説明

採血器具

本願は採血器具に関するものであって、該採血器具は、チャンバー(28)を画定しているカニューレハブ(10);軸を画定している流入カニューレ(12)であって、遠位端部、及び該流入カニューレを貫通する内腔を有しており、該流入カニューレの該遠位端部が該カニューレハブの外部に位置するように、かつ該流入カニューレを貫通する該内腔が該チャンバーと連通するように該カニューレハブに取り付けられている、該流入カニューレ;近位端部、及び流出カニューレ(14)を貫通する内腔を有する該流出カニューレであって、該流出カニューレの該近位端部が、該カニューレハブの外部に位置するように、かつ該流出カニューレの該内腔が該チャンバーと連通するように該カニューレハブに取り付けられている、該流出カニューレ;該カニューレハブの外部に配設された該流出カニューレの部分を覆うように取り付けられた閉じたスリーブ(34);及び該チャンバーと周辺環境との間を連通させるベント機構(38)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
【0002】
本願は、2009年9月9日に出願されたインド仮特許出願第1861/DEL/2009号の優先権を主張するものである。なお、該仮特許出願の全てが、その引用により本明細書に組み込まれている。本出願者らは、この仮特許出願の恩典を請求する。
【0003】
本発明は、チャンバーを画定しているカニューレハブ、共に該カニューレハブに取り付けられ、かつ該チャンバーに連通した流入カニューレ、及び流出カニューレ、該カニューレハブの外部に配設された該流出カニューレの部分を覆うように取り付けられた閉じたスリーブ、並びに該チャンバーと周辺環境との間を連通させるベント機構を備えた採血器具に関する。
【背景技術】
【0004】
上記の種類の採血器具は、患者から血液を採取するために長年使用されており、血液が採取される患者の血管は、かなり細く、かつ/又は見えない場合が多い。流入カニューレの先端部が、血管の内部と連通していないと、採血処置が、失敗する可能性が高く、繊細な基底構造の刺入によって、患者がさらに傷つけられる場合もある。このため、カニューレ先端部の血管内への正確な配置の確認が、採血処置に望ましい。
【0005】
したがって、既知の静脈採血器具は、流入カニューレ先端部が血管の内部と連通したときに、これを知らせる機構、例えば、血液の存在を観察することができるカニューレハブの透明部分を備えている。カニューレハブ内の血液の観察は、「フラッシュバック」として知られている。しかし、カニューレハブの透明部分への血液の流れが、該カニューレハブ内の空気の背圧によって妨げられて、フラッシュバックの確認が目視できない、又は遅れるため、フラッシュバックの検出は、多くのこのような採血器具にとって十分ではない。この確認の遅れにより、カニューレ先端部が血管内に進入した正確な瞬間を決定できないことがあるため、針を挿入する医療従事者が、血管を外したり、又は血管を貫通して繊細な周囲構造を刺してしまうことがある。このため、静脈採血器具は、カニューレハブのフラッシュバックチャンバーと周辺環境との間を連通させるベント機構を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より効率的な使用、及び患者に優しい処置を可能にし、しかも製造が容易で安価である採血器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1記載の採血器具によって達成される。
【0008】
本発明の採血器具は、チャンバーを画定しているカニューレハブ;軸を画定している流入カニューレであって、遠位端部、及び該流入カニューレを貫通する内腔を有しており、該流入カニューレの該遠位端部が、該カニューレハブの外部に位置するように、かつ該流入カニューレを貫通する該内腔が該チャンバーと連通するように該カニューレハブに取り付けられている、該流入カニューレ;近位端部、及び流出カニューレを貫通する内腔を有する該流出カニューレであって、該流出カニューレの該近位端部が、該カニューレハブの外部に位置するように、かつ該流出カニューレの該内腔が該チャンバーと連通するように該カニューレハブに取り付けられている、該流出カニューレ;該カニューレハブの外部に配設された該流出カニューレの部分を覆うように取り付けられた閉じたスリーブ;及び該チャンバーと周辺環境との間を連通させるベント機構を備えており、該ベント機構が、管状インサートを貫通する流路を画定している該管状インサート、及び該流路に亘って延在する膜を備えており、該膜が、空気は通すが血液は実質的に通さない材料から形成されている。
【0009】
本発明の採血器具、特に、そのベント機構の特殊なデザインにより、流入カニューレの血管内への進入時に非常に迅速な血液のフラッシュバックが可能となる。これにより、非常に迅速で信頼性の高い静脈穿刺の検出が可能となるため、1回目で、流入カニューレを患者に正確に配置できるようになる。結果的に、本発明の器具を用いて、患者に非常に優しい方法で血液を採取することができる。
【0010】
本発明によると、流入カニューレ、及び流出カニューレは、2つの別個の部品としても良いし、又は該流入カニューレの内腔、及び該流出カニューレの内腔の両方とフラッシュバックチャンバーとの間の連通を可能にする開口を該フラッシュバックチャンバーの部分に備えた単一のカニューレから一体に形成しても良い。
【0011】
さらに、膜は、血液との接触時に、該膜が空気を通すままであるか、又は血液だけではなく空気も通さなくなるように構成することができる。後者の場合、膜は、自己密閉型と呼ぶことができる。
【0012】
本発明の実施態様によると、ベント機構の管状インサートは、カニューレハブから延びた管状突出部内に収容される。好ましくは、管状突出部は、流入カニューレの軸に対して横断方向、特に垂直方向に延びている。
【0013】
本器具の製造は、管状突出部が、カニューレハブ、特に流入カニューレを有するカニューレハブの第1の部品と一体である場合、非常に単純で安価である。
【0014】
さらなる実施態様によると、ベント機構の管状インサートは、圧入によって管状突出部内に固定される。これにより、ベント機構をカニューレハブとは別個に用意することができ、組み立て時に管状インサートを管状突出部内に単に押し込むだけであるため、器具の組み立てが非常に単純であり、コスト効率が良い。
【0015】
管状インサートが管状突出部内に押し込まれすぎるのを防止するために、ベント機構の管状インサートは、カニューレハブとは反対側の端部に隣接した該管状インサートの外面に形成されたカラーを有することができる。加えて、このカラーは、血液がフラッシュバックチャンバーから流出するのを防止する一助となり、密封機能を果たす。
【0016】
カラーの外径が管状突出部の外径に実質的に等しいと、組み立てられた状態でのカラーから管状突出部への移行がスムーズになるため、カラーの外径が、管状突出部の外径に実質的に等しいことが好ましい。
【0017】
さらなる実施態様によると、流路は、カニューレハブのチャンバーに隣接した管状突出部の部分で内側カラーによって狭められている。この内側カラーはまた、血液がフラッシュバックチャンバーから流出するのを防止する一助となり、密封機能を強める。
【0018】
別の実施態様によると、カニューレハブは、第1の部品、及び第2の部品から形成されており、第1の部品は、流入カニューレを有し、第2の部品は、流出カニューレを有する。
【0019】
好ましくは、第1の部品は、グリップ部、及びカニューレ軸の方向に該グリップ部から近位側に延びた管状部を備えている。グリップ部は、器具の操作を容易にする一方、該グリップ部から延びた管状部は、フラッシュバックチャンバーに進入する血液がはっきりと見えるようにデザインすることができる。
【0020】
さらなる実施態様によると、第2の部品は、全体的に管状の形状であり、圧入によって第1の部品の管状部内に部分的に収容される。したがって、器具の組み立ての際には第2の部品を第1の部品の中に押し込むだけで良く、これにより器具の製造が、さらに単純になり、コスト効率が良くなる。
【0021】
好ましくは、第2の部品、及び第1の部品の少なくとも管状部は、透明なプラスチック材料から形成される。これにより、フラッシュバックの検出が容易になり、加えて、第1の部品、及び第2の部品を射出成形によって形成することができ、かつフラッシュバック検出用の窓を別に設ける必要がないため、器具製造のコスト効率に優れている。
【0022】
本発明の好ましい実施態様は、以下の説明に記載され、添付の図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明による採血器具の斜視図である。
【0024】
【図2】図2は、図1の採血器具の断面図である。
【0025】
【図3】図3は、本発明のさらなる実施態様による採血器具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1、及び図2に示されている採血器具は、流入カニューレ12、及び流出カニューレ14を有するカニューレハブ10を備えている。流入カニューレ12、及び流出カニューレ14は、直線上に配置され、針の軸を画定している。この実施態様によると、流入カニューレ12と流出カニューレ14は、別個の部品である。
【0027】
カニューレハブ10は、第1の部品16、及び第2の部品18から形成されている。第1の部品16、及び第2の部品18は共に、例えば、射出成形によって、透明なプラスチック材料から形成される。
【0028】
第1の部品16は、採血器具の操作を容易にする遠位グリップ部20、及び該グリップ部20から近位側に延びた管状部22を備えている。
【0029】
第2の部品18は、管状部24、及び該管状部24から近位側に延びたねじ部26を備えている。第2の部品18の管状部24は、僅かにテーパ状の外面を有し、圧入によって第1の部品16の管状部22内に収容されている。このねじ部26により、採血管、採血バッグ、又は採血容器など(不図示)を採血器具に取り付けることができる。
【0030】
第1の部品16の管状部22、及び第2の部品18の管状部24は共に、カニューレハブ10のフラッシュバックチャンバー28を画定している。
【0031】
流入カニューレ12は、その遠位端部に、採血のために患者の血管内に挿入されるように適合された先端部30を有する。流入カニューレ12は、その内腔がフラッシュバックチャンバー28と連通するようにカニューレハブ10の第1の部品16に取り付けられている。
【0032】
流出カニューレ14は、その内腔がフラッシュバックチャンバー28と連通するようにカニューレハブ10の第2の部品18に取り付けられている。流出カニューレ14は、カニューレハブ10の第2の部品18から延びた近位部32を有し、該近位部32は、フラッシュバックチャンバーから血液を採取するために採血管、採血バッグ、又は採血容器など(不図示)に挿入されるように適合されている。流出カニューレ14の近位部32は、ゴムスリーブ34によって覆われている。流出カニューレ14は、その近位端部に、採血管、採血バッグ、又は採血容器などが採血器具に接続されたときにゴムスリーブ34に刺入するための先端部36を有する。
【0033】
採血器具は、フラッシュバックチャンバー28と周辺環境との間を連通させるベント機構38をさらに備えている。
【0034】
ベント機構38は、管状インサート40を貫通する流路42を画定している該管状インサート40、及び該流路42に亘って延在する膜44を備えている。膜44は、管状インサート40の内面48に沿って延在する肩46に配置され、例えば、接着、又は溶接などによって該管状インサート40に取り付けることができる。
【0035】
膜44は、空気は通すが血液は実質的に通さない材料から形成されている。膜44は、血液に接触したときに、該膜44が空気を通すままであるか、又は血液だけではなく空気も通さなくなるように構成することができる。適切な材料の例として、限定されるものではないが、プラスチック、熱可塑性プラスチック、及びポリエチレンが挙げられる。
【0036】
ベント機構38の管状インサート40は、カニューレハブ10の第1の部品16と一体に形成された管状突出部50内に収容さている。管状突出部50は、カニューレハブ10の第1の部品16から、より具体的には該第1の部品のグリップ部20の近位側の部分で、針の軸に対して垂直に延びている。
【0037】
ベント機構38の管状インサート40は、圧入によって管状突出部50内に固定されている。外側カラー52が、カニューレハブ10とは反対側の管状インサート40の端部に隣接した該管状インサート40の外面に形成されている。カラー52の外径は、管状突出部50の外径に実質的に等しい。
【0038】
管状突出部50からフラッシュバックチャンバー28への移行部分に、内側カラー54が設けられている。管状インサート40の長さは、該管状インサート40が管状突出部50内に完全に挿入されたときに、外側カラー52がフラッシュバックチャンバー28とは反対側の管状突出部50の端部に当接する一方、該フラッシュバックチャンバー28側の管状インサート40の端部が内側カラー54に当接するように選択される。
【0039】
使用時に、流入カニューレ12が患者の血管内に挿入されると、血液が、血圧によって流入カニューレ12内に進入し、空気が流入カニューレ12の内腔からフラッシュバックチャンバー28内に移動する。フラッシュバックチャンバー28内で空気が圧縮されて背圧が上昇するのではなく、移動した空気が、ベント機構38の膜44を介してフラッシュバックチャンバー28から逃げ得るため、流入カニューレ12内の血液が、フラッシュバックチャンバー内に自由に流入し、これにより静脈穿刺の成功を知らせる。同時に、膜44だけではなく、管状インサート40の管状突出部50内への圧入も、外側カラー52、及び内側カラー54と共に、血液が、フラッシュバックチャンバー28からベント機構38を介して流出するのを防止する。
【0040】
図3は、本発明による採血器具の別の実施態様を例示し、この実施態様は、流入カニューレ12と流出カニューレ14が別個の部品でない点を除き、図1、及び図2に示されている採血器具と本質的に同一である。代わりに、図3の採血器具では、流入カニューレ12と流出カニューレ14は、単一のカニューレ56から一体に形成され、開口58を備えており、該開口58は、流入カニューレ12と流出カニューレ14とを区別するだけではなく、流入カニューレ12の内腔、及び流出カニューレ14の内腔の両方とフラッシュバックチャンバー28との連通も可能にする。開口58、例えば、スロット、又は穿孔は、フラッシュバックチャンバー28の部分の任意の位置に設けることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 カニューレハブ
12 流入カニューレ
14 流出カニューレ
16 第1の部品
18 第2の部品
20 グリップ部
22 管状部
24 管状部
26 ねじ部
28 フラッシュバックチャンバー
30 先端部
32 近位部
34 ゴムスリーブ
36 先端部
38 ベント機構
40 管状インサート
42 流路
44 膜
46 肩
48 内面
50 管状突出部
52 外側カラー
54 内側カラー
56 単一のカニューレ
58 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血器具であって:チャンバー(28)を画定しているカニューレ(10)ハブ;軸を画定している流入カニューレ(12)であって、遠位端部、及び該流入カニューレ(12)を貫通する内腔を有しており、該流入カニューレ(12)の該遠位端部が該カニューレハブ(10)の外部に位置するように、かつ該流入カニューレ(12)を貫通する該内腔が該チャンバー(28)と連通するように該カニューレハブ(10)に取り付けられている、該流入カニューレ(12);近位端部、及び流出カニューレ(14)を貫通する内腔を有する該流出カニューレ(14)であって、該流出カニューレ(14)の該近位端部が、該カニューレハブ(10)の外部に位置するように、かつ該流出カニューレ(14)の該内腔が該チャンバー(28)と連通するように該カニューレハブ(10)に取り付けられている、該流出カニューレ(14);該カニューレハブ(10)の外部に配設された該流出カニューレ(14)の部分(32)を覆うように取り付けられた閉じたスリーブ(34);及び該チャンバー(28)と周辺環境との間を連通させるベント機構(38)を備えており、該ベント機構(38)が、管状インサート(40)を貫通する流路(42)を画定している該管状インサート(40)、及び該流路(42)に亘って延在する膜(44)を備えており、該膜(44)が、空気は通すが血液は実質的に通さない材料から形成されていることを特徴とする、該採血器具。
【請求項2】
前記ベント機構(38)の前記管状インサート(40)が、前記カニューレハブ(10)から延びた管状突出物(50)内に収容されていることを特徴とする、請求項1記載の採血器具。
【請求項3】
前記管状突出部(50)が、前記流入カニューレ(12)の軸に対して横断方向に、特に垂直方向に延びていることを特徴とする、請求項2記載の採血器具。
【請求項4】
前記管状突出部(50)が、前記カニューレハブ(10)、特に、前記流入カニューレ(10)を有する該カニューレハブ(10)の第1の部分(16)と一体であることを特徴とする、請求項2、又は3記載の採血器具。
【請求項5】
前記ベント機構(38)の前記管状インサート(40)が、圧入によって前記管状突出部(50)内に固定されていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項記載の採血器具。
【請求項6】
前記ベント機構(38)の前記管状インサート(40)が、前記カニューレハブ(10)とは反対側の端部に隣接した該管状インサート(40)の外面に形成された外側カラー(52)を有することを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項記載の採血器具。
【請求項7】
前記外側カラー(52)の外径が、前記管状突出部(50)の外径に実質的に等しいことを特徴とする、請求項6記載の採血器具。
【請求項8】
前記カニューレハブ(10)の前記チャンバー(28)に隣接した前記管状突出部(50)の部分において、前記流路が、内側カラー(54)によって狭められていることを特徴とする、請求項2〜7のいずれか1項記載の採血器具。
【請求項9】
前記カニューレハブ(10)が、第1の部品(16)、及び第2の部品(18)から形成されており、該第1の部品(16)が、前記流入カニューレ(12)を有し、該第2の部品(18)が、前記流出カニューレ(14)を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の採血器具。
【請求項10】
前記第1の部品(16)が、グリップ部(20)、及び前記カニューレ軸の方向に該グリップ部(20)から近位側に延びた管状部(22)を備えることを特徴とする、請求項9記載の採血器具。
【請求項11】
前記第2の部品(18)が、全体的に管状の形状であり、圧入によって前記第1の部品の前記管状部(24)内に部分的に収容されていることを特徴とする、請求項10記載の採血器具。
【請求項12】
前記第2の部品(18)、及び前記第1の部品(16)の少なくとも前記管状部(22)が、透明なプラスチック材料から形成されていることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項記載の採血器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−504363(P2013−504363A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528485(P2012−528485)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054013
【国際公開番号】WO2011/030282
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(512059693)ポリイ メドイクウレ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】