説明

掘進機

【課題】地中に推進管を埋設するために用いられる掘進機および方向修正装置の耐久性を向上する。
【解決手段】カッターヘッドを備えた先頭体と、本体と、先頭体を支持する方向修正装置とを備えており、方向修正装置は、掘進機の本体の先端付近に備えられるジャッキシリンダと、掘進機の先頭体の後端付近に備えられるジョイントとを有しており、ジャッキシリンダは、本体の内側面に設置された支持台に設けられた貫通孔と、ジャッキシリンダの貫通孔とに軸を挿通することで、少なくとも上下方向に回転駆動可能であり、その前端部には、先端付近が球体または略球体状に成形されたシリンダロッドを備えており、ジョイントは、その内面が、シリンダロッドの球体または略球体と同一またはほぼ同一の大きさの球面または略球面に成形されており、ジョイントの内面とシリンダロッドの球体または略球体とが嵌合することにより、掘進機の先頭体を首振り自在に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は掘進機に関する。特に、地中に推進管を埋設するために用いられる掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に推進管を埋設するための工法の一つとして推進工法が知られている。推進工法は、発進立坑から掘進機を導入し、掘進機を使用して水平方向や上下方向など、任意の方向にに掘削することで推進管を地中に埋設していく工法である。
【0003】
掘進機は、地盤を掘削するためのビットを複数備えるカッターヘッドを先頭体に備えており、そのカッターヘッドを、掘進機内のモータおよび減速機で駆動させることによって、地盤を掘削する構造となっている。従来の掘進機の一例を特許文献1乃至特許文献5に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−46804号公報
【特許文献2】特開2000−291385号公報
【特許文献3】特開2000−45686号公報
【特許文献4】特開2005−213749号公報
【特許文献5】特開2000−274181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
掘進機が掘削している掘削穴芯にずれが生じた場合、カッターヘッドを備えた先頭体の向きを調整することで掘削方向を調整している。これは、掘進機の先頭体を、本体に対して、任意の角度で傾けることで行う。具体的には、掘進機の本体内部に複数(好ましくは3本)の方向修正装置(ジャッキシリンダ)を備え、方向修正装置で先頭体を任意の角度に傾けている。しかしこの方向修正装置は、掘進機内のスペースの関係上、小型のものしかつけることができず、方向修正装置の支持ピンの破損が多い問題点がある。
【0006】
また、先頭体と本体との間には伸縮管継手(ジャバラ)が用いられ、ジャバラにより先頭体と本体との間の継ぎ目からの泥土や泥水の浸入を防止するとともに、先頭体を支えている。しかし、先頭体を支持している伸縮管継手も、泥土や泥水などの圧力により、伸縮管継手が先頭体や本体の中に入り込み、噛み込んでしまうことで、伸縮管継手が破損してしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は上記課題に鑑み、耐久性の高い方向修正装置を備えた掘進機を発明した。また、方向修正装置とともに先頭体を支持している伸縮管継手により、先頭体と本体との間の継ぎ目を防護するのでなく、同等の技術的効果を発揮する異なる防護機構とすることによって、本体と先頭体との間の継ぎ目の防護機構の耐久性を高めることとした。
【0008】
第1の発明は、カッターヘッドを備えた先頭体と本体とが分離可能な、地中を掘削する掘進機であって、前記掘進機は、前記先頭体と前記本体との間に前記先頭体を支持する方向修正装置を備えており、前記方向修正装置は、前記掘進機の本体の先端付近に備えられるジャッキシリンダと、前記掘進機の先頭体の後端付近に備えられるジョイントとを有しており、前記ジャッキシリンダは、前記本体の内側面に設置された支持台に設けられた貫通孔と、前記ジャッキシリンダの貫通孔とに軸を挿通することで、少なくとも上下方向に回転駆動可能であり、前記ジャッキシリンダの前端部には、先端付近が球体または略球体状に成形されたシリンダロッドを備えており、前記ジョイントは、その内面が、前記シリンダロッドの球体または略球体と同一またはほぼ同一の大きさの球面または略球面に成形されており、前記ジョイントの内面と前記シリンダロッドの球体または略球体とが嵌合することにより、前記方向修正装置で前記掘進機の先頭体を首振り自在に支持する、掘進機である。
【0009】
従来の掘進機の方向修正装置では、シリンダロッドの先端部とジョイントとが支持ピンで固定されている。従って、平面で力を受けていることとなる。しかし本発明のように構成した方向修正装置を備える掘進機では、シリンダロッドとジョイントとが球面または略球面で軸受けされることとなる。そのため、従来よりも耐久性が高い方向修正装置を構成することができる。
【0010】
上述の発明において、前記ジャッキシリンダは、さらに、前記前端部前面に形成された孔に前記シリンダロッドを挿入しており、前記シリンダロッドを前記孔において前後に駆動させることで、前記シリンダロッドの露出部の長さを伸縮させる、掘進機のように構成しても良い。
【0011】
シリンダロッドを前後方向に駆動させることで、先頭体の動きの自由度を高めることができる。
【0012】
上述の発明において、前記掘進機は、さらに、前記本体の外側面における前記先頭体と本体との継ぎ目付近に、溝部を有するフリーリングを外周方向に周設しており、前記フリーリングの溝部に、前記先頭体の内径と同一またはほぼ同一の大きさであるOリングを外接させて備える、掘進機のように構成しても良い。
【0013】
本発明のように構成することで、従来のように伸縮管継手を用いないので、伸縮管継手が破損する、噛み込んでしまうなどのトラブルを防止することができる。また、Oリングのみではなく、フリーリングをさらに設けることで、先頭体と本体との動きをより大きくすることができる。
【0014】
上述のフリーリングは、以下のように周設することが好ましい。すなわち、前記フリーリングは、前記掘進機の本体の外側面に設けた溝部に緩嵌で周設されている、掘進機であることが好ましい。
【0015】
フリーリングが本体の外側面に密嵌ではなく緩嵌で周設されていることによって、 本体の外側面の溝部の底面とフリーリングとの間に間隙が設けられる。そのため、本体の外側面の溝部の側面に沿ってフリーリングが上下方向に移動可能となる。従って、単にOリングを周設するよりも、先頭体の動きをより大きく吸収することが可能となる。
【0016】
上述の発明における方向修正装置は、以下のように構成することができる。すなわち、先頭体と本体とが分離可能な掘進機で用いる方向修正装置であって、前記方向修正装置は、前記先頭体を支持するために、前記先頭体と本体との間に設置され、前記掘進機の本体の先端付近に備えられるジャッキシリンダと、前記掘進機の先頭体の後端付近に備えられるジョイントとを有しており、前記ジャッキシリンダは、前記本体の内側面に設置された支持台に設けられた貫通孔と、前記ジャッキシリンダの貫通孔とに軸を挿通することで、少なくとも上下方向に回転駆動可能であり、前記ジャッキシリンダの前端部には、先端付近が球体または略球体状に成形されたシリンダロッドを備えており、前記ジョイントは、その内面が、前記シリンダロッドの球体または略球体と同一またはほぼ同一の大きさの球面または略球面に成形されており、前記ジョイントの内面と前記シリンダロッドの球体または略球体とが嵌合することにより、前記方向修正装置で前記掘進機の先頭体を首振り自在に支持する、掘進機で用いる方向修正装置のように構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の掘進機を用いることにより、従来と使用するスペースは変わらないものの、より耐久性の高い方向修正装置を構成することができる。また本体と先頭体との間の継ぎ目の防護機構の耐久性も、従来の伸縮管継手よりも高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】掘進機の外観斜視図である。
【図2】掘進機の使用状態における縦断面図である。
【図3】方向修正装置を模式的に示す図である。
【図4】方向修正装置のA−A線における断面図である。
【図5】方向修正装置により先頭体が傾けられた状態を模式的に示す図である。
【図6】フリーリングとOリングとを模式的に示す図である。
【図7】従来の方向修正装置を模式的に示す図である。
【図8】フリーリングとOリングとを設けた部分の拡大図である。
【図9】掘進機を用いた地中の掘削の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の掘進機1を図面を用いて説明する。図1は本発明の掘進機1の外観の斜視図である。また掘進機1は、その後端部においてジョイント部材5と接続する。これを模式的に示すのが図2である。ジョイント部材5は推進管7内に載置されている。掘進機1が掘削を行うことで、そこに推進管7が埋設されていく。
【0020】
推進管7には、たとえばコンクリート管、レジン管、ヒューム管、鋼製さや管、合成管などさまざまなものがあり、これらに限定されるものではなく、その目的に応じてさまざまな管を利用することができる。
【0021】
掘進機1は、本体2と先頭体3とを少なくとも有している。本体2は先頭体3を支持するための方向修正装置4(後述)やモータなどを格納している前部と、バックアップ管である後部とが分離可能に連結して構成されていることが好ましいがそれに限定されない。本体2の前部と後部(バックアップ管)は、その内部に送泥管61、排泥管62などを備えている。また後部のバックアップ管は、その後端部に上述のジョイント部材5と接合するための後部フランジを有している。
【0022】
先頭体3の前端部には、地盤を掘削するための複数のビット32を有するカッターヘッド31を備えている。このカッターヘッド31は、モータと減速機により回転駆動し、カッターヘッド31における複数のビット32により地盤を掘削する。また、油圧ユニット14が油圧ホースを通じて推進ジャッキ8に動力を与えることで、推進ジャッキ8が掘進機1または推進管7を後方から押圧し、推進管7を逐次、継ぎ足しながら地中に推進管7を埋設していく。なお掘進機1や推進管7を地中に埋設する際の発進立坑10における発進坑17には泥水などが発進立坑10に流れ込まないように、止水処理が行われていることが好ましい。
【0023】
また、掘削する地盤の種類などに応じてカッターヘッド31の交換は可能であり、任意の構造のカッターヘッド31を用いることができる。
【0024】
掘進機1はその後端部においてジョイント部材5と接続する。また推進管7が複数埋設されている場合には進行方向側の推進管7に載置されているジョイント部材5の後端部と新たに埋設される推進管7に載置されているジョイント部材5の先端部とが互いに接続されることで連結している。
【0025】
ジョイント部材5は推進管7内に載置される集合管であって、ジョイント部材5の送泥管63、排泥管64は、掘進機1内の送泥管61や排泥管62、発進立坑10内の送泥管65や排泥管66、あるいは他のジョイント部材5の送泥管63や排泥管64などと接続している。
【0026】
掘進機1は、発進立坑10の送泥管65、発進立坑10のバイパス弁13、ジョイント部材5の送泥管63、掘進機1の送泥管61を介して、泥水を掘進機1の内部に取り込む。そして掘進機1は、カッタービット32が掘削した掘削土をその泥水に混入させる。掘削土を混入した泥水は、掘進機1の排泥管62、ジョイント部材5の排泥管64を介して、発進立坑10の排泥管66に送られる。そして掘削土が混入した泥水は、発進立坑10の排泥管66から発進立坑10に設けられたバイパス弁13を介して、排泥ポンプ16により泥水処理機12に送られる。泥水処理機12では掘削土と泥水との分離処理がなされる。この分離処理後、送泥ポンプ15により、再び、泥水が、発進立坑10の送泥管65、発進立坑10のバイパス弁13、ジョイント部材5の送泥管63を介して掘進機1の送泥管61に送られ、泥水に掘削土が泥水に混入される。これを繰り返すことで掘削土の排出を行う。図9に掘進機1を用いた地中の掘削の概要を示す。
【0027】
なおバイパス弁13は、送泥管65と排泥管66とをバイパスするための弁である。このようなバイパス弁13は、掘進機1内の送泥管61と排泥管62にも備えていることが好ましい。
【0028】
掘進機1の本体2の中心付近は中空状になっている。そしてモータよりも後方の中心付近に、発進立坑10のベース面に設置された台に載置されたレーザトランシット81から照射されるレーザ光を受光する受光部(レーザターゲット21)を備えている。レーザトランシット81から照射されるレーザ光をレーザターゲット21で受光することによって、掘進機1の進行方向を確認することができる。なお受光状態をターゲットカメラと呼ばれる撮像装置で撮像し、その画像により掘進機1の進行方向を確認してもよい。
【0029】
レーザターゲット21でレーザ光を受光した情報や画像は、通信線などを介して操作盤11に送られ、操作盤11で進行方向を担当者が確認し、進行方向を制御することができる。たとえば操作盤11で、先頭体3を傾ける方向の制御指示(たとえば先頭体3を傾ける角度、その角度で移動する距離などの情報)を入力すると、その制御指示が通信線を介して、操作盤11から本体に送信されることで、当該制御指示に基づいて、方向修正装置4が先頭体3を傾ける制御を行う。
【0030】
先頭体3にはカッターヘッド31を回転駆動させるためのモータや減速機を備えている。そしてこの先頭体3を支持しているのが、方向修正装置4、フリーリング50とOリング51である。
【0031】
掘進機1の本体2と先頭体3とは分離可能である。そして掘進機1の先頭体3は、本体2の内側に設けられた方向修正装置4、フリーリング50およびOリング51で首振り自在に支持されている。この方向修正装置4は、本体2の内側面の円周方向に沿って複数配置されていることがよく、好ましくは等間隔で3つの方向修正装置4により先頭体3を支持している。これを模式的に示すのが図4である。この方向修正装置4を駆動させることで、先頭体3のモータや減速機およびカッターヘッド31を任意の角度に向けることができ、掘削方向の修正を行うことができる。図3に方向修正装置4の拡大図を示す。
【0032】
図3(a)は方向修正装置4の縦断面図であり、図3(b)は方向修正装置4を後方からみた背面図であり、図3(c)は方向修正装置4を前方からみた正面図である。図3(d)は方向修正装置4の係止状態をわかりやすく示した図である。
【0033】
方向修正装置4は、ジャッキシリンダ41とジョイント44とを有しており、ジャッキシリンダ41は本体2に、ジョイント44は先頭体3に設置されている。
【0034】
掘進機1の先頭体3は、本体2に設けられた方向修正装置4におけるシリンダロッド43を、先頭体3のジョイント44の軸受441で受けることで支持されている。
【0035】
方向修正装置4は、本体2の先端付近の内側面、先頭体3の後端付近に設置されており、好ましくは本体2の内側面の円周上に等間隔(たとえば120度の間隔)に複数(たとえば3つ)設置されている。
【0036】
方向修正装置4の支持台42は、本体2の先端付近の内側面にボルトや溶接などにより設置されている。この支持台42に設けられた貫通孔と、ジャッキシリンダ41の貫通孔とに軸411を挿通することで、軸411を中心にジャッキシリンダ41が少なくとも上下方向に回転駆動可能である。ジャッキシリンダ41は好ましくは円筒形状であるが、それ以外の形状であってもよい。
【0037】
ジャッキシリンダ41の前端部には、シリンダロッド43が備えられている。従って、ジャッキシリンダ41を上下方向に駆動させることで、ジャッキシリンダ41の前端部にあるシリンダロッド43を上下方向に向けることができる。なお、場合によっては、ジャッキシリンダ41を上下方向のほか、左右方向、あるいは任意の方向に駆動可能としてもよい。この場合、軸411は図3(a)のように横側からではなく、縦側など任意の方向から挿通されていればよい。また軸411を貫通孔に一方向に通すのではなく、任意の形状(例えば球体状)の軸411を用いることができる。シリンダロッド43の先端部431は、球体または略球体状(以下、本明細書では単に「球体」と記載するが、略球体も含まれる)に成形されている。
【0038】
ジャッキシリンダ41の前端部(縦断面に対して垂直方向の面)には、シリンダロッド43を挿入するための孔が設けられており、その孔にシリンダロッド43が挿入されている。これによって、ジャッキシリンダ41内に備えられた油圧ジャッキなどによって、シリンダロッド43を軸方向(掘進機1の進行方向)に対して前後に駆動させることができる。すなわちシリンダロッド43をジャッキシリンダ41に対して軸方向に前後に駆動させることで、シリンダロッド43が露出している長さを調節することができる。これによってシリンダロッド43の露出部の長さが伸縮されることとなる。
【0039】
なお支持台42は、通常状態(先頭体3に傾きがない状態)において、シリンダロッド43の先端部431の球体が本体2の先端部付近から若干、突出する程度の位置に設置されることが好ましい。
【0040】
ジョイント44は、本体2に設置されたシリンダロッド43の先端部431の球体を受ける向きで設置されており、先頭体3の後端部付近にボルト45により螺合されている。なおボルト45以外の方法でジョイント44が先頭体3に固定されていてもよい。
【0041】
ジョイント44の内面は凹面441(球面または略球面。以下同様)になっており、シリンダロッド43の先端部431の球体を嵌合することができる大きさの滑り軸受441となっている。つまりシリンダロッド43の先端部431の球体の半径と、ジョイント44の内側(軸受)の凹面441における半径とは同一(またはほぼ同一)となる。ジョイント44は、上下方向または左右方向、あるいは掘進機1の進行方向に対して前後方向に2分割または所定数に分割され、一つのジョイント44の内側(軸受)の面のうち、シリンダロッド43と接する面は半球面となっている。そして上下、左右または前後のジョイント44によってシリンダロッド43の先端部431の球体を挟み込み固定する。これによって、シリンダロッド43の先端部431の球体をジョイント44の内面の凹面441で受けることができる。そして、ジャッキシリンダ41がシリンダロッド43を任意の方向に向けた場合に、滑らかに軸受けすることとなる。
【0042】
図5に先頭体3が方向修正装置4によって傾けられた場合を模式的に示す図である。先頭体3は、好ましくは3つの方向修正装置4によって傾けられるが、この場合、各方向修正装置4は、操作盤11などからの先頭体3を傾ける方向の制御指示に基づいて、それぞれ、シリンダロッド43を伸縮させ、あるいはジャッキシリンダ41を上下させることによって、先頭体3を傾ける。この際に、どのような角度に傾けられても、シリンダロッド43の先端部431が球体であり、それを受けるジョイント44の内側が凹面441であることから、滑らかに軸受けを行うことができる。
【0043】
なお耐久性の観点から方向修正装置4は鉄鋼製であることが好ましいが、それに限定されるものではなく、いかなる素材であってもよい。
【0044】
従来の方向修正装置9を図7に示す。図7(a)は従来の方向修正装置9を掘進機に備えた場合の縦断面を模式的に示す図であり、図7(b)は従来の方向修正装置9の係止状態をわかりやすく示した図である。
【0045】
図7に示すように、従来の方向修正装置9では、支持台に首振り自在に取り付けられたジャッキシリンダ91の前面先端部にシリンダロッド92が備えられている。シリンダロッド92の先端部93には、支持ピン94を挿通するための貫通孔が設けられている。また先頭体3の後端部にはジョイント95が取り付けられており、シリンダロッド92の先端部93の貫通孔と同一の大きさの貫通孔が設けられている。そしてジョイント95の貫通孔に適合する位置に、シリンダロッド92の先端部93の貫通孔を合わせ、そこに支持ピン94を挿通することで、ジャッキシリンダ91(シリンダロッド92)とジョイント95とを接合している。そのため、支持ピン94を支点として先頭体3を傾けることができる。
【0046】
シリンダロッド92の先端部93は支持ピン94でジョイント95に固定しているため、平面で負荷を受けていることとなる。そのため先頭体3を傾けた場合に、支持ピン94に上下方向以外の負荷が発生する。また、上述のように、特に、掘進機1を発進した発進立坑10に戻す場合には(掘進機1を後退させる場合には)、掘進機1や推進管7の外周抵抗、引っかかりなどが発生することから、大きな負荷が支持ピン94にかかることによって、支持ピン94が破損することがあった。
【0047】
しかし本発明の方向修正装置4では、シリンダロッド43の先端部431およびジョイント44の凹面441はともに球面であることから、先頭体3が傾けられた場合の上下方向以外の負荷に対しても強い構造となる。また、シリンダロッド43の先端部431の球体およびジョイント44の凹面441は、シリンダロッド43よりも大きく形成されていることから、従来の方向修正装置9における支持ピン94よりも大きな面で負荷を受けることができる。従って、従来の方向修正装置9よりも大きな負荷に耐えられることとなる。
【0048】
また本体2と先頭体3との継ぎ目では、本体2の先端付近の外側面の直径は、先頭体3の後端付近の内側面の直径より若干、小さくなっている。これは、先頭体3が方向修正装置4で首振り自在に支持されており、先頭体3の方向を調整することができるようにするためである(本体2の先端付近は、先頭体3の後端の内側に位置する)。そのため、先頭体3と本体2との間の継ぎ目から、そのままでは泥土や泥水などが浸入する。それを従来は、本体2と先頭体3との間に伸縮管継手96を用いることで防止している。
【0049】
そこで本発明の掘進機1では、伸縮管継手96に代えて、フリーリング50とOリング51とにより同様の技術的効果を発揮する構成とする。フリーリング50とOリング51とを模式的に示すのが図6である。
【0050】
本体2の外側面における先頭体3と本体2との継ぎ目の位置付近に、断面が凹字状のフリーリング50を円周方向に配設する。なおこの際に、フリーリング50の溝部に、Oリング51が外接するように取り付ける。また、Oリング51はフリーリング50の溝部から突設させる大きさとする。つまりOリング51の断面の直径は、フリーリング50の溝部の深さよりも大きくなる。また、溝部に密嵌する大きさ(Oリング51がフリーリング50の溝部に密着して嵌る大きさ)とすることが好ましいが、緩嵌であってもよい。
【0051】
なおフリーリング50は、本体2の外側面において、先頭体3と本体2との継ぎ目の位置付近に周設されるが、その外側面には溝部52が形成され、そこにフリーリング50が周設されることが好ましい。この場合、外側面の溝部52にフリーリング50が密嵌(溝部52にフリーリング50が密着して嵌合している)していても良いし、溝部52の底面とフリーリング50との間に間隙がある緩嵌(溝部52とフリーリング50との間に若干の(あるいはわずかな)間隙があり、本体2の外側面の溝部52の側面に沿って、フリーリング50が上下方向に移動可能に嵌合している)であってもよい。この間隙により、フリーリング50が溝部52の側面に沿って上下方向に移動可能となる。そして、フリーリング50が本体2の外側面の溝部52において若干、上下方向に移動することができるので、先頭体3の動きが大きくなっても吸収することができる。なお、緩嵌である場合には、その溝部52の周辺付近(例えば溝部52の、本体2の後端部よりの側面(図8の位置など)にシーリング53を施すことが好ましい。これは、溝部52を介した泥水等の進入を防止するためである。
【0052】
なお本体2の外側面の溝部52の深さdは、フリーリング50にOリング51を嵌合した場合の高さh(フリーリング50の底面の厚さとOリング51の断面の直径との合計)と同じまたはそれよりも浅いことが好ましい。これを模式的に示すのが図8である。なお図8は、フリーリング50が周設される位置の2箇所の本体2の外側面付近をそれぞれ拡大した図である。図8の上方に位置するフリーリング50とOリング51と、図8の下方に位置するフリーリング50とOリング51とは、本体2の断面の中心に対して180度の位置関係にある2箇所である。従って図8の上方と図8の下方とでは、本体2の断面を円周とした場合、その直径と円周とが接する2点における本体2の外側面付近の拡大図である。
【0053】
またフリーリング50の直径(内径)をR、本体2の外側面(フリーリング50を取り付ける位置の外側面)の直径をR1、フリーリング50を周設する溝部52の深さをdとした場合、フリーリング50の直径Rの最大値Rmaxは本体2に溝部52を設けない場合(d=0)であり(つまり溝部52を設けずにフリーリング50を取り付ける場合)、Rmax=R1となる。また、フリーリング50の直径Rの最小値Rminは溝部52にフリーリング50を密嵌させる場合であって、Rmin=R1−2dとなる。すなわちフリーリング50の直径Rは、R1−2d≦R≦R1となる。
【0054】
図2および図3ではOリング51とフリーリング50とを設けた掘進機1を示す。図8の拡大図では、本体2の外側面の溝部52とフリーリング50とが緩嵌の場合を示している。
【0055】
また本体2の、先頭体3との継ぎ目の外側面に固定したフリーリング50の溝部にOリング51を外接させた状態の大きさ(直径)が、先頭体3の内側面の大きさ(直径)と同一または多少大きくなるようにする。これによって、Oリング51と先頭体3の内側面とを密着させることができ、先頭体3と本体2との間の継ぎ目からの泥土や泥水の侵入を防止することができる。また、フリーリング50、Oリング51によって、先頭体3の伸びや傾きを吸収することができるので、先頭体3が方向修正装置4によって傾けられても、それを吸収することができる。
【0056】
一般的に、継手を構成する場合、Oリングのみで構成することがある。しかし掘進機1の先頭体3の動きは大きいので、Oリングだけでは掘進機1の先頭体3の動きを吸収することができない。そのため、先頭体3の動きの幅が小さくならざるを得ない。そこでOリング51に外接するフリーリング50を本体2の外側面の溝部52に緩嵌で周設することによって、先頭体3の動きをより大きく吸収することができるように構成している。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の掘進機1を用いることにより、従来と使用するスペースは変わらないものの、より耐久性の高い方向修正装置4を構成することができる。また本体2と先頭体3との間の継ぎ目の防護機構の耐久性も、従来の伸縮管継手よりも高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1:掘進機
2:本体
3:先頭体
4:方向修正装置
5:ジョイント部材
6:掘進機内の送排泥管
7:推進管
8:推進ジャッキ
9:従来の方向修正装置
10:発進立坑
11:操作盤
12:泥水処理機
13:バイパス弁
14:油圧ユニット
15:送泥ポンプ
16:排泥ポンプ
17:発進坑
21:レーザターゲット
31:カッターヘッド
32:ビット
41:ジャッキシリンダ
411:軸
42:支持台
43:シリンダロッド
431:シリンダロッドの先端部
44:ジョイント
441:軸受
45:ボルト
50:フリーリング
51:Oリング
52:本体の外側面の溝部
53:溝部のシーリング
61:掘進機内の送泥管
62:掘進機内の排泥管
63:ジョイント部材内の送泥管
64:ジョイント部材内の排泥管
65:発進立坑内の送泥管
66:発進立坑内の排泥管
81:レーザトランシット
91:従来の方向修正装置のジャッキシリンダ
92:従来の方向修正装置のシリンダロッド
93:従来の方向修正装置のシリンダロッドの先端部
94:従来の方向修正装置の支持ピン
95:従来の方向修正装置のジョイント
96:伸縮管継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターヘッドを備えた先頭体と本体とが分離可能な、地中を掘削する掘進機であって、
前記掘進機は、
前記先頭体と前記本体との間に前記先頭体を支持する方向修正装置を備えており、
前記方向修正装置は、
前記掘進機の本体の先端付近に備えられるジャッキシリンダと、前記掘進機の先頭体の後端付近に備えられるジョイントとを有しており、
前記ジャッキシリンダは、
前記本体の内側面に設置された支持台に設けられた貫通孔と、前記ジャッキシリンダの貫通孔とに軸を挿通することで、少なくとも上下方向に回転駆動可能であり、
前記ジャッキシリンダの前端部には、先端付近が球体または略球体状に成形されたシリンダロッドを備えており、
前記ジョイントは、
その内面が、前記シリンダロッドの球体または略球体と同一またはほぼ同一の大きさの球面または略球面に成形されており、
前記ジョイントの内面と前記シリンダロッドの球体または略球体とが嵌合することにより、前記方向修正装置で前記掘進機の先頭体を首振り自在に支持する、
ことを特徴とする掘進機。
【請求項2】
前記ジャッキシリンダは、さらに、
前記前端部前面に形成された孔に前記シリンダロッドを挿入しており、
前記シリンダロッドを前記孔において前後に駆動させることで、前記シリンダロッドの露出部の長さを伸縮させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の掘進機。
【請求項3】
前記掘進機は、さらに、
前記本体の外側面における前記先頭体と本体との継ぎ目付近に、溝部を有するフリーリングを外周方向に周設しており、
前記フリーリングの溝部に、前記先頭体の内径と同一またはほぼ同一の大きさであるOリングを外接させて備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の掘進機。
【請求項4】
前記フリーリングは、
前記掘進機の本体の外側面に設けた溝部に緩嵌で周設されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の掘進機。
【請求項5】
先頭体と本体とが分離可能な掘進機で用いる方向修正装置であって、
前記方向修正装置は、
前記先頭体を支持するために、前記先頭体と本体との間に設置され、
前記掘進機の本体の先端付近に備えられるジャッキシリンダと、前記掘進機の先頭体の後端付近に備えられるジョイントとを有しており、
前記ジャッキシリンダは、
前記本体の内側面に設置された支持台に設けられた貫通孔と、前記ジャッキシリンダの貫通孔とに軸を挿通することで、少なくとも上下方向に回転駆動可能であり、
前記ジャッキシリンダの前端部には、先端付近が球体または略球体状に成形されたシリンダロッドを備えており、
前記ジョイントは、
その内面が、前記シリンダロッドの球体または略球体と同一またはほぼ同一の大きさの球面または略球面に成形されており、
前記ジョイントの内面と前記シリンダロッドの球体または略球体とが嵌合することにより、前記方向修正装置で前記掘進機の先頭体を首振り自在に支持する、
ことを特徴とする掘進機で用いる方向修正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−241578(P2011−241578A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113621(P2010−113621)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(592017149)太閤テックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】