説明

採取ビン運搬容器

【課題】構造は簡素でしかも採取ビンの破損を防ぐことができ、また、採取ビンが破損したとしてもそのことを容易に把握できる採取ビン運搬容器を提供することである。
【解決手段】電気機器の絶縁油に含まれるPCBを分析するために絶縁油が封入された採取ビン15は格納部11に格納され、格納部11の上部は蓋12で覆われる。格納部11は、仕切り板14により格子状に区分され、採取ビン15を1個ずつ格納するための複数の格納空間が形成され、採取ビン15を格納部11内に整列して格納する。また、格納部11の底部及び蓋12の内側に緩衝材13が配置され、採取ビン15と接触して採取ビン15を弾力を持って保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の絶縁油に含まれるPCBを分析するために、絶縁油を採取して封入した採取ビンを運搬する際に用いられる採取ビン運搬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビフェニルPCBは、絶縁性、不燃性、化学的安定性などの性質により、電気機器、例えばトランスやコンデンサ等の絶縁油として使用されてきたが、毒性があることが判明したために新たな使用が禁止さている。現在でも、電気機器の中には微量のPCBを含んだ絶縁油が使用されたものがあり、廃棄物処理法により厳重管理の下に保管するとともに、PCB廃棄物を適正処理することが義務づけられている。
【0003】
微量のPCBに汚染された電気絶縁油の無害化処理にあたっては、無害化処理施設への受け入れ条件としてだけでなく、処理コストを低減する上でも処理前の濃度確認が非常に重要になる。例えば、絶縁油中PCB濃度が所定値以下なら通常の廃棄物として処理が可能である。そこで、電気機器の絶縁油を採取しガラス製の採取ビンに封入し、採取ビンを緩衝材とともに空き箱に梱包して分析センターまで運搬し、分析を受けるようにしている。
【0004】
ここで、生化学的材料を運んだり扱ったりする格納容器として、ケース内のクッションに薬ビンやバレルを収納する開口部を設け、この開口部に薬ビンやバレルを収納し、ケースを密閉して運搬するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−4645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものは、ケース内のクッションに薬ビンやバレルを収納する大きさの開口部を形成しなければならず、格納容器の構成が複雑となる。また、薬ビンやバレルの大きさに応じてそれぞれそれに対応する種類のケースを用意しなければならないので高価となる。
【0007】
一方、絶縁油の採取ビンは、毒物であるPCBが含まれている可能性があるので、運搬中の採取ビンの破損を防ぐことが重要であるとともに、万一ビンが採取ビンが破損したときには、絶縁油に人間が触れることがないようにしなければならない。
【0008】
本発明の目的は、構造は簡素でしかも採取ビンの破損を防ぐことができ、また、採取ビンが破損したとしてもそのことを容易に把握できる採取ビン運搬容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係る採取ビン運搬容器は、電気機器の絶縁油に含まれるPCBを分析するために前記絶縁油が封入された採取ビンを格納し上部が蓋で覆われる格納部と、前記採取ビンが前記格納部に整列して格納できるように前記格納部を格子状に区分し前記採取ビンを1個ずつ格納するための複数の格納空間を形成する仕切り板と、前記格納部の底部及び前記蓋の内側に前記採取ビンと接触するように配置され前記採取ビンを弾力を持って保持する緩衝材とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明に係る採取ビン運搬容器は、請求項1の発明において、前記緩衝材は、前記格納空間を形成する前記仕切り板の周囲にも前記採取ビンと接触するように配置され、前記採取ビンを弾力を持って保持することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明に係る採取ビン運搬容器は、請求項1の発明において、前記格納部の底部を少なくとも透明または半透明の部材で形成し、前記採取ビンの底部外側に色紙を装着し、前記色紙を装着した前記採取ビンを前記格納部の前記格納空間に格納したことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明に係る採取ビン運搬容器は、請求項3の発明において、前記採取ビンの底部外側に加え、前記採取ビンの側面部外側に色紙を装着し、前記色紙を装着した前記採取ビンを前記格納部の前記格納空間に格納したことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明に係る採取ビン運搬容器は、請求項3または4の発明において、前記色紙と前記採取ビンの底部外側との間、前記色紙と前記採取ビンの側面部外側との間に油吸収マットを配置し、前記採取ビンに前記色紙及び前記油吸着マットを装着したことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明に係る採取ビン運搬容器は、請求項3乃至5のいずれか1項の発明において、前記色紙を装着した前記採取ビン、または前記色紙及び前記油吸着マットを装着した前記採取ビンを収納する収納ビンを設け、この収納ビンを前記格納空間に収納することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、採取ビンが格納部に整列して格納できるように格納部を仕切り板で格子状に区分し、採取ビンを1個ずつ格納するための複数の格納空間を形成するので構造を簡素化でき、格納部の底部及び蓋の内側に、採取ビンと接触するように採取ビンを弾力を持って保持する緩衝材を設けるので、採取ビンの破損を防ぐことができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、採取ビンを格納する格納空間を形成する仕切り板の周囲にも採取ビンと接触するように緩衝材を配置するので、採取ビンの破損をより効果的に防ぐことができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、色紙を装着した採取ビンを格納部の格納空間に格納するので、万一、採取ビンが破損して絶縁油が漏洩しても色紙が絶縁油を吸収し変色するので、透明または半透明の格納部の底部から絶縁油の漏洩を容易に確認できる。
【0018】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明の効果に加え、採取ビンの側面部外側にも色紙を装着するので、透明または半透明の格納部の側面部からも絶縁油の漏洩を確認できる。
【0019】
請求項5の発明によれば、請求項3または4の発明の効果に加え、色紙に加え油吸収マットを配置するので、採取ビンが破損して絶縁油が漏洩しても油吸収マットで吸収できる。従って、格納部から絶縁油が漏出することを防止できる。
【0020】
請求項6の発明によれば、請求項3乃至5のいずれか1項の発明の効果に加え、収納ビンに採取ビンを収納するので、採取ビンが破損して絶縁油が漏洩しても、絶縁油は収納ビン内に滞留し、格納部から絶縁油が漏出することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る採取ビン運搬容器の構成図。
【図2】本発明の実施形態における仕切り板を格納部に配置した状態の斜視図。
【図3】採取ビンの斜視図。
【図4】本発明の実施形態における仕切り板を配置した格納部に採取ビンを収納した状態の斜視図。
【図5】色紙を装着した採取ビンの斜視図。
【図6】色紙及び油吸収マットを装着した採取ビンの斜視図。
【図7】採取ビンを収納する収納ビンの斜視図。
【図8】収納ビンを格納部の格納空間に収納した場合の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る採取ビン運搬容器の構成図であり、図1(a)は蓋を搭載した状態での斜視図、図1(b)は蓋を外した状態での格納部の斜視図、図1(c)は仕切り板の斜視図である。
【0023】
図1(a)に示すように、採取ビン運搬容器は、格納部11の上部に蓋12が設けられている。この採取ビン運搬容器の内部に、図示省略の絶縁油が封入された採取ビンが格納される。この採取ビンには、電気機器の絶縁油に含まれるPCBを分析するための絶縁油が封入される。図1(a)では、蓋12の内側に緩衝材13が設けられ、蓋12を搭載した状態を示している。蓋12の周囲には掛止部12aが設けられ、この掛止部12aにて格納部11に掛止される。
【0024】
図1(b)に示すように、格納部11の底部にも緩衝材13が配置されている。緩衝材13は弾力性を有し、図示省略の採取ビンが格納部11に収納されたとき、採取ビンと接触し、蓋12をしたときに採取ビンの上側を蓋12の緩衝材13で、採取ビンの下側を格納部11の底部の緩衝材13で弾力を持って保持する。
【0025】
図1(c)に示すように、仕切り板14は格子状に形成され、格納部11の底部の緩衝材13の上部に配置される。そして、格子状に区分された格子状空間は、1個の採取ビンが収納できる程度の大きさである。これにより、採取ビンが格納部11に整列して格納できるように格納部11を格子状に区分している。
【0026】
図2は仕切り板14を格納部11に配置した状態の斜視図である。図2に示すように、仕切り板14が格納部11に配置されることによって、格納部11内部に1個の採取ビンが収納できる複数の格納空間を形成し、これらの格納空間に、図3に示す採取ビン15が格納される。採取ビン15は、例えばガラスで形成され、採取ビン15に絶縁油が入れられ、上部に例えばキャップ蓋16にて封止される。
【0027】
図4は仕切り板を配置した格納部に採取ビンを収納した状態の斜視図であり、図4(a)は蓋12を外した状態の斜視図、図4(b)は蓋12をした状態の斜視図である。図4(a)に示すように、各々の格納空間に採取ビン15を収納する。なお、図4では格納部11の4隅の格納空間には採取ビン15を収納していない状態を示している。格納部11の4隅の丸みが採取ビンの丸みと同じ形状である場合には、格納部11の4隅に採取ビン15を収納してもよい。
【0028】
図4(b)に示すように、格納容器11に採取ビン15を収納した後に、蓋12を格納容器11の上部に搭載し掛止部12aにより、蓋12を格納容器11にに取り付ける。蓋12には必要に応じて、採取した絶縁油の電気機器名称や採取した日付などを記載したラベル20を貼り付ける。
【0029】
次に、格納部11の底部を少なくとも透明または半透明の部材で形成し、採取ビン15の底部外側に色紙を装着し、色紙を装着した採取ビンを格納部11の格納空間に格納するようにしてもよい。
【0030】
図5は、色紙を装着した採取ビン15の斜視図であり、図5(a)は採取ビン15の底部に色紙を装着した場合、図5(b)は採取ビン15の底部及び側面部に色紙を装着した場合を示している。
【0031】
図5(a)に示すように、採取ビン15の底部に色紙17を装着することによって、採取ビン15が破損し、採取ビン15に封入した絶縁油が漏洩した場合、採取ビン15の底部の色紙17に絶縁油が染み込んで色紙17が変色する。そこで、格納部11の底部を検視することによって色紙17が変色しているかどうかを検査する。もし、色紙17が変色していると採取ビン15が破損していると判断できる。色紙17の色は、絶縁油が染みこんだときと染みこまないときが識別できる色なら何色でもよいが、実験ではピンクが分かり易いことが判明した。
【0032】
また、格納部11の底部及び側面部を透明または半透明の部材で形成しておく場合には、図5(b)に示すように、採取ビン15の底部及び側面部に色紙17を装着しておくと、格納部11の側面部に配置された採取ビン15の破損を格納部11の側面部から容易に検視できる。また、格納部11の中央部に格納された採取ビン15であったとしても、採取ビン15を取り出した場合に、その側面の色紙17が変色していると、容易に採取ビン15が破損して絶縁油が漏洩していることが分かる。
【0033】
また、色紙17に加え、採取ビン15に油吸収マットを装着するようにしてもよい。図6は、色紙及び油吸収マットを装着した採取ビン15の斜視図であり、図6(a)は採取ビン15の底部に油吸収マット及び色紙を装着した場合、図6(b)は採取ビン15の底部及び側面部に油吸収マット及び色紙を装着した場合を示している。
【0034】
図6(a)に示すように、採取ビン15の底部に油吸収マット18を配置し、その油吸収マット18に色紙17を装着する。採取ビン15が破損し、採取ビン15に封入した絶縁油が漏洩した場合、油吸収マット18で絶縁油を吸収し、油吸収マット18が吸収した絶縁油が色紙17に染み込む。これによって、色紙17が変色するので、格納部11の底部を検視することによって採取ビン15が破損しているかどうかを判断できる。この場合、漏洩した絶縁油を油吸収マット18で吸収するので、格納部11内部に滞留する絶縁油を抑制できる。
【0035】
また、図6(b)に示すように、採取ビン15の底部及び側面部に油吸収マット18を配置して、その油吸収マット18に色紙17を装着した場合も同様に、油吸収マット18が吸収した絶縁油が色紙17に染み込んで採取ビン15の破損を判断できる。また、側面部の油吸収マット18でも絶縁油を吸収できるので、格納部11内部に滞留する絶縁油を抑制できる。
【0036】
以上の説明では、色紙17を装着した採取ビン、または色紙17及び油吸収マット18を装着した採取ビン15を直接的に格納部11の格納空間に格納するようにしたが、採取ビン15を収納ビンに収納して、採取ビン15を収納した収納ビンを格納部11の格納空間に収納するようにしてもよい。
【0037】
図7は、採取ビン15を収納する収納ビン19の斜視図である。収納ビン19の上部には、対面する位置に一対の切欠部19aが設けられており、収納ビン19に収納する採取ビン15の出し入れが容易にできるようにしている。一対の切欠部19aとしたのは、例えば、親指と人差し指とが入るようにして採取ビン15を容易に掴めるようにするためである。
【0038】
採取ビン15を収納ビン19に収納する場合には、色紙17を採取ビン15に装着したり、または色紙17及び油吸収マット18を採取ビン15に装着することに代えて、収納ビン19の中に色紙17や油吸収マット18を装着しておき、採取ビン15を収納ビン19に入れるだけとしてもよい。この場合も、色紙17や油吸収マット18を採取ビン15に装着した場合と同様となる。
【0039】
次に、図8は収納ビン19を格納部11の格納空間に収納した場合の斜視図である。格納容器11の格納空間は収納ビン19の大きさに応じた大きさに形成されている。すなわち、仕切り板14で区分される格納空間の大きさは、1個の収納ビン19を収納できる大きさとしている。
【0040】
収納ビン19に採取ビン15を収納することによって、採取ビン15が破損して絶縁油が漏洩したとしても、絶縁油の漏洩範囲は収納ビン19内となるので、収納部11に絶縁油が漏洩することを防止できる。また、採取ビン15を収納部11から取り出す際に、収納ビン19を収納部11から取り出し、その後に収納ビン19から採取ビン15を取り出すので、漏洩した絶縁油が手に触れる危険を防止できる。また、収納ビン19には切欠部19aが設けられているので、収納ビン11から容易に採取ビン15を取り出すことができる。
【0041】
以上述べたように、本発明の実施形態によれば、絶縁油の採取ビン15を格納する格納部11を仕切り板14で仕切り、収納部11の底部及び蓋12に緩衝材13を設けたので、採取ビン15の破損を防ぐことができる。
【0042】
また、採取ビン15の底部に色紙を装着した場合には、万一、運搬中に採取ビン15が破損して絶縁油が漏洩した場合でも破損した採取ビンを容易に識別できるので、絶縁油に手が触れることを防止できる。また、採取ビン15を収納ビン19に収納する場合には、漏洩した絶縁油が収納部11に漏洩することを防止でき、より安全性を確保できる。
【符号の説明】
【0043】
11…格納部、12…蓋、13…緩衝材、14…仕切り板、15…採取ビン、16…キャップ蓋、17…色紙、18…油吸収マット、19…収納ビン、20…ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の絶縁油に含まれるPCBを分析するために前記絶縁油が封入された採取ビンを格納し上部が蓋で覆われる格納部と、
前記採取ビンが前記格納部に整列して格納できるように前記格納部を格子状に区分し前記採取ビンを1個ずつ格納するための複数の格納空間を形成する仕切り板と、
前記格納部の底部及び前記蓋の内側に前記採取ビンと接触するように配置され前記採取ビンを弾力を持って保持する緩衝材とを備えたことを特徴とする採取ビン運搬容器。
【請求項2】
前記緩衝材は、前記格納空間を形成する前記仕切り板の周囲にも前記採取ビンと接触するように配置され、前記採取ビンを弾力を持って保持することを特徴とする請求項1記載の採取ビン運搬容器。
【請求項3】
前記格納部の底部を少なくとも透明または半透明の部材で形成し、前記採取ビンの底部外側に色紙を装着し、
前記色紙を装着した前記採取ビンを前記格納部の前記格納空間に格納したことを特徴とする請求項1記載の採取ビン運搬容器。
【請求項4】
前記採取ビンの底部外側に加え、前記採取ビンの側面部外側に色紙を装着し、
前記色紙を装着した前記採取ビンを前記格納部の前記格納空間に格納したことを特徴とする請求項3記載の採取ビン運搬容器。
【請求項5】
前記色紙と前記採取ビンの底部外側との間、前記色紙と前記採取ビンの側面部外側との間に油吸収マットを配置し、前記採取ビンに前記色紙及び前記油吸着マットを装着したことを特徴とする請求項3または4記載の採取ビン運搬容器。
【請求項6】
前記色紙を装着した前記採取ビン、または前記色紙及び前記油吸着マットを装着した前記採取ビンを収納する収納ビンを設け、この収納ビンを前記格納空間に収納することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項記載の採取ビン運搬容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−62088(P2012−62088A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207729(P2010−207729)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】