説明

掘削装置のリーダー鉛直調整機構

【課題】レール上を走行可能な掘削装置の設置台の前後左右方向の傾きが簡単に調整できるリーダー鉛直調整機構を提供する。
【解決手段】リーダー(1)が設置台(8)の前方中央端に設置された掘削装置において、リーダー(1)を前後方向に傾斜させて、横倒し状態から起立状態とする油圧駆動のリーダー起倒用シリンダ(16)と、起立させた状態でリーダー(1)を固定するリーダー固定用ロックボルト(17)と、架台(30)に敷設されたレール上を動く車輪(24)が設置台(8)の底部に設けられ、車軸の一側または両側に設けられた車輪(24)の脚部を伸縮させて、設置台(8)を左右方向に傾斜させる油圧駆動の脚部シリンダ(21)と、伸縮させた脚部をその長さに固定する脚部固定用ロックボルト(20)と、が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダーを有する掘削装置に係り、より詳細には、レール上を移動可能な設置台の傾きを調整して、リーダーの鉛直精度を向上させることができる掘削装置のリーダー鉛直調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行体(クローラ)2にリーダー5が搭載された掘削装置が示されている。リーダー5は、油圧シリンダで動くバックステーと支持アームに支えられて、前後方向に対して垂直に起立させることができる。リーダー5の左右方向の傾きを調整する機構はなく、そのため例えば走行体2が作業する場所は平坦な地表面とする必要がある。これによってリーダー5をどの方向にも傾きがなく、鉛直に起立させることができる。この掘削装置は、リーダー5にオーガスクリュー(棒状旋回体)が垂下連設されている。軟弱な地盤に縦孔を開け、コンクリートを流し込んで強化するような場合、軟弱な地盤の上に通常、数十トンの重量があるクローラ型の掘削装置を持ち込むことは困難である。
【0003】
軟弱な地盤の上には、掘削装置を移動可能に設置できる、レール付きの架台が設けられる。このようなレール付き架台であれば、特許文献2に示されるようなレベル調整ジャッキ20で水平に保つことができる。架台が水平であれば、リーダー起倒用シリンダさえあれば、リーダーを鉛直に立設することができる。
しかしながら、リーダーを有する掘削装置は重量物であり、掘削中の衝撃やスラスト等も加わって掘削装置の架台が湾曲する場合や歪む場合がある。そのため、掘削孔が接近しており高い精度の鉛直な掘削孔を掘る必要がある軟弱な地盤では、リーダーの左右方向の正確な傾き調整機構が必要になる。その場合、掘削装置の設置台と架台の間にレベル調整ジャッキを入れて、設置台の水平を調整していたのでは、掘削装置を次の掘削孔の位置まで移動させる毎にレベル調整ジャッキの取り付け取り外し作業が発生し、作業性を著しく低下させるものとなる。
【特許文献1】実開平06−60634号公報
【特許文献2】特開平5−5391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、レール上を走行可能な掘削装置の設置台の前後左右方向の傾きが簡単に調整できるリーダー鉛直調整機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による請求項1に記載の掘削装置のリーダー鉛直調整機構は、リーダーが設置台の前方中央端に設置された掘削装置において、前記リーダーを前後方向に傾斜させて、横倒し状態から起立状態とする油圧駆動のリーダー起倒用シリンダと、起立させた状態で前記リーダーを固定するリーダー固定用ロックボルトと、架台に敷設されたレール上を動く車輪が前記設置台の底部に設けられ、車軸の一側または両側に設けられた前記車輪の脚部を伸縮させて、前記設置台を左右方向に傾斜させる油圧駆動の脚部シリンダと、伸縮させた前記脚部をその長さに固定する脚部固定用ロックボルトと、が備えられることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記脚部シリンダの伸縮が、前記車軸の一側に設けられた車輪すべてについて同時に行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明による請求項1の掘削装置のリーダー鉛直調整機構によれば、進行方向一側または両側の車軸に設けられた車輪の脚部を伸縮させて、設置台を左右方向に傾斜させる脚部シリンダを設けたので、リーダーを鉛直に精度よく起立させることができる。また、伸縮させた脚部をその長さに固定する脚部固定用ロックボルトを設けたので、脚部シリンダに油圧をかけることなく設置台を傾けた状態に維持できる。また、新たな掘削孔を掘るたびにレベル調整ジャッキを用いて調整する必要もない。
【0008】
請求項2によれば、脚部シリンダの伸縮調整が、車軸の一側に設けられた車輪すべてについて同時に行われるようにしたので、レベル調整ジャッキのように個別に調整する必要がなく、作業効率がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明による掘削装置のリーダー鉛直調整機構を説明する。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明による掘削装置の側面図である。掘削装置100は、リーダー1が設置台8の上に起倒可能に起立している状態を示す。リーダー1には、ウィンチ6からのワイヤでロッド2が垂下される。ロッド2の下端には掘削ビット12が設けられる。掘削ビット12は、ドリルヘッド4によって回転が与えられる。ドリルヘッド4は、給進機構3で下方に推し進められる。ロッド2はチャック5とホルダー10で握持される。掘削中は、チャック5が閉じて、ホルダー10は開いている。
【0011】
リーダー1は、油圧駆動のリーダー起倒用シリンダ16で起立状態とされ、またサポートカラム7で支持されている。設置台8の上には、電源ボックス9、スイッチボックス28、コントロールボックス11、油圧制御のためのオイルタンク27などが搭載される。設置台8の底部には、車軸に連結された車輪24が設けられ、左右方向に設置されたレール13上を走行できる。レール13は、架台30に設けられている。このような構成は、掘削装置100を軽量化することができるので、架台30への負荷が少ない。
【0012】
図2は、図1のリーダー起倒用シリンダ付近の側面図である。リーダー1は、起倒用シリンダ16が油圧で伸縮することにより傾けることができる。リーダー1の下部には、リーダー固定用ロックボルト17があり、リーダー1の下部を設置台8に固定することができる。リーダー固定用ロックボルト17は、ボルトが設置台8から延設された部材の孔を貫通して、ボルトの両側をナットで押さえる構造である。リーダー固定用ロックボルト17を外して、起倒用シリンダ16を縮めれば、後方側にリーダー1を倒すことができる。車軸18の両側に設けられた車輪24は、走行用駆動モータ26で駆動され、前進と後退ができる。
【0013】
図3は、図2の設置台底部付近の一部断面を含む拡大図である。走行用駆動モータ26と車軸18はチェーン19で駆動される。
【0014】
図4は、図1の設置台底部付近の拡大正面図である。図3で示す車輪24と走行用駆動モータ26は、図4の左側に位置する。設置台8の右側方向には、油圧で動く脚部シリンダ21と、ピストンである脚部22に取り付けられた車輪24が設けられる。このような構成により、掘削装置100は左右方向にレール13上を移動させることができる。脚部固定用ロックボルト20は、ボルトと2つのナットからなり、脚部22の長さを固定できる。
【0015】
図5は、図4の右方向から見た図で、図1の設置台底部付近の右側面図にあたる。脚部シリンダ21に取り付けられた車輪24は従動輪である。車軸18は、駆動モータには接続されない。車輪24は、車軸18の両端に設けられる。図5において、前後の2つの脚部シリンダ21は、油圧制御で同時に制御され、脚部22の伸縮量は共に同じ値とされる。なお、本実施例では、脚部シリンダ21を車軸18の一側の車輪に設けたが、車軸18の両側の車輪に設けてもよい。
【0016】
図6は、リーダー1の前後方向の傾きを調整する様子を示す動作図である。図6(A)は、リーダー1が前方向にθ1傾いている状態を示す。どれだけ傾いているかは傾斜計25で知ることができる。この状態で、リーダー固定用ロックボルト17を緩めて、リーダー起倒用シリンダ16を縮めれば、リーダー1は、図6(B)に示すようにリーダー1が垂直に起立した状態にすることができる。この状態を傾斜計25で確認して、リーダー固定用ロックボルト17を絞めることにより、リーダー1を動かないように固定する。リーダー1が後方向に傾いている場合も同様にして調整することができる。
【0017】
図7は、リーダー1の左右方向の傾きを調整する様子を示す動作図である。図7(A)は、設置台8が右にθ2傾いている状態を示す。どれだけ傾いているかは傾斜計25で知ることができる。この状態で脚部固定用ロックボルト20を緩め、脚部シリンダ21で脚部22を伸ばせば、図7(B)に示す設置台8を水平な状態とすることができる。この状態は脚部固定用ロックボルト20を絞めることで固定できる。図7(C)は、設置台8が左にθ3傾いている状態を示す。この状態で脚部固定用ロックボルト20を緩め、脚部シリンダ21で脚部22を縮めれば、図7(B)に示す設置台8を水平な状態とすることができる。この状態は脚部固定用ロックボルト20を絞めることで固定できる。このような調整は、設置台8が湾曲した場合や歪んだ場合にも有効である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、レール上を走行する掘削装置のリーダー鉛直調整機構に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による掘削装置の側面図である。(実施例1)
【図2】図1のリーダー起倒用シリンダ付近の側面図である。(実施例1)
【図3】図2の設置台底部付近の一部断面を含む拡大図である。(実施例1)
【図4】図1の設置台底部付近の拡大正面図である。(実施例1)
【図5】図4の設置台底部付近の右側面図である。(実施例1)
【図6】リーダーの前後方向の傾きを調整する様子を示す動作図である。(A)はリーダーが前方向にθ1傾いている状態を示す。(B)はリーダーが垂直に起立している状態を示す。
【図7】リーダーの左右方向の傾きを調整する様子を示す動作図である。(A)は設置台が右にθ2傾いている状態を示す。(B)は設置台の水平状態を示す。(C)は設置台が左にθ3傾いている状態を示す。
【符号の説明】
【0020】
1 リーダー
2 ロッド
3 給進機構
4 ドリルヘッド
5 チャック
6 ウィンチ
7 サポートカラム
8 設置台
9 電源ボックス
10 ホルダー
11 コントロールボックス
12 掘削ビット
13 レール
16 リーダー起倒用シリンダ
17 リーダー固定用ロックボルト
18 車軸
19 チェーン
20 脚部固定用ロックボルト
21 脚部シリンダ
22 脚部
24 車輪
25 傾斜計
26 走行用駆動モータ
27 オイルタンク
28 スイッチボックス
30 架台
100 掘削装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダーが設置台の前方中央端に設置された掘削装置において、
前記リーダーを前後方向に傾斜させて、横倒し状態から起立状態とする油圧駆動のリーダー起倒用シリンダと、
起立させた状態で前記リーダーを固定するリーダー固定用ロックボルトと、
架台に敷設されたレール上を動く車輪が前記設置台の底部に設けられ、車軸の一側または両側に設けられた前記車輪の脚部を伸縮させて、前記設置台を左右方向に傾斜させる油圧駆動の脚部シリンダと、
伸縮させた前記脚部をその長さに固定する脚部固定用ロックボルトと、が備えられることを特徴とする掘削装置のリーダー鉛直調整機構。
【請求項2】
前記脚部シリンダの伸縮が、前記車軸の一側に設けられた車輪すべてについて同時に行われることを特徴とする請求項1に記載の掘削装置のリーダー鉛直調整機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−221659(P2009−221659A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63994(P2008−63994)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000185972)小野田ケミコ株式会社 (58)
【出願人】(000168506)鉱研工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】