説明

掘削装置および掘削方法

【課題】掘削溝の横部分を掘削するとき、掘削機のみならず掘削用テーブルおよびマストの移動を必要とするので、作業が面倒であり、掘削溝の微妙な修正も容易でないという課題がある。
【解決手段】
地上走行車1に設けたクレーン6に、掘削機5をワイヤー21により昇降自在に吊設し、前記地上走行車1のテーブル3に機体側横支持体26の基部を取付け、該機体側横支持体26の先端にスライド機構25を介して前記掘削機5を支持するリーダー22に取付けたキャッチフォーク部24を取付けた掘削装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上走行車に支持させて掘削作業を行う掘削装置および掘削方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中連続壁造成用として、地上走行車に突設されたブームに、掘削機(チェン式カッター)を垂直方向に昇降駆動可能に支持して掘削する構成は、公知である(特許文献1)。
また、従来、地上走行車に設けたクレーンのブームに掘削機を吊設し、クレーンのブーム全体を地上走行車に対して前後にスライド自在に取付け、クレーンのブームごと掘削機を前後にスライドさせる構成は、公知である(特許文献2)。
この特許文献2の公知例では、クローラ上にベーステーブルを設け、このベーステーブル上に戻り掘削用テーブルを、前後移動自在に取付け、戻り掘削用テーブルにクレーンのブームを取付け、クレーンのブームに掘削機を支持するマストを設けた構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−88116
【特許文献2】特開2010−185213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知例の前者のものでは、先に掘削した掘削溝に接して掘削溝を施工する場合、土砂抵抗が異なるので、掘削機が先に掘削した掘削溝側に寄ってしまうという課題がある。
また、土留め材施工する場合、土留め材の厚さ方向の掘削断面の変更はビットの数を変更することで対応可能であるが、土留め材の幅方向に対する掘削断面の変更はできず、二度の掘削が必要となるという課題がある。
また、連続壁を造成する際には、ポストを引き抜くことが必要となり、作業工程が増加し、作業時間が長くなるという課題がある。
前記公知例のうち後者のものは、戻り掘削用テーブルおよびマストと共に、掘削機を移動させる構成のため、構造が複雑であり、掘削機の移動が大変になって掘削溝の微妙な修正ができないという課題がある。
本願は、地上走行車およびクレーンをスライドさせなくても、掘削機のスライドを可能とし、作業形態を広げ、作業能率および作業精度を向上させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、地上走行車1に設けたクレーン6に、掘削機5をワイヤー21により昇降自在に吊設し、前記地上走行車1のテーブル3に機体側横支持体26の基部を取付け、該機体側横支持体26の先端にはスライド機構25を介して前記掘削機5を支持するリーダー22に取付けたキャッチフォーク部24を取付けた掘削装置としたものである。
請求項2の発明は、前記スライド機構25は、縦板31および該縦板31に一体に設けた内面にスライド溝33を設けた上下一対の横板32を有するスライド部材30により構成し、前記機体側横支持体26またはキャッチフォーク部24の何れか一方にスライド部材30を固定し、機体側横支持体26またはキャッチフォーク部24の何れか他方にスライド部材30のスライド溝33に係合するフランジ部34を固定し、前記機体側横支持体26またはキャッチフォーク部24の何れか一方にスライド用横行機構35の一端を取付け、何れか他方にスライド用横行機構35の他端を取付けた掘削装置としたものである。
請求項3の発明は、クレーン6のワイヤー21の下端に掘削機5の上部を吊設し、掘削機5を支持するリーダー22の所定部分をキャッチフォーク部24と機体側横支持体26とにより支持した状態で掘削作業を行い、掘削作業中であっても、機体側横支持体26に対してキャッチフォーク部24およびリーダー22をスライド機構25によりスライド移動させ、もって、クレーン6を移動させずに掘削機5をスライド移動させて掘削する掘削方法としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、クレーン6に対してリーダー22ごと掘削機5をスライドさせられ、掘削機5のスライド構成を簡素に実現でき、掘削機5のスライドにより掘削作業を容易にすることができ、また、クレーン6に対して掘削機5をスライドさせることにより掘削機5の引き抜きの工程を省略できて掘削作業全般の作業時間の短縮化を図ることができる。
請求項2の発明では、掘削機5のスライド構成を、簡素に実現できる。
請求項3の発明では、掘削作業中に、掘削機5をスライドさせることができ、掘削作業の容易化を向上させることができ、更に、掘削作業全般の作業時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】掘削装置の側面図。
【図2】掘削機の正面図。
【図3】スライド機構の側面図。
【図4】同平面図。
【図5】スライド機構のスライド状態平面図。
【図6】掘削作業の模式図。
【図7】掘削機とリーダーの取付部分の概略図。
【図8】掘削機とリーダーの取付部分の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例を図により説明する。1は地上走行車であり、走行装置(クローラ)2の上方にテーブル3を設ける。テーブル3の構成は任意であり、テーブル3には、旋回あるいは前後移動する移動テーブルを設けてもよい。
テーブル3には掘削機(チェン式カッター)5を吊設するクレーン6を設ける。前記掘削機5の構成は任意であるが、縦状のポスト7の上部に駆動スプロケット10を駆動軸11により軸装し、ポスト7の下部に従動スプロケット12を従動軸13により軸装する。駆動スプロケット10と従動スプロケット12との間に無端チェン14を掛け回す。無端チェン14には掘削ビット15を所定間隔おいて複数並設する。
【0009】
この掘削機5は、クレーン6の先端の吊設部20から垂下するワイヤー21により吊設され、吊設部20から垂下するリーダー22に支持された状態で昇降する。前記ワイヤー21は前記吊設部20内に設けたワイヤー繰出巻き取り装置(図示省略)により出し入れされ、掘削機5を昇降させる。
前記リーダー22には移動側支持部材(キャッチフォーク部)24を取付け、キャッチフォーク部24にはスライド機構25を介在させて機体側横支持体26取付け、機体側横支持体26の基部は前記地上走行車1のテーブル3側に固定する。
即ち、キャッチフォーク部24と機体側横支持体26との間にスライド機構25を設ける。
【0010】
スライド機構25はスライド部材30の縦板31を前記キャッチフォーク部24の基部に固定状態に取付ける。縦板31には上下一対の横板32を連設し、各横板32の内面にスライド溝33を夫々設け、上下のスライド溝33に機体側横支持体26のフランジ部34をスライド自在に嵌合させる。前記スライド部材30側にはシリンダ等により構成するスライド用横行機構35の一端を取付け、スライド用横行機構35の他端を前記機体側横支持体26側に取付ける。
【0011】
なお、スライド機構25はスライド部材30を機体側横支持体26側に取付けて、キャッチフォーク部24側にフランジ部34を設けてもよい。
スライド機構25は、スライド用横行機構35を作動させると、スライド部材30をスライドさせて、スライド部材30はキャッチフォーク部24を介してリーダー22ごと掘削機5をスライドさせ、その結果、掘削機5全体をスライドさせる。
また、掘削機5とリーダー22との支持構成は任意であるが、実施例では、リーダー22の下部に固定状態に別途第二キャッチフォーク部40を設け、該第二キャッチフォーク部40に横ガイド杆41の基部を固定し、横ガイド杆41の先端のガイド部42に掘削機5のポスト7に形成したガイド溝43を摺動自在に係合させる(図7)。
【0012】
また、第二キャッチフォーク部40の上方に別途第三キャッチフォーク部44を設け、第三キャッチフォーク部44はリーダー22に上下摺動自在に取付け、第三キャッチフォーク部44には掘削機5のポスト7に固定した固定の横支持体45を固定する(図8)。
【0013】
(実施例の作用)
地上走行車1を走行させて掘削現場に至り、掘削現場の掘削箇所に、地上走行車1のクレーン6に取付けたリーダー22の下部を設置する。
【0014】
次に、クレーン6のワイヤー21の下端に掘削機5の上部を取付け、ワイヤー21を繰り出して掘削機5をリーダー22に対して下降させ、掘削作業を行う。
この場合、先に掘削した先行掘削溝M1に接して後続掘削溝M2を施工する場合、土砂抵抗が異なるので、掘削機5が先に掘削した先行掘削溝M1側に寄ってしまうことがあるが、本願では、掘削機5側となる移動側支持部材(キャッチフォーク部)24とテーブル3側となる機体側横支持体26の間にスライド機構25を設けているので、スライド用横行機構35によりスライド機構25のスライド部材30を後続掘削溝M2側にスライドさせると、掘削機5による後続掘削溝M2を、クレーン6を移動させずに、修正でき、設計通りの後続掘削溝M2を掘削する。
即ち、リーダー22の下部を地面より離すだけで、離掘削機5を支持しているリーダー22ごと、テーブル3に対して掘削機5をスライド移動させられる。
したがって、テーブル3に対してリーダー22および掘削機5だけをスライド移動させられるので、掘削溝の修正作業を容易にする。
【0015】
また、前記掘削機5の左右幅(掘削幅)を土留め部材の最小寸法にあった施工可能に製作し、土留め部材の幅が掘削機5の左右幅より広い場合であっても、掘削溝先行掘削溝M1に対して掘削機5を左右方向にスライドさせれば掘削でき、一々掘削機5を引き抜かなくてよく、作業工程を短縮する。
即ち、リーダー22ごと掘削機5をスライドさせることができるので、掘削作業中の掘削機5のスライドが可能となって、掘削機5より大きい掘削溝を掘削でき、全体の掘削工程を短縮させられる。
【0016】
同様に、連続壁や地盤改良を行う際に、掘削機5を持ち上げることなく施工可能となって、作業工程を短縮する。
具体的には、スライド機構25は、掘削機5を支持するリーダー22に取付ける移動側支持部材(キャッチフォーク部)24に、スライド部材30の縦板31を固定状態に取付け、スライド部材30の横板32の内面のスライド溝33にテーブル3側に固定の機体側横支持体26のフランジ部34をスライド自在に嵌合させ、スライド部材30側にはシリンダ等により構成するスライド用横行機構35の一端を取付け、スライド用横行機構35の他端を機体側横支持体26側に取付けているので、スライド用横行機構35によりスライド部材30をスライドさせて、スライド部材30はリーダー22をスライドさせ、その結果、掘削機5全体をスライドさせる。
【符号の説明】
【0017】
1…地上走行車、2…走行装置、3…テーブル、5‥掘削機、6…クレーン、7…ポスト、10…駆動スプロケット、11…駆動軸、12…従動スプロケット、13…従動軸、14…無端チェン、15…掘削ビット、20…吊設部、21…ワイヤー、22…リーダー、24…移動側支持部材(キャッチフォーク部)、25…スライド機構、26…機体側横支持体、30…スライド部材、31…縦板、32…横板、33…スライド溝、34…フランジ部、35…スライド用横行機構、40…第二キャッチフォーク部、41…横ガイド杆、42…ガイド部、43…ガイド溝、44…第三キャッチフォーク部、45…横支持体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上走行車1に設けたクレーン6に、掘削機5をワイヤー21により昇降自在に吊設し、前記地上走行車1のテーブル3に機体側横支持体26の基部を取付け、該機体側横支持体26の先端にはスライド機構25を介して前記掘削機5を支持するリーダー22に取付けたキャッチフォーク部24を取付けた掘削装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記スライド機構25は、縦板31および該縦板31に一体に設けた内面にスライド溝33を設けた上下一対の横板32を有するスライド部材30により構成し、前記機体側横支持体26またはキャッチフォーク部24の何れか一方にスライド部材30を固定し、機体側横支持体26またはキャッチフォーク部24の何れか他方にスライド部材30のスライド溝33に係合するフランジ部34を固定し、前記機体側横支持体26またはキャッチフォーク部24の何れか一方にスライド用横行機構35の一端を取付け、何れか他方にスライド用横行機構35の他端を取付けた掘削装置。
【請求項3】
クレーン6のワイヤー21の下端に掘削機5の上部を吊設し、掘削機5を支持するリーダー22の所定部分をキャッチフォーク部24と機体側横支持体26とにより支持した状態で掘削作業を行い、掘削作業中であっても、機体側横支持体26に対してキャッチフォーク部24およびリーダー22をスライド機構25によりスライド移動させ、もって、クレーン6を移動させずに掘削機5をスライド移動させて掘削する掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−100691(P2013−100691A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245322(P2011−245322)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(390020488)太洋基礎工業株式会社 (15)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)