説明

採血管冷却保冷システム

【課題】医療機関や健康診断などで行われる血液検査の採取血の鮮度低化防止を目的とした冷却保冷において、高機能蓄冷剤を用いて、急速冷却と軽量長時間保冷の両立を図らせ、よりシンプルな形態において複雑な機能を一掃し、しかも全種類の採血管(5ml〜10ml)へ適応してその自在な組み合わせ使用を可能とさせ、更には緊急検査(血液ガス・電解質・アンモニア等)への対応または低質量化による冷蔵庫冷却でのエコ化等、機能面の多様化をも図ることのできる採血管冷却保冷システムを提供する。
【解決手段】高機能蓄冷剤を冷熱源とし、採血管に装着される高冷熱急速冷却採血管ホルダー100と、低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー200との組み合わせにより、採血管に対して直接的高冷熱伝導冷却に次ぐ間接的空間冷却の2段階冷熱負荷を与え、より急速的な0℃帯冷却を可能として低質量でも安定した採取血の検査前鮮度管理を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関や健康診断などで行われる血液検査の採取血の鮮度低化防止を目的とした冷却保冷に使用される、高冷熱急速冷却採血管ホルダー及び間接空間冷却用BOX型クーラーとそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、採血した血液はすぐに測定するか、もし後で測定する場合では安定的な条件下での保存が必要となり、適切でない保存条件下では不正確な検査値となりる。この不正確測定を防止する手段として採取血の冷却低温保冷が試みられており、具体的には、採血により生体から切り離された生体中の物質は採血管に移された途端に不安定な状態に陥るが、このとき検体をより低い温度(0℃〜4℃)に冷却して保存することではその分解や変性が抑制できることが知られている。
【0003】
かかる見地に基づき、血液検査不正確測定の防止を目的とする採取検体の冷却保冷のために、下記の特許文献に開示されているような検体試験管冷却保冷システムが提供されている。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献】
【特許文献】特開2010−43835
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術の検体試験管冷却保冷システムの場合、採血管への急速冷却性能と長時間保冷性能との相反する性能を同時に満たす手段として、側面・底面および天板をアルミ板で囲んだ容器内に同じくアルミ製筒状の採血管用保持部を複数設けるように加工が施され、その間隙に蓄冷剤が充填されたブロック状の構成を必要とすることから、コンパクト(150×180×170)な外形にして1,4Kgと高重量に成らざるを得ず、この仕様は、これまでの一般的同等サイズ発泡保冷容器(280×195×195)0,1Kgに保冷剤0,5Kg=0,6Kgとの比較においても2倍以上という過度の重量であり、搬送上・操作上・収納拡張上・エコ上においても負担が大きいという重要課題となる。
【0007】
また、従来技術の検体試験管冷却保冷システムの場合、検体試験管との直接接触方式による冷却を行わせる構成のため、密閉されたブロック状容器内での蓄冷剤冷凍手段を必須とさせることから、冷凍時、蓄冷剤の膨張から容器を変形させる可能性が発生し、その為、弾性体部を設ける等の余分な装備を必要とする又は、用途毎に数種類(5ml・7ml・10ml)が使い分けられる採血管において、直接接触方式の弱点となる接触相違の問題から太径除外とする5ml・7ml二種の対応に止まる中途半端な仕様を余儀なくされ、10mlを含む全種への適応による自在使用が望まれている。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点の、急速冷却と軽量長時間保冷の両立と伴にその冷却方式を間接的空間冷却に改め、過冷却防止対策及び膨張内圧抑制対策等々の余剰装備を一掃したよりシンプルな形態において、全種類の採血管(5ml〜10ml)へ適応した自在使用を可能とさせる、上述した改良方法と改良システムの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、高機能蓄冷剤を冷熱源とする、採取血の鮮度低化防止を目的とする採血管冷却保冷システムであって、採血管(11)又は採血シリンジ(14)に直接装着される高冷熱の急速冷却採血管ホルダー(100)と、外面に外部雰囲気を隔てる高断熱部(10A)と上部(20a)・下部(20f)に其々1箇所の密封開閉部を有し、内面に冷気漏出防止機能(20b−1)付きの採血管挿入保管断熱シート(20b)及び採血管安定用多孔プレート(20c)と一定冷熱を蓄える低質量高機能蓄冷剤(20d)を具えさせる低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)との組み合わせにより、採血管に対して直接的高冷熱伝導冷却に次ぐ間接的空間冷却の2段階冷熱負荷を与え、より急速的な0℃帯冷却(図12)を可能として低質量でも安定した採取血の検査前鮮度管理を行わせる構成としたものである。
【0010】
上述した本発明の採血管冷却保冷システムは、前記高機能蓄冷剤(20d)が、成分調整により温度調節設定を可能とさせ、過冷却を防止した最適温度帯でのより高精度な温度管理を行わせ、また、長時間の温度維持力と軽量化の両立を図ることが好ましい。
【0011】
上述した本発明の採血管冷却保冷システムは、前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、採血管又は採血シリンジ採取部の形状に合わせて製作されることが好ましく、また、その側面の上下に掛けて採血確認用スリット部(10e)が形成されていることが一層好ましい。
【0012】
また上述した前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、その外面から、高断熱材(10A)・蓄冷剤(10B)・高熱伝導金属(10C)との三層構造によって形成されていることが好ましく、またその上部挿入口(10a)沿いにC形状の温度検知部(10f)を設けることがより一層好ましい。
【0013】
また更に、前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)の採血管挿入口(10a)沿いにC形状温度検知マーカー(10f)が設定されることが好ましく、加えて最適温確認用(11a)と不適正温(冷凍)確認用(11b)との専用温度管理インジケーター付き採血管と組み合わせて用いることが一層好ましい。
【0014】
上述した本発明の採血管冷却保冷システムは、前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)により提供される荒熱処理低温化検体が、低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)内の採血管挿入保管断熱シート(20b)と蓄冷部(20d)との間にもたらす間隙での空間冷却(20h)により、採血管を隈なく一定温度とさせる安定冷却とする事が好ましく、またその冷却が適正温度帯に調整され冷却中の過冷却を防止させることがより一層好ましい。
【0015】
上述した本発明の採血管冷却保冷システムは、前記低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)外面が、高断熱素材にて製作され、且つ、上部(20a)・下部(20f)に其々1箇所の密封開閉部を有し、その内面に冷気漏出防止機能(20b−1)付きの採血管挿入保管断熱シート(20b)及び採血管安定用多孔プレート(20c)が施されることが好ましい。
【0016】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。
採血管が挿入されることで行われる採取血の冷却保冷において、荒熱処理の高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)と、低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)との組み合わせによる2段階での空間的冷熱負荷方式とすることでは、より瞬間的な0℃帯冷却(図12)を可能とし且つ低冷熱で安定した採取血の検査前鮮度管理に働きかけるという効果を発揮することができる。
【0017】
また、上記第2の課題解決手段による作用は、低質量高機能蓄冷剤(20d)が、成分調整による温度調節設定と長時間の温度維持力を可能とさせることでは、過冷却を防止した最適温度帯でのより正確な目標冷却温度の維持を可能とすると伴に、軽量化に働きかけるという効果を発揮することができる。
【0018】
また、上記第3の課題解決手段による作用は、高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、その外面から、高断熱材(10A)・蓄冷剤(10B)・高熱伝導金属(10C)との三層構造を有し、採血管全体又は採血シリンジ採取部を密着して包み込むに適した形状に加工することでは、装着状態において外部の雰囲気を隔てながら最小限質量の蓄冷剤において効果的な直接冷熱負荷を採血開始と同時に行わせることを可能とさせ、また加えて採血後即時の必須手技である転倒混和操作(6−a・6−b・図7)に対応させることでより急速冷却(図12)に働きかけるという効果を発揮することができる。
【0019】
上記第4の課題解決手段による作用は、高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)の上部挿入口(10a)沿いにC形状の温度検知部(10f)が設けられることでは、冷却不足による不完全冷却の防止を図らせ、また加えて2個の異なる温度反応を示す専用温度インジケータ付きの採血管(11)又は採血シリンジ(14)との併用において、その冷却処理状態の、適正温度確認(11a)を可逆的に、不適正凍結温度確認(11b)を不可逆的に目視にて簡単に確認させ、より一層の正確操作に寄与し、また更には側面の上下に掛けて設定の採血確認用スリット部(10e)によって採血状態の確認を行わせ、より安全な施行に働きかけるという効果を発揮することができる。
尚、不可逆的凍結温確認においては、一旦変色すると固定色となり元の色に戻らないことから凍結での溶血チェックに特に有効な指標となる。
【0020】
上記第5の課題解決手段による作用は、高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)により提供される荒熱処理低温化検体が、低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)の蓄冷部(20d)の質量を保冷維持に必要な最小質量に止めさせ、空間的冷熱負荷方式の獲得と伴に冷却中の過冷却防止に働きかけるという効果を発揮することができる。
【0021】
また更に、上記第6の課題解決手段による作用は、低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)内の採血管挿入保管断熱シート(20b)の採血管挿入部が、その入口毎に冷気漏出防止機能(20b−1)を有することでは、何度となく開閉される高断熱密封上部開閉部(20a)操作により抜き差しされる採血管の保管操作に対し、冷気の漏出を防ぎながら尚且つサイズを問わず全採血管(5ml〜10ml容量)に対応して行わせるという効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の採血管冷却保冷システムによれば、簡単なシンプル構造で採血管の冷却による採取血の鮮度低化防止に働きかけることができ、手順が複雑になることがなく、また、保管時間が長くても、以下のような効果を奏することができる。
【0023】
本発明の採血管冷却保冷システムは、高機能蓄冷剤を冷熱源とした空間的冷熱負荷による冷却を行わせる事から、通常6〜12時間を必要とする採取血の鮮度低下防止における冷却操作に対し高質量の蓄冷部を不要とさせ、更には低質量蓄冷部であって電気的駆動源による冷却装置同様の安定的な目標温度帯を維持し、その採取血の検査前鮮度管理において十分な冷却効果を発揮するものである。
【0024】
上述した本発明の採血管冷却保冷システムは、高冷熱の急速冷却採血管ホルダー(100)と、低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)との組み合わせにより、採血管に対して直接的高熱伝導冷却に次ぐ間接的空間冷却の2段階冷熱負荷方式とすることでは、より急速的な0℃帯冷却(図12)を可能とし且つ小質量での安定的な目標冷却温度の維持(図13)による採血管冷却保冷システムを提供できる。
【0025】
上述した本発明の採血管冷却保冷システムは、採血管全体又は採血シリンジ採取部を密着して包み込むに適した形状に製作され、装着状態において採血管へ直接冷熱を付加させることによって採血開始から即時の冷却をスタートさせ、加えて採血後即時の必須手技である転倒混和操作(6−a・6−b・図7)に対応させることでより急速冷却(図12)に働きかけるという相乗効果を発揮するものである。
【0026】
上述した本発明の採血管冷却保冷システムは、高冷熱の急速冷却採血管ホルダー(100)の上部挿入口(10a)沿いにC形状の温度検知部(10f)と2個の異なる温度反応を示す専用温度インジケータ付きの採血管(11)又は採血シリンジ(14)との併用において、その処理前での適正冷却温の確認と、冷却処理後状態の、適正温度確認(11a)を可逆的に、不適正凍結温度確認(11b)を不可逆的に目視にて簡単に確認させ、より正確な採取血の検査前鮮度管理に働きかけるという効果を発揮するものである。
【0027】
また、本発明の採血管冷却保冷システムは、蓄冷剤の繰り返し使用における冷蔵庫での冷凍冷却操作に際し、最小質量に止めることによるエコ化に働きかけるという効果を発揮することができる。
【0028】
また更に、本発明の採血管冷却保冷システムは、特に、2008年より開始された特定検査(血糖検査)への関心が高まりつつあることや、よりシンプルな構造に付き比較的容易に物作りができることと、そのベースとなる高機能蓄冷剤が既に長時間の精密温度管理を必要とされる分野の、血液検体及び機内食等の輸送に採用されており、食品添加物の作用を利用するので安全性の面でも問題がないと思われる等より、その実用化への期待は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態の組み合わせを示す、高冷熱の急速冷却採血管ホルダーの斜視図及び低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラーの透視図である。
【図2】図1の高冷熱急速冷却採血管ホルダーを示す斜視図と横断面図である。
【図3】図2の高冷熱急速冷却採血管ホルダーの構成図である。
【図4】図2の高冷熱急速冷却採血管ホルダーの採血管における装着操作具体例を示す説明図である。
【図5】図2の高冷熱急速冷却採血管ホルダーの採血シリンジにおける装着具体例を示す斜視図である。
【図6】添加剤入り採血管において採血後即時の必須手技となる転倒混和操作を示す説明図である。
【図7】主な添加剤入り採血管とその転倒混和に対する推奨操作回数を示す表である。
【図8】図1の低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラーの透視図及び関連部材との着脱構成を示す説明図である。
【図9】図8の低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラーの採血管挿入保管断熱シート及び採血管安定用多孔プレートの平面を示す透視図である。
【図10】図8の低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラーの採血管挿入保管断熱シートに設定の冷気漏出防止機構(20b−1)を示す斜視図と横断面図である。
【図11】本発明の実施の形態の間接的空間冷却方式による蓄冷剤部と従来の直接的接触式による蓄冷剤部との質量の比較を示す断面模式図である。
【図12】図4の高冷熱急速冷却採血管ホルダーの採血管装着による転倒混和時における急速冷却能(分単位)を示す図である。
【図13】図8の低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラーの単独による採血管急冷性能(分間)または冷却維持性能を示す図である。
【図14】図4の高冷熱急速冷却採血管ホルダーの急冷操作後における保冷維持性能を示す図である。
【図15】図8の間接空間冷却用BOX型クーラー用の高機能蓄冷剤の温度設定調整による温度追従性及び冷却維持時間を示すグラフである。
【図16】図8の間接空間冷却用BOX型クーラーの高機能蓄冷剤と従来保冷剤との使用量及び冷却維持時間の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以上のような効果を奏することができる採血管冷却保冷システムは、図1の組み合わせ説明図に示すように、採血管又は採血シリンジ採取部に装着される高冷熱の急速冷却採血管ホルダー(100)とその荒熱処理後の採血管を挿入保持して長時間の保冷保管を可能とする低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)との2系統の組み合わせによる構成を具えたものである。
【0031】
以下、本発明の実施の形態の採血管冷却保冷システムにつき、図1〜図16を用いて詳細に説明する。
【0032】
図1は本発明の実施例を示す採血管冷却保冷システムの全体構成図、図2〜図11はその詳細な構成を示す模式図である。
【0033】
これらの図1において、100は高冷熱急速冷却採血管ホルダー、200は低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー、図はそれらの採血前スタンバイ時に行われる低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)への高冷熱の急速冷却採血管ホルダー(100)の収納状態と、その後に取り出されて再度戻されるように用いられる組み合わせ収納方法を示す。
【0034】
図2〜図3においては、その一方の高冷熱急速冷却採血管ホルダーの構成から、10aは採血管挿入口の側面と断面を示し、10bは断面外面部を、10cは断面蓄冷部を、10dは断面内面部を、10eは採血確認用スリット部の側面と断面を、10fはC形状温度検知マーカーを示し、加えて10Aはその外部構成材料を、10Bは蓄冷層を、10Cは内部構成材料を示す。
【0035】
図4〜図5においては、高冷熱急速冷却採血管ホルダーの取り扱い方から、11は採血管を示し、12はその採血管に高冷熱の急速冷却採血管ホルダーを装着した状態を、13は装着状態における転倒混和操作を、14は更にそれを採血シリンジへ装着した状態を示し、加えて11aは適正温度確認用可逆的インジケーターを、11bは不適正凍結温度確認用不可逆的インジケーターを示す。
【0036】
図6〜図7においては、図6は添加剤入り採血管の必須手技となる転倒混和操作を示す説明図で、[図7]は主な添加剤入り採血管とその転倒混和に対する推奨操作回数を示す。
【0037】
また図8〜図9においては、そのもう一方の低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラーの構成から、20aは上部高断熱開閉部を、20bは採血管挿入保管断熱シートを、20b−1は冷気漏出防止機構付き挿入口を、20cは採血管安定用多孔プレートを、20dは低質量高機能蓄冷剤を、20eは高断熱開閉部密封閉鎖用固定具を、20fは下部高断熱開閉部を、20gは高冷熱急速冷却採血管ホルダーの低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラーへの収納保管状態を示す。
【0038】
また図10においては、採血管挿入保管断熱シート用の冷気漏出防止機構20b−1の構成から、1Aは上部弁体を、1Bは下部弁体を、1Cは窪み部を、1Dは切れ目を、1Eは中心部の細孔を、1Fは膜部を示す。
【0039】
図11においては、本発明の実施の形態の低冷熱間接的空間冷却方式と従来の直接的接触方式による比較から、20dは間接的空間冷却方式における蓄冷剤質量を、20hは間接的空間冷却方式における空間スペースを示し、30dは直接的接触方式における蓄冷剤質量を、30hは直接的接触方式における空間スペースを示す。
【0040】
このような機能を有する採血管冷却保冷システムの使用方法について、図4〜8を参照して説明する。
【0041】
まず、事前の予備冷却において冷やされた低質量高機能蓄冷剤(20d)と高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)を冷蔵庫から取り出し、間接空間冷却用BOX型クーラー(200)に挿入セットする。その場合、低質量高機能蓄冷剤(20d)は高断熱開閉部密封閉鎖用固定具(20e)を解錠し下部高断熱開閉部(20f)を開いて行わせ、また高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)の場合は、同じく高断熱開閉部密封閉鎖用固定具(20e)を解錠した後に上部高断熱開閉部(20a)を開き更には採血管挿入保管断熱シート(20b)の冷気漏出防止機構付き挿入口(20b−1)から採血管安定用多孔プレート(20c)の孔を貫通させる用に挿入して行わせ(20g)、後に上下解放部を閉じて施錠して図1の200状としてスタンバイとする。
【0042】
採血時において、上記同様の手順において上部高断熱開閉部(20a)を開き、高冷熱瞬間冷却採血管ホルダー(100)の挿入口(10a)沿いに設定のC型状温度検知マーカー(10f)による適正冷却温確認を行い、取り出した後は上記同様手順において上部高断熱開閉部(20a)を閉じ、速やかにその採血管挿入口(10a)から採血管(11)を挿入して装着状態(12)として採血を開始させる。
【0043】
次に、採血中はその状況を採血確認用スリット部(10e)よりの確認の元に行い、採血完了の後に引き続き転倒混和操作(13)に移り、終了後に採血管(11)下部に設定の2個の異なる温度反応インジケーターによる適正温度検知(11a)と不適正凍結温度検知(11b)を確認する。
【0044】
そして、冷却処理が適切に完了していたならば採血管(11)から高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)を取り外し、上記同様の手順において上部高断熱開閉部(20a)を開き、採血管のみを低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)へ収納する様に行わせ、そしてまた上記同様手順において上部高断熱開閉部(20a)を閉じて検査施設へ向けて搬送又は待機となる。
【0045】
かかる操作において各種の温度反応用インジケーターの採用は、各ポイントでの冷却状況の詳細な確認に働きかけ、過冷却を防止した最適温度帯でのより高精度な検査前鮮度管理を図らせる。
尚、転倒混和における操作回数及び時間においては通常行われるマニュアル(図7)等に準じる。
【0046】
事前の冷却処理を施した低質量高機能蓄冷剤(20d)の冷却は、通常の家庭用冷蔵庫同等の冷凍能力にて24時間が適当とされる。
【0047】
そして、その現場毎における目的及び諸事情に合わせた検査迄の移動及び待機時間に応じた最小限度の質量調整が可能な採血管冷却保冷システムにおいて、採血時から検査時までの間の採取血の鮮度低化防止に寄与し、より正確な検査結果の提供が図れる。
【0048】
なお、上記、図に説明の前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー及び前記低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラーに付いては、これらに限定することなく、目的に合わせて様々な形状及びサイズへの変更が図れる。
【0049】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形および付加が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【基礎実験例】
【0050】
以下に、本発明の冷却保冷システムの基盤となる高機能蓄冷剤に関する基礎実験例につき、図12〜図16を用いて詳細に説明する。
【0051】
図12は、本発明の高冷熱の急速冷却採血管ホルダーの採血管装着時における急速冷却能を分単位で示す図で、目標値0〜4℃に対して1〜2分で達成しているのが確認できる。
【0052】
図13は、上記図12との比較を示す図で、BOX型クーラー単独による採血管の冷却能を分単位で示す図で、目標値0〜4℃に対して30分以上を必要としているのが確認できる。また、小質量500gによる保冷維持能が確認出来る。
【0053】
図14は、急冷操作後における保冷維持性能を示す図で、0度程度が60分以上維持されているのが確認できる。
【0054】
図15は、本発明に用いられる高機能蓄冷剤の温度調節毎による温度追従性を示す図で、其々の目標設定温度に対して粗同様に追揖しているのが確認できる。
【0055】
図16は、本発明に用いられる高機能蓄冷剤と従来品との使用量における冷却能及び冷却維持時間の比較を示す図で、同質量の保冷剤にして高冷却能で冷やせているのが確認できる。(この熱量差を利用する事で低質量化が図れる)
【0056】
これらの図14において、高機能蓄冷剤は+3℃・0℃・−5℃・−10℃・−18℃・−20℃・−25℃・−30℃に成分調整されたもので、以下の条件下によりその温度追従性及び冷却維持時間を示す。
保冷環境:段ボール箱の中に厚さ3cm発砲スチロールを敷きその上に発泡スチロール箱をいれ、その中にさらにミラーマットを2重巻きした袋を入れる。
使用保冷剤:1キロタイプ10枚 計10キロ使用
スチロール箱:外寸40cm×32.5cm×26.5cm×3cm
【0057】
図15は、ショートケーキ1個を通常のテイクアウトBOXに入れた条件下で個々に70gの保冷剤を入れた状況での温度推移を示す。
【符号の説明】
【0058】
100 高冷熱急速冷却採血管ホルダー
10a 採血管挿入口
10b 断面外面部
10c 断面蓄冷部
10d 断面内面部
10e 採血確認用スリット部
10f C型温度検知マーカー
10A 高断熱部
10B 蓄冷部
10C 高熱伝導金属部
11 採血管
11a 適正温度検知
11b 不適正凍結温度検知
12 採血管へ装着状態した状態
13 転倒混和操作
14 採血シリンジへ装着した状態
200 間接空間冷却用BOX型クーラー
200a 間接的空間冷却方式による蓄冷剤の質量を示す断面図
20a 高断熱密封上部開閉部
20b 採血管挿入保管断熱シート
20b−1 冷気漏出防止機構
20c 採血管安定用多孔プレート
20d 低質量高機能蓄冷剤
20e 開閉部密封閉鎖用固定具
20f 高断熱密封下部開閉部
20g 間接空間冷却用BOX型クーラーへの高冷熱瞬間冷却採血管ホルダーの挿入
20h 間接的空間冷却方式における空間スペース
300a 従来法の採血管状凹型ブロック式蓄冷剤
30d 直接的接触方式における蓄冷剤質量
30h 直接的接触方式における空間スペース
1A 上部弁体
1B 下部弁体
1C 窪み部
1D 切れ目
1E 中心部の細孔
1F 膜
6a 転倒混和操作
6b 転倒混和操作

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高機能蓄冷剤を冷熱源とする、血液検査採取血の鮮度低化防止を目的とする採血管冷却保冷システムであって、採血管(11)又は採血シリンジ(14)に直接装着される高冷熱の急速冷却採血管ホルダー(100)と、外面に外部雰囲気を隔てる高断熱部と上部(20a)・下部(20f)に其々1箇所の密封開閉部を有し、内面に冷気漏出防止機能(20b−1)付きの採血管挿入保管断熱シート(20b)及び採血管安定用多孔プレート(20c)と一定冷熱を蓄える蓄冷部を具えたBOX型クーラー(200)との組み合わせにより、採血管に対して直接的高熱伝導冷却に次ぐ間接的空間冷却の2段階冷熱負荷を加え、より急速的な0℃帯冷却及び小質量高持続保冷を可能とし、より安定した採取血の検査前鮮度管理を行わせることを特徴とする、
採血管冷却保冷システム。
【請求項2】
前記高機能蓄冷剤(13)が、成分調整により温度調節設定を可能とさせることを利用した、複数の異なる温度帯蓄冷剤の組み合わせ使用において、急速冷却(図12)と小容量長時間保冷(図13)との相反する二つの性能を其々最大限に引き出させると伴に最小限の質量に止め、過冷却を防止した最適温度帯でのより高精度な検査前鮮度管理を行わせることを特徴とする、
請求項1に記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項3】
前記高機能蓄冷材(13)が、長時間の温度安定性及び維持力を有すると伴により軽量化に働きかけることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項4】
前記高冷熱瞬間冷却採血管ホルダー(100)が、採血管全体又は採血シリンジ採取部を密着して包み込むに適した形状を有し、装着状態において採血管へ直接冷熱を付加させることによって採血開始から即時の冷却をスタートさせ、加えて採血後即時の必須手技である転倒混和操作(6−a・6−b)に対応させることでより急速冷却(図12)に働きかけるという相乗効果を発揮することを特徴とする、
請求項1に記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項5】
前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、外面から、高断熱部(10A)・蓄冷部(10B)・高熱伝導金属部(10C)との三層構造によって形成され、その冷却維持力を蓄冷部(10B)の容積(厚さ)によって1・2分〜60分(図14)程度内で調節可能とすることを特徴とする、
請求項1又は4に記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項6】
前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、その採血管挿入口(10a)沿いにC形状の温度検知マーカー(10f)を設け、使用前での冷却セルフチェックをカラーでより明確に知らせることを特徴とする、
請求項1又は4〜5のいずれかに記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項7】
前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、その側面の上下に掛けて採血確認用スリット部(10e)を設け、採血中の採血管への採血状況の観察を容易に行わせることを特徴とする、
請求項1又は4〜6のいずれかに記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項8】
また前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、2個の異なる温度反応を示す専用温度インジケーター付きの採血管(11)又は採血シリンジ(14)との併用においては、冷却処理後状態の、適正温度検知(11a)を可逆的に、不適正凍結温度検知(11b)を不可逆的に目視にて簡単に確認させ、より高精度な検査前鮮度管理を行わせることを特徴とする、
請求項1又は4〜7のいずれかに記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項9】
前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)内の採血管挿入保管断熱シート(20b)への挿入を可能とすることから、目的採血箇所への移動及びスタンバイ時から採血までの間も安定した冷熱維持を可能にすると伴に、その使用後においても採血管と合わせての冷却保冷を可能とし、一切の別途準備を不要とした使用を行わせることを特徴とする、
請求項1又は4〜8のいずれかに記載の採血管冷却保冷システム
【請求項10】
前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、荒熱処理低温化検体として低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)へ提供することでは、余計な熱量を省略した最小限の蓄冷量による間接的空間冷却を可能とさせ、従来法の採血管状凹型ブロック式蓄冷剤(300a)の直接的接触法における課題の高重量に対し、同機能(収納数20本程度及び保冷時間12時間程度)比較(図11)において半分程度への軽量化を可能とすることを特徴とする、請求項1又は4〜9のいずれかに記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項11】
また、前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、荒熱処理低温化検体として低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)へ提供することで行わせる間接的空間冷却法では、従来法の採血管状凹型ブロック式蓄冷剤(300a)の直接的接触法におけるその他の課題、蓄冷剤凍結時における体積膨張へのBOX内圧抑制対策及び採血管の太・細間での接触相違に対する太径除外の一部適応等も一掃し、更には蓄冷剤の凍結用冷凍庫スペースの縮小におけるエコ化にも働きかけることを特徴とする、
請求項1又は4〜10のいずれかに記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項12】
前記高冷熱急速冷却採血管ホルダー(100)が、その急速冷却における荒熱処理能に期待する組み合わせ使用に止まらず、その急冷後の単体連続保冷機能(図14)による緊急検査(血液ガス・電解質・アンモニア等)への単独対応を可能とすることを特徴とする、
請求項1又は4〜11のいずれかに記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項13】
前記低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)が、その下部前面に蓄冷剤挿入専用の下部開閉部(20f)を有することでは、従来の蓄冷剤交換時に伴う煩雑な開口部周辺パーツの脱着作業を一切不要とさせ、より簡単容易に行わせることを特徴とする、
請求項1に記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項14】
前記低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)が、その内面に冷気漏出防止機構(20b−1)付きの採血管挿入保管断熱シート(20b)と採血管安定用多孔プレート(20c)とを装備することでは、何度となく開閉され大気曝露となる悪条件下での採血管の挿入操作に対し、冷気の漏出及び挿入のガタつきを防ぎながらもサイズを問わず全採血管(5ml〜10ml容量)に対応して行わせることを特徴とする、
請求項1又は13に記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項15】
前記低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)内面に設置の採血管挿入保管断熱シート(20b)の冷気漏出防止機構(20b−1)が、ゴム状弾性体を有する円筒形状の上部弁体(1A)と下部弁体(1B)よりなる冷気漏出防止機構(20b−1)であって、上部弁体には指を挿通しうるように窪み部(1C)と切れ目(1D)を設け、下部弁体(1B)は、その中心部に細孔(1E)を設けた膜(1F)を有し、上部弁体(1A)と下部弁体(1B)とはその円周部で接触し、その中央部では双方が分離していることを特徴とする、
請求項1又は13〜14のいずれかに記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項16】
前記低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)用蓄冷剤(20d)が、高断熱下部開閉部(20f)に挿入可能な質量500g程度のコンパクトサイズにしてその空間冷熱維持を可能とさせ、また上面が採血管(11)底部に接触しない高さに保たれることでは過冷却による溶血回避に寄与し、より安全且つ軽量化に働きかけることを特徴とする、
請求項1又は13〜15のいずれかに記載の採血管冷却保冷システム。
【請求項17】
前記低冷熱間接空間冷却用BOX型クーラー(200)の間接的空間冷却方式による低質量高機能蓄冷剤(20d)量の決定方法が、その空間における、MAXサンプル量と冷却保冷時間に応じて計算され決定される事から、用途が短時間の場合等においては更に蓄冷剤量の軽量化を図らせ、用途毎に応じた柔軟な対応を可能とすることを特徴とする、
請求項1又は13〜17のいずれかに記載の採血管冷却保冷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−173282(P2012−173282A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53517(P2011−53517)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(511063675)
【Fターム(参考)】