説明

掘削装置

【課題】 カッターヘッドが大口径で、掘削対象が硬い地山等であっても、効率良く掘削できる掘削装置を提供する。
【解決手段】 この掘削装置は、掘削対象物に押し当てつつ回転される円形の開口を有する外周カッターヘッド20と、開口内に設けられ、外周カッターヘッド20とは別個に回転可能にされた小径カッターヘッド23とを含む。外周カッターヘッド20と小径カッターヘッド23の回転中心はずれていて、そのずれが小径カッターヘッド23の回転半径より小さくされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルを掘削するための掘削装置に関し、より詳細には、硬質な地盤であっても効率良く掘削することを可能にする掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地山や地下地盤にトンネルを構築する際、これらを掘削するために掘削装置としてシールドマシンが使用されている。シールドマシンは、トンネル先端の切羽(掘削面)に押し付けて掘削するためのカッターヘッドと呼ばれる回転する円板を備えている。このカッターヘッドには、カッタービットと呼ばれる円面から突出する細かい刃が放射状に複数設けられ、このカッタービットには、硬い石や岩等に接触しても容易に破損しないように、超合金や焼結タングステンカーバイド等の強靱な素材が用いられている。
【0003】
このようなシールドマシンを用い、カッターヘッドを回転させ、切羽に押し当てることにより、カッタービットが土砂に食い込み、土砂を切削して、略円形の断面を有するトンネルを掘削することができる。なお、シールドトンネルを構築する場合は、シールドマシンによる掘削と同時に、地山等が崩れないように鋼製または鉄筋コンクリート製のアーチ状に形成されたブロック(セグメント)をトンネル壁面に当接するように組み立てて一次覆工を行い、それに引き続いてトンネル内面をコンクリートで巻き立てることにより二次覆工を行ってシールドトンネルを構築する。この二次覆工を行うことにより、一次覆工部分の防護や表面抵抗の軽減を図ることができる。
【0004】
図1(a)〜(c)は、従来のシールドマシンに用いられているカッターヘッドの正面図である。図1(a)に示すカッターヘッドは、径方向に放射状に延びるカッタースポーク60と呼ばれる部材と、その間のカッタースリット10と呼ばれる開口から形成され、カッタースポーク60が延びる方向に当該カッタースポーク60に沿って一定間隔で複数のカッタービット11が配列するように設けられている。中央部には、この中央部の切削性を向上させるために、プレート形のビット12が設けられ、その両側には、出退する円盤状のディスクカッター13が配設されている。
【0005】
ここで、カッタースリット10は、カッタービット11により削り取った土砂を取り込み、カッターヘッドの他方の面、すなわちカッタービット11等が設けられている面の裏面に形成された隔室へと送るための開口である。
【0006】
図1(b)に示すカッターヘッドも、径方向に放射状に延びるカッタースポーク60が形成され、カッタースポーク60に沿って一定間隔で複数のカッタービット11が配列するように設けられている。しかしながら、この例では、中央部に円形の開口が形成され、その開口を閉鎖するように小径の第2カッターヘッド14が設けられている。
【0007】
この第2カッターヘッド14も、円形の板の一方の面に、径方向に放射状に延びるカッタースポーク65が形成され、カッタースポーク65に沿って一定間隔で複数のカッタービット16が配列するように設けられている。そして、その中心には、その中心付近の切削性を向上させるために、プレート形のビット17が交差するように設けられている。この例では、カッターヘッドと第2カッターヘッド14が、同じ回転中心とされており、それぞれが独立して回転可能に構成されている。
【0008】
図1(c)に示すカッターヘッドも、径方向に放射状に延びるカッタースポーク60が形成され、カッタースポーク60に沿って一定間隔で複数のカッタービット11が配列するように設けられている。この例では、図1(a)と同様に、中央部の切削性を向上させるために、プレート形のビット12が設けられるが、その両側には、出退する円形の独立した回転式切削装置18が設けられている。
【0009】
いずれも中央部の構成や構造を工夫し、その中央部の切削性を向上させているが、高速で移動する外周部のカッタービット11に対し、中央部にあるビット12は、ゆっくり移動するため、著しく切削性能が低下し、これでは掘削対象物が硬いものである場合、切削に時間を要したり、切削することができない状況が生じる。図1(b)、(c)では、中央部に独立した第2カッターヘッド14や回転式切削装置18を備えており、これらを高速で回転させることにより硬いものであっても切削可能にするが、それでも、ビット12、17に当接する硬い部分は、ビット12、17の移動が遅いことから、その部分を切削するには時間を要し、切削することができない状況を生じ得る。
【0010】
したがって、もともと硬い地山や地盤、硬く改良された地山や地盤、コンクリート等で構築されたシールドトンネルの壁面等の構造物を直接掘削することは、これらのカッタービット11、16を用いた掘削装置では難しい。近年、スムーズな交通の流れを実現するために複路線化が進められてきており、大口径のカッターヘッドが用いられるケースが増えてきているが、大口径のカッターヘッドの場合、中央部のビット12が移動する速度はさらに遅くなり、硬い掘削対象物を切削するのがいっそう難しくなる。
【0011】
仮に、その硬い掘削対象物をカッタービットによって切削することができたにしても、中心部のビット12の移動速度が遅いことから、削り取られた土砂の流動性、混練性が悪く、カッタースリット10、15へ取り込むことができず、閉塞を生じる場合がある。これでは掘削をスムーズに行うことはできない。
【0012】
このような問題に鑑み、従来においては、予めシールドマシンの前面に作業員が入り、この硬質部分の土砂を作業員によって除去したり、閉塞が生じた場合にカッタースリット10、15内等の土砂を取り除くという作業を行っていた。しかしながら、このような状況は、作業員の安全性に問題があり、作業効率を著しく低下させ、トンネル工事を大幅に遅延させることになる。
【0013】
このような硬い地山等を掘削する場合ではないが、地中に堅い障害物が存在する場合に、主カッタヘッドの中心部に、副カッタヘッドを回転自在に設けるとともに、環状の主カッタヘッドの面板部に複数個の補助カッタヘッドを、主カッタヘッドの面板部から前方に向かって出退自在に設けるとともに、地山に障害物が存在する場合、補助カッタヘッドを前方に突出させて当該障害物を切断等できるようにしたシールド掘進機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
このシールド掘進機を用いることで、中心部にある副カッタヘッドや、中心部から半径方向に沿ってずらされて配置される複数個の補助カッタヘッドを前方に突出させ、回転させて、上述した堅い障害物を容易かつ迅速に切断することができ、これにより、作業員が障害物を取り除くことがなくなるため、作業員の安全性を確保するとともに作業効率を大幅に向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3244603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記特許文献1に記載のシールド掘進機も、通常の掘削を行う場合には、副カッタヘッドおよび補助カッタヘッドを退入させた状態、すなわち主カッタヘッドの面板部と面一にした状態で、カッタヘッドを回転させることから、当該カッタヘッドの中心付近のカッタービットの移動速度は小さく、掘削対象物が硬いものである場合は、その中心付近は掘削に時間を要するか、全く掘削することはできない。仮に、その中心付近の土砂を切削することができたにしても、削り取られた土砂の流動性は悪く、閉塞を生じる可能性がある。
【0017】
そこで、中心部にある副カッタヘッドを回転させることにより上記中心付近の土砂を掘削することができるが、この副カッタヘッドは、図1(b)に示したカッターヘッドと同様に、主カッタヘッドと同じ回転中心であるため、その中心付近も同様に、回転速度が小さく、その中心付近の土砂を切削することは難しい。そうすると、その部分については作業員が手作業で除去しなければならなくなる。これでは、作業員の安全性を確保することができず、作業効率も良いとは言えない。
【0018】
そこで、硬い掘削対象物を効率良く掘削することができ、作業員の安全性も確保することができ、信頼性の高い掘削装置の提供が望まれていた。特に、硬い掘削対象物を効率良く掘削することができる大口径のカッターヘッドを備える掘削装置の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題に鑑み、トンネルを掘削するための掘削装置であって、掘削対象物に押し当てつつ回転される円形の開口を有する回転円板と、開口内に設けられ、回転円板とは別個に回転可能にされた回転板と、回転円板および回転板の一方の面から突出するように複数設けられ、回転円板および回転板の回転により掘削対象物を切削する切削部材とを含み、回転円板と回転板の回転中心がずれていて、そのずれが回転板の回転半径より小さくされていることを特徴とする掘削装置が提供される。
【0020】
このように、回転中心がずれた回転円板および回転板を用い、そのずれを回転板の回転半径より小さくすることで、回転円板の中心付近に押し当てられた掘削対象物は、回転板の外周部にある高速で移動する切削部材によって切削され、回転板の中心付近に押し当てられた掘削対象物は、回転円板の中心付近より外周側にある比較的高速で移動する切削部材によって切削されるため、切削されない部分をなくすことができる。
【0021】
また、回転円板および回転板が押し当てられた掘削対象物はいずれの部分においても、比較的高速で移動する切削部材によって切削されるため、流動性や混練性が向上し、削り取られた土砂をカッタースリットへスムーズに取り込むことができ、閉塞を生じることをなくすことができる。これは、大口径のカッターヘッドを備える掘削装置にも適用することができ、これにより、大口径のトンネルをスムーズに構築することが可能となる。
【0022】
回転板の回転半径は、回転円板の径の1/6〜1/3であることが好ましい。この範囲の回転半径をもつ回転板が、掘削面全体を効率良く掘削することができるからである。回転円板と回転板の回転中心の距離は、回転板の回転半径の1/4〜3/4が好ましい。
【0023】
掘削装置は、回転円板をその周方向に回転可能に支持する第1回転支持手段と、回転円板に動力を伝達し、回転円板をその周方向に回転させる第1駆動手段とを備える。回転板を支持および回転させるために、回転円板の開口内壁に、回転板の外縁をその周方向に回転可能に支持する第2回転支持手段と、回転円板の切削部材が設けられる面の裏面に、回転板に動力を伝達し、回転板をその周方向に回転させる第2駆動手段とを備えることができる。回転板の外縁を第2回転支持手段により支持した状態で第2駆動手段により回転板を回転させるため、強固な支持力を得ることができ、大きな駆動力を得ることができる。
【0024】
第2駆動手段は、第1駆動手段や第1回転支持手段と同様、掘削装置本体に備えていてもよく、このように本体に備えることで、回転円板の構造が簡素なものとなり、第2駆動手段への電源の接続方法や保守が容易となる。
【0025】
また、第2回転支持手段は備えていなくてもよく、これによって回転板の支持強度は低下するものの、回転円板の構造がより簡素なものとなり、特に回転板として小径の回転円板を用いる場合に実現しやすいという利点がある。
【0026】
回転板は、1つに限られるものではなく、2以上設けることも可能である。この場合、回転板の数に応じた数の第2駆動手段が設けられ、当該数の第2駆動手段は、掘削装置本体に設けられる。このように複数の回転板を設けることで、切削性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
従来の掘削装置では円形のカッターヘッドをその中心廻りに回転駆動し掘削を実施するが、中心部ではそれぞれの切削部材の切削速度が著しく低下し、切削速度が遅いため、前面閉塞や掘削困難等のトラブルが発生したり、混練性の低下によるチャンバー内の閉塞等のドラブルが発生する。しかしながら、本発明の掘削装置は信頼性の高い構造であるため、全面にわたり切削速度、混練速度を確保することができ、掘削性能を維持することが可能である。また、本発明の掘削装置は、分岐するトンネルを構築する場合においても、既設のトンネルの硬い壁面を直接掘削することができるので、安価で、労力を要することなく、短い工期で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来の掘削装置に用いられているカッターヘッドを示した図。
【図2】本発明の掘削装置の1つの実施形態を例示した図。
【図3】本発明の掘削装置の別の実施形態を例示した図。
【図4】本発明の掘削装置のさらに別の実施形態を例示した図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図2は、本発明の掘削装置の1つの実施形態を示した図である。図2(a)は、カッターヘッドの正面図で、図2(b)は、掘削装置の内部構成を示した図である。この掘削装置は、従来のシールドマシンと同様、トンネル先端の切羽に押し当てて回転することにより、地山や地盤等といった掘削対象物を掘削する回転円板としての外周カッターヘッド20を備えている。図2(a)に示すように、この外周カッターヘッド20は、径方向に放射状に延びるカッタースポーク61が形成され、カッタースポーク61に沿って一定間隔で複数のカッタービット(切削部材)22が配列するように設けられている。
【0030】
カッタービット22は、外周カッターヘッド20の一方の面から突出する細かい刃であり、硬い石や岩等に接触しても容易に破損しないように、超合金や焼結タングステンカーバイド等の強靱な素材により製造される。外周カッターヘッド20は、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼等の耐摩耗性を有する鋼材を用いて製造することができる。カッタースリット21は、上述したように外周カッターヘッド20の裏面、すなわちカッタービット22等が設けられている面を表面とした場合のその裏面に形成された隔室30へと送るための開口であり、カッタービット22により削り取った土砂を取り込む。なお、カッタースリット21は、後方の隔室30へと連続しており、取り込まれた土砂は、このカッタースリット21を通して隔室30へと送られる。
【0031】
この外周カッターヘッド20は、中央部分に開口が設けられ、その開口内に、小径の回転板である小径カッターヘッド23がその開口を閉鎖するように設けられている。ここでは、回転板が円形とされているが、円形に限られるものではなく、矩形、楕円形、十字形等であってもよい。この小径カッターヘッド23も、その外周を包囲する外周カッターヘッド20と同様、径方向に放射状に延びるカッタースポーク62が形成され、カッタースポーク62に沿って一定間隔で複数のカッタービット(切削部材)25が配列するように設けられている。
【0032】
カッタースリット24は、カッタービット25等が設けられている面を表面とした場合のその裏面に形成された隔室30へと送るための開口であり、カッタービット25により削り取った土砂を取り込む。
【0033】
小径カッターヘッド23は、外周カッターヘッド20とは独立して回転可能とされ、外周カッターヘッド20と同じ回転中心をもつものではなく、回転中心が距離Aほどずれており、そのずれである距離Aが、小径カッターヘッド23の回転半径より小さくされている。なお、小径カッターヘッド23の中央部には、上述した従来のシールドマシンと同様、切削性を向上させるために、プレート形のビット26が設けられている。
【0034】
小径カッターヘッド23の回転半径は、外周カッターヘッド20の径の1/6〜1/3であることが好ましい。大きすぎても、小さすぎても、掘削面全体を効率良く掘削することができないからである。1/6より小さいと、小径カッターヘッド23の外側で、かつ外周カッターヘッド20の中央に近い部分に押し当てられる対象物を、その外周カッターヘッド20の中央に近い、移動速度が遅いカッタービット22によって切削することになり、一方、1/3より大きいと、開口が大きくなり、外周カッターヘッド20の強度が低下し、小径カッターヘッド23を回転させる駆動手段が大きくなるという問題が生じるからである。
【0035】
また、外周カッターヘッド20と小径カッターヘッド23の回転中心の距離Aは、小径カッターヘッド23の回転半径の1/4〜3/4が好ましい。この範囲の距離にすることで、効率良く掘削することができるからである。
【0036】
このように、外周カッターヘッド20と小径カッターヘッド23の回転中心をずらし、しかも、そのずれを小径カッターヘッド23の回転半径より小さくすることで、外周カッターヘッド20の中心付近に押し当てられた地山や地盤等といった掘削対象物は、小径カッターヘッド23の外周部に設けられた高速で移動するカッタービット25によって切削され、小径カッターヘッド23の中心付近に押し当てられた掘削対象物は、外周カッターヘッド20の中心付近より外周側に設けられた比較的高速で移動するカッタービット22によって切削されるため、切削に時間を要するということはなくなり、また、切削されないということをなくすことができる。
【0037】
また、外周カッターヘッド20および小径カッターヘッド23が押し当てられた掘削対象物はいずれの部分においても、高速でその周方向へ移動するカッタービット25および比較的高速でその周方向へ移動するカッタービット22によって切削されるため、削り取られた土砂の流動性や混練性が良好で、カッタースリット21、24を介してスムーズに後方の隔室30へと搬送することができる。どの位置のカッタービット22、25も、その移動速度がほぼ0となることはなく、一定以上の速度を有するので、切削することができないという状況は発生せず、掘削土砂によって閉塞を生じることがなくなる。
【0038】
図2(b)を参照して、外周カッターヘッド20および小径カッターヘッド23は、掘削装置の掘進方向を前方とした場合、掘削装置の前面に取り付けられる。外周カッターヘッド20は、支持体31を介して装置内部の隔壁32に配設された、当該外周カッターヘッド20を回転可能に支持する第1回転支持手段としての支持軸受33に接続される。支持軸受33は、例えば、内輪と外輪とその間に介在する複数の球体とから構成されるボールベアリングと、内輪の掘進方向の後方へ向いた面に連結され、その外周がギア加工されたリング状部材とから構成され、このギアに噛合する小径の歯車であるピニオンを介して第1駆動手段としての駆動モータ34に接続することができる。
【0039】
ボールベアリングは、外周カッターヘッド20を、支持体31を介して隔壁32に回転可能に支持する。駆動モータ34は、油圧モータや電動モータからなり、回転させ、その回転によって上記ギアを介して外周カッターヘッド20を一定方向に回転させる。詳細には、ピニオンとギアとが噛合しており、ピニオンの回転に伴ってギア加工されたリング状部材が、外周カッターヘッド20の回転中心を中心として回転することから、このリング状部材に連結される内輪およびその内輪に連続する支持体31を介して外周カッターヘッド20が回転する。
【0040】
図2(b)に示す実施形態では、小径カッターヘッド23を支持および回転させるために、例えば、小径カッターヘッド23の外周と、外周カッターヘッド20の開口の内壁との間に第2回転支持手段としての旋回軸受35を設けることにより、外周カッターヘッド20に回転可能に強固に支持することができる。この旋回軸受35の前方、すなわちカッタービット22が設けられる面側には、その裏面に設けられる小型カッタービット(切削部材)23を回転させる第2駆動手段としての駆動モータ36を含む駆動部を密閉するためのシール装置が配設される。
【0041】
旋回軸受35は、例えば、複数の球体を内輪と外輪の間に介在させた構成のボールベアリングと、その内輪に連結された上記と同様のギア加工されたリング状部材とから構成することができる。外周カッターヘッド20は、スポーク部61に駆動モータ36を収納するための収納箱を備え、その収納箱内に駆動モータ36が設置される。
【0042】
リング状部材の外周には、ギア加工が施され、ボールベアリングにより回転可能に支持されているため、収納箱に収納される駆動モータ36に連結されるピニオンとそのギアが噛合することにより、駆動モータ36により回転するピニオンの回転運動をギアに伝達し、小径カッターヘッド23を一定方向に回転させることができる。なお、この駆動モータ36も、油圧モータとすることができる。この油圧モータへの油圧の提供は、配管を通じて行うが、小径カッターヘッド23が一定方向に回転することから、油圧モータと油圧ポンプは、回転継手を用いて連結される。
【0043】
この図2(b)に示す実施形態では、小径カッターヘッド23を回転可能に支持する回転支持手段としての旋回軸受35も、駆動モータ36も、外周カッターヘッド20に設けられている。小径カッターヘッド23は、その外縁を旋回軸受35で回転可能に支持されることから、強固に支持することができ、大きな駆動力を得ることができる。したがって、より硬い掘削対象物であっても、切羽に適切に押し付けて効率良く切削することができる。
【0044】
ここでは、ボールベアリングとリング状部材とから構成される支持軸受33および旋回軸受35を例示したが、これに限定されるものではなく、これまでに知られたいかなる手段を用いて回転可能に支持し、各カッターヘッドを別個に回転させることもできる。
【0045】
この掘削装置は、そのほか、外周カッターヘッド20および小径カッターヘッド23と、周方向を覆うスキンプレート40と、隔壁32とによって閉鎖された隔室30に、カッタースリット21に取り込まれた掘削土砂が収納され、その収納された掘削土砂を後方へ排出するためのケーシング41を備えている。このケーシング41は、隔壁32の下部に傾斜させて接続され、その内部には、隔室30内の掘削土砂を搬送するための搬送手段としてスクリューコンベア42が設けられている。スクリューコンベア42は、中心軸の周りに螺旋状に形成された羽根を有する構造とされ、図示しないモータ等により中心軸を中心として回転することにより連続する羽根に沿って掘削土砂を後方へと搬送する。
【0046】
また、この掘削装置は、一次覆工のためのセグメントを自動的に組み立てるセグメント組立装置43も備える。セグメント組立装置43は、伸縮し、前後し、旋回するアームおよびグリップを備えており、円弧形状のセグメントを周方向へ連設することによりトンネル内面を覆うセグメントリングを構築する。さらに、掘削装置は、シールドジャッキ44を備え、このシールドジャッキ44が、既に固定されたセグメントの端部を押して掘削装置を前方へ移動させる。これにより、その固定されたセグメントとの前に空間が形成され、その空間において、再びセグメント組立装置43が一周にわたってセグメントリングを構築する。これを繰り返すことにより、トンネル軸方向へ延びるシールドトンネルを構築することができる。
【0047】
また、掘削装置は、アーティキュレートジャッキ45をさらに備え、掘進方向を変更することができるようにされている。これらのジャッキは、いずれも油圧式ジャッキとすることができ、作動油に圧力を加えて油圧回路へ送り出す油圧ポンプと、油圧ポンプから得た油圧力を回転運動へ変換する油圧モータと、回転運動を直線運動へ変換する油圧シリンダとを含んで構成することができる。掘進方向は、その方向に対して左右に設けられるアーティキュレートジャッキ45の一方の油圧シリンダを伸ばし、他方の油圧シリンダを収縮させることにより変更することができる。
【0048】
掘削装置には含まれないが、この掘削装置の後方には、ケーシング41に連続して排泥ポンプが接続されたり、ケーシング41の端部にゲートを設け、ゲートからベルトコンベアに土砂を移したりして、掘削土砂をトンネル外へ排出することができる。
【0049】
この掘削装置の後方には、台車に載置された電源トランス、台車に載置されたケーブルリール等が配置される。ケーブルリールは、バッテリからの電源を電源トランスへ供給するためのケーブルを収納しており、掘進により電源トランスが移動するたびに引き出される。
【0050】
図3は、掘削装置の第2実施形態を示した断面図である。掘削装置を構成する要素は、図2(b)に示す第1実施形態と同様であるので説明を省略し、その第1実施形態とは異なる、小径カッターヘッド23を回転させる駆動モータ36の取り付け位置についてのみ説明する。なお、小径カッターヘッド23は、外周カッターヘッド20に設けられた開口を閉鎖するように旋回軸受35により当該外周カッターヘッド20に回転可能に支持される。このため、この旋回軸受35は、上記の例でいうボールベアリングのみで構成され、このボールベアリングが小径カッターヘッド23の外縁と外周カッターヘッド20の開口内壁との間に設けられる。
【0051】
図2に示した第1実施形態では、駆動モータ36が、外周カッターヘッド20に設けられた収納箱内に設置されていたが、図3に示す第2実施形態では、隔壁32に取り付けられている。隔壁32には、外周カッターヘッド20の回転中心から距離Aほどずれた位置を小径カッターヘッド23の回転中心として中空円筒37が設けられ、その内部に小径カッターヘッド23の回転中心に先端部が連結された図示しない支持軸が通され、小径カッターヘッド23を回転可能に支持している。この支持軸の末端部には、外周がギア加工された円盤状部材が設けられる。駆動モータ36は、回転運動を、この駆動モータ36に連結されたピニオンに伝達し、ピニオンをそのギアと噛合させて円盤状部材を回転させる。これにより、円盤状部材の回転に伴って支持軸が回転し、この支持軸の回転に伴って小径カッターヘッド23が一定方向に回転する。
【0052】
このように装置本体の隔壁32に駆動モータ36を備えることで、小径カッターヘッド23に収納箱を設けて駆動モータ36を設置する必要がなくなり、また、旋回軸受35の構造も簡素なものとなり、その結果、外周カッターヘッド20の構造が簡素となり、軽量となるので、消費電力を低減することができ、また、駆動モータ36への電源の接続方法や保守が容易となる。
【0053】
これまでの実施形態では、小径カッターヘッド23の外周カッターヘッド20への取り付けを、旋回軸受35を用いて行い、これにより、強固な支持力を得ることができたが、それほど強固な支持力を必要としない場合、この旋回軸受35を用いない構造とすることも可能である。例えば、図3に示す掘削装置において、旋回軸受35がなく、単に中空円筒37内に支持軸を通した構成のみとし、これらにより小径カッターヘッド23を回転可能に支持することができる。
【0054】
その結果、外周カッターヘッド20の構造がさらに簡素となり、軽量となるので、消費電力を低減することができ、また、駆動モータ36への電源の接続方法や保守が容易となる。しかしながら、強固な支持力を得ることができないため、硬い掘削対象物の場合、その対象物に小径カッターヘッド23を押し当てつつ回転させるということができないことがある。これでは適切に掘削することができない。そこで、小径カッターヘッド23を複数備える構成とし、それほど強く押し付けなくても適切に掘削することができるようにすることができる。
【0055】
その構成を図4(a)、(b)に例示する。図4(a)、(b)では、外周カッターヘッド20の中央部に、当該外周カッターヘッド20の回転中心を中心とした略円形の開口50が設けられ、その開口50内に、十字形の回転板が小径カッターヘッド23a、23bとして2つ設けられている。この回転板は、4枚の矩形の板が円形の板に90°ごとに溶接等されたものであってもよい。
【0056】
これらの小径カッターヘッド23a、23bは、一点鎖線で示される軌跡がラップするように配設されていて、互いの回転は同調し、干渉を防ぐように制御される。したがって、小径カッターヘッド23a、23bを構成する羽根同士が衝突しないように同じ回転速度に制御される。小径カッターヘッド23a、23bの各矩形の板の表面には、複数のカッタービット25が配列するように設けられ、開口50を通して隔室30へ送ることができるようにされている。
【0057】
小径カッターヘッド23a、23bの裏面の回転中心には、支持軸の先端部が連結され、外周カッターヘッド20の回転中心から距離Aほどずれた位置に、これらの回転中心が位置するように中空円筒37a、37bが設けられ、それら中空円筒37a、37b内を各支持軸が通るように設置される。これにより、小径カッターヘッド23a、23bを回転可能に支持することができ、しかも、距離Aを小径カッターヘッド23a、23bの回転半径より小さくすることができる。
【0058】
支持軸の末端部には、外周にギア加工されたリング状部材が設けられる。駆動モータ36a、36bは、回転運動を、この駆動モータ36a、36bに連結されたピニオンに伝達し、ピニオンとそのギアを噛合させ、支持軸を介して小径カッターヘッド23a、23bに伝達し、当該小径カッターヘッド23a、23bを一定方向に回転させる。
【0059】
外周カッターヘッド20は、小径カッターヘッド23a、23bを配置する部分にそれらを収容することができる大きさの開口50が空いていればよいので、簡素な構造で実現することができ、また、装置本体に駆動モータ36a、36bが設置されるので、駆動源の接続方法や保守を容易にすることができる。
【0060】
この掘削装置は、硬い地山のほか、改良された地山や構造物等の掘削においても、優れた切削性を有することから、例えば、既設の硬いトンネル壁を直接切削し、1つに合流するトンネルや2つに分岐するトンネルを構築することが可能となる。既設のトンネル壁に対し、垂直に切削していく場合のほか、トンネル壁に沿うように少しずつ食い込んでいくように切削するような場合にも対応可能である。
【0061】
これまで本発明の掘削装置について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。したがって、上述したように、回転板の形状は、円形以外の矩形、楕円形、十字形等、いかなる形状であってもよく、ボールベアリング以外の回転支持手段を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…カッタースリット、11…カッタービット、12…ビット、13…ディスクカッター、14…第2カッターヘッド、15…カッタースリット、16…カッタービット、17…ビット、18…回転式切削装置、20…外周カッターヘッド、21…カッタースリット、22…カッタービット、23、23a、23b…小径カッターヘッド、24…カッタースリット、25…カッタービット、26…ビット、30…隔室、31…支持体、32…隔壁、33…支持軸受、34…駆動モータ、35…旋回軸受、36、36a、36b…駆動モータ、37…中空円筒、40…スキンプレート、41…ケーシング、42…スクリューコンベア、43…セグメント組立装置、44…シールドジャッキ、45…アーティキュレートジャッキ、50…開口、60、61、62、65…カッタースポーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルを掘削するための掘削装置であって、
掘削対象物に押し当てつつ回転される円形の開口を有する回転円板と、
前記開口内に設けられ、前記回転円板とは別個に回転可能にされた回転板と、
前記回転円板および前記回転板の一方の面から突出するように複数設けられ、前記回転円板および前記回転板の回転により前記掘削対象物を切削する切削部材とを含み、
前記回転円板と前記回転板の回転中心がずれていて、ずれが前記回転板の回転半径より小さくされていることを特徴とする、掘削装置。
【請求項2】
前記掘削装置は、前記回転円板を、当該回転円板の周方向に回転可能に支持する第1回転支持手段と、前記回転円板に動力を伝達し、前記回転円板を前記周方向に回転させる第1駆動手段と、前記回転円板の前記開口内壁に、前記回転板の外縁を前記周方向に回転可能に支持する第2回転支持手段と、前記回転円板の前記切削部材が設けられる面の裏面に、前記回転板に動力を伝達し、前記回転板を前記周方向に回転させる第2駆動手段とを備える、請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
前記掘削装置は、前記回転円板を、当該回転円板の周方向に回転可能に支持する第1回転支持手段と、前記回転円板に動力を伝達し、前記回転円板を前記周方向に回転させる第1駆動手段と、前記回転板に動力を伝達し、前記回転板を前記周方向に回転させる第2駆動手段と、前記回転円板の前記開口内壁に、前記回転板の外縁を前記周方向に回転可能に支持する第2回転支持手段とを備える、請求項1に記載の掘削装置。
【請求項4】
前記掘削装置は、前記回転円板を、当該回転円板の周方向に回転可能に支持する第1回転支持手段と、前記回転円板に動力を伝達し、前記回転円板を前記周方向に回転させる第1駆動手段と、前記回転板に動力を伝達し、前記回転板を前記周方向に回転させる第2駆動手段とを備える、請求項1に記載の掘削装置。
【請求項5】
前記掘削装置は、複数の前記回転板と、前記回転板の数と同じ数の前記第2駆動手段とを備える、請求項4に記載の掘削装置。
【請求項6】
前記回転板の回転半径は、前記回転円板の径の1/6〜1/3とされる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の掘削装置。
【請求項7】
前記回転円板と前記回転板の回転中心の距離は、前記回転板の回転半径の1/4〜3/4とされる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−14905(P2013−14905A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147283(P2011−147283)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】