説明

採取管装置、システム、および方法

採取管の製造方法を提供する。この方法は、短時間で所望の硬度まで急速に重合することができるセパレーター物質を提供することと、セパレーター物質を管の内腔内に配置することとを含む。セパレーター物質は、全血の血清分画および全血の細胞含有分画の平均密度の間の密度を有し全血とともに流動となるように配合される。血液の入った管を遠心分離すると、セパレーター物質は全血分画の間でバリアを形成する。好適なエネルギー源によって反応を開始させるとバリアは急速に硬化して固体バリアを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年8月10日に出願されたUS provisional application serial no.60/707,299に対する優先権を主張している2006年8月4日に出願され共有される係属中のUS application no.11/499,436の一部継続出願である2007年11月1日に出願された係属中のU.S.application 11/933839の優先権を主張する。これらおよびその他すべての外部の参考文献は、これらの記載内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。組み入れられる参考文献中の用語の定義または使用が、本明細書において提供される用語の定義と一致しないまたは反対である場合、本明細書において提供されるこの用語の定義が使用され、参考文献におけるこの用語の定義は使用されない。
【0002】
本発明の分野は分離技術分野である。
【背景技術】
【0003】
血液サンプルの分析では、全血を血清分画および細胞含有分画に分離することが必要となる場合が多い。当分野において周知のように、全血分離は、全血を採血管中に入れ、この管を遠心分離機中に入れ、血液を遠心沈殿させることによる遠心分離によって行うことができる。
【0004】
残念ながら、一度血液を分離すると、拡散、撹拌、サンプル抽出、またはその他の望ましくない相互作用によって、全血の分画が再混合して分画が汚染される場合がある。理想的には、2つの分画を分離した状態で維持して、所望の分画を使用する場合に汚染が起こらないようにすべきである。
【0005】
全血の分画を分離するあらゆるのシステムは、管の内部に好適な密度を有するセパレーター物質を含む必要がある。好適な密度は約1.04g/cmであり、重い細胞含有相の密度と軽い血清含有相の密度との間である。全血を管に加え、この管を遠心分離するときに、セパレーター物質は互いに2つの分画から分離した分画の間に移動する。全血とともに流動可能なゲルをセパレーター物質として使用する採取管の一例を、Fiehlerに付与されたUS 4,946,601に見ることができる。同様に全血とともに流動可能なセパレーター物質の例は、Gatesらに付与されたUS 6,248,844およびUS 6,361,700に見ることができる。これらの特許中、上記物質は所望の粘度で硬化可能なポリエステルである。
【0006】
流動性物質を提供することによって全血の分画を分離できるようになるが、流動性物質は幾つかの欠点を有する。流動性物質の1つは遠心分離後でさえも流動性のままであり、このため、サンプルを適切に静止状態で維持して撹拌から保護するための適切な配慮が行われない場合に、サンプルの汚染の危険性が生じる。例えば、遠心分離前に採血管中に揺変性ゲルを使用することが知られている。
【0007】
Saundersに付与されたU.S.Pat.No.4,818,418では、採血管中での揺変性ゲルの使用が議論されている。しかし、揺変性ゲルの問題は、十分に永久的な分離バリアが全血の分画間に形成されないことである。ピペットを使用して管からサンプルを取り出すとき、上記物質の流動性のためにピペットが上記物質に接触すると上記物質がピペットを汚染したり詰まらせたりすることがある。上記の欠点を克服するために十分な固体または永久的なバリアが得られるように高粘度を有する物質を配合または構成する場合には、この物質はもはや全血とともに適切に流動することがなくなり、そのため遠心分離時間が非常に長くなる。短い遠心分離時間は、生死にかかわる状況で迅速な血液分析結果が求められる場合には重要である。
【0008】
採取管の製造において採用されている別の方法の1つは、移動可能な固体バリアを提供することである。好適な固体物質の例としては、ポリマー球がバリア層を形成するU.S.Pat.No.3,647,070中に見られる中間密度ポリマーが挙げられる。U.S.Pat No.5,266,199には、細胞含有相からの血清の分離を制御するチューブ・アンド・ボール弁(tube−and−ball valve)が記載されている。しかし、このような物理的バリアでは、分画間に十分なシールが提供されず、多くの場合、不完全で漏れが生じやすいか、他の種々の理由で実現できないかのいずれかである。
【0009】
全血分離のためのこれらおよびその他の解決方法は、全血の分離された分画を、望ましくないサンプルの相互作用による汚染から効果的に保護し、同時に短い遠心分離時間を維持するために必要な特徴を備えていない。従って、遠心分離後に分離層が固化する液体分離技術が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,946,601号明細書
【特許文献2】米国特許第6,248,844号明細書
【特許文献3】米国特許第6,361,700号明細書
【特許文献4】米国特許第4,818,418号明細書
【特許文献5】米国特許第3,647,070号明細書
【特許文献6】米国特許第5,266,199号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、遠心分離後に分離層が固化する装置、システム、および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
好ましい実施形態では、分離層は重合によって硬化する。好適なセパレーター物質は、分離される液体の分画の中間の好適な密度を有するように配合される。分離される液体が全血である場合、例えば、セパレーター物質は、全血の血清分画および全血の細胞含有分画の平均密度の間の密度を有し全血中で流動稼働となるように配合される。
【0013】
本発明の主題の種々の目的、特徴、態様、および利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明とともに、類似の番号が類似の成分を表している添付の図面からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】硬化可能な重合性セパレーター物質を有する採血管の側面斜視図である。
【図1B】全血を加えた後の図1Aの管の採血の側面斜視図である。
【図1C】遠心分離後の図1Bの採血管の側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
採取管
図1A中、採血管100は、一般に、管110、栓120、およびセパレーター物質150を含み、管110は内腔115を有する。管110は、好ましくは、内腔115内を真空に維持するのに適した剛性材料で製造されている。材料の例としては、硬質プラスチック、ガラス、または他の類似の材料が挙げられる。内腔115は、全血または液体の所望のサンプルを保持するのに十分な容積を有する。典型的な容積は数mlから10ml以上の範囲である。栓120は、内腔115内部を真空に維持するのに十分ぴったりと管110中に適合する。栓120は、セパレーター物質150が内腔115内に入っていることを示すカラーコードまたはその他の表示を有するように製造されることが考慮される。採取管100の製造に使用可能であると容認される管の一例としては、Becton,Dickenson and Company(フランクリン・レイクス(Franklin Lakes)、NJ USA 07417)によって開発されたバキュテイナ(Vacutainer)(登録商標)検体収集製品が挙げられる。
【0016】
好ましい実施形態は管110を含むが、採取管100は、液体を収容し場合により真空を維持する他の容器で代用できることも考慮される。容器の別の例としては、フラスコ、広口瓶、ビーカー、瓶、または小瓶が挙げられる。考慮される別の容器は、本発明の主題が採血以外の別の市場に適用される場合に有用となる。
【0017】
好ましい一実施形態では、採取管100は、セパレーター物質150を内腔115内に配置し、販売に備えて内腔115内を真空にすることによって製造される。典型的な10ml採取管の場合には、内腔115内にセパレーター物質150を約1ml以下、または約2g以下配置することも好ましい。個別の使用に適合させるために、1mlを超えるまたは1ml以下の他の量も使用できることが考慮される。例えば、適切に封止されたバリアを形成するために、管110のより小さな種類ではより少ないセパレーター物質150を必要とするが、より大きな種類ではより多くを必要とする。
【0018】
場合による真空は、好適なポンプを使用して内腔115の容積を単純に減圧することによって導入することができる。本文書における状況での用語「真空」は、管110の外部の圧力よりも低い圧力を有する部分真空を意味する。
【0019】
管内にあらかじめ配置された1つのセパレーター物質を有することとは対照的に、使用者は購入後に1つ以上のセパレーター物質を採取管に加えることができることも考慮される。
【0020】
図1Bは、血液140を入れた後で、遠心分離の前の採血管の代表的な一実施形態を示している。血液140がセパレーター物質150の上に示されているが、これら2つは自由に流動または混合する性質を有することができる。
【0021】
図1Cは、遠心分離後の採血管の代表的な一実施形態を示している。遠心分離中、血液140は、血清分画160および細胞含有分画170に分離する。セパレーター物質150が血清分画160および細胞含有分画170の中間の密度を有する場合、遠心分離中にセパレーター物質は2つの分画の間に移動し、それによって分画160および170が互いに分離される。次にセパレーター物質150は、好適なエネルギー源によって誘発されると、重合して急速に硬化することができる。
【0022】
セパレーター物質
好ましくはセパレーター物質150は、最終的な重合中に、ピペットによる貫通、デカンテーション、さらには凍結に対して抵抗性となる硬度まで急速に硬化する。
【0023】
硬度は、ショア(Shore)硬度計の1つなどのあらゆる好適な硬度計を使用して測定することができる。ショア00硬度計は、ゲルまたは発泡体などの軟質物質の測定に使用される。ショアA硬度計は、ゴムなどの中間の硬度を有する物質の測定に使用される。ショアD硬度計は、プラスチックなどのより硬質の物質の測定に使用される。以上のショア硬度計は種々の異なる物質に使用されるが、すべての硬度計は、これらのスペクトルの最低値で重なり合っている。従って、ショアD硬度計の10の値は、ショアA硬度計の10の値よりも硬く、ショアA硬度計の10の値はショア00硬度計の10の値よりも硬い。セパレーター物質150は好ましくは、ショア00硬度計で少なくとも1まで硬化するように配合される。セパレーター物質150のより好ましい実施形態は、ショアA硬度計で少なくとも10までさらに硬化する。さらに別の実施形態では、セパレーター物質150は、ショアD硬度計で少なくとも10までさらに硬化する。
【0024】
本文書の状況の範囲内で、用語「急速に硬化」は、少なくとも10分以内にショア00硬度計で少なくとも1まで硬化することを意味する。本発明の主題の態様の1つでは、より短い硬化時間が長い硬化時間よりも好都合となり得ると評価している。数分以内に硬化するセパレーター物質を有することは、例えば、生死に関わる重要な状況でサンプルの分析を行う病院にとっては重要となり得る。好ましい実施形態では、硬化時間は5分以下、より好ましくは1分以下、最も好ましくは10秒以下である。
【0025】
好ましいセパレーター物質の硬化したバリアは、内腔115の壁に付着して、細胞含有分画を実質的に封止し、拡散、撹拌、サンプル抽出、またはその他の望ましくない相互作用による汚染から分画を保護する。好ましい実施形態では、バリアの最終厚さは5mm以下である。
【0026】
セパレーター物質150は、好ましくは生体適合性有機ポリマーである。特に、生体適合性は、セパレーター物質150が、試験される物質の性質を妨害したり変化させたりすることが全くないことを意味する。例えば血液の場合では、セパレーター物質150は、pH、着色、試験されるあらゆる酵素、ならびにタンパク質、気体、およびその他のあらゆる成分の濃度を妨害すべきではない。
【0027】
さらに別の実施形態では、本発明の物質は、分離されるサンプルと意図的に反応させる成分を含むことができることが考慮される。例えば、セパレーター物質は、凝固剤、血液抗凝固剤、または全血と相互作用する他の物質を含むことができる。
【0028】
血液分離管中、セパレーター物質150は、約1.01から1.09g/cmの間、最も好ましくは約1.04g/cmの密度を有するべきである。文脈が他の意味を示すのでないかぎり、本明細書に記載のすべての範囲は、これらの範囲の端点を含むものと解釈される。
【0029】
容認されるセパレーター物質の1つは、どちらも参照により本明細書に組み入れられるU.S.Pat.No.6,361,700およびU.S.Pat.No.6,248,844に記載されるものと類似のポリエステル主鎖を含むことができる。重合は好ましくは、約1.04から1.06g/cmの間の所望の密度が得られるように行われる。しかし、’700 patentおよび’844 patentにおいて示されている方法および組成物とは対照的に、重合は完了するまで行われず、さらなる重合を停止させるのに有効な最小量重合停止剤を使用して(例えば、ラジカルクエンチャー、触媒錯化剤などを使用して)停止させる。
【0030】
サンプルが不完全に硬化したポリマー(セパレーター物質150)と接触するときに、重合が再開できる濃度まで重合停止剤が希釈されることが考慮される。再開の前に、血液140を遠心分離によって容器中で分離すると、管110の底部の細胞含有分画170と、管110の上部の血清分画160とが残り、両方の分画は不完全に硬化したポリマー(セパレーター物質150)によって分離される。重合の再開は、ポリマーにUV光またはその他の好適なエネルギー源を照射することによって促進することができる。従って、分離完了後にポリマーがさらに硬化するので、分離した血清は後で汚染することなくピペット、デカンテーション、またはさらには凍結によって使用することができることが分かるであろう。さらに、最終的に硬化したバリア層は実質的に永久的である(即ち、数日、またはさらには数週間にわたって安定である。)ことを理解すべきである。
【0031】
採取管100がポリエステルポリマーをセパレーター物質150として含むことが一般には容認されるが、ポリマー材料の厳密な性質によって本発明の主題が限定されるものではなく、多数の別のポリマーも好適となることに留意されたい。実際、全血分離に適したあらゆる公知のポリマーが本発明における使用に適していると思われ、このようなものとしてはシリコン油、ポリアミド類、オレフィン系ポリマー、ポリアクリレート類 ポリエステル類およびこれらのコポリマー、ポリシラン類、ならびにポリイソプレン類が挙げられる。所望の初期密度(典型的には約1.03から1.05の間)を実現するために、密度は、分子構成によって、および適切なフィラー材料(例えば、シリカ、ラテックス、またはその他の不活性材料)の混入によって調整できることが考慮される。例えば、好適なポリマー材料は、U.S.Pat.No.3,647,070、U.S.Pat.No.3,920,557、もしくはU.S.Pat.No.3,780,935、またはEP 0 928 301またはEP 0 705 882に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。さらに、血清セパレーターは、所望の生体反応性の目的で追加の材料および/または試薬を含むことができることが考慮される。例えば、本明細書において提供されるセパレーターは、EDTA、ヘパリン、シトラート、デキストロースなどを含むことができる。血漿、および全血から誘導される実質的に細胞を含有しない他の流体をも含むために、本明細書において用語「血清」が使用されることに留意されたい。
【0032】
個別の材料に依存するが、セパレーターポリマーの硬化の方式および/または機構は大幅に変更できることが考慮されており、あらゆる公知の重合様式が本発明における使用に適していると思われる。例えば、考慮される重合としては、種々のラジカル重合またはカチオン重合(例えば、感光性化合物、ラジカル・スターツ(radical startes)などを使用して)、重縮合、エステル化、アミド形成などが挙げられる。従って、反応性基は、特に、酸基(最も好ましくはモノ−およびジカルボン酸基)、共役ジエン基、芳香族ビニル基、およびアルキル(メタ)アクリラートを含む。このような典型的な反応性基および反応条件は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるU.S.Pat.No.6,989,226に記載されている。参照により本明細書に組み入れられるWO99/64931に記載されるように反応性基をポリマーの末端に末端基として結合させることができるし、反応性基はペンダント基として設けることもできる(例えば、参照により本明細書に組み入れられるU.S.Pat.No.5,336,736に記載されるように)ことをさらに理解すべきである。
【0033】
重合は、プレポリマー上の反応性基によって完全に行われることが一般に好ましいが、参照により本明細書に組み入れられるU.S.Pat.No.5,582,954、U.S.Pat.No.4,894,315、およびU.S.Pat.No.4,460,675に記載されるものなどのラジカル開始剤などの追加の試薬が好適となる場合もある。さらに考慮されるセパレーター物質としては、架橋性基をポリマーに設けることによって、このポリマーが二官能性架橋剤(例えば、エチレン系不飽和化合物)と反応する反応性基を有し、それによって架橋したポリマーが形成されるセパレーター物質も挙げられる。さらに別の考慮されるセパレーター物質としては、重合を加速する促進剤を有するセパレーター物質も挙げられる。
【0034】
セパレーター物質150の容認される一例としては、メリーランド大学(University of Maryland)およびカリフォルニア大学アーバイン校(University of California Irvine)によって共同開発された「M1L1A1」として知られる物質が挙げられる。M1L1A1は:(M1)Sigma−Aldrichカタログ番号(Cat.No.)407577のモノマーのトリメチロールプロパンプロポキシラートトリアクリラートと、(L1)Cytec Industries,Inc.のサイテック脂肪族ウレタンアクリラート(CYTEC Aliphatic Urethane Acrylate)エベクリル(EBECRYL)230と、(A1)これもCytec Industries,Inc.のアディトール(Additol)BDKである2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−エタン−1−オンとを含むポリマーのセパレーター物質である。さらに、M1L1A1は全血とともに使用する場合に望ましい性質を有し、例えば、ヒュームドシリカを加えることによって密度が調整可能であり、遠心分離した場合に全血中で流動可能であり、揺変性であり、重合後にショアA硬度計で10を超える硬度を有し、UV光に露光すると10秒以内に硬化し、全血に対して生体適合性であり、全血の細胞含有分画が透過できずピペットの貫通に対して抵抗性の硬化シールを形成するなどの性質を有する。M1L1A1は、10nmから450nmの波長の光を照射するUV光源下で硬化する。好ましいUV光源の1つは、250nmから400nmの範囲内で照射する。重合を開始するためのあらゆる好適なエネルギー源が考慮される。UV源を有する既存の遠心分離器を使用してセパレーター物質を重合させることができ、または遠心分離器に重合を開始させることができる好適なエネルギー源を組み込むことができることが考慮される。
【0035】
好ましくは、採取管の内容物の温度変化は、重合中に10℃以下、より好ましくは5℃以下である。露光時間が短いことによって、サンプルの適切な着色量、気体量、温度、タンパク質量、または全血に関連するその他の性質が維持される。
【0036】
別の実施形態
本発明の主題の好ましい実施形態は主として採血管に注目しているが、本明細書に記載のシステム、装置、および方法は、採血管以外の別の市場にも適用できることを理解すべきである。本明細書に開示されている技術と類似の技術は、2つ以上の構成相を有するほぼあらゆる流体の分離に利用することもできる。例えば、セパレーター物質は、尿、水サンプル、油、ワイン、またはその他の多相流体等の流体を分離するために提供することができる。3つ以上の相を有する流体の場合、採取管が、流体の少なくとも3つの相を分離するために使用される2つ以上のセパレーター物質を含有できることが考慮される。
【0037】
ある用途では、採取管の使用者は、細胞含有部分および血清含有部分に到達する必要が生じる場合がある。このような場合、細胞含有部分をかき回すことなく血清部分をデカンテーションできるように適切な低い硬度(ショア00硬度計で約10以下)を有するように、セパレーター物質を調整することができる。次にピペットによって、セパレーター物質バリアを貫通して細胞含有部分に到達することができる。または、採取管は、2つの開放端を有し、管の「上部」および「底部」の両方に栓を有するように製造することができる。次に、胞含有部分へは底部の栓から到達することができる。底部の栓は、遠心分離器のホルダーの形状に適合するように丸みを帯びた形状を有し、遠心分離中に支持が得られるような大きさおよび寸法を有することができる。
【0038】
利点
全血分離に使用するための急速に硬化するセパレーター物質を有する採血管を製造することには多数の利点が存在する。利点の1つとしては、全血分画が互いに永久的に効果的に分離され、拡散、撹拌、サンプル抽出、またはその他の望ましくない相互作用による汚染の機会がほとんどまたは全くないことが挙げられる。さらに、分離層として実質的に硬化するセパレーター物質を使用することは、例えば揺変性ゲルをセパレーター物質として使用する場合よりも必要な材料量が少なくなることを意味する。従って、分離層に移動する材料が少なくなり、管内部のより多くの容積を血液サンプルが使用できるため、十分な分離を行うために遠心分離に要する時間が短くなる。
【0039】
当業者には明らかなように、本明細書における本発明の概念から逸脱することなく、既に記載したもの以外の多くのさらなる修正が可能となる。従って、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の意図を除けば限定されるものではない。さらに、本明細書および特許請求の範囲の両方の解釈において、すべての用語は、この文脈に一致する最も広く可能性のある様式で解釈すべきである。特に、用語「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」は、要素、成分、またはステップを非排他的な様式で言及し、言及される要素、成分、またはステップは、明確に参照されていない他の要素、成分、またはステップとともに存在したり、利用したり、組み合わせたりすることが可能なことを示すものとして解釈すべきである。本明細書の特許請求の範囲が、A、B、C...およびNからなる群から選択される何かの少なくとも1つに言及する場合、この文章は、A+N、およびB+Nなどではない群からの1のみの要素を必要とするものとして解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血管の製造方法であって:
好適なエネルギー源によって反応を開始させると10分以内にショア00硬度計で少なくとも1まで重合するセパレーター物質を提供すること;
ある量のセパレーター物質を管の内腔内に配置すること;および
内腔内を真空にすることとを含む、方法。
【請求項2】
セパレーター物質が、10分以内に重合するのに十分な反応性基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セパレーター物質が、10分以内に重合するのに十分な量の少なくとも1つの促進剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
セパレーター物質が、ショアA硬度計で10を超える硬化硬度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
セパレーター物質が、ショアD硬度計で10を超える硬化硬度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
セパレーター物質が5分以内にショア00硬度計で少なくとも1まで硬化する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
セパレーター物質が5分以内にショアA硬度計で少なくとも10まで硬化する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
セパレーター物質が、全血の血清分画および全血の細胞含有分画の平均密度の間の密度を有するように配合され、全血中で流動可能なようにさらに配合される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
セパレーター物質が全血の細胞含有分画に対して不浸透性である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
セパレーター物質が全血に対して生体適合性である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
エネルギー源がUV光を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
重合中の10分以内の管の温度変化が10℃以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
内腔内部に配置されるセパレーター物質の量によって、重合後に5mm以下のバリア厚さが得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
内腔を有する管;および
好適なエネルギー源によって反応を開始させると10分以内にショア00硬度計で少なくとも1まで重合する、内腔内に配置されたセパレーター物質を含む、採血管。
【請求項15】
セパレーター物質が、10分以内に重合するのに十分な反応性基を含む、請求項14に記載の管。
【請求項16】
セパレーター物質が、10分以内に重合するのに十分な量の少なくとも1つの促進剤を含む、請求項14に記載の管。
【請求項17】
セパレーター物質が、ショアA硬度計で10を超える硬化硬度を有する、請求項14に記載の管。
【請求項18】
セパレーター物質が、ショアD硬度計で10を超える硬化硬度を有する、請求項17に記載の管。
【請求項19】
セパレーター物質が5分以内にショア00硬度計で少なくとも1まで硬化する、請求項14に記載の管。
【請求項20】
セパレーター物質が5分以内にショアA硬度計で少なくとも10まで硬化する、請求項19に記載の管。
【請求項21】
セパレーター物質が、全血の血清分画および全血の細胞含有分画の平均密度の間の密度を有するように配合され、全血中で流動可能なようにさらに配合される、請求項14に記載の管。
【請求項22】
セパレーター物質が全血の細胞含有分画に対して不浸透性である、請求項21に記載の管。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【公表番号】特表2011−503543(P2011−503543A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532117(P2010−532117)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/079745
【国際公開番号】WO2009/058547
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(507127440)ザ・リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイー・オブ・カリフオルニア (4)
【Fターム(参考)】