説明

掘削物排出シュ−ト、掘削物排出シュ−トの使用方法

【課題】 掘削物排出に伴う掘削物排出シュ−トの摩耗を簡単に低減する。
【解決手段】 シュ−ト底壁部6内面に金網7が保持されており、その金網7に、土、石等の掘削物9が保持されている。そして、掘削物10の排出においては、シュ−ト4の底壁部6内面に保持された掘削物9上を滑らせ、シュ−ト4の底壁部6内面を掘削物9により保護する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、斜坑を掘削する際、斜面搬送する際等に用いる掘削物排出シュ−ト及びその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】斜坑が掘削されることがある。例えば、水力発電を行うべく、水を導く水圧管を配設する斜坑が山において掘削される。この斜坑の掘削は、山の下方側から斜め上方に向けて掘削機により掘り進む一方、その掘削物(主として、土、石等)は、シュ−トにより下方側に排出されることとされる。これにより、掘削機を用いて連続的に掘り進めることが可能となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記掘削物の排出においては、それまで掘り進んだ斜坑の傾斜を利用してシュ−トを傾斜配置し、そのシュ−トにより多くの掘削物を下流側に勢いよく滑り落とすことになっており、シュ−トの摩耗は激しい。このため、掘削物の円滑な排出を確保するためには、掘削作業に伴って、新たなシュ−トに何回か取り替えなければならない。
【0004】本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、掘削物排出に伴う掘削物排出シュ−トの摩耗を簡単に低減することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1の発明にあっては、掘削された掘削物を内面により下流側に案内する掘削物排出シュ−トにおいて、前記内面上に、少なくとも土が保持されている構成としてある。
【0006】また、請求項1の発明の好ましい態様としては、請求項2〜8の記載の通りとなる。
【0007】上記目的を達成するために請求項9の発明にあっては、内面に少なくとも土を保持したシュ−トを用いて、掘削物を排出する、ことを特徴とする掘削物排出シュ−トの使用方法とした構成としてある。
【0008】また、請求項9の発明の好ましい態様としては、請求項10の記載の通りとなる。
【0009】
【発明の効果】請求項1に記載された発明によれば、シュ−ト内面上に少なくとも土が保持されていることから、掘削物を流しても、シュ−ト内面が、自然に多く存する土等を利用して保護されることになる。このため、掘削物排出に伴う掘削物排出シュ−トの摩耗を簡単に低減できることになる。
【0010】請求項2に記載された発明によれば、シュ−ト内面に、土を少なくとも保持する保持手段が設けられていることから、その保持手段を利用して土等を保持し、上記請求項1と同様の作用効果を的確に得ることができることになる。
【0011】請求項3に記載された発明によれば、保持手段がシュ−ト内面に対して着脱可能とされていることから、保持手段をシュ−ト内面から取り外すことにより、シュ−ト内面をコンクリ−ト等の流動物が分離することなく流れ易くすることができることになり、コンクリ−ト等の流動物の搬入シュ−トとしても利用できることになる。
【0012】請求項4に記載された発明によれば、保持手段が、シュ−ト内面上に保持される金網とされていることから、その金網自体によりシュ−ト内面を保護できるばかりか、その金網の網目を利用して土等をシュ−ト内面に保持でき、上記請求項2又は3と同様の作用効果を具体的に得ることができることになる。
【0013】請求項5に記載された発明によれば、保持手段が、シュ−ト内面上に、内部空間下部に収まるようにして排出方向に所定間隔毎に配設される邪魔板であることから、その各邪魔板により土等を堰き止めることによりシュ−ト内面に土等を保持できることになり、上述の請求項2又は3と同様の作用効果を具体的に得ることができることになる。
【0014】請求項6に記載された発明によれば、邪魔板が、排出方向において所定間隔毎にシュ−ト内面の幅方向両側立ち上り部から互い違いに突出されていることから、各邪魔板により土等を堰き止めることによりシュ−ト内面に土等を保持して、シュ−ト内面を保護できるばかりか、この各邪魔板を輸送物の速度調整に利用できることになり、当該掘削物排出シュ−トをコンクリ−ト等の流動状物の搬入装置としても利用できることになる。
【0015】請求項7に記載された発明によれば、保持すべき土等が、掘削現場における掘削物からなることから、特別に土等を用意する必要はなく、しかも、掘削に伴う掘削物を、未だ土等を保持しないシュ−トに流し落とすことによりシュ−ト内面に導くことができることになり、シュ−ト内面に対する土等の保持を簡単化できることになる。
【0016】請求項8に記載された発明によれば、水力発電における水圧管を配設する斜坑を掘削した掘削物の排出用であることから、掘削物排出に伴うシュ−トの摩耗が深刻な環境下においても、シュ−トの摩耗を効果的に低減できることになる。
【0017】請求項9に記載された発明によれば、内面にすくなくとも土を保持したシュ−トを用いて、掘削物を排出することから、シュ−ト内面上の土等は、排出される掘削物からシュ−ト内面を保護することになる。このため、この方法を用いることにより、掘削物排出シュ−トの摩耗を簡単に低減できることになる。
【0018】請求項10に記載された発明によれば、シュ−ト内面に保持すべき少なくとも土として、掘削現場における掘削当初の掘削物を利用することから、特別に土等を用意する必要はなく、しかも、掘削に伴う掘削物を、未だ土等を保持しないシュ−トに流し落とすことによりシュ−ト内面に導くことができることになり、シュ−ト内面に対する土等の保持を簡単に行うことができることになる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図4は第1実施形態を示すもので、その図1、図2において、1は、山2において掘削されつつある斜坑(仮想線は掘削する予定の斜坑)で、この斜坑1は、発電用水圧管を配設するべく、山2の下方側から斜め上方(例えば傾斜角48度)に向けて掘削機3により掘り進められることになっている。
【0020】既に掘り進められた斜坑1内には、掘削機3による掘削に伴って掘削物を排出すべく、図1〜図4に示すように、シュ−ト4が配設されている。このシュ−ト4は、掘削機3の直後方から掘削開始点まで複数のシュ−ト要素をつなぎあわせて構成されており、シュ−ト4は、斜坑1の傾斜に基づき傾斜配置されることになっている。そして、このシュ−ト4は、本実施形態においては、鉄板(例えば厚み32mm)をもって、一対の側壁部5と、その一対の側壁部5をつなぐ底壁部6とを有するように形成されており、その形状は、上部が開口した樋状とされている。
【0021】前記シュ−ト4底壁部6の内面上には、図3R>3、図4に示すように、金網7が配設されている。この金網7は、シュ−ト底壁部6内面から突出する複数の支持具8に上側から差込むことによって、シュ−ト底壁部6に対して着脱可能とされると共に、該底壁部6内面から若干浮かせた状態に維持しつつ下方側に滑り落ちないように保持されており、この金網7の網目を利用して、シュ−ト底壁部6の内面には、保持すべき土としての掘削物(土、石、岩等)9が満遍無く保持されることになっている(図3においては、金網7の存在をわかりやすくするために、金網7が一部露出するようにしてある)。この掘削物9の保持は、本実施形態においては、斜坑1へのシュ−ト4の配設前に、シュ−ト4底壁部6内面上の金網7に予め掘削物9を保持させておくのではなく、斜坑1に、未だ金網7が掘削物9を保持しないシュ−ト4を配設し、それに対して、掘削機3による掘削に伴う掘削物9を流し落とすことにより(使用することにより)、自動的に掘削物9をシュ−ト4底壁部6内面上の金網7に保持させることになっている。このため、金網7の網目の大きさは、掘削物9を保持し易い観点から決定されている。尚、ここで、掘削物9は、山等の掘削に伴って当然に出てくるものであり、その掘削物9には、単なる土砂等だけでなく、混在する石、岩等も含まれる。
【0022】したがって、掘削機3による掘削に伴って出た掘削物10(図面上での理解を容易にするため、前記掘削物9とは別に、排出掘削物なる用語を用いる(図4R>4参照))が、順次、シュ−ト4(上流側)に投入されると、その排出掘削物10は、図4に示すように、シュ−ト4の傾斜配置に基づきシュ−ト4下流端側へと搬出されることになるが、この場合、その排出掘削物10は、金網7により保持された掘削物9上を滑り落ちることになる。この結果、金網7に保持された掘削物9が、排出掘削物10からシュ−ト4底壁部6内面を保護することになり、そのシュ−ト4底壁部6内面の摩耗を簡単に低減できることになる。また、本実施形態においては、当初、金網7に未だ土砂等を保持させないシュ−ト4を配設し、その後、掘削に伴ってその掘削物9を流し落とすことにより、自動的に金網7に掘削物9を保持させることから、シュ−ト4の搬送、土砂等の保持を容易にできることになり、作業性を向上させることができることになる。
【0023】このような排出掘削物10の排出を終えると、シュ−ト4内の金網7が取り外される。この取り外しは、金網7の保持が支持具8に対して差込んであるだけであることから、金網7を持ち上げるだけで簡単に取り外される。この金網7が取り外されたシュ−ト4は、山2の上方側に運ばれ、そのシュ−ト4は、今度は、斜坑1とその中に配設する発電用水圧管との間にコンクリ−ト搬入する搬入シュ−ト(搬入装置)として用いられることになる。この場合、金網7を取り外してシュ−ト4を使用するのは、コンクリ−トの分離を防止するためである。このように本実施形態に係るシュ−ト4は、排出掘削物10の排出シュ−トとして用いることができるだけでなく、コンクリ−トの搬入シュ−トとしても用いることができることになる。
【0024】図5〜図7は第2実施形態、図8は第3実施形態を示すものである。この各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0025】第2実施形態においては、図5、図6に示すように、シュ−ト底壁部6内面上に複数の邪魔板11がシュ−ト底壁部6を横切るように設けられている。この複数の邪魔板11は、排出方向に所定間隔毎に配設されており、その各邪魔板11は、シュ−ト側壁部5の上端よりも低い高さとされている。そして、この各邪魔板11により掘削物9が堰止められ、シュ−ト底壁部6内面上における内部空間下部に掘削物9が保持されることになっている。
【0026】しかも、各邪魔板11の側部は、図7に示すように、一対の側壁部5内面に排出方向において所定間隔毎に形成した複数の縦溝15に着脱可能に嵌合されており、これにより、各邪魔板11は、シュ−ト4の底壁部6付近において該底壁部6等に対して着脱可能に保持されることになっている。勿論、この場合、底壁部6内面に上記縦溝15に連なる横溝を形成して、邪魔板11の下部もその横溝に嵌合されるようにしてもよい。
【0027】したがって、この第2実施形態においても、掘削に伴って出た掘削物10が、順次、シュ−ト4(上流側)に投入されると、その排出掘削物10は、図6R>6に示すように、各邪魔板11により堰止められてシュ−ト底壁部6内面に保持された掘削物9上を滑り落ちることになり、そのシュ−ト底壁部6内面に保持された掘削物9が、排出掘削物10からシュ−ト4底壁部6内面を保護し、そのシュ−ト底壁部6内面の摩耗が簡単に低減されることになる。特に本実施形態においては、各邪魔板11により土砂等を堰き止める構成であることから、極めて簡単な構成をもって、掘削当初の掘削物9を、保持すべき土砂等としてシュ−ト4に確実に保持できることになる。
【0028】しかも、この第2実施形態においては、邪魔板11が縦溝15に嵌合される構成であることから、排出掘削物10の排出に対して、邪魔板11の支持強度を高めることができると共に、その排出掘削物10の排出の後において、各邪魔板11を縦溝15から引き抜いて、コンクリ−ト搬入シュ−トに簡単に変えることができることになる。
【0029】第3実施形態においては、図8に示すように、複数の邪魔板12が、排出方向において所定間隔毎にシュ−ト両側壁部5から互い違いに突出されており、その各邪魔板12は、側壁部5上端の高さよりも低くされている。これによっても、土砂等(掘削物9)を堰き止めることができ、シュ−ト4上に土砂等を保持できることになる。
【0030】また、斜坑1の掘削後、水圧管を配設し、その水圧管と斜坑1周壁との間に、該斜坑1上端側からコンクリ−トを注入する作業が行われるが、上記シュ−ト4が互い違いに配設された邪魔板12を有することから、上記コンクリ−ト注入に際して、上記シュ−ト4(土砂等を保持していないもの)を、各邪魔板12により注入速度を調整できる搬入シュ−トとしても利用できることになる。この場合、各邪魔板12は、コンクリ−トの注入速度を細かく調整できるようにすべく、角度調整可能(可変)となるように取付けておくことが好ましい。
【0031】図9〜図12は、シュ−ト4の通路断面形状の変形例を示すものである。図9はシュ−ト4の通路断面形状を略円形としたもの、図10はシュ−ト4の通路断面形状を略楕円形としたもの、図11は四角形としたもの、図12は略三角形としたものであり、いずれも、シュ−ト4の上部開口が狭まることになっている。これにより、掘削物10の排出、コンクリ−トの搬入において、その各輸送物がシュ−ト4内からはね出ることが抑制されることになっている。この場合、各図中において、各シュ−ト4内の金網7等の保持手段等については、図示が略されている。この他に、シュ−ト4の通路断面形状が、略円弧状、パイプ状のもの等を適宜用いてもよい。
【0032】以上実施形態について説明したが本発明においては、次のようなものを包含する。
■シュ−ト4に保持すべき土砂等を、掘削物9排出に伴って自動的にシュ−ト4に保持するのではなく、予め、使用前に保持しておくこと。
■シュ−ト4の両側壁部5の上端部を補強部材により連結して、シュ−ト4を補強すること。
■シュ−ト4を、斜坑ではなく山の斜面等において、ブルド−ザ等により掘削された掘削物の排出等のために(斜面搬送等において)用いること。
【図面の簡単な説明】
【図1】掘削機3による斜坑の掘削を説明する説明図。
【図2】図1の拡大説明図。
【図3】第1実施形態に係るシュ−トを示す斜視図。
【図4】第1実施形態に係るシュ−トを示す縦断面図。
【図5】第2実施形態に係るシュ−トを示す斜視図。
【図6】第2実施形態に係るシュ−トを示す縦断面図。
【図7】第2実施形態において、邪魔板とシュ−ト側壁部との保持関係を平面的に示す図。
【図8】第3実施形態に係るシュ−トを示す斜視図。
【図9】シュ−トの通路断面形状の変形例1を示す図。
【図10】シュ−ト通路断面形状の変形例2を示す図。
【図11】シュ−ト通路断面形状の変形例3を示す図。
【図12】シュ−ト通路断面形状の変形例4を示す図。
【符号の説明】
1 斜坑
4 シュ−ト
6 底壁部
7 金網
9 掘削物
10 排出掘削物
11 邪魔板
12 邪魔板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 掘削された掘削物を内面により下流側に案内する掘削物排出シュ−トにおいて、前記内面上に、少なくとも土が保持されている、ことを特徴とする掘削物排出シュ−ト。
【請求項2】 請求項1において、前記内面に、前記土を少なくとも保持する保持手段が設けられている、ことを特徴とする掘削物排出シュ−ト。
【請求項3】 請求項2において、前記保持手段が、前記内面に対して着脱可能に保持されている、ことを特徴とする掘削物排出シュ−ト。
【請求項4】 請求項2又は3において、前記保持手段は、前記内面上に保持される金網とされている、ことを特徴とする掘削物排出シュ−ト。
【請求項5】 請求項2又は3において、前記保持手段は、前記内面上に、内部空間下部に収まるようにして排出方向に所定間隔毎に配設される邪魔板である、ことを特徴とする掘削物排出シュ−ト。
【請求項6】 請求項5において、前記邪魔板が、排出方向において所定間隔毎に前記内面の幅方向両側立ち上り部から互い違いに突出されている、ことを特徴とする掘削物排出シュ−ト。
【請求項7】 請求項1〜6のいずれかにおいて、前記土が、掘削現場における掘削物からなる、ことを特徴とする掘削物排出シュ−ト。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれかにおいて、水力発電における水圧管を配設する斜坑を掘削した掘削物の排出用である、ことを特徴とする掘削物排出シュ−ト。
【請求項9】 内面に少なくとも土を保持したシュ−トを用いて、掘削物を排出する、ことを特徴とする掘削物排出シュ−トの使用方法。
【請求項10】 請求項9において、前記土として、掘削現場における掘削当初の掘削物を利用する、ことを特徴とする掘削物排出シュ−トの使用方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平10−299391
【公開日】平成10年(1998)11月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−110908
【出願日】平成9年(1997)4月28日
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(390027661)株式会社金澤製作所 (29)