説明

掘削翼拡縮装置

【課題】掘削翼の拡縮動作を確実に行うとともに、修理、メンテナンス作業を容易に行うことができ、しかも掘削翼の拡縮状態が地上で容易に確認することができるようにする。
【解決手段】回転軸11の上部に設けられる拡縮操作部30と、回転軸11の外側に配され拡縮操作部30の作動により上下動操作される一対の連結ロッド19と、各連結ロッド19の下端部に連結される掘削翼16とを備え、拡縮操作部30が、回転軸11の外周面に取り付けられる一対の油圧シリンダー32と、一対の油圧シリンダー32の作動を同調させる同調機構部(同調ブラケット35等)とを有し、各油圧シリンダー32のシリンダーロッド33先端に各連結ロッド19を連結することにより各連結ロッド19を同時に上下動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中杭の先端部に根固め球根を造築するのに用いられる掘削翼拡縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アースオーガのような掘削機を用いて地盤を掘削すると同時に、セメントミルクやモルタル等の薬液を注入して掘削土砂と混練することにより地中杭を造成する場合に、杭の支持力を増大させるため杭の根部分を拡大掘りして根固め球根を造築することが行われている。
【0003】
この根固め球根の造築に際しては、リーダマストに沿って支持されて回転駆動される掘削ロッドの下端部に、通常の掘削刃のほかに、拡大掘削刃としての掘削翼を設け、まず掘削翼を縮径させた状態で所定の縦孔を掘削した後、掘削翼を拡径して拡大掘削を行うようにされている。
【0004】
この掘削翼の拡縮構造としては、掘削ロッドが正逆回転可能にされ、正回転時には掘削翼が土砂により押し付けられて縮径され、逆回転時には掘削翼の先端部に土砂が入り込むことによりその掘削翼が外方へ向かって起立して拡径されるように構成されたものが一般的である。
【0005】
また、特許文献1においては、掘削ロッドを貫通するように設けられた操作ロッドにより掘削翼を拡縮させるようにしたものが提案されている。すなわち、この文献に記載のものでは、拡大掘削刃(掘削翼)が、掘削ロッド下端の支持部にバネにより拡開習性が与えられて回動自在に枢着され、拡大掘削刃の枢軸と刃部先端との間の上面に操作ロッドの下端の当接部が当接され、操作ロッドが引き上げられたときに左右の拡大掘削刃が拡開されるように構成されている。
【0006】
しかしながら、掘削ロッドを正逆回転させて土砂の抵抗を利用することによって掘削翼を拡縮させる構造のものでは、土質によっては掘削翼の先端部に土砂が入り込まず、確実に拡径が行えなかったり、任意の径に拡径できなかったり、掘削翼の拡縮状態が確認できないといった問題点がある。
【0007】
また、特許文献1に記載された構造のものでは、バネにより拡開習性が与えられた構造であるために、やはり土質によっては掘削翼が確実に拡径されなかったり、掘削翼の拡縮状態が確認できないといった問題点がある。また、操作ロッドおよび拡縮機構が掘削ロッド内等の内部空間に閉じ込められた構造であるために、拡縮機構等に故障が発生して修理する場合や、メンテナンスの必要が生じた場合に、機構を分解する必要があって、その修理等が容易に行えないという問題点がある。
【0008】
【特許文献1】特許第3662647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、掘削翼の拡縮動作を確実に行うことができるとともに、修理、メンテナンス作業を容易に行うことができ、しかも掘削翼の拡縮状態が地上で容易に確認することのできる掘削翼拡縮装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明による掘削翼拡縮装置は、
駆動部にて回転駆動される回転軸の下端部に設けられる掘削翼を拡縮させる掘削翼拡縮装置において、
前記回転軸の上部に設けられる拡縮操作部と、前記回転軸の外側に配され前記拡縮操作部の作動により上下動操作される一対の連結ロッドと、各連結ロッドの下端部に連結される掘削翼とを備え、
前記拡縮操作部が、前記回転軸の外周面に取り付けられる一対の油圧シリンダーと、一対の油圧シリンダーの作動を同調させる同調機構部とを有し、各油圧シリンダーのシリンダーロッド先端に前記各連結ロッドが連結されることにより各連結ロッドが同時に上下動されるように構成されている
ことを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、前記回転軸の外周面には螺旋翼が設けられ、この螺旋翼を貫通するように前記連結ロッドが配されるのが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る掘削翼拡縮装置は、前記連結ロッドの押し下げ操作時に前記掘削翼が拡径作動される構成とすることもできるし、あるいは前記連結ロッドの引き上げ操作時に前記掘削翼が拡径作動される構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、回転軸の上部に設けられる拡縮操作部における一対の油圧シリンダーが作動されると、この油圧シリンダーのシリンダーロッド先端に連結された一対の連結ロッドが同調して押し引き作動され、各連結ロッドの下端部に連結される掘削翼が縮径位置から拡径位置に、もしくは拡径位置から縮径位置に作動される。本発明によれば、回転軸の外周面に取り付けられた油圧シリンダーの操作により、回転軸の外側に配された連結ロッドを介して掘削翼が拡縮作動されるので、修理、メンテナンス作業時に分解する必要がなく、その作業を容易に行うことができる。また、土質に拘わらず掘削翼の拡縮操作を確実に行うことができるとともに、掘削翼の拡縮状態を地上において容易に確認することができる。また、一対の油圧シリンダーの作動を同調させる同調機構部が設けられているので、一対の掘削翼を確実に同調させて操作することができる。
【0014】
本発明において、連結ロッドの押し下げ操作時に掘削翼が拡径作動される構成を採用した場合には、回転軸の引き上げ時に掘削翼が下方へ回動して納められた状態となっているので、掘削済の縦孔の壁を崩すことなく装置全体を引き上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明による掘削翼拡縮装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1には、本発明の第1の実施形態に係る掘削翼拡縮装置を搭載したアースオーガの全体図が示されている。また、図2には、本実施形態の掘削翼拡縮装置における掘削翼近傍の部分拡大図が示され、図3には、掘削翼拡縮装置における拡縮操作部の部分拡大図が示されている。さらに、図4には、回転軸の部分拡大図が示されている。
【0017】
本実施形態において、アースオーガ1は、ベースマシン2にステー3を介して鉛直向きに支持されるリーダマスト4を備え、このリーダマスト4の前面に配されるガイドレール5に駆動部6が上下摺動自在に支持され、この駆動部6の上部のシーブ7に巻回されるワイヤ8がリーダマスト4の上端のシーブ9を経由してベースマシン2上のウインチ10に導かれ、このウインチ10の巻上げ巻戻しにより前記駆動部6がガイドレール5に沿って昇降されるように構成されている。図には明示されていないが、前記駆動部6内には、電気モータおよび減速機と、セメントミルクやモルタル等の薬液を注入用のスイベルが搭載され、減速機の出力軸にオーガスクリューの回転軸11の上端が接続されている。こうして、駆動部6における電気モータの駆動によって回転軸11が回転駆動される。
【0018】
前記回転軸11は、単位長さのシャフトを雄型ジョイント12および雌型ジョイント13により相互に接続して形成されている。そして、この回転軸11の外周面には螺旋翼(スクリュー)14が設けられ、最下端には先端ビット15が設けられるとともに、この先端ビット15の上方に左右一対の掘削翼16が設けられている。この掘削翼16は、図2に示されるように、側方に張り出した拡径位置(実線位置)と、螺旋翼14の径内に納められた縮径位置(鎖線位置)との間で拡縮自在に構成されている。
【0019】
各掘削翼16は、基端部が「くの字」状に折れ曲がった形状とされて、先端部側に多数のビット16aが取着されてなり、その折曲部において枢軸18にて回転軸11に取着された支持ブラケット17に軸着され、基端部において連結ロッド19に軸着されている。こうして、掘削翼16は、連結ロッド19が上方に引き上げられた状態では螺旋翼14の径内に納められた縮径位置にあり、連結ロッド19が押し下げられると、枢軸18を中心に先端部が持ち上げられて拡径位置まで回動される。なお、支持ブラケット17の外周側上部にはストッパ20が設けられており、掘削翼16が所定の最大拡径位置に達するとそのストッパ20に当接して位置保持される。なお、本実施形態において、掘削翼16は軸径の2倍程度まで拡径することができる。
【0020】
次に、図3を参照しつつ、前記掘削翼16を拡縮操作する拡縮操作部30の詳細構造について説明する。
【0021】
この拡縮操作部30は、回転軸11の外周面に取付ブラケット31を介して支持される左右一対の油圧シリンダー32,32を備え、この油圧シリンダー32,32のシリンダーロッド33,33の先端部に連結片34,34を介して連結ロッド19の上端部が枢支されて構成されている。また、前記連結片34,34には、回転軸11の外周部を抱持するように配される円筒状の同調ブラケット35が一体に設けられている。この同調ブラケット35の内周面には縦方向に複数本の凹溝が形成される一方、各凹溝が回転軸11の外周面に縦方向に突設されたスライドレール35Aに嵌合されるように構成されている。このような構成によって、シリンダーロッド33,33が伸縮作動した際、同調ブラケット35が回転軸11に対し相対回転することなくその回転軸11に沿って摺動され、左右のシリンダーストロークを同じにすることができる。なお、本実施形態における同調ブラケット35、スライドレール35A等が、本発明における同調機構部に相当する。
【0022】
油圧シリンダー32,32のボトム側の給排ポート36,36およびヘッド側の給排ポート37,37には、図示されない油圧源からの圧油が油路38,39、スイベルジョイント40、さらには逆止弁41を介して給排される。ここで、スイベルジョイント40のアウターケース40aには回り止めバー42が固着され、この回り止めバー42はリーダマスト4に固着された反力体43に固定されている。なお、前記逆止弁41は、油圧シリンダー32,32を伸張させて連結ロッド19,19を押し下げ操作し、掘削翼16を拡径位置に回動させた際に、油圧シリンダー32,32の動きを保持する役目をする。
【0023】
また、本実施形態の拡縮操作部30においては、シリンダーロッド33の作動範囲内の回転軸11の外周面にストロークセンサー44が取り付けられており、このストロークセンサー44の検出信号が、センサー電線45からコントローラ(図示せず)に送信され、その検出データが運転室内のモニタ表示板に表示されるようになっている。したがって、操作者は、このモニタ表示板を見ることで掘削翼16の拡縮状態およびその拡縮量等を一目で知ることができる。
【0024】
このような構成において、油圧シリンダー32,32のシリンダーロッド33,33が収縮した状態において、油圧源からの圧油が油路38、スイベルジョイント40および逆止弁41を経由して、油圧シリンダー32,32のボトム側の給排ポート36,36を介してボトム側室に供給されるとともに、ヘッド側の給排ポート37,37からヘッド側室の圧油が排出されると、シリンダーロッド33,33が伸長方向に作動され、連結ロッド19が押し下げ方向に作動される。ここで、図4に示されるように、連結ロッド19は、回転軸11の外周面に設けられた螺旋翼14を貫通するように配され、この連結ロッド19の下端が前述のように掘削翼16の基端部に軸着されているので、この連結ロッド19が押し下げ作動されると、掘削翼16は、枢軸18を中心に持ち上げられて拡径位置まで回動される。また、掘削翼16を縮径操作するには、圧油を油圧シリンダー32,32のヘッド側の給排ポート37,37からヘッド側室に供給すれば良い。
【0025】
以上のような掘削翼拡縮装置を用いた根固め工法は次のような手順で行われる。
【0026】
まず、掘削翼16を縮径した状態で、支持層まで縦孔を掘削する。このとき、掘削翼16は螺旋翼14の径内に納められており、その縮径位置を保持しているので、螺旋翼14による縦孔の掘削に支障を来すことはない。
【0027】
支持層に達すると、油圧シリンダー32,32の操作により掘削翼16を拡径させるとともに、セメントミルク、モルタル等を注入して根固め球根を築造する。このとき、油圧シリンダー32,32のシリンダーストロークを調整することにより掘削翼16の拡大径を任意に変えることができる。
【0028】
根固め球根を築造が完了すると、油圧シリンダー32,32の操作により掘削翼16を縮径させて螺旋翼14の径内に納め、この後回転軸11を引き上げることで施工が完了する。なお、本実施形態の構造によれば、掘削翼16が下方へ回動して納められた状態となっているので、回転軸11の引き上げ時に掘削済の縦孔の壁を崩すことなく装置を引き上げることができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図5には、本発明の第2の実施形態に係る掘削翼拡縮装置における掘削翼近傍の部分拡大図が示されている。本実施形態において、第1の実施形態と共通する部分には図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとする。
【0030】
第1の実施形態では、連結ロッド19が押し下げられた際に掘削翼16が拡径位置まで回動される構造であったが、本実施形態では、連結ロッド19が引き上げられた際に掘削翼16が拡径位置まで回動される構造を採用したものである。なお、図5においては、右側が連結ロッド19を引き上げた状態、左側が連結ロッド19を押し下げた状態をそれぞれ示している。本実施形態のような構造によっても第1の実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0031】
前記各実施形態においては、回転軸11の外周面に螺旋翼(スクリュー)14が設けられた例について説明したが、本発明は、図6(a)に示されるように、連結シャフト46のみを有するものや、図6(b)に示されるように、外周部に攪拌バー47aが取着された攪拌ロッド47を有するものに対しても適用することができる。勿論、これら各シャフトを組合わせたタイプのものに対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る掘削翼拡縮装置を搭載したアースオーガの全体図
【図2】第1の実施形態の掘削翼拡縮装置における掘削翼近傍の部分拡大図
【図3】第1の実施形態の掘削翼拡縮装置における拡縮操作部の部分拡大図
【図4】第1の実施形態の掘削翼拡縮装置における回転軸の部分拡大図
【図5】本発明の第2の実施形態の掘削翼拡縮装置における掘削翼近傍の部分拡大図
【図6】回転軸の変形例を示す図
【符号の説明】
【0033】
1 アースオーガ
4 リーダマスト
6 駆動部
11 回転軸
12,13 ジョイント
14 螺旋翼
15 先端ビット
16 掘削翼
17 支持ブラケット
18 枢軸
19 連結ロッド
20 ストッパ
30 拡縮操作部
32 油圧シリンダー
33 シリンダーロッド
35 同調ブラケット
36,37 給排ポート
40 スイベルジョイント
41 逆止弁
44 ストロークセンサー
46 連結シャフト
47 撹拌ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部にて回転駆動される回転軸の下端部に設けられる掘削翼を拡縮させる掘削翼拡縮装置において、
前記回転軸の上部に設けられる拡縮操作部と、前記回転軸の外側に配され前記拡縮操作部の作動により上下動操作される一対の連結ロッドと、各連結ロッドの下端部に連結される掘削翼とを備え、
前記拡縮操作部が、前記回転軸の外周面に取り付けられる一対の油圧シリンダーと、一対の油圧シリンダーの作動を同調させる同調機構部とを有し、各油圧シリンダーのシリンダーロッド先端に前記各連結ロッドが連結されることにより各連結ロッドが同時に上下動されるように構成されている
ことを特徴とする掘削翼拡縮装置。
【請求項2】
前記回転軸の外周面には螺旋翼が設けられ、この螺旋翼を貫通するように前記連結ロッドが配される請求項1に記載の掘削翼拡縮装置。
【請求項3】
前記連結ロッドの押し下げ操作時に前記掘削翼が拡径作動される請求項1または2に記載の掘削翼拡縮装置。
【請求項4】
前記連結ロッドの引き上げ操作時に前記掘削翼が拡径作動される請求項1または2に記載の掘削翼拡縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−144469(P2009−144469A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324954(P2007−324954)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(591008007)西村工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】