採取用具及び採取方法
【課題】対象物の硬さに影響されることなく、利用者が設定量のサンプルを簡単に採取できるようにし得る、採取用具、及びそれを用いた採取方法を提供する。
【解決手段】対象物の一部を採取するための採取用具1を用いる。採取用具1は、一方向に延びる本体部2と、本体部2の先端部分に設けられた凹部3とを備えている。凹部3の底4の一部分には、開口部5が設けられている。本体部2は、一方向に延びる板状の部分を有しているのが好ましい。この場合、凹部3は、板状の部分の一方の面2aに設けられ、凹部3の底4に設けられた開口部5は、板状の部分の他方の面2bに位置している。
【解決手段】対象物の一部を採取するための採取用具1を用いる。採取用具1は、一方向に延びる本体部2と、本体部2の先端部分に設けられた凹部3とを備えている。凹部3の底4の一部分には、開口部5が設けられている。本体部2は、一方向に延びる板状の部分を有しているのが好ましい。この場合、凹部3は、板状の部分の一方の面2aに設けられ、凹部3の底4に設けられた開口部5は、板状の部分の他方の面2bに位置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象物からサンプルを採取するための採取用具、それを用いた採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療の分野では、生体の検査のために、生体の一部、及び排泄物がサンプルとして採取され、サンプルに対して種々の分析が行われている。代表的な生体の検査としては、例えば、「検便」が知られている。
【0003】
検便では、排泄された便から設定量が、サンプルとして採取される。そして、このとき、サンプル採取用具として、いわゆる「採便棒」が用いられる。また、採便棒としては、便の採取を容易にするため、種々の採便棒が開発され、実用化されている(特許文献1〜特許文献5参照。)。
【0004】
例えば、特許文献1及び2は、短冊状の基板によって構成された採便棒を開示している。この採便棒の先端部分には、それを厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられている。また、基板は、糞便に突き刺すことが可能な程度の剛性を有している。特許文献1及び2に開示された採便棒を利用する場合は、利用者は、採便棒を糞便に突き刺し、その後、引き抜くだけで良い。この行為により、貫通孔には、設定量の便が充填されるので、設定量の便の採取が可能となる。
【0005】
また、特許文献3は、便に突き刺す部分が丸棒状に形成された採便棒を開示している。この採便棒では、先端部分の側面に凹部が設けられている。この構成により、利用者は、特許文献3に開示された採便棒を利用する場合も、採便棒を糞便に突き刺し、その後、引き抜くだけで良い。この場合は、凹部に、設定量の便が充填される。
【0006】
更に、上記した特許文献1〜3に開示した採便棒では、便にそれを突き刺すことによって、便の採取が行われているのに対して、特許文献4及び5に開示された採便棒では、これらとは異なる手法によって便の採取がおこなわれる。
【0007】
特許文献4は、先端部分で便をなぞることによって便を採取する採便棒を開示している。この採便棒の先端部分には、棒の周方向に沿って複数条の溝が設けられており、この溝によって、便は掻き取られる。掻き取られた便は、その粘着性によって溝に付着するので、特許文献4によれば、設定量の採取が可能となる。また、採便棒の本体部分の形状は、利用者が先端部分で便をなぞり易いようにするため、直線状ではなく、屈曲した形状となっている。
【0008】
更に、特許文献5は、棒状の本体部分の先端に短冊状の複数枚の板が備えられた採便棒を開示している。各板は、長辺が本体部分の長手方向に一致し、且つ、互いの面が平行となった状態で配置されている。特許文献5の採便棒では、利用者が、各板によって便をなぞると、便は、板と板との間に粘着し、採取される。なお、特許文献5に開示の採便棒を利用する場合では、利用者は、板を便に突き刺すことによっても便を採取することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−49345号公報
【特許文献2】特開平7−140139号公報
【特許文献3】特開平10−300643号公報
【特許文献4】登録実用新案第2607686号公報
【特許文献5】特開2003−43030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1〜3に開示された採便棒では、突き刺し及び引き抜きによって、貫通孔又は凹部に便が充填され、便の採取が行われるが、このとき対象物である便が柔らか過ぎたり、硬過ぎたりすると、設定量の便の採取が困難になる。また、特許文献4及び5に開示された採便棒では、便の粘着性を利用することによって、便の採取が行われるため、特に、便が硬すぎる場合に、設定量の便の採取が困難になる。
【0011】
一般的に、便の硬さは、同一人であっても一定ではない。このため、特許文献1〜特許文献5に開示された採便棒を用いた場合は、利用者にとって設定量の便の採取が困難になる可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、上記問題を解消し、対象物の硬さに影響されることなく、利用者が設定量のサンプルを簡単に採取できるようにし得る、採取用具、及びそれを用いた採取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明における採取用具は、対象物の一部を採取するための採取用具であって、一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、ことを特徴とする。
【0014】
上記特徴により、利用者が、例えば、凹部の底に設けられた開口部を対象物に接触させて採取用具を動かした場合は、対象物は、開口部の周辺の部分によって削り取られる。よって、対象物が硬いものであっても、利用者は、簡単にサンプルを取得できる。また、凹部によってサンプルを計量できるので、利用者は、サンプルの量を簡単に設定量とすることができる。
【0015】
また、対象物が軟らかく、粘着性を有する場合は、上記とは反対に、利用者は、凹部の開口を対象物に接触させて採取用具を動かすことによっても、対象物を採取できる。更に、利用者は、対象物が液体に近く、粘着性を有しない場合は、採取用具を対象物に突き刺し、対象物の一部を凹部によってすくい取ることもできる。なお、これらの場合においても、利用者は、凹部によってサンプルを計量できる。
【0016】
また、上記本発明における採取用具は、前記本体部が、一方向に延びる板状の部分を有し、前記凹部が、前記板状の部分の一方の面に設けられ、前記凹部の底に設けられた前記開口部が、前記板状の部分の他方の面に位置している、態様であるのが好ましい。この場合は、採取用具の作成を容易なものとすることができる。
【0017】
更に、上記態様では、前記凹部は、その前記底における厚みが、前記開口部に近い程、小さくなるように、形成されている、のが好ましい。この場合は、対象物の削り取りをいっそう容易なものとすることができる。
【0018】
また、上記態様では、前記板状の部分の厚みをT、前記凹部の前記底における厚みの最小値をtとしたときに、前記板状の部分の厚みTに対する、前記凹部の前記底における厚みの最小値tの比(t/T)は、0.01〜0.5に設定できる。この場合も、対象物の
削り取りをいっそう容易なものとすることができる。
【0019】
更に、上記態様では、前記板状の部分の厚みをT、前記開口部の前記一方向における長さをWとしたときに、前記板状の部分の厚みTに対する、前記開口部の前記一方向における長さWの比(W/T)は、0.5〜1.5に設定できる。この場合は、対象物をすくい取った際に、凹部の底の開口部から、すくい取った対象物が漏れてしまうのを抑制することができる。これは、対象物の表面張力を有効に利用できるようになるからである。
【0020】
上記態様では、前記本体部の前記板状の部分が、樹脂材料によって形成され、可撓性を有しているのも好ましい。この場合は、弾性力を利用して、対象物に本体部の先端を押し付けることができるため、対象物の採取を効率良く行うことが可能となる。
【0021】
また、上記本発明における採取用具は、前記凹部の底を形成する部分の断面形状が、波形状を呈している態様、又は、前記凹部の底を形成する部分の断面形状が、円弧状を呈している態様とすることができる。これらの態様では、凹部の底が対象物に食い込み易くなるため、対象物が特に硬い場合に有効である。
【0022】
また、上記目的を達成するため、本発明における第1の採取方法は、対象物の一部を採取するための方法であって、一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、前記凹部の底に設けられた前記開口部を前記対象物に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする。
【0023】
上記第1の採取方法によれば、対象物は、開口部の周辺の部分によって削り取られる。よって、対象物が硬いものであっても、利用者は、簡単にサンプルを取得できる。また、凹部によってサンプルを計量できるので、利用者は、サンプルの量を簡単に設定量とすることができる。
【0024】
更に、上記目的を達成するため、本発明における第2の採取方法は、対象物の一部を採取するための方法であって、一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、前記凹部の開口を前記対象物に向け、前記開口部を前記対象物側の反対側に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする。
【0025】
第2の採取方法によれば、少ない作業回数で設定量の便を採取することができる。また、第2の採取方法においても、利用者は、サンプルの量を簡単に設定量とすることができる。
【0026】
また、上記目的を達成するため、本発明における第3の採取方法は、対象物の一部を採取するための方法であって、一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、前記採取用具の前記先端部分を前記対象物に突き刺し、その後、前記採取用具を前記対象物から抜きとる際に、前記対象物の一部を前記凹部ですくい取ることによって採取する、ことを特徴とする。
【0027】
第3の採取方法は、特に、対象物が柔らかすぎて粘着性に乏しい場合、言い換えれば、対象物が液状に近い場合に有用である。また、第3の採取方法においても、利用者は、サンプルの量を簡単に設定量とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明における採取用具及び採取方法によれば、対象物の硬さに影響されることなく、利用者は設定量のサンプルを簡単に採取できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における採取用具の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した採取用具の一部を示す断面図である。図2に示す断面は、図1中の切断線A−A´に沿って切断して得られる断面である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、図1に示した採取用具の第1の使用方法を示す図である。このうち、図3(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図3(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、図1に示した採取用具の第2の使用方法を示す図である。このうち、図4(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図4(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、図1に示した採取用具の第3の使用方法を示す図である。このうち、図5(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図5(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例を示す斜視図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、それぞれ、凹部の底面の断面形状のバリエーションを示す断面図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、それぞれ、凹部の底面の形状のバリケーションを示す斜視図であり、本体部の一部分は断面によって示されている。
【図9】図9は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第1例を示す斜視図である。
【図10】図10は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第2例を示す斜視図である。
【図11】図11は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第3例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における採取用具及び採取方法について、図1〜図8を参照しながら説明する。最初に、図1及び図2を用いて、本実施の形態における採取用具の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態における採取用具の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示した採取用具の一部を示す断面図である。図2に示す断面は、図1中の切断線A−A´に沿って切断して得られる断面である。
【0031】
図1に示す本実施の形態における採取用具1は、対象物の一部を採取するための採取用具である。本実施の形態では、対象物としては、便が想定されており、採取用具1は、検便用の便のサンプル採取に用いることができる。以降においては、対象物が便であるとして説明を行う。
【0032】
図1及び図2に示すように、採取用具1は、一方向に延びる本体部2と、本体部2の先端部分に設けられた凹部3とを備えている。また、凹部3の底4の一部分には、開口部5が設けられている。本実施の形態では、開口部5は、その開口縁が凹部3の基端側の壁面と一致するように設けられている。なお、開口部5の位置は、限定されるものではなく、開口部5は、凹部3の底4における中央部分や先端側の部分に設けられていても良い。但し、後述する使用方法の点から、開口部5の位置は、図1及び図2の例に示すように、凹部3の底4における基端側の部分に設けられているのが好ましい。
【0033】
また、後述する図3(b)、図4(b)、図5(b)に示すように、本体部2において、利用者が使用時に保持する側を「基端側」とし、便に接触する側を先端側とする。先端部分とは、本体部2において、使用時に、便に接触することが予想される部分をいう。
【0034】
本実施の形態では、本体部2は、一方向に延びる板状の部分を有している。具体的には、本体部2は、細長い板状に形成されている。そして、図1及び図2に示すように、凹部3は、板状の部分の一方の面2aに設けられ、凹部3の底4に設けられた開口部5は、板状の部分の他方の面2bに位置している。
【0035】
また、本実施の形態では、図1及び図2に示すように、凹部3は、その底4における厚みが、開口部5に近い程、小さくなるように、形成されている。具体的には、図2に示すように、凹部3の底面には、開口部5に向かって下がる傾斜がつけられている。そして、開口部5の縁を形作っている部分4aは、厚みが薄くなっており、鉋の刃のように構成されている。これは、後述する使用方法を実行した場合に、簡単にサンプルを削りとることができるようにするためである。この点については後述する。
【0036】
更に、本実施の形態では、本体部2に可撓性を付与するため、本体部2は、樹脂材料によって形成されているのが好ましい。具体的には、本体部2の形成材料としては、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩化ビニール樹脂等が挙げられる。このように、本体部2が可撓性を有してれば、弾性力を利用して、対象物に本体部2の先端部分(凹部3が設けられた部分)を押し付けることができ、サンプルの採取効率を高めることができるからである。なお、この点についても後述する。
【0037】
また、本実施の形態では、凹部3の容積は、採取が求められる量に設定されており、凹部3がいっぱいになるように採取を行えば、採取量は設定量となる。このような構成により、採取用具1を用いれば、利用者は、対象物、即ち、便の硬さに影響されることなく、設定量のサンプルを簡単に採取することができる。この点について、採取用具1の使用方法と共に以下に説明する。
【0038】
本実施の形態における採取用具1の使用方法について図3〜図5を用いて説明する。本実施の形態における採取用具1には、以下に示すように三つの使用方法がある。また、本実施の形態における採取方法は、採取用具1を使用することによって実施される。よって、以下に示す三つの使用方法は、それぞれ、本実施の形態における採取方法に相当する。
【0039】
先ず、図3を用いて第1の使用方法(第1の採取方法)について説明する。図3(a)及び図3(b)は、図1に示した採取用具の第1の使用方法を示す図である。このうち、図3(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図3(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【0040】
図3(a)及び(b)に示すように、第1の使用方法では、先ず、利用者20は、凹部3の底に設けられた開口部5を便10に向けた状態で、採取用具1における、凹部3が設けられていない側(基端側)の部分を保持する。次に、利用者20は、凹部3の底に設けられた開口部5を便10に接触させた状態で、採取用具1を、手元に引き寄せるように動かす。
【0041】
これにより、便10の一部10aは、開口部5の縁を形作っている部分4aによって剪断される。このとき、利用者20は、図3(b)に示すように、本体部2を撓ませるのが好ましい。この場合、本体部2の先端部分は、本体部2の弾性力によって便10に確実に
押し付けられるので、便10の一部は、確実に開口部5へと導かれる。
【0042】
このように、第1の使用方法では、採取用具1は、開口部5を形作っている部分4aを刃とする鉋のように機能し、便10を削り取ることができる。第1の使用方法は、便の硬さの程度に関係なく利用できるが、特に、便が硬い場合に有用である。また、便10の削り取りを、凹部3内がいっぱいになるまで行うことで、設定量の便10の採取が達成される。
【0043】
また、図2に示すように、板状の部分の厚みをT、凹部3の底4における厚みの最小値をtとすると、板状の部分の厚みTに対する、底4における厚みの最小値tの比(t/T)は、0.01〜0.5、特には、0.05〜0.1に設定されているのが好ましい。
【0044】
このような設定を行った場合は、便を削り取る機能を有効に発揮させることが可能となる。なお、底4における厚みの最小値tが小さい程、便を剪断する能力は向上するが、部分4aが摩耗したり、欠損したりする可能性が高まる。tの値の設定は、摩耗や欠損を考慮して行うのが好ましい。
【0045】
また、第2の使用方法(第2の採取方法)は、図4に示す通りである。図4(a)及び図4(b)は、図1に示した採取用具の第2の使用方法を示す図である。このうち、図4(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図4(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【0046】
図4(a)及び(b)に示すように、第2の使用方法では、先ず、利用者20は、第1の使用方法とは反対に、凹部3の開口を便10に向け、開口部5を便側の反対側に向けた状態で、採取用具1の基端側の部分を保持する。次に、利用者は、凹部3の中に便10を侵入させた状態で、採取用具1を、手元に引き寄せるように動かす。
【0047】
これにより、便10の一部10aは、凹部3の開口の縁で剪断されながら、凹部3の中に充填される。このとき、凹部3が便10でいっぱいになるようにすれば、採取された便10の量は設定量となる。また、第2の使用方法でも、利用者20は、図4(b)に示すように、本体部2を撓ませるのが好ましい。この場合、本体部2の先端部分は、本体部2の弾性力によって便10に確実に押し付けられるので、便10の一部10aは、確実に凹部3の開口からその中へと導かれる。
【0048】
このように、第2の使用方法では、便10は、第1の使用方法と異なり、凹部3の中に、その開口を介して直接充填される。このため、第2の使用方法によれば、少ない作業回数で設定量の便を採取することができる。但し、第2の使用方法は、対象となる便10が硬すぎない場合に有用となる。便10が硬すぎて、その粘着性が乏しい場合は、凹部3内への充填が困難となるからである。
【0049】
更に、第3の使用方法(第3の採取方法)は、図5に示す通りである。図5(a)及び図5(b)は、図1に示した採取用具の第3の使用方法を示す図である。このうち、図5(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図5(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【0050】
図5(a)及び(b)に示すように、第3の使用方法では、利用者20は、第1の使用方法と同様に、凹部3の底に設けられた開口部5を便10に向けた状態で、採取用具1の基端側の部分を保持する。次に、図5(b)に示すように、利用者20は、第1の使用方法と異なり、採取用具1の先端部分を便10に突き刺す。そして、利用者20は、図5(a)に示すように、採取用具1を便10から抜き取る際に、凹部3によって便10の一部
10aをすくい取る。
【0051】
このように、第3の使用方法では、便10をすくい取ることによって、便10の採取が行われている。第3の使用方法は、特に、便10が柔らかすぎて粘着性に乏しい場合、言い換えれば、便10が液状に近い場合に有用である。また、第3の使用方法においても、第2の使用方法と同様に、凹部3が便10でいっぱいになるようにすれば、採取された便10の量は設定量となる。
【0052】
また、第3の使用方法を利用する場合は、すくい取った便10が、その表面張力によって、凹部3の底の開口部5から漏れてしまわないようにするため、開口部5の大きさを適切に設定するのが好ましい。具体的には、図2に示すように、開口部5の一方向(本体部2の長手方向)における長さをWとすると、板状の部分の厚みTに対する開口部5の長さWの比(W/T)が、0.5〜1.5に設定されているのが好ましい。また、具体的な数値で表すと、長さWは、0.5mm〜1.5mm程度に設定されているのが好ましい。
【0053】
また、本実施の形態では、第3の使用方法による便10への突き刺しを容易にするため、本体部2の先端は、尖った形状に形成されている。但し、本実施の形態は、これに限定されるものではなく、本体部2の先端は、他の形状、例えば、平な形状、又は丸い形状に形成されていても良い。
【0054】
以上の構成により、本実施の形態における採取用具1によれば、利用者20は、上述したように、対象物、即ち、便の硬さに影響されることなく、設定量のサンプルを簡単に採取することができる。
【0055】
また、本実施の形態における採取用具1は、図6に示す構成とすることもできる。図6は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例を示す斜視図である。図6の例では、開口部3の開口形状が三角形状となっており、この点で、図1に示した例と異なっている。本実施の形態では、開口部3の開口形状は特に限定されるものではない。
【0056】
更に、図1及び図2に示したように、本実施の形態では、凹部3の底面に傾斜が設けられ、開口部5の縁を形作っている部分4aの厚みが薄くなっているが、凹部3の底4の形状はこれに限定されるものではない。
【0057】
凹部3の底の形状のバリエーションについて図7及び図8を用いて以下に説明する。図7(a)〜(c)は、それぞれ、凹部の底面の断面形状のバリエーションを示す断面図である。図8(a)〜(c)は、それぞれ、凹部の底面の形状のバリケーションを示す斜視図であり、本体部の一部分は断面によって示されている。
【0058】
図7(a)の例では、凹部3の底4に傾斜は設けられておらず、底4は平に形成されている。このため、図7(a)の例では、傾斜していない分、図2に示した例よりも、凹部の容量を増加させることができる。つまり、図7(a)に示した例によれば、凹部3の開口広さを図2に示した例と同等としながら、採取できる対象物(便)の量を増加させることができる。
【0059】
また、図7(b)の例では、開口部5の縁を形作っている部分4aが、曲面状に形成されているため、採取された対象物が開口部5で引っかかってしまう事態の発生を抑制できる。つまり、図2に示した例では、部分4aの図中上側にエッジが形成されているため、開口部5から入った対象物がこのエッジに引っかかってしまう場合がある。
【0060】
これに対して、図7(b)の例では、図2に示した例と異なり、部分4aの図中上側に
曲面が形成されているため、開口部5から入った対象物が部分4aで引っかかり難くなっている。よって、図7(b)の例によれば、開口部5から入った対象物は、スムーズに部分4aの図中上側へと追いやられるので、採取された対象物が開口部5で引っかかってしまう事態の発生が抑制される。
【0061】
更に、図7(c)の例では、凹部3の底面と側面とが、曲面4bによって接続され、これらは連続した面を構成している。このため、図7(c)の例では、図2に示した例と異なり、凹部3から、採取された対象物を取り出す際に、角に収まった一部の対象物が取り出せない事態を回避することができる。
【0062】
つまり、図2の例では、凹部3の底面と側面とが角をなしているため、両者の境界部分に収まってしまった対象物を全て取り切るのは困難であり、取り出させなかった対象物は損失した状態となる。これに対して、図7(c)の例では、曲面4bにより、採取された全ての対象物を容易に取り切ることができる。
【0063】
また、図8(a)〜図8(c)に示された例のうち、図8(a)の例は、図1及び図2に示した凹部3を示している。図8(a)の例では、凹部3の底面4cは傾斜しているが、平面となっている。
【0064】
これに対して、図8(b)の例では、凹部3は、その底4を形成する部分の断面形状が波形状を呈するように形成されている。よって、図8(b)の例では、凹部3の底面4cには、本体部2の長手方向に延びる複数条の突起6が設けられ、部分4aの形状は波形となる。このため、図8(b)の例では、図8(a)に示した例に比べて、部分4aが対象物に引っ掛かり易く、凹部4の底4は、対象物に食い込みやすい形状となっている。図8(b)の例は、対象物が、特に硬い場合に有効である。なお、図8(b)において、断面形状とは、本体部2の長手方向に垂直な断面の形状をいう。
【0065】
また、図8(c)の例では、凹部3は、その底4を形成する部分の断面形状が円弧状を呈するように形成されている。よって、図8(c)の例では、開口部5の縁を形作っている部分4aの形状は、部分4aを本体部2の長手方向から見たときに円弧状となる。更に、この円弧は、開口部5側に凸となっている。このため、図8(c)の例においても、図8(b)の例と同様に、部分4aが対象物に引っ掛かり易く、凹部4の底4は、対象物に食い込みやすい形状となっている。図8(c)の例も、対象物が、特に硬い場合に有効である。なお、図8(c)においても、断面形状とは、本体部2の長手方向に垂直な断面の形状をいう。
【0066】
ところで、一般に、検便においては、便の複数箇所から、又は排便された日付が異なる複数の便から、複数のサンプルを採取することが求められており、一回の検便には、複数本の採取用具が必要となる。この場合において、一回の検便で利用される複数本の採取用具が互いに連結できるように構成されていると、利用者にとって便利である。このため、本実施の形態においては、採取用具に、他の採取用具との連結を可能にする構造を付与することができる。このような構造が付与された採取用具を図9〜図11を用いて説明する。
【0067】
図9は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第1例を示す斜視図である。図9の例では、採取用具30と採取用具32とが、互いに連結できるように構成されている。
【0068】
図9に示すように、採取用具30及び採取用具32は、共に板状の本体部2を備えている。また、採取用具30及び32は、サンプルを採取するための凹部3を備え、各凹部3
の底4には開口部5が設けられている。採取された便は、各採取用具の凹部3に充填される。
【0069】
また、採取用具30は、本体部2の基端側の部分に、本体部2を厚み方向に貫通する二つの貫通孔31を備えている。一方、採取用具31は、本体部2の基端側の部分に、各貫通孔31に対応する二つの突起33を備えている。
【0070】
このような構成により、利用者は、採取用具30と採取用具31とを重ね合わせ、各貫通孔31に、対応する突起33を挿通させれば、採取用具30と採取用具31とを連結することができる。
【0071】
また、図9の例において、突起33は、採取用具32の一方の面2a上にのみ形成されているが、一方の面2aと他方の面2bとの両面に形成されていても良い。この場合、採取用具32と二つの採取用具30とを連結することができる。
【0072】
図10(a)及び(b)は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第2例を示す図である。このうち、図10(a)は、各採取用具を示す斜視図であり、図10(b)は、連結状態にある採取用具を示す平面図である。図10(a)及び(b)に示す例では、採取用具34と採取用具36とが、互いに連結できるように構成されている。
【0073】
図10(a)に示すように、採取用具34及び採取用具36は、共に板状の本体部2を備えている。また、採取用具34及び36は、サンプルを採取するための凹部3を備え、各凹部3の底4には開口部5が設けられている。採取された便は、各採取用具の凹部3に充填される。
【0074】
また、採取用具34は、本体部2の先端部分の基端側に、開口形状が矩形の貫通孔35を備えている。一方、採取用具34は、本体部2の先端部分の基端側に、貫通孔35に挿入可能な突起37を備えている。突起37は、円柱状の軸部37bと、採取用具36の本体部2の面方向に沿って突出する傘状部37aとを備えている。また、傘状部37aの形状は、貫通孔35の開口形状に整合する形状となっている。
【0075】
このような構成により、利用者は、採取用具36の傘状部37aを採取用具34の貫通孔35に整合させ、この状態で傘状部37aを貫通孔35に挿通させ、採取用具34と採取用具36とを重ね合わせれば、これらを連結することができる。
【0076】
また、採取用具34において、貫通孔37の長手方向は、本体部2の長手方向に対して傾斜している。一方、採取用具36において、傘状部37aの長手方向は、本体部2の長手方向と一致している。従って、採取用具34と採取用具36とを重ね合わせた後、両者を、軸37aを中心として回転させ、互いに平行な状態とすると、採取用具36の傘状部37aは、採取用具34の本体部2に引っかかった状態となり、両者の連結は強固なものとなる。
【0077】
ところで、例えば、採取用具36において、採取された便の量が多く、便が凹部3からとび出ているとする。この場合、余分な便を除去する必要があるが、図10(b)に示すように、採取用具34又は36を軸37b(図10(a)参照)を中心に回転させると、余分な便は採取用具34によってそぎ落とされる。図10(a)及び(b)の例によれば、凹部3から飛び出た余分な便を簡単に除去することができる。
【0078】
図11は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第3例を示
す斜視図である。図11の例では、採取用具38と採取用具41とが、互いに連結できるように構成されている。
【0079】
図11に示すように、採取用具38及び41は、共に板状の本体部2を備えている。また、採取用具38及び41は、サンプルを採取するための凹部3を備え、各凹部3の底4には開口部5が設けられている。採取された便は、各採取用具の凹部3に充填される。
【0080】
また、採取用具38は、本体部2の基端側の部分に、厚みが他の部分よりも厚くなるように形成された厚肉部39を備えている。更に、厚肉部39には、本体部2の幅方向に沿って溝40が設けられている。
【0081】
一方、採取用具41は、本体部2の基端側の部分に、本体部2の幅方向に沿って延びる突起42a及び42bを備えている。突起42a及び42bは、溝40に嵌合可能となるように形成されている。また、突起42a及び42bは、本体部2の両方の面にそれぞれ設けられている。
【0082】
このような構成により、利用者は、採取用具38の溝40の端を、採取用具41の突起42a又は42bの端に整合させ、その状態で、採取用具38を幅方向(図11中において矢印で示す方向)に沿ってスライドさせれば、これらを連結することができる。
【0083】
また、図11の例では、採取用具41の基端側の部分には、連結後に厚肉部39を囲む収納部43が設けられている。収納部43は、図11において矢印で示した方向への採取用具38のスライドによる連結を妨げないように形成されているが、矢印で示した方向と対向する位置には壁43aを備えている。このため、採取用具38がスライドし過ぎて不用意に連結が解除されないようになっている。
【0084】
更に、図11の例において、採取用具38において、採取された便の量が多く、便が凹部3からとび出ているとする。この場合、余分な便を除去する必要があるが、溝40を突起42aに整合させて、採取用具38を上述したようにスライドさせれば、採取用具38の余分な便は、採取用具41によってそぎ落とされる。
【0085】
また、採取用具41において、便が凹部3からとび出ている場合は、溝40を突起42bに整合させて、採取用具38を上述したようにスライドさせれば良い。この場合は、採取用具41の余分な便は、採取用具38によってそぎ落とされる。図11の例によれば、凹部3から飛び出た余分な便を簡単に除去することができる。
【0086】
なお、以上の説明では、上述したように、サンプルの採取対象となる対象物が便である場合について述べているが、本実施の形態では、対象物は便のみに限定されず、以下のものを対象物とすることもできる。具体的には、生体に関連する他の対象物としては、生体の粘膜、皮膚の角質、細胞等が挙げられる。また、対象物は、生体に関連する物に限定されず、土壌、食品、化粧品等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明によれば、対象物の硬さに影響されることなく、利用者は設定量のサンプルを簡単に採取できるようになる。本発明は、分析対象物からのサンプルの採取に用いられる採取用具に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 採取用具
2 本体部
2a、2b 本体部の主面
3 凹部
4 凹部の底
4a 凹部の底の開口部を形作る部分
4b 底面と側面とをつなぐ曲面
4c 底面
5 開口部
10 対象物(便)
10a 対象物(便)の一部
20 利用者
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象物からサンプルを採取するための採取用具、それを用いた採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療の分野では、生体の検査のために、生体の一部、及び排泄物がサンプルとして採取され、サンプルに対して種々の分析が行われている。代表的な生体の検査としては、例えば、「検便」が知られている。
【0003】
検便では、排泄された便から設定量が、サンプルとして採取される。そして、このとき、サンプル採取用具として、いわゆる「採便棒」が用いられる。また、採便棒としては、便の採取を容易にするため、種々の採便棒が開発され、実用化されている(特許文献1〜特許文献5参照。)。
【0004】
例えば、特許文献1及び2は、短冊状の基板によって構成された採便棒を開示している。この採便棒の先端部分には、それを厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられている。また、基板は、糞便に突き刺すことが可能な程度の剛性を有している。特許文献1及び2に開示された採便棒を利用する場合は、利用者は、採便棒を糞便に突き刺し、その後、引き抜くだけで良い。この行為により、貫通孔には、設定量の便が充填されるので、設定量の便の採取が可能となる。
【0005】
また、特許文献3は、便に突き刺す部分が丸棒状に形成された採便棒を開示している。この採便棒では、先端部分の側面に凹部が設けられている。この構成により、利用者は、特許文献3に開示された採便棒を利用する場合も、採便棒を糞便に突き刺し、その後、引き抜くだけで良い。この場合は、凹部に、設定量の便が充填される。
【0006】
更に、上記した特許文献1〜3に開示した採便棒では、便にそれを突き刺すことによって、便の採取が行われているのに対して、特許文献4及び5に開示された採便棒では、これらとは異なる手法によって便の採取がおこなわれる。
【0007】
特許文献4は、先端部分で便をなぞることによって便を採取する採便棒を開示している。この採便棒の先端部分には、棒の周方向に沿って複数条の溝が設けられており、この溝によって、便は掻き取られる。掻き取られた便は、その粘着性によって溝に付着するので、特許文献4によれば、設定量の採取が可能となる。また、採便棒の本体部分の形状は、利用者が先端部分で便をなぞり易いようにするため、直線状ではなく、屈曲した形状となっている。
【0008】
更に、特許文献5は、棒状の本体部分の先端に短冊状の複数枚の板が備えられた採便棒を開示している。各板は、長辺が本体部分の長手方向に一致し、且つ、互いの面が平行となった状態で配置されている。特許文献5の採便棒では、利用者が、各板によって便をなぞると、便は、板と板との間に粘着し、採取される。なお、特許文献5に開示の採便棒を利用する場合では、利用者は、板を便に突き刺すことによっても便を採取することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−49345号公報
【特許文献2】特開平7−140139号公報
【特許文献3】特開平10−300643号公報
【特許文献4】登録実用新案第2607686号公報
【特許文献5】特開2003−43030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1〜3に開示された採便棒では、突き刺し及び引き抜きによって、貫通孔又は凹部に便が充填され、便の採取が行われるが、このとき対象物である便が柔らか過ぎたり、硬過ぎたりすると、設定量の便の採取が困難になる。また、特許文献4及び5に開示された採便棒では、便の粘着性を利用することによって、便の採取が行われるため、特に、便が硬すぎる場合に、設定量の便の採取が困難になる。
【0011】
一般的に、便の硬さは、同一人であっても一定ではない。このため、特許文献1〜特許文献5に開示された採便棒を用いた場合は、利用者にとって設定量の便の採取が困難になる可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、上記問題を解消し、対象物の硬さに影響されることなく、利用者が設定量のサンプルを簡単に採取できるようにし得る、採取用具、及びそれを用いた採取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明における採取用具は、対象物の一部を採取するための採取用具であって、一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、ことを特徴とする。
【0014】
上記特徴により、利用者が、例えば、凹部の底に設けられた開口部を対象物に接触させて採取用具を動かした場合は、対象物は、開口部の周辺の部分によって削り取られる。よって、対象物が硬いものであっても、利用者は、簡単にサンプルを取得できる。また、凹部によってサンプルを計量できるので、利用者は、サンプルの量を簡単に設定量とすることができる。
【0015】
また、対象物が軟らかく、粘着性を有する場合は、上記とは反対に、利用者は、凹部の開口を対象物に接触させて採取用具を動かすことによっても、対象物を採取できる。更に、利用者は、対象物が液体に近く、粘着性を有しない場合は、採取用具を対象物に突き刺し、対象物の一部を凹部によってすくい取ることもできる。なお、これらの場合においても、利用者は、凹部によってサンプルを計量できる。
【0016】
また、上記本発明における採取用具は、前記本体部が、一方向に延びる板状の部分を有し、前記凹部が、前記板状の部分の一方の面に設けられ、前記凹部の底に設けられた前記開口部が、前記板状の部分の他方の面に位置している、態様であるのが好ましい。この場合は、採取用具の作成を容易なものとすることができる。
【0017】
更に、上記態様では、前記凹部は、その前記底における厚みが、前記開口部に近い程、小さくなるように、形成されている、のが好ましい。この場合は、対象物の削り取りをいっそう容易なものとすることができる。
【0018】
また、上記態様では、前記板状の部分の厚みをT、前記凹部の前記底における厚みの最小値をtとしたときに、前記板状の部分の厚みTに対する、前記凹部の前記底における厚みの最小値tの比(t/T)は、0.01〜0.5に設定できる。この場合も、対象物の
削り取りをいっそう容易なものとすることができる。
【0019】
更に、上記態様では、前記板状の部分の厚みをT、前記開口部の前記一方向における長さをWとしたときに、前記板状の部分の厚みTに対する、前記開口部の前記一方向における長さWの比(W/T)は、0.5〜1.5に設定できる。この場合は、対象物をすくい取った際に、凹部の底の開口部から、すくい取った対象物が漏れてしまうのを抑制することができる。これは、対象物の表面張力を有効に利用できるようになるからである。
【0020】
上記態様では、前記本体部の前記板状の部分が、樹脂材料によって形成され、可撓性を有しているのも好ましい。この場合は、弾性力を利用して、対象物に本体部の先端を押し付けることができるため、対象物の採取を効率良く行うことが可能となる。
【0021】
また、上記本発明における採取用具は、前記凹部の底を形成する部分の断面形状が、波形状を呈している態様、又は、前記凹部の底を形成する部分の断面形状が、円弧状を呈している態様とすることができる。これらの態様では、凹部の底が対象物に食い込み易くなるため、対象物が特に硬い場合に有効である。
【0022】
また、上記目的を達成するため、本発明における第1の採取方法は、対象物の一部を採取するための方法であって、一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、前記凹部の底に設けられた前記開口部を前記対象物に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする。
【0023】
上記第1の採取方法によれば、対象物は、開口部の周辺の部分によって削り取られる。よって、対象物が硬いものであっても、利用者は、簡単にサンプルを取得できる。また、凹部によってサンプルを計量できるので、利用者は、サンプルの量を簡単に設定量とすることができる。
【0024】
更に、上記目的を達成するため、本発明における第2の採取方法は、対象物の一部を採取するための方法であって、一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、前記凹部の開口を前記対象物に向け、前記開口部を前記対象物側の反対側に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする。
【0025】
第2の採取方法によれば、少ない作業回数で設定量の便を採取することができる。また、第2の採取方法においても、利用者は、サンプルの量を簡単に設定量とすることができる。
【0026】
また、上記目的を達成するため、本発明における第3の採取方法は、対象物の一部を採取するための方法であって、一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、前記採取用具の前記先端部分を前記対象物に突き刺し、その後、前記採取用具を前記対象物から抜きとる際に、前記対象物の一部を前記凹部ですくい取ることによって採取する、ことを特徴とする。
【0027】
第3の採取方法は、特に、対象物が柔らかすぎて粘着性に乏しい場合、言い換えれば、対象物が液状に近い場合に有用である。また、第3の採取方法においても、利用者は、サンプルの量を簡単に設定量とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明における採取用具及び採取方法によれば、対象物の硬さに影響されることなく、利用者は設定量のサンプルを簡単に採取できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における採取用具の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した採取用具の一部を示す断面図である。図2に示す断面は、図1中の切断線A−A´に沿って切断して得られる断面である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、図1に示した採取用具の第1の使用方法を示す図である。このうち、図3(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図3(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、図1に示した採取用具の第2の使用方法を示す図である。このうち、図4(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図4(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、図1に示した採取用具の第3の使用方法を示す図である。このうち、図5(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図5(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例を示す斜視図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、それぞれ、凹部の底面の断面形状のバリエーションを示す断面図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、それぞれ、凹部の底面の形状のバリケーションを示す斜視図であり、本体部の一部分は断面によって示されている。
【図9】図9は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第1例を示す斜視図である。
【図10】図10は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第2例を示す斜視図である。
【図11】図11は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第3例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における採取用具及び採取方法について、図1〜図8を参照しながら説明する。最初に、図1及び図2を用いて、本実施の形態における採取用具の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態における採取用具の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示した採取用具の一部を示す断面図である。図2に示す断面は、図1中の切断線A−A´に沿って切断して得られる断面である。
【0031】
図1に示す本実施の形態における採取用具1は、対象物の一部を採取するための採取用具である。本実施の形態では、対象物としては、便が想定されており、採取用具1は、検便用の便のサンプル採取に用いることができる。以降においては、対象物が便であるとして説明を行う。
【0032】
図1及び図2に示すように、採取用具1は、一方向に延びる本体部2と、本体部2の先端部分に設けられた凹部3とを備えている。また、凹部3の底4の一部分には、開口部5が設けられている。本実施の形態では、開口部5は、その開口縁が凹部3の基端側の壁面と一致するように設けられている。なお、開口部5の位置は、限定されるものではなく、開口部5は、凹部3の底4における中央部分や先端側の部分に設けられていても良い。但し、後述する使用方法の点から、開口部5の位置は、図1及び図2の例に示すように、凹部3の底4における基端側の部分に設けられているのが好ましい。
【0033】
また、後述する図3(b)、図4(b)、図5(b)に示すように、本体部2において、利用者が使用時に保持する側を「基端側」とし、便に接触する側を先端側とする。先端部分とは、本体部2において、使用時に、便に接触することが予想される部分をいう。
【0034】
本実施の形態では、本体部2は、一方向に延びる板状の部分を有している。具体的には、本体部2は、細長い板状に形成されている。そして、図1及び図2に示すように、凹部3は、板状の部分の一方の面2aに設けられ、凹部3の底4に設けられた開口部5は、板状の部分の他方の面2bに位置している。
【0035】
また、本実施の形態では、図1及び図2に示すように、凹部3は、その底4における厚みが、開口部5に近い程、小さくなるように、形成されている。具体的には、図2に示すように、凹部3の底面には、開口部5に向かって下がる傾斜がつけられている。そして、開口部5の縁を形作っている部分4aは、厚みが薄くなっており、鉋の刃のように構成されている。これは、後述する使用方法を実行した場合に、簡単にサンプルを削りとることができるようにするためである。この点については後述する。
【0036】
更に、本実施の形態では、本体部2に可撓性を付与するため、本体部2は、樹脂材料によって形成されているのが好ましい。具体的には、本体部2の形成材料としては、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩化ビニール樹脂等が挙げられる。このように、本体部2が可撓性を有してれば、弾性力を利用して、対象物に本体部2の先端部分(凹部3が設けられた部分)を押し付けることができ、サンプルの採取効率を高めることができるからである。なお、この点についても後述する。
【0037】
また、本実施の形態では、凹部3の容積は、採取が求められる量に設定されており、凹部3がいっぱいになるように採取を行えば、採取量は設定量となる。このような構成により、採取用具1を用いれば、利用者は、対象物、即ち、便の硬さに影響されることなく、設定量のサンプルを簡単に採取することができる。この点について、採取用具1の使用方法と共に以下に説明する。
【0038】
本実施の形態における採取用具1の使用方法について図3〜図5を用いて説明する。本実施の形態における採取用具1には、以下に示すように三つの使用方法がある。また、本実施の形態における採取方法は、採取用具1を使用することによって実施される。よって、以下に示す三つの使用方法は、それぞれ、本実施の形態における採取方法に相当する。
【0039】
先ず、図3を用いて第1の使用方法(第1の採取方法)について説明する。図3(a)及び図3(b)は、図1に示した採取用具の第1の使用方法を示す図である。このうち、図3(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図3(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【0040】
図3(a)及び(b)に示すように、第1の使用方法では、先ず、利用者20は、凹部3の底に設けられた開口部5を便10に向けた状態で、採取用具1における、凹部3が設けられていない側(基端側)の部分を保持する。次に、利用者20は、凹部3の底に設けられた開口部5を便10に接触させた状態で、採取用具1を、手元に引き寄せるように動かす。
【0041】
これにより、便10の一部10aは、開口部5の縁を形作っている部分4aによって剪断される。このとき、利用者20は、図3(b)に示すように、本体部2を撓ませるのが好ましい。この場合、本体部2の先端部分は、本体部2の弾性力によって便10に確実に
押し付けられるので、便10の一部は、確実に開口部5へと導かれる。
【0042】
このように、第1の使用方法では、採取用具1は、開口部5を形作っている部分4aを刃とする鉋のように機能し、便10を削り取ることができる。第1の使用方法は、便の硬さの程度に関係なく利用できるが、特に、便が硬い場合に有用である。また、便10の削り取りを、凹部3内がいっぱいになるまで行うことで、設定量の便10の採取が達成される。
【0043】
また、図2に示すように、板状の部分の厚みをT、凹部3の底4における厚みの最小値をtとすると、板状の部分の厚みTに対する、底4における厚みの最小値tの比(t/T)は、0.01〜0.5、特には、0.05〜0.1に設定されているのが好ましい。
【0044】
このような設定を行った場合は、便を削り取る機能を有効に発揮させることが可能となる。なお、底4における厚みの最小値tが小さい程、便を剪断する能力は向上するが、部分4aが摩耗したり、欠損したりする可能性が高まる。tの値の設定は、摩耗や欠損を考慮して行うのが好ましい。
【0045】
また、第2の使用方法(第2の採取方法)は、図4に示す通りである。図4(a)及び図4(b)は、図1に示した採取用具の第2の使用方法を示す図である。このうち、図4(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図4(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【0046】
図4(a)及び(b)に示すように、第2の使用方法では、先ず、利用者20は、第1の使用方法とは反対に、凹部3の開口を便10に向け、開口部5を便側の反対側に向けた状態で、採取用具1の基端側の部分を保持する。次に、利用者は、凹部3の中に便10を侵入させた状態で、採取用具1を、手元に引き寄せるように動かす。
【0047】
これにより、便10の一部10aは、凹部3の開口の縁で剪断されながら、凹部3の中に充填される。このとき、凹部3が便10でいっぱいになるようにすれば、採取された便10の量は設定量となる。また、第2の使用方法でも、利用者20は、図4(b)に示すように、本体部2を撓ませるのが好ましい。この場合、本体部2の先端部分は、本体部2の弾性力によって便10に確実に押し付けられるので、便10の一部10aは、確実に凹部3の開口からその中へと導かれる。
【0048】
このように、第2の使用方法では、便10は、第1の使用方法と異なり、凹部3の中に、その開口を介して直接充填される。このため、第2の使用方法によれば、少ない作業回数で設定量の便を採取することができる。但し、第2の使用方法は、対象となる便10が硬すぎない場合に有用となる。便10が硬すぎて、その粘着性が乏しい場合は、凹部3内への充填が困難となるからである。
【0049】
更に、第3の使用方法(第3の採取方法)は、図5に示す通りである。図5(a)及び図5(b)は、図1に示した採取用具の第3の使用方法を示す図である。このうち、図5(a)は凹部付近を拡大して示す断面図であり、図5(b)は採取用具の全体を示す説明図である。
【0050】
図5(a)及び(b)に示すように、第3の使用方法では、利用者20は、第1の使用方法と同様に、凹部3の底に設けられた開口部5を便10に向けた状態で、採取用具1の基端側の部分を保持する。次に、図5(b)に示すように、利用者20は、第1の使用方法と異なり、採取用具1の先端部分を便10に突き刺す。そして、利用者20は、図5(a)に示すように、採取用具1を便10から抜き取る際に、凹部3によって便10の一部
10aをすくい取る。
【0051】
このように、第3の使用方法では、便10をすくい取ることによって、便10の採取が行われている。第3の使用方法は、特に、便10が柔らかすぎて粘着性に乏しい場合、言い換えれば、便10が液状に近い場合に有用である。また、第3の使用方法においても、第2の使用方法と同様に、凹部3が便10でいっぱいになるようにすれば、採取された便10の量は設定量となる。
【0052】
また、第3の使用方法を利用する場合は、すくい取った便10が、その表面張力によって、凹部3の底の開口部5から漏れてしまわないようにするため、開口部5の大きさを適切に設定するのが好ましい。具体的には、図2に示すように、開口部5の一方向(本体部2の長手方向)における長さをWとすると、板状の部分の厚みTに対する開口部5の長さWの比(W/T)が、0.5〜1.5に設定されているのが好ましい。また、具体的な数値で表すと、長さWは、0.5mm〜1.5mm程度に設定されているのが好ましい。
【0053】
また、本実施の形態では、第3の使用方法による便10への突き刺しを容易にするため、本体部2の先端は、尖った形状に形成されている。但し、本実施の形態は、これに限定されるものではなく、本体部2の先端は、他の形状、例えば、平な形状、又は丸い形状に形成されていても良い。
【0054】
以上の構成により、本実施の形態における採取用具1によれば、利用者20は、上述したように、対象物、即ち、便の硬さに影響されることなく、設定量のサンプルを簡単に採取することができる。
【0055】
また、本実施の形態における採取用具1は、図6に示す構成とすることもできる。図6は、本発明の実施の形態における採取用具の他の例を示す斜視図である。図6の例では、開口部3の開口形状が三角形状となっており、この点で、図1に示した例と異なっている。本実施の形態では、開口部3の開口形状は特に限定されるものではない。
【0056】
更に、図1及び図2に示したように、本実施の形態では、凹部3の底面に傾斜が設けられ、開口部5の縁を形作っている部分4aの厚みが薄くなっているが、凹部3の底4の形状はこれに限定されるものではない。
【0057】
凹部3の底の形状のバリエーションについて図7及び図8を用いて以下に説明する。図7(a)〜(c)は、それぞれ、凹部の底面の断面形状のバリエーションを示す断面図である。図8(a)〜(c)は、それぞれ、凹部の底面の形状のバリケーションを示す斜視図であり、本体部の一部分は断面によって示されている。
【0058】
図7(a)の例では、凹部3の底4に傾斜は設けられておらず、底4は平に形成されている。このため、図7(a)の例では、傾斜していない分、図2に示した例よりも、凹部の容量を増加させることができる。つまり、図7(a)に示した例によれば、凹部3の開口広さを図2に示した例と同等としながら、採取できる対象物(便)の量を増加させることができる。
【0059】
また、図7(b)の例では、開口部5の縁を形作っている部分4aが、曲面状に形成されているため、採取された対象物が開口部5で引っかかってしまう事態の発生を抑制できる。つまり、図2に示した例では、部分4aの図中上側にエッジが形成されているため、開口部5から入った対象物がこのエッジに引っかかってしまう場合がある。
【0060】
これに対して、図7(b)の例では、図2に示した例と異なり、部分4aの図中上側に
曲面が形成されているため、開口部5から入った対象物が部分4aで引っかかり難くなっている。よって、図7(b)の例によれば、開口部5から入った対象物は、スムーズに部分4aの図中上側へと追いやられるので、採取された対象物が開口部5で引っかかってしまう事態の発生が抑制される。
【0061】
更に、図7(c)の例では、凹部3の底面と側面とが、曲面4bによって接続され、これらは連続した面を構成している。このため、図7(c)の例では、図2に示した例と異なり、凹部3から、採取された対象物を取り出す際に、角に収まった一部の対象物が取り出せない事態を回避することができる。
【0062】
つまり、図2の例では、凹部3の底面と側面とが角をなしているため、両者の境界部分に収まってしまった対象物を全て取り切るのは困難であり、取り出させなかった対象物は損失した状態となる。これに対して、図7(c)の例では、曲面4bにより、採取された全ての対象物を容易に取り切ることができる。
【0063】
また、図8(a)〜図8(c)に示された例のうち、図8(a)の例は、図1及び図2に示した凹部3を示している。図8(a)の例では、凹部3の底面4cは傾斜しているが、平面となっている。
【0064】
これに対して、図8(b)の例では、凹部3は、その底4を形成する部分の断面形状が波形状を呈するように形成されている。よって、図8(b)の例では、凹部3の底面4cには、本体部2の長手方向に延びる複数条の突起6が設けられ、部分4aの形状は波形となる。このため、図8(b)の例では、図8(a)に示した例に比べて、部分4aが対象物に引っ掛かり易く、凹部4の底4は、対象物に食い込みやすい形状となっている。図8(b)の例は、対象物が、特に硬い場合に有効である。なお、図8(b)において、断面形状とは、本体部2の長手方向に垂直な断面の形状をいう。
【0065】
また、図8(c)の例では、凹部3は、その底4を形成する部分の断面形状が円弧状を呈するように形成されている。よって、図8(c)の例では、開口部5の縁を形作っている部分4aの形状は、部分4aを本体部2の長手方向から見たときに円弧状となる。更に、この円弧は、開口部5側に凸となっている。このため、図8(c)の例においても、図8(b)の例と同様に、部分4aが対象物に引っ掛かり易く、凹部4の底4は、対象物に食い込みやすい形状となっている。図8(c)の例も、対象物が、特に硬い場合に有効である。なお、図8(c)においても、断面形状とは、本体部2の長手方向に垂直な断面の形状をいう。
【0066】
ところで、一般に、検便においては、便の複数箇所から、又は排便された日付が異なる複数の便から、複数のサンプルを採取することが求められており、一回の検便には、複数本の採取用具が必要となる。この場合において、一回の検便で利用される複数本の採取用具が互いに連結できるように構成されていると、利用者にとって便利である。このため、本実施の形態においては、採取用具に、他の採取用具との連結を可能にする構造を付与することができる。このような構造が付与された採取用具を図9〜図11を用いて説明する。
【0067】
図9は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第1例を示す斜視図である。図9の例では、採取用具30と採取用具32とが、互いに連結できるように構成されている。
【0068】
図9に示すように、採取用具30及び採取用具32は、共に板状の本体部2を備えている。また、採取用具30及び32は、サンプルを採取するための凹部3を備え、各凹部3
の底4には開口部5が設けられている。採取された便は、各採取用具の凹部3に充填される。
【0069】
また、採取用具30は、本体部2の基端側の部分に、本体部2を厚み方向に貫通する二つの貫通孔31を備えている。一方、採取用具31は、本体部2の基端側の部分に、各貫通孔31に対応する二つの突起33を備えている。
【0070】
このような構成により、利用者は、採取用具30と採取用具31とを重ね合わせ、各貫通孔31に、対応する突起33を挿通させれば、採取用具30と採取用具31とを連結することができる。
【0071】
また、図9の例において、突起33は、採取用具32の一方の面2a上にのみ形成されているが、一方の面2aと他方の面2bとの両面に形成されていても良い。この場合、採取用具32と二つの採取用具30とを連結することができる。
【0072】
図10(a)及び(b)は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第2例を示す図である。このうち、図10(a)は、各採取用具を示す斜視図であり、図10(b)は、連結状態にある採取用具を示す平面図である。図10(a)及び(b)に示す例では、採取用具34と採取用具36とが、互いに連結できるように構成されている。
【0073】
図10(a)に示すように、採取用具34及び採取用具36は、共に板状の本体部2を備えている。また、採取用具34及び36は、サンプルを採取するための凹部3を備え、各凹部3の底4には開口部5が設けられている。採取された便は、各採取用具の凹部3に充填される。
【0074】
また、採取用具34は、本体部2の先端部分の基端側に、開口形状が矩形の貫通孔35を備えている。一方、採取用具34は、本体部2の先端部分の基端側に、貫通孔35に挿入可能な突起37を備えている。突起37は、円柱状の軸部37bと、採取用具36の本体部2の面方向に沿って突出する傘状部37aとを備えている。また、傘状部37aの形状は、貫通孔35の開口形状に整合する形状となっている。
【0075】
このような構成により、利用者は、採取用具36の傘状部37aを採取用具34の貫通孔35に整合させ、この状態で傘状部37aを貫通孔35に挿通させ、採取用具34と採取用具36とを重ね合わせれば、これらを連結することができる。
【0076】
また、採取用具34において、貫通孔37の長手方向は、本体部2の長手方向に対して傾斜している。一方、採取用具36において、傘状部37aの長手方向は、本体部2の長手方向と一致している。従って、採取用具34と採取用具36とを重ね合わせた後、両者を、軸37aを中心として回転させ、互いに平行な状態とすると、採取用具36の傘状部37aは、採取用具34の本体部2に引っかかった状態となり、両者の連結は強固なものとなる。
【0077】
ところで、例えば、採取用具36において、採取された便の量が多く、便が凹部3からとび出ているとする。この場合、余分な便を除去する必要があるが、図10(b)に示すように、採取用具34又は36を軸37b(図10(a)参照)を中心に回転させると、余分な便は採取用具34によってそぎ落とされる。図10(a)及び(b)の例によれば、凹部3から飛び出た余分な便を簡単に除去することができる。
【0078】
図11は、連結構造が付与された、本発明の実施の形態における採取用具の第3例を示
す斜視図である。図11の例では、採取用具38と採取用具41とが、互いに連結できるように構成されている。
【0079】
図11に示すように、採取用具38及び41は、共に板状の本体部2を備えている。また、採取用具38及び41は、サンプルを採取するための凹部3を備え、各凹部3の底4には開口部5が設けられている。採取された便は、各採取用具の凹部3に充填される。
【0080】
また、採取用具38は、本体部2の基端側の部分に、厚みが他の部分よりも厚くなるように形成された厚肉部39を備えている。更に、厚肉部39には、本体部2の幅方向に沿って溝40が設けられている。
【0081】
一方、採取用具41は、本体部2の基端側の部分に、本体部2の幅方向に沿って延びる突起42a及び42bを備えている。突起42a及び42bは、溝40に嵌合可能となるように形成されている。また、突起42a及び42bは、本体部2の両方の面にそれぞれ設けられている。
【0082】
このような構成により、利用者は、採取用具38の溝40の端を、採取用具41の突起42a又は42bの端に整合させ、その状態で、採取用具38を幅方向(図11中において矢印で示す方向)に沿ってスライドさせれば、これらを連結することができる。
【0083】
また、図11の例では、採取用具41の基端側の部分には、連結後に厚肉部39を囲む収納部43が設けられている。収納部43は、図11において矢印で示した方向への採取用具38のスライドによる連結を妨げないように形成されているが、矢印で示した方向と対向する位置には壁43aを備えている。このため、採取用具38がスライドし過ぎて不用意に連結が解除されないようになっている。
【0084】
更に、図11の例において、採取用具38において、採取された便の量が多く、便が凹部3からとび出ているとする。この場合、余分な便を除去する必要があるが、溝40を突起42aに整合させて、採取用具38を上述したようにスライドさせれば、採取用具38の余分な便は、採取用具41によってそぎ落とされる。
【0085】
また、採取用具41において、便が凹部3からとび出ている場合は、溝40を突起42bに整合させて、採取用具38を上述したようにスライドさせれば良い。この場合は、採取用具41の余分な便は、採取用具38によってそぎ落とされる。図11の例によれば、凹部3から飛び出た余分な便を簡単に除去することができる。
【0086】
なお、以上の説明では、上述したように、サンプルの採取対象となる対象物が便である場合について述べているが、本実施の形態では、対象物は便のみに限定されず、以下のものを対象物とすることもできる。具体的には、生体に関連する他の対象物としては、生体の粘膜、皮膚の角質、細胞等が挙げられる。また、対象物は、生体に関連する物に限定されず、土壌、食品、化粧品等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明によれば、対象物の硬さに影響されることなく、利用者は設定量のサンプルを簡単に採取できるようになる。本発明は、分析対象物からのサンプルの採取に用いられる採取用具に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 採取用具
2 本体部
2a、2b 本体部の主面
3 凹部
4 凹部の底
4a 凹部の底の開口部を形作る部分
4b 底面と側面とをつなぐ曲面
4c 底面
5 開口部
10 対象物(便)
10a 対象物(便)の一部
20 利用者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の一部を採取するための採取用具であって、
一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、
前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、ことを特徴とする採取用具。
【請求項2】
前記本体部が、一方向に延びる板状の部分を有し、
前記凹部が、前記板状の部分の一方の面に設けられ、
前記凹部の底に設けられた前記開口部が、前記板状の部分の他方の面に位置している、請求項1に記載の採取用具。
【請求項3】
前記凹部は、その前記底における厚みが、前記開口部に近い程、小さくなるように、形成されている、請求項2に記載の採取用具。
【請求項4】
前記板状の部分の厚みをT、前記凹部の前記底における厚みの最小値をtとしたときに、前記板状の部分の厚みTに対する、前記凹部の前記底における厚みの最小値tの比(t/T)が、0.01〜0.5に設定されている、請求項2または3に記載の採取用具。
【請求項5】
前記板状の部分の厚みをT、前記開口部の前記一方向における長さをWとしたときに、前記板状の部分の厚みTに対する、前記開口部の前記一方向における長さWの比(W/T)が、0.5〜1.5に設定されている、請求項2〜4のいずれかに記載の採取用具。
【請求項6】
前記本体部の前記板状の部分が、樹脂材料によって形成され、可撓性を有している、請求項2〜5のいずれかに記載の採取用具。
【請求項7】
前記凹部の底を形成する部分の断面形状が、波形状を呈している、請求項1〜6のいずれかに記載の採取用具。
【請求項8】
前記凹部の底を形成する部分の断面形状が、円弧状を呈している、請求項1〜6のいずれかに記載の採取用具。
【請求項9】
対象物の一部を採取するための方法であって、
一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、
前記凹部の底に設けられた前記開口部を前記対象物に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする採取方法。
【請求項10】
対象物の一部を採取するための方法であって、
一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、
前記凹部の開口を前記対象物に向け、前記開口部を前記対象物側の反対側に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする採取方法。
【請求項11】
対象物の一部を採取するための方法であって、
一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、
前記採取用具の前記先端部分を前記対象物に突き刺し、その後、前記採取用具を前記対
象物から抜きとる際に、前記対象物の一部を前記凹部ですくい取ることによって採取する、ことを特徴とする採取方法。
【請求項1】
対象物の一部を採取するための採取用具であって、
一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、
前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、ことを特徴とする採取用具。
【請求項2】
前記本体部が、一方向に延びる板状の部分を有し、
前記凹部が、前記板状の部分の一方の面に設けられ、
前記凹部の底に設けられた前記開口部が、前記板状の部分の他方の面に位置している、請求項1に記載の採取用具。
【請求項3】
前記凹部は、その前記底における厚みが、前記開口部に近い程、小さくなるように、形成されている、請求項2に記載の採取用具。
【請求項4】
前記板状の部分の厚みをT、前記凹部の前記底における厚みの最小値をtとしたときに、前記板状の部分の厚みTに対する、前記凹部の前記底における厚みの最小値tの比(t/T)が、0.01〜0.5に設定されている、請求項2または3に記載の採取用具。
【請求項5】
前記板状の部分の厚みをT、前記開口部の前記一方向における長さをWとしたときに、前記板状の部分の厚みTに対する、前記開口部の前記一方向における長さWの比(W/T)が、0.5〜1.5に設定されている、請求項2〜4のいずれかに記載の採取用具。
【請求項6】
前記本体部の前記板状の部分が、樹脂材料によって形成され、可撓性を有している、請求項2〜5のいずれかに記載の採取用具。
【請求項7】
前記凹部の底を形成する部分の断面形状が、波形状を呈している、請求項1〜6のいずれかに記載の採取用具。
【請求項8】
前記凹部の底を形成する部分の断面形状が、円弧状を呈している、請求項1〜6のいずれかに記載の採取用具。
【請求項9】
対象物の一部を採取するための方法であって、
一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、
前記凹部の底に設けられた前記開口部を前記対象物に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする採取方法。
【請求項10】
対象物の一部を採取するための方法であって、
一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、
前記凹部の開口を前記対象物に向け、前記開口部を前記対象物側の反対側に向けて、前記採取用具の前記先端部分と前記対象物とを接触させ、接触させた状態で、前記採取用具を前記一方向に沿って移動させて、前記対象物の一部を採取する、ことを特徴とする採取方法。
【請求項11】
対象物の一部を採取するための方法であって、
一方向に延びる本体部と、前記本体部の先端部分に設けられた凹部とを備え、前記凹部の底の一部分には、開口部が設けられている、採取用具を用い、
前記採取用具の前記先端部分を前記対象物に突き刺し、その後、前記採取用具を前記対
象物から抜きとる際に、前記対象物の一部を前記凹部ですくい取ることによって採取する、ことを特徴とする採取方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−59053(P2011−59053A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211703(P2009−211703)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
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