説明

採冷システム

【課題】夏等の暑い時に、少しでも気温の低い外気を室内に取り入れることで、エアコン等の負荷を軽減でき、しかも、この取り入れる外気をパイプ設備や蓄熱設備等の熱交換を行う大掛かりな装置を用いることなく、簡単に冷やしてさらに温度を下げたものとすることができ、しかも、換気も充分なものとすることができる。
【解決手段】床下は気密構造のものであり、この床下に表面が露出するコンクリート基礎として土間コンクリート11を地中に接して形成して地中熱で冷却されるものとし、建物外の比較的冷たい外気を、壁26貫通の給気口34からボックス29に収めたファンで床下に導入し、前記地中熱で冷やされた土間コンクリート11の表面と接触させることで気温を下げ、床吹出口14より比較的低温の空気を室内に導入することで換気を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気を取り入れることにより、夏等の暑さをしのぐことができる採冷システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の影響で、わが国においても、夏の平均気温が上昇してきている。これに対して、夏の暑さを電力に支えられるエアコンでしのぐことが常套手段として行われるが、エアコンの過剰使用は大量のエネルギー消費であり、エネルギー危機や二酸化炭素による地球温暖化の現象を助長するものには他ならない。
【0003】
少しでも温度の低い空気を建物内に取り入れることは、エアコンの負担軽減になるが、近年、断熱材の使用により建物が高断熱、高気密化しており、外気の取り入れが困難となっている。
【0004】
地中の冷熱を加えることで、建物内に取り入れる外気を温度の低いものとすることは種々提案されており、下記特許文献等もその一例である。
【特許文献1】実用新案登録第3032891号
【特許文献2】特開2007−183023号公報
【特許文献3】実用新案登録第2565742号
【0005】
特許文献1は、夏期の屋外の暖気を地中の冷熱と熱交換し、また冬期の屋外の寒気を地中の温熱と熱交換して住宅の外壁に対して冷暖房でき、かつ室内を冷暖房できて光熱費がかからず省エネルギーに寄与し得る住宅の地中熱利用冷暖房装置であり、パイプ両端を屋外と床下空間に臨ませて熱交換用パイプを地中に埋設し、外気を熱交換用パイプで熱交換して床下空間に導入するものである。
【0006】
さらに、この特許文献1では、外壁と屋根裏面に断熱材をライニングして壁空間を床下空間と屋根裏空間に連通させ、熱交換用パイプにより導入する外気を、室内空気導入管を介して室内に流通し、屋根裏空間の第一の排気ファンで屋外へ排気するとともに、床下空間から壁空間へと流通させ、屋根裏空間の第二の排気ファンで室内流通空気を吸引して住宅外へ排気することも行われている。
【0007】
特許文献2は、地中に外気の熱を蓄熱して、冷暖房に有効に利用することができる地熱利用冷暖房方法および装置であり、暖期において外気の温熱を集熱部によって集熱して地中の第1地中蓄熱部に蓄熱しておき、この第1地中蓄熱部に蓄熱した温熱と室内の空気との間で熱放出部4を介して熱交換を冷期に行い、冷期において外気の冷熱を集熱部によって集熱して地中の第2地中蓄熱部に蓄熱しておき、この第2地中蓄熱部に蓄熱した冷熱と室内の空気との間で熱放出部を介して熱交換を暖期に行うものである。
【0008】
特許文献3は、少なくとも建築物の室内側に、屋根裏空間に連通する内側通気層が形成されるように、外壁材および屋根材の室内側に断熱材が面方向に張り巡らされ、床下部分には、外気を床下空間に導入可能な連通パイプ、棟下部分には、屋根裏空間内空気を屋外に導出可能な棟下換気口が形成され、連通パイプおよび換気口にそれぞれ開閉ダンパーが設けられている建築物であって、前記床下空間には、石、岩、割栗石、ブロック、レンガ等から成る蓄冷熱部材が床下空間の10〜90%を占め、かつ蓄冷熱部材間に十分な通気空間が形成されるように装着してあり、そして、該床下空間の蓄冷熱部材と外気とが地中に配置された連通パイプを介して直接連通可能にされており、かつ該連通パイプには連通パイプ開閉ダンパーが設けられている。
【0009】
特許文献3では、前記床下部分または床下空間には、内側通気層と床下空間との空気の循環を図るファンが装着してあることが好ましいとされ、たとえば夏の昼間等のように外気温度が高い場合には、全換気口および連通パイプを閉じ、各部屋の冷房装置を起動させると共に、床下ファンを起動させれば、床下部分または床下空間に設置された蓄冷熱部材に夜間蓄えられた冷熱が、前記ファンによって内側通気層、屋根裏空間及び床下空間を循環する空気と熱交換し、部屋周囲の温度を低下させ、各部屋の冷房装置による冷房効果を補助する。
【0010】
また、夏の夜間等のように、外気温度が比較的低い場合には、全換気口及び連通パイプのダンパーを開けると共に、ファンを起動し、外気を床下換気口から床下空間に取り入れ、それを蓄冷熱部材間隙間を通して内側通気層に導き、屋根裏空間及び棟下換気口を通して建築物外部に排出する。これにより、屋根裏の熱気を戸外に排出し、比較的低温の外気を各部屋及び内側通気層に導き、建築物内を自然エネルギーを利用して冷房する。それと共に、夜間の冷熱を蓄冷熱ブロックまたは蓄冷熱部材に蓄え、これを昼間の冷房に利用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように温度が比較的低い外気を取り入れて冷房に供しようとする場合の方法として、地熱での熱交換で冷却してから取り入れる方法や、外気の冷熱の蓄熱により、この蓄熱部に蓄熱した冷熱と室内の空気との間で熱放出部を介して熱交換を行うものなどで、いずれの場合も熱交換という工程を経ることが多い。
【0012】
一方、古来からの日本家屋には壁というものがなかった。戸、襖、障子というもので、部屋を区切る仕切りがあるだけであり、暮らしやすくするための季節の環境を自然の中から取り込もうという工夫がなされていた。まずは、熱がこもらないように、家中の仕切りをとり、空気が循環するようにした。日中の直射日光を避けるために、簾を軒下にかかげる、空気の温度が下がるよう、朝のうちに打ち水をし、家の中で空気の通り道になる場所へ氷柱を置く等、自然に逆らわぬよう、上手に涼をとってきた。
【0013】
このような外部と室内との空気の循環が、「涼」を取ることにつながっていたわけであり、換気用空気に関しても、隙間を通しての自然な漏れ込みによって、十分な換気空気を建物内に流入させるのが普通であるとされた。
【0014】
しかし、近年、断熱材の使用による高断熱、高気密の建物の出現は、このような隙間が少ないので、外気の取り込みに難があり、換気についても積極的に行う必要性がある。
【0015】
改正された建築基準法では健康的な生活をするために必要な建物の換気(1時間に0.5回、[その建物の体積分(気積という)]の空気が2時間に1回外部の空気と入れ代わること)を行うことと定めている。前記換気を満足させるためには、機械的換気設備を設置して24時間換気を行うが、そのためには計画的な換気と空気の流れを作らねばならない。
【0016】
本発明の目的はこのような事情を考慮したものであり、夏等の暑い時に、少しでも気温の低い外気を室内に取り入れることで、エアコン等の負荷を軽減でき、しかも、この取り入れる外気をパイプ設備や蓄熱設備等の熱交換を行う大掛かりな装置を用いることなく、簡単に冷やしてさらに温度を下げたものとすることができ、しかも、換気も充分なものとなる採冷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため請求項1および請求項2記載の本発明は、床下は気密構造のものであり、この床下に表面が露出するコンクリート基礎を地中に接して形成して地中熱で冷却されるものとし、建物外の比較的冷たい外気を、壁貫通の給気口からボックスに収めたファンで床下に導入し、前記地中熱で冷やされたコンクリート基礎表面と接触させることで気温を下げ、床吹出口より比較的低温の空気を室内に導入することで換気を行うこと、および、建物外の比較的冷たい外気は、建物北側、屋根や庇又は小屋により日射を遮蔽した個所、もしくは熱交換機器の冷熱廃棄のいずれか、もしくは組合せにより選択することを要旨とするものである。
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、まず、建物外の比較的冷たい日陰の外気を取り入れることで、涼を得ようとするものであり、さらに、この空気を地中熱で冷やされたコンクリート基礎表面と接触させることでさらに気温を下げて比較的低温の空気とし、これを床吹出口より室内に導入することにより、エアコン等の負荷を軽減できる。なお、コンクリート基礎はこれがべた基礎であれば、土間コンクリートとして広い表面積を確保でき、地中との接触面積および空気を冷やすための接触面積を広いものとすることができる。
【0019】
また、取り入れた外気をそのまま室内に導入することにより、いわゆる押し込み型の換気が得られることになる。
【0020】
さらに、外気は、壁貫通の給気口からボックスに収めたファンで床下に導入するものであり、外気導入口としての給気口は、地表面から離れるので、砂埃や虫を取り入れることが少なく、壁貫通施工のため、工事後の施工が可能となり、既存物件への採用も可能となる。
【0021】
請求項2記載の本発明は、ファンを床上設置のボックスに収め、該ボックス内には給気口の開閉を行うダンパー、および、ファンの風上側に設置するフィルターを配設したことを要旨とするものである。
【0022】
請求項2記載の本発明によれば、ファンは床上設置のボックスに収めることで、フィルターの手入れやメンテナンスが容易である。また、ファンにはシロッコファンを採用すれば、パイプファンを採用した場合に比べて、安定した風量が確保でき、低騒音となる。
【0023】
請求項3記載の本発明は、軒先から屋根空気層に外気を取り入れて屋根を冷やすことで天井からの輻射熱を削減することを要旨とするものである。
【0024】
請求項3記載の本発明によれば、建物外の比較的冷たい日陰の外気をさらに冷やして取り入れることで、涼を得るという請求項1の作用に加えて、この取り入れを床吹き出し口から室内に取り入れる場合に、屋根冷ましを併用することで室内の気温の上昇を抑え、その効果をより確実なものとすることができる。しかも、この屋根冷ましは外気を利用するので、全く、併用することが可能である。
【0025】
請求項4記載の本発明は、天井付近に排気口を設けることで室内上部の熱溜りを排気することを要旨とするものである。
【0026】
請求項4記載の本発明によれば、建物外の比較的冷たい日陰の外気をさらに冷やして取り入れることで、涼を得るという請求項1の作用に加えて、この取り入れを床吹き出し口から室内に取り入れる場合に、温められて天井付近に溜った空気を排気することで、「涼」を確保するという効率を上げることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明の採冷システムは、夏等の暑い時に、少しでも気温の低い外気を室内に取り入れることで、エアコン等の負荷を軽減でき、しかも、この取り入れる外気をパイプ設備や蓄熱設備等の熱交換を行う大掛かりな装置を用いることなく、簡単に冷やしてさらに温度を下げたものとすることができ、しかも、換気も充分なものとすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の採冷システムの1実施形態を示す縦断正面図で、床下基礎部と屋根に工夫を凝らした建物である。
【0029】
まず、屋根から説明すると、カラー鉄板やスレート板等の屋根板1の直下に屋根勾配を有する空気流路2を形成した。この空気流路2の一端は軒先に空気取入口3として開口し、他端は排気ダクト9により、屋外に連通させる。図示の例では、排気ダクト9の先の部分は屋根上に煙突18として立ち上げた。
【0030】
空気流路2と排気ダクト9の間には、断熱材による集熱ボックスとしての棟ダクト4と、ファン7を設けるが、このファン7は逆流防止ダンパー6、及び流路切換えダンパー8を設けたハンドリングボックス5の中に設置するものとする。
【0031】
さらに、ハンドリングボックス5の中には、逆流防止ダンパー6とファン7との間にお湯とりコイル15を設け、このお湯とりコイル15は循環配管16で貯湯槽17と連結し、図示は省略するが、該貯湯槽17には、追焚き用の給湯ボイラーを途中へ設けて、風呂や洗面所、台所へとつながる給湯配管を接続する。
【0032】
前記ハンドリングボックス5は屋根裏空間である小屋裏22に設置するものとし、このハンドリングボックス5の逆流防止ダンパー6の流入側を前記棟ダクト4に連通させ、流路切換えダンパー8の流出側の一方を立下りダクト10の上端に連結する。
【0033】
図中19はガラスであり、前記屋根板1の上を一部この透明体であるガラス19で覆った。
【0034】
図中12は床パネルであり、床下ではべた基礎方式の布基礎をなすコンクリート基礎としての土間コンクリート11を100〜150mm程度の厚みで施工し、周囲は基礎立上がり20として立ち上げた。土間コンクリート11は外側周囲は直接地中に接するように形成してこれが地中熱で冷却されるものとする。
【0035】
本発明においては、床下の気密性が重要となる。この基礎立上がり20とその上に載置する土台21との間は気密パッキン25を介在させて気密性を確保して土間コンクリート11と床パネル12および土台21、壁26で囲む床下空間は気密構造とし、このように床下空気層から空気漏れを遮断する。
【0036】
また、土間コンクリート11と床パネル12との間は空気流通空間13として形成し、この空気流通空間13の所定地点では該空気流通空間13から室内への床吹出口14を設けた。
【0037】
本発明は、このような気密構造とした床下に、建物外の比較的冷たい日陰の外気として、建物北側の比較的冷たい日陰の外気を取り入れて土間コンクリート11の表面と接触させることで気温を下げ、吹き出し口より比較的低温の空気を室内に導入することで換気を行うものとする。
【0038】
建物外の比較的冷たい日陰の外気としては、このような建物北側の比較的冷たい日陰の外気の他に、図12に示すように屋根や庇39又は小屋により日射を遮蔽した個所としてここから取り入れることも可能である。
【0039】
さらに、図示は省略するが、ヒートポンプ式給湯器などの熱交換機器を設置している場合はその冷熱廃棄空気を利用することも可能であり、これらの建物北側の比較的冷たい日陰の外気、屋根や庇39又は小屋により日射を遮蔽した個所としてここから取り入れる外気、熱交換機器を設置している場合はその冷熱廃棄空気による外気は、いずれか1つもしくは複数を組み合わせて選択することができる。
【0040】
前記外気を床下空間に送り込む構造として、床から少し上の壁26をUV管27で貫通し、このUV管27の屋外側開口に丸型パイプフードを取り付けて給気口34とし、UV管27の屋外側開口にはファン28を収めたステンレス製のボックス29に床上に置いて、このボックス29に接続した。
【0041】
ファン28にはシロッコファンを使用し、該ボックス29内には給気口34の開閉を行うダンパー30、および、ファン28の風上側に設置するフィルター31を配設した。
【0042】
このようなシロッコファンを使用すれば、パイプファンを採用した場合に比べて、安定した風量が確保でき、低騒音となるが、パイプファン、プロペラファンの使用を妨げるものではない。
【0043】
ボックス29のファン28の風下側はUV管32で床下に開口し、所定の風速をもって土間コンクリート11の表面に直接吹き付けるようにする。
【0044】
ダンパー30は、ダンパーモーター30aにより自動開閉するものであり、タイマーリレーによる制御でスイッチをONにすると、ダンパーモーター30aが稼動してダンパー30が開き、開ききったところで、ダンパーモーター30aが停止して、ファン28が運転し、外気を床下へと送風する。
【0045】
スイッチをOFFにすると、ファン28が停止してダンパーモーター30aが稼動し、ダンパー30を閉めた後、電源が切れる。
【0046】
ボックス29の前面カバー29aは、開閉自在としてマグネットで固定してあり、フィルター31のメンテナンスは前面カバー29aを外して行う。
【0047】
前記流路切換えダンパー8の流出側の一方に接続する立下りダクト10の下端も、床下の土間コンクリート11と床パネル12との間は空気流通空間13に開口し、前記室内への床吹出口14はこれら立下りダクト10の開口やボックス29のファン28の風下側の開口とは距離を取って、その間の空気流通空間13の土間コンクリート11は極力長いものが確保できるようにする。
【0048】
天井付近、例えば屋根裏空間である小屋裏22に自然または排気ファンによる排気口33を設けた。
【0049】
次に使用法について説明する。本発明の採冷システムは夏期等の暑い時に稼動するものである。日中、土間コンクリート11は直接地中に接して形成して地中熱で冷却されるものである。なお、夜間に地中熱で冷却され、その冷却熱が蓄熱されたものでもある。
【0050】
ボックス29のファン28を駆動して、建物北側の比較的冷たい日陰の外気を、壁貫通の給気口34から床下に導入し、前記地中熱で冷やされた土間コンクリート11の表面と接触させることで気温を下げる。
【0051】
床下は気密なものであり、このように外気を導入することで、押し込み換気となり、床吹出口14より比較的低温の空気を室内に導入することで、室内の換気を押し込みで行うことになる。
【0052】
図示は省略するが室内にはエアコンがあり、これでも冷却するが、前記のごとき比較的低温の空気を室内に導入することで、エアコンの負荷を低減することができる。
【0053】
一方、ハンドリングボックス5の中のファン7を駆動すると吸引が屋根板1下の空気流路2へ作用し、屋根部分では、太陽光で加熱された金属板である屋根板1が、空気流路2へ入った外気を温め、この温められた空気は屋根勾配に沿って上昇する。
【0054】
そして、流路切換えダンパー8で流出側の一方である立下りダクト10側を閉塞し、流出側の他の一方である排気ダクト9側を開放すれば、屋根板1で温められた加熱空気はハンドリングボックス5から加熱空気は排気ダクト9を介して屋外へ捨てられ、いわゆる屋根冷ましが行われる。なお、加熱空気はハンドリングボックス5を通ることでお湯とりコイル15の加熱は行うので、夏期等高温時でも太陽熱利用で湯が得られる。
【0055】
このような軒先の空気取入口3から屋根空気層である空気流路2に外気を取り入れて屋根を冷やすことで天井からの輻射熱を削減することができる。
【0056】
室内においては、天井付近に熱気が溜り易いが、天井付近の排気口33から室内上部の熱溜りを排気することで、室内の空気の上昇を押さえることが可能となる。
【0057】
図11は本発明の効果を確認するために試験を行った結果であり、外気の温度、床吹出口14の温度、室内の温度(本発明の実施物件)、室内の温度(通常物件)とをグラフ化したものである。
【0058】
これによれば、8月の末において室内の温度(本発明の実施物件)と室内の温度(通常物件)とに1℃以上の差を見ることができた。
【0059】
本発明の特徴は、ファン28を内蔵したボックス29を床上に設置するだけで施工がすむことにある。図2、図3に示すように、壁26を貫通してUV管27を取り付け、床パネル12を貫通してUV管32を取り付け、これらにボックス29を接続すればよい。
【0060】
図5は基礎立上がり20に開口35を形成し、断熱材でボックス38を作り、パイプファン37と断熱ダンパー36付床下換気口を取り付けた場合(図5左側)との比較であり、この場合は、ダンパーの切り替えを外へ出て手動で行う必要がある、パイプファン採用のため、気密性能が良いほど風量がでない、外気導入口が地表面から近いため、砂埃や虫、湿気を多く取り入れてしまう、ボックス38で虫が繁殖するおそれがある、などの問題があった。
【0061】
本発明は、ダンパーモーター30aの採用により、ダンパー30の切り替えがスイッチで行え、シロッコファンの採用により、安定した風量が確保でき、低騒音となる。
【0062】
外気導入口を地表面から離してフィルター31を内蔵したので、砂埃や虫を取り入れることが少なくなる。
【0063】
床上設置としたため、フィルター31の手入れやメンテナンスが容易であり、壁貫通による施工のため工事後の施工が可能となり、既存物件への採用も可能である。
【0064】
以上は夏期であるが、本実施形態の建物は、ソーラーシステムハウスとして、冬等に太陽光による暖房も可能なものとして構成した。
【0065】
冬期において、太陽光で加熱された金属板である屋根板1が、空気流路2へ入った外気を温め、この温められた空気は屋根勾配に沿って上昇する。ガラス19は、屋根板1への風の影響を無くす役割を持つ。
【0066】
そして、この加熱空気は棟ダクト4に集められてからファン7によりハンドリングボックス5に入り、ハンドリングボックス5から立下りダクト10内を流下し、蓄熱土間コンクリート11と床パネル12との間の空気流通空間13へ入る。
【0067】
この空気流通空間13では加熱空気が床パネル12を介して直接床面下を温めるのと、土間コンクリート11に蓄熱させるのと、床吹出口14から温風として直接室内へ吹き出されるのとの3通りの暖房作用を行うことで暖房がなされる。
【0068】
以上のように、土間コンクリート11を冷却と暖房の双方に使用し、また、屋根下の空気層を屋根冷ましと空気の加温に用いることで、冷暖双方に適する建物となる。
【0069】
前記実施形態ではボックス29は1つのものとしてこの中にファン28、給気口34の開閉を行うダンパー30、および、ファン28の風上側に設置するフィルター31を配設したが、ファンとダンパーを別々のボックスの中に収め、かつ、ボックス同士を離間させることも可能である。
【0070】
また、ボックス29はファン28の収納部分とダンパー30の収納部分とを上下に並べた縦形のものでもよい。
【0071】
さらに図14に示すように、ボックス29に室内からの給気口40を形成し、ダンパー30は給気口34の開閉を行うのみならず、この給気口40の開閉同時に行えるようにして、ダンパー30がこれら給気口34と給気口40の間に位置することで、外気の取り入れの中に室内空気の取り入れを混合させることができる。いずれか一方の風量圧損を補うためである。給気口34と給気口40との空気の取り入れ量はダンパー30の位置で調整できる。
【0072】
また、他の実施形態として床吹出口14から吹き出させずに、ダクトで天井裏まで誘導し、取り入れた比較的低温の空気を室内に導入するようにしてもよい。この場合のダクトは独自のものを設置することも考えられるが、図13は立下りダクト10を利用した。
【0073】
ハンドリングボックス5には送気口41を形成し、立下りダクト10を上昇させる取り込み外気はこの送気口41から噴出させることができる。
【0074】
この場合は、ファン7を逆転させて給気ファンとして作用させ、立下りダクト10内に吸引力を作用させる。
【0075】
また、送気口41は逆流防止ダンパー6で閉塞可能なものとする。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の採冷システムの第1実施形態を示す縦断正面図である。
【図2】本発明の採冷システムの第1実施形態を示す施工中の要部の縦断正面図である。
【図3】本発明の採冷システムの第1実施形態を示す施工後の要部の縦断正面図である。
【図4】本発明の採冷システムの第1実施形態を示す要部の斜視図である。
【図5】本発明の採冷システムと他例との比較を示す説明図である。
【図6】ファンを配置したボックスの正面図である。
【図7】ファンを配置したボックスの平面図である。
【図8】ファンを配置したボックスの側面図である。
【図9】ファンを配置したボックスの背面図である。
【図10】ファンを配置したボックスの前面カバーを除いた状態の前正面図である。
【図11】本発明の効果試験を示す温度変化グラフである。
【図12】本発明の採冷システムの第2実施形態を示す要部の縦断正面図である。
【図13】本発明の採冷システムの第3実施形態を示す縦断正面図である。
【図14】本発明の採冷システムの第4実施形態を示す要部の斜視図である
【符号の説明】
【0077】
1…屋根板 2…空気流路
3…空気取入口 4…棟ダクト
5…ハンドリングボックス 6…逆流防止ダンパー
7…ファン 8…流路切換えダンパー
9…排気ダクト 10…立下りダクト
11…土間コンクリート 12…床パネル
13…空気流通空間 14…床吹出口
15…お湯とりコイル 16…循環配管
17…貯湯槽 18…煙突
19…ガラス 20…基礎立上がり
21…土台 22…小屋裏
23…補助暖房コイル 24…暖房・追炊きボイラー
25…気密パッキン 26…壁
27…UV管 28…ファン
29…ボックス 29a…前面カバー
30…ダンパー 30a…ダンパーモーター
31…フィルター 32…UV管
33…排気口 34…給気口
35…開口 36…断熱ダンパー
37…パイプファン 38…ボックス
39…屋根や庇 40…給気口
41…送気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下は気密構造のものであり、この床下に表面が露出するコンクリート基礎を地中に接して形成して地中熱で冷却されるものとし、建物外の比較的冷たい外気を、壁貫通の給気口からボックスに収めたファンで床下に導入し、前記地中熱で冷やされたコンクリート基礎表面と接触させることで気温を下げ、床吹出口より比較的低温の空気を室内に導入することで換気を行うことを特徴とする採冷システム。
【請求項2】
建物外の比較的冷たい外気は、建物北側、屋根や庇又は小屋により日射を遮蔽した個所、もしくは熱交換機器の冷熱廃棄のいずれか、もしくは組合せにより選択する請求項1記載の採冷システム。
【請求項3】
ファンを床上設置のボックスに収め、該ボックス内には給気口の開閉を行うダンパー、および、ファンの風上側に設置するフィルターを配設した請求項1または請求項2記載の採冷システム。
【請求項4】
軒先から屋根空気層に外気を取り入れて屋根を冷やすことで天井からの輻射熱を削減する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の採冷システム。
【請求項5】
天井付近に排気口を設けることで室内上部の熱溜りを排気する請求項1ないし請求項4記載の採冷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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