説明

探査検出装置及びそれを用いた探査検出方法

【課題】 深海底でSMSを正確に探し出し、採鉱し、選鉱することができる探査検出装置を提供する。
【解決手段】 海底物質又はその破砕物に対して紫外光を出射する発光部21と、海底物質又はその破砕物が発光部21からの光で照射されることにより、海底物質又はその破砕物から出射される蛍光の波長及びその輝度を検出する受光部21と、受光部21で検出された蛍光の波長及びその輝度に基づいて、海底物質又はその破砕物の種類を探査検出する制御部30とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探査検出装置及びそれを用いた探査検出方法に関し、特に光学的方法によって船上又は船中から海底物質やその破砕物の種類を探査検出することができる光学的探査検出装置及びそれを用いた光学的探査検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、BRICs諸国、特に中国のめざましい経済発展による金属需要増に影響され、金属やレアアース類等の価格高騰が続き、供給不安も予想される情勢となってきている。
一方、水深が約500m〜3000mである深海底には、地球上に残された最大の未開発鉱物資源の一つである海底熱水鉱床(SMS:Seafloor Massive Sulfides)が存在する。このSMSは、金、銀、銅、亜鉛、鉛、レアメタル等を多数含み、ある程度の大きさを持つ塊状体となって存在する硫化物鉱床である。国土に金属資源を持たない日本にとって、将来の重要な金属の安定的供給源として期待されるものの一つであり、2018年を目途にSMSの商業化を目指すとしている。
【0003】
現在、深海底でSMSを探し出す探査方法としては、音波又は超音波を利用するものが挙げられる。このような探査方法では、音波又は超音波を海底物質に照射し、海底物質から反射された音波又は超音波を検出する。そして、検出された音波又は超音波に基づいて、モノクロ画像のようなイメージを作成して塊状体としての大きさや内部構造を把握するとともに、対象物(塊状体)の音波反射特性を分析して、海底物質からSMSや玄武岩や花崗岩や火山性堆積物等を含む塊状体を探し出す。その後、さらに音波又は超音波を利用することにより詳細な探査方法や、試料採取を塊状体に適用し、塊状体が採鉱対象となる高い金属含有率や存在量(埋蔵量)のものであるかどうかを判定する。採鉱対象になると判定されると、その後、塊状体を採鉱・破砕する採鉱ステップ、塊状体が破砕された破砕物である礫や粒子を海面まで輸送する揚鉱ステップへと進む。さらに、海上の探査船の上や運搬後の陸上において、揚鉱した礫や粒子を、金属成分を多く含む有用物(SMS)と金属成分をあまり含まない不要物とに選別する選鉱ステップへと進む。これらの採鉱・揚鉱・選鉱ステップでは、海底物質やその破砕物の種類を検出する探査検出装置及びそれを用いた探査検出方法は、これまでのところ存在しない。
【0004】
ところで、深海底における塊状体(海底物質)の採取(採鉱、揚鉱)は、多大な費用と時間と労力とを必要とする。また、塊状体やその破砕物を揚鉱したとしても、その後、選鉱を行うことになるため、多量の塊状体やその破砕物を揚鉱すると、塊状体やその破砕物の選鉱も多大な費用と時間と労力とを必要とすることになる。
そこで、時間・労力・費用を節約するために、光学的方法によって船上又は船中から海底物質の種類(SMSであるか否か)を探査することができる光学的探査装置及びそれを用いた光学的探査方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図4は、光学的探査装置を備えた探査船の一例を示す概略構成図である。
探査船1は、海上を運航し、光学的探査装置110を備える。そして、探査船1が目的の海上地点に到着したときには、光学的探査装置110の潜水部120をケーブル(潜水部120等に電力を供給するとともに、映像や制御信号等を制御部130に伝送する)2で垂下しながら、ウインチ等を操作することにより、海底に沈めたり海底から引き上げたりすることができるようになっている。
また、探査船1の船上には、光学的探査装置110の制御部130が設置されており、制御部130の入力装置等を操作することにより、潜水部120を操作することができるようになっている。
さらに、潜水部120には海中用テレビカメラ(図示せず)が設置されており、海底の状況を表示装置31を用いて観測しながら、潜水部120を海底に沈めることができるようになっている。つまり、海底物質との距離が近くなるように潜水部120を配置することができる。
【0006】
光学的探査装置110の潜水部120は、海底物質に対して波長200nm以上800nm以下の光を出射する発光部(図示せず)と、海底物質が発光部からの光で照射されることにより、海底物質から反射された光のスペクトル分布を検出する受光部(図示せず)と、海中用テレビカメラ(図示せず)とを備える。
光学的探査装置110の制御部130は、CPUとメモリ135とを備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置31と、キーボードやマウス等を有する入力装置32と、レコーダ133とが連結されている。
【0007】
メモリ135には、モンモリロナイトやイライト等のアルベード曲線(反射吸収スペクトル分布曲線)等が予め記憶されている。
さらに、CPUが処理する機能をブロック化して説明すると、受光部からケーブル2を介して受信された光のスペクトル分布に基づいて、アルベード曲線(反射吸収スペクトル分布曲線)を作成して、メモリ135に記憶されたモンモリロナイトやイライト等のアルベード曲線と比較するように、レコーダ133にグラフ画像を表示する探査制御部134を有する。
【0008】
このような光学的探査装置110を用いた光学的探査方法では、光学的探査装置110の潜水部120を海底物質の近辺に配置し、波長200nm以上800nm以下の光で海底物質を照射して、海底物質から反射された光のスペクトル分布を検出する。この検出された光のスペクトル分布に基づいて、アルベード曲線を作成して、モンモリロナイトやイライト等のアルベード曲線と比較し、その海底物質が何であるかを決定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−108438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したような光学的探査装置110を用いた光学的探査方法で、SMSを探し出そうとしても、SMSを正確に探し出すことはできなかった。つまり、作成したアルベード曲線と、メモリ135に記憶されたアルベード曲線との比較という光学的探査方法では、単一の種類の海底物質のみが存在する場合には、グラフ画像を観測してそれがSMSであるか否かを判断することができたが、様々な種類の海底物質が混在する場合や、ある海底物質から別の海底物質へと変化していく遷移状態のものが存在する場合には、グラフ画像を観測しただけではそれがSMSであるか否かを正確に判断することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本件発明者らは、深海底でSMSを正確に探し出す探査方法について検討を行った。鉱物の一部には、紫外光吸収により蛍光を示すものがあり、熱水活動域で生成される硫化物(SMS)に付随して生成されるものに、そのような鉱物がいくつかある。なお、正確には、それらの鉱物自体が蛍光を示すのではなく、鉱物が生成される過程で、熱水中に含まれる金属イオン(アクチベータ)が不純物として紛れ込み、この金属イオンが蛍光を示す基になる。蛍光を示すアクチベータを含む鉱物そのものは付随して生成されるものであるため、直接的な探査、採鉱、揚鉱の対象物ではないが、熱水活動域で生成されるSMSに随伴してアクチベータを含む鉱物が生成されているので、SMSとそれ以外の玄武岩、花崗岩、火山性堆積物等とを識別することに利用することができる。
なお、アクチベータには、様々な種類のものが存在しており、マンガンイオン(Mn2+)、銅イオン(Cu2+)、鉄イオン(Fe3+)等が知られている。表1に、SMSに付随して生成される鉱物に含まれるアクチベータと蛍光の色との関係を示す。
【0012】
【表1】

【0013】
よって、SMSに付随して生成される鉱物に含まれるアクチベータが示す蛍光を利用することにより、まず探査において、深海底でSMSが存在する箇所を把握することができる。その後、例えば、蛍光を利用して発見したSMSに対して、音波又は超音波を利用することにより詳細な探査方法、試料採取、海中テレビカメラによる目視観察等を適用し、SMSが、採鉱対象となる高い金属含有率や存在量(埋蔵量)があるかどうかを判定する。採鉱対象になると判断されると、その後、採鉱、揚鉱、選鉱へと進むが、これらのステップのそれぞれにおいて、SMSに付随して生成される鉱物に含まれるアクチベータが示す蛍光の色により、多くの時間・労力・費用を節約できる。
すなわち、紫外光源(発光部)と蛍光センサ(受光部)とを使用することで、熱水活動域で生成される硫化物に随伴して生成される鉱物に含まれるアクチベータが蛍光するので、探査では、蛍光している箇所を探し出し、そこを詳細に探査する場所として選ぶことができる。その後、詳細な探査において実施される試料採取から、赤色やオレンジ色や緑色という蛍光の色とSMSの金属含有率との関係を把握し、採鉱においては、紫外光源と蛍光センサとを使用して得られる蛍光の色情報を、採鉱対象とすべき場所(SMSが多い場所)と除外すべき場所(SMSが少ない場所)の選別に用いる。さらに、揚鉱の前に採鉱したSMSの破砕を行い、SMSと随伴して生成される鉱物を礫や粒子にした上で、このステップにおいても紫外光源と蛍光センサとを使用し、蛍光の色を有用物(SMS)として回収するものと、不要物として排除するものを選ぶための情報として利用する一次選鉱を行う。
【0014】
ところで、海中では光が減衰することが知られており、照射する紫外光の強度と、検出する蛍光の強度とが、アクチベータからの距離が長くなればなるほど減衰する。
よって、深海底でアクチベータを蛍光させる際に、アクチベータと紫外光源との距離に応じて、必要となる紫外光源の出力(強度)を把握する必要がある。そこで、海底物質やその破砕物からの距離が0.1m以上3m以下となるように紫外光源を配置し、紫外光源から強度5mW/cm以上1.2kW/cm以下の範囲で紫外光を出射すれば、深海底で海底物質やその破砕物が蛍光している箇所を探し出せること、また蛍光の色を識別できることを見出した。
【0015】
また、蛍光したアクチベータを蛍光センサ(例えば、カラーCCDカメラ等)で撮影するが、アクチベータの蛍光の色(RGB輝度)を正確に取得するために、アクチベータと蛍光センサとの距離に応じて、蛍光のRGB輝度がどのように変化するかを把握する必要がある。水中で各RGB輝度が距離により減衰していく程度は、それぞれ異なっている。そこで、蛍光の色を下記式(1)に示すように赤色(R)の蛍光と緑色(G)の蛍光と青色(B)の蛍光とに分類して、その後、図5に示すようなRGB輝度減衰の曲線を用いて各色(RGB)に応じて各色の蛍光の輝度(RGB輝度)を補正することを見出した。
【0016】
【数1】

【0017】
ここで、F(λ)は、任意の波長スペクトル光であり、[R],[G],[B]は、R,G,Bのスペクトル光(原刺激、λ=700nm,λ=546.1nm,λ=435.8nm)であり、r ̄(λ),g ̄(λ),b ̄(λ)は、各原刺激の混合量(等色係数)である。
【0018】
すなわち、本発明の探査検出装置は、海底物質又はその破砕物に対して紫外光を出射する発光部と、前記海底物質又はその破砕物が発光部からの光で照射されることにより、前記海底物質又はその破砕物から出射される蛍光の波長及びその輝度を検出する受光部と、前記受光部で検出された蛍光の波長及びその輝度に基づいて、前記海底物質又はその破砕物の種類を探査検出する制御部とを備えるようにしている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の探査検出装置によれば、蛍光の波長及びその輝度を利用するため、様々な種類の海底物質が混在する場合や、ある海底物質から別の海底物質へと変化していく遷移状態のものが存在する場合にも、深海底でSMSを正確に探し出すことができる。また、海底物質だけでなく、その破砕物にも適用することによって、SMSを採鉱、揚鉱、選鉱するステップにおいても本発明の探査検出装置によって、採鉱、揚鉱、選鉱に必要な費用と時間と労力とを抑制することができる。
【0020】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明の探査検出装置は、前記発光部は、波長200nm以上400nm以下の紫外光を出射するようにしてもよく、波長270nm以上380nm以下の紫外光を出射することがより好ましい。
また、本発明の探査検出装置は、前記発光部は、強度5mW/cm以上1.2kW/cm以下の紫外光を出射するようにしてもよい。
なお、本発明の探査検出装置を、探査と採鉱で使用する場合には、前記発光部は、海底物質(塊状体)からの距離を2.5m以上3m以下となるように紫外光源を配置し、紫外光源から強度150W/cm以上1.2kW/cm以下の範囲で紫外光を出射すれば、3m×3mの範囲で、海底物質(塊状体)が蛍光している箇所を探し出せること、またその海底物質(塊状体)の蛍光の色を識別できる。実際には、距離2.5m、強度150W/cm程度で出射することが望ましい。
また、本発明の探査検出装置を一次選鉱で使用する場合には、前記発光部は、礫や粒子からの距離を0.1mとなるように紫外光源を配置し、紫外光源から強度5mW/cm程度で紫外光を出射すれば、礫や粒子の蛍光の色を識別できる。
また、本発明の探査検出装置は、前記制御部において、前記蛍光の輝度を赤色の蛍光の輝度と緑色の蛍光の輝度と青色の蛍光の輝度とに分類し、各色に応じて各色の蛍光の輝度を補正するようにしてもよい。
本発明の探査検出装置によれば、海底物質やその破砕物に含有されているアクチベータの種類と鉱物の種類とを決定することができる。
【0021】
そして、本発明の探査検出装置は、前記制御部は、前記海底物質又はその破砕物に含有されているアクチベータの種類と鉱物の種類とを探査検出するようにしてもよい。
本発明の探査検出装置によれば、制御部が自動的にアクチベータの種類と鉱物の種類とを決定することになる。
【0022】
さらに、本発明の探査検出方法は、探査検出装置の発光部及び受光部を、前記海底物質又はその破砕物からの距離が0.1m以上3m以下となるように配置する配置と、前記発光部からの光で海底物質又はその破砕物を照射する照射と、前記海底物質又はその破砕物から出射される蛍光の波長及びその輝度を検出する検出と、前記受光部で検出された蛍光の波長及びその輝度に基づいて、前記海底物質又はその破砕物の種類を判定する判定とを含むようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、光学的探査検出装置を備えた探査船の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す光学的探査検出装置の潜水部の斜視図である。
【図3】図2に示すAの斜視図である。
【図4】従来の光学的探査装置を備えた探査船の一例を示す概略構成図である。
【図5】RGB輝度減衰の曲線を示す図である。
【図6】SMSが蛍光したときの色を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0025】
海底物質(塊状体)の探査と採鉱とにおいて使用する場合について説明する。図1は、光学的探査検出装置を備えた探査船の一例を示す概略構成図である。また、図2は、図1に示す光学的探査検出装置の潜水部の斜視図である。さらに、図2に示すAの斜視図である。
探査船1は、海上を運航し、光学的探査検出装置10を備える。そして、探査船1が目的の海上地点に到着したときには、光学的探査検出装置10の潜水部20をケーブル(潜水部20等に電力を供給するとともに、映像や制御信号等を制御部30に伝送する)2で垂下しながら、探査員がウインチ等を操作することにより、海底に沈めたり海底から引き上げたりすることができるようになっている。
また、探査船1の船上には、光学的探査検出装置10の制御部30が設置されており、探査員が制御部30の入力装置等を操作することにより、潜水部20を操作することができるようになっている。
さらに、潜水部20には海中用テレビカメラ22が設置されており、探査員が表示装置31を用いて海底の状況を観測しながら、潜水部20を海底に沈めることができるようになっている。つまり、海底物質(塊状体)からの距離が2.5m程度(3m以下)となるように潜水部20を配置することができる。
【0026】
光学的探査検出装置10の潜水部20は、海底物質(塊状体)に対して波長200nm以上400nm以下の紫外光を出射する紫外光源(発光部)21と、海底物質(塊状体)が紫外光源21からの紫外光で照射されることにより、海底物質(塊状体)から出射される蛍光のRGB輝度を検出するカラーCCDカメラ(受光部)23と、海中用テレビカメラ22と、海底物質(塊状体)を採鉱する採鉱部24とを備える。
紫外光源21は、放電管とフィルターとを備え、制御部30の入力装置32からの入力信号に基づいて、波長200nm未満の光と波長400nmを超える光とをフィルターでカットすることにより、波長200nm以上400nm以下、強度5mW/cm以上1.2kW/cm以下の紫外光を出射するものであり、例えば、ピーク波長312nm(270〜380nm)、強度300W/cm、照射範囲2m×2mの紫外光を前方に出射するもの(例えば、卓上紫外線照射装置「DTB−20MP」、アトー株式会社製)が挙げられる。
カラーCCDカメラ23は、蛍光のRGB輝度を検出するものであり、紫外光が照射される範囲を常に撮影する。そして、カラーCCDカメラ23は、検出した蛍光のRGB輝度をケーブル2を介して制御部30に送信することができるようになっている。
【0027】
海中用テレビカメラ22は、海底の状況を検出するものであり、カラーCCDカメラ23と同じものを使用してもよいが、これは採鉱部24の操作制御用等に使用するものであり、必要に応じて、紫外光の照射範囲とは関係なく、上下左右に動かして使用する。海中用テレビカメラ22の映像信号は、ケーブル2を介して制御部30に送信することができるようになっている。
採鉱部24は、駆動可能な採鉱用アーム24aとケース状の破砕部24bとを有し、制御部30の入力装置32からの入力信号に基づいて、採鉱用アーム24aを駆動するようになっている。これにより、採鉱部操作員が採鉱用アーム24aを操作することで、所定箇所の海底物質(塊状体)を採鉱して吸い込み、破砕部24bへと送ることができる。なお、海底物質から破砕物を作製するときには、採鉱用アーム24aを使用することになる。
【0028】
光学的探査検出装置10の制御部30は、CPUとメモリ35とを備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置31と、キーボードやマウス等を有する入力装置32とが連結されている。
メモリ35には、図5に示すようなRGB輝度減衰の曲線等が予め記憶されている。
CPUが処理する機能をブロック化して説明すると、カラーCCDカメラ23からケーブル2を介して受信された蛍光のRGB輝度に基づいて、蛍光のRGB輝度を、式(1)に示すように赤色の蛍光のR輝度と緑色の蛍光のG輝度と青色の蛍光のB輝度とに分類し、メモリ35に記憶されたRGB輝度減衰の曲線を用いて各色に応じて各色の蛍光のRGB輝度を補正して、表示装置31にカラー画像を表示する探査制御部34を有する。
【0029】
次に、光学的探査検出装置10を用いた探査の一例について説明する。
光学的探査検出装置10を使用した探査では、光学的探査検出装置10の潜水部20を海底物質(塊状体)の近くまで垂下(A)し、海底物質(塊状体)に紫外光を照射(B)する。そして、蛍光のRGB輝度を検出する検出(C)し、海底物質(塊状体)の種類を判定(D)する。
【0030】
(A)垂下(配置)
探査船1が目的の海上地点に到着したときには、光学的探査検出装置10の潜水部20をケーブル線2で垂下しながら、探査員がウインチ等を操作することにより海底に沈める。このとき、探査員は、海中用テレビカメラ22で撮影された映像(海底の状況)を表示装置31を用いて観測しながら、海底物質(塊状体)からの距離が2.5mとなるように、潜水部20を配置するとともに、海底物質からの距離が2.5mとなったことを、入力装置32を用いて制御部30に入力する。
【0031】
(B)照射
探査員は、紫外光源21を制御部30の入力装置32からの入力信号に基づいて作動させることにより、ピーク波長312nm(270〜380nm)、強度300W/cm、照射範囲2m×2mの紫外光を、距離が2.5mとなる海底物質(塊状体)に出射する。
(C)検出
カラーCCDカメラ23は、距離が2.5mとなる海底物質(塊状体)から出射される蛍光のRGB輝度を検出する。そして、カラーCCDカメラ23は、検出した蛍光のRGB輝度をケーブル2を介して制御部30に送信する。
【0032】
(D)判定
探査制御部34は、カラーCCDカメラ23で検出された蛍光のRGB輝度に基づいて、蛍光のRGB輝度を赤色の蛍光のR輝度と緑色の蛍光のG輝度と青色の蛍光のB輝度とに分類し、RGB輝度減衰の曲線を用いて各色に応じて各色の蛍光のRGB輝度を補正して、表示装置31にカラー画像を表示する。これにより、探査員は蛍光の色を正確に把握することができる。その結果、探査員は蛍光している箇所を探し出す。
なお、図6は、SMSが蛍光したときの色を示す図である。
【0033】
次に、揚鉱前の一次選鉱に光学的探査検出装置10を使用する一例について説明する。
採鉱した海底物質(塊状体)を揚鉱する前に、塊状体を適度な大きさの礫や粒子に破砕する。これによって揚鉱が安全、順調に実施できるようになる。この破砕が終わった後の礫や粒子に、距離0.1m程度、ピーク波長312nm(270〜380nm)、強度5mW/cm、照射範囲0.2m×0.2mの紫外光を照射し、蛍光の色を利用して、有用物(SMS)として回収するものと、不要物として排除するものを選別する。このとき、礫や粒子からの距離が0.1mとなったことを、入力装置32を用いて制御部30に入力する。
揚鉱する際には、直径10cm程度のパイプによる水力輸送等を行うので、礫や粒子に近接した状態での正確な選別が可能である。この一次選鉱は、出来る限りSMSのみを揚鉱することにつながり、費用と時間と労力とを抑制する上で重要な作業である。
なお、揚鉱した礫や粒子に対して、海上の船の上や陸上において、二次選鉱を行う場合に、さらに光学的探査検出装置10の紫外光源21とカラーCCDカメラ23と制御部30とを適用してもよい。この場合は、空気中で紫外光源21とカラーCCDカメラ23とを使用することになるので、紫外光や可視光の減衰を考慮する必要はなくなる。
【0034】
本発明の光学的探査検出装置10によれば、蛍光のRGB輝度を利用するため、様々な種類の海底物質が混在する場合や、ある海底物質から別の海底物質へと変化していく遷移状態のものが存在する場合にも、深海底でSMSを正確に探し出すことができる。また、採鉱や選鉱にも適用することができる。その結果、費用と時間と労力とを抑制することができる。
【0035】
(他の実施形態)
(1)上述した光学的探査検出装置10は、探査に使用する例として、海上を運航する探査船1に配置される構成を示したが、海中を運航する潜水船に配置される構成としてもよい。
(2)上述した光学的探査検出装置10は、探査制御部34が表示装置31にカラー画像を表示することで、探査員がSMSを探し出したり、採鉱部捜査員が採鉱用アーム24aを操作する構成を示したが、探査制御部が表示装置にカラー画像を表示することなく、自動的にSMSを探し出したり、自動的に採鉱用アームを操作する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、光学的方法によって船上又は船中から海底物質やその破砕物の種類を探査、採鉱、選鉱することができる光学的探査検出装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
21: 紫外光源(発光部)
22: カラーCCDカメラ(受光部)
30: 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底物質又はその破砕物に対して紫外光を出射する発光部と、
前記海底物質又はその破砕物が発光部からの光で照射されることにより、前記海底物質又はその破砕物から出射される蛍光の波長及びその輝度を検出する受光部と、
前記受光部で検出された蛍光の波長及びその輝度に基づいて、前記海底物質又はその破砕物の種類を探査検出する制御部とを備えることを特徴とする探査検出装置。
【請求項2】
前記発光部は、波長200nm以上400nm以下の紫外光を出射することを特徴とする請求項1に記載の探査検出装置。
【請求項3】
前記発光部は、強度5mW/cm以上1.2kW/cm以下の紫外光を出射することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の探査検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記蛍光の輝度を赤色の蛍光の輝度と緑色の蛍光の輝度と青色の蛍光の輝度とに分類し、各色に応じて各色の蛍光の輝度を補正することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の探査検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記海底物質又はその破砕物に含有されているアクチベータの種類と鉱物の種類とを探査検出することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の探査検出装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の探査検出装置の発光部及び受光部を、前記海底物質又はその破砕物からの距離が0.1m以上3m以下となるように配置する配置と、
前記発光部からの光で海底物質又はその破砕物を照射する照射と、
前記海底物質又はその破砕物から出射される蛍光の波長及びその輝度を検出する検出と、
前記受光部で検出された蛍光の波長及びその輝度に基づいて、前記海底物質又はその破砕物の種類を判定する判定とを含むことを特徴とする探査検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−164018(P2011−164018A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28920(P2010−28920)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(594079958)JFEアレック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】