説明

探索支援装置および被探索者報知装置

【課題】施設内において保護者とはぐれた子供の探索を効率的に行う。
【解決手段】被探索者報知装置40−Nは、保護者に付き添われて施設内に入場する子供に1つずつ貸与され、そのIDが親に知らされる。保護者は、子供の行方を見失うと、迷子センターを訪れ、迷子センターに備え付けられた探索支援装置20にそのIDを入力する。探索支援装置20は、入力されたIDを施設内に流すBGMへ埋め込む。各被探索者報知装置40−Nは、自らのID記憶メモリに記憶されたIDと一致するIDがマイクロホンの出力信号に埋め込まれているとき、LEDを発光させる。LEDが発光している被探索者報知装置40−Nの周りに居合わせた係員は、その被探索者報知装置40−Nを装着した子供を保護し、保護者と再会させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迷子などの探索に好適な探索支援装置および被探索者報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家族連れが集まるアミューズメントパークやショッピングモールなどの施設には迷子センターが設置されることが多い。迷子センターは、迷子になった子供とその保護者とを再会させるサービスを提供する。施設内ではぐれた子供とその保護者のうち一方が迷子センターを訪れると、迷子センターの係員は、場内アナウンスを通じて他方をセンターまで呼び出し、両者を再会させる。特許文献1には、施設内において迷子になった子供の探索を支援する発明の開示がある。同文献に開示された迷子監視システムは、施設内に入場する子供に携帯させる発信装置と施設内の各所に備え付けられる受信装置とを有する。発信装置は、各々に固有のIDを赤外線信号として発信する。受信装置は、自らに向けて発せられた赤外線信号を受信し、受信した赤外線信号から復調したIDを迷子センターのコンピュータへ伝送する。保護者とはぐれた子供が自らの発信装置からIDの赤外線信号を発信すると、その赤外線信号を受信した受信装置の設置位置が迷子センターのコンピュータに表示される。よって、このコンピュータの表示内容を基に、迷子になった子供がどの受信装置の設置位置の周辺にいるかを突き止めることができる。
【特許文献1】特開平10−124781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムの場合、迷子になった子供が自らの送信装置を操作してIDを発信させるというアクションを起こさない限り、その所在を突き止めることができない。よって、物事を理解したり判断する能力が未発達な幼児などの探索には不向きであった。また、このシステムの場合、施設内に多くの受信装置を設置しておかねばならず、その導入にコストがかかるという問題があった。
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、施設内において保護者とはぐれた子供の探索を効率的に行えるような仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、音信号を入力する音信号入力手段と、被探索者の識別子を入力する識別子入力手段と、前記音信号入力手段により入力された音信号に前記識別子入力手段により入力された識別子を埋め込む埋込手段と、前記識別子が埋め込まれた音信号を音として放音する放音手段とを備える探索支援装置を提供する。
また、この発明は、当該被探索者報知装置に固有の識別子を記憶するメモリと、発光手段と、音を収音してその音信号を出力する収音手段と、前記収音手段から出力された音信号に埋め込まれている識別子と前記メモリに記憶された識別子とが一致するとき、前記発光手段を発光させる報知制御手段とを備える被探索者報知装置を提供する。
ここで、いずれかの被探索者報知装置の識別子が探索支援装置に入力されると、入力された識別子を埋め込んだ音信号が探索支援装置から出力される。被探索者報知装置は、探索支援装置から出力された音信号に埋め込まれている識別子と自らのメモリの識別子とが一致したことをトリガーとして発光手段を発光させる。よって、探索対象となった被探索者報知装置の識別子を探索支援装置に入力してその被探索者報知装置を発光させることにより、その所在を周囲に知らせ、係員などによる保護を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、この発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる探索支援装置20および被探索者報知装置40−k(k=1〜N:以下、「被探索者報知装置40−k」と総称する)を含む迷子探索システムの全体構成図である。このシステムは、アミューズメントパークなどの施設内において保護者とはぐれ探索対象となった子供の探索を支援するものである。
図1に示すように、このシステムは、スピーカ10−1,10−2,10−3、探索支援装置20、および被探索者報知装置40−k(k=1〜N)を有する。スピーカ10−1,10−2,10−3は、BGM(Back Ground Music)の放送用として施設内に設置されたものである。探索支援装置20は、施設内の迷子センターに設置される。被探索者報知装置40−kは、バッチを模した形状をなしている。この被探索者報知装置40−kは、保護者に付き添われて施設へ入場する子供に1つずつ貸与される。また、その際、保護者にはIDが知らされる。このIDは、貸与される被探索者報知装置40−kのメモリ(後述)に記憶済みのものである。
【0006】
図2(A)は、探索支援装置20の構成を示すブロック図である。図2(A)において、入力操作部21は、IDの各文字を1つずつ入力するタッチキーである。
入力インターフェース22は、楽曲再生プレーヤと接続される。この入力インターフェース22からは、スピーカ10−1,10−2,10−3から施設内に流し続けるBGMの音波形を示すデジタル信号、より詳細には、その音波形をPCM(Pulse Code Modulation)方式に従ってサンプリングしたデジタル信号(以下、「音波形サンプル」という)が入力される。
【0007】
ID埋込部23は、入力操作部21から入力されるIDを入力インターフェース22から入力される音波形サンプル列へ埋め込む役割を果たす。ID埋込部23は、FFT(Finite Fourier Transform)部24と、ID変換部25と、加算器26と、逆FFT部27とにより構成される。
FFT部24は、入力インターフェース22から入力される音波形サンプル列を所定個数の音波形サンプルからなるフレームに区切り、フレーム毎にFFT処理を施し、スペクトルデータを出力する。このスペクトルデータは、1フレーム分の音波形のパワースペクトルを示すデータである。
【0008】
ID変換部25は、入力操作部21によってIDが入力されると、以後、その入力されたIDを以下に示す変換ルールに従って変換したスペクトルデータを出力する。
a.図3に例示するように、可聴帯域から予め選定しておいた複数の周波数(図3の例ではf1〜f8)の各々を、変換対象IDを示すバイナリデータの各ビットに1つずつ割り当てる。
b.変換対象IDを示すバイナリデータにおいて「0」になっているビットに割り当てた周波数のパワースペクトルを0にし、「1」になっているビットに割り当てた周波数のパワースペクトルを所定値vにする。
【0009】
加算器26は、ID変換部25からスペクトルデータが出力される前は、FFT部24から出力されるスペクトルデータをそのまま出力する。そして、ID変換部25からスペクトルデータが出力されると、以後、FFT部24から順に出力される各フレームのスペクトルデータにID変換部25から出力されたスペクトルデータを加算して出力する。
逆FFT部27は、加算器26の出力信号に逆FFT処理を施し、その処理結果である音波形サンプル列を出力する。
DAC(Digital to Analog Converter)28は、逆FFT部27から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換して出力する。アンプ29は、DAC28の出力信号を増幅する。
出力インターフェース30は、施設内の各スピーカ10−1,10−2,10−3と接続される。この出力インターフェース30は、アンプ29の出力信号をそれらのスピーカ10−1,10−2,10−3へ出力する。
以上説明した構成要素のうち、入力インターフェース22は、「音信号を入力する音信号入力手段」を構成し、入力操作部21は、「被探索者の識別子を入力する識別子入力手段」を構成し、ID埋込部23は、「音信号に識別子を埋め込む埋込手段」を構成し、出力インターフェース30、および、スピーカ10−1,10−2,10−3は、「識別子が埋め込まれた音信号を音として放音する放音手段」を構成する。
【0010】
図2(B)は、被探索者報知装置40−kの構成を示すブロック図である。図2(B)において、ID記憶メモリ41は、各々に固有のIDを示すバイナリデータを記憶した読み出し専用メモリである。太陽電池42は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換して装置各部へ供給する。
マイクロホン43は、施設内のスピーカ10−1,10−2,10−3から放音される音を収音してその音波形を示すアナログ信号を出力し、アンプ44は、マイクロホン43の出力信号を増幅する。
ADC(Analog to Digital Converter)45は、アンプ44から出力されるアナログ信号をデジタル形式の音波形サンプルに変換して出力する。
【0011】
報知制御部46は、ID記憶メモリ41に記憶されたIDと一致するIDがADC45の出力信号に埋め込まれている場合に、LED51を発光させる役割を果たす。報知制御部46は、フィルタ47、FFT部48、判定部49、および発光制御部50から構成される。
フィルタ47は、ADC45から出力されるデジタル信号の可聴帯域の周波数成分を通過させる。FFT部48は、フィルタ47を通過したデジタル信号にFFT処理を施し、その処理結果であるスペクトルデータを出力する。
判定部49は、ID記憶メモリ41に記憶されたIDと一致するIDがADC45の出力信号に埋め込まれているか否かを判定する。具体的には、この判定部49は、ID記憶メモリ41のIDを探索支援装置20のID変換部25のものと同じ変換ルールに従ってスペクトルデータに変換する。そして、FFT部48から1フレーム分のスペクトルデータが出力される毎に、その時点までにFFT部48から出力された所定フレーム数分のスペクトルデータと、ID記憶メモリ41内のIDから得られたスペクトルデータを所定フレーム数分だけコピーして並べたものとの相関係数を求める。ここで、BGMのスペクトルは時々刻々と変化するのに対し、BGMに埋め込まれたIDのスペクトルはフレームが変わっても変化しない。従って、マイクロホン43が収音した音に埋め込まれたIDとID記憶メモリ41内のIDとが同じである場合には、所定フレーム数に亙ってFFT部48が出力するスペクトルデータとID記憶メモリ41内のIDから得られたスペクトルデータとの相関係数が大きな値となる。そこで、判定部49は、この相関係数を閾値と比較し、相関係数が閾値を上回った場合には、マイクロホン43が収音した音に埋め込まれたIDとID記憶メモリ41のIDが一致していると判定する。
発光制御部50は、ID記憶メモリ41に記憶されたIDと一致するIDがADC45の出力信号に埋め込まれていると判定部49が判定した以降、LED(Light Emitting Diode)51を発光させる。
【0012】
以上の各構成要素のうち、ID記憶メモリ41は、「当該被探索者報知装置に固有の識別子を記憶するメモリ」を構成し、LED51は、「発光手段」を構成し、マイクロホン43は、「音を収音してその音信号を出力する収音手段」を構成し、報知制御部46は、「出力された音信号に埋め込まれた識別子とメモリに記憶された識別子とが一致するとき、発光手段を発光させる報知制御手段」を構成する。
【0013】
次に、本実施形態の動作を説明する。本実施形態においては、探索支援装置20の入力インターフェース22から入力されるBGMの音波形サンプル列が、FFT部24によるFFT処理、逆FFT部27による逆FFT処理、DAC28によるデジタル/アナログ変換、およびアンプ29による増幅を経てスピーカ10−1,10−2,10−3へ出力され、そのBGMの音がスピーカ10−1,10−2,10−3から放音される。
そして、子供の行方を見失った保護者がその探索を申し入れるために迷子センターを訪れ、入場時に知らされていたIDを入力操作部21から入力すると、ID変換部25がそのIDをスペクトルデータに変換する。そして、加算器26は、FFT部24から出力されるスペクトルデータの各々にそのID変換部25から出力されるスペクトルデータを加算した上で出力する。これにより、以後、継続的に、IDを変換した周波数成分を含むBGMがスピーカ10−1,10−2,10−3から施設内に放音される。
このスピーカ10−1,10−2,10−3から施設内へ流れ続けるBGMの音は、被探索者報知装置40−kのマイクロホン43によって収音される。そして、被探索者報知装置40−kのマイクロホン43から出力されるアナログ信号は、アンプ44による増幅、ADC45によるアナログ/デジタル変換、フィルタ47による可聴帯域の周波数成分の通過、およびFFT部48によるFFT処理を経て各々の判定部49へ出力され、その判定に供される。各被探索者報知装置40−kのうちのある被探索者報知装置40−kの判定部49が、ID記憶メモリ41のIDと一致するIDがADC45の出力信号に埋め込まれていると判定した場合、その被探索者報知装置40−kの発光制御部50はLED51を発光させる。
そして、LED51が発光している被探索者報知装置40−kの周囲に居合わせた係員らは、その被探索者報知装置40−kを身につけている子供を保護し、迷子センターまで送り届ける。これにより、その子供は保護者と再会する。
【0014】
以上説明したように、本実施形態においては、探索支援装置20の入力操作部21からIDを入力すると、そのIDを変換した周波数成分を含むBGMの音がスピーカ10−1,10−2,10−3から放音され、同じIDをID記憶メモリ41に記憶した被探索者報知装置40−kのLED51が発光する。よって、保護者が探索を申し入れた子供の所在をその周りに居合わせた係員らに知らせ、係員らによるその子供の保護を促すことができる。
また、本実施形態においては、探索支援装置20からスピーカ10−1,10−2,10−3を介して施設内に流れる音により、被探索者報知装置40−kに対してそのLED51の発光のトリガーが与えられる。よって、探索の申し入れにかかる子供がボタンを押すなどの簡単な操作さえ理解できない幼児であっても、その所在を係員らに知らせることができる。
【0015】
(第2実施形態)
以下、この発明の第2実施形態を説明する。
本実施形態における探索支援装置20Aは、スピーカ10−1,10−2,10−3を施設内におけるエリアA,B,Cにそれぞれ設置し、それらのスピーカ10−1,10−2,10−3の各々からエリア別のBGMを流し続ける。また、各エリアA,B,CにおいてBGMをマイクロホン43により収音した被探索者報知装置40A−kは、そのBGMに埋め込まれているIDと自らのID記憶メモリ41のIDとが一致すると、以後のマイクロホン43の出力信号により搬送波(キャリア)を変調した無線信号を発信する。そして、その被探索者報知装置40A−kが発信した無線信号は探索支援装置20Aによって受信され、受信した無線信号を復調して得られるエリア別のBGMの音が探索支援装置20Aのスピーカ32から放音される。
【0016】
図4(A)は、探索支援装置20Aの構成を示すブロック図である。
図4(A)に示すように、この実施形態における探索支援装置20Aは、入力インターフェース22−m(m=1〜3)、FFT部24−m(m=1〜3)、加算器26−m(m=1〜3)、逆FFT部27−m(m=1〜3)、DAC28−m(m=1〜3)、アンプ29−m(m=1〜3)、出力インターフェース30−m(m=1〜3)、およびID変換部25を有する他、無線受信機31とスピーカ32を有する。
【0017】
入力インターフェース22−1にはエリアA用のBGMの音波形サンプル列が入力される。その音波形サンプル列は、FFT部24−1によるFFT処理、逆FFT部27−1による逆FFT処理、DAC28−1によるデジタル/アナログ変換、およびアンプ29−1による増幅を経てエリアAのスピーカ10−1へ出力される。
入力インターフェース22−2にはエリアB用のBGMの音波形サンプル列が入力される。その音波形サンプル列は、FFT部24−2によるFFT処理、逆FFT部27−2による逆FFT処理、DAC28−2によるデジタル/アナログ変換、およびアンプ29−2による増幅を経てエリアBのスピーカ10−2へ出力される。
入力インターフェース22−3にはエリアC用のBGMの音波形サンプル列が入力される。その音波形サンプル列は、FFT部24−3によるFFT処理、逆FFT部27−3による逆FFT処理、DAC28−3によるデジタル/アナログ変換、およびアンプ29−3による増幅を経てエリアCのスピーカ10−3へ出力される。
【0018】
ID変換部25は、入力操作部21によってIDが入力されると、以後、その入力されたIDを第1実施形態のものと同じ変換ルールに従って変換したスペクトルデータを出力する。
加算器26−m(m=1〜3)は、ID変換部25から出力されるスペクトルデータを、FFT部24−m(m=1〜3)から出力されるスペクトルデータに加算して出力する。
無線受信機31は、アンテナ(不図示)により受信される無線信号を復調し、スピーカ32はその復調により得られる音を放音する。
【0019】
図4(B)は、被探索者報知装置40A−kの構成を示すブロック図である。この被探索者報知装置40A−kは、ID記憶メモリ41、太陽電池42、マイクロホン43、アンプ44、ADC45、報知制御部46、LED51、および、無線送信機52を有する。無線送信機52を除く各部の役割は、第1実施形態のものと同様である。無線送信機52は、ID記憶メモリ41に記憶されたIDと一致するIDがADC45の出力信号に埋め込まれていると判定部49が判定した場合、以後のADC45の出力信号により搬送波(キャリア)を変調した無線信号をアンテナ(不図示)から発信する。
【0020】
以上説明したように、本実施形態にかかる被探索者報知装置40A−kは、施設内に流れるエリア別のBGMをマイクロホン43により収音し、そのマイクロホン43の出力信号に埋め込まれているIDとID記憶メモリ41のIDとが一致すると判定すると、LED51を発光させるとともに、以後のマイクロホン43の収音内容を無線信号として発信する。すると、探索支援装置20Aは、その被探索者報知装置40A−kから受信した無線信号を復調して得たエリア別BGMの音をスピーカ32から放音する。よって、探索支援装置20Aの入力操作部21からIDを入力した保護者は、その後に探索支援装置20Aのスピーカ32から放音されるBGMを聴取することにより、行方を見失った子供がどのエリアにいるのかを把握することができる。
【0021】
(他の実施形態)
以上、この発明の第1実施形態および第2実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば、以下の通りである。
(1)上記第1および第2実施形態において、被探索者報知装置40−k,40A−kのLED51の発光色を子供の好みに応じてカスタマイズできるようにしてもよい。
(2)上記第1および第2実施形態において、被探索者報知装置40−k,40A−kのID記憶メモリ41を書き換え可能なメモリとしてもよい。この実施形態にかかる被探索者報知装置40−k,40A−kは、親子連れが予め購入しておいた被探索者報知装置40−k,40A−kを持参して施設へ入場する場合に、その施設の中にいる間だけ有効なIDをID記憶メモリ41へ書き込み、退場する際にそのIDを消去する、という態様で使用するとよい。また、被探索者報知装置40−k,40A−kを未だ購入していない親子連れが施設へ入場する場合に、ID記憶メモリ41にIDを記憶した被探索者報知装置40−k,40A−kをその子供に渡し、その親子連れが退場する際は、IDの消去を条件にその被探索者報知装置40−k,40A−kの持ち帰りを許容する、という態様で使用してもよい。これらの態様によると、入退場口の係員は、親子連れが施設に入場するたびに被探索者報知装置40−k,40A−kを貸与し、退場のたびにその返却を促す、という煩わしい手続きを強いられずに済む。
(3)上記第1および第2実施形態では、被探索者報知装置40−k,40A−kの判定部49が、ID記憶メモリ41に記憶されたIDとADC45の出力信号に埋め込まれたIDとが一致すると判定した場合、その被探索者報知装置40−k,40A−kの発光制御部50はLED51を発光させた。これに加えて、その被探索者報知装置40−k,40A−kを装着した子供を落ち着かせる音声やその子供を迷子センターへ誘導するような音声を発音させてもよい。この実施形態を実現させるための手段は、種々の態様が考えられる。たとえば、予め録音されたメッセージ音のオーディオ信号を記憶したメモリとスピーカとを被探索者報知装置40−k,40A−kに搭載し、ID記憶メモリ41に記憶されたIDとADC45の出力信号に埋め込まれたIDとが一致すると判定した場合に、そのメモリのオーディオ信号をスピーカから音として放音するとよい。
(4)上記第1および第2実施形態においては、施設内で保護者とはぐれた子供の探索に本発明を適用した。しかし、徘徊老人の探索に本発明を適用してもよい。
(5)上記第1および第2実施形態では、探索支援装置20,20Aが入力インターフェース22を有し、スピーカ10−1,10−2,10−3から施設内に流すBGMの音波形サンプル列がこの入力インターフェース22を介して楽曲再生プレーヤから入力された。しかし、BGMの楽曲のオーディオファイルを記憶する記憶装置を探索支援装置20,20Aに内蔵させ、デコーダによりそのオーディオファイルを復号化した音波形サンプル列にIDを埋め込むようにしてもよい。
(6)上記第1および第2実施形態の探索支援装置20,20Aにおいて、入力インターフェース22から入力されるBGMの音波形サンプル列を周波数成分に変換することなく、入力操作部21から入力されるIDを埋め込んでもよい。そのような埋め込みを実現する手段としては種々の態様が考えられる。たとえば、入力操作部21からIDが入力されると、そのIDを人が聞き取りにくい帯域の周波数成分として含む時間波形の音波形サンプルを取得し、入力インターフェース22から入力される音波形サンプルとミキシングして出力するとよい。
(7)上記第1および第2実施形態の被探索者報知装置40−k,40A−kにおいて、ADC45から出力される音波形サンプル列を周波数成分に変換することなく、その音波形サンプル列に埋め込まれたIDとID記憶メモリ41に記憶されたIDとの一致の有無を判定してもよい。そのような判定を実現する手段としては種々の態様が考えられる。たとえば、ADC45の出力信号をフィルタに入力することにより、IDのバイナリデータの各ビットと予め対応づけられた周波数の成分をその出力信号から抽出し、それらの成分の各々のレベルと閾値とを1つずつ比較する。その上で、閾値を上回った比較結果を「1」にするとともに、閾値を下回った比較結果を「0」にし、それらの比較結果を並べたバイナリデータとID記憶メモリ41に記憶されたIDのバイナリデータとが一致するか否か判定する。
(7)第2実施形態にかかる探索支援装置20Aは、入力インターフェース22、FFT部24、加算器26、逆FFT部27、DAC28、アンプ29、および出力インターフェース30をそれぞれ3つずつ有し、その入力インターフェース22の各々から異なるBGMの音波形サンプル列が入力された。しかし、入力インターフェース22、FFT部24、加算器26、逆FFT部27、DAC28、アンプ29、および出力インターフェース30のセットを3つより多くし、または、少なくした上で、それらのセットの入力インターフェース22に異なるBGMの音波形サンプル列を入力してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態および第2実施形態にかかる迷子探索システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる迷子探索システムにおける探索支援装置および被探索者報知装置の各々の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態および第2実施形態の変換ルールに従ったバイナリデータの変換結果の一例を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる迷子探索システムにおける探索支援装置および被探索者報知装置の各々の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
10,32…スピーカ、20…探索支援装置、21…入力操作部、22…入力インターフェース、23…ID埋込部、24,48…FFT部、25…ID変換部、26…加算器、27…逆FFT部、28…DAC、30…出力インターフェース、31…無線受信機、40…被探索者報知装置、41…ID記憶メモリ、42…太陽電池、43…マイクロホン、45…ADC、46…報知制御部、47…フィルタ、49…判定部、50…発光制御部、51…LED、52…無線送信機。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
音信号を入力する音信号入力手段と、
被探索者の識別子を入力する識別子入力手段と、
前記音信号入力手段により入力された音信号に前記識別子入力手段により入力された識別子を埋め込む埋込手段と、
前記識別子が埋め込まれた音信号を音として放音する放音手段と
を備えることを特徴とする探索支援装置。
【請求項2】
前記埋込手段は、
前記音信号入力手段により入力された音信号にフーリエ変換処理を施すフーリエ変換手段と、
前記識別子入力手段により入力された識別子を所定の変換ルールに従って周波数成分に変換する識別子変換手段と、
前記フーリエ変換手段による処理結果に前記識別子変換手段による変換結果を加算する加算手段と、
前記加算手段による加算結果に逆フーリエ変換処理を施すことにより、前記識別子が埋め込まれた音信号を取得する逆フーリエ変換手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の探索支援装置。
【請求項3】
当該被探索者報知装置に固有の識別子を記憶するメモリと、
発光手段と、
音を収音してその音信号を出力する収音手段と、
前記収音手段から出力された音信号に埋め込まれている識別子と前記メモリに記憶された識別子とが一致するとき、前記発光手段を発光させる報知制御手段と
を備えることを特徴とする被探索者報知装置。
【請求項4】
前記報知制御手段は、
前記収音手段から出力された音信号にフーリエ変換処理を施すフーリエ変換手段と、
前記メモリに記憶された識別子を所定の変換ルールに従って周波数成分に変換し、その変換結果として得られた各周波数成分のパワースペクトルと前記フーリエ変換処理の処理結果として得られた各周波数成分のパワースペクトルの相関係数を算出し、算出した相関係数が閾値より大きい場合に、音信号に埋め込まれた識別子と前記メモリに記憶された識別子とが一致すると判定する判定手段と
を有することを特徴とする請求項3に記載の被探索者報知装置。
【請求項5】
前記判定手段によって音信号に埋め込まれた識別子と前記メモリに記憶された識別子とが一致すると判定されると、以後に前記収音手段から出力される音信号を無線信号として送信する送信手段
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の被探索者報知装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−181266(P2009−181266A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18760(P2008−18760)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】