採熱機能付き樹脂管の製造方法
【課題】熱交換用管材を埋設して下水熱を効率よく採熱可能な樹脂管を提供する。
【解決手段】円筒形の金型52の型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して防護層21を形成し、次いで、防護層21の外周面にモルタルを供給してモルタル層22を形成した後、モルタル層22に熱交換用管材4を埋設し、次いで、モルタル層22の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて内方FRP層23を形成した後、内方FRP層23の外周面にレジンモルタルを供給してレジンモルタル層24を形成し、さらに、レジンモルタル層24の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて外方FRP層25を形成し、次いで、硬化炉内で加熱して不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させる。
【解決手段】円筒形の金型52の型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して防護層21を形成し、次いで、防護層21の外周面にモルタルを供給してモルタル層22を形成した後、モルタル層22に熱交換用管材4を埋設し、次いで、モルタル層22の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて内方FRP層23を形成した後、内方FRP層23の外周面にレジンモルタルを供給してレジンモルタル層24を形成し、さらに、レジンモルタル層24の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて外方FRP層25を形成し、次いで、硬化炉内で加熱して不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、採熱機能を備えた樹脂管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、老朽化した下水道、農業用水路等の既設管路を更生するため、既設管路内において、樹脂管、例えば、強化プラスチック複合管を順次接合して更生管を製管し、更生管を新設管路として利用することが提案され、実施されている。この強化プラスチック複合管は、直管状の管本体の一端に短筒状の受口部が固定されるとともに、管本体の他端にテーパー面の挿口部が形成されている。そして、強化プラスチック複合管の管本体及び受口部は、内周側から順に内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層を積層して形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、下水道は、通常地中に埋設されていることから、下水道を流下する下水は外気の影響を受けにくく、年間を通してほぼ一定の水温に維持されている。このため、下水を熱源として様々な用途、例えば、降雪地域における融雪に利用することが提案されている。具体的には、下水道管の長手方向に平行な複数本の直管及び直管の端部同士を接続するベント管からなる採熱管と、該採熱管の間隙及び周囲に充填された保護材とからなるジャケット状の採熱設備を製作し、この採熱設備を下水道管の外周面に設置するとともに、採熱設備をヒートポンプユニットに配管接続し、採熱設備を介して採熱された下水熱をヒートポンプユニットを介して活用するようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−205711号公報
【特許文献2】特開2008−241226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した採熱設備は下水道管の管頂側外周面に設置されているため、通常下水道管の管底側を流下する下水の熱を下水道管の内部空間及び下水道管体を経て採熱しなければならず、伝熱性能が低下して下水熱を効率よく採熱することができない他、採熱した下水熱の一部が地中に放散することを避けられない。しかも、下水道管と採熱設備とをそれぞれ別個に製作し、下水道管を敷設した後、敷設された下水道管に採熱設備を配置する必要があり、作業性が低いという問題があった。特に、既設の下水道管に採熱設備を配置するためには、道路等を掘削して下水道管を露出させる必要があり、作業が大がかりとなってコストがかさむものとなる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、熱交換用管材を埋設して下水熱を効率よく採熱可能な樹脂管を容易に製造することのできる採熱機能付き樹脂管の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転しながら軸方向に移動する円筒状型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して防護層を形成し、次いで、防護層の外周面にモルタルを供給してモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設し、次いで、モルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて内方FRP層を形成した後、内方FRP層の外周面にレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて外方FRP層を形成し、次いで、硬化炉内で加熱して不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、まず、回転しながら軸方向に移動する円筒状型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して防護層を形成する。次いで、防護層の外周面にモルタルを供給してモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設する。次いで、モルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて内方FRP層を形成し、次いで、内方FRP層の外周面に無機充填材を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて外方FRP層を形成する。その後、順に積層された防護層、モルタル層、内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層からなる積層体を硬化炉内に導いて加熱し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させ、熱交換用管材を埋設した樹脂管(強化プラスチック複合管)を製造する。
【0009】
この結果、下水熱を効率よく採熱できるように熱交換用管材を埋設した樹脂管を、既存のフィラメントワインディング法の成形装置を利用して容易に製造することができる。
【0010】
本発明は、長手方向に沿って切欠部を形成するとともに、縮径可能な略円筒形の金型の切欠部の型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を積層して防護層を形成し、次いで、防護層の外周面にモルタルを供給して切欠部を埋めるモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設し、次いで、金型を回転させるとともに軸心方向に往復移動させ、金型の型面及びモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して内方FRP層を形成した後、内方FRP層の外周面にレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して外方FRP層を形成し、次いで、金型を縮径して防護層、モルタル層、内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層からなる積層体を離型させた後、積層体を硬化炉に搬送して加熱し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、まず、長手方向に沿って切欠部を形成するとともに、縮径可能な略円筒形の金型の切欠部の型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を重ねて防護層を形成する。次いで、防護層の外周面にモルタルを供給して切欠部を埋設するモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設する。次いで、金型を回転させるとともに軸心方向に往復移動させ、金型の型面及びモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して内方FRP層を形成し、次いで、内方FRP層の外周面に無機充填材を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して外方FRP層を形成する。その後、金型を縮径して順に積層された防護層、モルタル層、内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層からなる積層体を離型させ、硬化炉内に搬送して加熱し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させ、熱交換用管材を埋設した樹脂管(強化プラスチック複合管)を製造する。
【0012】
この結果、下水熱を効率よく採熱できるように熱交換用管材を埋設した樹脂管を、既存のフィラメントワインディング法の成形装置を利用して容易に製造することができる。
【0013】
本発明において、前記熱交換用管材が金型の長手方向に平行な複数本の直管又は波型管と、各直管又は波型管の前後各端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手がモルタル層の前後各端面から突出されることが好ましい。これにより、採熱機能付き樹脂管を順に接合して更生管を製管する際、熱交換用管材を円滑に接続して、接続した樹脂管の長さに対応する長さの複数本の熱交換用管材を得ることができる。
【0014】
本発明において、前記熱交換用管材が1本の管路を形成するように前後各端部において複数の折り返し部を有する折り返し管と、折り返し管の受口部側端部及び挿口部側端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手が管本体の前後各端面から突出されることが好ましい。これにより、採熱機能付き樹脂管を順に接合して更生管を製管する際、熱交換用管材を円滑に接続して、接続した樹脂管の本数倍の長さの連続する1本の熱交換用管材を得ることができる。しかも、樹脂管を接合する際、1個の管継手を接続すればよく、さらに接続作業が容易となる。
【0015】
本発明において、前記熱交換用管材が周方向に螺旋状に巻回された1本又は複数本の螺旋管と、各螺旋管の受口部側端部及び挿口部側端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手が管本体の前後各端面から突出されることが好ましい。これにより、採熱機能付き樹脂管を順に接合して更生管を製管する際、熱交換用管材を円滑に接続して、接続した樹脂管の本数倍の長さの連続する1本又は複数本の熱交換用管材を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱交換用管材を埋設して下水熱を効率よく採熱可能な樹脂管を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】採熱機能付き樹脂管の一例を示す側面図である。
【図2】図1の採熱機能付き樹脂管の正面図である。
【図3】図1の採熱機能付き樹脂管を製造する成形装置の一例を模式的に示す正面図である。
【図4】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図3の成形装置を用いて一部省略して模式的に示す工程図及びA部の拡大図である。
【図5】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図4に続いて一部省略して模式的に示す工程図及びB部の拡大図である。
【図6】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図5に続いて一部省略して模式的に示す工程図及びC部の拡大図である。
【図7】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図6に続いて一部省略して模式的に示す工程図及びD部の拡大図である。
【図8】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図7に続いて一部省略して模式的に示す工程図及びE部の拡大図である。
【図9】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図8に続いて一部省略して模式的に示す工程図及びF部の拡大図である。
【図10】図1の採熱機能付き樹脂管を複数本接合して示す側面図である。
【図11】採熱機能付き樹脂管の変形例を示す側面図である。
【図12】図11の採熱機能付き樹脂管の正面図である。
【図13】採熱機能付き樹脂管の他の変形例を示す正面図である。
【図14】図13の採熱機能付き樹脂管を製造する成形装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【図15】図13の採熱機能付き樹脂管の変形例を示す正面図である。
【図16】採熱機能付き樹脂管のもう一つの変形例を模式的に示す斜視図である。
【図17】採熱機能付き樹脂管のさらなる変形例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1乃び図2には、本発明の製造方法で製造された採熱機能付き樹脂管1の一実施形態が示されている。
【0020】
この採熱機能付き樹脂管1は、直管状の管本体2と、管本体2の一端側外周面に固定された短筒状の受口部3とからなり、管本体2の他端部にはテーパー面の挿口部2aが形成されている。そして、採熱機能付き樹脂管1の管本体2は、後述するように、内周側から防護層21、モルタル層22、内方FRP層23、レジンモルタル層24、外方FRP層25の順に積層された積層体であって、モルタル層22に熱交換用管材4が埋設されている。この熱交換用管材4は、図示しないスペーサを介して互いに設定間隔をおいて簾状に連結された複数本の直管41と、各直管41の前後各端部に固定された、互いに接続可能な雌雄の管継手42,43とからなり、各管継手42,43は、管本体2のモルタル層22の前後各端面を越えて外方に突出されている。
【0021】
ここで、熱交換用管材4の直管41は、ステンレス、チタン、銅等の金属材料、架橋ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、又は、ポリエチレン等の内外の熱可塑性樹脂層の間にアルミ等の金属材料層を積層した複合材料によって円形、楕円形、あるいは、矩形に形成されたものである。また、管継手42,43としては、直管41が熱可塑性樹脂や複合材料から形成される場合には、それらの直管41とワンタッチで接続できる、出願人の製造販売に係るエスロカチット、メタッチ(いずれも登録商標)を利用することができる。
【0022】
一方、採熱機能付き樹脂管4の成形装置5としては、従来公知のフィラメントワインディング成形法の製造設備を挙げることができる。具体的には、成形装置5は、図3に示すように、水平に延びる回転軸51を中心に回転する一側が開放された円筒形の金型52に無端のスチールベルト53を螺旋状に巻回して構成され、スチールベルト53の外表面によって円筒状型面が形成されるとともに、金型52の回転によりスチールベルト53の円筒状型面が前進するものである。そして、金型52の開放端に達したスチールベルト53は、金型52の内部を通って元の位置に戻り、再び金型52に巻回される。また、金型52は、その開放端側が硬化炉54内に臨むように配置されている。さらに、金型52の後半部には、金型52に臨んで繊維強化材としての内方ガラスロービング55、該内方ガラスロービング55に含浸される液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物56、無機充填材を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるレジンモルタル57、外方ガラスロービング58、該外方ガラスロービング58に含浸される液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物59が順に供給できるように配置されている。
【0023】
次に、このように構成された成形装置5を用いた採熱機能付き樹脂管1の製造方法について説明する。
【0024】
まず、金型52を回転自在なフリーの状態に維持し、スチールベルト53によって形成される円筒状型面に、繊維強化材としてのガラス基材、例えば、チョップドストランドマットやガラスペーパー、ガラスクロス等に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させて設定長さ範囲の全周にわたって巻き付け、防護層21を形成する(図4参照)。次いで、防護層21の外周面にモルタルを供給し、図示しないヘラやローラ等によって均一に均してモルタル層22を形成するとともに(図5参照)、モルタル層22に前後各端部に互いに接続可能な雄雌の管継手42,43を固定した複数本の直管41を周方向に設定間隔をおいて全周にわたって埋設する(図6参照)。この際、各直管41の前後各端部にそれぞれ設けられた各管継手42,43は、モルタル層22の前後各端面を越えて突出するように配置される。
【0025】
モルタル層22に管継手42,43を設けた複数本の直管41を配置したならば、金型52を回転軸51を介して回転させ、スチールベルト53によって形成された円筒状型面、すなわち、円筒状型面に積層された防護層21及び熱交換用管材4が埋設されたモルタル層22を回転させながら硬化炉54方向に移動させる。そして、モルタル層22の先端において、その外周面に内方ガラスロービング55を螺旋状に巻回するとともに、内方ガラスロービング55に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物56を供給して含浸させ、内方FRP層23を形成する(図7参照)。次いで、金型52が回転することで硬化炉54方向に移動した内方FRP層23の先端において、その外周面に無機充填材を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるレジンモルタル57を供給し、図示しないヘラやローラ等によって均して均一な厚みのレジンモルタル層24を形成する(図8参照)。その後、硬化炉54方向にさらに移動したレジンモルタル層24の先端において、その外周面に外方ガラスロービング58を螺旋状に巻回するとともに、該外方ガラスロービング58に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物59を供給して含浸させ、外方FRP層25を形成する(図9参照)。
【0026】
これらの内方側から順に積層された防護層21、熱交換用管材4が埋設されたモルタル層22、内方FRP層23、レジンモルタル層24及び外方FRP層25からなる積層体は、金型52の回転によって硬化炉54内に移動し、硬化炉54において加熱され、未硬化の不飽和ポリエステル樹脂組成物が硬化される。これにより、採熱機能付き樹脂管1の管本体2を成形することができる。
【0027】
その後、詳細には図示しないが、管本体2の外径に対応する内径の、内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層からなる強化プラスチック複合管(樹脂管)を成形し、その樹脂管を切断して得られた短筒状の受口部3を管本体2の一端に接着剤を塗布して嵌挿することにより、採熱機能付き樹脂管1を製造することができる。
【0028】
このようにして製造された採熱機能付き樹脂管1を下水道管内で順に接合して更生管を製管し、既設管路を更生すれば、接合した本数の採熱機能付き樹脂管1の長さに相当する長さの採熱機能を得ることができる。すなわち、図10に示すように、一方の採熱機能付き樹脂管1の受口部3に他方の採熱機能付き樹脂管1の挿口部2aを挿入することにより、一方の採熱機能付き樹脂管1における熱交換用管材4の受口部側管継手42と、他方の採熱機能付き樹脂管1における熱交換用管材4の挿口部側管継手43とを接続することができ、接続された採熱機能付き樹脂管1の長さに略相当する長さの複数本の熱交換用管材4を得ることができる。そして、設定本数の採熱機能付き樹脂管1を順に接続したならば、詳細には図示しないが、到達側マンホールに臨む最前の採熱機能付き樹脂管1の前端側管継手42をヘッダー等を介して集合するとともに、発進側マンホールに臨む最後の採熱機能付き樹脂管1の後端側管継手43をヘッダー等を介して集合し、これらのヘッダー等を図示しないヒートポンプユニットに配管接続すればよい。
【0029】
なお、前述した実施形態においては、管本体2に、複数本の直管41の前後各端部に管継手42,43を設けて構成された熱交換用管材4を配設した場合を例示したが、図11及び図12に示すように、前後各端部において順次折り返されて1本の管路を形成する折り返し管44の受口部側端部及び挿口部側端部にそれぞれ管継手42,43を設けて熱交換用管材4を形成するようにしてもよい。これにより、採熱機能付き樹脂管1を順に接合する際、管継手42,43の接続は1箇所ですみ、作業が容易となる。
【0030】
また、管本体2の全周にわたって熱交換用管材4を配設して採熱機能付き樹脂管1を形成する場合を説明したが、図11及び図12に示したように、採熱機能付き樹脂管1の管本体2の管底側下半部にのみ配設してもよい。
【0031】
この場合、図13に示すように、管本体2の管底側下半部に上方に凹状に湾曲した断面略放物線状の防護層211及び該防護層211と管本体2の管底側内周面との空間を埋めるモルタル層221からなる突出部2xを形成し、この突出部2xのモルタル層221に熱交換用管材4を埋設することもできる。
【0032】
このような管底側下半部に突出部2xを有する採熱機能付き樹脂管1(管本体2)を成形するには、図14に示すように、突出部2xに対応する形状の切欠部61xが長手方向にわたって形成された縮径可能な金型61を用意するとともに、金型61に臨んで液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物が貯留された槽62を通過可能なガラスロービング63及びレジンモルタル64が供給できるように配置された従来公知のフィラメントワインディグ法の成形装置6を用いればよい。
【0033】
具体的には、金型61の切欠部61xに沿って液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させたガラスクロス等の繊維強化材を配置して切欠部61xを覆う断面略放物線状の防護層211を形成し、次いで、防護層211の外周面にモルタルを供給して切欠部61xを埋めるモルタル層221を形成した後、モルタル層221に熱交換用管材4を埋設する。その後、金型61を回転させるとともに、軸心方向に往復移動させた状態で、液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を貯留する槽62に導かれて液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物が含浸されたガラスロービング63を熱交換用管材4を埋設したモルタル層221の外周面及び金型61の外周面に巻回して内方FRP層23を形成する。次いで、内方FRP層23の外周面に、無機充填材を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるレジンモルタル64を供給してレジンモルタル層24を形成した後、レジンモルタル層24の外周面に再び槽62を通過することで液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物が含浸されたガラスロービング63を巻回して外方FPR層25を形成する。
【0034】
このようにして、防護層211、熱交換用管材4を埋設したモルタル層221、内方FRP層23、レジンモルタル層24、外方FPR層25を順に積層した積層体を成形したならば、詳細には図示しないが、金型61を縮径させ、金型61から積層体を離型させた後、積層体を硬化炉に搬送して加熱し、未硬化の不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることにより、図13に示した採熱機能付き樹脂管1の管本体2を成形することができる。
【0035】
ここで、図15に示すように、管本体2の管底側下半部に弦状の防護層212及び弓形状のモルタル層222からなる突出部2yを形成し、この突出部2yのモルタル層222に折り返し管44及び管継手42,43からなる熱交換用管材4を配設してもよく、その場合は、突出部2yに対応する弓形状の切欠部を形成した金型(図示せず)を用いて同様に積層すればよい。
【0036】
また、熱交換用管材4の管としては、直管41以外にも、周方向に凹凸を繰り返す波型管(図16参照)や、管本体2の前端から後端にかけて螺旋状に巻き回した1本又は複数本の螺旋管(図17参照)を採用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 採熱機能付き樹脂管
2 管本体
2a 挿口部
21,211 防護層
22,221 モルタル層
23 内方FRP層
24 レジンモルタル層
25 外方FRP層
3 受口部
4 熱交換用管材
41 直管
42,43 管継手
44 折り返し管
5,6 成形装置
52,61 金型
【技術分野】
【0001】
この発明は、採熱機能を備えた樹脂管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、老朽化した下水道、農業用水路等の既設管路を更生するため、既設管路内において、樹脂管、例えば、強化プラスチック複合管を順次接合して更生管を製管し、更生管を新設管路として利用することが提案され、実施されている。この強化プラスチック複合管は、直管状の管本体の一端に短筒状の受口部が固定されるとともに、管本体の他端にテーパー面の挿口部が形成されている。そして、強化プラスチック複合管の管本体及び受口部は、内周側から順に内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層を積層して形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、下水道は、通常地中に埋設されていることから、下水道を流下する下水は外気の影響を受けにくく、年間を通してほぼ一定の水温に維持されている。このため、下水を熱源として様々な用途、例えば、降雪地域における融雪に利用することが提案されている。具体的には、下水道管の長手方向に平行な複数本の直管及び直管の端部同士を接続するベント管からなる採熱管と、該採熱管の間隙及び周囲に充填された保護材とからなるジャケット状の採熱設備を製作し、この採熱設備を下水道管の外周面に設置するとともに、採熱設備をヒートポンプユニットに配管接続し、採熱設備を介して採熱された下水熱をヒートポンプユニットを介して活用するようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−205711号公報
【特許文献2】特開2008−241226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した採熱設備は下水道管の管頂側外周面に設置されているため、通常下水道管の管底側を流下する下水の熱を下水道管の内部空間及び下水道管体を経て採熱しなければならず、伝熱性能が低下して下水熱を効率よく採熱することができない他、採熱した下水熱の一部が地中に放散することを避けられない。しかも、下水道管と採熱設備とをそれぞれ別個に製作し、下水道管を敷設した後、敷設された下水道管に採熱設備を配置する必要があり、作業性が低いという問題があった。特に、既設の下水道管に採熱設備を配置するためには、道路等を掘削して下水道管を露出させる必要があり、作業が大がかりとなってコストがかさむものとなる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、熱交換用管材を埋設して下水熱を効率よく採熱可能な樹脂管を容易に製造することのできる採熱機能付き樹脂管の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転しながら軸方向に移動する円筒状型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して防護層を形成し、次いで、防護層の外周面にモルタルを供給してモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設し、次いで、モルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて内方FRP層を形成した後、内方FRP層の外周面にレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて外方FRP層を形成し、次いで、硬化炉内で加熱して不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、まず、回転しながら軸方向に移動する円筒状型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して防護層を形成する。次いで、防護層の外周面にモルタルを供給してモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設する。次いで、モルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて内方FRP層を形成し、次いで、内方FRP層の外周面に無機充填材を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて外方FRP層を形成する。その後、順に積層された防護層、モルタル層、内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層からなる積層体を硬化炉内に導いて加熱し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させ、熱交換用管材を埋設した樹脂管(強化プラスチック複合管)を製造する。
【0009】
この結果、下水熱を効率よく採熱できるように熱交換用管材を埋設した樹脂管を、既存のフィラメントワインディング法の成形装置を利用して容易に製造することができる。
【0010】
本発明は、長手方向に沿って切欠部を形成するとともに、縮径可能な略円筒形の金型の切欠部の型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を積層して防護層を形成し、次いで、防護層の外周面にモルタルを供給して切欠部を埋めるモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設し、次いで、金型を回転させるとともに軸心方向に往復移動させ、金型の型面及びモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して内方FRP層を形成した後、内方FRP層の外周面にレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して外方FRP層を形成し、次いで、金型を縮径して防護層、モルタル層、内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層からなる積層体を離型させた後、積層体を硬化炉に搬送して加熱し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、まず、長手方向に沿って切欠部を形成するとともに、縮径可能な略円筒形の金型の切欠部の型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を重ねて防護層を形成する。次いで、防護層の外周面にモルタルを供給して切欠部を埋設するモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設する。次いで、金型を回転させるとともに軸心方向に往復移動させ、金型の型面及びモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して内方FRP層を形成し、次いで、内方FRP層の外周面に無機充填材を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して外方FRP層を形成する。その後、金型を縮径して順に積層された防護層、モルタル層、内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層からなる積層体を離型させ、硬化炉内に搬送して加熱し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させ、熱交換用管材を埋設した樹脂管(強化プラスチック複合管)を製造する。
【0012】
この結果、下水熱を効率よく採熱できるように熱交換用管材を埋設した樹脂管を、既存のフィラメントワインディング法の成形装置を利用して容易に製造することができる。
【0013】
本発明において、前記熱交換用管材が金型の長手方向に平行な複数本の直管又は波型管と、各直管又は波型管の前後各端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手がモルタル層の前後各端面から突出されることが好ましい。これにより、採熱機能付き樹脂管を順に接合して更生管を製管する際、熱交換用管材を円滑に接続して、接続した樹脂管の長さに対応する長さの複数本の熱交換用管材を得ることができる。
【0014】
本発明において、前記熱交換用管材が1本の管路を形成するように前後各端部において複数の折り返し部を有する折り返し管と、折り返し管の受口部側端部及び挿口部側端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手が管本体の前後各端面から突出されることが好ましい。これにより、採熱機能付き樹脂管を順に接合して更生管を製管する際、熱交換用管材を円滑に接続して、接続した樹脂管の本数倍の長さの連続する1本の熱交換用管材を得ることができる。しかも、樹脂管を接合する際、1個の管継手を接続すればよく、さらに接続作業が容易となる。
【0015】
本発明において、前記熱交換用管材が周方向に螺旋状に巻回された1本又は複数本の螺旋管と、各螺旋管の受口部側端部及び挿口部側端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手が管本体の前後各端面から突出されることが好ましい。これにより、採熱機能付き樹脂管を順に接合して更生管を製管する際、熱交換用管材を円滑に接続して、接続した樹脂管の本数倍の長さの連続する1本又は複数本の熱交換用管材を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱交換用管材を埋設して下水熱を効率よく採熱可能な樹脂管を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】採熱機能付き樹脂管の一例を示す側面図である。
【図2】図1の採熱機能付き樹脂管の正面図である。
【図3】図1の採熱機能付き樹脂管を製造する成形装置の一例を模式的に示す正面図である。
【図4】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図3の成形装置を用いて一部省略して模式的に示す工程図及びA部の拡大図である。
【図5】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図4に続いて一部省略して模式的に示す工程図及びB部の拡大図である。
【図6】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図5に続いて一部省略して模式的に示す工程図及びC部の拡大図である。
【図7】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図6に続いて一部省略して模式的に示す工程図及びD部の拡大図である。
【図8】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図7に続いて一部省略して模式的に示す工程図及びE部の拡大図である。
【図9】本発明の採熱機能付き樹脂管の製造方法を図8に続いて一部省略して模式的に示す工程図及びF部の拡大図である。
【図10】図1の採熱機能付き樹脂管を複数本接合して示す側面図である。
【図11】採熱機能付き樹脂管の変形例を示す側面図である。
【図12】図11の採熱機能付き樹脂管の正面図である。
【図13】採熱機能付き樹脂管の他の変形例を示す正面図である。
【図14】図13の採熱機能付き樹脂管を製造する成形装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【図15】図13の採熱機能付き樹脂管の変形例を示す正面図である。
【図16】採熱機能付き樹脂管のもう一つの変形例を模式的に示す斜視図である。
【図17】採熱機能付き樹脂管のさらなる変形例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1乃び図2には、本発明の製造方法で製造された採熱機能付き樹脂管1の一実施形態が示されている。
【0020】
この採熱機能付き樹脂管1は、直管状の管本体2と、管本体2の一端側外周面に固定された短筒状の受口部3とからなり、管本体2の他端部にはテーパー面の挿口部2aが形成されている。そして、採熱機能付き樹脂管1の管本体2は、後述するように、内周側から防護層21、モルタル層22、内方FRP層23、レジンモルタル層24、外方FRP層25の順に積層された積層体であって、モルタル層22に熱交換用管材4が埋設されている。この熱交換用管材4は、図示しないスペーサを介して互いに設定間隔をおいて簾状に連結された複数本の直管41と、各直管41の前後各端部に固定された、互いに接続可能な雌雄の管継手42,43とからなり、各管継手42,43は、管本体2のモルタル層22の前後各端面を越えて外方に突出されている。
【0021】
ここで、熱交換用管材4の直管41は、ステンレス、チタン、銅等の金属材料、架橋ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、又は、ポリエチレン等の内外の熱可塑性樹脂層の間にアルミ等の金属材料層を積層した複合材料によって円形、楕円形、あるいは、矩形に形成されたものである。また、管継手42,43としては、直管41が熱可塑性樹脂や複合材料から形成される場合には、それらの直管41とワンタッチで接続できる、出願人の製造販売に係るエスロカチット、メタッチ(いずれも登録商標)を利用することができる。
【0022】
一方、採熱機能付き樹脂管4の成形装置5としては、従来公知のフィラメントワインディング成形法の製造設備を挙げることができる。具体的には、成形装置5は、図3に示すように、水平に延びる回転軸51を中心に回転する一側が開放された円筒形の金型52に無端のスチールベルト53を螺旋状に巻回して構成され、スチールベルト53の外表面によって円筒状型面が形成されるとともに、金型52の回転によりスチールベルト53の円筒状型面が前進するものである。そして、金型52の開放端に達したスチールベルト53は、金型52の内部を通って元の位置に戻り、再び金型52に巻回される。また、金型52は、その開放端側が硬化炉54内に臨むように配置されている。さらに、金型52の後半部には、金型52に臨んで繊維強化材としての内方ガラスロービング55、該内方ガラスロービング55に含浸される液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物56、無機充填材を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるレジンモルタル57、外方ガラスロービング58、該外方ガラスロービング58に含浸される液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物59が順に供給できるように配置されている。
【0023】
次に、このように構成された成形装置5を用いた採熱機能付き樹脂管1の製造方法について説明する。
【0024】
まず、金型52を回転自在なフリーの状態に維持し、スチールベルト53によって形成される円筒状型面に、繊維強化材としてのガラス基材、例えば、チョップドストランドマットやガラスペーパー、ガラスクロス等に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させて設定長さ範囲の全周にわたって巻き付け、防護層21を形成する(図4参照)。次いで、防護層21の外周面にモルタルを供給し、図示しないヘラやローラ等によって均一に均してモルタル層22を形成するとともに(図5参照)、モルタル層22に前後各端部に互いに接続可能な雄雌の管継手42,43を固定した複数本の直管41を周方向に設定間隔をおいて全周にわたって埋設する(図6参照)。この際、各直管41の前後各端部にそれぞれ設けられた各管継手42,43は、モルタル層22の前後各端面を越えて突出するように配置される。
【0025】
モルタル層22に管継手42,43を設けた複数本の直管41を配置したならば、金型52を回転軸51を介して回転させ、スチールベルト53によって形成された円筒状型面、すなわち、円筒状型面に積層された防護層21及び熱交換用管材4が埋設されたモルタル層22を回転させながら硬化炉54方向に移動させる。そして、モルタル層22の先端において、その外周面に内方ガラスロービング55を螺旋状に巻回するとともに、内方ガラスロービング55に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物56を供給して含浸させ、内方FRP層23を形成する(図7参照)。次いで、金型52が回転することで硬化炉54方向に移動した内方FRP層23の先端において、その外周面に無機充填材を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるレジンモルタル57を供給し、図示しないヘラやローラ等によって均して均一な厚みのレジンモルタル層24を形成する(図8参照)。その後、硬化炉54方向にさらに移動したレジンモルタル層24の先端において、その外周面に外方ガラスロービング58を螺旋状に巻回するとともに、該外方ガラスロービング58に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物59を供給して含浸させ、外方FRP層25を形成する(図9参照)。
【0026】
これらの内方側から順に積層された防護層21、熱交換用管材4が埋設されたモルタル層22、内方FRP層23、レジンモルタル層24及び外方FRP層25からなる積層体は、金型52の回転によって硬化炉54内に移動し、硬化炉54において加熱され、未硬化の不飽和ポリエステル樹脂組成物が硬化される。これにより、採熱機能付き樹脂管1の管本体2を成形することができる。
【0027】
その後、詳細には図示しないが、管本体2の外径に対応する内径の、内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層からなる強化プラスチック複合管(樹脂管)を成形し、その樹脂管を切断して得られた短筒状の受口部3を管本体2の一端に接着剤を塗布して嵌挿することにより、採熱機能付き樹脂管1を製造することができる。
【0028】
このようにして製造された採熱機能付き樹脂管1を下水道管内で順に接合して更生管を製管し、既設管路を更生すれば、接合した本数の採熱機能付き樹脂管1の長さに相当する長さの採熱機能を得ることができる。すなわち、図10に示すように、一方の採熱機能付き樹脂管1の受口部3に他方の採熱機能付き樹脂管1の挿口部2aを挿入することにより、一方の採熱機能付き樹脂管1における熱交換用管材4の受口部側管継手42と、他方の採熱機能付き樹脂管1における熱交換用管材4の挿口部側管継手43とを接続することができ、接続された採熱機能付き樹脂管1の長さに略相当する長さの複数本の熱交換用管材4を得ることができる。そして、設定本数の採熱機能付き樹脂管1を順に接続したならば、詳細には図示しないが、到達側マンホールに臨む最前の採熱機能付き樹脂管1の前端側管継手42をヘッダー等を介して集合するとともに、発進側マンホールに臨む最後の採熱機能付き樹脂管1の後端側管継手43をヘッダー等を介して集合し、これらのヘッダー等を図示しないヒートポンプユニットに配管接続すればよい。
【0029】
なお、前述した実施形態においては、管本体2に、複数本の直管41の前後各端部に管継手42,43を設けて構成された熱交換用管材4を配設した場合を例示したが、図11及び図12に示すように、前後各端部において順次折り返されて1本の管路を形成する折り返し管44の受口部側端部及び挿口部側端部にそれぞれ管継手42,43を設けて熱交換用管材4を形成するようにしてもよい。これにより、採熱機能付き樹脂管1を順に接合する際、管継手42,43の接続は1箇所ですみ、作業が容易となる。
【0030】
また、管本体2の全周にわたって熱交換用管材4を配設して採熱機能付き樹脂管1を形成する場合を説明したが、図11及び図12に示したように、採熱機能付き樹脂管1の管本体2の管底側下半部にのみ配設してもよい。
【0031】
この場合、図13に示すように、管本体2の管底側下半部に上方に凹状に湾曲した断面略放物線状の防護層211及び該防護層211と管本体2の管底側内周面との空間を埋めるモルタル層221からなる突出部2xを形成し、この突出部2xのモルタル層221に熱交換用管材4を埋設することもできる。
【0032】
このような管底側下半部に突出部2xを有する採熱機能付き樹脂管1(管本体2)を成形するには、図14に示すように、突出部2xに対応する形状の切欠部61xが長手方向にわたって形成された縮径可能な金型61を用意するとともに、金型61に臨んで液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物が貯留された槽62を通過可能なガラスロービング63及びレジンモルタル64が供給できるように配置された従来公知のフィラメントワインディグ法の成形装置6を用いればよい。
【0033】
具体的には、金型61の切欠部61xに沿って液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させたガラスクロス等の繊維強化材を配置して切欠部61xを覆う断面略放物線状の防護層211を形成し、次いで、防護層211の外周面にモルタルを供給して切欠部61xを埋めるモルタル層221を形成した後、モルタル層221に熱交換用管材4を埋設する。その後、金型61を回転させるとともに、軸心方向に往復移動させた状態で、液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を貯留する槽62に導かれて液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物が含浸されたガラスロービング63を熱交換用管材4を埋設したモルタル層221の外周面及び金型61の外周面に巻回して内方FRP層23を形成する。次いで、内方FRP層23の外周面に、無機充填材を含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物からなるレジンモルタル64を供給してレジンモルタル層24を形成した後、レジンモルタル層24の外周面に再び槽62を通過することで液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物が含浸されたガラスロービング63を巻回して外方FPR層25を形成する。
【0034】
このようにして、防護層211、熱交換用管材4を埋設したモルタル層221、内方FRP層23、レジンモルタル層24、外方FPR層25を順に積層した積層体を成形したならば、詳細には図示しないが、金型61を縮径させ、金型61から積層体を離型させた後、積層体を硬化炉に搬送して加熱し、未硬化の不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることにより、図13に示した採熱機能付き樹脂管1の管本体2を成形することができる。
【0035】
ここで、図15に示すように、管本体2の管底側下半部に弦状の防護層212及び弓形状のモルタル層222からなる突出部2yを形成し、この突出部2yのモルタル層222に折り返し管44及び管継手42,43からなる熱交換用管材4を配設してもよく、その場合は、突出部2yに対応する弓形状の切欠部を形成した金型(図示せず)を用いて同様に積層すればよい。
【0036】
また、熱交換用管材4の管としては、直管41以外にも、周方向に凹凸を繰り返す波型管(図16参照)や、管本体2の前端から後端にかけて螺旋状に巻き回した1本又は複数本の螺旋管(図17参照)を採用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 採熱機能付き樹脂管
2 管本体
2a 挿口部
21,211 防護層
22,221 モルタル層
23 内方FRP層
24 レジンモルタル層
25 外方FRP層
3 受口部
4 熱交換用管材
41 直管
42,43 管継手
44 折り返し管
5,6 成形装置
52,61 金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら軸方向に移動する円筒状型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して防護層を形成し、次いで、防護層の外周面にモルタルを供給してモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設し、次いで、モルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて内方FRP層を形成した後、内方FRP層の外周面にレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて外方FRP層を形成し、次いで、硬化炉内で加熱して不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを特徴とする採熱機能付き樹脂管の製造方法。
【請求項2】
長手方向に沿って切欠部を形成するとともに、縮径可能な略円筒形の金型の切欠部の型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を積層して防護層を形成し、次いで、防護層の外周面にモルタルを供給して切欠部を埋めるモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設し、次いで、金型を回転させるとともに軸心方向に往復移動させ、金型の型面及びモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して内方FRP層を形成した後、内方FRP層の外周面にレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して外方FRP層を形成し、次いで、金型を縮径して防護層、モルタル層、内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層からなる積層体を離型させた後、積層体を硬化炉に搬送して加熱し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを特徴とする採熱機能付き樹脂管の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の採熱機能付き樹脂管の製造方法において、前記熱交換用管材が金型の長手方向に平行な複数本の直管又は波型管と、各直管又は波型管の前後各端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手がモルタル層の前後各端面から突出されることを特徴とする採熱機能付き樹脂管の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の採熱機能付き樹脂管の製造方法において、前記熱交換用管材が1本の管路を形成するように前後各端部において複数の折り返し部を有する折り返し管と、折り返し管の受口部側端部及び挿口部側端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手が管本体の前後各端面から突出されることを特徴とする採熱機能付き樹脂管の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の採熱機能付き樹脂管の製造方法において、前記熱交換用管材が周方向に螺旋状に巻回された1本又は複数本の螺旋管と、各螺旋管の受口部側端部及び挿口部側端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手が管本体の前後各端面から突出されることを特徴とする採熱機能付き樹脂管の製造方法。
【請求項1】
回転しながら軸方向に移動する円筒状型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して防護層を形成し、次いで、防護層の外周面にモルタルを供給してモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設し、次いで、モルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて内方FRP層を形成した後、内方FRP層の外周面にレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に繊維強化材を巻回するとともに、繊維強化材に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を供給含浸させて外方FRP層を形成し、次いで、硬化炉内で加熱して不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを特徴とする採熱機能付き樹脂管の製造方法。
【請求項2】
長手方向に沿って切欠部を形成するとともに、縮径可能な略円筒形の金型の切欠部の型面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を積層して防護層を形成し、次いで、防護層の外周面にモルタルを供給して切欠部を埋めるモルタル層を形成した後、モルタル層に熱交換用管材を埋設し、次いで、金型を回転させるとともに軸心方向に往復移動させ、金型の型面及びモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して内方FRP層を形成した後、内方FRP層の外周面にレジンモルタルを供給してレジンモルタル層を形成し、さらに、レジンモルタル層の外周面に液状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を含浸させた繊維強化材を巻回して外方FRP層を形成し、次いで、金型を縮径して防護層、モルタル層、内方FRP層、レジンモルタル層及び外方FRP層からなる積層体を離型させた後、積層体を硬化炉に搬送して加熱し、不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを特徴とする採熱機能付き樹脂管の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の採熱機能付き樹脂管の製造方法において、前記熱交換用管材が金型の長手方向に平行な複数本の直管又は波型管と、各直管又は波型管の前後各端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手がモルタル層の前後各端面から突出されることを特徴とする採熱機能付き樹脂管の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の採熱機能付き樹脂管の製造方法において、前記熱交換用管材が1本の管路を形成するように前後各端部において複数の折り返し部を有する折り返し管と、折り返し管の受口部側端部及び挿口部側端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手が管本体の前後各端面から突出されることを特徴とする採熱機能付き樹脂管の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の採熱機能付き樹脂管の製造方法において、前記熱交換用管材が周方向に螺旋状に巻回された1本又は複数本の螺旋管と、各螺旋管の受口部側端部及び挿口部側端部にそれぞれ設けられた管継手とからなり、各管継手が管本体の前後各端面から突出されることを特徴とする採熱機能付き樹脂管の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−107312(P2013−107312A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254757(P2011−254757)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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