説明

掘削機

【課題】開閉時に掘削装置や機器との干渉がほとんどなく、刃口の全面を開放できて掘削装置による作業範囲を広く確保する。
【解決手段】掘削装置15により地山を掘削する刃口21を、山留フレーム22により開閉する刃口開閉装置24Uに、刃口21の上部から後方に伸びる上部レール31と、刃口21の下端から上方からに伸びる垂直部32a、および後部上方に伸びる湾曲部32bと有する下部レール32と、山留フレーム22の両側部に設けられて上部レール31に案内される上ガイドローラ33と、下部レール32に案内される下ガイドローラ34と、上部レール31に沿って山留フレーム22の上端部を押し引きし閉鎖姿勢と開放姿勢との間で変位させる開閉用走行体35とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機本体の刃口から地山を掘削する単数または複数の掘削区画部で、掘削休止時に切羽を保持するために、刃口を山留フレームにより閉鎖する刃口開閉装置を備えた掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、刃口を閉鎖する開閉扉は、その上端部を支点として下端部を後方に跳ね上げ、刃口を開放するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−38295号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、開閉扉を後方に跳ね上げると、刃口から後方に配置された掘削装置や機器に干渉するおそれがあり、開閉扉の開閉時に掘削装置や機器を後退させる必要がある。
また開放された姿勢で、開閉扉が刃口の上方から後方にかけて天井部に配置されることから、掘削装置の作業範囲が制約をうける恐れがある。
【0005】
本発明は上記問題点を解決して、開閉時に掘削装置や機器との干渉がほとんどなく、刃口の全面を開放できて掘削装置による作業範囲を広く確保できる刃口開閉装置を有する掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の掘削機は、
フレーム本体に形成された単数または複数の掘削区画部の前面で、掘削装置を出退してまたは人力により地山を掘削する刃口を、切羽を支持可能な山留フレームにより開閉する刃口開閉装置を備えた掘削機であって、
掘削区画部の両側で刃口の上部から後方に伸びる上部レールと、
掘削区画部の両側で刃口の下端から上方に伸びる垂直部と、当該垂直部から湾曲中心が刃口の中央部後方に位置して後部上方に伸びる湾曲部とを有する下部レールと、
山留フレームの両側部に設けられて前記上部レールに案内される上ガイド部材および前記下部レールに案内される下ガイド部材と、
山留フレームを、刃口の開口面に沿う閉鎖姿勢と、刃口より所定距離後方の上部で略水平状態となる開放姿勢との間で変位させる開閉駆動装置とを具備し、
当該開閉駆動装置を、前記上部レールに沿って移動自在で山留フレームの上端部を押し引き駆動する開閉用走行体により構成したものである。
【0007】
請求項2記載の掘削機は、
フレーム本体に形成された単数または複数の掘削区画部の前面で、掘削装置を出退してまたは人力により地山を掘削する刃口を、切羽を支持可能な山留フレームにより開閉する刃口開閉装置を備えた掘削機であって、
掘削区画部の両側で刃口の上部から後方に伸びる上部レールと、
掘削区画部の両側で刃口の下端から上方に伸びる垂直部と、当該垂直部の上端から所定案内角で後部上方に傾斜する後傾部とを有する下部レールと、
山留フレームの両側部に設けられて前記上部レールに案内される上ガイド部材および前記下部レールに案内される下ガイド部材と、
山留フレームを、刃口の開口面に沿う閉鎖姿勢と、刃口より所定距離後方の上部で略水平状態となる開放姿勢との間で変位させる開閉駆動装置とを具備し、
前記開閉駆動装置を、前記閉鎖姿勢と所定の後傾角で傾斜する後傾姿勢との間で山留フレームを変位させる第1開閉ジャッキと、前記後傾姿勢と前記開放姿勢との間で山留フレームを変位させる第2開閉ジャッキとで構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、開閉駆動装置により、開閉用走行体を移動させて上部レールに沿って山留フレームの上端部を押し引きし、下部ガイド部材を下部レールの湾曲部に沿って移動させて山留フレームを後傾させるので、刃口後方にある掘削装置などの機器と山留フレームとの干渉がなくなり、掘削装置などの機器を後退させる必要がなく、山留フレームをスムーズに短時間で開閉することができる。また山留フレームは、刃口より所定距離後退させた後部上方で略水平状態となる開放姿勢で収容されるので、刃口の全面が開放され、掘削装置による掘削範囲を広く確保することができる。さらに、山留フレームは、開放姿勢で前面が上方に向く略水平姿勢で収容されるので、山留フレームの前面に付着した泥土が落下するようなこともなく、またたとえば前面に地山を弾性支持するエアバッグなどを設けた場合には、エアバッグが下方に垂れ下がるようなことがなく、良好に収容することができるという効果を奏することができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、第1開閉ジャッキと第2開閉ジャッキの2組を使用して、直立状態で刃口を閉鎖する閉鎖姿勢と、上部レールに沿う略水平姿勢となる開放姿勢との間で山留フレームを変位させることができ、下部レールや刃口開閉装置の構造を簡易化することができる。また、下部ガイド部材を下部レールの後傾部に沿って移動させて山留フレームを後傾させるので、刃口後方にある掘削装置などの機器と山留フレームとの干渉がなくなり、掘削装置などの機器を後退させる必要がなく、山留フレームをスムーズに短時間で開閉することができる。さらに、開放された刃口は全面が開放されるので、掘削装置による掘削範囲を広く確保することができる。さらに、山留フレームは、開放姿勢で前面が上方に向く略水平姿勢で収容されるので、山留フレームの前面に付着した泥土が落下するようなこともなく、またたとえば前面に地山を弾性支持するエアバッグなどを設けた場合には、エアバッグが下方に垂れ下がるようなことがなく、良好に収容することができるという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る刃口開閉装置を備えた掘削機の実施例1を示し、掘削機の掘削休止状態を示す縦断面図である。
【図2】掘削機の掘削運転状態を示す縦断面図である。
【図3】掘削機の正面図である。
【図4】(a)〜(c)は山留フレームとロック装置の配置を示し、(a)は平面部分断面図、(b)は正面図、(c)は側面部分断面図である。
【図5】開閉用走行体を示す正面図である。
【図6】(a)〜(c)は上辺ロック装置を示し、(a)は非ロック状態の平面図、(b)は非ロック状態の側面図、(c)はロック状態の平面図である。
【図7】(a),(b)は側辺ロック装置を示し、(a)は側面図、(b)は正面断面図である。
【図8】(a)〜(d)は上掘削区画部の刃口開閉装置の動作を説明する縦断面図で、(a)は閉鎖姿勢、(b)は後傾姿勢、(c)は開放手前の後傾姿勢、(d)は開放姿勢を示す。
【図9】(a)〜(d)は下掘削区画部の刃口開閉装置の動作を説明する縦断面図で、(a)は閉鎖姿勢、(b)は後傾姿勢、(c)は開放手前の後傾姿勢、(d)は開放姿勢を示す。
【図10】(a)〜(d)は刃口開閉装置の実施例2の開閉動作を説明する縦断面図で、(a)は閉鎖姿勢、(b)は後傾姿勢、(c)は開放手前の後傾姿勢、(d)は開放姿勢を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
以下、発明を実施するための刃口開閉装置を備えた掘削機の実施例1を図1〜図9に基づいて説明する。
[実施例1]
図1〜図3に示すように、この実施例1は、山留フレーム22により刃口21を開閉可能な刃口開閉装置24U,24Dを具備した開放型の掘削機に関するもので、矩形断面の掘削機本体11は、前胴11Aと後胴11Bとが連結ジャッキ19により傾動自在に連結されている。前胴11Aは、上下方向の中央部に設置された横隔壁12により上下2段に区画され、上下段の区画部分は、3枚の縦隔壁13により一定間隔ごとに区画されることにより、上下2段で左右4室の合計8室の上下の掘削区画部14U,14Dが形成されている。
【0012】
各掘削区画部14U,14Dには、それぞれバックホータイプの掘削装置15が設置され、掘削装置15の側部には、作業員により掘削装置15を操作する操作器が設けられている。また各掘削区画部14U,14Dには、掘削した土砂を後胴11B側に搬出するコンベヤ式の排土装置17が設けられている。さらに後胴11Bには、図2に示すように、トンネル内に覆工体(図示せず)を組み立てるセグメント組立装置18と、組み立てられた覆工体を反力受けとして掘削機を前進させる推進ジャッキ16とが設けられている。
【0013】
なお、図1〜図3では、地山を掘削する掘削装置15を設けているが、掘削装置15を設置せず、削岩機やボーリング機やスコップなどの手動工具を用いて人力により掘削するようにしてもよい。
【0014】
掘削休止時に切羽を保護するために、各掘削区画部14U,14Dの刃口21を、山留フレーム22により開閉する刃口開閉装置24U,24Dが設けられている。
山留フレーム22は、図4に示すように、左右側辺板22a、上下辺板22bおよび背面板22cから形成されて前面が開放された筐体22dと、筐体22d内にそれぞれ所定間隔ごとに交差して配置された2枚の縦仕切板22eおよび2枚の横仕切板22fとにより区画された9個の空間部22gと、これら空間部22gにそれぞれ前方に膨出自在に装着されて切羽を弾性支持するエアバック23とで構成されている。
【0015】
また刃口21には、閉鎖姿勢の山留フレーム22の開動を規制し切羽の土圧を保持するために、複数の上辺ロック装置25および複数の側辺ロック装置26が設けられている。
(山留フレームのロック装置)
側辺ロック装置26は、図7に示すように、前胴11Aの側壁または縦隔壁13に矩形枠形のケーシング26aが取り付けられており、このケーシング26a内の上部または下部にストッパブロック26cが水平ピン26bを介して回動自在に支持され、側辺ロックシリンダ26dのシリンダ本体がケーシング26a反対側のブラケット26gに支持ピン26eを介して回動自在に支持されている。そしてストッパブロック26cの受動端に側辺ロックシリンダ26dのピストンロッドが連結ピン26fを介して連結されている。したがって、側辺ロックシリンダ26dを収縮してストッパブロック26cをケーシング26a内に倒伏させることにより、山留フレーム22を開放する。また側辺ロックシリンダ26を伸展してストッパブロック26cを起立させ、ケーシング25aからストッパブロック26cの作用端を突出させることにより、山留フレーム25を開動規制し、山留フレーム25に負荷される切羽の土圧や泥水圧を支持することができる。
【0016】
上辺ロック装置25は、図6に示すように、支持ブロック25aにロックリンク25cの固定端が水平ピン25bを介して回動自在に支持され、上辺ロックシリンダ25dのシリンダ本体が支持ピン25eを介して反力受けブラケット25gに回動自在に支持されている。そして上辺ロックシリンダ25dのピストンロッドがロックリンク25cの遊端に連結ピン25fを介して連結されている。したがって、上辺ロックシリンダ25dを収縮してロックリンク25cを倒伏させることにより、山留フレーム22を開放し、上辺ロックシリンダ26dを伸展してロックリンク25cを起立させ遊端部を突出させることにより、その遊端部で山留フレーム22の開動を規制し、切羽の土圧や泥水圧を支持することができる。
【0017】
(刃口開閉装置)
刃口開閉装置24U,24Dは、山留フレーム22を、直立状態で刃口21を閉鎖する閉鎖姿勢と、刃口21より所定距離Lだけ後退した上方位置で略水平状態となる開放姿勢との間で変位させるものであるが、上下の掘削区画部14U,14Dでは、それぞれの天井空間の形状が異なるため、山留フレーム22の開放姿勢が少し異なっている。
【0018】
各上掘削区画部14Uにそれぞれ設置される刃口開閉装置24Uは、前胴11Aの側壁と縦隔壁13の間、左右の縦隔壁13間の対向面に、刃口21の上部から後方に伸びる左右一対の上部レール31と、刃口21の下端から垂直上方に伸び、さらに湾曲して後部上方に伸びる左右一対の下部レール32とが設けられている。一方、山留フレーム22の左右側面板22aの上部に、上部レール31に案内される上ガイドローラ(上ガイド部材)33がそれぞれ設けられ、また左右側面板22aの下部に、下部レール32に案内される下ガイドローラ(下ガイド部材)34がそれぞれ設けられている。この山留フレーム22を開閉駆動する開閉駆動装置として、上部レール31に沿って移動自在で山留フレーム22の上端部を押し引き駆動可能な開閉用走行体35が設けられている。
【0019】
前記上部レール31はチャンネル形断面に形成され、山留フレーム22を閉鎖姿勢から後傾させる前水平部31aと、山留フレーム22と障害物(連結ジャッキ19)との干渉を避けるために下方に変位される傾斜移行部31bと、略水平の開放姿勢で山留フレーム22を保持する後水平部31cとで構成されている。
【0020】
前記下部レール32は、山留フレーム22を直立状態の閉鎖姿勢から後傾させるために、その下端部を上下方向に案内する垂直部32aと、山留フレーム22を刃口20内の掘削機や機器との干渉を避けてさらに後傾させるために後部上方に湾曲された湾曲部32bと、湾曲部32bの後部上端部に設けられた開放端部32cとで構成されている。そして、下部レール32は、垂直部32aがチャンネル形断面に形成され、また湾曲部32bと開放端部32cは、後部および湾曲内径部にフランジ部が形成されて山留フレーム22の重量を支持案内するL字形断面に形成されている。また前記湾曲部32bは、刃口21の中央下部後方に位置する湾曲中心Pとして半径rの円弧状に形成されている。さらに開放端部32cは、上部レール31の前水平部31aの後部近傍に接近されて配置され、開放姿勢での山留フレーム22の下端の収納位置が、刃口21より所定距離Lだけ後方になるように設定されている。
【0021】
前記開閉用走行体35は、図5に示すように、両端部に左右の上部レール31にそれぞれ案内される走行用ローラ35bを有する走行体フレーム35aと、左右の上部レール31の下面に沿ってそれぞれ設けられた走行用ピンラック35cと、走行体フレーム35aに設けられて左右の走行用ピンラック35cに噛合する走行用ピニオン35dをそれぞれ回転駆動する電動式または油圧式の走行用駆動モータ35eとで構成されている。そして開閉用走行体35と山留フレーム22の上端部とが、一対(複数)の押引リンク36によりピンを介して回動および変位自在に連結されている。
【0022】
(刃口開閉装置24Uによる開閉動作)
上掘削区画部14Uにおいて、刃口開閉装置24Uによる山留フレーム22の開閉動作を、図8を参照して説明する。
【0023】
A)閉鎖姿勢の山留フレーム22において、エアバック23のエアを抜いて収縮させ空間部22gに収容した後、側辺ロック装置26と上辺ロック装置25とをそれぞれ解除する[図8(a)実線]。
【0024】
B)開閉用走行体35を上部レール31の前水平部31aに沿って後方に移動させ、押引リンク36により山留フレーム22の上端部を後方に引き出すと、山留フレーム22の上ガイドローラ33が前水平部31aに沿って移動されるとともに、下ガイドローラ34が下部レール32の垂直部32aをゆっくりと上昇し、山留フレーム22が後方に傾倒される[図8(a)仮想線]。
C)開閉用走行体35が前水平部31aから傾斜移行部31bに移動して山留フレーム22の後傾角度がα°(約45度)になり、上ガイドローラ33が傾斜移行部31bに進入し[図8(b)実線]、そして下ガイドローラ34が下部レール32の垂直部32aから湾曲部32bに進入する。さらに開閉用走行体35が後方に移動して、山留フレーム22の上辺部が後方に移動されると同時に、下辺部が後部上方に移動される[図8(b)仮想線]。
【0025】
D)開閉用走行体35が傾斜移行部31bから後水平部31cに移動し、上ガイドローラ33が後水平部31cに進入し、山留フレーム22の上辺部がさらに後退されると、下ガイドローラ34が湾曲部32bに沿って上昇および後退される[図8(c)実線]。これにより、直立状態の山留フレーム22が、刃口21や刃口21の後方に配置された掘削装置15や機器を迂回して後傾され略水平状態となる。
【0026】
E)各上掘削区画部14Uの天井部で、山留フレーム22が刃口21より所定距離Lだけ後退した位置で開閉用走行体35が停止され、山留フレーム22が略水平状態(図では水平よりさらに後部下方に傾斜している)の開放姿勢で収容される[図8(d)実線]。
【0027】
山留フレーム22を開放姿勢から閉鎖姿勢への閉動動作の手順は、刃口開閉装置24Uにより、上記とは逆のD)〜A)の手順で行われる。
(刃口開閉装置24Dによる開閉動作)
下掘削区画部14Dに設けられる刃口開閉装置24Dは、図9に示すように、上部レール31が前部水平部31aと、前部水平部31aから後部上方に小さい角度で後部上方に傾斜する後退収容部31dとで形成される以外は、同様に構成されており、その開閉動作は、図9(a)〜(d)に示すとおりで、同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
したがって、下掘削区画部14Dにおける山留フレーム22の開放姿勢が、上部レール31の後退収容部31dに沿って後部上方にわずかに傾斜される以外、異なる点はなく、同様の作用効果を奏することができる。
【0029】
(実施例1の効果)
実施例1によれば、開閉用走行体35により、山留フレーム22の上端側を、上ガイドローラ33を介して上部レール31に沿って後方へ引き込むとともに、山留フレーム22の下端側を、下ガイドローラ34を介して下部レール32に沿って上昇させることにより、直立状態の山留フレーム22を上昇させつつ後傾させ、さらに下部レール32の湾曲部32bの作用で、山留フレーム22の下端側を後部上方に迂回させて移動させ、刃口21の後部上方で略水平状態の開放状態とするので、刃口21の後方にある掘削装置15や排土装置17など機器との干渉を避けてスムーズに開閉することができる。これにより、掘削装置15などの機器を後退させる必要がなく、山留フレーム22をスムーズに移動させて短時間で刃口21を開閉することができる。また開放姿勢で、山留フレーム22は、刃口21より所定距離Lだけ後退した後部上方で略水平状態で収容されるので、刃口21の開口面を全面にわたって開放することができ、これにより、掘削装置15の掘削範囲を広く確保することができる。また刃口21の後方で山留フレーム22を、上面が上方に向く略水平状態の開放姿勢で収容するので、前面に設置されたエアバッグ23が上向きで収容され、エアバッグ23に付着した泥土が落下するようなこともなく、またエアバッグ23が下方に垂れ下がることがなく、良好に収容することができるという効果を奏することができる。
【0030】
[実施例2]
この刃口開閉装置40は、2組の開閉ジャッキにより山留フレーム22の開閉動作を行うものである。
【0031】
すなわち、図10に示すように、各掘削区画部14U,14Dの縦隔壁13の対向面に配置されて上ガイドローラ33が案内される上部レール41はチャンネル形断面に形成され、刃口21から後方に水平方向に沿って伸びる直線状に形成されている。また下ガイドローラ34が案内される下部レール42はチャンネル形断面に形成され、刃口21の下端部から中間部より少し上部まで立ち上がる垂直部42aと、この垂直部42aの上端部から小湾曲部を介して所定の案内角β(たとえば45°で、山留フレーム22の開閉角90°の1/2)で後部上方に傾斜する後傾直線部42bと、後傾直線部42bの後部上端で小湾曲部を介して水平方向となる収納水平部42cとで構成されている。
【0032】
この山留フレーム22を開閉させるたとえば左右一対で2組の開閉ジャッキは、閉鎖姿勢[図10(a)に実線で示す]と、所定の後傾角γ(たとえば45°)で上部が後方に傾倒する後傾姿勢[図10(b)に実線で示す]との間で山留フレーム22を変位させる第1開閉ジャッキ43と、後傾姿勢と略水平姿勢の開放姿勢[図10(d)に実線で示す]との間で変位させる第2開閉ジャッキ44とで構成されている。
【0033】
第1開閉ジャッキ43は、ジャッキ本体の基端部が、後傾直線部42bの所定距離後方で開放姿勢の山留フレーム22の直下位置に支持部材45を介して幅方向の水平軸心回りに回動自在に支持されている。また第2開閉ジャッキ44は、ジャッキ本体の基端部が、刃口21の下端部近傍から所定距離後方で収納水平部42cの直下方向に支持部材46を介して幅方向の水平軸心回りに回動自在に支持されている。
【0034】
また、山留フレーム22の左右の側辺部22aにジャッキ連結部材47が取り付けられており、ジャッキ連結部材47には、山留フレーム22の中央上端寄りに第1開閉ジャッキ43のピストンロッドが着脱自在に連結される第1連結ピン47aが設けられ、また山留フレーム22の中央下端部寄りに第2開閉ジャッキ44のピストンロッドが着脱自在に連結される第2連結ピン47bが設けられている。
【0035】
(刃口開閉装置40による開閉動作)
刃口開閉装置40による開閉動作を説明する。
a)閉鎖姿勢の山留フレーム22において、エアバック23のエアを抜いて空間部22gに収縮させた後、伸展状態の第1開閉ジャッキ43を第1連結ピン47aに連結し、側辺ロック装置26と上辺ロック装置25とを解除する[図10(a)実線]。
【0036】
b)第1開閉ジャッキ43を収縮し第1連結ピン47aを介して山留フレーム22の上辺側を後部上方に引き込み、上ガイドローラ33を上部レール41に沿って後方に移動させて山留フレーム22を後傾させる。この時、下ガイドローラ34が下部レール42の垂直部42aに沿ってゆっくりと上昇する[図10(a)仮想線]。
c)さらに第1開閉ジャッキ43を収縮限まで収縮して、山留フレーム22の後傾角がγとなる後傾姿勢にすると[図10(b)実線]、収縮状態の第2開閉ジャッキ44のピストンロッドを第2連結ピン47bに連結するとともに、第1開閉ジャッキ43のピストンロッドを第1連結ピン47aから離脱せる[図10(b)仮想線]。
【0037】
d)第2開閉ジャッキ44を伸展して第2連結ピン47bを介して山留フレーム22の下端側を上方に押し上げ、上ガイドローラ33を上部レール41に沿って後方に移動させるとともに、下ガイドローラ34を下部レール42の垂直部42aに沿って上昇させる[図10(b)仮想線]。
【0038】
e)第2開閉ジャッキ44をさらに伸展して山留フレーム22を後傾させ、下ガイドローラ34が垂直部42aから後傾直線部42bに移行し、後傾直線部42bに沿って後部上方に移動されることにより、山留フレーム22の後傾角がさらに増大して水平状態に接近すると同時に後方に移動される[図10(c)実線、仮想線]。
【0039】
f)さらに第2開閉ジャッキ44を伸展して下ガイドローラ34が後傾直線部42bから収納水平部42cに移動されると第2開閉ジャッキ44を停止させる。これにより、山留フレーム22がわずか後部上方に傾斜する開放姿勢となって、刃口21から所定距離Lだけ後退した略水平姿勢で後部上方に収容される。
【0040】
刃口開閉装置40により山留フレーム22を開放姿勢から閉鎖姿勢に変位させる閉動動作の手順は、上記とは逆のf)〜a)の手順で行われる。
(実施例2の効果)
第1開閉ジャッキ43により、山留フレーム22の上端側を、上ガイドローラ33を介して上部レール41に沿って後方へ引き込むとともに、山留フレーム22の下端側を、下ガイドローラ34を介して下部レール42に沿って上昇させ、直立状態の山留フレーム22を所定の後傾角γまで後傾させる。さらに第2開閉ジャッキ44により、後傾状態の山留フレーム22をさらに上方に押し上げて、後傾と同時に後方に後退させ、後部上方で略水平状態の開放姿勢とするので、簡単な構成で山留フレーム22を開閉することができる。また刃口21の後方にある掘削装置15などの機器との干渉を避けてスムーズに刃口21を開閉することができる。これにより、掘削装置15などの機器を後退させる必要がなく、山留フレーム22をスムーズに移動させて短時間で刃口21を開閉することができる。
【0041】
また開放姿勢で、山留フレーム22は、刃口21より所定距離Lだけ後退した後部上方で、略水平状態の開放姿勢で収容されるので、刃口21の開口面を全面にわたって開放することができ、これにより、掘削装置15との干渉を回避して掘削範囲を広く確保することができる。また刃口21の後方で山留フレーム22を、上面が上方に向く略水平状態の開放姿勢で収容するので、前面に設置されたエアバッグ23が上向きで収容され、エアバッグ23に付着した泥土が落下するようなこともなく、またエアバッグ23が下方に垂れ下がることがなく、良好に収容することができるという効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0042】
α 後傾角
β 案内角
γ 後傾角
11 掘削機本体
14U 上掘削区画部
14D 下掘削区画部
15 掘削装置
17 排土装置
21 刃口
22 山留フレーム
23 エアバッグ
24U,24D 刃口開閉装置
25 上辺ロック装置
26 側辺ロック装置
31 上部レール
31a 前水平部
31b 傾斜移行部
31c 後水平部
31d 後退収容部
32 下部レール
32a 垂直部
32b 湾曲部
32c 開放端部
33 上ガイドローラ(上ガイド部材)
34 下ガイドローラ(下ガイド部材)
35 開閉用走行体(開閉駆動装置)
35a 走行体フレーム
35b 走行用ローラ
35c 走行用ピンラック
35d 走行用ピニオン
35e 走行用駆動モータ
36 押引リンク
40 刃口開閉装置
41 上部レール
42 下部レール
42a 垂直部
42b 後傾直線部
42c 収納水平部
43 第1開閉ジャッキ(開閉駆動装置)
44 第2開閉ジャッキ(開閉駆動装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム本体に形成された単数または複数の掘削区画部の前面で、掘削装置を出退してまたは人力により地山を掘削する刃口を、切羽を支持可能な山留フレームにより開閉する刃口開閉装置を備えた掘削機であって、
掘削区画部の両側で刃口の上部から後方に伸びる上部レールと、
掘削区画部の両側で刃口の下端から上方に伸びる垂直部と、当該垂直部から湾曲中心が刃口の中央部後方に位置して後部上方に伸びる湾曲部とを有する下部レールと、
山留フレームの両側部に設けられて前記上部レールに案内される上ガイド部材および前記下部レールに案内される下ガイド部材と、
山留フレームを、刃口の開口面に沿う閉鎖姿勢と、刃口より所定距離後方の上部で略水平状態となる開放姿勢との間で変位させる開閉駆動装置とを具備し、
当該開閉駆動装置を、前記上部レールに沿って移動自在で山留フレームの上端部を押し引き駆動する開閉用走行体により構成した
ことを特徴とする掘削機。
【請求項2】
フレーム本体に形成された単数または複数の掘削区画部の前面で、掘削装置を出退してまたは人力により地山を掘削する刃口を、切羽を支持可能な山留フレームにより開閉する刃口開閉装置を備えた掘削機であって、
掘削区画部の両側で刃口の上部から後方に伸びる上部レールと、
掘削区画部の両側で刃口の下端から上方に伸びる垂直部と、当該垂直部の上端から所定案内角で後部上方に傾斜する後傾部とを有する下部レールと、
山留フレームの両側部に設けられて前記上部レールに案内される上ガイド部材および前記下部レールに案内される下ガイド部材と、
山留フレームを、刃口の開口面に沿う閉鎖姿勢と、刃口より所定距離後方の上部で略水平状態となる開放姿勢との間で変位させる開閉駆動装置とを具備し、
前記開閉駆動装置を、前記閉鎖姿勢と所定の後傾角で傾斜する後傾姿勢との間で山留フレームを変位させる第1開閉ジャッキと、前記後傾姿勢と前記開放姿勢との間で山留フレームを変位させる第2開閉ジャッキとで構成した
ことを特徴とする掘削機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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