説明

採水器

【課題】所望の深度の地下水を採取しうる簡易な構造の採水器を提供する。
【解決手段】ワイヤー3により水中に吊り下げられ、採水孔21を介して地下水が導入される容器20と、容器20の採水孔21を開閉する逆止弁30とを備え、逆止弁30は、水位計50を備えた容器20が深度の水中に達したときの水圧により開くようになっており、さらに容器20の内部に収納され、容器20内に導入された水を貯留する採水容器40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採水器に関し、特に、所望の深度の水を採取する場合に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を緩和するために様々な取り組みがなされている。例えば省エネルギー化や、二酸化炭素の排出を抑制することなどが行われている。このような取り組みの一つとして、工場や発電所等から排出される二酸化炭素を回収し、地下の帯水層などに貯留する方法が提案されている。
【0003】
このとき、地下に貯留された二酸化炭素は、地下の帯水層で酸性の二酸化炭素溶解溶液となり、長期間、地下に二酸化炭素溶解溶液が貯留されると、地下資源や地上の人間の生活圏に影響を及ぼす虞がある。このため、地下に貯留される大量の二酸化炭素が地下環境に及ぼす影響を評価・検討する必要がある。
【0004】
そこで、ボーリングで地面を掘削して掘削孔を形成し、その掘削孔に溜まった地下水を採取し、その水がどのような状態や成分であるかを分析することで二酸化炭素がどの程度漏れ出しているかを把握することができる。特に、異なる複数の深度でそれぞれ地下水を採取できれば、深度に応じた二酸化炭素の漏れ出し状況をより詳細に分析することが可能となる。
【0005】
掘削孔から地下水を採取する際には、北原式採水器やバンドーン採水器などを始め、各種採水器が使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1及び特許文献2に記載の採水器は、水を収納する容器の上部と下部に、水の出入口が設けられており、この水の出入口には、水流に応じてこの出入口を開閉する弁体が取り付けられている。このような採水器は、ワイヤーなどで吊り下げられて掘削孔の地下水中に沈められ、弁体が開いて、容器内部が水で満たされる。そして、弁体が出入口を塞ぎ、容器内に水が密閉された状態で地上に引き上げられ、地下水が容器内に採取される。
【0006】
このような採水器を用いて、所望の深度における地下水を採取するためには、採水器が所望の深度に達したときに水を容器内に導入するような機構を採水器に設ける必要がある。このような機構は、例えば、水圧計と、この水圧計による測定値が所望の深度の水圧と等しくなったとき容器内に地下水を導入する命令を行う電子制御機器等とから構成することができる。
【0007】
しかしながら、このような機構を設けると、採水器が複雑化してしまうし、機構によっては採水器が大型化し、直径数十センチメートル程度の小さな掘削孔に適用し難いという問題が生じてしまう。
【0008】
このような問題は、二酸化炭素の地下貯留による影響を調査する場合に限らず、種々の調査目的で地下水を採取する場合にも同様に存在し、また、ボーリングによる掘削孔からの地下水の採取に限らず、水を採取する一般的な場合についても同様に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭64−50341号公報
【特許文献2】特開平8−220084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑み、所望の深度の地下水を採取しうる簡易な構造の採水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、索条により水中に吊り下げられ、外部から内部に水を導入する流路である採水孔を有する容器と、前記容器の前記採水孔を開閉する弁体とを備え、前記弁体は、前記容器が所定深度の水中に達したときの水圧により開くようになっていることを特徴とする採水器にある。
【0012】
かかる第1の態様では、採水器が所定の深度に達したときに採水孔を開放するように弁体が設けられているので、所定の深度での水を確実に採取することができる。特に、簡易な構造の弁体を用いるだけでよいので、採水器全体の構造を簡略化することができ、構造の簡略化に伴い低コストの採水器が提供される。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する採水器において、前記容器に設けられた水位計を備えることを特徴とする採水器にある。
【0014】
かかる第2の態様では、水の採取と同時に、水の水位を取得することができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載する採水器において、前記容器内部に収納され、前記容器内に導入された水を貯留する採水容器を備えることを特徴とする採水器にある。
【0016】
かかる第3の態様では、容器の内部に採水容器が収納された二重構造を有し、採水容器で水を採取するようになっている。このため、水を採水して地上に引き上げた後、採水容器を取り出せば、他の容器に地下水を移すことなくそのまま採水容器の水を分析等のために利用できる。このように採水器から地下水を取り出す手間を省力化できる。
【0017】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載する採水器において、前記容器は、長尺の円筒状に形成され、水中から引き上げる方向側の一端側に前記採水孔が形成され、その他端側に着脱自在な蓋部材が取り付けられ、前記採水容器は、前記容器の径よりも小さい径で長尺状に形成されていることを特徴とする採水器にある。
【0018】
かかる第4の態様では、容器と採水容器とは、ともに長尺状の部材であるため、採水容器が傾こうとしても容器の内面で規制される。このため、採水容器が傾いてその内部に貯留された地下水がこぼれてしまうことが抑止される。
【0019】
本発明の第5の態様は、第3又は第4の態様に記載する採水器において、前記採水容器は、その開口部が水底側に向くように前記容器に収納されていることを特徴とする採水器にある。
【0020】
かかる第5の態様では、採水容器内に地下水に溶存したメタンなどをガスとして収集することができる。
【0021】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか一つの態様に記載する採水器において、前記弁体は逆止弁であることを特徴とする採水器にある。
【0022】
かかる第6の態様では、一般的な逆止弁を用いて簡易な構造の低コストな採水器を提供できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、所望の深度の地下水を採取しうる簡易な構造の採水器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態1に係る採水器の利用形態の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る採水器の平面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る採水器の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る採水器の断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る逆止弁を設定するときの動作を説明する概念図である。
【図6】地下水を取り込む採水器の動作を説明するための概略図である。
【図7】地下水を取り込む採水器の動作を説明するための概略図である。
【図8】所定深度の地下水に溶存しているガスを採取する際の採水器を説明する概略図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る採水器の利用の態様を説明する概略図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る採水器による地下水の採取で水質汚染の状況を調査する場合を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0026】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る採水器の利用形態の一例を示す図である。図示するように、地面にはボーリングにより掘削孔1が形成されており、この掘削孔1内に地下水2が溜まっている。採水器10は、ワイヤー3により深度Lの水中にまで吊り下げられ、その深度L近傍の水を採取した後、ワイヤー3を介して地上に引き上げられ、採水器10内部の地下水が分析に用いられる。
【0027】
図2は本発明の実施形態1に係る採水器の平面図、図3は採水器の分解斜視図、図4は採水器の断面図である。これらの図に示すように、採水器10は、内部に水が導入される容器20と、容器20に取り付けられた弁体の一例である逆止弁30と、容器20に収納された採水容器40と、水位計50とを備えている。
【0028】
容器20は、内部に採水容器40を収納し得る長尺の円筒部材である。容器20の一端側の開口は採水孔21となっており、外部から内部への水の流路となっている。また、この採水孔21には、逆止弁30が着脱自在に取り付けられている。本実施形態では、採水孔21の内周と逆止弁30の一端側の外周にねじ山が設けられており、これらは螺合するようになっている。
【0029】
また、容器20の他端側には、蓋部材22が着脱自在に取り付けられている。本実施形態では、容器20と蓋部材22とはねじ山が設けられており、これらは螺合するようになっている。容器20の両端のそれぞれに蓋部材22と水位計50が取り付けられることで、容器20の内部に採水容器40を収納する空間である収納部23が形成されている。
【0030】
蓋部材22には、ボールバルブ24が設けられている。このボールバルブ24が開くと、収納部23と外部とが連通し、ボールバルブ24が閉じると収納部23が封止されるようになっている。詳細は後述するが、収納部23内の圧力を調整したり、収納部23内の気体を抽出するために、ボールバルブ24が用いられる。
【0031】
逆止弁30は、容器20の採水孔21の開閉をする弁体である。詳言すると、逆止弁30は、筒状の弁収容部31を有している。弁収容部31の内部には、弁部材32が設けられ、また弁収容部31の内周面に螺合するナット35が設けられている。これらの弁部材32とナット35との間にはバネ34が取り付けられており、弁部材32は、弁収容部31の一端側に設けられた開口部33側に付勢されている。弁部材32はその先端面が開口部33の開口面積よりも大きく形成されており、その先端面で開口部33を塞ぐことが可能となっている。また、ナット35は、バネ34の付勢力を調整するためのものであり、ナット35をレンチなどで回動して開口部33側に進行させれば、バネの付勢力が増すようになっている。
【0032】
このような逆止弁30は、バネ34の付勢力で弁部材32の先端面が開口部33を塞ぐ一方、外部の気圧や水圧がバネ34の付勢力を超えたときに弁部材32が収納部23側に移動し、開口部33が開放される。そして、弁部材32には、弁部材32を貫通する流路36が設けられており、開口部33の開放に伴い弁収容部31内に流入した水が、開口部33の流路36を通り、ナット35の開口を介して収納部23に導入されるようになっている。
【0033】
したがって、詳細は後述するが、バネ34の付勢力を地下水2の深度L(図1参照)における水圧と均衡するようにすれば、採水器10が深度Lに達したとき、弁部材32が開放し、容器20内部にその深度の水が導入される。
【0034】
採水容器40は、一端に開口部41を有し、容器20内に導入された水を貯留する長尺の容器である。採水容器40は、開口部41が容器20の採水孔21に向いた状態で容器20の内部に収納されており、採水孔21から導入された水が採水容器40に流れ込み貯留される。蓋部材22を容器20から外せば、採水容器40は、容器20の収納部23に容易に出し入れが可能となっている。このため、地下水2を貯留した採水容器40を取り出して、他の容器に地下水2を移すことなく、そのまま地下水2を分析などの目的に利用できる。
【0035】
水位計50は、地下水2の水位を計測するためのものであり、連結器60を介して容器20と接続されている。具体的には、水位計50は、その一端側に、連結器60からの水が導入される空間である計測部51が設けられており、その計測部51に端子52が2つ設けられている。これらの端子52には導線53が接続され、導線53はワイヤー3と共に地上にまで導かれている。
【0036】
連結器60は、逆止弁30と水位計50とを連結する部材であり、その内部に流路61が形成され、この流路61に外部からの水を取り込む取水部62が設けられている。連結器60の取水部62から導入された水は流路61を通り、逆止弁30の開口部33に達し、かつ、水位計50の計測部51にも達するように連結器60は構成されている。
【0037】
採水器10が地下水2に着水すると、採水孔21を介して計測部51内にも地下水2が進水する。すると、2つの端子52は地下水2を介して短絡するので、地上では、2つの端子52が短絡したことを検出すれば、採水器10が着水したことが分かる。このとき、ワイヤー3を掘削孔1に吊り下げた長さを計測することで地下水2の水位M(図1参照)を得ることができる。
【0038】
このような水位計50により、採水と同時に地下水2の水位Mを得ることができ、採水作業と水位計測作業を合理化できる。
【0039】
なお、容器20はSUSから形成され、採水容器40はアクリルから形成されているが、特に材質は限定されず、水圧又は容器20内の圧力に耐えうる材質、形状であればよい。
【0040】
次に、採水器10の使用法について説明する。図5は、本発明の実施形態1に係る逆止弁を設定するときの動作を説明する概念図である。
【0041】
まず、採水器10のバネ34の付勢力を設定する。このときの付勢力は、採水しようとする地下水2の深度L(図1参照)における水圧と同じにする。例えば、深度Lとして20mの地下水2を採取するとする。この場合、深度Lが20mであるならば、その深度の水圧は約2kg重/cmである。そこで、ナット35を回動させてバネ34の付勢力を調整し、バネ34を介して弁部材32に2kg重/cmの力が加わるようにする。
【0042】
そして、実際に弁部材32に2kg重/cmの力が加わっているかを確認する。具体的には、ボールバルブ24を開放すると共に、ボールバルブ24の開口にチューブを取り付け、そのチューブの一端を水中に入れる。一方、逆止弁30の開口部33には、チューブ74を介して、ガスタンク(図中では、Heタンク)73を接続し、ガスタンク73に貯蔵されたヘリウムが開口部33に向けて圧送する。このチューブ74には圧力計72が取り付けられており、開口部33に圧送される圧力を確認できるようになっている。
【0043】
ヘリウムを圧送すると、そのヘリウムガスは開口部33側から弁部材32の先端面を押圧する。更にヘリウムを圧送し続けると、ヘリウムガスの圧力が2kg重/cmを上回る。このとき、ヘリウムの圧力はバネ34の付勢力を上回ることになるので、弁部材32の先端面が開口部33から離れ、開口部33が開放される。この結果、ヘリウムは、弁部材32の流路36を経由し、収納部23に流入し、ボールバルブ24、チューブ70を介して水槽71の水中に気泡となって現れる。この気泡が現れたときの圧力計72の圧力は、弁部材32が開口部33を開放するのに必要な圧力であるので、その圧力が2kg重/cmであるか否かを確認する。
【0044】
以上のような逆止弁30の設定をした後、ボールバルブ24を閉じ、採水器10を地下水2に投下する。図6及び図7は、地下水を取り込む採水器の動作を説明するための概略図である。図6に示すように、採水器10が、地下水2に着水すると、連結器60の取水部62から流路61に地下水が流れ込む。その地下水2は、流路61から水位計50の計測部51にまで達し、端子52が短絡して地下水2の水位が計測される。一方、地下水2は、流路61から開口部33に流れ込むが、地下水2の水面近傍では水圧は0kg重/cmであるので、逆止弁30の弁部材32は開口部33を開放せず、収納部23に地下水は取り込まれない。
【0045】
更に採水器10を水中に沈めて、深度Lが20mに達すると、図7に示すように、深度Lの水圧が逆止弁30のバネ34の付勢力を超えるので、逆止弁30の弁部材32が水圧で容器20側に押圧され、開口部33が開放する。この結果、開口部33から弁部材32の流路36を通り、容器20の収納部23に地下水2が導入される。このとき、採水容器40は逆止弁30側に開口部41が向いた状態で容器20内に収納されているので、採水容器40内にも直接的に地下水が貯留される。
【0046】
なお、採水器10が深度Lに達したか否かは直接には計測し得ないが、次の方法で、採水器10が深度Lに達したかを判断できる。
【0047】
すなわち、採水器10が深度Lに達すると、収納部23に地下水2が取り込まれると同時に、収納部23から外部にヘリウムが流出することを利用することである。ヘリウムが収納部23から流出すると、その一部は水位計50の計測部51に溜まり、そのヘリウムが端子52の間を絶縁することになる。この絶縁が地上で観測されたら、採水器10の投下を止めることで、深度Lにおける地下水2を確実に採水容器40に採取することができる。
【0048】
また、収納部23に地下水2が導入されれば、開口部33側から弁部材32にかかる水圧と、ナット35側から弁部材32にかかる水圧とが相殺されるので、バネ34の付勢力により再び弁部材32が開口部33を閉ざすことになる。このため、採水器10が地下水2の深度Lを超えた位置にまで投下された場合でも、採水器10が深度Lから引き上げられる場合であっても、収納部23に新たに地下水が入ることはない。このことから、前記したような水位計50の端子52の絶縁によらずとも、十分深く採水器10を地下水中に投下することでも、所定の深度Lにおける地下水2を採取することができる。
【0049】
その後は、採水器10を地上に引き上げ、蓋部材22を外し、収納部23の採水容器40を取り出すことで、深度Lの水を採取できる。
【0050】
更に、本発明に係る採水器10は、地下水2だけでなく、所定深度Lの地下水2に溶存している種々のガスを採取することもできる。
【0051】
図8は、所定深度の地下水に溶存しているガスを採取する際の採水器を説明する概略図である。図示するように、収納部23には、深度Lで採取された地下水2の他に一部にガス80が溜まっている。収納部23には、もともとヘリウムが充填されていたが、収納部23の一部に地下水2が取り込まれ、その余りの部分にヘリウムが残された状態で開口部33が閉じられると、地下水2に溶存していたメタンなどがガスとして収納部23内に確保される。
【0052】
このように確保されたガス80は、次のように採取する。まず、採水器10を地上に引き上げた後、ボールバルブ24にセプタム81を取り付け、容器20の蓋部材22側全体を覆うようにビニールシート82を設ける。そしてボールバルブ24を開放し、シリンジ84の針部83をビニールシート82及びセプタム81に突き刺し、針部83の先端をボールバルブ24の流路に通して収納部23にまで到達させる。要するに、外気とは遮断した状態で、シリンジ84内に収納部23のガス80を採取する。
【0053】
以上に説明した採水器10は、採水器10が深度Lに達したときに採水孔21を開放するように逆止弁30が容器20に設けられているので、深度Lでの地下水2を確実に採取することができる。特に、所定深度Lの地下水2を得るのに逆止弁30のような簡易な構造の弁体を用いるだけでよいので、採水器10全体の構造を簡略化することができ、構造の簡略化に伴い低コストの採水器10が提供され得る。
【0054】
また、容器20の内部に採水容器40が収納された二重構造を有し、採水容器40で地下水2を採取するようになっている。このため、地下水2を採水して地上に引き上げた後、蓋部材22を外し、採水容器40を取り出せば、他の容器に地下水を移すことなくそのまま採水容器40の地下水2を分析等のために利用でき、地下水を移す手間を省ける。
【0055】
さらに、本発明は、採水孔21の開閉を確実に行うための機構を必要としないので、簡易な構成とすることができ、また、これにより製造コストを低減できる。
【0056】
〈実施形態2〉
実施形態1では、一つの採水器10を用いて地下水2を採取する場合について説明したが、複数の採水器で一度に地下水を採取してもよい。
【0057】
図9は実施形態2に係る採水器の利用の態様を説明する概略図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し重複する説明は省略する。図示するように、ワイヤー3には、所定の間隔を空けて複数の採水器10が取り付けられている。これらの採水器10の逆止弁30(図2参照)は、それぞれの採水器10で採取しようとする地下水の深度に応じて開放するようにバネ34による付勢力が調整されている。このような一連の採水器10を地下水2に投下することで、一度に、それぞれの深度における地下水をそれぞれの採水器10に採水することができる。これにより、異なる複数の深度における地下水の採取を効率的に採取することができる。
【0058】
なお、この採取に際しては、まずゆっくりワイヤー3を伸ばし、それぞれの所定の深度に達する手前まで一連の採水器10を地下水2に投入する。各採水器10が水底側に進行することに伴う地下水2の乱れ・攪拌を極力押さえるためである。その後、ワイヤー3を一気に伸ばし、各採水器10を所定深度に到達させる。このとき、この採水器10の進行
の影響で地下水2の乱れ・攪拌が生じうるが、各採水器10は、所定深度に達して逆止弁30が開き、地下水2が収納部23に導入されるやいなや、逆止弁30が閉じることになるので、この乱れ・攪拌による影響を実質的に受けずにすむ。このように一連の採水器10を掘削孔1に導入することによる地下水2の乱れ・攪拌の影響を受けることなく、地下水2を採取できる。
【0059】
〈他の実施形態〉
なお、本実施形態では、地下水2の採取の目的として、二酸化炭素の地中貯留を実施した際における二酸化炭素が環境に与える影響を評価する場合について説明したが、もちろんこれに限定されるものではない。例えば、地下水の水質汚染の状況を調査する場合にも適用できる。
【0060】
図10は、本実施形態に係る採水器による地下水の採取で水質汚染の状況を調査する場合を説明する概念図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し重複する説明は省略する。図示するように、採水器10を用いて、2つの掘削孔1A、1Bの地下水2の所定の深度で採水を行う。同図の符号100、101A、101Bは、採水を行った採水箇所を表している。
【0061】
例えば、各採水箇所100、101A、101Bで採水したところ、2つの採水箇所101A、101Bで採水した地下水は、汚染物質200の濃度が高いことが判明したとする。このことから、地上の汚染物質200が採水箇所101Aの深度、及び採水箇所101Bの深度の近傍を通るような拡散経路201に沿って拡散していると推定することもできる。このような推定も、本発明に係る採水器10が所定の深度における地下水を採取できることにより実現されることである。
【0062】
もちろん、このような水質汚染の状況の調査に限らず、高レベル廃棄物を地中に埋めて処分するに際し、廃棄する適切な場所を選定するために地下水を採取する目的や他の地下水の採取による調査にも、本発明に係る採水器を利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、種々の調査目的のために水を採取し、この水の分析等を行う産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、1B 掘削孔
2 地下水
3 ワイヤー
10、10A〜D 採水器
20、20A 容器
21、21A 採水孔
23 収納部
30 逆止弁
30A 栓部材
40 採水容器
50 水位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
索条により水中に吊り下げられ、外部から内部に水を導入する流路である採水孔を有する容器と、
前記容器の前記採水孔を開閉する弁体とを備え、
前記弁体は、前記容器が所定深度の水中に達したときの水圧により開くようになっている
ことを特徴とする採水器。
【請求項2】
請求項1に記載する採水器において、
前記容器に設けられた水位計を備える
ことを特徴とする採水器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する採水器において、
前記容器内部に収納され、前記容器内に導入された水を貯留する採水容器を備える
ことを特徴とする採水器。
【請求項4】
請求項3に記載する採水器において、
前記容器は、長尺の円筒状に形成され、水中から引き上げる方向側の一端側に前記採水孔が形成され、その他端側に着脱自在な蓋部材が取り付けられ、
前記採水容器は、前記容器の径よりも小さい径で長尺状に形成されている
ことを特徴とする採水器。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載する採水器において、
前記採水容器は、その開口部が水底側に向くように前記容器に収納されている
ことを特徴とする採水器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載する採水器において、
前記弁体は逆止弁である
ことを特徴とする採水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−189873(P2010−189873A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33238(P2009−33238)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】