説明

採水器

【課題】
採水時にサンプル容器内を試料水で洗浄する共洗いを行えるようにして、不純物の混入を防止して良好な試料水を採水できるようにした採水器を提供する。
【解決手段】
水中で導入採水弁109を開いて流入する水により主サンプル容器104内を洗浄し、続いて中間採水弁110を開いて共洗い用サンプル容器106まで水を導入して主サンプル容器104を洗浄し、さらに導出採水弁111を開いて全流路へ水を導入して主サンプル容器104を洗浄し、最終的に導入採水弁109および中間採水弁110を閉じて、主サンプル容器104の水を試料水として採水するような採水器1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海(内湾・沿岸等)、湖沼、ダム、河川などの比較的浅い水域において、不純物の混入を防止して良好な試料水を採水するための採水器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
採水器に係る従来技術として、例えば特許文献1(発明の名称:同時多層採水器)が開示されている。特許文献1の同時多層採水器は、所定の採水間隔で直列に連結した採水セルの下端に錘を取り付け、別のロープで錘を着底させた後、採水セルの上端のロープを引いて錘の荷重をかけることにより各採水セルのピストンが引かれ、多層同時採水を可能にしたものである。
【0003】
【特許文献1】特開2001−183265号公報(図1,図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の同時多層採水器では、例えば、シリンダ内に前に採水した試料水が残留して汚れていたり、あるいは、シリンダ内に洗浄時の洗剤やすすぎ水が残留していたような場合には、当然ながら、採水された試料水には不純物が混入することとなり、良好な検査ができないおそれがあった。特に湖沼や海水の試料水では洗浄時の水でも不純物となるため、良好な試料水を採水するためには、採水器内のサンプル容器を共洗いをする(試料水と同じ水でサンプル容器の微量な汚染を洗浄する。)ことが好ましい。
【0005】
しかしながら、例えば採水器が海域で試料水を採水する場合、海水を汲み上げて共洗いする必要があるが、このような海水の汲み上げには新たな設備を必要とすることとなり、現実的ではなかった。そこで、新たな設備を用いることなく共洗いをする解決法として、海水中で採水器のサンプル容器を共洗いをすることが考えられるが、現状このような採水器は存在しなかった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、採水時にサンプル容器内を試料水で洗浄する共洗いを行えるようにして、不純物の混入を防止して良好な試料水を採水できるようにした採水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る採水器は、
導入口と連通する導入流路と、
導入流路と連通する主サンプル容器と、
主サンプル容器と連通する中間流路と、
中間流路と連通する共洗い用サンプル容器と、
共洗い用サンプル容器と連通し、他端が導出口と連通する導出流路と、
導入流路を開閉する導入採水弁と、
中間流路を開閉する中間採水弁と、
導出流路を開閉する導出採水弁と、
下側から順にこれら導入口、導入流路、主サンプル容器、中間流路、共洗い用サンプル容器、導出流路、導出口の順序で並べられて、導入採水弁、中間採水弁、および、導出採水弁とともに外界から覆う収容部と、
導入採水弁、中間採水弁および導出採水弁の開閉をそれぞれ制御する制御駆動部と、
を備え、全ての導入採水弁、中間採水弁および導出採水弁が閉の状態で水中へ投入されて採水を行う採水器であって、
この制御駆動部は、
導入採水弁を開いて導入流路および主サンプル容器へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第一洗浄手段と、
中間採水弁を開いて導入流路、主サンプル容器、中間流路、および、共洗い用サンプル容器へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第二洗浄手段と、
導出採水弁を開いて導入流路、主サンプル容器、中間流路、共洗い用サンプル容器、および、導出流路へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第三洗浄手段と、
少なくとも導入採水弁および中間採水弁を閉じて、主サンプル容器の水を試料水として採水する採水手段と、
を有し、それらの機能により採水することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る採水器は、
請求項1に記載の採水器において、
前記共洗い用サンプル容器の容積は、前記主サンプル容器の容積よりも大きくすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る採水器は
導入口と連通する導入流路と、
導入流路と連通する主サンプル容器と、
主サンプル容器と連通する第一中間流路と、
第一中間流路と連通する共洗い用サンプル容器と、
共洗い用サンプル容器と連通する第二中間流路と、
第二中間流路と連通する精密共洗い用サンプル容器と、
精密共洗い用サンプル容器と連通し、他端が導出口と連通する導出流路と、
導入流路を開閉する導入採水弁と、
第一中間流路を開閉する第一中間採水弁と、
第二中間流路を開閉する第二中間採水弁と、
導出流路を開閉する導出採水弁と、
下側から順にこれら導入口、導入流路、主サンプル容器、第一中間流路、共洗い用サンプル容器、第二中間流路、精密共洗い用サンプル容器、導出流路、導出口の順序で並べられて、導入採水弁、第一中間採水弁、第二中間採水弁、および、導出採水弁とともに外界から覆う収容部と、
導入採水弁、第一中間採水弁、第二中間採水弁および導出採水弁の開閉をそれぞれ制御する制御駆動部と、
を備え、全ての導入採水弁、第一中間採水弁、第二中間採水弁および導出採水弁が閉の状態で水中へ投入されて採水を行う採水器であって、
この制御駆動部は、
導入採水弁を開いて導入流路および主サンプル容器へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第一洗浄手段と、
第一中間採水弁を開いて導入流路、主サンプル容器、第一中間流路、および、共洗い用サンプル容器へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第二洗浄手段と、
第二中間採水弁を開いて導入流路、主サンプル容器、第一中間流路、共洗い用サンプル容器、第二中間流路、および、精密共洗い用サンプル容器へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第三洗浄手段と、
導出採水弁を開いて導入流路、主サンプル容器、第一中間流路、共洗い用サンプル容器、第二中間流路、精密共洗い用サンプル容器、および、導出流路へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第四洗浄手段と、
少なくとも導入採水弁および第一中間採水弁を閉じて、主サンプル容器の水を試料水として採水する採水手段と、
を有し、それらの機能により採水することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る採水器は、
請求項3に記載の採水器において、
前記共洗い用サンプル容器の容積は、前記主サンプル容器の容積よりも大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のような本発明によれば、採水時にサンプル容器内を試料水で洗浄する共洗いを行えるようにして、不純物の混入を防止して良好な試料水を採水できるようにした採水器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
続いて本発明を実施するための最良の形態の採水器について、図を参照しつつ説明する。図1は本形態の採水器の構成図である。採水器1は、海(内湾・沿岸等)、湖沼、ダム、河川などの比較的浅い水域において、水質の検査が必要な箇所で使用されるものである。このような採水器1は、大別して採水ユニット100、信号線200、操作部300を備えている。
【0013】
採水ユニット100は、詳しくは、収容部101、導入口102、導入流路103、主サンプル容器104、中間流路105、共洗い用サンプル容器106、導出流路107、導出口108、導入採水弁109、中間採水弁110、導出採水弁111を備えている。
【0014】
収容部101は、金属ケースや樹脂ケースなどであり、少なくとも採水ユニット100が使用される深度での水圧に耐える機能を有するものであれば良く、各種の形態が可能である。
導入口102は収容部101の下側に形成される。
導入流路103は導入口102と連通する流路である。
【0015】
主サンプル容器104は、容器下側で導入流路103と連通する。主サンプル容器104は、充分な量の試料水を採水できるだけの容積を備える。
中間流路105は、主サンプル容器104の上側で連通する。
共洗い用サンプル容器106は、その容器下側で中間流路105に連通する。この共洗い用サンプル容器106の容積は、主サンプル容器104の容積よりも大きくしている。
【0016】
導出流路107は、共洗い用サンプル容器106の上側に連通している。
導出口108は、導出流路107と連通する。
これら導入口102、導入流路103、主サンプル容器104、中間流路105、共洗い用サンプル容器106、導出流路107、導出口108は、下側から上側まで順に並べて配置されて連通しており流路系を構成している。
【0017】
導入採水弁109は、導入流路103を開閉する。
中間採水弁110は、中間流路105を開閉する。
導出採水弁111は、導出流路107を開閉する。
これら導入流路103、主サンプル容器104、中間流路105、共洗い用サンプル容器106、導出流路107、導入採水弁109、中間採水弁110、および、導出採水弁112は、収容部101内に収容され、外界から封止される。
【0018】
信号線200は、詳しくは導入採水弁用制御線201、中間採水弁用制御線202、導出採水弁用制御線203を備える。
導入採水弁用制御線201は、導入採水弁109と操作部300とを接続する。
中間採水弁用制御線202は、中間採水弁110と操作部300とを接続する。
導出採水弁用制御線203は、導出採水弁111と操作部300とを接続する。
【0019】
操作部300は、制御駆動部の一具体例であり、これら導入採水弁109、中間採水弁110および導出採水弁111の開閉をそれぞれ制御する。操作部300は、例えば、コンピュータ装置により自動操作を行うようにしたり、または、スイッチ操作により人間が手動操作を行うようにしても良い。なお、制御内容については後述する。
採水器1はこのような構成である。
【0020】
続いて、採水器1の使用方法について説明する。図2は本形態の採水器の使用例を説明する説明図、図3はウィンチの説明図、図4は採水動作の説明図であり、図4(a)は第一動作図、図4(b)は第二動作図、図4(c)は第三動作図である。
この使用例では海域の試料水を採取することを前提とするものである。また、操作部300はスイッチにより人手で操作するものである。
【0021】
このような使用例では、採水ユニット100、信号線200、操作部300からなる採水器1に加え、綱400、錘500、ウインチ600、舟700を使用する。まず、舟700で所定海域まで移動し、その箇所で採水を開始する。なお、採水器1の採水ユニット100では、導入採水弁109、中間採水弁110および導出採水弁111が閉となっており、このような状態でウインチ600を操作して採水ユニット100が水中へ投入される。
【0022】
ウィンチ600は、図3で示すように、繰出しドラム601、トラバーサ602、駆動制御部603、吊り上げアーム604、滑車605等を備え、例えば、図示しないウィンチ操作部を操作すると駆動制御部603が繰出しドラム601を一定回転速度で回転させて綱400を繰出し供給する。綱400の先端には錘500が接続されており、綱400が常に張り渡された状態を維持しつつ沈降していく。また、綱400は、トラバーサ602により横方向に、また、吊り上げアーム604の先端に設けられた滑車605により上下方向に、滑らかに移動できるように配慮されている。
【0023】
このようにして、綱400を張り渡した状態で海域の所定深度まで錘500が沈降していく。錘500の近傍では採水ユニット100が連結されており、採水ユニット100も深海へ沈降していく。この際、図示しないドラムにより信号線200も繰り出される。そして、深度計などにより目的とする深度に到達したとき、ウィンチ600を止めて採水を開始することとなる。
【0024】
続いて、操作員が操作部300を操作する。
まず、操作員が、導入採水弁109を開くように操作部300を操作すると、操作部300は、導入採水弁109を開くように駆動制御する。すると、水圧により導入口102から海水が導入され、主サンプル容器104の内部圧力が平衡状態に達するまで導入流路103および主サンプル容器104の内部全体へ海水が流れ込む。これにより、導入流路103および主サンプル容器104の内部は海水により洗浄され、共洗いを行ったのと同じ効果を奏しうる。そして暫くすると、図4(a)で示すように、主サンプル容器104の上側では圧縮空気800による空気溜まりが形成され、その下側の主サンプル容器104及び導入流路103では、試料水900が満たされた状態で安定する。
【0025】
続いて、操作員が中間採水弁110を開くように操作部300を操作すると、操作部300は中間採水弁110を開くように駆動制御する。すると、水圧により導入口102からさらに海水が導入され、共洗い用サンプル容器106の内部圧力が平衡状態に達するまで導入流路103、主サンプル容器104、中間流路105、および、共洗い用サンプル容器106の内部全体へ海水が流れ込む。これにより、導入流路103、主サンプル容器104、中間流路105、および、共洗い用サンプル容器106の内部は海水により洗浄され、また、共洗いを行ったのと同じ効果を奏しうる。特に導入流路103、主サンプル容器104は再度全表面が海水で完全に洗浄され再度共洗いされたのと同じ効果を得る。また、一回目の共洗い後に残留する汚染海水はこの洗浄により共洗い用サンプル容器106へ押し流される。ここで、共洗い用サンプル容器106の容積は、主サンプル容器104の容積よりも大きくしており、主サンプル容器104に溜まっていた試料水が全て共洗い用サンプル容器106へ送られるようにしており、主サンプル容器104に汚染された試料水が残留しないように配慮している。そして暫くすると、図4(b)で示すように、共洗い用サンプル容器106の上側では圧縮空気800による空気溜まりが形成され、その下側の共洗い用サンプル容器106、中間流路105、主サンプル容器104及び導入流路103では、試料水900が満たされた状態で安定する。
【0026】
続いて、操作員が導出採水弁111を開くように操作部300を操作すると、操作部300は、導出採水弁111を開くように駆動制御する。すると、水圧により導入口102からさらに海水が導入され、導入流路103、主サンプル容器104、中間流路105、共洗い用サンプル容器106、導出流路107の内部全体へ海水が流れ込み、導出口108から圧縮空気が排出される。これにより、導入流路103、主サンプル容器104は全表面に海水が流れて残留した水や共洗いで汚染された水は完全に排出されて共洗い効果を高めたのと同じ効果を得る。そして暫くすると、図4(c)で示すように、導出流路107、共洗い用サンプル容器106、中間流路105、主サンプル容器104及び導入流路103では、試料水900が満たされた状態で安定する。
【0027】
そして、操作員が少なくとも導入採水弁109および中間採水弁110を閉じるように操作部300を操作して、操作部300が導入採水弁109および中間採水弁110を閉じるように駆動制御する。なお、この場合、導入採水弁109および中間採水弁110を同時に閉じる駆動制御であったり、または、導入採水弁109および中間採水弁110の何れか一方を閉じたのちに暫くして他方を閉じるような制御としても良い。これにより主サンプル容器104に試料水を閉じこめて採水することとなる。
その後、ウィンチ600を操作して、採水ユニット100を引き上げて採水が終了する。
【0028】
以上、本形態の採水器1について説明した。なお、先の操作部300が手動スイッチではなくて携帯型コンピュータ装置等である場合、一連の動作を適宜期間を挟みつつ連続して自動的に行うようにしても良い。
このような採水器1では、従来では不可能であった採水ユニット100内のサンプル容器106の共洗いを実現したため、良質な試料水が得られるようになり、精度の高い検査が可能となる。
【0029】
続いて改良された他の形態の採水器について、図を参照しつつ説明する。図5は他の形態の採水器の構成図である。採水器1’は、大別して採水ユニット100’、信号線200’、操作部300’を備えている。先の形態では採水ユニット100にサンプル容器が2個あったが、本形態では採水ユニット100’に容器を1個増やして3個としたものである。
【0030】
採水ユニット100’は、詳しくは、収容部151、導入口152、導入流路153、主サンプル容器154、第一中間流路155、共洗い用サンプル容器156、第二中間流路157、精密共洗い用サンプル容器158、導出流路159、導出口160、導入採水弁161、第一中間採水弁162、第二中間採水弁163、導出採水弁164を備えている。
【0031】
収容部151は、金属ケースや樹脂ケースなどであり、少なくとも採水器1’が使用される深度での水圧に耐える機能を有するものであれば良く、各種の形態が可能である。
導入口152は収容部151の下側に形成される。
導入流路153は導入口152に連通する流路である。
【0032】
主サンプル容器154は、その下側で導入流路153と連通する。主サンプル容器154は、検査に充分な量の試料水を採水して収容できるだけの容積を有する。
第一中間流路155は、主サンプル容器154の上側で連通する。
共洗い用サンプル容器156は、その容器下側で第一中間流路155に連通する。この共洗い用サンプル容器156は、主サンプル容器154の容積よりも大きくしている。
【0033】
第二中間流路157は、共洗い用サンプル容器156の上側で連通する。
精密共洗い用サンプル容器158は、その容器下側で第二中間流路157に連通する。この精密共洗い用サンプル容器158も、主サンプル容器154の容積よりも大きくしている。
【0034】
導出流路159は、精密共洗い用サンプル容器158の上側に連通している。
導出口160は、導出流路159と連通する。
これら導入口152、導入流路153、主サンプル容器154、第一中間流路155、共洗い用サンプル容器156、第二中間流路157、精密共洗い用サンプル容器158、導出流路159、導出口160は下側から順に並べられて流路系を構成している。
【0035】
導入採水弁161は、導入流路153を開閉する。
第一中間採水弁162は、第一中間流路155を開閉する。
第二中間採水弁163は、第二中間流路157を開閉する。
導出採水弁164は、導出流路159を開閉する。
これら導入流路153、主サンプル容器154、第一中間流路155、共洗い用サンプル容器156、第二中間流路157、精密共洗い用サンプル容器158、導出流路159、導入採水弁161、第一中間採水弁162、第二中間採水弁163、および、導出採水弁164は、収容部151内に収容される。
【0036】
信号線200’は、詳しくは導入採水弁用制御線211、第一中間採水弁用制御線212、第二中間採水弁用制御線213、導出採水弁用制御線214を備える。
導入採水弁用制御線211は、導入採水弁161と操作部300’とを接続する。
第一中間採水弁用制御線212は、第一中間採水弁162と操作部300’とを接続する。
第二中間採水弁用制御線213は、第二中間採水弁163と操作部300’とを接続する。
導出採水弁用制御線214は、導出採水弁164と操作部300’とを接続する。
【0037】
操作部300’は、制御駆動部の一具体例であり、これら導入採水弁161、第一中間採水弁162、第二中間採水弁163、導出採水弁164の開閉をそれぞれ制御する。操作部300’は、例えば、コンピュータ装置により自動操作を行うようにしたり、または、スイッチ操作により人間が手動操作を行うようにしても良い。なお、制御内容については後述する。
採水器1’はこのような構成である。
【0038】
続いて、このような採水器1’の使用について説明する。採水器1’の採水ユニット100’では、導入採水弁161、第一中間採水弁162および第二中間採水弁163、導出採水弁164が閉となっており、このような状態で水中へ投入される。そして、ウィンチ600を止めて海水中で採水を開始することとなる。
【0039】
まず、操作員は、導入採水弁161を開くように操作部300’操作する。操作部300’は、導入採水弁161を開くように駆動制御する。すると、水圧により導入口152から海水が導入され、主サンプル容器154の内部圧力が平衡状態に達するまで導入流路153および主サンプル容器154の内部全体へ海水が流れ込んで海水により洗浄され、共洗いを行ったのと同じ効果を奏しうる。そして暫くすると、主サンプル容器154の上側では圧縮空気による空気溜まりが形成され、その下側の主サンプル容器154及び導入流路153では、試料水が満たされた状態で安定する。
【0040】
続いて、操作員は、第一中間採水弁162を開くように操作部300’を操作すると、操作部300’は第一中間採水弁162を開くように駆動制御する。すると、水圧により導入口152から、さらに海水が導入され、共洗い用サンプル容器156の内部圧力が平衡状態に達するまで導入流路153、主サンプル容器154、第一中間流路155、および、共洗い用サンプル容器156の内部全体へ海水が流れ込む。これにより、導入流路153、主サンプル容器154、第一中間流路155、および、共洗い用サンプル容器156の内部は海水により洗浄され、共洗いを行ったのと同じ効果を奏しうる。特に導入流路153、主サンプル容器154は全表面で海水が完全に触れて再度共洗いがされたのと同じ効果を得る。また、先の共洗いにより残留している汚染海水はこの共洗いにより共洗い用サンプル容器156へ全て押し流される。ここで、共洗い用サンプル容器156の容積は、主サンプル容器154の容積よりも大きくしており、主サンプル容器154に溜まっていた試料水が全て共洗い用サンプル容器156へ送られるようにしており、主サンプル容器154に汚染された試料水が残留しないように配慮している。そして暫くすると、共洗い用サンプル容器156の上側では圧縮空気による空気溜まりが形成され、その下側の共洗い用サンプル容器156、中間流路155、主サンプル容器154及び導入流路153では、試料水が満たされた状態で安定する。
【0041】
続いて、操作員は、第二中間採水弁163を開くように操作部300’を操作すると、操作部300’は第二中間採水弁163を開くように駆動制御する。すると、水圧により導入口152からさらに海水が導入され、精密共洗い用サンプル容器158の内部圧力が平衡状態に達するまで導入流路153、主サンプル容器154、第一中間流路155、共洗い用サンプル容器156、第二中間流路157、および、精密共洗い用サンプル容器158の内部全体へ海水が流れ込む。これにより、導入流路153、主サンプル容器154、第一中間流路155、共洗い用サンプル容器156、第二中間流路157、および、精密共洗い用サンプル容器158の内部は海水により洗浄され、共洗いを行ったのと同じ効果を奏しうる。特に導入流路153、主サンプル容器154の内部は全表面で海水が完全に触れて再度共洗いがされたのと同じ効果を得る。また、主サンプル容器154の海水は共洗い用サンプル容器156へ押し流される。ここで、精密共洗い用サンプル容器158の容積も、主サンプル容器154の容積よりも大きくしており、主サンプル容器154に溜まっていた試料水が全て共洗い用サンプル容器156へ送られるようにしており、主サンプル容器154の試料水が後段へ確実に圧送されて試料水を導入するように配慮している。そして暫くすると、精密共洗い用サンプル容器158の上側では圧縮空気による空気溜まりが形成され、その下側の精密共洗い用サンプル容器158、第二中間流路157、共洗い用サンプル容器156、第一中間流路155、主サンプル容器154、および、導入流路153では、試料水が満たされた状態で安定する。
【0042】
続いて、操作員は、導出採水弁164を開くように操作部300’を操作すると、操作部300’は、導出採水弁164を開くように制御する。すると、水圧により導入口152からさらに海水が導入され、導入流路153、主サンプル容器154、第一中間流路155、共洗い用サンプル容器156、第二中間流路157、精密共洗い用サンプル容器158、および、導出流路159の内部全体へ海水が流れ込み、導出口160から圧縮空気が排出される。これにより、導入流路153、主サンプル容器154は全表面で海水また流れて残留した水や共洗いで汚染された水は完全に主サンプル容器154から排出されて共洗い効果をさらに高めたのと同じ効果を得る。そして暫くすると、導出流路159、精密共洗い用サンプル容器158、第二中間流路157、共洗い用サンプル容器156、第一中間流路155、主サンプル容器154、および、導入流路153では、試料水が満たされた状態で安定する。
【0043】
そして、操作員は、少なくとも導入採水弁161および第一中間採水弁162を閉じるように操作部300’を操作すると、操作部300’は、少なくとも導入採水弁161および第一中間採水弁162を閉じるように制御する。なお、この場合、少なくとも導入採水弁161および第一中間採水弁162を同時に閉じる制御であったり、または、少なくとも導入採水弁161または第一中間採水弁162の何れか一方を閉じたのちに暫くして他方を閉じるような制御としても良い。これにより主サンプル容器154に試料水を閉じこめて採水することとなる。
その後、ウィンチ600を操作して、採水ユニット100’を引き上げて採水が終了する。
【0044】
以上本形態の採水器1’について説明した。なお、先の操作部がコンピュータ等である場合、一連の動作を適宜期間を挟みつつ連続して自動的に行うようにしても良い。
このような採水器1’では、先の形態の採水器1と比較しても共洗いの回数を増加させることにより洗浄効果を増大させ、さらに良質な試料水が確実に得られるようになり、精度の高い検査が可能となる。
【0045】
なお、このような採水器1’では精密共洗い用サンプル容器158の後段に、更なる中間採水弁と精密共洗いサンプル容器を増やすことで、共洗い効果を増大させることができる。これら中間採水弁と精密共洗いサンプル容器の個数については実情に応じて適宜設定することが可能である。
【0046】
さらに、試料水がなくともセンサだけで検出できる項目もあり、この場合は水質検出センサを採水ユニットと併せて沈降させれば、より多くの水質項目についてデータを得ることもできる。このようにセンサを併用するようにしても良い。
【0047】
なお、先の形態では、綱400と信号線200(または信号線200’)とを併走させる構成であるため、特に二本の線が絡まらないように配慮する必要があった。そこで、綱400と信号線200(200’)とを一本にまとめて絡まる事態を防止する構成が考えられる。このような形態について図を参照しつつ説明する。図6は採水器の他の使用例を説明する説明図、図7は外装ケーブルの断面図である。
【0048】
この形態では採水器1(または採水器1’)を用いる際に信号線200(または信号線200’)を内側に収納する外装ケーブル400’を使用するものである。外装ケーブル400’は、外装ワイヤ401、内装ワイヤ402、筒部403を備え、信号線200(または信号線200’)を筒部403内に収容して外界から遮蔽し、さらに筒部403の外側では内装ワイヤ402、外装ワイヤ401を撚って補強したものであり、ワイヤの強さと信号線としての機能とを併せ持つようにしている。
【0049】
そして、信号線200(または信号線200’)は、錘500近傍で外装ケーブル400’から引き出されて採水ユニット100(または採水ユニット100’)と接続され、また、ウィンチ600側で外装ケーブル400’から引き出されて操作部300(または操作部300’)と接続される。
【0050】
このように構成すれば、信号線200,200’用のドラムが不要となり、さらに、二本の線で絡まるおそももなくなって、外装ケーブル400’の繰出し・巻取りが簡単になり、採水作業が容易になるという利点がある。
このように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を実施するための最良の形態の採水器の構成図である。
【図2】本発明を実施するための最良の形態の採水器の使用例を説明する説明図である。
【図3】ウィンチの説明図である。
【図4】採水動作の説明図であり、図4(a)は第一動作図、図4(b)は第二動作図、図4(c)は第三動作図である。
【図5】他の形態の採水器の構成図である。
【図6】採水器の他の使用例を説明する説明図である。
【図7】外装ケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1:採水器
100:採水ユニット
101:収容部
102:導入口
103:導入流路
104:主サンプル容器
105:中間流路
106:共洗い用サンプル容器
107:導出流路
108:導出口
109:導入採水弁
110:中間採水弁
111:導出採水弁
100’:採水ユニット
151:収容部
152:導入口
153:導入流路
154:主サンプル容器
155:第一中間流路
156:共洗い用サンプル容器
157:第二中間流路
158:精密共洗い用サンプル容器
159:導出流路
160:導出口
161:導入採水弁
162:第一中間採水弁
163:第二中間採水弁
164:導出採水弁
200:信号線
201:導入採水弁用制御線
202:中間採水弁用制御線
203:導出採水弁用制御線
200’:信号線
211:導入採水弁用制御線
212:第一中間採水弁用制御線
213:第二中間採水弁用制御線
214:導出採水弁用制御線
300:操作部
400:綱
400’:外装ケーブル
401:外装ワイヤ
402:内装ワイヤ
403:筒部
500:錘
600:ウインチ
601:繰出しドラム
602:トラバーサ
603:駆動制御部
604:吊り上げアーム
605:滑車
700:舟
800:圧縮空気
900:試料水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口と連通する導入流路と、
導入流路と連通する主サンプル容器と、
主サンプル容器と連通する中間流路と、
中間流路と連通する共洗い用サンプル容器と、
共洗い用サンプル容器と連通し、他端が導出口と連通する導出流路と、
導入流路を開閉する導入採水弁と、
中間流路を開閉する中間採水弁と、
導出流路を開閉する導出採水弁と、
下側から順にこれら導入口、導入流路、主サンプル容器、中間流路、共洗い用サンプル容器、導出流路、導出口の順序で並べられて、導入採水弁、中間採水弁、および、導出採水弁とともに外界から覆う収容部と、
導入採水弁、中間採水弁および導出採水弁の開閉をそれぞれ制御する制御駆動部と、
を備え、全ての導入採水弁、中間採水弁および導出採水弁が閉の状態で水中へ投入されて採水を行う採水器であって、
この制御駆動部は、
導入採水弁を開いて導入流路および主サンプル容器へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第一洗浄手段と、
中間採水弁を開いて導入流路、主サンプル容器、中間流路、および、共洗い用サンプル容器へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第二洗浄手段と、
導出採水弁を開いて導入流路、主サンプル容器、中間流路、共洗い用サンプル容器、および、導出流路へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第三洗浄手段と、
少なくとも導入採水弁および中間採水弁を閉じて、主サンプル容器の水を試料水として採水する採水手段と、
を有し、それらの機能により採水することを特徴とする採水器。
【請求項2】
請求項1に記載の採水器において、
前記共洗い用サンプル容器の容積は、前記主サンプル容器の容積よりも大きくすることを特徴とする採水器。
【請求項3】
導入口と連通する導入流路と、
導入流路と連通する主サンプル容器と、
主サンプル容器と連通する第一中間流路と、
第一中間流路と連通する共洗い用サンプル容器と、
共洗い用サンプル容器と連通する第二中間流路と、
第二中間流路と連通する精密共洗い用サンプル容器と、
精密共洗い用サンプル容器と連通し、他端が導出口と連通する導出流路と、
導入流路を開閉する導入採水弁と、
第一中間流路を開閉する第一中間採水弁と、
第二中間流路を開閉する第二中間採水弁と、
導出流路を開閉する導出採水弁と、
下側から順にこれら導入口、導入流路、主サンプル容器、第一中間流路、共洗い用サンプル容器、第二中間流路、精密共洗い用サンプル容器、導出流路、導出口の順序で並べられて、導入採水弁、第一中間採水弁、第二中間採水弁、および、導出採水弁とともに外界から覆う収容部と、
導入採水弁、第一中間採水弁、第二中間採水弁および導出採水弁の開閉をそれぞれ制御する制御駆動部と、
を備え、全ての導入採水弁、第一中間採水弁、第二中間採水弁および導出採水弁が閉の状態で水中へ投入されて採水を行う採水器であって、
この制御駆動部は、
導入採水弁を開いて導入流路および主サンプル容器へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第一洗浄手段と、
第一中間採水弁を開いて導入流路、主サンプル容器、第一中間流路、および、共洗い用サンプル容器へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第二洗浄手段と、
第二中間採水弁を開いて導入流路、主サンプル容器、第一中間流路、共洗い用サンプル容器、第二中間流路、および、精密共洗い用サンプル容器へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第三洗浄手段と、
導出採水弁を開いて導入流路、主サンプル容器、第一中間流路、共洗い用サンプル容器、第二中間流路、精密共洗い用サンプル容器、および、導出流路へ水を導入して主サンプル容器を洗浄する第四洗浄手段と、
少なくとも導入採水弁および第一中間採水弁を閉じて、主サンプル容器の水を試料水として採水する採水手段と、
を有し、それらの機能により採水することを特徴とする採水器。
【請求項4】
請求項3に記載の採水器において、
前記共洗い用サンプル容器の容積は、前記主サンプル容器の容積よりも大きくすることを特徴とする採水器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−113982(P2007−113982A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303907(P2005−303907)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】