説明

掘進機

【課題】掘進機の推進方向に沿って概ね伸びた縦長の障害物が存在する場合であっても、かかる障害物を容易に切断し、掘進機を更に前方に推進させることが可能な障害物切断機能を備えた掘進機を得る。
【解決手段】本体部1に対して回転可能なカッターヘッド2に複数のノズルを備えた掘進機であって、複数のノズルのうちの一つは、掘進機の外周よりも外側の位置までスライド移動可能でかつ掘進機の半径方向外向きに角度が付いたオーバーカッターノズル10であり、あるいは、掘進機の半径方向外向きもしくは内向きに角度が付いた斜方噴射の移動ノズル11、12を少なくとも一対ずつ設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物切断機能を備えた掘進機に関するものであり、特に、掘進機の推進方向に沿って概ね伸びた縦長の障害物を切断しながら推進することができる掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、障害物を粉砕しつつ推進するために、本体部に対して回転可能なカッターヘッドに複数のノズルを備えた掘進機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−97830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
掘進機の推進方向前方において、該推進方向に沿って概ね伸びた縦長の障害物が存在する場合、掘進機が推進するためには、掘進機カッターヘッド部の外周よりオーバーカットして障害物を切断する必要がある。
【0005】
しかしながら、従来における掘進機は、オーバーカットノズルが水平に固定されているために、上述のような推進方向に沿って概ね伸びた縦長の障害物が掘進機の推進方向前方に存在する場合には、この障害物を切断することは非常に困難であり、かかる障害物を切断して掘進機を更に推進させるためには掘進機を連続的に切断と掘進を繰り返しても限界があったため作業が困難になった。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、掘進機の推進方向に沿って概ね伸びた縦長の障害物が存在する場合であっても、かかる障害物を容易に切断ないし細断し、掘進機を更に前方に順調に推進させることが可能な障害物切断機能を備えた掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、本体部に対して回転可能なカッターヘッドに複数のノズルを備えた掘進機であって、前記複数の噴射ノズルのうちの少なくとも一つは、前記掘進機の外周よりも外側の位置まで掘進機の半径方向にスライド移動可能なオーバーカッターノズルであることを特徴とする掘進機を提供する。
【0008】
また、前記オーバーカッターノズルは、前記掘進機の半径方向外向きの角度が付いており、このオーバーカッターノズルの噴射角度は、可変することができる。
【0009】
また、前記複数のノズルのうちの一つは、前記カッターヘッドの平面上において半径方向にスライド移動可能であり、前記掘進機の半径方向外向きの角度が付いた斜方噴射の外向き移動ノズルであり、この外向き移動ノズルの噴射角度は、可変することができる。
【0010】
また、前記複数のノズルのうちの別の一つは、前記カッターヘッドの平面上において半径方向にスライド移動可能であり、前記掘進機の半径方向内向きの角度が付いた斜方噴射の内向き移動ノズルであり、この内向き移動ノズルの噴射角度は、可変することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、掘進機の半径方向に移動可能な角度付ノズルを複数有しているため、掘進機の推進方向に奥行きのある障害物(すなわち掘進機の推進方向に沿って概ね伸びた縦長の障害物)が、掘進機の推進に支障のある位置に存在する場合であっても、移動可能な角度付ノズルのジェット噴射水によってこの障害物を迅速に切断ないし細断し、掘進機を前方に効率よく推進させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明にかかる掘進機の実施の一形態を示す部分断面側面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる掘進機に適用可能なカッターヘッド部の一形態を示す前面図である。
【図3】図3は、本発明にかかる掘進機に適用可能なオーバーカッターノズルを用いて障害物を切断する際の掘進機を示す部分断面側面図である。
【図4】図4は、本発明にかかる掘進機に適用可能なオーバーカッターノズルを用いて障害物を切断する際の掘進機を示す部分断面側面図である。
【図5】図5は、本発明にかかる掘進機に適用可能なオーバーカッターノズルを用いて障害物を切断して推進する際の掘進機を示す部分断面側面図である。
【図6】図6は、本発明にかかる掘進機に適用可能な一対の外向き移動ノズル及び一対の内向き移動ノズルを用いて一対の障害物を同時に切断する初期の掘進機を示す部分平面図である。
【図7】図7は、本発明にかかる掘進機に適用可能な一対の外向き移動ノズル及び一対の内向き移動ノズルを用いて障害物を切断する際の掘進機による障害物の切落とし状況を示す図6と同様の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる障害物切断機能を備えた掘進機を実施するための最良の形態について図面を参照しながら述べる。図1には、本発明にかかる掘進機の部分断面側面図を示している。図1において、1は掘進機のシールド本体部、2は本体部に対して回転可能なカッターヘッド部、3は回転軸、4はスクリューコンベヤ等を有する排泥管である。
【0014】
シールド本体部1は、前後進ジャッキ1aによって推進方向において前後スライド移動できるようになっている。カッターヘッド部2は、カッターモーター3aによって回転駆動される。
【0015】
そのカッターヘッド部2は推進方向先端部に設けられ、図2に示すようにリング板5を有する。このリング板5には互いに直交する取り付け板6、7が掛け渡されて固定されている。その取り付け板6、7は回転軸3において互いに交差しており、取り付け板6、7には中心ビット8、カッタービット9などのビットが適宜設けられている。
【0016】
また、図2によく示すように、カッターヘッド部2には、複数の噴射ノズルが設けられている。具体的に説明すると、カッターヘッド部2の取り付け板6には、その先端部に切断用の研磨材を含むアブレッシブジェット水等を噴射することができるオーバーカッターノズル10が取り付けられている。このオーバーカッターノズル10は、回転軸3に対して直交する方向すなわち掘進機の半径方向に対してスライド移動可能に取り付け板6に設けられており、掘進機の外周よりも内方位置から掘進機の外径よりも外側の位置までスライド移動できるようになされている。また、オーバーカッターノズル10は、掘進機の半径方向外向きすなわち斜前方向きに角度が付いており、この角度すなわちオーバーカッターノズル10の噴射角度は、回転軸3に対して例えば略15度等に設定することができる。オーバーカッターノズル10の角度は可変することができ、使用環境条件においてオーバーカッターノズル10を所望の角度で半径方向外向きに設定することができる。
【0017】
また、カッターヘッド部2の取り付け板7には、カッターヘッド部2の平面上においてスライド移動可能であり、掘進機の半径方向外向きに角度が付いた外向き移動ノズル11
とカッターヘッド部2の平面上においてスライド移動可能であり、掘進機の半径方向内向きに角度が付いた内向き移動ノズル12とがそれぞれ取り付けられている。図2に示すものは、噴射角度が互いに略45度をなす一対の外向き移動ノズル11及び内向き移動ノズル12が二組取り付け板7に設けられている。外向き移動ノズル11及び内向き移動ノズル12は、オーバーカッターノズル10と同様に、アブレッシブジェット水等を噴射することができ、その噴射角度を所望の角度に可変することができる。
【0018】
また、カッターヘッド部2の取り付け板6には、オーバーカッターノズル10が取り付けられた先端部と反対側に位置する他端部に、アブレッシブジェット水等を噴射することができる固定ノズル13が取り付けられている。固定ノズル13は、掘進機の半径方向外向きに角度が付いており、その噴射角度を所望の角度に可変することができるようになっている。この固定ノズル13は、地盤の改良材供給と通常の高圧水ジェットや障害物の切断のための固定の噴射ノズルである。
【0019】
次に、上記実施の形態の動作について説明する。図3に示すように、掘進機の推進方向に奥行きのある障害物(すなわち掘進機の推進方向に沿って概ね伸びた縦長の障害物)が、掘進機の外周近傍の前方に存在する場合、このまま掘進機を推進させると掘進機の外周部分が障害物に接触するために、オーバーカッターノズル10を用いて掘進機の前方に存在する障害物を掘進機外径よりも外周で切断する。
【0020】
具体的に述べると、図3に示すように、掘進機を所望の切断位置で停止させてから、オーバーカッターノズル10を掘進機の外周よりも外側の位置までスライド移動させ、このオーバーカッターノズル10のジェット噴射水によって掘進機の前方に存在する障害物をオーバーカットして切断する。この切断後に、オーバーカッターノズル10を掘進機の外周よりも内側の位置までスライド移動させ、図4に示すように、掘進機を次の切断位置まで推進方向に移動させて停止させる。そして、オーバーカッターノズル10を掘進機の外周よりも外側の位置まで再びスライド移動させ、このオーバーカッターノズル10のジェット噴射水によって掘進機の前方に存在する障害物をオーバーカットして切断する。この動作を繰り返すことにより、掘進機の外周近傍の前方に存在する掘進機の推進方向に奥行きのある障害物を連続的に切断することができ、掘進機の外周部分がこの障害物に接触することなく、掘進機を更に前方に推進させることができる。図5には、三段階の前進で障害物を連続的に切断した場合を示している。上述の通り、オーバーカッターノズル10は、掘進機の半径方向外向きに角度(図示のものは略15度)が付いているため、障害物の断面形状は、図4及び図5に示すように鋸歯状に切断される。このような断続的な切断推進に際して、前述のように改良材の供給や障害物の切断のための固定ノズル13を稼動させることが出来るのは言うまでもない。
【0021】
次に、掘進機の推進方向に奥行きのある障害物(すなわち掘進機の推進方向に沿って概ね伸びた縦長の障害物)が、掘進機の前方に例えば二つ存在する場合、噴射角度が互いに略45度をなす一対の外向き移動ノズル11及び一対の内向き移動ノズル12を用いて各障害物を切断する場合について述べる。
【0022】
図6に示すように、掘進機を障害物の前方位置で停止させてから、各障害物に対して、一対の外向き移動ノズル11及び一対の内向き移動ノズル12のジェット噴射水を交差するように噴射することによって障害物を切断する。図6に示すように、上記一対の外向き移動ノズル11及び一対の内向き移動ノズル12は、その噴射角度が互いに略45度をなしているために、V字状にクロスカットして障害物を切断することができる。この切断後に、図7に示すように、掘進機を次の切断位置の前方まで移動させて停止させる。そして、各障害物に対して、一対の外向き移動ノズル11及び内向き移動ノズル12のアブレッシブジェット噴射水によって障害物を切断する。この動作を繰り返すことにより、掘進機の前方に存在する障害物を連続的にクロスカットして切断除去することができ、これによってこの障害物に接触することなく、掘進機を前方に推進させることができる。
【0023】
図3乃至図5においては、オーバーカッターノズル10のみを使用して障害物を鋸歯状に切断し、図6及び図7においては、一対の外向き移動ノズル11及び一対の内向き移動ノズル12を使用して障害物をV字状にクロスカットしているが、これらに限定されない。すなわち、オーバーカッターノズル10、外向き移動ノズル11、内向き移動ノズル12及び固定ノズル13を様々な組み合わせで使用して、掘進機の前方に存在する地山及びカッターヘッド部2前面の一部または全面を覆うように出現するあらゆる障害物に対応することができる。また、オーバーカッターノズル10は複数設けることができ、同様に、外向き移動ノズル11及び内向き移動ノズル12も3つ以上それぞれ適宜設けることによって障害物への対応能力を如何様にも増進することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 シールド本体部
1a 前後進ジャッキ
2 カッターヘッド部
3 回転軸
3a カッターモーター
4 排泥管
5 リング板
6 取り付け板
7 取り付け板
8 中心ビット
9 カッタービット
10 オーバーカッターノズル
11 外向き移動ノズル
12 内向き移動ノズル
13 固定ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に対して回転可能なカッターヘッドに複数の噴射ノズルを備えた掘進機であって、
前記複数の噴射ノズルのうちの少なくとも一つは、前記掘進機の外周よりも外側の位置まで掘進機の半径方向にスライド移動可能なオーバーカッターノズルであることを特徴とする掘進機。
【請求項2】
請求項1記載の掘進機において、
前記オーバーカッターノズルは、前記掘進機の半径方向外向きに斜方角度が付いていることを特徴とする掘進機。
【請求項3】
請求項2記載の掘進機において、
前記オーバーカッターノズルの斜方角度は、可変することができることを特徴とする掘進機。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載の掘進機において、
前記複数の噴射ノズルのうちの少なくとも一つは、前記カッターヘッドの平面上においてスライド移動可能であり、前記掘進機の半径方向外向きに角度が付いた斜方噴射の外向き移動ノズルであることを特徴とする掘進機。
【請求項5】
請求項4記載の掘進機において、
前記斜方噴射の外向き移動ノズルの角度は、可変することができることを特徴とする掘進機。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載の掘進機において、
前記複数の噴射ノズルのうちの少なくとも一つは、前記カッターヘッドの平面上においてスライド移動可能であり、前記掘進機の半径方向内向きに角度が付いた斜方噴射の内向き移動ノズルであることを特徴とする掘進機。
【請求項7】
請求項6記載の掘進機において、
前記斜方噴射の内向き移動ノズルの角度は、可変することができることを特徴とする掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−1947(P2012−1947A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136805(P2010−136805)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(596149899)中黒建設株式会社 (11)
【出願人】(510138877)株式会社エーエヌエンジニアリング (2)
【Fターム(参考)】