説明

探傷装置

【課題】被検査材の表面に傷が付くのを抑制するとともに、被検査材の形状に関わらず探傷液内の気泡に起因する傷の誤検出を抑制することが可能な探傷装置を提供する。
【解決手段】この超音波探傷装置1(探傷装置)は、板状の連続体2を槽内に挿入するための入口側通板窓14aを含み、板状の連続体2が槽内において探傷部により探傷される探傷槽14と、探傷槽14の槽内に貯留される探傷液13とを備え、探傷液13を除く超音波探傷装置1と板状の連続体2とが接触しない状態で、板状の連続体2は探傷槽14の槽内を通過するように構成されており、探傷槽14の入口側通板窓14aと板状の連続体2との高さ方向(Z方向)における隙間AおよびBが0.25mm以上2.5mm以下になるように入口側通板窓14aが高さ方向に約5.0mmの長さL2を有するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、探傷装置に関し、特に、探傷液を用いた探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、探傷液を用いた探傷装置などが知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
上記特許文献1には、側壁部に被検査物品を通過させるための入口側通孔および出口側通孔を有する探傷槽と、探傷槽の槽内に配置される超音波探触子(探傷部)と、探傷槽の槽内に貯留される油からなる探傷液と、入口側通孔と超音波探触子との間に配置され、被検査物品の全面が接触した状態で通過する通孔を有する入口側拭い部材とを備える超音波探傷装置が開示されている。この超音波探傷装置の入口側拭い部材は、被検査物品に全面に接触することによって、被検査物品に付着した気泡を拭い取るように構成されている。これにより、探傷液内の気泡によって超音波が反射されることに起因する傷の誤検出を抑制することが可能である。
【0004】
また、上記特許文献2には、被検査管体の管軸と垂直をなすラインから所定の距離偏心させて超音波探触子を配置するとともに、超音波探触子からの超音波を垂直に反射することが可能な傾斜角度になるように被検査管体内部に反射板を配置することによって、超音波のうち反射板から反射される二重透過波のみを超音波探触子において受信および検出する、管体の超音波探傷方法が開示されている。この管体の超音波探傷方法においては、被検査管体の管軸と垂直をなすライン上に位置する被検査管体の管内の天頂部近傍に探傷液内の気泡が集結することにより生じる気泡による誤検出を避けるために、被検査管体の管軸と垂直をなすラインから所定の距離偏心させるように超音波探触子を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−22715号公報
【特許文献2】特公平6−95087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された超音波探傷装置では、気泡は拭い去られた後も探傷液内に残るため、再度被検査物品に付着するという不都合がある。このため、再度付着した気泡に起因して傷の誤検出が行われる場合があるという問題点がある。また、入口側拭い部材を被検査物品に対して拭い取るように全面に接触させるように構成されているため、被検査物品を長時間探傷した場合に、被検査物品から入口側拭い部材に付着した微細な粉や埃などによって、被検査物品の表面に傷が付くという問題点もあると考えられる。
【0007】
また、上記特許文献2に開示された管体の超音波探傷方法では、管体以外の被検査材においては天頂部が存在しないものが多く存在するため、探傷液内の気泡が常に一定の位置に集結するとは限らないという不都合がある。このため、管体以外の被検査材に特許文献2に開示された管体の超音波探傷方法を適用することは困難であるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、被検査材の表面に傷が付くのを抑制するとともに、被検査材の形状に関わらず探傷液内の気泡に起因する傷の誤検出を抑制することが可能な探傷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記目的を達成するために、本願発明者が鋭意検討した結果、探傷槽の第1窓部と被検査材との高さ方向における第1隙間が0.25mm以上2.5mm以下になるように第1窓部の高さ方向の寸法を設定することによって、探傷液内の気泡を減少させることができることを見出した。すなわち、この発明の一の局面による探傷装置は、被検査材の探傷を行うための探傷部と、被検査材を槽内に挿入するための第1窓部を含み、被検査材が槽内において探傷部により探傷される探傷槽と、探傷槽の槽内に貯留される探傷液とを備え、探傷槽の槽内において、探傷液を除く装置本体と被検査材とが接触しない状態で、被検査材は探傷槽の槽内を通過するように構成されており、被検査材は、探傷槽の第1窓部に対して高さ方向に第1隙間を有した状態で接触せずに挿入されるとともに、探傷槽の第1窓部と被検査材との高さ方向における第1隙間が0.25mm以上2.5mm以下になるように第1窓部の高さ方向の寸法が設定されている。
【0010】
この発明の一の局面による探傷装置では、上記のように、探傷槽の第1窓部と被検査材との高さ方向における第1隙間が0.25mm以上2.5mm以下になるように第1窓部の高さ方向の寸法を設定することによって、探傷液内に気泡が存在するのを抑制することができるので、気泡に起因する傷の誤検出を抑制することができる。また、探傷槽の槽内において、探傷液を除く装置本体と被検査材とが接触しない状態で、被検査材が探傷槽の槽内を通過するように構成することによって、装置本体と被検査材とが接触することに起因して、被検査材の表面に傷が付くのを抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による探傷装置において、好ましくは、探傷槽の第1窓部と被検査材との高さ方向における第1隙間が0.5mm以上2.0mm以下になるように第1窓部の高さ方向の寸法が設定されている。このように構成すれば、探傷液内において気泡が存在しなくなるので、気泡に起因する傷の誤検出を確実に防止することができる。なお、本願発明者はこの点も実験により確認済みである。
【0012】
上記一の局面による探傷装置において、好ましくは、探傷液は、探傷槽の第1窓部から排出されるように構成されており、探傷液が探傷槽の第1窓部から排出されている状態で、被検査材が探傷槽の第1窓部から挿入されるように構成されており、探傷液が排出されている探傷槽の第1窓部と被検査材との隙間が第1隙間になるように第1窓部の高さ方向の寸法を設定することによって、少なくとも探傷槽内に挿入される被検査材の表面における気泡の発生が抑制されるように構成されている。このように構成すれば、探傷液が探傷槽の第1窓部から排出されている状態で被検査材が探傷槽の第1窓部から挿入される場合において、被検査材の探傷の際に特に妨げとなる被検査材の表面に位置する気泡が、探傷液内において存在するのを抑制することができる。
【0013】
上記一の局面による探傷装置において、好ましくは、探傷槽の第1窓部は、矩形形状を有し、被検査材は、板形状を有し、第1隙間は、矩形形状を有する第1窓部の上辺部と板形状を有する被検査材の上表面との高さ方向における第2隙間と、矩形形状を有する第1窓部の下辺部と板形状を有する被検査材の下表面との高さ方向における第3隙間とを含む。このように構成すれば、第1窓部に板形状を有する被検査材を挿入する場合に、矩形形状を有する第1窓部により、被検査材と第1窓部とが接触しやすくなるのを抑制することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、第2隙間と第3隙間とは、略同一の長さを有する。このように構成すれば、第2隙間と第3隙間とのうちのどちらか一方の長さが小さいことに起因して、板形状を有する被検査材が探傷槽の第1窓部の上辺部と下辺部とのうちのどちらか一方に接触しやすくなるのを抑制することができる。これにより、被検査材の表面に傷が付くのをより抑制することができる。
【0015】
上記一の局面による探傷装置において、好ましくは、探傷槽を取り囲むように配置され、探傷槽から排出される探傷液を貯留する受蓄槽と、受蓄槽に貯留された探傷液を探傷槽に循環させるための探傷液循環装置とをさらに備え、探傷槽は、探傷槽の上部で、かつ、第1窓部が設けられる位置の上方以外の位置に設けられ、探傷槽の槽内の探傷液を第1窓部が設けられる位置の上方以外で受蓄槽に排出するための切欠部を含む。このように構成すれば、被検査材に第1窓部の上方から探傷液が受蓄槽に排出されるのを抑制することができるので、被検査材に探傷液がかかることに起因して被検査材において発生した気泡が、第1窓部を介して探傷槽の槽内に侵入するのを抑制することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、探傷槽は、被検査材を探傷槽から排出するための第2窓部をさらに含み、受蓄槽は、被検査材を受蓄槽に挿入するための第3窓部と、被検査材を受蓄槽から排出するための第4窓部とを含み、被検査材は、探傷槽の第2窓部、受蓄槽の第3窓部および受蓄槽の第4窓部と接触しないように構成されている。このように構成すれば、被検査材と探傷槽の第2窓部、受蓄槽の第3窓部および受蓄槽の第4窓部とが接触することに起因して、被検査材の表面に傷が付くのを抑制することができる。
【0017】
上記被検査材が第2窓部、第3窓部および第4窓部と接触しない探傷装置において、好ましくは、探傷槽の第2窓部と被検査材との高さ方向における第4隙間が探傷槽の第1窓部と被検査材との高さ方向における第1隙間以上になるように第2窓部の高さ方向の寸法が設定されているとともに、探傷槽の第2窓部と被検査材との高さ方向における第4隙間が0.25mm以上2.5mm以下になるように第2窓部の高さ方向の寸法が設定されている。このように構成すれば、探傷槽の第2窓部から気泡が探傷槽内に侵入するのを抑制することができるとともに、被検査材と第2窓部とが接触するのをより抑制することができる。
【0018】
上記被検査材が第2窓部、第3窓部および第4窓部と接触しない探傷装置において、好ましくは、受蓄槽の第3窓部および第4窓部は、それぞれ、探傷槽の第1窓部および第2窓部よりも高さ方向の寸法が大きくなるように構成されている。このように構成すれば、探傷槽内における気泡の存在を考慮する必要がない受蓄槽の第3窓部および第4窓部の高さ方向の寸法を大きくすることによって、被検査材と第3窓部および第4窓部とが接触するのをより抑制することができる。
【0019】
上記一の局面による探傷装置において、好ましくは、被検査材は、探傷槽の第1窓部に対して高さ方向と垂直な方向に第5隙間を有した状態で接触せずに挿入されるように構成されており、探傷槽の第1窓部と被検査材との高さ方向における第1隙間が探傷槽の第1窓部と被検査材との高さ方向と垂直な方向における第5隙間よりも小さくなるように第1窓部の高さ方向の寸法および高さ方向と垂直な方向の寸法が設定されている。このように構成すれば、探傷液内において気泡が存在するのを抑制しつつ、高さ方向と垂直な水平方向(幅方向)において、探傷槽の第1窓部と被検査材とが接触するのを抑制することができる。
【0020】
上記一の局面による探傷装置において、好ましくは、探傷槽の第1窓部は、高さ方向の寸法を変化させることが可能なように構成されている。このように構成すれば、高さ方向の長さ(厚み)が異なる被検査材においても、それぞれの被検査材に対応するように探傷槽の第1窓部と被検査材との第1隙間を0.25mm以上2.5mm以下になるように第1窓部の高さ方向の寸法を設定することができる。
【0021】
上記一の局面による探傷装置において、好ましくは、被検査材は、金属からなる。このように構成すれば、気泡に起因する傷の誤検出と被検査材の表面における傷の発生とを抑制しつつ、金属からなる被検査材を探傷することができる。
【0022】
上記一の局面による探傷装置において、好ましくは、被検査材は、連続体からなる。このように構成すれば、気泡に起因する傷の誤検出と被検査材の表面における傷の発生とを抑制しつつ、連続体である被検査材を探傷することができる。
【0023】
上記一の局面による探傷装置において、好ましくは、探傷液は水からなる。このように構成すれば、水からなる探傷液であっても、上記一の局面のように探傷槽の第1窓部と被検査材との高さ方向における第1隙間が0.25mm以上2.5mm以下になるように第1窓部の高さ方向の寸法を設定することによって、探傷液内において気泡が発生するのを抑制することができる。
【0024】
上記一の局面による探傷装置において、好ましくは、探傷液は、水を含み、探傷槽の槽内において、探傷部による被検査材の探傷時に、水を含む探傷液内において、少なくとも被検査材の表面に、水に水の表面張力を小さくするための添加剤を添加することにより作製された低表面張力液が位置するように構成されている。このように構成すれば、探傷槽の第1窓部と被検査材との高さ方向における第1隙間が0.25mm以上2.5mm以下になるように第1窓部の高さ方向の寸法を設定することに加えて、被検査材の表面における水の表面張力を小さくすることによっても、探傷液内の被検査材の表面に存在する気泡を消失しやすくすることができるので、探傷液内において気泡が発生するのをより確実に抑制することができる。
【0025】
この場合、好ましくは、探傷槽の外部に設けられ、被検査材の探傷部分が探傷槽の第1窓部から探傷槽の槽内に挿入される前に、被検査材の表面に低表面張力液を付着させる付着部をさらに備える。このように構成すれば、付着部によって、被検査材の表面に低表面張力液を付着させることができるので、確実に、低表面張力液を被検査材の表面に位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態による超音波探傷装置の構造を示した図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による超音波探傷装置の探傷方法を説明するための図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による超音波探傷装置の探傷方法を説明するためのグラフである。
【図4】図1に示した第1実施形態による超音波探傷装置の探傷装置部の構造を示した図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による超音波探傷装置の探傷装置部の構造を示した上面図である。
【図6】図1に示した第1実施形態による超音波探傷装置の図4および図5の1000−1000線断面からX2方向に見た探傷装置部の構造を示した図である。
【図7】図6に示した超音波探傷装置の探傷装置部の探傷槽の入口側通板窓近傍を示した拡大側面図である。
【図8】図1に示した第1実施形態による超音波探傷装置の図4および図5の2000−2000線断面からX1方向に見た探傷装置部の構造を示した図である。
【図9】図8に示した超音波探傷装置の探傷装置部の探傷槽の出口側通板窓近傍を示した拡大側面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による超音波探傷装置の効果を確認するための第1実験の結果を示した図である。
【図11】本発明の第1実施形態による超音波探傷装置の効果を確認するための第2実験の結果を示した図である。
【図12】本発明の第1実施形態による超音波探傷装置の効果を確認するための第3実験の結果を示した図である。
【図13】本発明の第1実施形態による超音波探傷装置の効果を確認するための第4実験の結果を示した図である。
【図14】本発明の第2実施形態による超音波探傷装置の探傷装置部の構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(第1実施形態)
まず、図1〜図9を参照して、本発明の第1実施形態による超音波探傷装置1の構造について説明する。なお、超音波探傷装置1は、本発明の「探傷装置」の一例である。
【0029】
本発明の第1実施形態による超音波探傷装置1は、図1に示すように、金属からなる板状の連続体2の探傷を行う探傷装置部10と、探傷装置部10の上方に配置され、後述する探傷液13(図2参照)の蒸発および拡散を抑制するための蓋部3と、後述する探触子11(図2参照)に接続される超音波発受信器4と、超音波発受信器4に接続されるオシロスコープ5と、オシロスコープ5に接続されるパーソナルコンピュータ6とを備えている。また、探傷装置部10は、図2に示すように、探触子11、反射板12および水からなる探傷液13を含む。なお、板状の連続体2は、単一の金属からなる金属板でもよいし、異なる2種以上の金属層を全面または部分的に張り合わせたクラッド材でもよい。なお、板状の連続体2は、「被検査材」の一例である。
【0030】
また、図1に示すように、超音波発受信器4は、探触子11(図2参照)に超音波を発信するための信号を送信するとともに、探触子11からの信号を受信する機能を有する。また、超音波発受信器4は、探触子11からの信号をオシロスコープ5に送信する機能も有する。また、オシロスコープ5は、超音波発受信器4からの信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換してパーソナルコンピュータ6に送信する機能を有する。
【0031】
また、図2に示すように、探傷装置部10の探触子11は、超音波発受信器4(図1参照)からの信号に基づいて、板状の連続体2に超音波を発信するとともに、板状の連続体2の上表面2aから反射された表面エコーと、板状の連続体2を透過して反射板12で反射され、再度板状の連続体2を透過した透過エコーとを受信(検出)して信号に変換するとともに、その信号を超音波発受信器4に送信する機能を有する。また、探触子11は、板状の連続体2の1mm程度以上の長さを有する欠陥を探傷するように構成されている。また、反射板12は、探触子11から板状の連続体2を透過して反射板12に到達した超音波を、板状の連続体2に向かって反射するように構成されている。また、探傷液13は、探触子11から発振される超音波が板状の連続体2において略全反射されるのを防止するために配置されている。また、板状の連続体2、探触子11および反射板12は、それぞれ、探傷液13の内部に配置されている。なお、探触子11と反射板12とによって探傷部が構成されている。
【0032】
また、パーソナルコンピュータ6は、図3に示すような板状の連続体2(図2参照)の欠陥を判断するための指標となるデータを算出する機能を有する。具体的には、図3の横軸(時間)は、超音波が探触子11(図2参照)から発信されてから、反射されて探触子11に受信されるまでの時間を示している。また、図3の縦軸は、反射された超音波の強度を示している。ここで、板状の連続体2に欠陥が存在しない場合には、図3の実線のようになる一方、板状の連続体2に欠陥が存在する場合には、図3の破線のように、欠陥が存在しない場合と比べて超音波の強度が減衰したグラフが得られる。この超音波の強度の減衰は、板状の連続体2の欠陥において超音波が通常の方向とは異なる方向に反射されることに起因して生じている。これにより、超音波探傷装置1(図1参照)によって、板状の連続体2に欠陥が存在するか否かを判断することが可能になる。
【0033】
また、図4および図5に示すように、探傷装置部10は、上面が開放されている探傷槽14と、探傷槽14を取り囲むように配置される受蓄槽15と、受蓄槽15の下部に接続され、探傷液13を探傷槽14の上部に循環させるためのポンプおよびパイプからなる探傷液循環装置16(図4参照)とをさらに含んでいる。また、探傷槽14および受蓄槽15の槽内には、探傷液13が貯留されている。
【0034】
また、受蓄槽15のX1側の側面部には、板状の連続体2を受蓄槽15の槽内に挿入するための入口側通板窓15aが設けられているとともに、受蓄槽15のX2側の側面部には、板状の連続体2を受蓄槽15の槽外に排出するための出口側通板窓15bが設けられている。また、入口側通板窓15aおよび出口側通板窓15bは、それぞれ、Z方向(高さ方向)の長さL1(図4参照)およびY方向(幅方向)の長さ(幅)W1(W1>L1)(図5参照)からなる横長の矩形形状に形成されている。なお、第1実施形態において、入口側通板窓15aおよび出口側通板窓15bは、それぞれ、Z方向に約20mmの長さL1と、Y方向に約80mmの幅W1とを有する。なお、入口側通板窓15aは、本発明の「第3窓部」の一例であり、出口側通板窓15bは、本発明の「第4窓部」の一例である。
【0035】
また、探傷槽14のX1側の側面部には、板状の連続体2を探傷槽14の槽内に挿入するための入口側通板窓14aが設けられているとともに、探傷槽14のX2側の側面部には、板状の連続体2を探傷槽14の槽外に排出するための出口側通板窓14bが設けられている。また、探傷槽14に貯留されている探傷液13は、入口側通板窓14aおよび出口側通板窓14bを介して、下方(Z2方向)に設けられた受蓄槽15に排出されるように構成されている。なお、入口側通板窓14aは、本発明の「第1窓部」の一例であり、出口側通板窓14bは、本発明の「第2窓部」の一例である。
【0036】
ここで、第1実施形態では、図6および図7に示すように、入口側通板窓14aは、Z方向(高さ方向)の長さL2およびY方向(幅方向)の幅W2からなる矩形形状に形成されている。また、入口側通板窓14aの上部(Z1側)には、Z方向に移動可能な可動部14cが設けられているとともに、入口側通板窓14aの下部(Z2側)には、Z方向に移動可能な可動部14dが設けられている。この可動部14cおよび14dがそれぞれZ方向(高さ方向)に動くことによって、入口側通板窓14aのZ方向(高さ方向)の長さL2が変化するように構成されている。なお、第1実施形態において、入口側通板窓14aは、Z方向に約5.0mmの長さL2と、Y方向に約50mmの幅W2とを有する。すなわち、入口側通板窓14aのZ方向(高さ方向)の長さL2は、Y方向(幅方向)の幅W2よりも小さくなるように構成されているとともに、入口側通板窓14aの開口は、受蓄槽15の入口側通板窓15aの開口(図4および図5参照)および出口側通板窓15bの開口(図4および図5参照)よりも小さくなるように構成されている。
【0037】
また、図8および図9に示すように、出口側通板窓14bは、Z方向(高さ方向)の長さL3およびY方向(幅方向)の長さ(幅)W3からなる横長の矩形形状に形成されている。また、出口側通板窓14bは、Z方向の長さL3および幅W3の矩形形状の穴部を有するプレート14eが、ネジ20によって探傷槽14のX2側の側面部の開口部周辺に取り付けられることによって形成されている。すなわち、穴部の大きさを異ならせたプレート14eが探傷槽14のX2側の側面部に取り付けられることによって、出口側通板窓14bのZ方向(高さ方向)の長さL3およびY方向(幅方向)の幅W3を変化させることが可能なように構成されている。なお、第1実施形態において、出口側通板窓14bは、入口側通板窓14aと同様に、Z方向に約5.0mmの長さL3と、Y方向に約50mmの幅W3とを有する。すなわち、出口側通板窓14bの開口は、受蓄槽15の入口側通板窓15aの開口(図4および図5参照)および出口側通板窓15bの開口(図4および図5参照)よりも小さくなるように構成されている。
【0038】
また、図7および図9に示すように、板状の連続体2の断面は、Z方向(高さ方向)の長さ(厚み)L4およびY方向(幅方向)の長さ(幅)W4からなる矩形形状に形成されている。なお、第1実施形態において、板状の連続体2は、Z方向に約1.5mmの厚みL4と、Y方向に約40mmの幅W4とを有する。
【0039】
また、板状の連続体2は、図4および図5に示すように、入口側通板窓15a、入口側通板窓14a、探傷槽14の槽内、出口側通板窓14bおよび出口側通板窓15bによって形成される通路AをX1側からX2側へと搬送されるように構成されている。この際、板状の連続体2は、略水平な状態で通路Aを搬送されるように構成されているとともに、探傷装置部10(超音波探傷装置1)の内部で、探傷液13以外の探傷装置部10(超音波探傷装置1)とは非接触の状態で探傷されるように構成されている。つまり、入口側通板窓14a、出口側通板窓14b、入口側通板窓15aおよび出口側通板窓15bと、板状の連続体2とは、接触しないように構成されている。
【0040】
また、第1実施形態では、図7に示すように、板状の連続体2が入口側通板窓14aを通過する際、板状の連続体2の上表面2aと矩形形状の入口側通板窓14aの上辺部14fとの高さ方向(Z方向)における隙間Aと、板状の連続体2の下表面2bと矩形形状の入口側通板窓14aの下辺部14gとの高さ方向における隙間Bとが形成される。同様に、板状の連続体2が入口側通板窓14aを通過する際、板状の連続体2のY1側の側面2cと矩形形状の入口側通板窓14aのY1側の辺部14hとの幅方向(Y方向)における隙間Cと、板状の連続体2のY2側の側面2dと矩形形状の入口側通板窓14aのY2側の辺部14iとの幅方向における隙間Dとが形成される。
【0041】
また、板状の連続体2が矩形形状の入口側通板窓14aを通過する際、板状の連続体2の通板方向(図5のX方向)に対する垂直な断面の中心は、入口側通板窓14aの略中心を通るように構成されている。これにより、高さ方向の隙間Aと隙間Bとは同一の長さL5(=(L2−L4)/2)になるように構成されているとともに、幅方向の隙間Cと隙間Dとは同一の幅W5(=(W2−W4)/2)になるように構成されている。また、高さ方向の隙間AおよびBの長さL5は、幅方向の隙間CおよびDの幅W5よりも小さくなるように構成されている。なお、第1実施形態において、入口側通板窓14aをZ方向(高さ方向)に約4.0mmの長さL2およびY方向(幅方向)に約50mmの幅W2を有するように設定することによって、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5は、それぞれ、約1.75mmになるように設定されているとともに、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのY方向(幅方向)の隙間CおよびDの幅W5は、それぞれ、約5.0mmになるように設定されている。なお、隙間Aは、本発明の「第1隙間」および「第2隙間」の一例であり、隙間Bは、本発明の「第1隙間」および「第3隙間」の一例である。また、隙間CおよびDは、それぞれ、本発明の「第5隙間」の一例であり、上表面2aおよび下表面2bは、それぞれ、本発明の「表面」の一例である。
【0042】
また、図9に示すように、板状の連続体2が出口側通板窓14bを通過する際、板状の連続体2の上表面2aと矩形形状の出口側通板窓14bの上辺部14jとの高さ方向(Z方向)における隙間Eと、板状の連続体2の下表面2bと矩形形状の出口側通板窓14bの下辺部14kとの高さ方向における隙間Fとが形成される。同様に、板状の連続体2が出口側通板窓14bを通過する際、板状の連続体2のY1側の側面2cと矩形形状の出口側通板窓14bのY1側の辺部14lとの幅方向(Y方向)における隙間Gと、板状の連続体2のY2側の側面2dと矩形形状の出口側通板窓14bのY2側の辺部14mとの幅方向における隙間Hとが形成される。
【0043】
また、板状の連続体2が矩形形状の出口側通板窓14bを通過する際、板状の連続体2の通板方向(X方向)に対する垂直な断面の中心は、出口側通板窓14bの略中心を通るように構成されている。これらにより、高さ方向の隙間Eと隙間Fとは同一の長さL6(=(L3−L4)/2)になるように構成されているとともに、幅方向の隙間Gと隙間Hとは同一の幅W6(=(W3−W4)/2)になるように構成されている。なお、第1実施形態において、出口側通板窓14bをZ方向(高さ方向)に約4.0mmの長さL3およびY方向(幅方向)に約50mmの幅W3を有するように設定することによって、板状の連続体2と出口側通板窓14bとのZ方向(高さ方向)の隙間EおよびFの長さL6は、それぞれ、約1.75mmになるように設定されているとともに、板状の連続体2と出口側通板窓14bとのY方向(幅方向)の隙間GおよびHの幅W6は、それぞれ、約5.0mmになるように設定されている。なお、隙間Eおよび隙間Fは、それぞれ、本発明の「第4隙間」の一例である。
【0044】
また、図5に示すように、探傷槽14の上端部には、探傷槽14のY1側の側面部の一部を切り欠くことによって、切欠部14nが形成されている。この切欠部14nは、探傷槽14の槽内の上端部近傍まで貯留されている探傷液13が、切欠部14nを介して、下方に設けられた受蓄槽15にY1側から排出されるように構成されている。すなわち、探傷槽14の槽内の上端部近傍まで貯留されている探傷液13は、探傷槽14のX方向の両側面部に設けられた入口側通板窓14aおよび出口側通板窓14bが設けられた位置の上方以外で受蓄槽15に排出されるように構成されている。
【0045】
また、図4に示すように、探傷槽14の槽内で、かつ、板状の連続体2が搬送される通路Aの上方に、探触子11が設けられている。また、探触子11は、大きな単一の探触子を小さなセグメントに分割した構造を有しており、セグメントはY方向(図5参照)に一列に並ぶように配置されている。これにより、探触子11は、Y方向に走査させる必要がないように構成されている。この結果、板状の連続体2を連続的にX方向(X2方向)に搬送しながら、板状の連続体2の探傷を行うことが可能である。また、探触子11は、ネジ20によって、探傷槽14のY1側(図5参照)の側面部に取り付けられているとともに、板状の連続体2が搬送される通路AのY方向の中央部と探触子11のY方向の中央部とが略一致するように配置されている。なお、探触子11は、単一の探触子をY方向に複数個並べることによって構成してもよい。また、単一の探触子またはY方向に複数個並べた探触子をY方向に往復運動させることによって、Y方向に走査させるように構成してもよい。
【0046】
また、探傷槽14の槽内の底部には、支持台17が設けられている。この支持台17の上面上には、板状の反射板12が配置されている。この反射板12は、探触子11の下方に位置するように配置されている。これにより、探触子11と反射板12とにより構成される探傷部によって探傷される板状の連続体2の探傷部分は、探触子11と反射板12とに挟まれた部分になるように構成されている。
【0047】
また、受蓄槽15の槽内で、かつ、探傷槽14の出口側通板窓14bと受蓄槽15の出口側通板窓15bとの間には、一対のエアノズル18aおよび18bがそれぞれ配置されている。このエアノズル18aは、板状の連続体2が搬送される通路AのY方向(図5参照)の中央部の上方に配置されているとともに、通路A側である下方向にエア(空気)を噴射可能なように構成されている。また、エアノズル18bは、板状の連続体2が搬送される通路AのY方向の中央部の下方に配置されているとともに、通路A側である上方向にエアを噴射可能なように構成されている。このエアノズル18aおよび18bによって、探傷槽14から出てきた板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bに残る探傷液13を板状の連続体2に接触することなく除去することが可能である。
【0048】
第1実施形態では、上記のように、探傷液13が探傷槽14の入口側通板窓14aから排出されている状態で、板状の連続体2を探傷槽14の入口側通板窓14aから挿入するように構成するとともに、板状の連続体2の上表面2aと矩形形状の入口側通板窓14aの上辺部14fとの高さ方向(Z方向)における隙間Aの長さL5と、板状の連続体2の下表面2bと矩形形状の入口側通板窓14aの下辺部14gとの高さ方向における隙間Bとの長さL5とが、それぞれ、約1.75mmになるように入口側通板窓14aがZ方向(高さ方向)に約5.0mmの長さL2を有するように設定することによって、探傷液13内において気泡が存在しなくなるので、板状の連続体2の探傷の際に特に妨げとなる板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bに位置する気泡が、探傷液13内において存在するのを防止することができる。これにより、気泡に起因する傷の誤検出を確実に防止することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、板状の連続体2を、探傷装置部10(超音波探傷装置1)の内部で、探傷液13以外の探傷装置部10(超音波探傷装置1)とは非接触の状態で探傷するように構成することによって、超音波探傷装置1本体と板状の連続体2とが接触することに起因して、板状の連続体2の上表面2aまたは下表面2bに傷が付くのを抑制することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、板状の連続体2の上表面2aと矩形形状の入口側通板窓14aの上辺部14fとの高さ方向(Z方向)における隙間Aと、板状の連続体2の下表面2bと矩形形状の入口側通板窓14aの下辺部14gとの高さ方向における隙間Bとが同一の長さL5(=(L2−L4)/2)になるように構成することによって、矩形形状を有する入口側通板窓14aにより、入口側通板窓14aと板状の連続体2とが接触しやすくなるのを抑制することができる。また、隙間Aと隙間Bとのうちのどちらか一方の長さが小さいことに起因して、板状の連続体2が探傷槽14の入口側通板窓14aの上辺部14fと下辺部14gとのうちのどちらか一方に接触しやすくなるのを抑制することができる。これにより、板状の連続体2の上表面2aまたは下表面2bに傷が付くのをより抑制することができる。
【0051】
また、第1実施形態では、探傷槽14の上部で、かつ、入口側通板窓14aの上方以外の位置に設けられ、探傷槽14の槽内の上端部近傍まで貯留されている探傷液13を、探傷槽14のX方向の両側面部に設けられた入口側通板窓14aおよび出口側通板窓14bが設けられた位置の上方以外で受蓄槽15に排出するための切欠部14nを設けることによって、板状の連続体2に入口側通板窓14aの上方から探傷液13が受蓄槽15に排出されるのを抑制することができるので、板状の連続体2に探傷液13がかかることにより板状の連続体2において発生した気泡が、入口側通板窓14aを介して探傷槽14の槽内に侵入するのを抑制することができる。また、探傷液13が板状の連続体2の上表面2aに流れ落ちることによって板状の連続体2に振動を与えるのを抑制することができるので、探傷部における探傷に影響が出るのを抑制することができるとともに、振動によって板状の連続体2が入口側通板窓14aに接触するのを抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態では、入口側通板窓14a、出口側通板窓14b、入口側通板窓15aおよび出口側通板窓15bと板状の連続体2とを接触させないように構成することによって、板状の連続体2と入口側通板窓14a、出口側通板窓14b、入口側通板窓15aおよび出口側通板窓15bとが接触することに起因して、板状の連続体2の上表面2aまたは下表面2bに傷が付くのを抑制することができる。
【0053】
また、第1実施形態では、板状の連続体2が出口側通板窓14bを通過する際、板状の連続体2の上表面2aと矩形形状の出口側通板窓14bの上辺部14jとの高さ方向(Z方向)における隙間Eの長さL6と、板状の連続体2の下表面2bと矩形形状の出口側通板窓14bの下辺部14kとの高さ方向における隙間Fとの長さL6とが、それぞれ、約1.75mmになるように出口側通板窓14bがZ方向(高さ方向)に約5.0mmの長さL3を有するように設定することによって、探傷槽14の出口側通板窓14bから気泡が探傷槽14内に侵入するのを抑制することができるとともに、板状の連続体2と出口側通板窓14bとが接触するのをより抑制することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、受蓄槽15の入口側通板窓15aおよび出口側通板窓15bのZ方向(高さ方向)の長さL1(約20mm)を、それぞれ、探傷槽14の入口側通板窓14aのZ方向の長さL2(約5.0mm)よりも大きくなるように構成するとともに、出口側通板窓14bのZ方向の長さL3(約5.0mm)よりも大きくなるように構成することによって、板状の連続体2と受蓄槽15の入口側通板窓15aおよび出口側通板窓15bとが接触するのをより抑制することができる。
【0055】
また、第1実施形態では、高さ方向(Z方向)の隙間AおよびBの長さL5(約1.75mm)を幅方向(Y方向)の隙間CおよびDの幅W5(約5.0mm)よりも小さくなるように入口側通板窓14aがZ方向(高さ方向)に約5.0mmの長さL2およびY方向(幅方向)に約5.0mmの幅W2を有するように設定することによって、探傷液13内において気泡が存在するのを抑制しつつ、高さ方向(Z方向)と垂直な幅方向(Y方向)において、探傷槽14の入口側通板窓14aと板状の連続体2とが接触するのを抑制することができる。
【0056】
また、第1実施形態では、可動部14cおよび14dをそれぞれZ方向(高さ方向)に動かすことによって、入口側通板窓14aのZ方向(高さ方向)の長さL2が変化するように構成することによって、厚みL4が異なる板状の連続体2においても、それぞれの板状の連続体2に対応するように探傷槽14の入口側通板窓14aと板状の連続体2との隙間AおよびBが0.25mm以上2.5mm以下になるように入口側通板窓14aのZ方向(高さ方向)の長さL2を設定することができる。
【0057】
また、第1実施形態では、板状の連続体2を金属からなるように構成することによって、気泡に起因する傷の誤検出と板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bにおける傷の発生とを抑制しつつ、金属からなる板状の連続体2を探傷することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、探傷液13を水からなるように構成することによって、水からなる探傷液13であっても探傷液13内において気泡が発生するのを抑制することができる。
【0059】
次に、図10〜図13を参照して、上記した第1実施形態による超音波探傷装置1の効果を確認するために行った第1実験〜第4実験について説明する。
【0060】
この第1実験〜第4実験では、それぞれ、一定のZ方向(高さ方向)の厚みL4を有する板状の連続体2が、Z方向(高さ方向)の長さL2を変化させた入口側通板窓14aからそれぞれ100mm/秒の通板速度で挿入された際の、水からなる探傷液13で満たされた探傷槽14における気泡の有無を観測した。
【0061】
また、第1実験〜第4実験においては、1mm以上の径を有する気泡が10個よりも多い場合には、気泡が多すぎて板状の連続体2の探傷が困難であると判断して、気泡判定に×印を付している。また、1mm以上の径を有する気泡が1個以上10個以下の場合には、探傷部(探触子11および反射板12)において誤検出される確率が低いと考えられるため、板状の連続体2の探傷が可能であると判断して、気泡判定に△印を付している。そして、1mm以上の径を有する気泡が全く観測されない場合には、探傷部において誤検出されることはないと考えられるため、板状の連続体2の探傷に適していると判断して、気泡判定に○印を付している。
【0062】
また、板状の連続体2が矩形形状の入口側通板窓14aを通過する際、板状の連続体2の通板方向(X方向)に対する垂直な断面の中心が、入口側通板窓14aの略中心を通るようにした。これにより、板状の連続体2と入口側通板窓14aとの高さ方向におけるZ1側の隙間AとZ2側の隙間Bとが同一の長さの隙間AおよびBの長さL5になるとともに、板状の連続体2と入口側通板窓14aとの幅方向におけるY1側の隙間CとY2側の隙間Dとが同一の幅W5になるようにした。以下、第1実験〜第4実験の詳細について説明する。
【0063】
まず、図10に示した第1実験では、板状の連続体2が、Z方向(高さ方向)の長さL2を変化させた入口側通板窓14aから挿入された際に、探傷槽14内の探傷液13において1mm以上の径を有する気泡が発生しているか否かを目視によって観測した。この第1実験では、実施例1〜7と比較例1および2とにおいて、Z方向(高さ方向)に1.5mmの厚みL4を有し、Y方向(幅方向)に40.0mmの幅W4を有する板状の連続体2を用いて、探傷槽14の入口側通板窓14aのY方向(幅方向)の幅W2(50.0mm)を固定した状態で、Z方向(高さ方向)の長さL2をそれぞれ異ならせた場合の気泡の発生を観測した。具体的には、探傷槽14の入口側通板窓14aのZ方向(高さ方向)の長さL2を、それぞれ、7.0mm(比較例1)、6.5mm(実施例1)、5.5mm(実施例2)、5.0mm(実施例3)、4.0mm(実施例4)、3.0mm(実施例5)、2.5mm(実施例6)、2.0mm(実施例7)および1.5mm(比較例2)にした場合の気泡の発生を観測した。この際、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5は、それぞれ、2.75mm(比較例1)、2.5mm(実施例1)、2.0mm(実施例2)、1.75mm(実施例3)、1.25mm(実施例4)、0.75mm(実施例5)、0.5mm(実施例6)、0.25mm(実施例7)および0.0mm(隙間なし)(比較例2)になる。なお、比較例2においては、探傷槽14の入口側通板窓14aにフェルトを取り付けて、板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bを拭うように構成することによって、Z方向(高さ方向)の隙間AおよびBが存在しないように構成した。また、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのY方向(幅方向)の隙間CおよびDの幅W5は、すべて5.0mmとした。
【0064】
図10に示した第1実験の実験結果としては、比較例1では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5が2.75mmである場合には、気泡が10個よりも多く観測された。また、比較例2では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向の隙間AおよびBの長さL5が0.0mm(隙間なし)である場合には、気泡が10個よりも多く観測された。これは、フェルトにより板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bを拭う際に気泡が発生することによって、探傷槽14において気泡が10個よりも多く観測されたと考えられる。
【0065】
その一方、実施例1および7では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5が2.5mmおよび0.25mmである場合には、気泡が1個以上10個以下観測された。また、実施例2〜6では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向の隙間AおよびBの長さL5が0.5mm以上2.25mm以下である場合には、気泡は観測されなかった。これらにより、高さ方向(Z方向)における隙間AおよびBの長さL5が0.25mm以上2.5mm以下である場合には、板状の連続体2の探傷が可能であるととともに、高さ方向における隙間AおよびBの長さL5が0.5mm以上2.25mm以下である場合には、板状の連続体2の探傷に適していることが判明した。
【0066】
次に、図11に示した第2実験では、入口側通板窓14aのY方向(幅方向)の幅W2を図10に示した第1実験よりも大きくした状態で、板状の連続体2が、Z方向(高さ方向)の長さL2を変化させた入口側通板窓14aから挿入された際に、探傷槽14内の探傷液13において1mm以上の径を有する気泡が発生しているか否かを目視によって観測した。この第2実験では、実施例8〜11と比較例3および4とにおいて、図10に示した第1実験における板状の連続体2と同じ板状の連続体2を用いるとともに、探傷槽14の入口側通板窓14aのY方向(幅方向)の幅W2(60.0mm)を、第1実験におけるY方向の幅W2(50.0mm)よりも大きくした状態で、Z方向(高さ方向)の長さL2をそれぞれ異ならせた場合の気泡の発生を観測した。具体的には、探傷槽14の入口側通板窓14aのZ方向(高さ方向)の長さL2を、それぞれ、7.0mm(比較例3)、6.5mm(実施例8)、5.5mm(実施例9)、2.5mm(実施例10)、2.0mm(実施例11)および1.5mm(比較例4)にした場合の気泡の発生を観測した。この際、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5は、それぞれ、2.75mm(比較例3)、2.5mm(実施例8)、2.0mm(実施例9)、0.5mm(実施例10)、0.25mm(実施例11)および0.0mm(隙間なし)(比較例4)になる。なお、比較例4においては、探傷槽14の入口側通板窓14aにフェルトを取り付けて、板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bを拭うように構成することによって、Z方向(高さ方向)の隙間AおよびBが存在しないように構成した。また、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのY方向(幅方向)の隙間CおよびDの幅W5は、すべて10.0mmとした。
【0067】
図11に示した第2実験の実験結果としては、比較例3および4では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5が0.0mm(隙間なし)および2.75mmである場合には、気泡が10個よりも多く観測された。また、実施例8および11では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向の隙間AおよびBの長さL5が2.5mmおよび0.25mmである場合には、気泡が1個以上10個以下観測された。また、実施例9および10では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向の隙間AおよびBの長さL5が2.25mmおよび0.5mmである場合には、気泡は観測されなかった。これら第2実験の結果と図10における第1実験の結果とにより、Z方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5を異ならせるのと比べて、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのY方向(幅方向)の隙間CおよびDの幅W5を5.0mmから10.0mmに大きくしても、気泡の発生にはあまり関与しないことが判明した。
【0068】
次に、図12に示した第3実験では、Z方向(高さ方向)の厚みL4を図10に示した第1実験よりも小さくした板状の連続体2が、Z方向(高さ方向)の長さL2を変化させた入口側通板窓14aから挿入された際に、探傷槽14内の探傷液13において1mm以上の径を有する気泡が発生しているか否かを目視によって観測した。この第3実験では、実施例12〜15と比較例5とにおいて、図10に示した第1実験におけるZ方向(高さ方向)の厚みL4(1.5mm)よりも小さい0.2mmのZ方向の厚みL4を有し、Y方向(幅方向)に40.0mmの幅W4を有する板状の連続体2を用いて、探傷槽14の入口側通板窓14aのY方向(幅方向)の幅W2(50.0mm)を固定した状態で、Z方向(高さ方向)の長さL2をそれぞれ異ならせた場合の気泡の発生を観測した。具体的には、探傷槽14の入口側通板窓14aのZ方向(高さ方向)の長さL2を、それぞれ、5.5mm(比較例5)、5.0mm(実施例12)、4.0mm(実施例13)、1.5mm(実施例14)および1.0mm(実施例15)にした場合の気泡の発生を観測した。この際、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5は、それぞれ、2.65mm(比較例5)、2.4mm(実施例12)、1.9mm(実施例13)、0.65mm(実施例14)および0.4mm(実施例15)になる。また、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのY方向(幅方向)の隙間CおよびDの幅W5は、すべて5.0mmとした。
【0069】
図12に示した第3実験の実験結果としては、比較例5では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5が2.65mmである場合には、気泡が10個よりも多く観測された。また、実施例12および14では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向の隙間AおよびBの長さL5が2.4mmおよび0.4mmである場合には、気泡が1個以上10個以下観測された。また、実施例9および10では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向の隙間AおよびBの長さL5が1.9mmおよび0.65mmである場合には、気泡は観測されなかった。これら第3実験の結果と図10における第1実験の結果とにより、Z方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5を異ならせるのと比べて、板状の連続体2の高さ方向における厚みL4を1.5mmから0.2mmに小さくしても、気泡の発生にはあまり関与しないことが判明した。
【0070】
次に、図13に示した第4実験では、Z方向(高さ方向)の厚みL4を図10に示した第1実験よりも大きくした板状の連続体2が、Z方向(高さ方向)の長さL2を変化させた入口側通板窓14aから挿入された際に、探傷槽14内の探傷液13において1mm以上の径を有する気泡が発生しているか否かを目視によって観測した。この第4実験では、実施例16〜19と比較例6とにおいて、図10に示した第1実験におけるZ方向(高さ方向)の厚みL4(1.5mm)よりも大きい3.0mmのZ方向の厚みL4を有し、Y方向(幅方向)に40.0mmの幅W4を有する板状の連続体2を用いて、探傷槽14の入口側通板窓14aのY方向(幅方向)の幅W2(50.0mm)を固定した状態で、Z方向(高さ方向)の長さL2をそれぞれ異ならせた場合の気泡の発生を観測した。具体的には、探傷槽14の入口側通板窓14aのZ方向(高さ方向)の長さL2を、それぞれ、8.5mm(比較例6)、8.0mm(実施例16)、7.0mm(実施例17)、4.0mm(実施例18)および3.5mm(実施例19)にした場合の気泡の発生を観測した。この際、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5は、それぞれ、2.75mm(比較例6)、2.5mm(実施例16)、2.0mm(実施例17)、0.5mm(実施例18)および0.25mm(実施例19)になる。また、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのY方向(幅方向)の隙間CおよびDの幅W5は、すべて5.0mmとした。
【0071】
図13に示した第4実験の実験結果としては、比較例6では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5が2.75mmである場合には、気泡が10個よりも多く観測された。また、実施例16および19では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向の隙間AおよびBの長さL5が2.5mmおよび0.5mmである場合には、気泡が1個以上10個以下観測された。また、実施例17および18では、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向の隙間AおよびBの長さL5が2.0mmおよび0.5mmである場合には、気泡は観測されなかった。これら第4実験の結果と図10における第1実験の結果とにより、Z方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5を異ならせるのと比べて、板状の連続体2の高さ方向における厚みL4を1.5mmから3.0mmに大きくしても、気泡の発生にはあまり関与しないことが判明した。
【0072】
上述した第1実験〜第4実験の結果から、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5が、0.25mm以上2.5mm以下である場合には、板状の連続体2の探傷が可能であるととともに、隙間AおよびBの長さL5が0.5mm以上2.25mm以下である場合には、板状の連続体2の探傷に適していることが判明した。また、気泡の発生は、Z方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5を異ならせる場合と異なり、板状の連続体2の高さ方向における厚みL4を異ならせてもあまり変化がないことが判明した。また、気泡の発生は、Z方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5を異ならせる場合と異なり、板状の連続体2と入口側通板窓14aとのY方向(幅方向)の隙間CおよびDの幅W5を異ならせてもあまり変化がないことが判明した。また、上記第1実験〜第4実験の結果は、出口側通板窓14bにも適用可能であると考えられる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、図14を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態による超音波探傷装置100では、上記第1実施形態に加えて、探傷装置部110において板状の連続体2を探傷する前に、板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bにエタノールを含む低表面張力液140を塗布する場合について説明する。なお、超音波探傷装置100は、本発明の「探傷装置」の一例である。
【0074】
本発明の第2実施形態による超音波探傷装置100の探傷装置部110の探傷槽14の槽内には、図14に示すように、探傷液113が探傷槽14および受蓄槽15に貯留されている。また、探傷液113は、主に純水からなるとともに、後述する低表面張力液140からのエタノールを若干含む。
【0075】
ここで、第2実施形態では、受蓄槽15の槽内で、かつ、探傷槽14の入口側通板窓14aと受蓄槽15の入口側通板窓15aとの間には、一対の噴霧部130aおよび130bがそれぞれ配置されている。この噴霧部130aは、板状の連続体2が搬送される通路AのY方向の中央部の上方に配置されているとともに、通路A側である下方向(Z2方向)に低表面張力液140を噴霧可能なように構成されている。また、噴霧部130bは、板状の連続体2が搬送される通路AのY方向の中央部の下方に配置されているとともに、通路A側である上方向(Z1方向)に低表面張力液140を噴霧可能なように構成されている。これにより、板状の連続体2の探傷部分が探傷槽14の入口側通板窓14aから探傷槽14の槽内に挿入する前に、板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bには、それぞれ低表面張力液140が付着されるように構成されている。この結果、探傷槽14の槽内において、探傷部による板状の連続体2の探傷時に、水を含む探傷液113内において、少なくとも板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bに、低表面張力液140が位置するように構成されている。また、低表面張力液140は、水にエタノールを約14.9質量%以上添加したものからなるように調製されている。なお、噴霧部130aおよび130bは、それぞれ、本発明の「付着部」の一例であり、エタノールは、本発明の「添加剤」の一例である。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0076】
第2実施形態では、上記のように、探傷槽14の槽内において、探傷部による板状の連続体2の探傷時に、水を含む探傷液113内において、板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bに、低表面張力液140が位置するように構成することによって、純水に比べて、板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bにおける表面張力を小さくすることによって、探傷液113内の板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bに存在する気泡を消失しやすくすることができるので、探傷液113内において気泡が発生するのをより抑制することができる。この低表面張力液140による効果を確認するために本願発明者が実際に実験を行ったところ、水にエタノールを14.9質量%以上添加することによって、表面張力は純水からなる場合よりも小さくなることが判明した。また、水にエタノールを14.9質量%以上添加したものからなる低表面張力液140における気泡が発生してから消失するまでの時間(気泡消失時間)は、低表面張力液が純水からなる場合における気泡消失時間と比べて短くなることが判明した。これにより、第2実施形態の効果が正しいことを実験結果により確認することができた。
【0077】
また、第2実施形態では、板状の連続体2の探傷部分が探傷槽14の入口側通板窓14aから探傷槽14の槽内に挿入する前に、噴霧部130aおよび130bにより、板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bにそれぞれ低表面張力液140が付着するように構成することによって、噴霧部130aおよび130bによって、板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bに低表面張力液を付着させることができるので、確実に、低表面張力液140を板状の連続体2の上表面2aおよび下表面2bに位置させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0078】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0079】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、本発明の「被検査材」として板状の連続体を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、「被検査材」は、板状部材などの連続体でないものでもよいし、形状も板状に限らない。なお、「被検査材」は、板状部材である方が本発明の効果を得る上でより好ましい。
【0080】
また、第1および第2実施形態では、探傷槽の入口側通板窓を、Z方向(高さ方向)に約4.0mmの長さL2を有するとともに、板状の連続体を、Z方向(高さ方向)に約1.5mmの厚みL4を有するように構成することによって、板状の連続体と入口側通板窓とのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5が、それぞれ、約1.25mmになるように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、板状の連続体と探傷槽の入口側通板窓とのZ方向の隙間AおよびBの長さL5が、0.25mm以上2.5mm以下になるように設定されていれば、入口側通板窓のZ方向の長さL2と板状の連続体の高さ方向における厚みL4との組み合わせを異ならせてもよい。たとえば、探傷槽の入口側通板窓を、Z方向(高さ方向)に約7.0mmの長さL2を有するとともに、板状の連続体を、Z方向(高さ方向)に約3.0mmの厚みL4を有するように構成してもよい。この際、板状の連続体と入口側通板窓とのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5を0.5mm以上2.25mm以下になるように設定すると、気泡の存在を防止することが可能な点でより好ましい。また、板状の連続体と入口側通板窓とが接触するのを抑制するためには、板状の連続体と入口側通板窓とのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5は大きい方がよいので、板状の連続体と入口側通板窓とのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5を1.25mm以上2.25mm以下になるように設定するのがさらに好ましい。
【0081】
また、第1および第2実施形態では、探傷槽の可動部がZ方向(高さ方向)に動くことによって、探傷槽の入口側通板窓のZ方向の長さL2が変化するように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、探傷槽の入口側通板窓を、探傷槽の出口側通板窓と同様に、穴部の大きさを異ならせたプレートを取り付けることによって、入口側通板窓のZ方向の長さL2を変化させるように構成してもよい。
【0082】
また、第1および第2実施形態では、探傷槽の入口側通板窓と板状の連続体とのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5と、探傷槽の出口側通板窓と板状の連続体とのZ方向(高さ方向)の隙間EおよびFの長さL6とを同一の長さ(約1.75mm)になるように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、探傷槽の出口側通板窓と板状の連続体とのZ方向の隙間EおよびFの長さL6は、探傷槽の入口側通板窓と板状の連続体とのZ方向の隙間AおよびBの長さL5以上であればよい。また、高さ方向における隙間EおよびFの長さL6を、高さ方向における隙間AおよびBの長さL5以上になるように設定することによって、板状の連続体が出口側通板窓と接触するのをより抑制することが可能である。この際、高さ方向における隙間EおよびFの長さL6は、高さ方向における隙間AおよびBの長さL5よりも大きい方が好ましく、さらに好ましくは、0.25mm以上2.5mm以下であるのがよい。
【0083】
また、第1および第2実施形態では、板状の連続体の上表面と矩形形状の入口側通板窓の上辺部との高さ方向(Z方向)における隙間Aと、板状の連続体の下表面と矩形形状の入口側通板窓の下辺部との高さ方向における隙間Bとを同一の長さL5(約1.75mm)になるように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、高さ方向(Z方向)における隙間Aの長さと隙間Bの長さとは、異なる長さであってもよい。この際、板状の連続体の下表面は板状の連続体の上表面と比べて気泡が蓄積しやすいので、高さ方向(Z方向)における隙間Bの長さは、気泡の存在を防止することが可能な0.5mm以上2.25mm以下であるのが好ましい。
【0084】
また、第1および第2実施形態では、板状の連続体のZ方向(高さ方向)の長さ(厚み)L4を約1.5mmにした例を示したが、本発明はこれに限らず、板状の連続体の高さ方向における厚みL4は、約1.5mmに限られない。この際、探傷槽の入口側通板窓のZ方向(高さ方向)の長さL2を、探傷槽の入口側通板窓と板状の連続体とのZ方向(高さ方向)の隙間AおよびBの長さL5が0.25mm以上2.5mm以下になるように調整する必要がある。
【0085】
また、上記第2実施形態では、低表面張力液を、水にエタノールを約14.9質量%以上添加したものからなるように調製した例を示したが、好ましくは、低表面張力液は、水にエタノールを約29.9質量%以上添加したものからなるように構成するほうがよい。この低表面張力液による効果を確認するために本願発明者が実際に実験を行ったところ、水にエタノールを29.9質量%以上添加することによって、表面張力は純水からなる場合よりも小さくなることが判明した。また、水にエタノールを29.9質量%以上添加したものからなる低表面張力液における気泡消失時間は、低表面張力液が純水からなる場合における気泡消失時間と比べて50%以下になることが判明した。これにより、低表面張力液を水にエタノールを約29.9質量%以上添加したものからなるように構成することによって、探傷液内において気泡が発生するのをさらに抑制することが可能である。また、さらに好ましくは、低表面張力液は、水にエタノールを約29.9質量%以上約49.8質量%以下添加したものからなるように構成するほうがよい。ここで、本願発明者が実際に実験を行ったところ、水にエタノールを49.8質量%添加したものからなる低表面張力液における気泡消失時間と、水にエタノールを99.5質量%添加したものからなる低表面張力液における気泡消失時間とはあまり変わらないことが判明した。これにより、低表面張力液を、水にエタノールを約49.8質量%よりも多く添加したものからなるように構成したとしても気泡の発生を抑制する効果があまり得られないので、低表面張力液を、水にエタノールを約29.9質量%以上約49.8質量%以下添加したものからなるように構成することによって、エタノールの使用量を減少させることが可能である。
【0086】
また、上記第2実施形態では、低表面張力液に添加される本発明の「添加剤」としてエタノールを用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、低表面張力液に添加される本発明の「添加剤」が、イソプロピルアルコール(IPA)などのエタノール以外のアルコールを含むように構成してもよい。また、低表面張力液に添加される本発明の「添加剤」が、アルコール以外のものからなるように構成してもよい。なお、低表面張力液に添加される本発明の「添加剤」がIPAである場合には、低表面張力液は、水にIPAを約2.0質量%以上添加したものからなるように構成される。この低表面張力液による効果を確認するために本願発明者が実際に実験を行ったところ、水にIPAを2.0質量%以上添加することによって、表面張力は純水からなる場合よりも小さくなることが判明した。また、水にIPAを2.0質量%以上添加したものからなる低表面張力液における気泡消失時間は、低表面張力液が純水からなる場合における気泡消失時間と比べて短くなることが判明した。これにより、低表面張力液を水にIPAを約2.0質量%以上添加したものからなるように構成することによって、探傷液内において気泡が発生するのをより抑制することが可能である。
【0087】
また、上記第2実施形態では、噴霧部によって、低表面張力液を板状の連続体に噴霧する例を示したが、本発明はこれに限らず、たとえば、ローラによって、低表面張力液を板状の連続体に塗布するように構成してもよいし、探傷液に含まれるアルコールの量を調整することによって、探傷液自体を低表面張力液にするように構成してもよい。
【0088】
また、上記第2実施形態では、噴霧部を、板状の連続体が搬送される通路の上方と下方とにそれぞれ配置した例を示したが、本発明はこれに限らず、噴霧部を、板状の連続体が搬送される通路の上方のみまたは下方のみに配置してもよい。この際、探傷液内の気泡は板状の連続体の上表面よりも下表面により存在するので、噴霧部を通路の下方に配置する方が好ましい。
【0089】
また、上記第1および第2実施形態では、受蓄槽の槽内で、かつ、探傷槽の出口側通板窓と受蓄槽の出口側通板窓との間に、一対のエアノズルを設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、一対のエアノズルは設けなくてもよい。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、超音波を用いた探傷装置の例を示したが、本発明はこれに限らず、気泡に起因する傷の誤検出が起こりうる、探傷液を用いた探傷装置であれば、超音波を用いたものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1、100 超音波探傷装置(探傷装置)
2 板状の連続体(被検査材)
2a 上表面(表面)
2b 下表面(表面)
13、113 探傷液
14 探傷槽
14a 入口側通板窓(第1窓部)
14b 出口側通板窓(第2窓部)
14f 上辺部
14g 下辺部
14n 切欠部
15 受蓄槽
15a 入口側通板窓(第3窓部)
15b 出口側通板窓(第4窓部)
16 探傷液循環装置
130a、130b 噴霧部(付着部)
140 低表面張力液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査材の探傷を行うための探傷部と、
前記被検査材を槽内に挿入するための第1窓部を含み、前記被検査材が槽内において前記探傷部により探傷される探傷槽と、
前記探傷槽の槽内に貯留される探傷液とを備え、
前記探傷槽の槽内において、前記探傷液を除く装置本体と前記被検査材とが接触しない状態で、前記被検査材は前記探傷槽の槽内を通過するように構成されており、
前記被検査材は、前記探傷槽の第1窓部に対して高さ方向に第1隙間を有した状態で接触せずに挿入されるとともに、前記探傷槽の第1窓部と前記被検査材との高さ方向における前記第1隙間が0.25mm以上2.5mm以下になるように前記第1窓部の高さ方向の寸法が設定されている、探傷装置。
【請求項2】
前記探傷槽の第1窓部と前記被検査材との高さ方向における前記第1隙間が0.5mm以上2.0mm以下になるように前記第1窓部の高さ方向の寸法が設定されている、請求項1に記載の探傷装置。
【請求項3】
前記探傷液は、前記探傷槽の第1窓部から排出されるように構成されており、
前記探傷液が前記探傷槽の第1窓部から排出されている状態で、前記被検査材が前記探傷槽の第1窓部から挿入されるように構成されており、
前記探傷液が排出されている前記探傷槽の第1窓部と前記被検査材との隙間が前記第1隙間になるように前記第1窓部の高さ方向の寸法を設定することによって、少なくとも前記探傷槽内に挿入される前記被検査材の表面における気泡の発生が抑制されるように構成されている、請求項1または2に記載の探傷装置。
【請求項4】
前記探傷槽の第1窓部は、矩形形状を有し、
前記被検査材は、板形状を有し、
前記第1隙間は、前記矩形形状を有する第1窓部の上辺部と前記板形状を有する被検査材の上表面との高さ方向における第2隙間と、前記矩形形状を有する第1窓部の下辺部と前記板形状を有する被検査材の下表面との高さ方向における第3隙間とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の探傷装置。
【請求項5】
前記第2隙間と前記第3隙間とは、略同一の長さを有する、請求項4に記載の探傷装置。
【請求項6】
前記探傷槽を取り囲むように配置され、前記探傷槽から排出される前記探傷液を貯留する受蓄槽と、
前記受蓄槽に貯留された前記探傷液を前記探傷槽に循環させるための探傷液循環装置とをさらに備え、
前記探傷槽は、前記探傷槽の上部で、かつ、前記第1窓部が設けられる位置の上方以外の位置に設けられ、前記探傷槽の槽内の前記探傷液を前記第1窓部が設けられる位置の上方以外で前記受蓄槽に排出するための切欠部を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の探傷装置。
【請求項7】
前記探傷槽は、前記被検査材を前記探傷槽から排出するための第2窓部をさらに含み、
前記受蓄槽は、前記被検査材を前記受蓄槽に挿入するための第3窓部と、前記被検査材を前記受蓄槽から排出するための第4窓部とを含み、
前記被検査材は、前記探傷槽の第2窓部、前記受蓄槽の第3窓部および前記受蓄槽の第4窓部と接触しないように構成されている、請求項6に記載の探傷装置。
【請求項8】
前記探傷槽の第2窓部と前記被検査材との高さ方向における第4隙間が前記探傷槽の第1窓部と前記被検査材との高さ方向における前記第1隙間以上になるように前記第2窓部の高さ方向の寸法が設定されているとともに、前記探傷槽の第2窓部と前記被検査材との高さ方向における前記第4隙間が0.25mm以上2.5mm以下になるように前記第2窓部の高さ方向の寸法が設定されている、請求項7に記載の探傷装置。
【請求項9】
前記受蓄槽の第3窓部および第4窓部は、それぞれ、前記探傷槽の第1窓部および第2窓部よりも高さ方向の寸法が大きくなるように構成されている、請求項7または8に記載の探傷装置。
【請求項10】
前記被検査材は、前記探傷槽の第1窓部に対して高さ方向と垂直な方向に第5隙間を有した状態で接触せずに挿入されるように構成されており、
前記探傷槽の第1窓部と前記被検査材との高さ方向における前記第1隙間が前記探傷槽の第1窓部と前記被検査材との高さ方向と垂直な方向における前記第5隙間よりも小さくなるように前記第1窓部の高さ方向の寸法および高さ方向と垂直な方向の寸法が設定されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の探傷装置。
【請求項11】
前記探傷槽の第1窓部は、高さ方向の寸法を変化させることが可能なように構成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の探傷装置。
【請求項12】
前記被検査材は、金属からなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の探傷装置。
【請求項13】
前記被検査材は、連続体からなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の探傷装置。
【請求項14】
前記探傷液は水からなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の探傷装置。
【請求項15】
前記探傷液は、水を含み、
前記探傷槽の槽内において、前記探傷部による前記被検査材の探傷時に、水を含む前記探傷液内において、少なくとも前記被検査材の表面に、水に水の表面張力を小さくするための添加剤を添加することにより作製された低表面張力液が位置するように構成されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の探傷装置。
【請求項16】
前記探傷槽の外部に設けられ、前記被検査材の探傷部分が前記探傷槽の第1窓部から前記探傷槽の槽内に挿入される前に、前記被検査材の表面に前記低表面張力液を付着させる付着部をさらに備える、請求項15に記載の探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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