説明

掘進機

【課題】掘削経路中に障害物が存在するときに、掘進機の一部を掘削経路中に残し、残りを掘削開始地点まで戻すだけで、障害物を除去できること。
【解決手段】主固定要素の外筒12に回転自在に連結された外周側カッタヘッド18を備えた補助固定要素と、駆動部本体20とカッタ駆動軸22と油圧モータ24および内周側カッタヘッド26を含む移動要素とを備え、補助固定要素と移動要素を互いに分離可能に構成し、トンネル200中に障害物202が存在するときには、駆動部本体20とカッタ駆動軸22と油圧モータ24および内周側カッタヘッド26を含む移動要素を坑口側に引き戻し、外筒12内に、作業員204が移動可能な空間部114を形成することで、空間部114から空間部116を介して作業空間部200aに侵入した作業員204が障害物202を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘進機に係り、特に、カッタヘッドを回転及び移動させて、地中にトンネルを掘るための掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
掘進機を用いて地中にトンネルを掘るに際しては、例えば、掘削開始地点に竪坑を掘り、掘削開始地点の竪坑内に掘進機を配置し、掘削開始地点の竪坑から掘削終了地点に向かって掘進機を移動させて、掘削開始地点と掘削終了地点とを結ぶトンネルを掘削することが行われている。トンネルの掘削作業を行っている過程では、岩盤や土質に応じてカッタヘッドを交換するために、あるいはカッタヘッドなどの修理や清掃のために、掘進機を発進竪坑側へ一旦戻すことが行われている。この際、スクリューコンベアの先端側に配置されたカッタヘッドの外径を拡大して、埋設管に対していくらかの余掘りができるように構成された掘進機では、カッタヘッドの外径を埋設管よりも縮小し、外径の縮小されたカッタヘッドを埋設管内を通して、スクリューコンベア等とともに発進竪坑側へ戻すようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−73677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、掘削開始地点と掘削終了地点とを結ぶトンネルを掘削するときに、その途中に障害物があって、掘進機では障害物を掘削できないときには、トンネルの途中に竪坑を構築し、竪坑からトンネル内に作業員が入って障害物を除去する必要がある。一方、トンネルの途中に竪坑を構築できないときには、掘進機を発進竪坑側へ戻すことが必要となる。後者の場合、従来技術のように、カッタヘッドの外径を縮小させる構成の掘進機では、カッタヘッドやスクリューコンベア等を全て発進竪坑側へ戻す必要がある。
【0005】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、掘削経路中に障害物が存在するときに、掘進機の一部を掘削経路中に残し、残りを掘削開始地点まで戻すだけで、障害物を除去できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に係る掘進機は、掘削対象を掘削して地中に掘削経路を形成しながら移動する掘進機において、前記掘削経路中に固定される主固定要素と、前記主固定要素内に移動可能に配置される移動要素と、前記主固定要素に回転自在に連結されるとともに前記移動要素と着脱自在に連結され、前記移動要素から分離される分解時に前記掘削経路中に固定される補助固定要素とを備え、前記移動要素は、前記補助固定要素との連結時に、前記補助固定要素に回転力を付与して、前記補助固定要素とともに前記掘削対象を掘削し、前記補助固定要素から分離されたときには、前記主固定要素との間に作業員が移動可能な空間部を形成してなる。
【0007】
(作用)掘削経路中に障害物が存在するときに、補助固定要素から移動要素を分離し、主固定要素と補助固定要素を掘削経路中に残し、移動要素を掘削開始地点まで戻すと、主固定要素内には作業員が移動可能な空間部が形成される。このため、作業員が主固定要素内の空間部を障害物の存在する部位まで移動することで、作業員によって障害物を除去することが可能になる。
【0008】
請求項2に係る掘進機は、請求項1に記載の掘進機において、前記主固定要素は、前記掘削経路中に固定される筒体を備え、前記補助固定要素は、環状に形成されて、その外周側が前記筒体の長手方向一端側に回転自在に連結され、回転力を受けて前記掘削対象を掘削する第1のカッタヘッドを備え、前記移動要素は、前記筒体の長手方向に沿って配置された駆動部本体と、前記駆動部本体内に、その長手方向に沿って配置されたカッタ駆動軸と、前記駆動部本体に固定されて前記カッタ駆動軸を回転駆動する駆動源と、前記カッタ駆動軸の長手方向一端側に連結されて、前記カッタ駆動軸とともに回転して前記掘削対象を掘削する第2のカッタヘッドとを備え、前記第1のカッタヘッドの内周側には、前記作業員が移動可能な空間部が形成され、前記第2のカッタヘッドは、前記第1のカッタヘッドの内周側に配置されて前記第1のカッタヘッドと着脱自在に連結され、前記カッタ駆動軸の回転に伴う回転力を前記第1のカッタヘッドに伝達してなる構成とした。
【0009】
(作用)掘削経路中に障害物が存在するときに、補助固定要素から移動要素を分離し、主固定要素と補助固定要素を掘削経路中に残し、移動要素を掘削開始地点まで戻すに際して、駆動部本体を掘削開始地点の方向に移動させると、駆動部本体の移動に伴って、カッタ駆動軸および駆動源が移動するとともに、第2のカッタヘッドと第1のカッタヘッドとの連結が解除され、駆動部本体とカッタ駆動軸と駆動源および第2のカッタヘッドが移動要素として、掘削開始地点まで戻される。このとき、掘削経路中には、主固定要素としての筒体と補助固定要素としての第1のカッタヘッドが残されるが、主固定要素の筒体内には、移動要素の移動によって作業員が移動可能な空間部が形成される。これにより、作業員は、主固定要素の筒体内を、障害物が存在する部位まで移動することができる。しかも、第1のカッタヘッドの内周側には、作業員が移動可能な空間部が形成されているので、作業員は、この空間部から障害物を除去するための作業を行うことができる。
【0010】
請求項3に係る掘進機においては、請求項2に記載の掘進機において、前記筒体内には、前記第1のカッタヘッドと前記第2のカッタヘッドを撮像対象として、前記撮像対象を撮像する撮像装置が配置され、前記撮像装置は、前記撮像装置の撮像による画像を表示する表示装置に接続されてなる構成とした。
【0011】
(作用)第1のカッタヘッドと第2のカッタヘッドを撮像対象として、第1のカッタヘッドと第2のカッタヘッドの位置関係などを撮像装置で撮像し、撮像による画像を表示装置の画面上に表示することで、作業員は、表示装置の画面を見ながら、駆動部本体を移動させることで、第1のカッタヘッドと第2のカッタヘッドとの位置決めを容易に行うことができるとともに、駆動部本体の構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る掘進機によれば、掘削経路中に障害物が存在するときに、補助固定要素から移動要素を分離して、移動要素を掘削開始地点まで戻すだけで、障害物を除去することができる。
【0013】
請求項2によれば、掘削経路中に障害物が存在するときに、第2のカッタヘッドを第1のカッタヘッドから分離して、駆動部本体とカッタ駆動軸と駆動源および第2のカッタヘッドを含む移動要素を掘削開始地点まで戻すだけで、障害物を除去することができる。
【0014】
請求項3によれば、表示装置の画面を見ながら、第1のカッタヘッドと第2のカッタヘッドとの位置決めを容易に行うことができるとともに、駆動部本体の構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例を示す掘進機の断面図、図2は、掘進機の正面図、図3は、外周側カッタヘッドの正面図、図4は、内周側カッタヘッドの正面図、図5は、図1のA−A線に沿う断面図、図6は、図1のB−B線に沿う断面図、図7は、ガイドローラと外筒との関係を示す図であって、(a)は、ガイドローラの拡大正面図、(b)は、(a)のA−A線に沿う要部拡大断面図、図8(a)は、掘進機の要部拡大断面図、8(b)は、平行キーと回転ディスクとの関係を示す要部拡大断面図、図8(c)は、平行キーと回転ディスクとの関係を示す要部拡大平面図、図9(a)は、カッタ位置検出部とガイドとの関係を示す要部断面図、図9(b)は、カッタ位置検出部とガイドとの関係を示すカッタヘッドの平面図、図10は、ゲージケースとゲージロッドとの関係を示す図であって、(a)は、ゲージケースの平面図、(b)は、ゲージケースの断面図、(c)は、ゲージケースの正面図、図11は、補助固定要素から移動要素を分離したときの状態を示す掘進機の断面図、図12は、掘進機の主固定要素と補助固定要素をトンネルに残したときの状態を示す掘進機の断面図、図13は、掘進機の主固定要素と補助固定要素を坑口側へ移動し、障害物を除去するときの状態を示す掘進機の断面図、図14は、掘進機の補助固定要素をトンネルの壁面に押し付けたときの状態を示す掘進機の断面図、図15は、掘進機の主固定要素にレールゲージを敷設したときの状態を示す掘進機の断面図、図16は、ゲージロッドに手押し治具を取り付けて、駆動部本体をケーシング部まで搬送したときの状態を示す掘進機の断面図、図17は、駆動部本体をケーシング部の所定位置まで移動させたときの状態を示す掘進機の断面図、図18は、カッタ位置決め完了状態を示す掘進機の断面図、図19は、移動要素の駆動部本体にOリングを装着して、移動要素のローリングを確認するときの状態を示す掘進機の断面図、図20は、移動要素と補助固定要素とが連結されて掘進機が復元されたときの状態を示す掘進機の断面図、図21は、油圧シリンダを用いたカッタヘッド位置決め機構の要部側面図、図22は、カッタヘッド位置決め機構の代わりに小型TVカメラを用いたときの掘進機の断面図である。
【0016】
図1乃至図6において、掘進機10は、トンネル(掘削経路)に固定される主固定要素として、外筒(筒体)12と、一対の送排泥管14と、引き戻しジャッキ16等を備え、補助固定要素として、カッタヘッド(第1のカッタヘッド)18を備え、トンネル(掘削経路)内に移動自在に配置される移動要素として、駆動部本体20と、カッタ駆動軸22と、油圧モータ(駆動源)24と、カッタヘッド(第2のカッタヘッド)26等を備えて構成されている。
【0017】
外筒12は、円筒状に形成されたケーシング12a、12bを備えており、ケーシング12a、12b内周壁に、一対の送排泥管14が固定されている。ケーシング12aとケーシング12bは、連結部12cを介して互いに連結され、ケーシング12aの長手方向一端側にはカッタヘッド18が回転自在に連結されている。ケーシング12bの長手方向一端側には引き戻し筒16aが連結部12dを介して連結されており、引き戻し筒16a内周壁には引き戻しジャッキ16が固定されている。
【0018】
ケーシング12aの長手方向一端側内周壁には、3個の支持板28が円周方向おいて一定の間隔を保って固定されており、各支持板28には、図7に示すように、一対の突起28aが相対向して形成され、各突起28aに回転軸28bが固定されている。回転軸28bには、ガイドローラ30が回転自在に装着されている。各支持板28近傍にはカッタ押え32が配置されており、各カッタ押え32は、ケーシング12aの長手方向一端側内周壁に固定されている。各カッタ押え32の先端側には、突起32aが形成されている。
【0019】
カッタヘッド18は、外周側カッタヘッドとして、図2と図3に示すように、円環状に形成された回転ディスク(外周ディスク)34と、回転ディスク34に固定された複数個の切削刃36、38、40と、回転ディスク34に形成された複数個の土砂取り込みスクレーパ42を備えて構成されている。各切削刃36は、インナービットとしてボタン型ローラービットで構成されて、回転ディスク34の仮想の回転中心を間にして、相対向して回転ディスク34に固定されている。この場合、各切削刃36は、切削対象の異なる部位をそれぞれ切削するために、回転ディスク34の仮想の回転中心からの距離が異なる位置に配置されている。また、各切削刃38は、オーバービットとしてボタン型ローラービットで構成されて、回転ディスク34の仮想の回転中心を間にして、相対向して回転ディスク34に固定され、各切削刃40は、ディスク型ローラービットで構成されて、回転ディスク34の仮想の回転中心を間にして、相対向して回転ディスク34に固定されている。
【0020】
回転ディスク34の外周側には筒状のフランジ44が一体に形成されており、フランジ44先端内周側には、環状の摺動部44aを残して環状の凹部44bが形成されている(図7参照)。摺動部44aはガイドローラ30の摺動路としてガイドローラ30に当接されている。凹部44bには、カッタ押え32の突起32aが挿入されており、ケーシング12aに固定されたカッタ押え32により、外周側カッタヘッド18の抜けが防止されるようになっている。
【0021】
また、回転ディスク34の内周側には筒状のフランジ45が形成されており、フランジ45の一部には、キー溝46が回転ディスク34の径方向と直交する方向(フランジ44の長手方向)に沿って形成され、キー溝46の端部には、キー溝46の側壁として位置検出部用ストッパ48が形成されている。そして、回転ディスク34の内周側の領域は、作業員が移動可能な空間部として形成されている。
【0022】
一方、駆動部本体20は、略円柱状に形成されて外筒12の長手方向に沿って配置され、図6に示すように、接合面20cが反力受けボルト112により、ケーシングン12aに固定されている。駆動部本体20の底部側には、駆動部本体20の搬送時に、図6に示すように、一対のレールゲージ50が配置される。各レールゲージ50は、レベル調整ボルト50aによってそのレベルが調整され、レベルの調整後は、溶接またはシム溶接等によって固定され、繰り返しの取り付け、取り外しに対して再現性のある構造となっている。左右に分かれた配置された一対のレールゲージ50のレベルを調整すると、駆動部本体20の軸心とケーシング12aの軸心との芯ずれを略0mmにすることができる。しかも、略円柱状に形成された駆動部本体20の底部側が、左右に分かれて配置された一対のレールゲージ50で支持されているので、駆動部本体20が回転方向にずれることはあっても、芯ずれを起こすことがないようになっている。従って、駆動部本体20の天地関係を調整すれば、駆動部本体20を小型の作業用ダルマジャッキ等で比較的容易にケーシング12a内に挿入して、固定することができる。
【0023】
駆動部本体20には、駆動部本体20の中心部を貫く軸状部材としてのカッタ駆動軸22が回転自在に挿入されている(図1参照)。カッタ駆動軸22は、長手方向(軸方向)の一端側が平行キー52とボルト53によって駆動部本体20のボス部20aに連結され、長手方向の他端側に形成されたインボリュートスプライン結合部20dが油圧モータ24のモータ駆動軸54に回転自在に連結されている。ボス部20aは、内周側カッタヘッド26に連結されている。
内周側カッタヘッド26は、図4に示すように、円盤状の回転ディスク(内周ディスク)56と、3個の切削刃58と等を備え、各切削刃58は、ボタン型ローラービットで構成されて、ボルト62により回転ディスク56に固定されている。回転ディスク56は、作業員が移動可能な空間部に対応した大きさに形成されており、回転ディスク56の外周側には、複数の凹部56a、56b、56cが形成されている。
【0024】
凹部56aは、外周側カッタヘッド18の一方の切削刃36に対応して形成され、凹部56bは、外周側カッタヘッド18の他方の切削刃36に対応して形成され、凹部56cは、外周側カッタヘッド18のキー溝46に対応して形成されている。
【0025】
また、回転ディスク56には、4個の窓60が周方向に沿って分散して形成され、各窓60より内周側にはリブ20bが一体となって溶着されている。リブ20bには、ボス部20aに溶着されている。すなわち、回転ディスク56は、リブ20bとボス部20aが溶接によって固着されて、一体構造となっており、リブ20b、ボス部20aを介してカッタ駆動軸22に連結されている。また、回転ディスク56の各窓60より外周側にはフランジ64が一体となって形成されている。フランジ64の外周側には、図8に示すように、挿入組み込み可能な平行キー66が装着されている。平行キー66はボルト68によってフランジ64に固定されている。平行キー66は、外周側回転ディスク34のフランジ45に形成されたキー溝46に嵌合されている。
【0026】
すなわち、内周側回転ディスク56は、平行キー66とキー溝46を介して外周側回転ディスク34と着脱自在に連結されており、外周側回転ディスク34には、油圧モータ24からの回転力(駆動力)がモータ駆動軸54、カッタ駆動軸22、ボス部20a、リブ20b、内周側回転ディスク56を介して伝達されるようになっている。
【0027】
また、外周側回転ディスク34は、フランジ45の端部が、内周側回転ディスク56のフランジ64の長手方向端部に形成された凸部64aに嵌合するので、外周側カッタヘッド18に加わる掘削時の軸方向(長手方向)の力を内周側カッタヘッド26に伝達することができる。
【0028】
油圧モータ24は、ボルトを含む固定部材70を介して駆動部本体20に固定されており、油圧モータ24には、正回転用と逆回転用およびドレン用の3本の油圧ホース72が連結されている。各油圧ホース72は、油圧制御ユニット(図示せず)に接続されており、油圧モータ24は、油圧制御ユニットの制御に従った油圧に応答して、モータ駆動軸54を正回転または逆回転するようになっている。
【0029】
カッタ駆動軸22には、その中心部を貫く貫通孔74が長手方向に沿って形成されており、貫通孔74には、円柱状のゲージロッド76が摺動自在に挿入されている。ゲージロッド76は、カッタ駆動軸22と、油圧モータ24と、ゲージケース78およびエンドブラケット80に亘って配置されて、貫通孔74に連通する貫通孔(油圧モータ24の中心部を貫く貫通孔)82とゲージケース78および貫通孔(エンドブラケット80の中心部を貫く貫通孔)84内に摺動自在に挿入されている。
【0030】
ゲージロッド76の長手方向一端側には、L字型に形成された支持ロッド86が連結されており、支持ロッド86の先端側には、支持ロッド86に直交してカッタ位置検出部88が固定されている。カッタ位置検出部88は、外周側回転ディスク34のキー溝46に挿入可能に形成され、支持ロッド86は、内周側回転ディスク56の凹部56cに挿入可能に形成されている。内周側回転ディスク56の凹部56c近傍には、図9に示すように、支持ロッド86の移動をガイドするガイド部材90、92が固定されている。
【0031】
一方、ゲージロッド76の長手方向他端側には、図10に示すように、小径部76aが形成されており、小径部76aの長手方向端部には、手押し治具挿入用の穴77が形成され、小径部76aの長手方向端部外周には、滑り軸受94が固定されている。滑り軸受94外周には位置決めゲージ96が固定され、位置決めゲージ96には、六角穴付きボルト98が固定されている。六角穴付きボルト98は、ゲージケース78の溝100内に挿入されて、位置決めゲージ96の回り止めと指針を兼用するようになっている。ゲージケース78の溝100の縁には、位置決めゲージ96の位置を読み取るための目盛として、位置決め完了目盛102、位置決め開始目盛104、カッタ装着完了目盛106が付けられている。
【0032】
また、小径部76aの外周側には、圧縮されたばね108が装着されており、ばね108は、長手方向一端側が調圧スペーサ110を介して位置決めゲージ96に支持され、長手方向他端側がエンドブラケット80に支持され、蓄積された弾性力(ばね力)により、ゲージロッド76をカッタヘッド26側に付勢するようになっている。なお、ばね108の弾性力は調圧スペーサ110の厚みを変えることで調整できるようになっている。
【0033】
上記構成による掘進機10を用いて、地中に、掘削開始位置と掘削終了位置とを結ぶ掘削経路としてのトンネルを掘削するに際して、掘削開始位置の坑口に掘進機10を配置し、油圧モータ24の回転駆動により、油圧モータ24の回転力をモータ駆動軸54、カッタ駆動軸22を介して内周側カッタヘッド26に伝達すると、内周側カッタヘッド26が回転するともに、内周側カッタヘッド26の回転力が外周側カッタヘッド18に伝達され、各カッタヘッド18、26の回転に伴って、切削刃36、38、40、58によって掘削対象が掘削され、地中にトンネルが形成される。
【0034】
ここで、地中にトンネルを掘削している過程で、図11に示すように、トンネル200の途中に障害物202が存在する場合、外周側カッタヘッド18と内周側カッタヘッド26との連結を解除するために、まず、反力受けボルト112を取り外すとともに、送排泥管14等を取り外し、駆動部本体20を坑口側へ引き戻すと、内周側回転ディスク56の平行キー66と外周側回転ディスク34のキー溝46との嵌合が解除され、外周側カッタヘッド18と内周側カッタヘッド26との連結が解除される。
【0035】
すなわち、掘進機10は、トンネル(掘削経路)200に固定される主固定要素(外筒12)に連結された補助固定要素(外周側カッタヘッド18)と移動要素(駆動部本体20、カッタ駆動軸22、油圧モータ24、内周側カッタヘッド26)とが分離(分解)可能に構成されているので、移動要素を坑口側に引き戻すことで、外周側カッタヘッド18と内周側カッタヘッド26との連結が解除され、移動要素を坑口側へ移動させることができる。
【0036】
駆動部本体20とカッタ駆動軸22と油圧モータ24および内周側カッタヘッド26を含む移動要素を坑口側に引き戻すと、図12に示すように、外筒12内には、作業員204が移動可能な空間部114が形成されるので、作業員204は、掘削開始地点の坑口から空間部114内を移動することができる。作業員204が、外周側カッタヘッド18内周側の空間部116を介して障害物202を確認したときには、図13に示すように、引き戻しジャッキ16を縮め、外周側カッタヘッド18と外筒12を含む主固定要素と補助固定要素全体を掘削開始地点の坑口側に僅かに戻し、障害物202と外周側カッタヘッド18との間のトンネル200内に作業空間部200aを形成する。この後、作業員204は、空間部116から作業空間部200a内に移動して、障害物202を除去する作業を行う。
【0037】
障害物202が除去されたときには、引き戻しジャッキ16を伸ばし、図14に示すように、外周側カッタヘッド18と外筒12を含む主固定要素と補助固定要素全体を掘削開始地点の坑口から離れる方向(掘進方向)に移動させ、外周側カッタヘッド18と外筒12を含む主固定要素と補助固定要素の先端側をトンネル200の壁面に押し付ける。
【0038】
次に、作業員204は、図15に示すように、空間部114内を移動して、外筒12内にレールゲージ50を敷設する。この後、作業員204が、空間部114を通って掘削開始地点の坑口側に戻ったときには、駆動部本体20とカッタ駆動軸22と油圧モータ24および内周側カッタヘッド26を含む移動要素を坑口側から、空間部114内に挿入し、移動要素全体を空間部114の所定位置まで移動させる。
【0039】
この移動に先立って、作業員204が、ケージロッド76の小径部76aに形成された穴77内に手押し治具81の先端側を挿入し、手押し治具81を介して、ゲージロッド76をカッタヘッド18側に押し出すと、図16に示すように、ゲージロッド76の先端側が切削刃58の取り付け部58aに突き当たる。このとき、構造上、位置決めゲージ96は位置決め完了目盛102の位置となる。
【0040】
移動要素全体を空間部114の所定位置まで移動させたときには、図17に示すように、ゲージロッド76のカッタ位置検出部88がカッタヘッド18の回転ディスク34に突き当たる。ここで、作業者204は、位置決めゲージ96が位置決め開始目盛104の位置にあるか否かを確認する。位置決めゲージ96が位置決め開始目盛104の位置にあるときに、油圧モータ24を低速度で回転させながら、カッタ位置検出部88を回転ディスク34のキー溝46に挿入するための位置決めを行う。カッタ位置検出部88を回転ディスク34のキー溝46に挿入するための位置決めが行われると、図18に示すように、支持ロッド86がガイド部材90、92にガイドされながらカッタヘッド18の先端側に移動するとともに、カッタ位置検出部88が回転ディスク34のキー溝46に沿ってカッタヘッド18の先端側に移動する。このとき、作業者204は、位置決めゲージ96が位置決め完了目盛102の位置とあることを確認したときには、油圧モータ24の駆動を停止する。これにより、カッタヘッド18とカッタヘッド26との位置決めが完了する。
【0041】
この後、駆動部本体20のうちレールゲージ50に支持された部分がレールゲージ50の外周側回転ディスク34側端部を通過するまで、駆動部本体20をトンネル200の壁面に向けて移動させ、図19に示すように、駆動部本体20外周面に形成されたOリング装着溝118内にOリング120を装着し、駆動部本体20のローリングの有無を確認する。
【0042】
この後、駆動部本体20の接合面がケーシング12aの接合面に当接するまで、駆動部本体20を含む移動要素全体をトンネル200の壁面に向けて移動させると、図20に示すように、内周側回転ディスク56の平行キー66と外周側回転ディスク34のキー溝46とが嵌合し、外周側カッタヘッド18と内周側カッタヘッド26が回転ディスク56と回転ディスク34を介して互いに連結される。このとき、カッタ位置検出部88がキー溝46の端部に形成されたストッパ48に当接し、カッタ位置検出部88の移動が阻止され、位置決めゲージ96がカッタ装着完了目盛106の位置となる。これにより、作業員204は、外周側カッタヘッド18と内周側カッタヘッド26が再び連結され、移動要素全体の移動が完了したことを位置決めゲージ96で確認することができる。
【0043】
この後、水密検査を行い、問題がないときには、レールゲージ50を取り外し、送排泥管14等を取り付けるとともに、反力受けボルト112を締め付けることで、移動要素が主固定要素に固定され、掘進機10が復元されることになる。
【0044】
この後、掘進機10を駆動することで、トンネル200を掘削する作業を行うことができる。
【0045】
本実施例によれば、掘進機10を、トンネル(掘削経路)200に固定される主固定要素(外筒12)に連結された補助固定要素(外周側カッタヘッド18)と移動要素(駆動部本体20、カッタ駆動軸22、油圧モータ24、内周側カッタヘッド26)とに分離(分解)可能に構成し、トンネル200中に障害物202が存在するときには、駆動部本体20とカッタ駆動軸22と油圧モータ24および内周側カッタヘッド26含む移動要素を坑口側に引き戻し、外筒12内に、作業員204が移動可能な空間部114を形成し、空間部114から空間部116を介して作業空間部200aに侵入した作業員204が障害物202を除去するようにしたため、掘進機10全体を坑口側に戻すことなく、移動要素のみを坑口側に移動するだけで、障害物202を除去することができる。
【0046】
また、カッタヘッド18、26の位置決めを行うに際しては、カッタヘッド位置決め機構として、ばね108や手押し治具80を用いる代わりに、図21に示すように、油圧シリンダ124を用いることができる。この場合、油圧シリンダ124を支持する支持板126の一端側をゲージケース78とともに油圧モータ24に固定し、油圧シリンダ124のロッド128をリンク129に連結し、リンク129を位置決めゲージ96に連結し、位置決めゲージ96の位置を確認しながら、油圧シリンダ124の駆動を制御してゲージロッド76を往復動させることができる。
【0047】
また、カッタヘッド18、26の位置決めを行うに際しては、カッタヘッド位置決め機構を用いる代わりに、図22に示すように、ケーシング12aにTVカメラ挿入穴130を形成し、TVカメラ挿入穴130内にTVカメラ取り付けパイプ132を挿入し、TVカメラ取り付けパイプ132の先端側に小型TVカメラ(撮像装置)134を固定し、小型TVカメラ134でカッタヘッド18、26を撮像し、小型TVカメラ134で撮像された画像をケーブル136を介して監視モニタ(図示せず)に転送して、監視モニタ(表示装置)上にカッタヘッド18とカッタヘッド26の連結状態や相互の位置関係等を表示する構成を採用することができる。この場合、作業員が監視モニタを見ながら、駆動部本体20を移動させることで、カッタヘッド18とカッタヘッド26との位置決めを容易に行うことができる。
【0048】
この構成を採用すると、ゲージロッド76、ゲージケース78、位置決めゲージ96などのカッタヘッド位置決め機構は不要となり、駆動部本体20の構成を簡素化することができる。
なお、油圧モータ24の代わりに、電動モータを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例を示す掘進機の縦断面図である。
【図2】掘進機の正面図である。
【図3】外周側カッタヘッドの正面図である。
【図4】内周側カッタヘッドの正面図である。
【図5】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図7】ガイドローラと外筒との関係を示す図であって、(a)は、ガイドローラの拡大正面図、(b)は、(a)のA−A線に沿う要部拡大断面図である。
【図8】(a)は、掘進機の要部拡大断面図、(b)は、平行キーと回転ディスクとの関係を示す要部拡大断面図、(c)は、平行キーと回転ディスクとの関係を示す要部拡大平面図である。
【図9】(a)は、カッタ位置検出部とガイドとの関係を示す要部断面図、(b)は、カッタ位置検出部とガイドとの関係を示すカッタヘッドの平面図である。
【図10】ゲージケースとゲージロッドとの関係を示す図であって、(a)は、ゲージケースの平面図、(b)は、ゲージケースの断面図、(c)は、ゲージケースの正面図である。
【図11】トンネル内の障害物を除去するときの工程を説明するための図であって、補助固定要素から移動要素を分離したときの状態を示す掘進機の断面図である。
【図12】掘進機の主固定要素と補助固定要素をトンネルに残したときの状態を示す掘進機の断面図である。
【図13】掘進機の主固定要素と補助固定要素を坑口側へ移動し、障害物を除去するときの状態を示す掘進機の断面図である。
【図14】掘進機の補助固定要素をトンネルの壁面に押し付けたときの状態を示す掘進機の断面図である。
【図15】掘進機の主固定要素にレールゲージを敷設したときの状態を示す掘進機の断面図である。
【図16】ゲージロッドに手押し治具を取り付けて、駆動部本体をケーシング部まで搬送したときの状態を示す掘進機の断面図である。
【図17】駆動部本体をケーシング部の所定位置まで移動させたときの状態を示す掘進機の断面図である。
【図18】カッタ位置決め完了状態を示す掘進機の断面図である。
【図19】移動要素の駆動部本体にOリングを装着して、移動要素のローリングを確認するときの状態を示す掘進機の断面図である。
【図20】移動要素と補助固定要素とが連結されて掘進機が復元されたときの状態を示す掘進機の断面図である。
【図21】油圧シリンダを用いたカッタヘッド位置決め機構の要部側面図である。
【図22】カッタヘッド位置決め機構の代わりに小型TVカメラを用いたときの掘進機の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 掘進機
12 外筒
18 外周側カッタヘッド
20 駆動部本体
22 カッタ駆動軸
24 油圧モータ
26 内周側カッタヘッド
30 ガイドローラ
32 カッタ押え
34 回転ディスク
36、38、40 切削刃
46 キー溝
50 レールゲージ
56 回転ディスク
58 切削刃
76 ゲージロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削対象を掘削して地中に掘削経路を形成しながら移動する掘進機において、前記掘削経路中に固定される主固定要素と、前記主固定要素内に移動可能に配置される移動要素と、前記主固定要素に回転自在に連結されるとともに前記移動要素と着脱自在に連結され、前記移動要素から分離される分解時に前記掘削経路中に固定される補助固定要素とを備え、前記移動要素は、前記補助固定要素との連結時に、前記補助固定要素に回転力を付与して、前記補助固定要素とともに前記掘削対象を掘削し、前記補助固定要素から分離されたときには、前記主固定要素との間に作業員が移動可能な空間部を形成してなることを特徴とする掘進機。
【請求項2】
請求項1に記載の掘進機において、
前記主固定要素は、前記掘削経路中に固定される筒体を備え、
前記補助固定要素は、環状に形成されて、その外周側が前記筒体の長手方向一端側に回転自在に連結され、回転力を受けて前記掘削対象を掘削する第1のカッタヘッドを備え、
前記移動要素は、前記筒体の長手方向に沿って配置された駆動部本体と、前記駆動部本体内に、その長手方向に沿って配置されたカッタ駆動軸と、前記駆動部本体に固定されて前記カッタ駆動軸を回転駆動する駆動源と、前記カッタ駆動軸の長手方向一端側に連結されて、前記カッタ駆動軸とともに回転して前記掘削対象を掘削する第2のカッタヘッドとを備え、
前記第1のカッタヘッドの内周側には、前記作業員が移動可能な空間部が形成され、前記第2のカッタヘッドは、前記第1のカッタヘッドの内周側に配置されて前記第1のカッタヘッドと着脱自在に連結され、前記カッタ駆動軸の回転に伴う回転力を前記第1のカッタヘッドに伝達してなることを特徴とする掘進機。
【請求項3】
請求項2に記載の掘進機において、前記筒体内には、前記第1のカッタヘッドと前記第2のカッタヘッドを撮像対象として、前記撮像対象を撮像する撮像装置が配置され、前記撮像装置は、前記撮像装置の撮像による画像を表示する表示装置に接続されてなることを特徴とする掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−274691(P2008−274691A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121631(P2007−121631)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000127259)株式会社イセキ開発工機 (9)
【Fターム(参考)】