説明

掘削用ケーシングの構造

【課題】円筒体を軸線方向に2分割し、その分割した各半円筒体を互いに蝶番で開閉可能に連結し、半円筒体の自由端(蝶番側ではない方)同士は連結金具で脱着可能に連結した分割開閉式の掘削用ケーシングにおいて、半円筒体同士を短時間でガタつきなく強固に固定する。
【解決手段】ケーシングは、頭部にフランジ14を備えたピン13を各半円筒体11の自由端側の外面にそれぞれ突設する。連結金具2は、ピン13が挿入できる内径の第1ピン穴21及び第2ピン穴24を前記ピン13間の間隔と同間隔に開口し、第2ピン穴24は下方へ切り欠いて開放部25を形成する。その連結金具2の第1ピン穴21を右側のピン13に掛け、その右側のピン13を軸に連結金具2を回動させて左側のピン13を開放部25に通し、第2ピン穴24を左側のピン13に上方から掛けて連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱等の柱工事に用いられるケーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
電柱等の柱工事は、先端に掘削ビットを備えたハンマーを筒状のケーシングに挿入して取り付け、モーターで回転する掘削ビットの基部にハンマーで繰り返し打撃を加えて地盤を所定深さに掘削し、ケーシングからハンマーと掘削ビットを撤去した後にケーシング内に立設しようとする柱状物を挿入し、ケーシングを引き上げて地盤と柱状物の間の空隙にコンクリート等を充填することで施工されている。
【0003】
この工事に用いられるケーシングとしては、円筒体を軸線方向に2分割し、その分割した各半円筒体を互いに蝶番で開閉可能に連結した分割開閉式の構造が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。これらの技術は、地表に引き上げたケーシングを分割することで、柱状物の上端まで引き上げたり途中で切断することなく回収が迅速に行え、再使用も可能である、という利点がある。
【0004】
ところで、前記特許文献1に記載の技術では、半円筒体の自由端(蝶番側ではない方)同士は多数のボルトで連結する構造であるから、連結・分割作業に時間を要していた。また、そのボルトを取り付けるためのフランジが外面から大きく突出しているから、掘削時の抵抗となっていた。
【0005】
また、前記特許文献2に記載の技術では、一方の半円筒体の自由端の内面にフラットバーを溶接し、そのフラットバーで他方の半円筒体の自由端内面を支える構造であるから、半円筒体同士は固定されておらず、掘削時や引き上げ時にケーシングがガタついて不安定になることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−125728号公報
【特許文献2】実用新案登録第3136544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、半円筒体同士を短時間でガタつきなく強固に固定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 先端に掘削ビットを備えたハンマーを円筒状のケーシングに挿入して取り付け、回転する掘削ビットにハンマーで繰り返し打撃を加えながら地盤を所定深さに掘削し、ケーシングからハンマーと掘削ビットを撤去した後に立設しようとする柱状物をケーシング内に挿入し、削孔からケーシングを引き上げて地盤と柱状物の間の空隙を充填して柱状物を立設する工事に用いられる掘削用ケーシングにおいて、その掘削用ケーシングは、円筒体を軸線方向に2分割し、その分割した各半円筒体を互いに蝶番で開閉可能に連結し、各半円筒体の自由端側の外面にフランジを頭部に備えたピンをそれぞれ突設した構造で、ピンが挿入できる内径の第1ピン穴及び第2ピン穴を前記ピン間の間隔と同間隔に開口し、第2ピン穴は下方へ切り欠いて開放させた構造の連結金具を備え、その連結金具の第1ピン穴を一方のピンに掛け、そのピンを軸に回動させて他方のピンに第2ピン穴を上方から掛けて連結できるようにしたことを特徴とする、掘削用ケーシングの構造
2) 連結金具の第1ピン穴の下部にL字溝をピンが通過できる幅に切り欠くとともに、そのL字溝の先端にピンのフランジが通過できる内径のフランジ穴を開口した、前記1)記載の掘削用ケーシングの構造
3) 連結金具が、ケーシングの曲面と同じ曲率の薄板状である、前記1)又は2)記載の掘削用ケーシングの構造
4) 各半円筒体の蝶番に近接する上端部位置に吊り用の引掛穴を開口した、前記1)〜3)いずれか記載の掘削用ケーシングの構造
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の前記1)記載の構成によれば、連結時は、一方のピンを軸に連結金具を回動させ、他方のピンに第2ピン穴を上方から掛けることで半円筒体同士を連結する。分割時は、連結金具を逆方向へ回動させ、他方のピンから第2ピン穴を離すことで半円筒体同士を分割できる。したがって、連結・分割作業が短時間で容易に行うことができる。また、第1ピン穴及び第2ピン穴間の間隔はピン間の間隔と同じで、且つピンは頭部にフランジを有しているから、連結状態が強固で掘削時や引き上げ時にガタつきがないものとなる。
【0010】
本発明の前記2)記載の構成によれば、ピンをL字溝に通過させてフランジをフランジ穴から外すことで、不使用時に連結金具をピンから取り外して保管できる。ケーシングを直ぐに再使用する場合は、連結金具の第1ピン穴を一方のピンに掛けたままにする。
【0011】
本発明の前記3)記載の構成によれば、掘削時とケーシングの引き上げ時に地盤との抵抗が少ないものとなる。
【0012】
本発明の前記4)記載の構成によれば、引き上げたケーシングから連結金具を外して吊り上げる際、ワイヤーと左右の引掛穴を連結したシャックル等の吊り具が近接方向へ引っ張られてケーシングが自然に分割される。したがって、重量を有するケーシングを分割されるように手作業で誘導する必要がなく、作業性が良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例のケーシングの蝶番側の側面図である。
【図2】実施例のケーシングのピン側の側面図である。
【図3】実施例のケーシングの平面図である。
【図4】実施例の連結金具の正面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】実施例の連結金具の脱着を示す説明図である。
【図7】実施例の掘削を示す説明図である。
【図8】実施例の他の例の掘削を示す説明図である。
【図9】実施例のケーシングの吊り上げを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を実施例と図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0015】
図1は実施例のケーシングの蝶番側の側面図、図2は実施例のケーシングのピン側の側面図、図3は実施例のケーシングの平面図、図4は実施例の連結金具の正面図、図5は図4のA−A線断面図、図6は実施例の連結金具の脱着を示す説明図、図7は実施例の掘削を示す説明図、図8は実施例の他の例の掘削を示す説明図、図9は実施例のケーシングの吊り上げを示す説明図である。
【0016】
図中、1はケーシング、11は半円筒体、12は蝶番、13はピン、14はフランジ、15は引掛穴、2は連結金具、21は第1ピン穴、22はL字溝、23はフランジ穴、24は第2ピン穴、25は開放部、3は吊り具、4はモーター、5はエアースイベル、6はダウンザホールハンマー、61はハンマーピストン、62はハンマーカバー、63は打込みロッド、7は掘削ビット、8はシャックル、81はワイヤー、Aは柱状物、Gは地盤、Sは削孔である。
【0017】
本実施例のケーシング1は、図1〜3に示すように、長さ2500mmの円筒体を軸線方向に2分割し、その分割した各半円筒体11を互いに6個の蝶番12で開閉可能に連結している。各半円筒体11の自由端(蝶番12側ではない方)の外面にはフランジ14を頭部に備えたピン13を突設し、これを上下に6組設けている。ピン13の高さは20mm、外径は10mm、フランジ14の外径は20mmである。各半円筒体11を閉じた状態のピン13間の間隔は60mmである。各半円筒体11の蝶番12に近接する上端部位置には引掛穴15をそれぞれ開口している。
【0018】
連結金具2は、図4,5に示すように、ケーシング1の曲面と同じ曲率に形成した厚さ6mmの薄板で、内径12mmの第1ピン穴21及び第2ピン穴24を60mmの間隔をおいて開口し、第2ピン穴24は下方へ拡幅するように下端まで切り欠いて開放部25を形成している。第1ピン穴21は下方から中間方向へ曲折するL字溝22を幅12mmに切り欠くとともに、そのL字溝22の先端に内径20mmのフランジ穴23を開口している。なお、前記に示した寸法や間隔の数値は一例であって、これに限定されるものではない。
【0019】
本実施例では、ワイヤー81の先端と各半円筒体11の引掛穴15をシャックル8でそれぞれ連結してクレーン(図示せず)で吊り、掘削ビット7を先端に備えたダウンザホールハンマー6に各半円筒体11を覆うようにしてケーシング1を取り付ける。そして、図6に示すように、連結金具2のフランジ穴23をケーシング1の右側のピン13のフランジ14に通し、L字溝22を通過させて第1ピン穴21を右側のピン13に掛け、その右側のピン13を軸に連結金具2を半時計回りに回動させて左側のピン13を開放部25に通し、第2ピン穴24を左側のピン13に上方から掛けて連結する。
【0020】
図7に示すように、ダウンザホールハンマー6の上部に備えたモーター4で掘削ビット7を回転させながら、その掘削ビット7の基部にハンマーピストン61で繰り返し打撃を加えて地盤Gを掘削する。このとき、連結金具2がケーシング1の曲面と同じ曲率の薄板であるから、地盤Gとの抵抗が少ないものとなる。
【0021】
図7に示すのは、掘削ビット7がケーシング1の下端内面の段差に係止することでケーシング1を押し下げて地盤Gに埋入する方法であるが、図8に示すように、掘削ビット7がケーシング1の内側に配置される構造では、ハンマーカバー62の上端部に打込みロッド63を貫通し、その打込みロッド63でケーシング1の上端を押し下げて地盤Gに埋入する。
【0022】
所定深さに掘削すると、ケーシング1からダウンザホールハンマー6と掘削ビット7を撤去し、ケーシング1を削孔Sから引き上げる。ケーシング1の全面が地表に現れると、連結金具2を連結時とは逆方向へ回動させて左側のピン13から第2ピン穴24を離す。
【0023】
連結を解除したケーシング1をさらに吊り上げると、図9に示すように、左右のシャックル8が近接方向へ引っ張られてケーシング1が自然に分割する。よって、ケーシング1を直ぐに回収することができ、柱状物Aの上端まで引き上げたり途中で切断する必要がない。また、重量を有するケーシング1を分割されるように手作業で誘導する必要がなく、作業性が良好なものとなる。その後、地盤Gと柱状物Aの間にコンクリート等を充填する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の技術は、電柱等の柱工事に利用される。
【符号の説明】
【0025】
1 ケーシング
11 半円筒体
12 蝶番
13 ピン
14 フランジ
15 引掛穴
2 連結金具
21 第1ピン穴
22 L字溝
23 フランジ穴
24 第2ピン穴
25 開放部
3 吊り具
4 モーター
5 エアースイベル
6 ダウンザホールハンマー
61 ハンマーピストン
62 ハンマーカバー
63 打込みロッド
7 掘削ビット
8 シャックル
81 ワイヤー
A 柱状物
G 地盤
S 削孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削ビットを備えたハンマーを円筒状のケーシングに挿入して取り付け、回転する掘削ビットにハンマーで繰り返し打撃を加えながら地盤を所定深さに掘削し、ケーシングからハンマーと掘削ビットを撤去した後に立設しようとする柱状物をケーシング内に挿入し、削孔からケーシングを引き上げて地盤と柱状物の間の空隙を充填して柱状物を立設する工事に用いられる掘削用ケーシングにおいて、その掘削用ケーシングは、円筒体を軸線方向に2分割し、その分割した各半円筒体を互いに蝶番で開閉可能に連結し、各半円筒体の自由端側の外面にフランジを頭部に備えたピンをそれぞれ突設した構造で、ピンが挿入できる内径の第1ピン穴及び第2ピン穴を前記ピン間の間隔と同間隔に開口し、第2ピン穴は下方へ切り欠いて開放させた構造の連結金具を備え、その連結金具の第1ピン穴を一方のピンに掛け、そのピンを軸に回動させて他方のピンに第2ピン穴を上方から掛けて連結できるようにしたことを特徴とする、掘削用ケーシングの構造。
【請求項2】
連結金具の第1ピン穴の下部にL字溝をピンが通過できる幅に切り欠くとともに、そのL字溝の先端にピンのフランジが通過できる内径のフランジ穴を開口した、請求項1記載の掘削用ケーシングの構造。
【請求項3】
連結金具が、ケーシングの曲面と同じ曲率の薄板状である、請求項1又は2記載の掘削用ケーシングの構造。
【請求項4】
各半円筒体の蝶番に近接する上端部位置に吊り用の引掛穴を開口した、請求項1〜3いずれか記載の掘削用ケーシングの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−19204(P2013−19204A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154582(P2011−154582)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(502282722)
【出願人】(390032746)東洋企画株式会社 (3)
【Fターム(参考)】