説明

採血装置

【課題】筐体と載せ皿との隙間に不意に物を落とした場合であっても、装置使用者自身の手で当該落下物を容易に回収することができる採血装置を提供する。
【解決手段】血液バッグを載置する載せ皿40と、載せ皿40を揺動させる揺動機構50と、載せ皿40における揺動機構50に対向する面に配置された第1位置決め部60と、揺動機構50における載せ皿40に対向する面に配置された第2位置決め部70とを備える採血装置1。載せ皿40と揺動機構50とは、第1位置決め部60及び第2位置決め部70を介して着脱可能に構成されている。第1位置決め部60及び第2位置決め部70は、互いに凹凸嵌合するように所定の凹凸パターンで構成されており、かつ、当該凹凸パターンによって揺動機構50に対する載せ皿40の位置を位置決め可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液バッグに血液を採取するための採血装置として、従来、血液バッグを載置する載せ皿と、載せ皿を揺動させる揺動機構とを備える採血装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。載せ皿及び揺動機構は、筐体内に配設されている。載せ皿は、揺動機構の一部にネジ等で固定されている
【0003】
従来の採血装置によれば、載せ皿を揺動させる揺動機構を備えているため、血液バッグ内に予め充填された抗血液凝固剤と採血した血液とを十分に混和させながら採血を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−299358号公報
【特許文献2】特開2000−84067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、採血装置における筐体と載せ皿との間には隙間があるため、採血現場ではこの隙間に針キャップやボールペン等を不意に落としてしまうことがあった。隙間に物が落ちたままの状態で装置を使用すると、落下物が揺動機構の一部などと接触してしまい、結果として装置の故障を招くケースも有り得ることから、筐体と載せ皿との隙間に物を落とした場合には、載せ皿を取り外して当該落下物を速やかに取り出さなければならない。
【0006】
しかしながら、従来の採血装置においては、載せ皿と揺動機構とがネジ等で固定されているため、ネジ等による固定を解除しなければ載せ皿を取り外すことができず、装置使用者自身の手によって載せ皿の取り外し及び落下物の回収作業を行うのは容易なことではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、筐体と載せ皿との隙間に不意に物を落とした場合であっても、装置使用者自身の手で当該落下物を容易に回収することができる採血装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の採血装置(1)は、血液バッグを載置する載せ皿(40)と、前記載せ皿(40)を揺動させる揺動機構(50)と、前記載せ皿(40)における前記揺動機構(50)に対向する面に配置された第1位置決め部(60)と、前記揺動機構(50)における前記載せ皿(40)に対向する面に配置された第2位置決め部(70)とを備え、前記載せ皿(40)と前記揺動機構(50)とは、前記第1位置決め部(60)及び前記第2位置決め部(70)を介して着脱可能に構成されており、前記第1位置決め部(60)及び前記第2位置決め部(70)は、互いに凹凸嵌合するように所定の凹凸パターンで構成されており、かつ、当該凹凸パターンによって前記揺動機構(50)に対する前記載せ皿(40)の位置を位置決め可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
このため、本発明の採血装置によれば、載せ皿と揺動機構とが着脱可能に構成されているため、筐体と載せ皿との隙間に不意に物を落としたとしても、載せ皿を取り外すことによって、装置使用者自身の手で当該落下物を比較的容易に回収することが可能となる。
【0010】
また、本発明の採血装置によれば、載せ皿と揺動機構とが着脱可能に構成されているため、載せ皿を一旦取り外すことにより、揺動機構の周りなど筐体内に溜まったホコリやゴミ等を掃除するのが容易となる。また、載せ皿を一旦取り外すことができることから、採血装置を輸送する際に載せ皿を筐体から取り外した状態で輸送することが可能となる。その結果、輸送時に載せ皿が振動することに起因する装置内の精密部品(例えば重量センサなど)への影響を無くすことが可能となる。さらにまた、載せ皿と揺動機構とが着脱可能に構成されていることから、例えば載せ皿が破損した場合において、破損した載せ皿を取り外し、交換用の載せ皿と入れ替えることが可能となる。
【0011】
また、本発明の採血装置によれば、上記のように構成された第1位置決め部及び第2位置決め部をさらに備えているため、1度取り外した載せ皿を再度揺動機構に取り付けるときに、載せ皿と揺動機構との位置決めが十分になされた状態で、載せ皿を揺動機構に比較的容易に取り付けることが可能となる。
【0012】
本発明の採血装置(1)においては、前記載せ皿(40)のうち少なくとも前記第1位置決め部(60)の周辺部分は、透明部材で構成されていることが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、1度取り外した載せ皿を再度揺動機構に取り付ける際に、目である程度確認しながら第1位置決め部と第2位置決め部の位置合わせを行うことができ、載せ皿の位置合わせ作業をスムーズに行うことが可能となる。
【0014】
本発明の採血装置(1)においては、前記載せ皿(40)全体が透明部材からなることが好ましい。
【0015】
このように構成することにより、載せ皿の位置合わせ作業をより一層スムーズに行うことが可能となる。
【0016】
本発明の採血装置においては、前記載せ皿のうち少なくとも前記第1位置決め部の周辺部分は、メッシュ状に構成されていることが好ましい。
【0017】
このように構成することによっても、1度取り外した載せ皿を再度揺動機構に取り付ける際に、目である程度確認しながら第1位置決め部と第2位置決め部の位置合わせを行うことができ、載せ皿の位置合わせ作業をスムーズに行うことが可能となる。
【0018】
本発明の採血装置においては、前記第1位置決め部は、前記載せ皿と一体化されていることが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、部品点数を削減することができ、装置製造時の組み立て工数を減らすことが可能となる。
【0020】
本発明の採血装置(1)においては、前記第1位置決め部(60)と前記第2位置決め部(70)とは、磁力により吸着固定されていることが好ましい。
【0021】
このように構成することにより、載せ皿を揺動機構に取り付けた後においても、載せ皿と揺動機構との位置決め固定状態を維持することが可能となる。
【0022】
本発明の採血装置(1)においては、前記第1位置決め部(60)と前記第2位置決め部(70)とは、永久磁石(80)の磁力により吸着固定されていることが好ましい。
【0023】
このように構成することにより、比較的簡易な構成でもって、載せ皿と揺動機構との位置決め固定状態の維持を実現することが可能となる。
【0024】
本発明の採血装置においては、前記第1位置決め部と前記第2位置決め部とは、電磁石の磁力により吸着固定されており、前記電磁石の磁力を制御する機能を有する磁力制御部をさらに備えることが好ましい。
【0025】
このように構成することによっても、載せ皿と揺動機構との位置決め固定状態の維持を実現することが可能となる。また、磁力制御部によって電磁石の磁力を制御することができるため、揺動機構から載せ皿を取り外したいときには、電磁石の磁力を弱めたりゼロにしたりすることにより、揺動機構から載せ皿を取り外すときの力を軽減することが可能となるし、載せ皿を揺動機構に取り付けたときには、載せ皿を揺動しても載せ皿が不意に離脱することのないように電磁石の磁力を所定の強さまで上げることにより、第1位置決め部と第2位置決め部をしっかりと吸着固定させることが可能となる。
【0026】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係る採血装置1の外観斜視図。
【図2】実施形態に係る採血装置1の正面図。
【図3】実施形態に係る採血装置1の背面図。
【図4】実施形態に係る採血装置1の平面図。
【図5】実施形態に係る採血装置1の左側面図。
【図6】図1のA−A線断面図。
【図7】上蓋20及び載せ皿40を省略して示す採血装置1の平面図。
【図8】載せ皿40及び第1位置決め部60を上から見た図。
【図9】載せ皿40及び第1位置決め部60を下から見た図。
【図10】載せ皿40及び第1位置決め部60を説明するために示す図。
【図11】揺動機構50及び第2位置決め部70の右側面図。
【図12】揺動機構50及び第2位置決め部70の平面図。
【図13】載せ皿40と揺動機構50とが着脱される様子を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の採血装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0029】
[実施形態]
まず、実施形態に係る採血装置1の構成について、図1〜図13を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る採血装置1の外観斜視図である。
図2は、実施形態に係る採血装置1の正面図である。
図3は、実施形態に係る採血装置1の背面図である。
図4は、実施形態に係る採血装置1の平面図である。
【0030】
図5は、実施形態に係る採血装置1の左側面図である。図5(a)は上蓋20を閉じた状態を示す図であり、図5(b)は上蓋20を開いた状態を示す図である。
図6は、図1のA−A線断面図である。
図7は、上蓋20及び載せ皿40を省略して示す採血装置1の平面図である。
【0031】
図8は、載せ皿40及び第1位置決め部60を上から見た図である。
図9は、載せ皿40及び第1位置決め部60を下から見た図である。
図10は、載せ皿40及び第1位置決め部60を説明するために示す図である。図10(a)は載せ皿40及び第1位置決め部60を横から見た図であり、図10(b)は図8のB−B線断面図であり、図10(c)は図10(b)に示す第1位置決め部60の周辺部分を拡大して示す図である。なお、図10(a)及び図10(b)において、押さえ部材42の図示を省略している。
【0032】
図11は、揺動機構50及び第2位置決め部70の右側面図である。なお、図11に示す二点鎖線はモータ52のモータ軸52axであり、一点鎖線は載せ皿受け部72の回転軸54axである。
図12は、揺動機構50及び第2位置決め部70の平面図である。
図13は、載せ皿40と揺動機構50とが着脱される様子を説明するために示す図である。図13(a)は載せ皿40を揺動機構50に取り付けた状態を示す図であり、図13(b)は載せ皿40を揺動機構50から取り外した状態を示す図である。
【0033】
実施形態に係る採血装置1は、血液バッグに血液を採取するための採血装置であって、図1〜図13に示すように、筐体10と、筐体10の上方に配置された上蓋20と、筐体10の正面側に配設された操作部30と、血液バッグを載置する載せ皿40と、載せ皿40に設けられた押さえ部材42と、載せ皿40の下方に配設された揺動機構50と、重量センサ58と、載せ皿40における揺動機構50に対向する面に配置された第1位置決め部60と、揺動機構50における載せ皿40に対向する面に配置された第2位置決め部70と、第2位置決め部70の一部に埋設された2つの永久磁石80(図12参照。)とを少なくとも備える。なお、筐体10内を減圧するための真空ポンプを有する減圧機構、各部に電力を供給するための電源部及びこれら各部を統括制御する制御部等については、図示を省略している。
【0034】
筐体10の底部正面及び両側面には、図1及び図2に示すように、所定形状の窪み部12が設けられている。筐体10の背面には、図3及び図5に示すように、段部13が設けられている。窪み部12には手を差し込むことができ、段部13にはしっかりと指をかけることができるため、採血装置1を持ち運ぶときに、採血装置1の両側面から手を差し入れることもできるし、採血装置1の正面及び背面からも手を差し入れることもでき、非常に持ち運びやすい構造となっている。
【0035】
筐体10の正面上方には、採血装置1内の載せ皿40に血液バッグを載置したときに、当該血液バッグにつながるチューブの一部をクランプするためのチューブクランプ部14が設けられている。チューブクランプ部14の正面左方であって後述する上蓋係止具24に対応する位置には、略L字状の被係止部16が設けられている(図5(b)参照。)。
【0036】
筐体10の底面の四隅には、所定高さの脚部18がそれぞれ配置されている。
【0037】
上蓋20は、図3〜図5に示すように、筐体10の背面に設けられた2つの蝶番26によって開閉自在に配設されている。上蓋20は、透明な樹脂(例えばアクリル樹脂など)で構成されている。
【0038】
上蓋20の正面側の所定位置には、図1に示すように、上蓋用取っ手22と、上蓋係止具24とが設けられている。上蓋係止具24は、筐体10に設けられた被係止部16(図5(b)参照。)と係止可能に構成されている。上蓋20を閉じたときには、上蓋係止具24が被係止部16に係止するように構成されており、上蓋20が不意に開かないようにロックする構造となっている。上蓋20を開きたいときには、上蓋係止具24と被係止部16との係止状態を解除した上で上蓋用取っ手22を上方に持ち上げると、上蓋20が開くように構成されている。
【0039】
操作部30は、例えば液晶タッチパネルからなり、タッチパネル上に表示される文字情報又は画像情報によって、装置使用者は各種情報を知ることができる。また、タッチパネル上に表示されるボタン画像等にタッチすることにより、例えば「採血開始」や「採血停止」などの各種操作を行えるように構成されている。
【0040】
操作部30の右方には、図1及び図2に示すように、採血装置1の動作を停止するための停止ボタン34が配設されている。操作部30の下方には、採血装置1の電源スイッチ32と、バーコードリーダー(図示せず。)を接続するためのバーコードリーダー接続端子33とが配設されている。
【0041】
筐体10の背面には、図3に示すように、USBケーブル等を差し込むためのUSB端子35と、LANケーブル等を差し込むためのLAN端子36と、電源コードを差し込むための電源コード差込口37とが配設されている。
【0042】
載せ皿40は、図6及び図8〜図10に示すように、平面視略長方形状であり、所定深さの略お椀状に形成されている。載せ皿40は、例えばアクリル樹脂からなり、載せ皿40全体が透明である。載せ皿40には、載置された血液バッグを押さえるための押さえ部材42が取り付けられている。図示による説明は省略するが、載せ皿40の中央には、後述する位置決めピン64を通すための4つの孔が形成されている。
【0043】
揺動機構50は、載せ皿40を揺動させるための機構であり、モータ52と、モータ52に接続された歯車伝達機構54と、歯車伝達機構54の上方に配置された図示しない球面軸受けとを有する。モータ52は、例えばDCブラシレスモータである。歯車伝達機構54は、詳細な説明は省略するが複数の歯車等で構成されており、モータ52の駆動を後述する第2位置決め部70の載せ皿受け部72に伝達するための機構である。モータ軸52axを中心とした回転運動は、歯車伝達機構54によって、回転軸54axを中心とした回転運動に変換される。
【0044】
重量センサ58は、例えばロードセルからなる。重量センサ58により、載せ皿40に載置された血液バッグの重量を精密に計測することができる。
【0045】
第1位置決め部60は、図8〜図10に示すように、固定板62と、4本の位置決めピン64とを有する。
【0046】
固定板62は、平面視略正方形の鉄板であり、載せ皿40の中央に設けられた孔と同じ箇所に、位置決めピン64を通すための4つの孔が形成されている。固定板62に設けられた孔は、螺旋状に溝が形成されたネジ孔となっている。
【0047】
位置決めピン64は、例えばボルト状の部材である。位置決めピン64の側面には螺旋状の突起が設けられており、固定板62に設けられたネジ孔と螺合可能に構成されている。このように構成された固定板62及び位置決めピン64によって、載せ皿40の中央に第1位置決め部60を配置固定することができる。
【0048】
第2位置決め部70は、図11及び図12に示すように、円板状の載せ皿受け部72を有し、載せ皿受け部72の所定位置に4つの位置決め孔74が形成されている。
【0049】
載せ皿受け部72は、揺動機構50の球面軸受け(図示せず。)に軸支されており、図11及び図12に示す回転軸54axを回転中心として回転可能に構成されている。
【0050】
4つの位置決め孔74の配置は、第1位置決め部60の4本の位置決めピン64の配置と対応している。すなわち、第1位置決め部60及び第2位置決め部70は、互いに凹凸嵌合するように所定の凹凸パターンで構成されており、かつ、当該凹凸パターンによって揺動機構50に対する載せ皿40の位置を位置決め可能に構成されている。4つの位置決め孔74の内面は、溝又は突起の無い平滑面である。各位置決め孔74の内径は、位置決めピン64の外径よりも若干大きく設定されている。
【0051】
2つの永久磁石80は、図12に破線で示す位置において載せ皿受け部72に埋設されている。永久磁石80は、例えばフェライト磁石であり、その形状はリング状である。2つの永久磁石80により発生する磁力によって、第1位置決め部60の固定板62が載せ皿受け部72に吸着固定される。2つの永久磁石80により発生する磁力は、載せ皿40を揺動機構50に取り付けた後においては、載せ皿40を揺動しても載せ皿40が不意に離脱することがなく、かつ、揺動時の振動音の発生が少なく、反対に、載せ皿40を揺動機構50から取り外す際には、あまり大きな力をかけずに載せ皿40を取り外すことのできる程度の大きさに設定されている。
【0052】
載せ皿40と揺動機構50とは、図13(a)及び図13(b)に示すように、第1位置決め部60及び第2位置決め部70を介して着脱可能に構成されている。
【0053】
なお、揺動機構50の上面は、図示による説明は省略するが横から見て所定角度傾いているため、載せ皿受け部72も所定角度傾いた状態で配置されている(図11参照。)。この載せ皿受け部72に取り付けられる載せ皿40も所定角度傾いた状態で取り付けられることから、載せ皿40に載置される血液バッグも横から見て所定角度傾いた状態で載せ皿40に載置されることとなる。この状態で載せ皿40が回転軸54axを中心として回転すると、血液バッグ内の液体に対し十分な混和を促す流れが発生するため、採血装置1を用いることにより、血液バッグ内に予め充填された抗血液凝固剤と採血した血液とを十分に混和させながら採血を行うことが可能となる。
【0054】
以上のように構成された実施形態に係る採血装置1によれば、載せ皿40と揺動機構50とが着脱可能に構成されているため、筐体10と載せ皿40との隙間に不意に物を落としたとしても、載せ皿40を取り外すことによって、装置使用者自身の手で当該落下物を比較的容易に回収することが可能となる。
【0055】
また、実施形態に係る採血装置1によれば、載せ皿40と揺動機構50とが着脱可能に構成されているため、載せ皿40を一旦取り外すことにより、揺動機構50の周りなど筐体10内に溜まったホコリやゴミ等を掃除するのが容易となる。また、載せ皿40を一旦取り外すことができることから、採血装置1を輸送する際に載せ皿40を筐体10から取り外した状態で輸送することが可能となる。その結果、輸送時に載せ皿が振動することに起因する装置内の精密部品(例えば重量センサなど)への影響を無くすことが可能となる。さらにまた、載せ皿40と揺動機構50とが着脱可能に構成されていることから、例えば載せ皿40が破損した場合において、破損した載せ皿40を取り外し、交換用の載せ皿と入れ替えることが可能となる。
【0056】
また、実施形態に係る採血装置1によれば、上記のように構成された第1位置決め部60及び第2位置決め部70をさらに備えているため、1度取り外した載せ皿40を再度揺動機構50に取り付けるときに、載せ皿40と揺動機構50との位置決めが十分になされた状態で、載せ皿40を揺動機構50に比較的容易に取り付けることが可能となる。
【0057】
実施形態に係る採血装置1においては、載せ皿40がアクリル樹脂からなり、載せ皿40全体が透明であることから、1度取り外した載せ皿40を再度揺動機構50に取り付ける際に、目である程度確認しながら第1位置決め部60と第2位置決め部70の位置合わせ(位置決めピン64と位置決め孔74の位置合わせ)を行うことができ、載せ皿40の位置合わせ作業をスムーズに行うことが可能となる。
【0058】
実施形態に係る採血装置1においては、第1位置決め部60と第2位置決め部70とは、永久磁石80の磁力により吸着固定されているため、載せ皿40を揺動機構50に取り付けた後においても、載せ皿40と揺動機構50との位置決め固定状態を維持することが可能となる。
【0059】
実施形態に係る採血装置1においては、複数の位置決めピン64と複数の位置決め孔74とで位置合わせするように構成されているため、第1位置決め部60と第2位置決め部70の位置決め、ひいては揺動機構50に対する載せ皿40の位置決めを確実に行うことが可能となる。
【0060】
以上、本発明の採血装置を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0061】
(1)上記実施形態においては、載せ皿全体が例えばアクリル樹脂で構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。載せ皿全体を透明とする観点から言えば、例えば、ポリ塩化ビニルやポリエチレンテレフタレート(PET)などの他の樹脂を用いてもよいし、樹脂以外の材料(例えば硬質ガラスなど)からなっていてもよい。また、本発明は、載せ皿全体が同一材料からなるものに限定されるものではなく、載せ皿のうち第1位置決め部の周辺部分のみが透明部材で構成されており、その他の部分は非透明部材で構成されていてもよい。また、載せ皿のうち少なくとも第1位置決め部の周辺部分がメッシュ状に構成されていてもよく、載せ皿の底面(血液バッグを載置する面)全体に複数の細孔が形成されたものも好適に用いることができる。
【0062】
(2)上記実施形態においては、載せ皿と第1位置決め部が別体として構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、載せ皿と第1位置決め部が一体化されていてもよい。この場合には、部品点数を削減することができ、装置製造時の組み立て工数を減らすことが可能となるという効果がある。
【0063】
(3)上記実施形態においては、第1位置決め部の固定板が鉄板からなる場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成又は材料からなっていてもよい。他の構成からなる固定板として、例えば、格子状の鉄板からなる固定板を用いた場合には、載せ皿の位置合わせ作業をより一層スムーズに行うことが可能となる。他の材料からなる固定板として、例えば、他の金属材料(強磁性体の金属材料として、例えばニッケル合金、フェライト系やマルテンサイト系等の強磁性体であるステンレス鋼など)からなる固定板、他の金属材料を表面に鍍金処理した固定板、アクリル樹脂等の透明部材と強磁性体からなる金属部材とを部分的に組み合わせた固定板などを用いた場合にも、載せ皿の位置合わせ作業をより一層スムーズに行うことが可能となる。
【0064】
(4)上記実施形態においては、載せ皿側に配置された第1位置決め部が位置決めピンを有し、揺動機構側に配置された第2位置決め部に位置決め孔が形成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、載せ皿側に配置された第1位置決め部に位置決め孔が形成されており、揺動機構側に配置された第2位置決め部が位置決めピンを有していてもよい。
【0065】
(5)上記実施形態においては、位置決めピンの数が4本である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3本以下又は5本以上であってもよい。ただし、位置決めピンの数が1本である場合には、凹凸嵌合後において載せ皿に望ましくない回転が発生しないように、例えばピンの断面形状を多角形にするなどの工夫を加えることが望ましい。位置決め孔の数についても同様であり、4つに限定されるものではない。また、位置決めピン(位置決め孔)の配置について、上記実施形態で例示した配置パターンに限定されるものではなく、他の配置パターンであってもよい。
【0066】
(6)上記実施形態においては、永久磁石としてフェライト磁石を用いた場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、アルニコ磁石、希土類磁石(ネオジウム磁石など)、ボンド磁石(柔軟磁石)などの磁石も好適に用いることができる。
【0067】
(7)上記実施形態においては、永久磁石として、2つのリング状磁石を配置した場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。磁石の数、形状及び配置パターンについては、磁石の磁力等を考慮して適宜変更してもよいことは言うまでもない。
【0068】
(8)上記実施形態においては、第2位置決め部側にのみ永久磁石が配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1位置決め部側に永久磁石が配置され、第2位置決め部側に金属等からなる固定板が配置されていてもよいし、第1位置決め部と第2位置決め部の両方に極性の異なる永久磁石が配置されていてもよい。
【0069】
(9)上記実施形態においては、永久磁石の磁力により、第1位置決め部と第2位置決め部とを吸着固定する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、永久磁石に代えて、電磁石を用いてもよい。なお、電磁石を用いる場合には、電磁石の磁力を制御する機能を有する磁力制御部をさらに備えることが好ましい。永久磁石に代えて電磁石及び磁力制御部を用いた場合には、磁力制御部によって電磁石の磁力を制御することができるため、揺動機構から載せ皿を取り外したいときには、電磁石の磁力を弱めたりゼロにしたりすることにより、揺動機構から載せ皿を取り外すときの力を軽減することが可能となるし、載せ皿を揺動機構に取り付けたときには、載せ皿を揺動しても載せ皿が不意に離脱することのないように電磁石の磁力を所定の強さまで上げることにより、第1位置決め部と第2位置決め部をしっかりと吸着固定させることが可能となる。
【0070】
(10)上記実施形態においては、揺動機構が有するモータとして、DCブラシレスモータを用いた場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばステッピングモータなど、他の種類のモータを用いてもよい。
【0071】
(11)上記実施形態においては、揺動機構が、複数の歯車等で構成された歯車伝達機構によってモータの駆動を載せ皿受け部に伝達している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。歯車伝達機構に代えて、例えば、磁気式歯車からなる非接触動力伝達機構、カルダン駆動方式を採用した動力伝達機構などを用いてもよいし、モータの配置等を変更すれば、いわゆるベルト伝達機構やチェーン伝達機構などの他の動力伝達機構を用いてもよい。さらにまた、X軸方向(左右方向)に往復運動する機構とY軸方向(前後方向)に往復運動する機構とを組み合わせて、載せ皿を揺動するように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の採血装置は、血液バッグ又は血液バッグ以外の採血容器に血液を採取するための採血装置において、筐体と載せ皿との隙間に不意に物を落とした場合であっても、装置使用者自身の手で当該落下物を容易に回収することができる採血装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 採血装置
10 筐体
12 窪み部
13 段部
14 チューブクランプ部
16 被係止部
18 脚部
20 上蓋
22 上蓋用取っ手
24 上蓋係止具
26 蝶番
30 操作部
32 電源スイッチ
33 バーコードリーダー接続端子
34 停止ボタン
35 USB端子
36 LAN端子
37 電源コード差込口
40 載せ皿
42 押さえ部材
50 揺動機構
52 モータ
52ax モータ軸
54 歯車伝達機構
54ax 回転軸
58 重量センサ
60 第1位置決め部
62 固定板
64 位置決めピン
70 第2位置決め部
72 載せ皿受け部
74 位置決め孔
80 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液バッグを載置する載せ皿(40)と、
前記載せ皿(40)を揺動させる揺動機構(50)と、
前記載せ皿(40)における前記揺動機構(50)に対向する面に配置された第1位置決め部(60)と、
前記揺動機構(50)における前記載せ皿(40)に対向する面に配置された第2位置決め部(70)とを備え、
前記載せ皿(40)と前記揺動機構(50)とは、前記第1位置決め部(60)及び前記第2位置決め部(70)を介して着脱可能に構成されており、
前記第1位置決め部(60)及び前記第2位置決め部(70)は、互いに凹凸嵌合するように所定の凹凸パターンで構成されており、かつ、当該凹凸パターンによって前記揺動機構(50)に対する前記載せ皿(40)の位置を位置決め可能に構成されていることを特徴とする採血装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の採血装置において、
前記載せ皿(40)のうち少なくとも前記第1位置決め部(60)の周辺部分は、透明部材で構成されていることを特徴とする採血装置(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の採血装置において、
前記載せ皿(40)全体が透明部材からなることを特徴とする採血装置(1)。
【請求項4】
請求項1に記載の採血装置において、
前記載せ皿のうち少なくとも前記第1位置決め部の周辺部分は、メッシュ状に構成されていることを特徴とする採血装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の採血装置において、
前記第1位置決め部は、前記載せ皿と一体化されていることを特徴とする採血装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の採血装置において、
前記第1位置決め部(60)と前記第2位置決め部(70)とは、磁力により吸着固定されていることを特徴とする採血装置(1)。
【請求項7】
請求項6に記載の採血装置において、
前記第1位置決め部(60)と前記第2位置決め部(70)とは、永久磁石(80)の磁力により吸着固定されていることを特徴とする採血装置(1)。
【請求項8】
請求項6に記載の採血装置において、
前記第1位置決め部と前記第2位置決め部とは、電磁石の磁力により吸着固定されており、
前記電磁石の磁力を制御する機能を有する磁力制御部をさらに備えることを特徴とする採血装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−217623(P2012−217623A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86447(P2011−86447)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【出願人】(391015926)千代田電機工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】