、次のステップ102では、センサ部12が予め定められた距離(本実施の形態では、1.0cm)だけ下降するまで待機した後、次のステップ104にて、センサ部12の下降動作を停止するように昇降装置16を制御する。
【0045】
次のステップ106では、4組の対構成超音波振動子群のうちの何れか1組の対構成超音波振動子群(以下、「第1処理対象振動子群」という。)における超音波振動子12Aから予め定められた周波数(本実施の形態では、90kHz)の超音波を、予め定められた期間(本実施の形態では、1マイクロ秒間)だけ送信(発振)するようにセンサ部12を制御し、次のステップ108にて、当該超音波振動子12Aからの予め定められた期間(本実施の形態では、2秒間)の音圧信号の受信待ちを行う。
【0046】
次のステップ110では、受信した音圧信号における最大音圧レベルが予め定められた閾値以上であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ112に移行する。なお、本実施の形態に係る掘削孔測定プログラムでは、上記予め定められた閾値として、受信した音圧信号における最大音圧レベルが当該閾値以上となった場合に、当該最大音圧レベルが、超音波振動子12Aから送信した超音波の反射波に対応するものであると見なすことのできる値として、実機を用いた実験やコンピュータ・シミュレーション等によって予め得られた値を適用している。
【0047】
ステップ112では、上記ステップ106の処理によって超音波振動子12Aより超音波を送信した時点から、上記ステップ110の処理によって上記予め定められた閾値以上であると判定された最大音圧レベルに対応する信号を当該超音波振動子12Aによって受信した時点までの期間(以下、「超音波送受信期間」という。)tおよび安定液32における音速vを次の(1)式に代入することにより、この時点のセンサ部12から孔壁52までの水平距離Lを演算する。
【0048】
【数1】
次のステップ114では、上記ステップ112の処理によって得られた水平距離Lを、測定結果情報データベースDB2における、この時点のセンサ部12の深度に対応する記憶領域に記憶し、その後にステップ118に移行する。
【0049】
一方、上記ステップ110において否定判定となった場合にはステップ116に移行し、予め定められた測定エラーを示す情報(以下、「エラー情報」という。)を、測定結果情報データベースDB2における対応する深度に対応する記憶領域に記憶し、その後にステップ118に移行する。なお、上記ステップ114または上記ステップ116の処理を実行する際に、対応する深度が測定結果情報データベースDB2に記憶されていない場合には、当該深度も測定結果情報データベースDB2に記憶するようにする。
【0050】
ステップ118では、4組の対構成超音波振動子群の全てを用いて上記ステップ106〜ステップ116の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ106に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ120に移行する。なお、上記ステップ106〜ステップ118の処理を繰り返し実行する際には、それまでに処理対象としなかった対構成超音波振動子群を第1処理対象振動子群として適用するようにする。
【0051】
ステップ120では、センサ部12が掘削孔50の底部まで到達したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ100に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ122に移行する。ステップ100〜ステップ120の繰り返し処理により、センサ部12が掘削孔50の頂部から底部に至る往路移動を行っている際に測定された、予め定められた深度(本実施の形態では、1cm)毎の対構成超音波振動子群の各々により得られた水平距離Lまたはエラー情報が、測定結果情報データベースDB2に記憶されることになる。
【0052】
ステップ122では、掘削孔50の底部からのセンサ部12の予め定められた速度(本実施の形態では、1.0cm/s)での上昇動作を開始するように昇降装置16を制御し、次のステップ124では、センサ部12が予め定められた距離(本実施の形態では、1.0cm)だけ上昇するまで待機した後、次のステップ126にて、センサ部12の上昇動作を停止するように昇降装置16を制御する。
【0053】
次のステップ128では、4組の対構成超音波振動子群のうちの何れか1組の対構成超音波振動子群(以下、「第2処理対象振動子群」という。)における超音波振動子12Bから予め定められた周波数(本実施の形態では、90kHz)の超音波を、予め定められた期間(本実施の形態では、1マイクロ秒間)だけ送信(発振)するようにセンサ部12を制御し、次のステップ130にて、当該超音波振動子12Bからの予め定められた期間(本実施の形態では、2秒間)の音圧信号の受信待ちを行う。
【0054】
次のステップ132では、受信した音圧信号における最大音圧レベルが、上記ステップ110の処理で適用した上記予め定められた閾値以上であるか否かを判定し、否定判定となった場合は後述するステップ138に移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ134に移行する。
【0055】
ステップ134では、センサ部12の移動経路上の位置から孔壁52までの水平距離Lxを導出する。以下、図8を参照して、水平距離Lxの導出手順について説明する。
【0056】
まず、上記ステップ128の処理によって超音波振動子12Bから超音波を送信した時点から、上記ステップ132の処理によって上記予め定められた閾値以上であると判定された音圧レベルに対応する信号を当該超音波振動子12Bによって受信した時点までの期間(超音波送受信期間)tsおよび安定液32における音速vを次の(2)式に代入することにより、この時点のセンサ部12から孔壁52までの距離Lsを演算する。
【0057】
【数2】
次に、距離Lsおよび超音波振動子12Bの水平方向に対する傾斜角θ(本実施の形態では、45°)を次の(3)式に代入することにより、水平距離Lxを演算する。
【0058】
【数3】
また、水平距離Lx、傾斜角θ、およびこの時点のセンサ部12の深度Dsを次の(4)式に代入することにより、水平距離Lxに対応する深度Dxを演算する。
【0059】
【数4】
次のステップ136では、上記ステップ134の処理によって得られた水平距離Lxを、測定結果情報データベースDB2における深度Dxに対応する記憶領域に記憶(上書き)し、その後にステップ138に移行する。
【0060】
ステップ138では、4組の対構成超音波振動子群の全てを用いて上記ステップ128〜ステップ136の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ128に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ140に移行する。なお、上記ステップ128〜ステップ138の処理を繰り返し実行する際には、それまでに処理対象としなかった対構成超音波振動子群を第2処理対象振動子群として適用するようにする。
【0061】
ステップ140では、センサ部12が掘削孔50の頂部まで到達したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ122に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ142に移行する。ステップ122〜ステップ140の繰り返し処理により、センサ部12が掘削孔50の底部から頂部に至る復路移動を行っている際に測定された水平距離Lxが測定結果情報データベースDB2に上書き記憶されることになる。
【0062】
ステップ142では、測定結果情報データベースDB2にエラー情報が存在するか否かを判定することにより、以上の処理では測定できなかった領域が存在しないか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ144に移行して、以上の処理によって得られた測定結果情報データベースDB2の各情報を用いて、予め定められた構成とされた測定結果画面を表示するようにディスプレイ20Fを制御し、その後に本掘削孔測定プログラムを終了する。
【0063】
図9には、上記ステップ144の処理によって、掘削孔測定装置20のディスプレイ20Fに表示される測定結果画面の一例が示されている。同図に示される例では、各々センサ部12に互いに背中合わせで配置された二対の対構成超音波振動子群によって測定された水平距離を用いて作成した孔壁52の断面形状を示す画像が測定結果画面として表示される。従って、ユーザは、当該測定結果画面を参照することによって、掘削孔50の測定結果に基づく形状を視覚的かつ容易に把握することができる。
【0064】
一方、上記ステップ142において否定判定となった場合にはステップ146に移行し、予め定められた報知処理を実行した後に本掘削孔測定プログラムを終了する。なお、本実施の形態に係る掘削孔測定プログラムでは、上記ステップ146において実行される報知処理として、掘削孔測定装置20に内蔵された図示しないブザーを鳴動させる処理を適用しているが、これに限らず、ディスプレイ20Fにより未測定領域がある旨を表示する処理、通信部20Hを介して未測定領域がある旨を示す情報を外部装置等に送信する処理等、他の処理を適用してもよいことは言うまでもない。
【0065】
図10には、本実施の形態に係る掘削孔測定プログラムにより実行される処理が模式的に示されている。
【0066】
同図の手順Aに示すように、掘削孔測定プログラムのステップ100〜ステップ104の処理を繰り返し実行することにより、センサ部12が掘削孔50の頂部から底部に至る往路移動を予め定められた距離(本実施の形態では、1cm)毎に間欠的に行う一方、ステップ106〜ステップ114の処理により、センサ部12の移動が停止された状態で、超音波の送信方向が水平方向とされた超音波振動子12Aにより得られた超音波送受信期間tに基づいて水平距離L(同図では、「L1」、「L2」と表記。)が得られて、記憶される。
【0067】
しかしながら、この際、孔壁52の傾斜部分(同図における深度D1から深度D2までの部分)については、超音波振動子12Aから受信された音圧信号における最大音圧レベルが予め定められた閾値以上とならないため、この部分に関しては、一例として同図の手順Bに示すように、正確な水平距離Lを得ることができない。
【0068】
そこで、本実施の形態に係る掘削孔測定プログラムでは、ステップ116の処理により、一例として同図の手順Cに示すように、孔壁52の傾斜部分については測定データを破棄(本実施の形態では、エラー情報を記憶)する。
【0069】
そして、掘削孔測定プログラムのステップ122〜ステップ140の処理により、一例として同図の手順Dに示すように、センサ部12が掘削孔50の底部から頂部に至る復路移動を行う際に、上記往路移動の際に得られなかった水平距離を、超音波の送信方向が水平方向に対して下方に45°傾斜した超音波振動子12Bにより得られた超音波送受信期間tsに基づいて水平距離Lxが得られて、記憶される。
【0070】
以上の処理によって得られた、各深度毎の孔壁52までの水平距離に基づいて、一例として同図の手順Eに示すように、傾斜部分に関しても、その形状を表示することが可能となる。
【0071】
なお、超音波は直線状に狭い範囲を維持しながら進行するのではなく、進行方向に対して直交する方向に拡がる指向角を有しているので、測定対象とする孔壁面に必ずしも垂直に発振する必要はなく、大まかに垂直であればよい。従って、傾斜角の小さな孔壁を測定する場合には、敢えて超音波の進行方向を傾斜させる必要はない。
【0072】
また、この指向角は、超音波の周波数によって変わるため、適用する周波数に応じて、超音波振動子の発振方向傾斜角を設定する形態としてもよい。
【0073】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段(本実施の形態では、センサ部12)によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数(本実施の形態では、1回)を上限として繰り返し、前記特定処理によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶しているので、より確実に孔壁の形状を測定することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、前記検知手段を、予め定められた複数の方向(本実施の形態では、水平方向および水平方向に対して下方に45°傾斜した方向の2つの方向)の各々に対して個別に超音波が送信可能に構成しているので、より低コストで孔壁の形状を測定することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部および底部の何れか一方から他方に向けて移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を再度実行しているので、より効率よく孔壁の形状を測定することができる。
【0076】
特に、本実施の形態では、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部から底部に向けて往路移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行した後、前記検知手段を、前記掘削孔の底部から頂部に向けて復路移動させつつ、前記往路移動の際の前記特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更した状態で前記特定処理を再度実行しているので、より効率よく孔壁の形状を測定することができる。
【0077】
さらに、本実施の形態では、前記予め定められた回数だけ前記特定処理を実行しても前記位置が特定できなかった場合に、当該位置が特定できなかったことを報知する処理を実行しているので、孔壁の形状を測定できなかったことを容易に把握することができる。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0080】
例えば、上記実施の形態では、センサ部12として一対の超音波振動子12A,12Bが4対で合計8個の超音波振動子が設けられたものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0081】
図11には、他のセンサ部12’の構成例が示されている。
【0082】
同図に示すセンサ部12’は、断面視8角形状の多面体状に構成されており、その周辺部の予め定められた複数の面に超音波振動子12A〜12Cが設けられている。なお、同図では、錯綜を回避するために図示を一部省略するが、センサ部12’には、超音波の送信方向が水平方向とされた超音波振動子12Aと、超音波の送信方向が水平方向より下方に45度傾斜した方向となる超音波振動子12Bと、超音波の送信方向が水平方向より上方に45度傾斜した方向となる超音波振動子12Cとの3つの超音波振動子が、センサ部12’の外周面における平面視所定角度(一例として、60°)毎の複数箇所(一例として、6箇所)に対して設けられている。
【0083】
また、センサ部12に設ける超音波振動子の数を1つとし、当該超音波振動子を、超音波の送信方向が変化するように、モータ等を用いて回転移動させることにより、複数の方向に対して超音波を送信することができるように構成する形態としてもよい。この場合、超音波振動子の回転移動のための制御を伴うため、当該制御による負荷は増加するものの、超音波振動子の数を最小限の1つとすることができる結果、センサ部12の低コスト化に寄与することができる。
【0084】
また、上記実施の形態では、センサ部12の移動を停止した状態でセンサ部12から孔壁52までの水平距離を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、センサ部12の移動を停止させずに上記水平距離を測定する形態としてもよい。この場合、上記実施の形態に比較して、測定時間を短縮することができる。
【0085】
また、上記実施の形態では、センサ部12の復路移動時において、予め定められた移動距離(上記実施の形態では、1.0cm)毎に当該移動経路上の位置から孔壁52までの水平距離Lxを測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、センサ部12の往路移動時に測定できなかった領域のみ、復路移動時に測定する形態としてもよい。
【0086】
この場合、一例として図12に示すように、往路移動時に測定できなかった領域の深度範囲がDx1からDx2までの範囲であり、深度Dx1の直前に測定された水平距離LがL1で、深度Dx2の直後に測定された水平距離LがL2とした場合、次の(5)式〜(6)式により得られる深度Ds2から次の(7)式〜(8)式により得られる深度Ds1までの範囲を測定すればよい。
【0087】
【数5】
【0088】
【数6】
なお、上記実施の形態の場合、θが45°であるので、深度Ds1はDx1−L1で求められ、深度Ds2はDx2−L2で求められる。この場合、上記実施の形態に比較して、復路移動時における水平距離の測定のための負荷を大幅に低減することができる。
【0089】
また、上記実施の形態では、昇降装置16および掘削孔測定装置20を表層ケーシング18に取り付けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、昇降装置16および掘削孔測定装置20の少なくとも一方を地面30または表層ケーシング18の上に置く形態としてもよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、センサ部12の形状が断面視楕円状の縦長の球状である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、断面視矩形状、断面視真円状、断面視多角形状等の他の形状とする形態としてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態では、センサ部12の往路移動時に予め定められた方向(上記実施の形態では、水平方向)に超音波を送信して孔壁までの距離を測定する一方、センサ部12の復路移動時に上記予め定められた方向とは異なる方向(上記実施の形態では、水平方向に対して下方に45°傾斜した方向)に超音波を送信して孔壁までの距離を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上記往路移動時に上記予め定められた方向および当該予め定められた方向とは異なる方向の双方に対して超音波を送信することによって孔壁までの距離を測定する形態としてもよい。また、この場合、掘削孔設計情報データベースDB1に登録されている設計上の深度毎の直径に基づいて、上記予め定められた方向への超音波の送信では測定できない孔壁の領域を予め特定し、特定した領域に対してのみ、上記予め定められた方向とは異なる方向に超音波を送信して孔壁までの距離を測定する形態としてもよい。
【0092】
また、上記実施の形態では、センサ部12を往路移動および復路移動の1往復のみ行って孔壁までの距離を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、1往復のみでは測定できない領域が存在した場合には、超音波の送信方向をさらに変更したうえで、上記実施の形態と同様に再度往復移動させて測定することを繰り返す形態としてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態では、超音波振動子により発振する超音波の周波数を固定(上記実施の形態では、90kHz)とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、超音波振動子として、各々異なる周波数の超音波を発振することのできるものを複数適用し、孔壁までの距離が測定できなかった場合に、当該測定時とは異なる周波数の超音波を発振する超音波振動子を適用して再度測定する形態としてもよい。
【0094】
また、上記実施の形態では、本発明を、掘削孔に安定液32が満たされた状態で孔壁の形状を測定する形態に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、安定液32に代えて水が満たされた状態での測定に適用する形態や、これらの液体が満たされておらず、空洞となっている状態での測定に適用する形態等としてもよい。
【0095】
その他、上記実施の形態で説明した掘削孔測定システム10および掘削孔測定装置20の構成(図1〜図4参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な構成要素を削除したり、新たな構成要素を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0096】
また、上記実施の形態で示した掘削孔測定プログラムの処理の流れ(図7参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な処理ステップを削除したり、新たな処理ステップを追加したり、処理ステップの順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0097】
また、上記実施の形態で示した測定結果画面の構成(図9参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、表示内容を変更してもよいことは言うまでもない。
【0098】
例えば、図9に示した測定結果画面に対して、掘削孔設計情報データベースDB1に登録されている掘削孔50の設計上の形状を重ねて表示する形態としてもよい。この場合、予定されていた掘削孔50の形状と、測定された掘削孔50の形状とを容易に比較することができる。
【0099】
また、上記実施の形態で示した各種データベースの構成(図5,図6参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、一部の情報を削除したり、新たな情報を追加したり、記憶位置を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0100】
さらに、上記実施の形態で示した各演算式((1)式〜(4)式参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なパラメータを削除したり、新たなパラメータを追加したり、パラメータを変更したり、演算の順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0101】
10 掘削孔測定システム
12 センサ部(検知手段)
14 取付部
16 昇降装置
18 表層ケーシング
20 掘削孔測定装置
20A CPU(位置特定手段)
20D 二次記憶部(記憶手段)
DB1 掘削孔設計情報データベース
DB2 測定結果情報データベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削孔測定装置およびプログラムに係り、より詳しくは、掘削孔の壁面の形状を測定する掘削孔測定装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現場造成杭の築造においては、施工品質を確保する上で、地山掘削後の掘削孔の形状を、鉄筋籠建て込みやコンクリート打設の前に測定し、予め定められた形状となっていることを確認する必要がある。
【0003】
この際、一般的には、広く一般に用いられている市販の超音波側壁測定器を用い、掘削孔の中心部付近から掘削孔の壁面(以下、「孔壁」という。)までの水平距離を、超音波エコーを利用した方式で測定し、予め定められた深度毎の掘削孔中心部付近から孔壁までの距離を記録して、掘削孔の全体的な傾斜や、掘削孔の直径、孔壁の部分的な崩壊の有無等を確認している。
【0004】
しかしながら、従来の超音波側壁測定器を用いた測定では、孔壁が垂直面に対して大きく傾斜している場合は、傾斜した孔壁までの距離の測定精度が著しく悪く、測定自体ができない場合もある。これは、従来の超音波側壁測定器では、超音波を水平方向に発振しているため、傾斜の大きな孔壁に対しては反射波の音圧が著しく小さくなってしまうためである。以下、これに関して、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0005】
従来の超音波側壁測定器では超音波を水平方向に発振しているため、一例として図13(A)に示すように、測定対象が垂直な孔壁の場合は当該孔壁で反射された超音波(反射波)も180度進行方向を変えられ、超音波を発振した超音波振動子に対して垂直に戻ってくる結果、受振する超音波の音圧レベルが比較的高く、高精度で距離の測定を行うことができる。
【0006】
これに対し、一例として図13(B)に示すように、傾斜が比較的大きな孔壁に対しては上記反射波の進行方向が入射波の進行方向に対して180度とはならない。すなわち、発振された超音波は傾斜された孔壁に当たり、その多くが拡散ないし屈折され、超音波振動子に戻ってくる超音波(反射波)の音圧レベルが著しく小さくなり、乱反射や雑音との区別ができなくなる結果、距離の測定を行うことができない場合が多い。
【0007】
図14には、一部に比較的大きな傾斜部を有する掘削孔の頂部側から底部側に向けて超音波振動子を移動させつつ、反射波の音圧レベルを測定する場合の、Aモード表示の一例が示されている。同図に示すように、この場合、垂直な孔壁部分を測定する際には超音波振動子から孔壁までの水平方向の距離に応じた時間で反射波に相当する比較的大きな音圧レベルが検知されるため、予め定められた閾値以上となる音圧レベルを検出することによって反射波を特定することができる一方、上記傾斜部を測定する際には、当該孔壁からの反射波の音圧レベルが低すぎる結果、上記予め定められた閾値以上となる音圧レベルを検出することができず、反射波を特定できない場合が多い。
【0008】
これに対し、従来、掘削孔の傾斜状態を測定するための技術として、特許文献1には、掘削孔の掘削工事において、掘削機に設けられた深度計および傾斜センサからの、深度変化量に比例する上昇または下降の深度パルスおよび掘削予定の中心線に垂直なX,Y2方向における、掘削孔各点の中心線に対する傾斜角信号をうけて、掘削孔の現在深度、前記中心線からの偏位量を求める装置であって、傾斜センサの出力をAD変換する2チャネルAD変換器と、該AD変換器出力および前記深度パルスを入力する演算処理装置と、該演算処理装置の出力を表示する表示機器とからなり、前記演算処理装置は一定時間ごとにその時間範囲内の上昇・下降の深度パルスの増分カウント値の差を計算し、その差を累積して現在深度を計算する手段と、所定の計測深度範囲ごとに、前記AD変換器の出力信号からX,Y方向の平均傾斜角および偏位量増分を計算する手段と、前記X・Y方向偏位量増分を累積してX・Y方向偏位量を計算する手段と、前記各手段により得られた深度、X・Y方向平均傾斜角、X・Y方向偏位量を表示する出力手段と、を備えたことを特徴とする掘削孔の傾斜測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−253695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、その対象が掘削孔の全長での傾斜状態を測定するものとされているため、掘削孔の部分的な傾斜を測定することはできず、一部に傾斜を有する孔壁の形状を測定することができない、という問題点があった。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、より確実に孔壁の形状を測定することができる掘削孔測定装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の掘削孔測定装置は、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段と、前記検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返す位置特定手段と、前記位置特定手段によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶する記憶手段と、を備えている。
【0013】
請求項1記載の掘削孔測定装置によれば、位置特定手段により、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理が実行され、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向が変更されて前記特定処理が実行されることを予め定められた回数を上限として繰り返される。
【0014】
そして、本発明では、前記位置特定手段によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報が記憶手段によって記憶される。なお、上記記憶手段には、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュEEPROM(Flash EEPROM)等の半導体記憶素子、フレキシブル・ディスク等の可搬記録媒体やハードディスク等の固定記録媒体、或いはネットワークに接続されたサーバ・コンピュータ等に設けられた外部記憶装置が含まれる。
【0015】
このように、請求項1記載の掘削孔測定装置によれば、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返し、前記特定処理によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶しているので、より確実に孔壁の形状を測定することができる。
【0016】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記検知手段を、予め定められた複数の方向の各々に対して個別に超音波が送信可能に構成してもよい。これにより、より低コストで孔壁の形状を測定することができる。
【0017】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記位置特定手段が、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部および底部の何れか一方から他方に向けて移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を再度実行してもよい。これにより、より効率よく孔壁の形状を測定することができる。
【0018】
特に、請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記位置特定手段が、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部から底部に向けて往路移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行した後、前記検知手段を、前記掘削孔の底部から頂部に向けて復路移動させつつ、前記往路移動の際の前記特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更した状態で前記特定処理を再度実行してもよい。これにより、より効率よく孔壁の形状を測定することができる。
【0019】
さらに、本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記位置特定手段によって前記予め定められた回数だけ前記特定処理を実行しても前記位置が特定できなかった場合に、当該位置が特定できなかったことを報知する処理を実行する報知手段をさらに備えてもよい。これにより、孔壁の形状を測定できなかったことを容易に把握することができる。なお、本発明に係る報知手段による報知には、ディスプレイ装置等の表示装置による可視表示による報知、プリンタ等の画像形成装置による永久可視表示による報知、およびスピーカ等の発音装置による可聴表示による報知が含まれる。
【0020】
一方、上記目的を達成するために、請求項6記載のプログラムは、コンピュータを、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返す位置特定手段と、前記位置特定手段によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶する記憶手段と、として機能させるためのものである。
【0021】
従って、請求項6に記載のプログラムによれば、コンピュータに対して請求項1記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1記載の発明と同様に、より確実に孔壁の形状を測定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返し、前記特定処理によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶しているので、より確実に孔壁の形状を測定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る掘削孔測定システムの全体構成を示す側面断面図である。
【図2】実施の形態に係るセンサ部の要部構成を示す側面断面図である。
【図3】実施の形態に係る掘削孔測定装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る掘削孔測定装置に備えられた二次記憶部の主な記憶内容を示す模式図である。
【図5】実施の形態に係る掘削孔設計情報データベースの構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態に係る測定結果情報データベースの構成を示す模式図である。
【図7】実施の形態に係る掘削孔測定プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施の形態に係る掘削孔測定プログラムによる掘削孔の傾斜部分の測定法の説明に供する側面断面図である。
【図9】実施の形態に係る測定結果画面の一例を示す概略図である。
【図10】実施の形態に係る掘削孔測定プログラムの処理の説明に供する説明図である。
【図11】実施の形態に係るセンサ部の他の構成例を示す側面断面図である。
【図12】実施の形態に係る掘削孔測定法の他の例の説明に供する側面断面図である。
【図13】従来技術の問題点の説明に供する側面断面図である。
【図14】従来技術の問題点の説明に供する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0025】
まず、図1を参照して、本発明が適用された掘削孔測定システム10の全体構成を説明する。
【0026】
同図に示すように、本実施の形態に係る掘削孔測定システム10は、測定対象とする掘削孔50に安定液32が満たされた状態で当該掘削孔50の壁面(以下、「孔壁」という。)52の形状を測定するものであり、センサ部12、昇降装置16、および当該システム10の中核となる掘削孔測定装置20を備えている。
【0027】
センサ部12は、掘削孔50の内部の予め定められた位置(本実施の形態では、掘削孔50の平面視中央部)から孔壁52の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の孔壁52からの反射波を検知するものである。
【0028】
図2に示すように、センサ部12は、断面視楕円状の縦長の球状に構成されており、その周辺部の予め定められた複数の位置に超音波振動子が設けられている。なお、同図では、錯綜を回避するために図示を一部省略するが、本実施の形態に係るセンサ部12には、超音波の送信方向が水平方向とされた超音波振動子12Aと、超音波の送信方向が水平方向より下方に45度傾斜した方向となる超音波振動子12Bとの一対の超音波振動子(以下、「対構成超音波振動子群」という。)が、センサ部12の外周面における平面視90度毎の4箇所に対して設けられている。
【0029】
ここで、各超音波振動子12A,12Bは、各々、超音波を送信した後、当該超音波の孔壁52からの反射波を検知して当該反射波の音圧レベルを示す信号(以下、「音圧信号」という。)を出力するように構成されている。
【0030】
一方、昇降装置16は、中央部にセンサ部12が取り付けられた取付部14を鉛直方向に下降ないし上昇させるものであり、掘削孔50の頂部壁面と地面30とを仕切る表層ケーシング18に取り付けられている。なお、本実施の形態に係る昇降装置16には、センサ部12の深度を測定するための水圧計、エンコーダ等といった図示しない深度測定装置が設けられている。
【0031】
また、掘削孔測定装置20は、センサ部12における各超音波振動子12A,12Bによって超音波を送信した時点から反射波を受信した時点までの時間に基づいて孔壁52の位置を特定し、特定した位置を示す情報を記録するものであり、表層ケーシング18における昇降装置16の取り付け位置の近傍に取り付けられている。
【0032】
次に、図3を参照して、掘削孔測定システム10において特に重要な役割を有する掘削孔測定装置20の電気系の要部構成を説明する。
【0033】
同図に示すように、本実施の形態に係る掘削孔測定装置20は、掘削孔測定装置20全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)20Aと、CPU20Aによる各種処理プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM20Bと、各種パラメータ等が予め記憶されたROM20Cと、各種情報を記憶するために用いられる記憶手段として機能する二次記憶部(ここでは、ハードディスク装置)20Dと、各種情報を入力するために用いられる操作パネル20Eと、各種情報を表示するために用いられるディスプレイ20Fと、外部装置等との間で各種情報の授受を行う外部インタフェース20Gと、外部装置等との間で通信を行う通信部20Hと、が備えられており、これら各部はシステムバスBUSにより電気的に相互に接続されている。
【0034】
従って、CPU20Aは、RAM20B、ROM20C、および二次記憶部20Dに対するアクセス、操作パネル20Eを介した各種入力情報の取得、ディスプレイ20Fに対する各種情報の表示、外部インタフェース20Gを介した外部装置等との間の各種情報の授受、および通信部20Hを介した外部装置等との間の通信を各々行うことができる。
【0035】
なお、外部インタフェース20Gには、前述したセンサ部12および昇降装置16が電気的に接続されており、CPU20Aは、センサ部12の各超音波振動子12A,12Bに対する超音波の送信の制御、各超音波振動子12A,12Bから出力される音圧信号の受信、昇降装置16に設けられた図示しない深度測定装置によるセンサ部12の深度の把握、および昇降装置16によるセンサ部12の下降および上昇の制御を各々行うことができる。
【0036】
一方、図4には、掘削孔測定装置20に備えられた二次記憶部20Dの主な記憶内容が模式的に示されている。
【0037】
同図に示すように、二次記憶部20Dには、各種データベースを記憶するためのデータベース領域DBと、掘削孔測定装置20の各部を制御するための制御プログラムや各種処理を行うためのアプリケーション・プログラム等を記憶するためのプログラム領域PGと、が設けられている。
【0038】
また、データベース領域DBには、掘削孔設計情報データベースDB1および測定結果情報データベースDB2が含まれる。以下、各データベースの構成について詳細に説明する。
【0039】
掘削孔設計情報データベースDB1は、掘削孔50の設計上の形状を示す情報が予め登録されたものであり、一例として図5に示されるように、深度および直径の各情報が記憶されるように構成されている。
【0040】
上記深度は、掘削孔50の頂部からの深さを示す情報であり、上記直径は、掘削孔50の対応する深度の位置における直径を示す情報である。例えば、図5に示す例では、深度が1.0cmの位置における掘削孔50の設計上の直径が2.0mであることを示している。
【0041】
一方、測定結果情報データベースDB2は、掘削孔測定システム10による掘削孔50に対する測定結果を示す情報が記憶されるものであり、一例として図6に示されるように、深度および水平距離の各情報が記憶されるように構成されている。
【0042】
上記深度は、掘削孔設計情報データベースDB1における深度と同様の情報であり、上記水平距離は、センサ部12が掘削孔50の対応する深度に位置されている状態で当該センサ部12に設けられた4組の対構成超音波振動子群の各々による測定によって得られた、センサ部12から孔壁52までの水平距離を示す情報である。例えば、図6に示す例では、各対構成超音波振動子群による、深度が1cmの位置におけるセンサ部12から孔壁52までの水平距離の測定結果が、各々1.01m、1.02m、1.02m、1.01mであったことを示している。
【0043】
次に、図7を参照して、本実施の形態に係る掘削孔測定システム10の作用を説明する。なお、図7は、掘削孔測定装置20の操作パネル20E等を介して実行指示が受け付けられた際に、掘削孔測定装置20のCPU20Aによって実行される掘削孔測定プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。また、ここでは、錯綜を回避するために、掘削孔設計情報データベースDB1が予め構築されており、さらに、センサ部12が掘削孔50の平面視中央部における頂部に位置されている場合について説明する。
【0044】
同図のステップ100では、掘削孔50の頂部からのセンサ部12の予め定められた速度(本実施の形態では、1.0cm/s)での下降動作を開始するように昇降装置16を制御し、次のステップ102では、センサ部12が予め定められた距離(本実施の形態では、1.0cm)だけ下降するまで待機した後、次のステップ104にて、センサ部12の下降動作を停止するように昇降装置16を制御する。
【0045】
次のステップ106では、4組の対構成超音波振動子群のうちの何れか1組の対構成超音波振動子群(以下、「第1処理対象振動子群」という。)における超音波振動子12Aから予め定められた周波数(本実施の形態では、90kHz)の超音波を、予め定められた期間(本実施の形態では、1マイクロ秒間)だけ送信(発振)するようにセンサ部12を制御し、次のステップ108にて、当該超音波振動子12Aからの予め定められた期間(本実施の形態では、2秒間)の音圧信号の受信待ちを行う。
【0046】
次のステップ110では、受信した音圧信号における最大音圧レベルが予め定められた閾値以上であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ112に移行する。なお、本実施の形態に係る掘削孔測定プログラムでは、上記予め定められた閾値として、受信した音圧信号における最大音圧レベルが当該閾値以上となった場合に、当該最大音圧レベルが、超音波振動子12Aから送信した超音波の反射波に対応するものであると見なすことのできる値として、実機を用いた実験やコンピュータ・シミュレーション等によって予め得られた値を適用している。
【0047】
ステップ112では、上記ステップ106の処理によって超音波振動子12Aより超音波を送信した時点から、上記ステップ110の処理によって上記予め定められた閾値以上であると判定された最大音圧レベルに対応する信号を当該超音波振動子12Aによって受信した時点までの期間(以下、「超音波送受信期間」という。)tおよび安定液32における音速vを次の(1)式に代入することにより、この時点のセンサ部12から孔壁52までの水平距離Lを演算する。
【0048】
【数1】
次のステップ114では、上記ステップ112の処理によって得られた水平距離Lを、測定結果情報データベースDB2における、この時点のセンサ部12の深度に対応する記憶領域に記憶し、その後にステップ118に移行する。
【0049】
一方、上記ステップ110において否定判定となった場合にはステップ116に移行し、予め定められた測定エラーを示す情報(以下、「エラー情報」という。)を、測定結果情報データベースDB2における対応する深度に対応する記憶領域に記憶し、その後にステップ118に移行する。なお、上記ステップ114または上記ステップ116の処理を実行する際に、対応する深度が測定結果情報データベースDB2に記憶されていない場合には、当該深度も測定結果情報データベースDB2に記憶するようにする。
【0050】
ステップ118では、4組の対構成超音波振動子群の全てを用いて上記ステップ106〜ステップ116の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ106に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ120に移行する。なお、上記ステップ106〜ステップ118の処理を繰り返し実行する際には、それまでに処理対象としなかった対構成超音波振動子群を第1処理対象振動子群として適用するようにする。
【0051】
ステップ120では、センサ部12が掘削孔50の底部まで到達したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ100に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ122に移行する。ステップ100〜ステップ120の繰り返し処理により、センサ部12が掘削孔50の頂部から底部に至る往路移動を行っている際に測定された、予め定められた深度(本実施の形態では、1cm)毎の対構成超音波振動子群の各々により得られた水平距離Lまたはエラー情報が、測定結果情報データベースDB2に記憶されることになる。
【0052】
ステップ122では、掘削孔50の底部からのセンサ部12の予め定められた速度(本実施の形態では、1.0cm/s)での上昇動作を開始するように昇降装置16を制御し、次のステップ124では、センサ部12が予め定められた距離(本実施の形態では、1.0cm)だけ上昇するまで待機した後、次のステップ126にて、センサ部12の上昇動作を停止するように昇降装置16を制御する。
【0053】
次のステップ128では、4組の対構成超音波振動子群のうちの何れか1組の対構成超音波振動子群(以下、「第2処理対象振動子群」という。)における超音波振動子12Bから予め定められた周波数(本実施の形態では、90kHz)の超音波を、予め定められた期間(本実施の形態では、1マイクロ秒間)だけ送信(発振)するようにセンサ部12を制御し、次のステップ130にて、当該超音波振動子12Bからの予め定められた期間(本実施の形態では、2秒間)の音圧信号の受信待ちを行う。
【0054】
次のステップ132では、受信した音圧信号における最大音圧レベルが、上記ステップ110の処理で適用した上記予め定められた閾値以上であるか否かを判定し、否定判定となった場合は後述するステップ138に移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ134に移行する。
【0055】
ステップ134では、センサ部12の移動経路上の位置から孔壁52までの水平距離Lxを導出する。以下、図8を参照して、水平距離Lxの導出手順について説明する。
【0056】
まず、上記ステップ128の処理によって超音波振動子12Bから超音波を送信した時点から、上記ステップ132の処理によって上記予め定められた閾値以上であると判定された音圧レベルに対応する信号を当該超音波振動子12Bによって受信した時点までの期間(超音波送受信期間)tsおよび安定液32における音速vを次の(2)式に代入することにより、この時点のセンサ部12から孔壁52までの距離Lsを演算する。
【0057】
【数2】
次に、距離Lsおよび超音波振動子12Bの水平方向に対する傾斜角θ(本実施の形態では、45°)を次の(3)式に代入することにより、水平距離Lxを演算する。
【0058】
【数3】
また、水平距離Lx、傾斜角θ、およびこの時点のセンサ部12の深度Dsを次の(4)式に代入することにより、水平距離Lxに対応する深度Dxを演算する。
【0059】
【数4】
次のステップ136では、上記ステップ134の処理によって得られた水平距離Lxを、測定結果情報データベースDB2における深度Dxに対応する記憶領域に記憶(上書き)し、その後にステップ138に移行する。
【0060】
ステップ138では、4組の対構成超音波振動子群の全てを用いて上記ステップ128〜ステップ136の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ128に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ140に移行する。なお、上記ステップ128〜ステップ138の処理を繰り返し実行する際には、それまでに処理対象としなかった対構成超音波振動子群を第2処理対象振動子群として適用するようにする。
【0061】
ステップ140では、センサ部12が掘削孔50の頂部まで到達したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ122に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ142に移行する。ステップ122〜ステップ140の繰り返し処理により、センサ部12が掘削孔50の底部から頂部に至る復路移動を行っている際に測定された水平距離Lxが測定結果情報データベースDB2に上書き記憶されることになる。
【0062】
ステップ142では、測定結果情報データベースDB2にエラー情報が存在するか否かを判定することにより、以上の処理では測定できなかった領域が存在しないか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ144に移行して、以上の処理によって得られた測定結果情報データベースDB2の各情報を用いて、予め定められた構成とされた測定結果画面を表示するようにディスプレイ20Fを制御し、その後に本掘削孔測定プログラムを終了する。
【0063】
図9には、上記ステップ144の処理によって、掘削孔測定装置20のディスプレイ20Fに表示される測定結果画面の一例が示されている。同図に示される例では、各々センサ部12に互いに背中合わせで配置された二対の対構成超音波振動子群によって測定された水平距離を用いて作成した孔壁52の断面形状を示す画像が測定結果画面として表示される。従って、ユーザは、当該測定結果画面を参照することによって、掘削孔50の測定結果に基づく形状を視覚的かつ容易に把握することができる。
【0064】
一方、上記ステップ142において否定判定となった場合にはステップ146に移行し、予め定められた報知処理を実行した後に本掘削孔測定プログラムを終了する。なお、本実施の形態に係る掘削孔測定プログラムでは、上記ステップ146において実行される報知処理として、掘削孔測定装置20に内蔵された図示しないブザーを鳴動させる処理を適用しているが、これに限らず、ディスプレイ20Fにより未測定領域がある旨を表示する処理、通信部20Hを介して未測定領域がある旨を示す情報を外部装置等に送信する処理等、他の処理を適用してもよいことは言うまでもない。
【0065】
図10には、本実施の形態に係る掘削孔測定プログラムにより実行される処理が模式的に示されている。
【0066】
同図の手順Aに示すように、掘削孔測定プログラムのステップ100〜ステップ104の処理を繰り返し実行することにより、センサ部12が掘削孔50の頂部から底部に至る往路移動を予め定められた距離(本実施の形態では、1cm)毎に間欠的に行う一方、ステップ106〜ステップ114の処理により、センサ部12の移動が停止された状態で、超音波の送信方向が水平方向とされた超音波振動子12Aにより得られた超音波送受信期間tに基づいて水平距離L(同図では、「L1」、「L2」と表記。)が得られて、記憶される。
【0067】
しかしながら、この際、孔壁52の傾斜部分(同図における深度D1から深度D2までの部分)については、超音波振動子12Aから受信された音圧信号における最大音圧レベルが予め定められた閾値以上とならないため、この部分に関しては、一例として同図の手順Bに示すように、正確な水平距離Lを得ることができない。
【0068】
そこで、本実施の形態に係る掘削孔測定プログラムでは、ステップ116の処理により、一例として同図の手順Cに示すように、孔壁52の傾斜部分については測定データを破棄(本実施の形態では、エラー情報を記憶)する。
【0069】
そして、掘削孔測定プログラムのステップ122〜ステップ140の処理により、一例として同図の手順Dに示すように、センサ部12が掘削孔50の底部から頂部に至る復路移動を行う際に、上記往路移動の際に得られなかった水平距離を、超音波の送信方向が水平方向に対して下方に45°傾斜した超音波振動子12Bにより得られた超音波送受信期間tsに基づいて水平距離Lxが得られて、記憶される。
【0070】
以上の処理によって得られた、各深度毎の孔壁52までの水平距離に基づいて、一例として同図の手順Eに示すように、傾斜部分に関しても、その形状を表示することが可能となる。
【0071】
なお、超音波は直線状に狭い範囲を維持しながら進行するのではなく、進行方向に対して直交する方向に拡がる指向角を有しているので、測定対象とする孔壁面に必ずしも垂直に発振する必要はなく、大まかに垂直であればよい。従って、傾斜角の小さな孔壁を測定する場合には、敢えて超音波の進行方向を傾斜させる必要はない。
【0072】
また、この指向角は、超音波の周波数によって変わるため、適用する周波数に応じて、超音波振動子の発振方向傾斜角を設定する形態としてもよい。
【0073】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段(本実施の形態では、センサ部12)によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数(本実施の形態では、1回)を上限として繰り返し、前記特定処理によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶しているので、より確実に孔壁の形状を測定することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、前記検知手段を、予め定められた複数の方向(本実施の形態では、水平方向および水平方向に対して下方に45°傾斜した方向の2つの方向)の各々に対して個別に超音波が送信可能に構成しているので、より低コストで孔壁の形状を測定することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部および底部の何れか一方から他方に向けて移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を再度実行しているので、より効率よく孔壁の形状を測定することができる。
【0076】
特に、本実施の形態では、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部から底部に向けて往路移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行した後、前記検知手段を、前記掘削孔の底部から頂部に向けて復路移動させつつ、前記往路移動の際の前記特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更した状態で前記特定処理を再度実行しているので、より効率よく孔壁の形状を測定することができる。
【0077】
さらに、本実施の形態では、前記予め定められた回数だけ前記特定処理を実行しても前記位置が特定できなかった場合に、当該位置が特定できなかったことを報知する処理を実行しているので、孔壁の形状を測定できなかったことを容易に把握することができる。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0080】
例えば、上記実施の形態では、センサ部12として一対の超音波振動子12A,12Bが4対で合計8個の超音波振動子が設けられたものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0081】
図11には、他のセンサ部12’の構成例が示されている。
【0082】
同図に示すセンサ部12’は、断面視8角形状の多面体状に構成されており、その周辺部の予め定められた複数の面に超音波振動子12A〜12Cが設けられている。なお、同図では、錯綜を回避するために図示を一部省略するが、センサ部12’には、超音波の送信方向が水平方向とされた超音波振動子12Aと、超音波の送信方向が水平方向より下方に45度傾斜した方向となる超音波振動子12Bと、超音波の送信方向が水平方向より上方に45度傾斜した方向となる超音波振動子12Cとの3つの超音波振動子が、センサ部12’の外周面における平面視所定角度(一例として、60°)毎の複数箇所(一例として、6箇所)に対して設けられている。
【0083】
また、センサ部12に設ける超音波振動子の数を1つとし、当該超音波振動子を、超音波の送信方向が変化するように、モータ等を用いて回転移動させることにより、複数の方向に対して超音波を送信することができるように構成する形態としてもよい。この場合、超音波振動子の回転移動のための制御を伴うため、当該制御による負荷は増加するものの、超音波振動子の数を最小限の1つとすることができる結果、センサ部12の低コスト化に寄与することができる。
【0084】
また、上記実施の形態では、センサ部12の移動を停止した状態でセンサ部12から孔壁52までの水平距離を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、センサ部12の移動を停止させずに上記水平距離を測定する形態としてもよい。この場合、上記実施の形態に比較して、測定時間を短縮することができる。
【0085】
また、上記実施の形態では、センサ部12の復路移動時において、予め定められた移動距離(上記実施の形態では、1.0cm)毎に当該移動経路上の位置から孔壁52までの水平距離Lxを測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、センサ部12の往路移動時に測定できなかった領域のみ、復路移動時に測定する形態としてもよい。
【0086】
この場合、一例として図12に示すように、往路移動時に測定できなかった領域の深度範囲がDx1からDx2までの範囲であり、深度Dx1の直前に測定された水平距離LがL1で、深度Dx2の直後に測定された水平距離LがL2とした場合、次の(5)式〜(6)式により得られる深度Ds2から次の(7)式〜(8)式により得られる深度Ds1までの範囲を測定すればよい。
【0087】
【数5】
【0088】
【数6】
なお、上記実施の形態の場合、θが45°であるので、深度Ds1はDx1−L1で求められ、深度Ds2はDx2−L2で求められる。この場合、上記実施の形態に比較して、復路移動時における水平距離の測定のための負荷を大幅に低減することができる。
【0089】
また、上記実施の形態では、昇降装置16および掘削孔測定装置20を表層ケーシング18に取り付けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、昇降装置16および掘削孔測定装置20の少なくとも一方を地面30または表層ケーシング18の上に置く形態としてもよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、センサ部12の形状が断面視楕円状の縦長の球状である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、断面視矩形状、断面視真円状、断面視多角形状等の他の形状とする形態としてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態では、センサ部12の往路移動時に予め定められた方向(上記実施の形態では、水平方向)に超音波を送信して孔壁までの距離を測定する一方、センサ部12の復路移動時に上記予め定められた方向とは異なる方向(上記実施の形態では、水平方向に対して下方に45°傾斜した方向)に超音波を送信して孔壁までの距離を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上記往路移動時に上記予め定められた方向および当該予め定められた方向とは異なる方向の双方に対して超音波を送信することによって孔壁までの距離を測定する形態としてもよい。また、この場合、掘削孔設計情報データベースDB1に登録されている設計上の深度毎の直径に基づいて、上記予め定められた方向への超音波の送信では測定できない孔壁の領域を予め特定し、特定した領域に対してのみ、上記予め定められた方向とは異なる方向に超音波を送信して孔壁までの距離を測定する形態としてもよい。
【0092】
また、上記実施の形態では、センサ部12を往路移動および復路移動の1往復のみ行って孔壁までの距離を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、1往復のみでは測定できない領域が存在した場合には、超音波の送信方向をさらに変更したうえで、上記実施の形態と同様に再度往復移動させて測定することを繰り返す形態としてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態では、超音波振動子により発振する超音波の周波数を固定(上記実施の形態では、90kHz)とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、超音波振動子として、各々異なる周波数の超音波を発振することのできるものを複数適用し、孔壁までの距離が測定できなかった場合に、当該測定時とは異なる周波数の超音波を発振する超音波振動子を適用して再度測定する形態としてもよい。
【0094】
また、上記実施の形態では、本発明を、掘削孔に安定液32が満たされた状態で孔壁の形状を測定する形態に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、安定液32に代えて水が満たされた状態での測定に適用する形態や、これらの液体が満たされておらず、空洞となっている状態での測定に適用する形態等としてもよい。
【0095】
その他、上記実施の形態で説明した掘削孔測定システム10および掘削孔測定装置20の構成(図1〜図4参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な構成要素を削除したり、新たな構成要素を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0096】
また、上記実施の形態で示した掘削孔測定プログラムの処理の流れ(図7参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な処理ステップを削除したり、新たな処理ステップを追加したり、処理ステップの順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0097】
また、上記実施の形態で示した測定結果画面の構成(図9参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、表示内容を変更してもよいことは言うまでもない。
【0098】
例えば、図9に示した測定結果画面に対して、掘削孔設計情報データベースDB1に登録されている掘削孔50の設計上の形状を重ねて表示する形態としてもよい。この場合、予定されていた掘削孔50の形状と、測定された掘削孔50の形状とを容易に比較することができる。
【0099】
また、上記実施の形態で示した各種データベースの構成(図5,図6参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、一部の情報を削除したり、新たな情報を追加したり、記憶位置を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0100】
さらに、上記実施の形態で示した各演算式((1)式〜(4)式参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なパラメータを削除したり、新たなパラメータを追加したり、パラメータを変更したり、演算の順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0101】
10 掘削孔測定システム
12 センサ部(検知手段)
14 取付部
16 昇降装置
18 表層ケーシング
20 掘削孔測定装置
20A CPU(位置特定手段)
20D 二次記憶部(記憶手段)
DB1 掘削孔設計情報データベース
DB2 測定結果情報データベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段と、
前記検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返す位置特定手段と、
前記位置特定手段によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶する記憶手段と、
を備えた掘削孔測定装置。
【請求項2】
前記検知手段は、予め定められた複数の方向の各々に対して個別に超音波が送信可能に構成されている
請求項1記載の掘削孔測定装置。
【請求項3】
前記位置特定手段は、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部および底部の何れか一方から他方に向けて移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を再度実行する
請求項1または請求項2記載の掘削孔測定装置。
【請求項4】
前記位置特定手段は、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部から底部に向けて往路移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行した後、前記検知手段を、前記掘削孔の底部から頂部に向けて復路移動させつつ、前記往路移動の際の前記特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更した状態で前記特定処理を再度実行する
請求項3記載の掘削孔測定装置。
【請求項5】
前記位置特定手段によって前記予め定められた回数だけ前記特定処理を実行しても前記位置が特定できなかった場合に、当該位置が特定できなかったことを報知する処理を実行する報知手段
をさらに備えた請求項1から請求項4の何れか1項記載の掘削孔測定装置。
【請求項6】
コンピュータを、
掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返す位置特定手段と、
前記位置特定手段によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶する記憶手段と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段と、
前記検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返す位置特定手段と、
前記位置特定手段によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶する記憶手段と、
を備えた掘削孔測定装置。
【請求項2】
前記検知手段は、予め定められた複数の方向の各々に対して個別に超音波が送信可能に構成されている
請求項1記載の掘削孔測定装置。
【請求項3】
前記位置特定手段は、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部および底部の何れか一方から他方に向けて移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を再度実行する
請求項1または請求項2記載の掘削孔測定装置。
【請求項4】
前記位置特定手段は、前記検知手段を、前記掘削孔の頂部から底部に向けて往路移動させつつ、前記超音波を前記予め定められた方向に向けて送信させた状態で前記特定処理を実行した後、前記検知手段を、前記掘削孔の底部から頂部に向けて復路移動させつつ、前記往路移動の際の前記特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった領域について、前記超音波の送信方向を変更した状態で前記特定処理を再度実行する
請求項3記載の掘削孔測定装置。
【請求項5】
前記位置特定手段によって前記予め定められた回数だけ前記特定処理を実行しても前記位置が特定できなかった場合に、当該位置が特定できなかったことを報知する処理を実行する報知手段
をさらに備えた請求項1から請求項4の何れか1項記載の掘削孔測定装置。
【請求項6】
コンピュータを、
掘削孔の内部の予め定められた位置から当該掘削孔の壁面の方向で、かつ予め定められた方向に向けて超音波を送信した後、当該超音波の前記壁面からの反射波を検知する検知手段によって前記超音波を送信した時点から前記反射波を受信した時点までの時間に基づいて前記掘削孔の壁面の位置を特定する特定処理を実行し、当該特定処理によって前記掘削孔の壁面の位置を特定できなかった場合に前記検知手段による前記超音波の送信方向を変更して前記特定処理を実行することを予め定められた回数を上限として繰り返す位置特定手段と、
前記位置特定手段によって特定された前記掘削孔の壁面の位置を示す情報を記憶する記憶手段と、
として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−36590(P2012−36590A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175472(P2010−175472)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
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