説明

採水装置及び採水方法

【課題】透水試験及び採水が可能な採水装置を提供する。
【解決手段】採水装置1は、ボーリング孔2内に設置された第一のパッカー3及び第二のパッカー4と、両パッカー3、4同士を連結するとともに、内部に地下水を流入するための孔5aを有するストレナー管5と、第一のパッカー3の直上に設けられた第一のバルブ6と、一端が第一のバルブ6に接続され、他端が地上に設置された保持装置8に接続された中空のロッド7と、ロッド7の途中に設けられた第二のバルブ9と、ロッド7内の地下水の水位を測定するための水位計10と、地上に設置され、採水対象区間Lの地下水をロッド7内を通して揚水するための揚水ポンプ11とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔内の地下水を採水するための採水装置及び採水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤内の地下水を採水するための採水装置として、例えば、特許文献1には、ボーリング孔内の採水対象区間を閉塞するダブルパッカーと、上部パッカーの直上に設けられ、採水対象区間の地下水を採水するための採水用ボトルと、採水対象区間内の地下水を採水用ボトルに揚水する揚水手段と、採水用ボトル内に揚水される地下水の水圧、水質等を計測する水質測定手段とを備えた採水装置が開示されている。
【0003】
この採水装置を用いた採水方法では、ダブルパッカーで採水対象区間を閉塞した後に、採水用ボトル内に揚水される採水対象区間の地下水の水圧、水質等を水質測定手段で測定し、この地下水が掘削水又は地層水のいずれであるかを判定し、その地下水が地層水であると判断した場合に地下水を採水する。
【0004】
この採水作業では、まず、透水試験終了後に透水試験装置をボーリング孔内から地上に搬出し、採水装置をボーリング孔内に設置する。次に、ダブルパッカーで閉塞した採水対象区間内に貯留している掘削水等を所定の量だけ揚水し、採水対象区間内を地層水に置換してから採水用ボトル内に地下水を採水する。ここで、所定の量とは、一般的に、ボーリング孔内の採水対象区間の容積の約3倍とされており、この量の地下水を地上に揚水すると採水対象区間内の地下水が完全に地層水に置換されたとするものである。
【特許文献1】特開平6−294270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した採水装置を用いた場合には、透水試験終了後に透水試験装置を地上に搬出し、採水装置を設置するので、透水試験装置の搬出及び採水装置の設置に手間及び時間がかかるという問題点があった。
【0006】
また、透水試験時にも大量の地下水を揚水するので、透水試験終了時には既に採水対象区間に地層水が充満している状態であるにもかかわらず、透水試験装置を採水装置に入れ替えることによって、地層水と掘削水等とが混合するために、上述した所定の量の地下水を再び揚水しなければならず、作業効率が悪いという問題点があった。
【0007】
特に、採水対象区間が大深度の場合は、透水試験装置を地上に搬出して採水装置を設置する作業及び上記所定の量の地下水の揚水には、多大な時間を要し、工期が長くなるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、透水試験及び採水が可能な採水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の地下水の採水装置は、ボーリング孔内の地下水を採水するための採水装置であって、筒状のロッドに接続され、前記ボーリング孔内の所定の位置に設置されるパッカーと、前記パッカーで閉塞された区間内の地下水を前記ロッドを介して揚水するためのポンプと、前記ロッドに設けられ、前記ロッド内を開閉するバルブとを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0010】
本発明による採水装置によれば、パッカーと、ポンプと、ロッドに接続されたバルブとを備えているので、パッカーで所望の区間を閉塞するとともに、バルブを閉止し、このバルブより上側のロッド内の水をポンプで揚水してロッド内を空洞にした後にバルブを開放することによって透水試験を実施することができる。また、透水試験終了後、ポンプで地下水を揚水しつつ、バルブを閉止することにより、ロッド内に地下水を採水することができる。したがって、透水試験装置及び採水装置を用いてそれぞれ透水試験及び採水を実施する場合と比べて、透水試験終了後の透水試験装置の搬出作業及び採水装置の設置作業にかかる手間及び時間を省くことができる。
【0011】
また、透水試験終了後に、孔内の機器類を入れ替えることなく、採水を行うために、透水試験時に揚水した地下水の容積を上記所定の量の一部に含むことができので、所定の量の地下水を揚水する時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
本発明において、前記バルブは、前記ロッドに複数設けられ、前記複数のバルブを閉止することにより、前記複数のバルブ間の前記ロッド内に地下水を採水することとしてもよい。
【0013】
本発明による採水装置によれば、バルブがロッドに複数個接続されているので、揚水ポンプで地下水を揚水しつつ、ロッド内を地下水で充満させた状態でこれらのバルブを閉止することにより、地下水を空気に触れさせることなく、バルブ間のロッド内に採水することができる。
【0014】
本発明において、前記複数のバルブ間に、前記ロッドの替わりに筒状の採水用ボトルを設けて、前記複数のバルブを閉止することにより、前記複数のバルブ間の前記採水用ボトル内に地下水を採水することとしてもよい。
【0015】
本発明による採水装置によれば、複数のバルブ間に、ロッドの替わりに筒状の採水ボトルを設けるので、バルブ間の採水ボトル内に地下水を空気に触れることなく、採水することができる。採水後は、採水装置から採水ボトルを取り外して、そのまま保存することができるので、ロッドに地下水を採水する場合と比べて、地下水をロッドから採水ビン等の容器に移す作業を省くことができる。
【0016】
また、採水ボトルは筒状なので、採水ボトルを設けた場合でも透水試験を実施することができる。
【0017】
本発明の採水方法は、ボーリング孔内の地下水を採水するための採水方法において、筒状のロッドに接続され、前記ボーリング孔内の所定の位置に設置されるパッカーと、前記パッカーで閉塞された区間内の地下水を前記ロッドを介して揚水するためのポンプと、前記ロッドに設けられ、前記ロッド内を開閉するバルブとを備えた採水装置を用い、前記区間内の透水性を調査する透水試験を実施し、前記透水試験終了後に、前記ポンプで前記区間内の地下水を揚水しつつ、前記バルブを閉止して、前記ロッド内に前記区間内の地下水を採水することを特徴とする。
【0018】
本発明による採水方法によれば、パッカーと、ポンプと、ロッドに接続されたバルブとを備えた採水装置を用いるので、パッカーで所望の区間を閉塞するとともに、バルブを閉止し、このバルブより上側のロッド内の水をポンプで揚水してロッド内を空洞にした後にバルブを開放することによって透水試験を実施することができる。そして、透水試験終了後、ポンプで地下水を揚水しつつ、バルブを閉止することにより、ロッド内に地下水を採水することができる。したがって、透水試験装置及び採水装置を用いて透水試験及び採水を実施する場合と比べて、透水試験終了後の透水試験装置の搬出作業及び採水装置の設置作業にかかる手間及び時間を省くことができる。
【0019】
また、透水試験終了後に、孔内の機器類を入れ替えることなく、採水を行うために、透水試験時に揚水した地下水の容積を上記所定の量の一部に含むことができので、所定の量の地下水を揚水する時間を大幅に短縮することができる。
【0020】
本発明において、前記バルブは、前記ロッドに取り外し可能に複数設けられ、前記ポンプで地下水を揚水しながら、前記複数のバルブを同時に又は孔口側から孔底側へ向かって順番に閉止することにより、前記複数のバルブ間の前記ロッド内に地下水を空気に触れないように採水することとしてもよい。
【0021】
本発明による採水方法によれば、揚水ポンプで地下水を揚水しつつ、ロッド内を地下水で充満させた状態で複数のバルブを同時又は孔口側から孔底側へ向かって順番に閉止することにより、地下水を空気に触れさせることなく、バルブ間のロッド内に採水することができる。
【0022】
本発明において、地下水を採水した前記ロッドの一端に設けられている前記バルブに接続され、地下水を採水していない前記ロッドをそのバルブから取り外して、地下水を採水した前記ロッドを、両端に前記バルブを取り付けたまま前記採水装置から取り外し、地下水を採水した前記ロッドの両端に設けられている前記バルブのいずれか一方を内部が真空状態の真空ボトルに接続して、前記ロッド内の地下水を前記真空ボトル内に移すこととしてもよい。
【0023】
本発明による採水方法によれば、地下水を採水したロッドを、両端にバルブを接続した状態で採水装置から取り外して、その地下水を真空ボトルに移すので、地下水は空気に触れない。また、地下水は真空ボトル内に保存されるので、採水後に行う水質分析時まで地下水を空気に触れないように保存できる。
【0024】
本発明において、前記複数のバルブ間に、前記ロッドの替わりに筒状の採水用ボトルを設けて、この採水用ボトル内に地下水を採水することとしてもよい。
【0025】
本発明による採水方法によれば、複数のバルブ間に、ロッドの替わりに筒状の採水ボトルを設けるので、バルブ間の採水ボトル内に地下水を空気に触れることなく、採水することができる。採水後は、採水装置から採水ボトルを取り外して、そのまま保存することができるので、ロッド内に地下水を採水する場合と比べて、地下水をロッド内から真空ボトル等の容器に移す作業を省くことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による地下水の採水装置及び採水方法によれば、透水試験及び採水を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の第一実施形態に係る地下水の採水装置1をボーリング孔2内に設置した状態を示す模式断面図である。
【0028】
図1に示すように、採水対象区間Lの地下水を採水するための採水装置1は、ボーリング孔2内の採水対象区間Lの上方及び下方にそれぞれ設置された第一のパッカー3及び第二のパッカー4と、両パッカー3、4同士を連結するとともに、内部に地下水を流入するための孔5aを有するストレナー管5と、第一のパッカー3の直上に設けられた第一のバルブ6と、一端が第一のバルブ6に接続され、他端が地上に設置されたボーリングマシン等の保持装置8に接続された中空のロッド7と、ロッド7の途中に設けられた第二のバルブ9と、ロッド7内の地下水の水位を測定するための水位計10と、地上に設置され、採水対象区間Lの地下水をロッド7内を通して揚水するための揚水ポンプ11とを備えている。
【0029】
第一のパッカー3と第一のバルブ6、第一のバルブ6とロッド7、ロッド7と第二のバルブ9、ロッド7と保持装置8は、それぞれねじ接続されており、取り外しが可能である。
【0030】
揚水ポンプ11を稼動させると採水対象区間Lの地下水は、第一のパッカー3と第二のパッカー4との間のストレナー管5内に流入し、ロッド7内を通して地上に揚水される。その際に、地下水を地上に揚水しながらロッド7内を地下水で充満させた状態で、第一及び第二のバルブ6、9を閉止し、次に、揚水ポンプ11を停止すると、両バルブ6、9間のロッド7内に地下水が採水される。
【0031】
第一及び第二のバルブ6、9は地上に設けられたスイッチ12、13を操作することにより開閉可能である。
【0032】
揚水ポンプ11は、ポンプの稼動により発熱したモーターの熱がロッド7内の地下水に伝わるのを防止するために、第一及び第二のバルブ6、9よりも離れた位置に設置することが望ましく、本実施形態においては、地上に設置した。
【0033】
次に、採水装置1で採水対象区間Lの地下水を採水する方法について、作業手順にしたがって説明する。
【0034】
まず、採水装置1の第一及び第二のパッカー3、4、ロッド7等をボーリング孔2内に挿入し、両パッカー3、4に圧縮空気を注入して孔壁に密着させて、採水対象区間Lを閉塞する。
【0035】
次に、透水試験を実施するために、地上のスイッチ12を操作して第一のバルブ6を閉止し、スイッチ13を操作して第二のバルブ9を開放する。そして、第一のバルブ6より上側のロッド7内に貯留している地下水を揚水ポンプ11にて揚水し、第一のバルブ6より上側のロッド7内を空洞にする。このとき揚水した地下水の量を透水試験開始時の揚水量として測定する。第一のバルブ6よりも上側のロッド7内の水をすべて揚水したら揚水ポンプ11を停止する。
【0036】
次に、地上のスイッチ12を操作して第一のバルブ6を開放して採水対象区間Lの地下水をロッド7内の上記空洞部分に流入させて、透水試験を開始する。
【0037】
第一のバルブ6を開放すると同時に、ロッド7内を地下水が上昇するので、ロッド7内の地下水位の回復状況を水位計10で測定して平衡水位や透水係数を算出し、透水試験を終了する。
【0038】
次に、第一及び第二のバルブ6、9を開放した状態のままで揚水ポンプ11を稼動させると、採水対象区間Lの地下水は、ストレナー管5及びロッド7内を通って地上に送給される。このようにして、揚水を連続して行い、透水試験開始時から地上に揚水された地下水の累積容積(上記透水試験開始時の揚水量を含む)が、前述した上記所定の量である採水対象区間Lの容積の約3倍を超えた時点で、採水対象区間L内がすべて地層水に完全に置換されたと判定して、採水を実施する。
【0039】
採水作業は、揚水ポンプ11を稼動させて地下水を揚水しつつ、ロッド7内に地下水を充満した状態で、まず、第二のバルブ9を閉止し、次に、第一のバルブ6を閉止する。揚水ポンプ11は、第二のバルブ9を閉止した後に適宜停止する。揚水ポンプ11を稼動させてロッド7内を地下水で充満させた状態で両バルブ6、9を閉止するので、地下水は空気に触れることなく両バルブ6、9間のロッド7内に採水される。
【0040】
両バルブ6、9を閉止する順番は、両バルブ6、9間のロッド7内に空気が入らないように、まず、上側の第二のバルブ9を閉止し、次に、下側の第一のバルブ6を閉止する順番で行うか、又は両バルブ6、9を同時に閉止する。
【0041】
揚水ポンプ11を停止後、両パッカー3、4、ロッド7等を地上に引き上げつつ、まず、保持装置8とロッド7のねじ接続を緩めて、両パッカー3、4、ロッド7等を保持装置8から取り外し、次に、第二のバルブ9とこのバルブ9の上側のロッド7のねじ接続を緩めて、第二のバルブ9よりも上側のロッド7を取り外し、最後に、第一のバルブ6と第一のパッカー3のねじ接続を緩めて、第一及び第二のバルブ6、9をそれぞれ下端、上端に接続した状態で両バルブ6、9間のロッド7を取り外す。
【0042】
図2は、両バルブ6、9間のロッド7内に採水された地下水を真空ボトル14aに移す状態を示す図である。
【0043】
図2に示すように、真空ボトル14aは、その入口部分に真空用バルブ14cが接続されており、この真空用バルブ14cを閉じることにより、真空ボトル14a内を密閉することができる。真空用バルブ14cには、真空ボトル14a内の空気を吸引して真空にするための吸引装置14bが接続されている。
【0044】
真空用バルブ14cが開放され、内部に空気が入っている状態の真空ボトル14aの真空用バルブ14cに、内部に地下水を採水したロッド7の下端側の第一のバルブ6を閉止した状態で接続する。
【0045】
次に、吸引装置14bを稼動させて、第一のバルブ6と真空バルブ14cとの接続部分内の空気及び真空ボトル14a内の空気を吸引装置14bで吸引して真空状態にし、その後、第一のバルブ6を開放してロッド7内の地下水を真空ボトル14aに移す。そして、真空用バルブ14cを閉止して、空気が真空ボトル14a内に入らないように密封して保存する。
【0046】
以上説明した本発明の第一実施形態における地下水の採水装置1によれば、第一のパッカー3と、揚水ポンプ11と、ロッド7に接続された第一及び第二のバルブ6、9とを備えているので、透水試験を実施することができる。また、透水試験終了後、揚水ポンプ11で地下水を揚水しつつ、第一及び第二のバルブ6、9を閉止することにより、両バルブ6、9間のロッド7内に地下水を採水することができる。したがって、透水試験装置及び採水装置を用いてそれぞれ透水試験及び採水を実施する場合と比べて、透水試験終了後の透水試験装置の搬出作業及び採水装置の設置作業にかかる手間及び時間を省くことができる。
【0047】
また、透水試験終了後に、ボーリング孔2内の機器類を入れ替えることなく、採水を行うために、透水試験開始時に揚水した地下水の揚水量を上記所定の量の一部に含むことができので、所定の量の地下水を揚水する時間を大幅に短縮することができる。
【0048】
さらに、揚水ポンプ11で地下水を揚水しつつ、ロッド7内を地下水で充満させた状態で両バルブ6、9を閉止するので、地下水を空気に触れさせることなく採水できる。そして、ロッド7内の地下水を真空ボトル14aに移すことにより、水質分析時まで地下水を空気に触れないように保存できる。
【0049】
そして、第一のパッカー3及び第二のパッカー4を備えているので、所望の深度の地下水を採水することができる。
【0050】
次に、本発明における採水装置1の異なる実施形態を示す。本発明の第二実施形態は、第一実施形態の両バルブ6、9間のロッド7を採水用ボトル22に置き換えたものである。以下の説明において、第一実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0051】
図3は、本発明の第二実施形態に係る地下水の採水装置21をボーリング孔2内に設置した状態を示す模式断面図である。
【0052】
図3に示すように、採水対象区間Lの地下水を採水するための採水装置21は、第一実施形態の採水装置1の両バルブ6、9間に筒状の採水用ボトル22を設けたものである。
【0053】
第一のバルブ6と採水用ボトル22、採水用ボトル22と第二のバルブ9は、それぞれねじ接続されており、取り外しが可能である。
【0054】
採水用ボトル22は、水質分析を行う測定機関等へ運搬可能な長さに調整されている。また、本実施形態において、採水用ボトル22の材質は、長期間地下水を貯水しても水質に影響を及ぼさないステンレスとした。
【0055】
採水対象区間Lの地下水は、透水試験終了後に、第一実施形態と同様の方法で採水用ボトル22内に採水される。採水後、両パッカー3、4、ロッド7等を地上に引き上げつつ、両パッカー3、4、ロッド7等を保持装置8から取り外し、次に、第二のバルブ9とロッド7のねじ接続を緩めて、ロッド7を取り外し、最後に、第一のバルブ6とパッカー3のねじ接続を緩めて、第一及び第二のバルブ6、9をそれぞれ下端、上端に接続した状態で採水用ボトル22を取り外す。
【0056】
採水した地下水は、両バルブ6、9を接続した状態のままで採水用ボトル22内に保存する。
【0057】
以上説明した本発明の第二実施形態における地下水の採水装置21によれば、採水用ボトル22を用いるので、採水後、そのまま保存することができる。すなわち、水質分析時まで地下水を空気に触れないように保存することができる。
【0058】
次に、本発明における第三の実施形態を示す。本発明の第三実施形態は、採水する地下水が空気に触れても構わない場合の実施形態である。
【0059】
図4は、本発明の第三実施形態に係る地下水の採水装置31をボーリング孔2内に設置した状態を示す模式断面図である。
【0060】
図4に示すように、採水対象区間Lの地下水を採水するための採水装置31は、第一及び第二実施形態の採水装置1、11から第二のバルブ9を取り外し、第一のバルブ6のみを設けたものである。
【0061】
揚水ポンプ11を稼動させて地下水を地上に揚水しながらロッド7内を地下水で充満させた状態で、第一のバルブ6を閉止し、次に、揚水ポンプ11を停止すると、第一のバルブ6よりも上側のロッド7内に地下水が採水される。
【0062】
次に、採水装置31で採水対象区間Lの地下水を採水する方法について、作業手順にしたがって説明する。
【0063】
まず、採水装置31の両パッカー3、4、ロッド7等をボーリング孔2内に設置する。
【0064】
次に、地上のスイッチ12を操作して第一のバルブ6を閉止する。第一のバルブ6より上側のロッド7内に貯留している地下水を揚水ポンプ11にて揚水し、第一のバルブ6より上側のロッド7内を空洞にする。このとき揚水した地下水の量を透水試験開始時の揚水量として測定する。第一のバルブ6よりも上側のロッド7内の水をすべて揚水したら揚水ポンプ11を停止する。
【0065】
次に、地上のスイッチ12を操作して第一のバルブ6を開放し、採水対象区間Lの地下水をロッド7内の上記空洞部分に流入させて、透水試験を実施する。
【0066】
そして、透水試験終了後、第一のバルブ6を開放した状態のままで揚水ポンプ11を稼動させて、第一及び第二実施形態と同様に、揚水された地下水の累積容積(上記透水試験開始時の揚水量を含む)が、前述した採水対象区間Lの容積の約3倍を超えた時点で採水を実施する。
【0067】
採水作業は、揚水ポンプ11を稼動させて地下水を揚水しつつ、ロッド7内に地下水を充満させた状態で、まず、第一のバルブ6を閉止し、次に、揚水ポンプ11を停止する。ロッド7内を地下水で充満させた状態で第一のバルブ6を閉止するので、地下水は第一のバルブ6よりも上側のロッド7内に採水される。
【0068】
揚水ポンプ11を停止後、両パッカー3、4、ロッド7等を地上に引き上げつつ、まず、保持装置8とロッド7のねじ接続を緩めて、両パッカー3、4、ロッド7等を保持装置8から取り外し、次に、第一のバルブ6とパッカー3のねじ接続を緩めて、第一のバルブ6を下端に接続した状態でロッド7を取り外す。そして、ロッド7内の地下水をボトル等の容器に移して保存する。地下水を採水したロッド7を採水装置31から取り外して地下水を容器に移す際に、第一のバルブ6の接続されている端面と反対側のロッド7の端面は開放されているので、地下水は空気に触れた状態である。
【0069】
なお、本実施形態においては、パッカーを複数個用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、パッカーを1個用いる場合にも適用可能で、例えば、図5に示すように、孔底から所定の深度までの採水対象区間Sの上方に設置された第一のパッカー3と、第一のパッカー3の下端に接続され、地下水を吸い込むための筒状の吸引管32と、第一のパッカー3の直上に設けられた第一のバルブ6と、ロッド7と、水位計10と、揚水ポンプ11とを備えた採水装置33を用いると、採水対象区間Sの地下水は、揚水ポンプ11を稼動させることにより、吸引管32内に流入し、ロッド7内を通して地上に揚水されるので、地下水を地上に揚水しながらロッド7内を地下水で充満させた状態で、第一のバルブ6を閉止すると、第一のバルブ6よりも上側のロッド7内に地下水が採水される。
【0070】
以上説明した本発明の第三実施形態における地下水の採水装置31、33によれば、第一及び第二のパッカー3、4又は第一のパッカー3と、揚水ポンプ11と、第一のバルブ6とを備えているので、透水試験を実施することができる。また、透水試験終了後、揚水ポンプ11で地下水を揚水しつつ、第一のバルブ6を閉止することにより、ロッド7内に地下水を採水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第一実施形態に係る地下水の採水装置をボーリング孔内に設置した状態を示す模式断面図である。
【図2】両バルブ間のロッドに採水された地下水を真空ボトルに移し替える状態を示す図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る地下水の採水装置をボーリング孔内に設置した状態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の第三実施形態に係る地下水の採水装置をボーリング孔内に設置した状態を示す模式断面図である。
【図5】本実施形態に係る他の実施例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1、21、31、33 採水装置 2 ボーリング孔
3 第一のパッカー 4 第二のパッカー
5 ストレナー管 5a 孔
6 第一のバルブ 7 ロッド
8 保持装置 9 第二のバルブ
10 水位計 11 揚水ポンプ
12 スイッチ 13 スイッチ
14a 真空ボトル 14b 吸引装置
14c 真空用バルブ 22 採水用ボトル
32 吸引管 L、S 採水対象区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング孔内の地下水を採水するための採水装置であって、
筒状のロッドに接続され、前記ボーリング孔内の所定の位置に設置されるパッカーと、
前記パッカーで閉塞された区間内の地下水を前記ロッドを介して揚水するためのポンプと、
前記ロッドに設けられ、前記ロッド内を開閉するバルブとを備えることを特徴とする採水装置。
【請求項2】
前記バルブは、前記ロッドに複数設けられ、
前記複数のバルブを閉止することにより、前記複数のバルブ間の前記ロッド内に地下水を採水することを特徴とする請求項1に記載の採水装置。
【請求項3】
前記複数のバルブ間に、前記ロッドの替わりに筒状の採水用ボトルを設けて、前記複数のバルブを閉止することにより、前記複数のバルブ間の前記採水用ボトル内に地下水を採水することを特徴とする請求項2に記載の採水装置。
【請求項4】
ボーリング孔内の地下水を採水するための採水方法において、
筒状のロッドに接続され、前記ボーリング孔内の所定の位置に設置されるパッカーと、前記パッカーで閉塞された区間内の地下水を前記ロッドを介して揚水するためのポンプと、前記ロッドに設けられ、前記ロッド内を開閉するバルブとを備えた採水装置を用い、
前記区間内の透水性を調査する透水試験を実施し、
前記透水試験終了後に、前記ポンプで前記区間内の地下水を揚水しつつ、前記バルブを閉止して、前記ロッド内に前記区間内の地下水を採水することを特徴とする採水方法。
【請求項5】
前記バルブは、前記ロッドに取り外し可能に複数設けられ、
前記ポンプで地下水を揚水しながら、前記複数のバルブを同時に又は孔口側から孔底側へ向かって順番に閉止することにより、前記複数のバルブ間の前記ロッド内に地下水を空気に触れないように採水することを特徴とする請求項4に記載の採水方法。
【請求項6】
地下水を採水した前記ロッドの一端に設けられている前記バルブに接続され、地下水を採水していない前記ロッドをそのバルブから取り外して、地下水を採水した前記ロッドを、両端に前記バルブを取り付けたまま前記採水装置から取り外し、
地下水を採水した前記ロッドの両端に設けられている前記バルブのいずれか一方を内部が真空状態の真空ボトルに接続して、前記ロッド内の地下水を前記真空ボトル内に移すことを特徴とする請求項5に記載の採水方法。
【請求項7】
前記複数のバルブ間に、前記ロッドの替わりに筒状の採水用ボトルを設けて、この採水用ボトル内に地下水を採水することを特徴とする請求項5に記載の採水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−293224(P2009−293224A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146167(P2008−146167)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】