説明

採取具

【課題】コンクリート等の構造物の穿孔を行った際に得られる穿孔粉末が汚染されてしまうのを防止することができると共に、穿孔粉末を確実に採取することができる採取具を提供する。
【解決手段】穿孔手段2は、穿孔方向に対して交差する穿孔面2aに穿孔刃2bを備え、該穿孔面2aが穿孔方向を軸に回転可能となるように構成されており、採取手段3は、構造物表面の穿孔予定領域を覆うように形成された開口部3aと、該開口部3aに連通すると共に前記穿孔粉末を収容する収容空間3bとを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を穿孔して穿孔粉末を採取するための採取具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート等の構造物を穿孔することで発生するコンクリート粉末等を採取し、斯かるコンクリート粉末等を用いて様々な物性試験等が行われている。例えば、コンクリート構造物における硬化コンクリート中の塩化物イオン量を測定する試験では、コンクリート構造物の表面から内部に向かって、所定の深さコンクリートを穿孔し、採取されるコンクリートの粉末を分析することで、硬化コンクリート中の塩化物イオン量の測定が行われている。
【0003】
上記のようにして硬化コンクリート中の塩化物イオン量を測定することで、コンクリート構造物に対する塩化物イオンの侵入度合を把握することができる。塩害は、鉄筋コンクリート構造物の表面から内部に向かって塩化物イオンが侵入し、該塩化物イオンが鉄筋コンクリート構造物中に存在する鉄筋に到達すると、鉄筋の防さび効果が喪失して鉄筋に腐食が生じ、鉄筋強度の低下によって鉄筋コンクリート構造物の耐荷力が低下したり、鉄筋の腐食に伴う膨張によってコンクリートが内部から破壊されて鉄筋コンクリート構造物の耐久性が低下したりするものである。このため、鉄筋コンクリート構造物の塩害による耐久性あるいは耐荷性を評価する上で、上記のような塩化物イオン量の測定によって塩化物イオンの侵入度合を正確に把握することが重要となっている。
【0004】
コンクリート構造物からコンクリート粉末を採取する装置としては、例えば、コンクリートを穿孔する穿孔手段と、コンクリート粉末を採取する採取手段とを備えた装置が提案されている(特許文献1参照)。穿孔手段としては、棒状に形成されて長手方向に沿って外周面に螺旋状の穿孔刃が形成されたドリルが用いられている。斯かるドリルを用いてコンクリートを穿孔することで、コンクリート構造物に形成された穿孔の内部から螺旋状の穿孔刃を伝ってコンクリート粉末が外部へ排出されるように構成されている。一方、採取手段としては、粘着テープが用いられており、斯かる粘着テープを穿孔の開口部の下方に配置することで、穿孔から排出されたコンクリート粉末を粘着面で採取するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−174454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような装置では、ドリルの長手方向に沿って螺旋状の穿孔刃が形成されているため、コンクリート構造物に形成された穿孔の内周面がドリルの外周面に形成された穿孔刃と接触して粉砕されて粉砕物が発生し、ドリルの先端部によって形成されたコンクリート粉末に混入する虞がある。このような粉砕物は、分析対象となるコンクリート粉末よりもコンクリート構造物の表面側に位置していたものであるため、塩化物イオン量が多いものである。このため、分析対象となるコンクリート粉末が斯かる粉砕物の混入によって汚染され、硬化コンクリート中の塩化物イオン量の測定を正確に行うことが困難となる。また、穿孔の開口部の下方に粘着テープを配置するだけでは、風などの影響によってコンクリート粉末が飛散してしまい、コンクリート粉末を確実に採取することができない虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、コンクリート等の構造物の穿孔を行って該構造物の穿孔粉末を採取する際に、該穿孔粉末が上述のように汚染されてしまうのを防止することができると共に、穿孔粉末を確実に採取することができる採取具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る採取具は、コンクリート等の構造物を穿孔して穿孔粉末を採取する採取具であって、前記構造物を穿孔する穿孔刃を備えた穿孔手段と、前記穿孔粉末を採取する採取手段とを備え、前記穿孔手段は、穿孔方向に対して交差する穿孔面に穿孔刃を備え、該穿孔面が穿孔方向を軸に回転可能となるように構成されており、前記採取手段は、構造物表面の穿孔領域を囲むように形成された開口部と、該開口部に連通すると共に前記穿孔粉末を収容する収容空間とを備えることを特徴とする。
【0009】
斯かる構成によれば、前記穿孔手段は、穿孔方向に対して交差する穿孔面に穿孔刃を備え、該穿孔面が穿孔方向を軸に回転可能に構成されていることで、上述したような粉砕物による穿孔粉末の汚染を防止することができる。具体的には、構造物を穿孔する際に、構造物における穿孔面に対峙した領域のみが穿孔刃によって穿孔されることとなるため、穿孔内を穿孔手段が穿孔方向に沿って移動した際に、穿孔の内周面が穿孔刃と接触するのを防止することができる。これにより、穿孔の内周面が穿孔刃によって粉砕されて粉砕物が形成されるのを防止することができる。このため、穿孔刃によって構造物が穿孔されることで形成された穿孔粉末に粉砕物が混入することによって汚染が生じるのを防止することができる。
【0010】
また、前記採取手段が、構造物表面の穿孔領域を囲むように形成された開口部と、該開口部に連通すると共に前記穿孔粉末を収容する収容空間とを備えることで、穿孔の開口部から排出される穿孔粉末が採取手段の開口部から収容空間に収容されるため、穿孔粉末が飛散するなどして穿孔粉末が採取できなくなるのを防止することができる。
【0011】
前記採取手段は、穿孔方向に沿って筒状に形成されて一端部に前記開口部を備える筒状部と、該筒状部を保持する保持部とを備え、前記穿孔手段および保持部が連動して筒状部に対して穿孔方向に相対移動するように構成されていることが好ましい。
【0012】
斯かる構成によれば、穿孔手段および保持部が連動して筒状部に対して穿孔方向に相対移動するように構成されていることで、筒状部に対する保持部の移動量を測定することで、穿孔手段の移動量、即ち、穿孔の深さを把握することができる。具体的には、穿孔手段は、穿孔の内側を穿孔方向に移動していくため、構造物の外部からは、その移動量を把握することができない。しかしながら、穿孔手段および保持部が連動して筒状部に対して穿孔方向に相対移動することで、筒状部に対する保持部の移動量を測定することで穿孔手段の移動量、即ち、穿孔の深さを把握することができる。
【0013】
前記保持部は、穿孔方向に沿った筒状の形状を有し、筒状部に対して穿孔方向に相対移動した際に、筒状部の外面が保持部の内面と摺接した状態で筒状部を収容可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
斯かる構成によれば、前記保持部は、穿孔方向に沿った筒状の形状を有し、筒状部に対して穿孔方向に相対移動した際に、筒状部の外面と保持部の内面とが摺接した状態で筒状部を収容可能に構成されていることで、保持部が筒状部に対して相対移動する際に、筒状部に沿って、即ち、穿孔方向に沿って保持部が安定して相対移動することとなる。これにより、保持部と連動して筒状部に対して相対移動する穿孔手段を穿孔方向に沿って安定して相対移動させることができる。
【0015】
前記筒状部の外面には、軸方向に沿って所定間隔で目盛りが付されていることが好ましい。
【0016】
斯かる構成によれば、前記筒状部の外面に、軸方向に沿って所定間隔で目盛りが付されていることで、斯かる目盛りを基準に保持部の移動量を測定することができ、穿孔部の移動量、即ち、穿孔の深さを容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、コンクリート等の構造物の穿孔を行って穿孔粉末を採取する際に、穿孔粉末が上述のように汚染されてしまうのを防止することができると共に、穿孔粉末を確実に採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る採取具の一実施形態を示した斜視図。
【図2】(a)は、同実施形態に係る採取具の側面図であって、採取手段のみを断面図で示した図、(b)は、同実施形態に係る採取具が構造物を穿孔した状態を示した側面図であって、採取手段のみを断面図で示した図。
【図3】発明に係る採取具の他の実施形態を示した斜視図。
【図4】(a)は、他の実施形態に係る穿孔部を示した正面図、(b)は、更に他の実施形態に係る穿孔部を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図1および2を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態に係る採取具1は、コンクリート等の構造物を穿孔して穿孔粉末(例えば、コンクリートの粉末など)を採取するものである。具体的には、採取具1は、図1および図2(a)に示すように、構造物を穿孔する穿孔手段2と、穿孔粉末を採取する採取手段3とを備えている。
【0021】
前記穿孔手段2は、構造物を穿孔する穿孔刃2bを備えている。具体的には、穿孔手段2は、構造物を穿孔する際の穿孔方向に対して交差する穿孔面2aに穿孔刃2bを備えている。また、穿孔手段2は、穿孔面2aが穿孔方向を軸に回転可能となるように構成されている。具体的には、穿孔手段2は、穿孔面2aを備える穿孔部21と、穿孔方向を軸に穿孔部21(具体的には、穿孔面2a)を回転させる回転軸22とから構成されている。
【0022】
穿孔部21は、板状(具体的には、円盤状)の形状を有し、穿孔方向に対して交差(具体的には、略直行)するように配置されている。また、穿孔部21は、穿孔方向に対して交差(具体的には、略直行)する一方の面が前記穿孔面2aとなっており、他方の面に回転軸22が連結されている。穿孔部21の厚みとしては、5〜10mm程度であることが好ましい。また、穿孔部21の直径としては、10〜15mm程度であることが好ましい。穿孔刃2bは、穿孔面2aの中心部から穿孔面2aの周端部に向かって線状(詳しくは曲線状)に形成されている。また、穿孔刃2bは、穿孔面2aの中心部から放射状に複数形成されている。
【0023】
前記回転軸22は、穿孔部21に連結されて穿孔面2aが穿孔方向を軸に回転可能となるように構成されている。具体的には、回転軸22は、穿孔部21を回転させる回転手段Aの回転力を穿孔部21に伝達するように、穿孔部21と回転手段Aとを連結するように構成されている。具体的には、回転軸22は、穿孔方向に沿って伸びる棒状に形成されており、一端部に穿孔部21(具体的には、穿孔部21の他方の面)が連結されている。つまり、回転軸22に対して穿孔面2aが交差(具体的には、略直行)するように形成されている。そして、回転軸22は、回転手段Aを他端部に連結可能に構成されている。回転手段Aは、穿孔方向を軸に回転軸22を回転可能に構成されており、回転軸22を回転させることで、穿孔部21(具体的には、穿孔面2a)を穿孔方向を軸に回転させるように構成されている。
【0024】
前記採取手段3は、構造物表面の穿孔領域を囲むように形成された開口部(以下、構造物側開口部と記す)3aと、該構造物側開口部3aに連通すると共に穿孔粉末を収容する収容空間3bとを備えている。具体的には、採取手段3は、筒状(詳しくは、円筒状)の形状を有し、軸方向が長手となるように形成されており、内部空間が前記収容空間3bとなるように構成されている。そして、採取手段3は、一端部に前記構造物側開口部3aが形成されており、他端部が後述する閉塞壁32bによって閉塞されている。
【0025】
また、採取手段3は、収容空間3bの略中央部に、前記回転軸22が配置されている。具体的には、収容空間3bの略中央部には、筒状の採取手段3の軸方向(即ち、長手方向)に沿って回転軸22が配置されている。そして、構造物側開口部3aが形成されている側に回転軸22に連結された穿孔部21が位置すると共に、回転軸22の他端側が後述する閉塞壁32bを貫通した状態となっている。
【0026】
採取手段3は、構造物側開口部3aが一端部に形成された筒状部31と、該筒状部31を保持する保持部32とから構成されている。本実施形態では、採取手段3は、構造物側開口部3aが一端部に形成された第一筒状部31と、該第一筒状部31を収容する第二筒状部32とから構成されている。第一および第二筒状部31,32は、軸方向に沿って長手となるように円筒状に形成されており、それぞれの軸が一直線上に位置するように配置されている。また、第一筒状部31と第二筒状部32とは、第一筒状部31の他端側が第二筒状部32の内側に収容された状態で連結されており、一方に対して他方が軸方向に沿って相対移動可能となるように構成されている。また、第一筒状部31の他端側から第二筒状部32が第一筒状部31を収容するように構成されている。また、第一筒状部31が第二筒状部32に収容された状態で、第一および第二筒状部31,32の内部空間同士が連通するように構成され、これにより、収容空間3bが形成されている。
【0027】
第一筒状部31は、一端部に構造物側開口部3aが形成されており、他端側から第二筒状部32に収容されるように構成されている。また、第一筒状部31は、第二筒状部32に収容された領域の外周面が第二筒状部32の内周面に摺接するように構成されている。また、第一筒状部31の他端部には、開口部(以下、他端側開口部と記す)31aが形成されており、第一筒状部31の内部空間が第二筒状部32の内部空間に連通するように構成されている。また、該他端側開口部31aには、開口面の中心部に向かって延出するようにフランジ部31bが形成されている。
【0028】
また、第一筒状部31は、軸方向(具体的には、穿孔方向)に沿って第二筒状部32に対して相対移動可能に構成されている。具体的には、第一筒状部31は、軸方向に沿って第二筒状部32の外側から内側に向かって相対移動可能に構成されていると共に、軸方向に沿って第二筒状部32の内側から外側に向かって相対移動可能に構成されている。つまり、第一筒状部31は、軸方向に沿って第二筒状部32に対して相対的に出退可能に構成されている。
【0029】
また、第一筒状部31は、第二筒状部32の内側から外側に向かって相対移動した際に、斯かる移動方向に対して第二筒状部32に係止されることで、第二筒状部32に連結されている。具体的には、第一筒状部31が第二筒状部32の内側から外側に向かって相対移動した際に、第一筒状部31のフランジ部31bが斯かる移動方向に対して第二筒状部32に係止されるように構成されている。
【0030】
また、第一筒状部31は、外周面に目盛り31cが付されている。該目盛り31cは、第一筒状部31の軸方向(即ち、穿孔方向)に沿って等間隔で形成されている。そして、斯かる目盛り31c上を第二筒状部32の一端側開口部32aが第一筒状部31の軸方向に沿って移動するように構成されている。
【0031】
前記第二筒状部32は、一端部に開口部(以下、一端側開口部と記す)32aが形成されており、他端部が閉塞壁32bによって閉塞されている。そして、第二筒状部32の内部空間に位置する回転軸22の他端部が閉塞壁32bを貫通した状態で第二筒状部32の外側に延出した状態となっている。
【0032】
第二筒状部32は、第一筒状部31の軸方向が自身の軸方向に沿うように第一筒状部31を収容する。また、第二筒状部32は、一端側開口部32aから第一筒状部31を内部に収容するように構成されている。また、第二筒状部32は、第一筒状部31の他端側から第一筒状部31を収容するように構成されている。また、第二筒状部32は、第一筒状部31の略全体を収容可能に構成されている。また、第二筒状部32の内周面は、第一筒状部31の外周面における第二筒状部32に収容された領域と摺接するように構成されている。
【0033】
また、第二筒状部32は、軸方向に沿って第一筒状部31に対して相対移動可能に構成されている。具体的には、第二筒状部32は、第一筒状部31の他端側から一端側に向かって相対移動可能に構成されていると共に、第一筒状部31の一端側から他端側へ向かって相対移動可能に構成されている。そして、第二筒状部32は、第一筒状部31の他端側から一端側に向かって相対移動することで第一筒状部31を内部に収容し、第一筒状部31の一端側から他端側へ向かって第二筒状部32に対して相対移動することで内部に収容された第一筒状部31が外部に延出するように構成されている。
【0034】
第二筒状部32は、内部に収容された第一筒状部31を軸方向に沿って内部空間から押し出す押出手段32cを備えている。該押出手段32cは、第一筒状部31を第二筒状部32の一端側開口部32a側へ付勢するように構成されている。本実施形態では、押出手段32cは、第二筒状部32の内周面に沿って配置された弦巻バネから構成されている。
【0035】
また、第二筒状部32は、前記押出手段32cを内部空間に保持する押出手段保持壁32dを内部に備えている。該押出手段保持壁32dは、第二筒状部32の内周面に沿うように筒状に形成されており、第二筒状部32の内周面から間隔を空けて配置されている。そして、第二筒状部32の内周面と押出手段保持壁32dとの間の空間に押出手段32c(具体的には、弦巻バネ)が配置されている。また、第二筒状部32の内周面と押出手段保持壁32dとの間の空間には、第一筒状部31の他端側が差し入れられており、第一筒状部31の他端部(具体的には、フランジ部31b)が押出手段32cによって第二筒状部32の一端側開口部32a側へ付勢されるように構成されている。
【0036】
また、筒状の押出手段保持壁32dは、第一筒状部31側の一端部に開口部が形成されており、他端部が閉塞壁32bに連結されて閉塞されている。つまり、第一筒状部31の内部空間と筒状の押出手段保持壁32dの内部空間とが連通して収容空間3bが形成されている。
【0037】
また、押出手段保持壁32dの開口する一端部の外周には、第二筒状部32の内周面に向かってフランジ部32eが形成されている。これにより、第二筒状部32の内側から外側に向かって第一筒状部31が相対移動した際に、第一筒状部31および押出手段保持壁32dのフランジ部31b,32e同士が当接することとなる。これにより、第二筒状部32の内側から外側に向かって第一筒状部31が第二筒状部32に係止され、第二筒状部32から第一筒状部31が抜け落ちてしまうのが防止される。
【0038】
上記のような構成の採取具1は、構造物の穿孔を行う前の状態では、第一筒状部31が第二筒状部32から延出した状態が維持されている。具体的には、第一筒状部31および押出手段保持壁32dのフランジ部31b,32e同士が当接した状態で、押出手段32cによって第一筒状部31が第二筒状部32の外側に向かって軸方向に付勢されることで、第二筒状部32から第一筒状部31が延出した状態が維持されている。
【0039】
また、採取具1は、構造物の穿孔を行う前の状態では、穿孔手段2の全体が筒状の採取手段3の内側に位置している。具体的には、穿孔部21(より詳しくは、穿孔刃2b)が構造物側開口部3aよりも第一筒状部31の内側に位置している。
【0040】
また、採取具1は、穿孔手段2(具体的には、穿孔部21)が筒状の採取手段3(具体的には、第一筒状部31)に対して穿孔方向に沿って相対移動可能となっている。より詳しくは、第二筒状部32から延出した状態の第一筒状部31が第二筒状部32の内側に向かって相対移動することで、穿孔部21が第一筒状部31の内側から構造物側開口部3aよりも外側に相対移動する。逆に、第二筒状部32の内側から外側に向かって第一筒状部31が相対移動することで、構造物側開口部3aよりも外側に位置する穿孔部21が第一筒状部31の内側へ向かって相対移動する。
【0041】
言い換えれば、穿孔手段2(具体的には、穿孔部21)および第二筒状部32が第一筒状部31に対して穿孔方向に沿って相対移動可能となっている。具体的には、穿孔部21および第二筒状部32が第一筒状部31に対して穿孔方向に向かって相対移動することで、穿孔部21が第一筒状部31の内側から構造物側開口部3aよりも外側に相対移動する。逆に、穿孔部21および第二筒状部32が第一筒状部31に対して穿孔方向に対向する方向に向かって相対移動することで、構造物側開口部3aよりも外側に位置する穿孔部21が第一筒状部31の内側へ向かって相対移動する。
【0042】
次に、上記のような採取具1を用いて、構造物Bから穿孔粉末を採取する方法について、図2(b)を参照しつつ説明する。なお、穿孔粉末とは、構造物Bを穿孔刃2bが穿つことで形成される構造物の粉末などである。
【0043】
まず始めに、回転軸22の他端部(具体的には、第二筒状部32の閉塞壁32bから第二筒状部32の外部へ延出した部分)に回転手段Aを連結する。この際、回転手段Aは、閉塞壁32bに当接した状態となっている。
【0044】
次に、構造物表面における穿孔領域を囲むように、構造物側開口部3aを構造物表面に当接させる。この際、筒状の採取手段3(具体的には、第一および第二筒状部31,32)の軸方向が穿孔方向に沿うように構造物側開口部3aを構造物表面に当接させる。
【0045】
そして、回転手段Aを駆動させて、回転軸22を軸に穿孔部21を回転させると共に、回転手段Aを穿孔方向に向かって押圧する。これにより、穿孔手段2(具体的には、穿孔部21)および第二筒状部32が第一筒状部31に対して穿孔方向に向かって相対移動する。そして、穿孔部21が構造物表面に当接して穿孔が行われて穿孔Cが形成される。この際、第二筒状部32が第一筒状部31の他端側から一端側に向かって移動することで、第一筒状部31の他端側が第二筒状部32の内側にさらに収容された状態となる。
【0046】
また、穿孔手段2(具体的には、穿孔部21)および第二筒状部32が穿孔方向に向かって第一筒状部31に対して連動して相対移動することで、第二筒状部32の第一筒状部31に対する移動距離が穿孔手段2(具体的には、穿孔部21)の移動距離、即ち、穿孔Cの深さに相当することとなる。このため、第一筒状部31の表面に形成された目盛り31cを基準に、第二筒状部32の一端側開口部32aの移動距離を測定することで、穿孔Cの深さを把握することが可能となる。
【0047】
そして、穿孔Cの深さが所定の深さに達したところで、穿孔部21の回転を停止し、回転手段Aを穿孔方向に対向する方向に移動させる。この際、押出手段32cの作用によって、第二筒状部32が第一筒状部31に対して穿孔方向に対向する方向に移動し、第一筒状部31および押出手段保持壁32dのフランジ部31b,32e同士が当接した位置で停止する。一方、穿孔手段2(具体的には、穿孔部21)も穿孔方向に対向する方向に移動し、穿孔C内から引き抜かれ、採取手段3(具体的には、第一筒状部31)の内側に収容された状態となる。これにより、採取具1が穿孔前の状態に戻ることとなる。
【0048】
また、構造物Bの穿孔に伴って発生した穿孔粉末は、構造物側開口部3aから収容空間3bに収容される。具体的には、穿孔Cの開口部を構造物側開口部3aが覆っているため、穿孔と同時に発生する穿孔粉末が飛散することなく構造物側開口部3aから収容空間3bに収容される。更に、穿孔C内に堆積した穿孔粉末は、穿孔部21が穿孔Cから引き抜かれる際に、穿孔部21によって穿孔C内から穿孔粉末が掻き出され、構造物側開口部3aから収容空間3bに収容される。
【0049】
以上のように、本発明に係る採取具によれば、コンクリート等の構造物の穿孔を行って穿孔粉末を採取する際に、穿孔粉末が上述のように汚染されてしまうのを防止することができると共に、穿孔粉末を確実に採取することができる。
【0050】
即ち、穿孔部21が穿孔方向に対して交差する穿孔面2aに穿孔刃2bを備えており、該穿孔面2aが穿孔方向を軸に回転可能に構成されていることで、構造物Bにおける穿孔面2aに対峙した領域のみが穿孔されることとなるため、穿孔部21が穿孔C内を穿孔方向に沿って移動した際に、穿孔Cの内周面が穿孔刃2bと接触するのを防止することができる。これにより、穿孔Cの内周面が穿孔刃2bによって粉砕されて粉砕物が形成されるのを防止することができる。このため、穿孔粉末に粉砕物が混入することによって生じる汚染を防止することができる。
【0051】
また、前記採取手段3が、構造物Bの表面の穿孔領域を囲むように形成された構造物側開口部3aと、該構造物側開口部3aに連通すると共に前記穿孔粉末を収容する収容空間3bとを備えることで、穿孔Cの開口部から排出される穿孔粉末が採取手段3の開口部から収容空間3bに収容されるため、穿孔粉末が飛散するなどして穿孔粉末が採取できなくなるのを防止することができる。
【0052】
また、穿孔部21および第二筒状部32が連動して第一筒状部31に対して穿孔方向に相対移動するように構成されていることで、第二筒状部32の移動量を測定することで、穿孔部21の移動量、即ち、穿孔Cの深さを把握することができる。また、第一筒状部31の外周面に、軸方向に沿って所定間隔で目盛り31cが付されていることで、斯かる目盛り31cを基準に第二筒状部32の移動量を測定することができ、穿孔部21の移動量、即ち、穿孔Cの深さを容易に把握することができる。
【0053】
なお、本発明に係る採取具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、穿孔面2aが平面状に形成され、穿孔部21が板状に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、図3に示すように、穿孔方向が軸となるように錐状(具体的には、円錐状)に形成された穿孔面20aおよび穿孔部210であってもよい。斯かる場合には、穿孔方向が軸となるように螺旋状に穿孔刃20bを形成することができる。穿孔面20aおよび穿孔部210がこのような形状に形成されることで、穿孔部210の先端部が尖状となるため、構造物を穿つ力が先端部に集中するため、効果的に構造物を穿孔することができる。
【0055】
また、図4(a)に示すように、上記の実施形態で用いた穿孔部21の外周部に複数の切り欠き部2cを設けてもよい。このような切り欠き部2cを備えることで、穿孔面2aによって穿孔された穿孔粉末が切り欠き部2cを通って穿孔部21の他方の面側に排出されるため、穿孔粉末を穿孔Cから排出する際に、効果的に排出させることができる。
【0056】
また、上記の実施形態の穿孔面2aに代えて、図4(b)に示すように、複数(具体的には、6つ)の腕部21aを放射状に配置して穿孔部21を形成してもよい。このような穿孔部21を用いることで、穿孔部21の重量を軽量なものとすることができると共に、腕部21a間から穿孔部21の他方の面側に穿孔粉末が排出されるため、穿孔粉末を穿孔Cから排出する際に、効果的に排出させることができる。
【0057】
また、上記実施形態では、線状の穿孔刃2bが用いられているが、これに限定されるものではなく、穿孔面2aに複数の突起状の穿孔刃を形成するようにしてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態の穿孔部21に対して厚み方向に沿って貫通孔を形成してもよい。このような構成とすることで、穿孔粉末が貫通孔を通って穿孔部21の他方の面側に排出されるため、穿孔粉末を穿孔Cから排出する際に、効果的に排出させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…採取具、2…穿孔手段、2a…穿孔面、21…穿孔部、22…回転軸、3…採取手段、3a…構造物側開口部、3b…収容空間、31…第一筒状部、32…第二筒状部、A…回転手段、B…構造物、C…穿孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート等の構造物を穿孔して穿孔粉末を採取する採取具であって、
前記構造物を穿孔する穿孔刃を備えた穿孔手段と、前記穿孔粉末を採取する採取手段とを備え、前記穿孔手段は、穿孔方向に対して交差する穿孔面に穿孔刃を備え、該穿孔面が穿孔方向を軸に回転可能となるように構成されており、前記採取手段は、構造物表面の穿孔領域を囲むように形成された開口部と、該開口部に連通すると共に前記穿孔粉末を収容する収容空間とを備えることを特徴とする採取具。
【請求項2】
前記採取手段は、穿孔方向に沿って筒状に形成されて一端部に前記開口部を備える筒状部と、該筒状部を保持する保持部とを備え、
前記穿孔部および保持部が連動して筒状部に対して穿孔方向に相対移動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の採取具。
【請求項3】
前記保持部は、穿孔方向に沿った筒状の形状を有し、筒状部に対して穿孔方向に相対移動した際に、筒状部の外面と保持部の内面とが摺接した状態で筒状部を収容可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の採取具。
【請求項4】
前記筒状部の外面には、軸方向に沿って所定間隔で目盛りが付されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の採取具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−208072(P2012−208072A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75357(P2011−75357)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】