探知作業用シート及びこの探知作業用シートを用いた地中レーダシステム
【課題】地中レーダのオペレータの作業負荷の低減を低コストで実現可能な探知作業用シート及びこの探知作業用シートを用いた地中レーダシステムを提供する。
【解決手段】地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備えた地中レーダ11を移動させるための測定線5が格子状に描かれたシート部材2の各測定線5の少なくとも一端に、その点の位置情報を有する位置情報媒体3を設けて構成し、地中レーダ11に備えた読取部12によって位置情報を読取らせるように構成する。
【解決手段】地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備えた地中レーダ11を移動させるための測定線5が格子状に描かれたシート部材2の各測定線5の少なくとも一端に、その点の位置情報を有する位置情報媒体3を設けて構成し、地中レーダ11に備えた読取部12によって位置情報を読取らせるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中レーダのオペレータの作業負荷を低減することが可能な探知作業用シート及びこの探知作業用シートを用いた地中レーダシステムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
道路工事や鉄道軌道の改良工事等において、例えば、コンクリート等の掘削作業を伴って行うことがある。この様な掘削作業に先立って、ガス管や電力ケーブル等の既設の設備の埋設状況を調査して、作業の安全確保を図ることがある。この様な埋設状況の調査は、一般的に、オペレータが、地中レーダを移動操作し、得られた各種データを解析することによって行われている。
【0003】
ここで、この種の地中レーダとしては、例えば、特許文献1等に記載されたものがある。特許文献1に記載された地中レーダは、地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と、送出された電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備え、電磁波受信部によって受信された電磁波に基づく受信波データ等により地中に埋設された埋設物を探知する構成である。そして、一般的に、この種の地中レーダは、例えば、レーダ本体に設けた車輪の回転数を読取って移動距離を測定し、得られた移動距離データと受信波データに基づいて、地中レーダの移動方向の距離を横軸とし地中深さ(時間)を縦軸とする二次元のBスコープ表示の画像データを生成するように構成されている。このような一般的な地中レーダを用いて埋設状況を調査する場合、オペレータは、調査エリア内に測定線を格子状に設定し、調査エリアの路面等にチョーク等で格子状に測定線を描き、その各測定線に沿って地中レーダを移動操作して、埋設物の探知を行う。この測定の際、オペレータは、測定線毎に得られるBスコープ表示の各画像データが、どこの測定線上のデータなのかが後で分かるような情報をメモしておく。そして、オペレータは、メモした情報に基づいてBスコープ表示の画像を測定線順に並べて、埋設物の埋設状況を解析し、既に描かれている測定線を基準にして路面上等に埋設位置をマーキングしたり、埋設物の埋設位置を描いた図面等を添付した報告書を作成したりしている。このようにして、掘削作業者等が埋設物の埋設位置を識別できるようにし、掘削作業の安全が確保されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−151603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、この種の地中レーダを用いて埋設状況を調査する場合、オペレータは、調査エリア内の路面等に格子状に測定線を描いたり、各測定線に沿って地中レーダを移動操作したときに、測定線毎に得られるBスコープ表示の画像データがどこの位置に描かれた測定線上のデータなのかが後に分かるような情報をメモしたりしなければならず、埋設状況の調査作業の作業負荷が高いという問題がある。
【0006】
ところで、一般的に良く知られている、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)や、移動体を追尾して位置を高精度に測定可能なレーザ測距システムを用いて、レーダ本体の位置を測定して、得られた地中レーダの位置情報とBスコープ表示の画像データとを紐付けして記憶するような地中レーダシステムを構築すれば、オペレータがBスコープ表示の画像データと測定線の位置を紐付けする作業が不要になると考えられる。しかしながら、GPSを用いた場合、得られる位置情報の精度は1メートル程度であり、一方で、各測定線の間隔は通常1メートルより狭いことからすると、GPSは、地中レーダへの位置情報の提供手段としては精度的に劣ると考えられる。また、レーザ測距システムは、非常に高価なものであるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は前述の問題点に着目し、地中レーダのオペレータの作業負荷の低減を低コストで実現可能な探知作業用シート及びこの探知作業用シートを用いた地中レーダシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による探知作業用シートは、地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備えた地中レーダを移動させるための測定線が格子状に描かれたシート部材の各測定線の少なくとも一端に、その点の位置情報を有する位置情報媒体を設けて構成し、地中レーダに備えた読取部によって位置情報を読取らせるように構成する。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明による地中レーダシステムは、地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と、送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備えた地中レーダを有し、該電磁波受信部によって受信された電磁波に基づく受信波データから地中に埋設された埋設物を探知する地中レーダシステムであって、請求項1〜10のいずれか1つに記載の探知作業用シートと、前記地中レーダに取り付けられ、該地中レーダの移動距離を測定する距離測定部と、前記地中レーダに取り付けられ、前記探知作業用シートに設けた前記位置情報媒体の前記位置情報を読取り可能な読取部と、前記探知作業用シートを探知エリアに敷設して、前記探知作業用シートの前記測定線に沿って前記地中レーダを移動させて、前記読取部によって前記位置情報媒体から読み取った前記位置情報と、前記電磁波受信部によって受信した電磁波に基づく受信波データと、前記距離測定部によって得た移動距離データとを関連付けて記憶する記憶部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明による探知作業用シートによれば、シート部材に描かれた各測定線の少なくとも一端に設けた位置情報媒体によって、この位置情報媒体を設けた点の位置情報を、地中レーダの読取部で読取らせて提供する構成とすることで、簡易な構造で位置情報媒体を設けた点の位置情報を提供できる。したがって、GPSやレーザ測距システムよりも低コストで位置情報媒体を設けた点の位置情報を提供できる。さらに、地中レーダのオペレータは、地中レーダを移動操作する際の目安となる測定線として、探知作業用シートに格子状に描かれた測定線を用いることができるため、調査エリア内の路面等に格子状に測定線を描く作業が不要となる。また、当然に測定線を路面から消去するといった作業も不要となる。
【0011】
また、本発明による地中レーダシステムによれば、測定線に沿って地中レーダを移動させて、少なくとも測定線の一端の位置情報と受信波データと移動距離データとを関連付けて記憶することができるため、地中レーダを移動操作したときに得られる受信波データと移動距離データに基づいて生成されるBスコープ表示の画像データがどこの位置の測定線上のデータなのかが後で分かるような情報をメモするという作業も不要となる。このようにして、地中レーダのオペレータの作業負荷を低減することができる。また、探知作業用シートを用いた構成であるため、低コストで位置情報を得ることができる。このようにして、地中レーダのオペレータの作業負荷の低減を低コストで実現することが可能な探知作業用シート及びこの探知作業用シートを用いた地中レーダシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による探知作業用シートの第1実施形態を示す図で、上面図である。
【図2】上記実施形態の探知作業用シートの断面図である。
【図3】上記実施形態の探知作業用シートを用いて地中の埋設物の埋設状況を調査する作業動作を説明する図である。
【図4】図3のK−K線断面を示す断面図である。
【図5】地中レーダを測定線に対して斜めに移動させた状況を示す図である。
【図6】探知作業用シートの第2実施形態を示す図で、上面図である。
【図7】探知作業用シートの第3実施形態を示す図で、上面図である。
【図8】本発明による地中レーダシステムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図9】上記実施形態の地中レーダシステムを用いて埋設物を探知する状況を説明する図である。
【図10】電磁波受信部の各受信波形を示した図である。
【図11】ディスプレイ部が表示するBスコープ表示の画像表示例を示す図である。
【図12】上記実施形態の地中レーダシステムを用いて、地中の埋設物の埋設状況を調査する手順を示す作業フロー図である。
【図13】Bスコープ表示の各画像を並べたイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による探知作業用シートの実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による探知作業用シートの第1実施形態を示す図で、上面図である。
図1において、本実施形態の探知作業用シート1は、シート部材2と、位置情報媒体3とを備えて構成されている。
【0014】
上記シート部材2は、シート状に形成され、その表面に格子状に線が描かれたものである。この格子状の線は、地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備え地中に埋設された埋設物4を探知する地中レーダ11(図3等参照)をオペレータが移動させるための測定線5となる。地中レーダ11のオペレータは、この測定線5に沿って地中レーダ11を移動操作する。本実施形態においては、シート部材2は、例えば、透明であり、図1に示すように外縁が四角形状になるように形成したものである。各測定線5は、例えば、その線幅が2〜3cm程度、各測定線5間の間隔が20〜50cm程度でシート部材2の表面に印刷されている。なお、シート部材2は、図2や後述する図4,図8及び図9においては、その厚みを誇張して示したが、実際は例えば一般的な養生シートの厚みと同程度の厚みで形成されたものである。また、本実施形態のように、シート部材2が透明の場合、例えば、地中レーダ11のオペレータは、シート部材2を路面等の探知エリアに敷設し測定する際に、透明のシート部材2を通して路面等の状況が分かる。したがって、オペレータは、測定データにノイズがのってしまっていた場合、そのノイズがマンホールの蓋による乱反射等の、路面等に設けられた既設の設備によるものであるのか否かを容易に判別することができる。なお、シート部材2は、透明のシート部材に限らず、例えば、養生シート等に用いられている青色等の、不透明なシート部材であってもよい。
【0015】
また、本実施形態のように、シート部材2が透明である場合、測定線5は、透明のシート部材2の表裏で、異なる色で識別可能に描くとよい。これにより、例えば、地中レーダ11を用いて地中の埋設状況を調査する際に、シート部材2を調査エリアに合わせて折りたたんで使用するような場合、シート部材2の表裏で測定線5の色が異なるため、オペレータは表に描かれた測定線5がどれなのかを迷うことなく、地中レーダ11を測定線に沿って移動操作することができる。なお、測定線5は、印刷されているものとしたが、これに限らず、粘着テープをシート部材2の表面に格子状に貼り付けて形成してもよい。この場合、シート部材2の表裏で測定線5の色が異なるようにするには、例えば、表面と粘着面の色が異なるような粘着テープを用いたり、シート部材2の表裏に色の異なるテープをそれぞれ貼り付けたりする。
【0016】
上記位置情報媒体3は、この位置情報媒体3を設けた点の位置情報を有する。この位置情報は、後述する図3及び図4等に示すように、地中レーダ11に取り付けられ、無線通信可能な通信部で構成された読取部12によって読取られるように構成されている。本実施形態において、位置情報媒体3は、各測定線5の交点にそれぞれ設けられている。また、本実施形態において、各位置情報媒体3は、位置情報を無線により読取らせることができるように構成された例えばICチップ等の無線媒体である。この無線媒体からなる各位置情報媒体3の極近傍に読取部12が近づいたときに、位置情報を読取部12に読取らせることにより、位置情報を提供するように構成されている。ここで、位置情報とは、例えば、シート部材2上に予め設定した2次元座標系での位置をアドレス(α,β)で示した情報であり、具体的には、例えば、図1に示すように、α方向をアルファベットで表し、α方向に直交するβ方向を数字で表したものである。
【0017】
次に、このように構成された探知作業用シート1を用いて、オペレータが地中に埋設された埋設物の埋設状況を調査する作業動作を、埋設物4として2本の配管が平行に埋設されている探知エリア内を調査する場合を例として、図3及び図4を参照して簡単に説明する。なお、下記の説明においては、調査前に埋設物4が図3に示すβ方向に延伸して埋設されているかことが分かっているものとし、地中レーダ11を、探知エリア内でα方向の測定線5上に沿って移動させて探知する場合で説明する。
【0018】
まず、探知エリアに探知作業用シート1を例えばβ方向の測定線5と埋設物4の延伸方向が平行になるように敷設する。次に、地中レーダ11をα方向の測定線5に沿って、移動操作する。例えば、図3において、β方向下から5番目の測定線5に沿って、地中レーダ11を、α方向に測定線5の一端から他端まで移動させると、各位置情報媒体3は、地中レーダ11に取り付けられた読取部12が近づくと2次元座標系のアドレス(α,β)を位置情報として提供する。このとき、読取部12で得られる位置情報は、(A,5),(B,5),(C,5)・・・,(J,5)となる。この際、地中レーダ11は、この測定線5上に沿って測定したときに得られたデータがどこの位置の測定線5上のデータなのかが、後で分かるように、この測定線5上で得られたデータと測定線5の位置情報とを関連付けて記憶する。この測定線5の位置情報とは、測定線5の始端と終端の2次元座標上のアドレスで示した情報であり、例えば、上記のようにβ方向下から5番目の、α方向に描かれた測定線5の場合、その測定線5の位置情報は、(A−5〜J−5)となる。
【0019】
このような構成により、本実施形態における探知作業用シート1は、シート部材2に描かれた各測定線5の交点にそれぞれ設けた位置情報媒体3によって、位置情報媒体3を設けた点の位置情報を読取部12に提供する構成とすることで、簡易な構造で位置情報を提供できる。したがって、GPSやレーザ測距システムよりも低コストで位置情報を提供できる。さらに、地中レーダ11のオペレータは、地中レーダ11を移動操作する際の目安となる測定線として、探知作業用シート1のシート部材2に格子状に描かれた測定線5を用いることができるため、調査エリア内の路面等に測定線を描く作業が不要となる。また、当然に測定線を路面から消去するといった作業も不要となる。このようにして、地中レーダ11のオペレータの作業負荷の低減を低コストで実現可能な探知作業用シート1を提供することができる。
【0020】
なお、上記実施形態において、位置情報媒体3は、位置情報を無線により読取部12により読取らせることができる無線媒体であるものとして説明したが、これに限らず、位置情報が地中レーダ11の読取部12によって読取り可能に、例えば、一次元のバーコードを印刷したものや、位置情報を2次元化したパターンで印刷したもの(例えば、QRコード(登録商標))であってもよい。この場合、読取部12は、無線通信可能な通信部で構成するのではなく、位置情報を光学的に読取り可能に、例えば、CCDカメラ等によって構成する。このように構成することにより、位置情報媒体3を印刷により容易に設けることができるため、無線媒体と比べて低コストに位置情報媒体3を設けることができる。
【0021】
なお、通常、地中レーダ11を測定線5に沿って移動操作して測定するが、図5に示すように、地中レーダ11を測定線5に対して斜め一方向に移動操作して測定する場合もある。この場合は、地中レーダ11に記憶される各データが、地中レーダ11を具体的にどのような方向に移動操作したときのデータなのかが分かるようにする必要がある。例えば、位置情報媒体3が2次元コード化したパターンで印刷されたもの(例えば、QRコード(登録商標))である場合は、CCDカメラ等で構成された読取部12によって読取ったパターンの向きに基づいて、地中レーダ11の移動方向の情報を生成し、この方向情報と各データを対応付けて地中レーダ11に記憶させるように構成する。この場合、少なくとも1箇所の位置情報媒体3の近傍を通過するだけで、地中レーダ11の方向情報を提供することができる。また、位置情報媒体3が前述した無線媒体で構成されている場合は、例えば、斜め一方向の測定時に得られた二つ以上の位置で得られた位置情報(例えば、最初及び最後に得られた位置情報)に基づいて、地中レーダ11の移動方向の情報を生成し、この方向情報と各データを対応付けて地中レーダ11に記憶させるように構成する。
【0022】
なお、上記実施形態において、位置情報媒体3は、測定線5の各交点に設けた場合で説明したが、これに限らず、さらに、各交点の間にも設ける構成としてもよいし、単に、各測定線5の一端にのみ設ける構成としてもよいし、各測定線5の両端にのみ設ける構成としてもよい。
【0023】
位置情報媒体3を測定線5の各交点の間にも設けて構成する場合、例えば、交点間に複数設けることにより、位置情報を地中レーダ11の読取部12に密に提供することができる。
【0024】
位置情報媒体3を、図6に示す第2実施形態及び図7に示す第3実施形態のように、単にシート部材2の各測定線5の一端にのみそれぞれ設けて構成する場合、地中レーダ11は、通常、各測定線5の一端側から他端側向かって、その測定線5に沿って移動操作され、一回の測定動作を行うのであるから、その測定がどこの位置の測定線5上に沿って移動操作されたときのデータなのかを紐付けする目的としては、各測定線5の一端に設けるだけで十分である。
【0025】
また、図6に示すように、位置情報媒体3を設ける場合、例えば、地中レーダ11側で、各測定線5の一端に設けた位置情報媒体3を各測定線5における測定の開始の情報を提供するものとして用いる場合、図6に白抜き矢印に示すように、単一の測定線5上の測定が終わった後、地中レーダ11を反転させるだけで、平行して隣接する次の測定線5の始端の手前に地中レーダ11を移動させることができる。したがって、図7に示すように、地中レーダ11の測定時の移動操作方向が同一の場合と比べて、単一の測定線5上の測定が終わった後に次の測定線5の始端の手前まで地中レーダ11を移動させる距離を少なくすることができる。
【0026】
また、図7に示すように、シート部材2の同一辺側の一端にのみ位置情報媒体3を設ける場合、例えば、探知エリアが道路と平行する歩道でありこの歩道と道路の境界付近に縁石や植栽等の障害物が存在する場合に有用である。このような探知エリアにおいては、道路と直交する方向で地中レーダ11を移動操作する場合、障害物が邪魔となり、単一の測定線5上の測定が終わった後、前述した図6に示したように地中レーダ11を反転させて、次の測定線5の始端の手前に地中レーダ11を移動させるのは困難である。したがって、このような探知エリアにおいては、位置情報媒体3は、道路と直交する方向の測定線5においては、シート部材2の同一辺側の一端に設ける構成とすることにより、各位置情報媒体3を各測定線5における測定の開始の情報を提供するものとして用いることができる。この場合、地中レーダ11の測定時の移動操作は図7に白抜き矢印で示したように、一方向となる。
【0027】
また、図示省略するが、各測定線5の両端にのみ位置情報媒体3を設ける構成の場合、
位置情報媒体3を単一の測定線5上の測定の開始及び終了の情報を提供するものとしても用いることができる。
【0028】
次に、本発明による地中レーダシステムの実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図8は、本実施形態の地中レーダシステム10の概略構成図であり、前述した図1に示す探知作業用シート1を用いた構成である。
図8において、本実施形態の地中レーダシステム10は、探知作業用シート1と、地中レーダ11とを備えて構成され、地中レーダ11は、読取部12と、電磁波送信部13と、電磁波受信部14と、距離測定部15と、信号処理部16と、記憶部17と、ディスプレイ部18とを備えて成る。
【0029】
上記地中レーダ11は、前述したように電磁波送信部13と電磁波受信部14等を備え、電磁波送信部13によって地中に向けて電磁波を送出し、電磁波受信部14によって受信された電磁波に基づく受信波データから、地中に埋設された埋設物4の埋設状況を探知する本体となるものである。地中レーダ11は、図8に示すように、その底部に車輪20が取り付けられている。また、図9に示すように、地中レーダ11の上部等には取手が取り付けられており、オペレータ等によって地中レーダ11を容易に移動操作できるようになっている。このとき、格子状に描かれた測定線5は、オペレータが地中レーダ11を移動操作する際の目安としての測定線となる。また、埋設物4は、例えば、金属管や塩化ビニール管等であり、図9に示すように、地中レーダ11の移動方向と直交する方向(図面上垂直方向)に延伸して埋設されている場合や、図示省略するが移動方向と平行な方向に延伸して埋設されている場合等、様々な場合がある。
【0030】
上記読取部12は、探知作業用シート1を探知エリアに敷設して、探知作業用シート1の測定線5に沿って地中レーダ11を移動させて、無線媒体である位置情報媒体3から位置情報を無線により読取可能な通信部で構成されたものである。この読取部12は、例えば、地中レーダ11の前部であって地中レーダ11の略中心(図3及び図5参照)に設けられている。なお、読取部12は、位置情報を読取り可能な範囲(無線を受信可能な範囲)を適宜設定可能であり、読取可能な範囲を狭く設定することにより、読取部12の極近傍の位置情報媒体3からのみ位置情報を読取るようにすることができる。また、読取部12によって読取られた位置情報は、後述するように、受信波データ及び移動距離データと関連つけて記憶部17に記憶される。
【0031】
上記電磁波送信部13は、図8に示すように、電磁波(送信波)を地中に向けて送出するものであり、電磁波を発生する電磁波発生部21と、電磁波発生部21から発生した電磁波の出力を増幅させる送信波アンプ22と、増幅された電磁波を地中に向けて送出する送信アンテナ23とを備えている。
【0032】
上記電磁波受信部14は、送出された電磁波(送信波)に基づいて反射された電磁波(受信波)を受信して、出力を増幅させるもので、図8に示すように、反射された電磁波を受信する受信アンテナ24と、受信した電磁波の出力を増幅させる受信波アンプ25とを備えている。
【0033】
上記距離測定部15は、地中レーダ11の移動距離を測定するものであり、例えば、地中レーダ11に設けた車輪20の回転数を読取って地中レーダ11の移動距離を測定し、測定した移動距離データを、例えば、記憶部17へ出力するように構成されている。この移動距離データは、受信波データ及び位置情報と関連つけて記憶部17に記憶される。なお、本実施形態において、距離測定部15は、オペレータによって測定開始スイッチ等が押された時に、地中レーダ11が位置する場所(受信アンテナ24の真下)を始点として移動距離の測定を開始するように構成されている。
【0034】
上記信号処理部16は、受信波アンプ25から出力される信号を処理する一般的なものであり、図示省略するが、例えば、受信波の高調波ノイズを除去する波形処理部を備えている。信号処理部16で処理された受信波の受信波データは、受信波が受信された際に距離測定部15によって得られる地中レーダ11の移動距離データ及び読取部12によって読取られた位置情報と関連付けて記憶部17に記憶される。
【0035】
ここで、図9は、例えば、配管等の埋設物4の正確な埋設位置については不明だが、埋設物4が図面垂直方向に延伸して埋設されていることについては予め分かっている場所において、地中レーダ11を埋設物4と直交する方向の、測定線5に沿って移動させて、埋設物4を探知する状況を表している。また、図10は、図9の状況において、電磁波送信部13から電磁波を同一の測定線5上の複数の位置で送出した場合に、受信アンテナ24が各位置において受信した反射波の波形を各位置における送信波の送信時刻を時間の始まりとして時間シフトさせ、各位置における受信波の波形を表示した図である。図10の縦軸は電磁波を送出してから反射波が受信されるまでの遅延時間を表し、下に行くほど、遅延時間が長く、アンテナと埋設物4の距離が遠いことを示し、上に行くほど、遅延時間が短く、距離が近いことを示す。図10に破線で示すように、アンテナと埋設物4の距離が徐々に近くなり、その後遠くなるような場合、距離が一番近くなったところが埋設物4の真上であることを示し、この時の探知エリアにおける地中レーダ11の測定線5上の移動距離は距離測定部15によって測定されるため、埋設物4の真上の位置、すなわち、埋設位置が分かる。また、距離が一番近くなったところの距離は、埋設物4の地表面からの埋設深さを示す。したがって、埋設物4の概略の配置方向が予め分かっている場合は、埋設物4の上を横切るようにして、地中レーダ11を移動させて探知すると埋設物4の正確な埋設位置及び埋設深さを特定することができる。
【0036】
図9においては、配管等の埋設物4がどのような方向に延伸して埋設されているかが予め分かっている場所において、地中レーダ11を埋設物4と直交する方向の、測定線5に沿って移動する場合を説明したが、一般的に、埋設物4がどのような方向に延伸して埋設されているかについて分かっていない場合もある。このような場合において、埋設物4の正確な埋設位置を特定する場合は、地中レーダ11を直交する2方向に描かれた各測定線5に沿って移動させることにより、いずれかの線において地中レーダ11が埋設物4を横切るようにして、埋設物4の探知を行うとよい。
【0037】
上記記憶部17は、探知作業用シート1を探知エリアに敷設して、探知作業用シート1の測定線5に沿って地中レーダ11を移動させて埋設物4を探知する際に、読取部12によって位置情報媒体3から読み取った位置情報と、電磁波受信部14によって受信した電磁波に基づく受信波データと、距離測定部15によって得られた移動距離データとを関連付けて記憶するものである。本実施形態において、記憶部17は、後述するようにディスプレイ部18によって、各測定線5に沿って行われる測定毎に生成される二次元のBスコープ表示の画像データが、どこの位置の測定線5上のデータなのかが後で分かるように、Bスコープ表示の画像データと測定線5の位置情報とを関連付けて記憶するように構成されている。この測定線5の位置情報とは、測定線5の始端と終端の2次元座標上のアドレスで示した情報であり、例えば、β方向下から5番目の、α方向に描かれた測定線5の場合、その測定線5の位置情報は、(A−5〜J−5)となる。
【0038】
上記ディスプレイ部18は、埋設物4の探知結果等を画像表示するものである。ディスプレイ部18は、地中レーダ11を単一の測定線5に沿って一方向に移動させ、電磁波送信部13から電磁波を複数の位置で送出した場合に、受信アンテナ24が各位置において受信した電磁波の受信波データを記憶部17から読み出し、受信波データ内の時間データを各位置における送信波の送信時刻を時間の始まりとして時間シフトさせると共に、受信強度を濃淡で表示し、さらに、各受信波データと関連付けて記憶部17に記憶された移動距離データに基づいて位置シフト(地中レーダ11の移動方向へのシフト)させた一般的なBスコープ表示の画像データを、単一の測定線5に沿って行われる測定毎に生成する。ディスプレイ部18は、この画像データに基づいて各測定線5に沿って埋設物4の探知結果を画像表示する。ここで、図11は、図9と同様に、埋設物4を横切るように、地中レーダ11を移動させた場合に、ディスプレイ部18が表示するBスコープ表示の画像表示例を示す図である。図11においては、横軸は地中レーダ11の移動方向の距離を示し、縦軸は地中深さ(時間)を示す。なお、図11においては、図の簡略化のため、各位置において受信強度の一番高い箇所のみ表示し、他の箇所については省略して示している。
【0039】
次に、このように構成された地中レーダシステム10を用いて、埋設物4の埋設状況を調査して、路面等を掘削する作業の流れ及び地中レーダシステム10の動作を、図3及び図4に示すように、埋設物4として2本の配管が平行に埋設されている探知エリア内を調査する場合を例として、図3,図4,図12及び図13を参照して詳細に説明する。なお、下記の説明においては、調査前に埋設物4が図3に示すβ方向に延伸して埋設されていることが分かっているものとし、地中レーダ11を、探知エリア内でα方向の各測定線5に沿って移動させて探知する場合で説明する。
【0040】
まず、オペレータは、図3及び図4に示すように、探知エリア全体を網羅するように、探知作業用シート1を敷設する(STEP1)。
【0041】
次に、オペレータは、例えば、始端のアドレスが(A,1)で、終端のアドレスが(J,1)の測定線5の一辺の始端からこの一辺(以下、(A−1〜J−1)線という)に沿って地中レーダ11を移動できるように配置し、地中レーダ11の電源を入れる。測定準備ができたら、オペレータは、例えば、測定開始スイッチ等を押して、電磁波送信部13からの電磁波の送出を開始させると共に、距離測定部15による移動距離の測定動作を開始させ、この(A−1〜J−1)線に沿って地中レーダ11を一方向(図10の矢印α方向)に押して、(A−1〜J−1)線の終端まで移動させる。この移動の際、電磁波送信部13は、電磁波を複数の位置で地中に向けて送出し、電磁波受信部14は、電磁波送信部13から送出された電磁波(送信波)に基づいて反射された電磁波(受信波)を各位置で受信し、信号処理部16へ各受信波の信号を出力する。信号処理部16は、受信波の信号内の高調波ノイズを除去しノイズ除去後の受信波の信号を受信波データとして、記憶部17へ出力する。この受信波データは、受信された際に距離測定部15よって得られる移動距離データと、読取部12によって得られる位置情報と関連付けて記憶される。なお、読取部12は、地中レーダ11が位置情報媒体3の近傍に位置しているときしか位置情報を得ることはできないように、読取り可能な範囲が適宜設定されている。したがって、電磁波を受信して受信波データを得たときに、地中レーダ11の近傍に位置情報媒体3がない場合は、記憶部17は、単に受信波データと移動距離データとを関連付けて記憶する。そして、地中レーダ11が(A−1〜J−1)線の終端に到達すると、オペレータは、例えば、測定中断スイッチ等を押し、次の測定線5の始端、例えば、(A−2〜J−2)線の始端から(A−2〜J−2)線に沿って地中レーダ11を移動できるように配置し、(A−1〜J−1)線上での測定と同様にして測定する。以降、同様にして、各測定線(A−3〜J−3, A−4〜J−4,・・・A−10〜J−10)上の測定を行う(STEP2)。
【0042】
ここで、ディスプレイ部18は、測定線5に沿って行われる測定毎に、Bスコープ表示の画像データを生成し、記憶部17は、Bスコープ表示の各画像データと、測定線5の位置情報(例えば、β方向下から5番目の測定線5の場合、(A−5〜J−5))とを関連付けて記憶する。ディスプレイ部18は、この画像データに基づいて各測定線5上での埋設物4の探知結果を画像表示する。このBスコープ表示の画像は、例えば、外部のプリンター等を介して印刷される。そして、オペレータは、印刷された各Bスコープ表示の各画像を、図13に示すように、各測定線5の位置情報に基づいて、実際の測定線5が描かれている順に並べて整理し、探知結果を解析し埋設物4の埋設位置を特定する(STEP3)。
【0043】
そして、上記のように探知結果の解析(埋設位置の特定)が完了すると、オペレータは、例えば、探知作業用シート1を敷設した位置と探知エリアとの位置関係の基準となる基準物(例えば、自販機等)を定め、その基準物と探知作業用シート1との位置関係を記録した後、探知作業用シート1を撤去し、基準物を基準として埋設物の埋設位置を描いた図面等を添付した報告書を作成する。そして、掘削作業者は、その報告書をもとに、掘削エリア上に埋設位置をチョーク等によりマークする(STEP4)。最後に、掘削作業者は、路面等に描かれたマークに基づいて埋設物4の埋設位置を確認し、埋設物4を破損等しないようにして、掘削作業を行う(STEP5)。なお、埋設状況の調査作業と掘削作業が一連の作業として行われる場合等には、オペレータが、探知結果に基づき、掘削エリア上に埋設位置をチョーク等によりマークしてもよい。
【0044】
このような構成により、本実施形態における地中レーダシステム10によれば、測定線5に沿って地中レーダ11を移動させて埋設物4を探知する際に、測定線5の位置情報と受信波データと移動距離データとを関連付けて記憶することができるため、地中レーダ11を移動操作したときに得られる受信波データと移動距離データに基づいて生成されるBスコープ表示の画像データがどこの位置の線上のデータなのかが後で分かるような情報をメモするという作業も不要となる。また、探知作業用シート1を用いた構成であるため、低コストで位置情報を得ることができる。このようにして、オペレータの作業負荷の低減を低コストで実現可能な地中レーダシステム10を提供することができる。
【0045】
なお、上記実施形態において、移動距離測定部15は、オペレータによって測定開始スイッチ等が押された時に、地中レーダ11が位置する場所(受信アンテナ24の真下)を始点として移動距離の測定を開始するものとしたが、これに限らず、地中レーダ11が移動操作されたときに、読取部12によって最初に読込んだ位置情報に基づく位置を始点として移動距離の測定を開始するようにしてもよい。この場合、例えば、読取部12に各測定線5の両端の位置情報を予め記憶させておき、一方の端部の位置情報を読取ったあとに、他方の端部の位置情報を読取ったとき、その測定線5上の測定の終了をオペレータ等に通知可能に構成するとよい。これにより、無駄な移動操作を減らすことができる。このように、各測定線5の両端に設けた位置情報媒体3を各測定の開始及び終了の情報を提供するものとして用いてもよい。
【0046】
なお、上記実施形態においては、地中レーダシステム10は、図1に示した第1実施形態の探知作業用シート1を適用した場合で説明したが、これに限らず、前述したいづれの構成の探知作業用シート1も適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 探知作業用シート
2 シート部材
3 位置情報媒体
4 埋設物
5 測定線
10 地中レーダシステム
11 地中レーダ
12 読取部
13 電磁波送信部
14 電磁波受信部
15 距離測定部
17 記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中レーダのオペレータの作業負荷を低減することが可能な探知作業用シート及びこの探知作業用シートを用いた地中レーダシステムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
道路工事や鉄道軌道の改良工事等において、例えば、コンクリート等の掘削作業を伴って行うことがある。この様な掘削作業に先立って、ガス管や電力ケーブル等の既設の設備の埋設状況を調査して、作業の安全確保を図ることがある。この様な埋設状況の調査は、一般的に、オペレータが、地中レーダを移動操作し、得られた各種データを解析することによって行われている。
【0003】
ここで、この種の地中レーダとしては、例えば、特許文献1等に記載されたものがある。特許文献1に記載された地中レーダは、地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と、送出された電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備え、電磁波受信部によって受信された電磁波に基づく受信波データ等により地中に埋設された埋設物を探知する構成である。そして、一般的に、この種の地中レーダは、例えば、レーダ本体に設けた車輪の回転数を読取って移動距離を測定し、得られた移動距離データと受信波データに基づいて、地中レーダの移動方向の距離を横軸とし地中深さ(時間)を縦軸とする二次元のBスコープ表示の画像データを生成するように構成されている。このような一般的な地中レーダを用いて埋設状況を調査する場合、オペレータは、調査エリア内に測定線を格子状に設定し、調査エリアの路面等にチョーク等で格子状に測定線を描き、その各測定線に沿って地中レーダを移動操作して、埋設物の探知を行う。この測定の際、オペレータは、測定線毎に得られるBスコープ表示の各画像データが、どこの測定線上のデータなのかが後で分かるような情報をメモしておく。そして、オペレータは、メモした情報に基づいてBスコープ表示の画像を測定線順に並べて、埋設物の埋設状況を解析し、既に描かれている測定線を基準にして路面上等に埋設位置をマーキングしたり、埋設物の埋設位置を描いた図面等を添付した報告書を作成したりしている。このようにして、掘削作業者等が埋設物の埋設位置を識別できるようにし、掘削作業の安全が確保されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−151603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、この種の地中レーダを用いて埋設状況を調査する場合、オペレータは、調査エリア内の路面等に格子状に測定線を描いたり、各測定線に沿って地中レーダを移動操作したときに、測定線毎に得られるBスコープ表示の画像データがどこの位置に描かれた測定線上のデータなのかが後に分かるような情報をメモしたりしなければならず、埋設状況の調査作業の作業負荷が高いという問題がある。
【0006】
ところで、一般的に良く知られている、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)や、移動体を追尾して位置を高精度に測定可能なレーザ測距システムを用いて、レーダ本体の位置を測定して、得られた地中レーダの位置情報とBスコープ表示の画像データとを紐付けして記憶するような地中レーダシステムを構築すれば、オペレータがBスコープ表示の画像データと測定線の位置を紐付けする作業が不要になると考えられる。しかしながら、GPSを用いた場合、得られる位置情報の精度は1メートル程度であり、一方で、各測定線の間隔は通常1メートルより狭いことからすると、GPSは、地中レーダへの位置情報の提供手段としては精度的に劣ると考えられる。また、レーザ測距システムは、非常に高価なものであるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は前述の問題点に着目し、地中レーダのオペレータの作業負荷の低減を低コストで実現可能な探知作業用シート及びこの探知作業用シートを用いた地中レーダシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による探知作業用シートは、地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備えた地中レーダを移動させるための測定線が格子状に描かれたシート部材の各測定線の少なくとも一端に、その点の位置情報を有する位置情報媒体を設けて構成し、地中レーダに備えた読取部によって位置情報を読取らせるように構成する。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明による地中レーダシステムは、地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と、送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備えた地中レーダを有し、該電磁波受信部によって受信された電磁波に基づく受信波データから地中に埋設された埋設物を探知する地中レーダシステムであって、請求項1〜10のいずれか1つに記載の探知作業用シートと、前記地中レーダに取り付けられ、該地中レーダの移動距離を測定する距離測定部と、前記地中レーダに取り付けられ、前記探知作業用シートに設けた前記位置情報媒体の前記位置情報を読取り可能な読取部と、前記探知作業用シートを探知エリアに敷設して、前記探知作業用シートの前記測定線に沿って前記地中レーダを移動させて、前記読取部によって前記位置情報媒体から読み取った前記位置情報と、前記電磁波受信部によって受信した電磁波に基づく受信波データと、前記距離測定部によって得た移動距離データとを関連付けて記憶する記憶部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明による探知作業用シートによれば、シート部材に描かれた各測定線の少なくとも一端に設けた位置情報媒体によって、この位置情報媒体を設けた点の位置情報を、地中レーダの読取部で読取らせて提供する構成とすることで、簡易な構造で位置情報媒体を設けた点の位置情報を提供できる。したがって、GPSやレーザ測距システムよりも低コストで位置情報媒体を設けた点の位置情報を提供できる。さらに、地中レーダのオペレータは、地中レーダを移動操作する際の目安となる測定線として、探知作業用シートに格子状に描かれた測定線を用いることができるため、調査エリア内の路面等に格子状に測定線を描く作業が不要となる。また、当然に測定線を路面から消去するといった作業も不要となる。
【0011】
また、本発明による地中レーダシステムによれば、測定線に沿って地中レーダを移動させて、少なくとも測定線の一端の位置情報と受信波データと移動距離データとを関連付けて記憶することができるため、地中レーダを移動操作したときに得られる受信波データと移動距離データに基づいて生成されるBスコープ表示の画像データがどこの位置の測定線上のデータなのかが後で分かるような情報をメモするという作業も不要となる。このようにして、地中レーダのオペレータの作業負荷を低減することができる。また、探知作業用シートを用いた構成であるため、低コストで位置情報を得ることができる。このようにして、地中レーダのオペレータの作業負荷の低減を低コストで実現することが可能な探知作業用シート及びこの探知作業用シートを用いた地中レーダシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による探知作業用シートの第1実施形態を示す図で、上面図である。
【図2】上記実施形態の探知作業用シートの断面図である。
【図3】上記実施形態の探知作業用シートを用いて地中の埋設物の埋設状況を調査する作業動作を説明する図である。
【図4】図3のK−K線断面を示す断面図である。
【図5】地中レーダを測定線に対して斜めに移動させた状況を示す図である。
【図6】探知作業用シートの第2実施形態を示す図で、上面図である。
【図7】探知作業用シートの第3実施形態を示す図で、上面図である。
【図8】本発明による地中レーダシステムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図9】上記実施形態の地中レーダシステムを用いて埋設物を探知する状況を説明する図である。
【図10】電磁波受信部の各受信波形を示した図である。
【図11】ディスプレイ部が表示するBスコープ表示の画像表示例を示す図である。
【図12】上記実施形態の地中レーダシステムを用いて、地中の埋設物の埋設状況を調査する手順を示す作業フロー図である。
【図13】Bスコープ表示の各画像を並べたイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による探知作業用シートの実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による探知作業用シートの第1実施形態を示す図で、上面図である。
図1において、本実施形態の探知作業用シート1は、シート部材2と、位置情報媒体3とを備えて構成されている。
【0014】
上記シート部材2は、シート状に形成され、その表面に格子状に線が描かれたものである。この格子状の線は、地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備え地中に埋設された埋設物4を探知する地中レーダ11(図3等参照)をオペレータが移動させるための測定線5となる。地中レーダ11のオペレータは、この測定線5に沿って地中レーダ11を移動操作する。本実施形態においては、シート部材2は、例えば、透明であり、図1に示すように外縁が四角形状になるように形成したものである。各測定線5は、例えば、その線幅が2〜3cm程度、各測定線5間の間隔が20〜50cm程度でシート部材2の表面に印刷されている。なお、シート部材2は、図2や後述する図4,図8及び図9においては、その厚みを誇張して示したが、実際は例えば一般的な養生シートの厚みと同程度の厚みで形成されたものである。また、本実施形態のように、シート部材2が透明の場合、例えば、地中レーダ11のオペレータは、シート部材2を路面等の探知エリアに敷設し測定する際に、透明のシート部材2を通して路面等の状況が分かる。したがって、オペレータは、測定データにノイズがのってしまっていた場合、そのノイズがマンホールの蓋による乱反射等の、路面等に設けられた既設の設備によるものであるのか否かを容易に判別することができる。なお、シート部材2は、透明のシート部材に限らず、例えば、養生シート等に用いられている青色等の、不透明なシート部材であってもよい。
【0015】
また、本実施形態のように、シート部材2が透明である場合、測定線5は、透明のシート部材2の表裏で、異なる色で識別可能に描くとよい。これにより、例えば、地中レーダ11を用いて地中の埋設状況を調査する際に、シート部材2を調査エリアに合わせて折りたたんで使用するような場合、シート部材2の表裏で測定線5の色が異なるため、オペレータは表に描かれた測定線5がどれなのかを迷うことなく、地中レーダ11を測定線に沿って移動操作することができる。なお、測定線5は、印刷されているものとしたが、これに限らず、粘着テープをシート部材2の表面に格子状に貼り付けて形成してもよい。この場合、シート部材2の表裏で測定線5の色が異なるようにするには、例えば、表面と粘着面の色が異なるような粘着テープを用いたり、シート部材2の表裏に色の異なるテープをそれぞれ貼り付けたりする。
【0016】
上記位置情報媒体3は、この位置情報媒体3を設けた点の位置情報を有する。この位置情報は、後述する図3及び図4等に示すように、地中レーダ11に取り付けられ、無線通信可能な通信部で構成された読取部12によって読取られるように構成されている。本実施形態において、位置情報媒体3は、各測定線5の交点にそれぞれ設けられている。また、本実施形態において、各位置情報媒体3は、位置情報を無線により読取らせることができるように構成された例えばICチップ等の無線媒体である。この無線媒体からなる各位置情報媒体3の極近傍に読取部12が近づいたときに、位置情報を読取部12に読取らせることにより、位置情報を提供するように構成されている。ここで、位置情報とは、例えば、シート部材2上に予め設定した2次元座標系での位置をアドレス(α,β)で示した情報であり、具体的には、例えば、図1に示すように、α方向をアルファベットで表し、α方向に直交するβ方向を数字で表したものである。
【0017】
次に、このように構成された探知作業用シート1を用いて、オペレータが地中に埋設された埋設物の埋設状況を調査する作業動作を、埋設物4として2本の配管が平行に埋設されている探知エリア内を調査する場合を例として、図3及び図4を参照して簡単に説明する。なお、下記の説明においては、調査前に埋設物4が図3に示すβ方向に延伸して埋設されているかことが分かっているものとし、地中レーダ11を、探知エリア内でα方向の測定線5上に沿って移動させて探知する場合で説明する。
【0018】
まず、探知エリアに探知作業用シート1を例えばβ方向の測定線5と埋設物4の延伸方向が平行になるように敷設する。次に、地中レーダ11をα方向の測定線5に沿って、移動操作する。例えば、図3において、β方向下から5番目の測定線5に沿って、地中レーダ11を、α方向に測定線5の一端から他端まで移動させると、各位置情報媒体3は、地中レーダ11に取り付けられた読取部12が近づくと2次元座標系のアドレス(α,β)を位置情報として提供する。このとき、読取部12で得られる位置情報は、(A,5),(B,5),(C,5)・・・,(J,5)となる。この際、地中レーダ11は、この測定線5上に沿って測定したときに得られたデータがどこの位置の測定線5上のデータなのかが、後で分かるように、この測定線5上で得られたデータと測定線5の位置情報とを関連付けて記憶する。この測定線5の位置情報とは、測定線5の始端と終端の2次元座標上のアドレスで示した情報であり、例えば、上記のようにβ方向下から5番目の、α方向に描かれた測定線5の場合、その測定線5の位置情報は、(A−5〜J−5)となる。
【0019】
このような構成により、本実施形態における探知作業用シート1は、シート部材2に描かれた各測定線5の交点にそれぞれ設けた位置情報媒体3によって、位置情報媒体3を設けた点の位置情報を読取部12に提供する構成とすることで、簡易な構造で位置情報を提供できる。したがって、GPSやレーザ測距システムよりも低コストで位置情報を提供できる。さらに、地中レーダ11のオペレータは、地中レーダ11を移動操作する際の目安となる測定線として、探知作業用シート1のシート部材2に格子状に描かれた測定線5を用いることができるため、調査エリア内の路面等に測定線を描く作業が不要となる。また、当然に測定線を路面から消去するといった作業も不要となる。このようにして、地中レーダ11のオペレータの作業負荷の低減を低コストで実現可能な探知作業用シート1を提供することができる。
【0020】
なお、上記実施形態において、位置情報媒体3は、位置情報を無線により読取部12により読取らせることができる無線媒体であるものとして説明したが、これに限らず、位置情報が地中レーダ11の読取部12によって読取り可能に、例えば、一次元のバーコードを印刷したものや、位置情報を2次元化したパターンで印刷したもの(例えば、QRコード(登録商標))であってもよい。この場合、読取部12は、無線通信可能な通信部で構成するのではなく、位置情報を光学的に読取り可能に、例えば、CCDカメラ等によって構成する。このように構成することにより、位置情報媒体3を印刷により容易に設けることができるため、無線媒体と比べて低コストに位置情報媒体3を設けることができる。
【0021】
なお、通常、地中レーダ11を測定線5に沿って移動操作して測定するが、図5に示すように、地中レーダ11を測定線5に対して斜め一方向に移動操作して測定する場合もある。この場合は、地中レーダ11に記憶される各データが、地中レーダ11を具体的にどのような方向に移動操作したときのデータなのかが分かるようにする必要がある。例えば、位置情報媒体3が2次元コード化したパターンで印刷されたもの(例えば、QRコード(登録商標))である場合は、CCDカメラ等で構成された読取部12によって読取ったパターンの向きに基づいて、地中レーダ11の移動方向の情報を生成し、この方向情報と各データを対応付けて地中レーダ11に記憶させるように構成する。この場合、少なくとも1箇所の位置情報媒体3の近傍を通過するだけで、地中レーダ11の方向情報を提供することができる。また、位置情報媒体3が前述した無線媒体で構成されている場合は、例えば、斜め一方向の測定時に得られた二つ以上の位置で得られた位置情報(例えば、最初及び最後に得られた位置情報)に基づいて、地中レーダ11の移動方向の情報を生成し、この方向情報と各データを対応付けて地中レーダ11に記憶させるように構成する。
【0022】
なお、上記実施形態において、位置情報媒体3は、測定線5の各交点に設けた場合で説明したが、これに限らず、さらに、各交点の間にも設ける構成としてもよいし、単に、各測定線5の一端にのみ設ける構成としてもよいし、各測定線5の両端にのみ設ける構成としてもよい。
【0023】
位置情報媒体3を測定線5の各交点の間にも設けて構成する場合、例えば、交点間に複数設けることにより、位置情報を地中レーダ11の読取部12に密に提供することができる。
【0024】
位置情報媒体3を、図6に示す第2実施形態及び図7に示す第3実施形態のように、単にシート部材2の各測定線5の一端にのみそれぞれ設けて構成する場合、地中レーダ11は、通常、各測定線5の一端側から他端側向かって、その測定線5に沿って移動操作され、一回の測定動作を行うのであるから、その測定がどこの位置の測定線5上に沿って移動操作されたときのデータなのかを紐付けする目的としては、各測定線5の一端に設けるだけで十分である。
【0025】
また、図6に示すように、位置情報媒体3を設ける場合、例えば、地中レーダ11側で、各測定線5の一端に設けた位置情報媒体3を各測定線5における測定の開始の情報を提供するものとして用いる場合、図6に白抜き矢印に示すように、単一の測定線5上の測定が終わった後、地中レーダ11を反転させるだけで、平行して隣接する次の測定線5の始端の手前に地中レーダ11を移動させることができる。したがって、図7に示すように、地中レーダ11の測定時の移動操作方向が同一の場合と比べて、単一の測定線5上の測定が終わった後に次の測定線5の始端の手前まで地中レーダ11を移動させる距離を少なくすることができる。
【0026】
また、図7に示すように、シート部材2の同一辺側の一端にのみ位置情報媒体3を設ける場合、例えば、探知エリアが道路と平行する歩道でありこの歩道と道路の境界付近に縁石や植栽等の障害物が存在する場合に有用である。このような探知エリアにおいては、道路と直交する方向で地中レーダ11を移動操作する場合、障害物が邪魔となり、単一の測定線5上の測定が終わった後、前述した図6に示したように地中レーダ11を反転させて、次の測定線5の始端の手前に地中レーダ11を移動させるのは困難である。したがって、このような探知エリアにおいては、位置情報媒体3は、道路と直交する方向の測定線5においては、シート部材2の同一辺側の一端に設ける構成とすることにより、各位置情報媒体3を各測定線5における測定の開始の情報を提供するものとして用いることができる。この場合、地中レーダ11の測定時の移動操作は図7に白抜き矢印で示したように、一方向となる。
【0027】
また、図示省略するが、各測定線5の両端にのみ位置情報媒体3を設ける構成の場合、
位置情報媒体3を単一の測定線5上の測定の開始及び終了の情報を提供するものとしても用いることができる。
【0028】
次に、本発明による地中レーダシステムの実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図8は、本実施形態の地中レーダシステム10の概略構成図であり、前述した図1に示す探知作業用シート1を用いた構成である。
図8において、本実施形態の地中レーダシステム10は、探知作業用シート1と、地中レーダ11とを備えて構成され、地中レーダ11は、読取部12と、電磁波送信部13と、電磁波受信部14と、距離測定部15と、信号処理部16と、記憶部17と、ディスプレイ部18とを備えて成る。
【0029】
上記地中レーダ11は、前述したように電磁波送信部13と電磁波受信部14等を備え、電磁波送信部13によって地中に向けて電磁波を送出し、電磁波受信部14によって受信された電磁波に基づく受信波データから、地中に埋設された埋設物4の埋設状況を探知する本体となるものである。地中レーダ11は、図8に示すように、その底部に車輪20が取り付けられている。また、図9に示すように、地中レーダ11の上部等には取手が取り付けられており、オペレータ等によって地中レーダ11を容易に移動操作できるようになっている。このとき、格子状に描かれた測定線5は、オペレータが地中レーダ11を移動操作する際の目安としての測定線となる。また、埋設物4は、例えば、金属管や塩化ビニール管等であり、図9に示すように、地中レーダ11の移動方向と直交する方向(図面上垂直方向)に延伸して埋設されている場合や、図示省略するが移動方向と平行な方向に延伸して埋設されている場合等、様々な場合がある。
【0030】
上記読取部12は、探知作業用シート1を探知エリアに敷設して、探知作業用シート1の測定線5に沿って地中レーダ11を移動させて、無線媒体である位置情報媒体3から位置情報を無線により読取可能な通信部で構成されたものである。この読取部12は、例えば、地中レーダ11の前部であって地中レーダ11の略中心(図3及び図5参照)に設けられている。なお、読取部12は、位置情報を読取り可能な範囲(無線を受信可能な範囲)を適宜設定可能であり、読取可能な範囲を狭く設定することにより、読取部12の極近傍の位置情報媒体3からのみ位置情報を読取るようにすることができる。また、読取部12によって読取られた位置情報は、後述するように、受信波データ及び移動距離データと関連つけて記憶部17に記憶される。
【0031】
上記電磁波送信部13は、図8に示すように、電磁波(送信波)を地中に向けて送出するものであり、電磁波を発生する電磁波発生部21と、電磁波発生部21から発生した電磁波の出力を増幅させる送信波アンプ22と、増幅された電磁波を地中に向けて送出する送信アンテナ23とを備えている。
【0032】
上記電磁波受信部14は、送出された電磁波(送信波)に基づいて反射された電磁波(受信波)を受信して、出力を増幅させるもので、図8に示すように、反射された電磁波を受信する受信アンテナ24と、受信した電磁波の出力を増幅させる受信波アンプ25とを備えている。
【0033】
上記距離測定部15は、地中レーダ11の移動距離を測定するものであり、例えば、地中レーダ11に設けた車輪20の回転数を読取って地中レーダ11の移動距離を測定し、測定した移動距離データを、例えば、記憶部17へ出力するように構成されている。この移動距離データは、受信波データ及び位置情報と関連つけて記憶部17に記憶される。なお、本実施形態において、距離測定部15は、オペレータによって測定開始スイッチ等が押された時に、地中レーダ11が位置する場所(受信アンテナ24の真下)を始点として移動距離の測定を開始するように構成されている。
【0034】
上記信号処理部16は、受信波アンプ25から出力される信号を処理する一般的なものであり、図示省略するが、例えば、受信波の高調波ノイズを除去する波形処理部を備えている。信号処理部16で処理された受信波の受信波データは、受信波が受信された際に距離測定部15によって得られる地中レーダ11の移動距離データ及び読取部12によって読取られた位置情報と関連付けて記憶部17に記憶される。
【0035】
ここで、図9は、例えば、配管等の埋設物4の正確な埋設位置については不明だが、埋設物4が図面垂直方向に延伸して埋設されていることについては予め分かっている場所において、地中レーダ11を埋設物4と直交する方向の、測定線5に沿って移動させて、埋設物4を探知する状況を表している。また、図10は、図9の状況において、電磁波送信部13から電磁波を同一の測定線5上の複数の位置で送出した場合に、受信アンテナ24が各位置において受信した反射波の波形を各位置における送信波の送信時刻を時間の始まりとして時間シフトさせ、各位置における受信波の波形を表示した図である。図10の縦軸は電磁波を送出してから反射波が受信されるまでの遅延時間を表し、下に行くほど、遅延時間が長く、アンテナと埋設物4の距離が遠いことを示し、上に行くほど、遅延時間が短く、距離が近いことを示す。図10に破線で示すように、アンテナと埋設物4の距離が徐々に近くなり、その後遠くなるような場合、距離が一番近くなったところが埋設物4の真上であることを示し、この時の探知エリアにおける地中レーダ11の測定線5上の移動距離は距離測定部15によって測定されるため、埋設物4の真上の位置、すなわち、埋設位置が分かる。また、距離が一番近くなったところの距離は、埋設物4の地表面からの埋設深さを示す。したがって、埋設物4の概略の配置方向が予め分かっている場合は、埋設物4の上を横切るようにして、地中レーダ11を移動させて探知すると埋設物4の正確な埋設位置及び埋設深さを特定することができる。
【0036】
図9においては、配管等の埋設物4がどのような方向に延伸して埋設されているかが予め分かっている場所において、地中レーダ11を埋設物4と直交する方向の、測定線5に沿って移動する場合を説明したが、一般的に、埋設物4がどのような方向に延伸して埋設されているかについて分かっていない場合もある。このような場合において、埋設物4の正確な埋設位置を特定する場合は、地中レーダ11を直交する2方向に描かれた各測定線5に沿って移動させることにより、いずれかの線において地中レーダ11が埋設物4を横切るようにして、埋設物4の探知を行うとよい。
【0037】
上記記憶部17は、探知作業用シート1を探知エリアに敷設して、探知作業用シート1の測定線5に沿って地中レーダ11を移動させて埋設物4を探知する際に、読取部12によって位置情報媒体3から読み取った位置情報と、電磁波受信部14によって受信した電磁波に基づく受信波データと、距離測定部15によって得られた移動距離データとを関連付けて記憶するものである。本実施形態において、記憶部17は、後述するようにディスプレイ部18によって、各測定線5に沿って行われる測定毎に生成される二次元のBスコープ表示の画像データが、どこの位置の測定線5上のデータなのかが後で分かるように、Bスコープ表示の画像データと測定線5の位置情報とを関連付けて記憶するように構成されている。この測定線5の位置情報とは、測定線5の始端と終端の2次元座標上のアドレスで示した情報であり、例えば、β方向下から5番目の、α方向に描かれた測定線5の場合、その測定線5の位置情報は、(A−5〜J−5)となる。
【0038】
上記ディスプレイ部18は、埋設物4の探知結果等を画像表示するものである。ディスプレイ部18は、地中レーダ11を単一の測定線5に沿って一方向に移動させ、電磁波送信部13から電磁波を複数の位置で送出した場合に、受信アンテナ24が各位置において受信した電磁波の受信波データを記憶部17から読み出し、受信波データ内の時間データを各位置における送信波の送信時刻を時間の始まりとして時間シフトさせると共に、受信強度を濃淡で表示し、さらに、各受信波データと関連付けて記憶部17に記憶された移動距離データに基づいて位置シフト(地中レーダ11の移動方向へのシフト)させた一般的なBスコープ表示の画像データを、単一の測定線5に沿って行われる測定毎に生成する。ディスプレイ部18は、この画像データに基づいて各測定線5に沿って埋設物4の探知結果を画像表示する。ここで、図11は、図9と同様に、埋設物4を横切るように、地中レーダ11を移動させた場合に、ディスプレイ部18が表示するBスコープ表示の画像表示例を示す図である。図11においては、横軸は地中レーダ11の移動方向の距離を示し、縦軸は地中深さ(時間)を示す。なお、図11においては、図の簡略化のため、各位置において受信強度の一番高い箇所のみ表示し、他の箇所については省略して示している。
【0039】
次に、このように構成された地中レーダシステム10を用いて、埋設物4の埋設状況を調査して、路面等を掘削する作業の流れ及び地中レーダシステム10の動作を、図3及び図4に示すように、埋設物4として2本の配管が平行に埋設されている探知エリア内を調査する場合を例として、図3,図4,図12及び図13を参照して詳細に説明する。なお、下記の説明においては、調査前に埋設物4が図3に示すβ方向に延伸して埋設されていることが分かっているものとし、地中レーダ11を、探知エリア内でα方向の各測定線5に沿って移動させて探知する場合で説明する。
【0040】
まず、オペレータは、図3及び図4に示すように、探知エリア全体を網羅するように、探知作業用シート1を敷設する(STEP1)。
【0041】
次に、オペレータは、例えば、始端のアドレスが(A,1)で、終端のアドレスが(J,1)の測定線5の一辺の始端からこの一辺(以下、(A−1〜J−1)線という)に沿って地中レーダ11を移動できるように配置し、地中レーダ11の電源を入れる。測定準備ができたら、オペレータは、例えば、測定開始スイッチ等を押して、電磁波送信部13からの電磁波の送出を開始させると共に、距離測定部15による移動距離の測定動作を開始させ、この(A−1〜J−1)線に沿って地中レーダ11を一方向(図10の矢印α方向)に押して、(A−1〜J−1)線の終端まで移動させる。この移動の際、電磁波送信部13は、電磁波を複数の位置で地中に向けて送出し、電磁波受信部14は、電磁波送信部13から送出された電磁波(送信波)に基づいて反射された電磁波(受信波)を各位置で受信し、信号処理部16へ各受信波の信号を出力する。信号処理部16は、受信波の信号内の高調波ノイズを除去しノイズ除去後の受信波の信号を受信波データとして、記憶部17へ出力する。この受信波データは、受信された際に距離測定部15よって得られる移動距離データと、読取部12によって得られる位置情報と関連付けて記憶される。なお、読取部12は、地中レーダ11が位置情報媒体3の近傍に位置しているときしか位置情報を得ることはできないように、読取り可能な範囲が適宜設定されている。したがって、電磁波を受信して受信波データを得たときに、地中レーダ11の近傍に位置情報媒体3がない場合は、記憶部17は、単に受信波データと移動距離データとを関連付けて記憶する。そして、地中レーダ11が(A−1〜J−1)線の終端に到達すると、オペレータは、例えば、測定中断スイッチ等を押し、次の測定線5の始端、例えば、(A−2〜J−2)線の始端から(A−2〜J−2)線に沿って地中レーダ11を移動できるように配置し、(A−1〜J−1)線上での測定と同様にして測定する。以降、同様にして、各測定線(A−3〜J−3, A−4〜J−4,・・・A−10〜J−10)上の測定を行う(STEP2)。
【0042】
ここで、ディスプレイ部18は、測定線5に沿って行われる測定毎に、Bスコープ表示の画像データを生成し、記憶部17は、Bスコープ表示の各画像データと、測定線5の位置情報(例えば、β方向下から5番目の測定線5の場合、(A−5〜J−5))とを関連付けて記憶する。ディスプレイ部18は、この画像データに基づいて各測定線5上での埋設物4の探知結果を画像表示する。このBスコープ表示の画像は、例えば、外部のプリンター等を介して印刷される。そして、オペレータは、印刷された各Bスコープ表示の各画像を、図13に示すように、各測定線5の位置情報に基づいて、実際の測定線5が描かれている順に並べて整理し、探知結果を解析し埋設物4の埋設位置を特定する(STEP3)。
【0043】
そして、上記のように探知結果の解析(埋設位置の特定)が完了すると、オペレータは、例えば、探知作業用シート1を敷設した位置と探知エリアとの位置関係の基準となる基準物(例えば、自販機等)を定め、その基準物と探知作業用シート1との位置関係を記録した後、探知作業用シート1を撤去し、基準物を基準として埋設物の埋設位置を描いた図面等を添付した報告書を作成する。そして、掘削作業者は、その報告書をもとに、掘削エリア上に埋設位置をチョーク等によりマークする(STEP4)。最後に、掘削作業者は、路面等に描かれたマークに基づいて埋設物4の埋設位置を確認し、埋設物4を破損等しないようにして、掘削作業を行う(STEP5)。なお、埋設状況の調査作業と掘削作業が一連の作業として行われる場合等には、オペレータが、探知結果に基づき、掘削エリア上に埋設位置をチョーク等によりマークしてもよい。
【0044】
このような構成により、本実施形態における地中レーダシステム10によれば、測定線5に沿って地中レーダ11を移動させて埋設物4を探知する際に、測定線5の位置情報と受信波データと移動距離データとを関連付けて記憶することができるため、地中レーダ11を移動操作したときに得られる受信波データと移動距離データに基づいて生成されるBスコープ表示の画像データがどこの位置の線上のデータなのかが後で分かるような情報をメモするという作業も不要となる。また、探知作業用シート1を用いた構成であるため、低コストで位置情報を得ることができる。このようにして、オペレータの作業負荷の低減を低コストで実現可能な地中レーダシステム10を提供することができる。
【0045】
なお、上記実施形態において、移動距離測定部15は、オペレータによって測定開始スイッチ等が押された時に、地中レーダ11が位置する場所(受信アンテナ24の真下)を始点として移動距離の測定を開始するものとしたが、これに限らず、地中レーダ11が移動操作されたときに、読取部12によって最初に読込んだ位置情報に基づく位置を始点として移動距離の測定を開始するようにしてもよい。この場合、例えば、読取部12に各測定線5の両端の位置情報を予め記憶させておき、一方の端部の位置情報を読取ったあとに、他方の端部の位置情報を読取ったとき、その測定線5上の測定の終了をオペレータ等に通知可能に構成するとよい。これにより、無駄な移動操作を減らすことができる。このように、各測定線5の両端に設けた位置情報媒体3を各測定の開始及び終了の情報を提供するものとして用いてもよい。
【0046】
なお、上記実施形態においては、地中レーダシステム10は、図1に示した第1実施形態の探知作業用シート1を適用した場合で説明したが、これに限らず、前述したいづれの構成の探知作業用シート1も適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 探知作業用シート
2 シート部材
3 位置情報媒体
4 埋設物
5 測定線
10 地中レーダシステム
11 地中レーダ
12 読取部
13 電磁波送信部
14 電磁波受信部
15 距離測定部
17 記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備えた地中レーダを移動させるための測定線が格子状に描かれたシート部材の各測定線の少なくとも一端に、その点の位置情報を有する位置情報媒体を設けて構成し、前記地中レーダに備えた読取部によって前記位置情報を読取らせるように構成したことを特徴とする探知作業用シート。
【請求項2】
前記位置情報媒体は、前記シート部材の同一辺側の一端にのみ設けることを特徴とする請求項1に記載の探知作業用シート。
【請求項3】
前記位置情報媒体は、前記各測定線の両端に設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の探知作業用シート。
【請求項4】
前記位置情報媒体は、前記各測定線の交点にそれぞれ設けることを特徴とする請求項1に記載の探知作業用シート。
【請求項5】
前記位置情報媒体は、前記各測定線の交点間にも設けることを特徴とする請求項4に記載の探知作業用シート。
【請求項6】
前記位置情報媒体は、前記位置情報を光学的に前記読取部により読取り可能に、印刷されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の探知作業用シート。
【請求項7】
前記位置情報媒体は、前記位置情報を2次元コード化したパターンで印刷されたものであることを特徴とする請求項6に記載の探知作業用シート。
【請求項8】
前記位置情報媒体は、前記位置情報を無線により読取り可能な無線媒体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の探知作業用シート。
【請求項9】
前記シート部材は、透明であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の探知作業用シート。
【請求項10】
前記測定線は、前記透明のシート部材の表裏で、異なる色で識別可能に描かれていることを特徴とする請求項9に記載の探知作業用シート。
【請求項11】
地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と、送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備えた地中レーダを有し、該電磁波受信部によって受信された電磁波に基づく受信波データから地中に埋設された埋設物を探知する地中レーダシステムであって、
前記請求項1〜10のいずれか一つに記載の探知作業用シートと、
前記地中レーダに取り付けられ、該地中レーダの移動距離を測定する距離測定部と、
前記地中レーダに取り付けられ、前記探知作業用シートに設けた前記位置情報媒体の前記位置情報を読取り可能な読取部と、
前記探知作業用シートを探知エリアに敷設して、前記探知作業用シートの前記測定線に沿って前記地中レーダを移動させて、前記読取部によって前記位置情報媒体から読み取った前記位置情報と、前記電磁波受信部によって受信した電磁波に基づく受信波データと、前記距離測定部によって得た移動距離データとを関連付けて記憶する記憶部と、
を備えたことを特徴とする地中レーダシステム。
【請求項1】
地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備えた地中レーダを移動させるための測定線が格子状に描かれたシート部材の各測定線の少なくとも一端に、その点の位置情報を有する位置情報媒体を設けて構成し、前記地中レーダに備えた読取部によって前記位置情報を読取らせるように構成したことを特徴とする探知作業用シート。
【請求項2】
前記位置情報媒体は、前記シート部材の同一辺側の一端にのみ設けることを特徴とする請求項1に記載の探知作業用シート。
【請求項3】
前記位置情報媒体は、前記各測定線の両端に設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の探知作業用シート。
【請求項4】
前記位置情報媒体は、前記各測定線の交点にそれぞれ設けることを特徴とする請求項1に記載の探知作業用シート。
【請求項5】
前記位置情報媒体は、前記各測定線の交点間にも設けることを特徴とする請求項4に記載の探知作業用シート。
【請求項6】
前記位置情報媒体は、前記位置情報を光学的に前記読取部により読取り可能に、印刷されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の探知作業用シート。
【請求項7】
前記位置情報媒体は、前記位置情報を2次元コード化したパターンで印刷されたものであることを特徴とする請求項6に記載の探知作業用シート。
【請求項8】
前記位置情報媒体は、前記位置情報を無線により読取り可能な無線媒体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の探知作業用シート。
【請求項9】
前記シート部材は、透明であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の探知作業用シート。
【請求項10】
前記測定線は、前記透明のシート部材の表裏で、異なる色で識別可能に描かれていることを特徴とする請求項9に記載の探知作業用シート。
【請求項11】
地中に向けて電磁波を送出する電磁波送信部と、送出された該電磁波の反射波を受信する電磁波受信部とを備えた地中レーダを有し、該電磁波受信部によって受信された電磁波に基づく受信波データから地中に埋設された埋設物を探知する地中レーダシステムであって、
前記請求項1〜10のいずれか一つに記載の探知作業用シートと、
前記地中レーダに取り付けられ、該地中レーダの移動距離を測定する距離測定部と、
前記地中レーダに取り付けられ、前記探知作業用シートに設けた前記位置情報媒体の前記位置情報を読取り可能な読取部と、
前記探知作業用シートを探知エリアに敷設して、前記探知作業用シートの前記測定線に沿って前記地中レーダを移動させて、前記読取部によって前記位置情報媒体から読み取った前記位置情報と、前記電磁波受信部によって受信した電磁波に基づく受信波データと、前記距離測定部によって得た移動距離データとを関連付けて記憶する記憶部と、
を備えたことを特徴とする地中レーダシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−184939(P2012−184939A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46313(P2011−46313)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
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