説明

探針の形状計測方法、試料の形状計測方法、及びプローブ顕微鏡

【課題】精度よく探針の形状を計測することができるようにする。
【解決手段】プローブを基準試料の表面に対して走査させてAFM画像を取得し、AFM画像に対して傾斜補正を行い、基準試料を表わすAFM画像を取得する。そして、基準試料の頂面のエッジを抽出し、抽出されたエッジが表わす頂面の重心を算出して、算出した重心を、基準試料の頂面の中心として取得する。AFM画像から、プロファイルを表わす曲線を全周にわたって抽出し、抽出された曲線の端部が、頂面の中心に一致するように、曲線を平行移動する。これによって、基準試料の外形形状を表わすデータを差し引いて、基準試料の部分を除いて、プローブの外形形状を表わすAFM画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探針の形状計測方法、試料の形状計測方法、及びプローブ顕微鏡に係り、特に、片持ち張り(カンチレバー)の探針の形状を計測する探針の形状計測方法、試料の形状を計測する試料の形状計測方法、及びプローブ顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原子間力顕微鏡に代表されるプローブ顕微鏡において、計測される形状は、用いる探針の形状に影響される。探針の形状には、開き角が少なくとも数度ある。この探針の開き角は、電子顕微鏡の開き角に比べて非常に大きいため、計測される形状において、探針の形状による影響を無視することができない。また、プローブ顕微鏡は、3次元形状を計測可能であることが特徴である。
【0003】
また、探針の形状が数度の開き角を持ち、また、探針の先端が有限の曲率半径を持つことから、急峻な構造等の計測では、正確な計測結果を取得することが困難となる。
【0004】
そこで、プローブ顕微鏡の探針の形状を補正して、試料の形状を計測することが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献9)。
【特許文献1】特許第3280525号
【特許文献2】特開平5−312506
【特許文献3】特開平7−198372
【特許文献4】特開平9−49850
【特許文献5】特開2001−165844
【特許文献6】特開2001−208669
【特許文献7】特開2004−264039
【特許文献8】特開2006−308313
【特許文献9】特開2007−78679
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜特許文献9に記載の技術では、3次元的に探針の形状を計測していないため、精度よく探針の形状を計測することができない、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、精度よく探針の形状を計測することができる探針の形状計測方法、試料の形状計測方法、及びプローブ顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために第1の発明に係るプローブ顕微鏡は、先鋭化した探針が端部に設けられたカンチレバーを含み、前記探針と試料の表面との間に原子間力が作用するように前記探針を前記試料の表面に対して走査して、前記試料の外形形状を計測するプローブ顕微鏡であって、基準試料として円柱部材あるいは四角柱部材の一つあるいは二つ以上を設けたことを特徴としている。
【0008】
第1の発明に係るプローブ顕微鏡によれば、探針と基準試料の表面との間に原子間力が作用するように円柱部材あるいは四角柱部材である基準試料の表面に対して走査して、基準試料の外形形状を計測する。そして、計測して得られた基準試料の外形形状を表わすデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、探針の外形形状を計測する。
【0009】
このように、円柱部材あるいは四角柱部材の基準試料を用いて計測して得られたデータから、探針の外形形状を計測することにより、精度よく探針の形状を計測することができる。
【0010】
第1の発明に係るプローブ顕微鏡は、探針の外形形状を計測する探針計測手段を更に含むことができる。
【0011】
また、第1の発明に係るプローブ顕微鏡は、探針の外形形状を除くように補正してプローブ顕微鏡像を取得する補正手段を更に含むことができる。これによって、探針の外形形状を除くように補正して、プローブ顕微鏡像を取得することにより、精度よく試料の形状を計測することができる。
【0012】
第2の発明に係る探針の形状計測方法は、先鋭化した探針が端部に設けられたカンチレバーを含み、前記探針と試料の表面との間に原子間力が作用するように前記探針を前記試料の表面に対して走査して、前記試料の外形形状を計測するプローブ顕微鏡の探針の形状計測方法であって、柱状部材で形成された基準試料の外形形状を計測し、前記計測して得られた前記基準試料の外形形状を表わすデータから、前記基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、前記探針の外形形状を計測することを特徴としている。
【0013】
第2の発明に係る探針の形状計測方法によれば、探針と基準試料の表面との間に原子間力が作用するように探針を基準試料の表面に対して走査して、基準試料の外形形状を計測する。そして、計測して得られた基準試料の外形形状を表わすデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、探針の外形形状を計測する。
【0014】
このように、柱状の基準試料を用いて計測して得られたデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、探針の外形形状を計測することにより、精度よく探針の形状を計測することができる。
【0015】
第3の発明に係る試料の形状計測方法は、先鋭化した探針が端部に設けられたカンチレバーを含み、前記探針と試料の表面との間に原子間力が作用するように前記探針を前記試料の表面に対して走査して、前記試料の外形形状を計測するプローブ顕微鏡の試料の形状計測方法であって、計測して得られた基準試料の外形形状を表わすデータから、前記基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して得られた前記探針の外形形状を表わすデータを記憶するステップと、計測対象の試料の外形形状を計測するステップと、前記記憶された前記探針の外形形状を表わすデータを用いて、前記計測して得られた前記計測対象の試料の外形形状を表わすデータを補正するステップと、を備えている。
【0016】
第3の発明に係る試料の形状計測方法によれば、計測して得られた基準試料の外形形状を表わすデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して得られた探針の外形形状を表わすデータを記憶する。そして、探針と計測対象の試料の表面との間に原子間力が作用するように探針を計測対象の試料の表面に対して走査して、計測対象の試料の外形形状を計測する。記憶された探針の外形形状を表わすデータを用いて、計測して得られた計測対象の試料の外形形状を表わすデータを補正する。
【0017】
このように、柱状の基準試料を用いて計測して得られたデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、精度よく計測された探針の外形形状を用いて、計測対象の試料の外形形状を表わすデータを補正することにより、精度よく試料の形状を計測することができる。
【0018】
第4の発明に係る試料の形状計測方法は、探針の外形形状を表わすデータを記憶した後に、基準試料の外形形状を計測するステップと、記憶された探針の外形形状を表わすデータを用いて、計測して得られた基準試料の外形形状を表わすデータを補正するステップと、補正された基準試料の外形形状を表わすデータと、既に求められた基準試料の外形形状を表わすデータとを比較して、探針の外形形状を評価するステップとを更に備えている。これによって、探針の外形形状を評価して、探針の形状変化を監視することができる。
【0019】
第4の発明に係るプローブ顕微鏡は、先鋭化した探針が端部に設けられたカンチレバーの前記探針を、前記探針と柱状部材で形成された基準試料の表面との間に原子間力が作用するように、前記基準試料の表面に対して走査して、前記基準試料の外形形状を計測する基準試料計測手段と、前記基準試料計測手段によって計測して得られた前記基準試料の外形形状を表わすデータから、前記基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、前記探針の外形形状を計測する探針計測手段とを含んで構成されている。
【0020】
第5の発明に係るプローブ顕微鏡によれば、基準試料計測手段によって、カンチレバーの探針を、探針と基準試料の表面との間に原子間力が作用するように、基準試料の表面に対して走査して、基準試料の外形形状を計測する。
【0021】
そして、探針計測手段によって、基準試料計測手段によって計測して得られた基準試料の外形形状を表わすデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、探針の外形形状を計測する。
【0022】
このように、柱状の基準試料を用いて計測して得られたデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、探針の外形形状を計測することにより、精度よく探針の形状を計測することができる。
【0023】
第6の発明に係るプローブ顕微鏡は、探針計測手段によって計測して得られた探針の外形形状を表わすデータを記憶する記憶手段と、探針を、計測対象の試料の表面に対して走査して、計測対象の試料の外形形状を計測する試料計測手段と、記憶手段に記憶された探針の外形形状を表わすデータを用いて、試料計測手段によって計測して得られた計測対象の試料の外形形状を表わすデータを補正する補正手段とを更に含むことができる。これによって、精度よく計測された探針の外形形状を用いて、計測対象の試料の形状を表わすデータを補正することにより、精度よく試料の形状を計測することができる。
【0024】
上記のカンチレバーを、液中に浸漬するか、大気中に配置するか、真空中に配置するか、又はガス中に配置することができる。
【0025】
また、上記のプローブ顕微鏡は、コンタクトモード制御、ノンコンタクトモード制御、タッピングモード制御、又はステップインモード制御によって、試料の外形形状の計測を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の探針の形状計測方法及びプローブ顕微鏡によれば、円柱部材あるいは四角柱部材の基準試料を用いて計測して得られたデータから、探針の外形形状を計測することにより、又は、柱状の基準試料を用いて計測して得られたデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、探針の外形形状を計測することにより、精度よく探針の形状を計測することができる、という効果が得られる。
【0027】
本発明の試料の形状計測方法によれば、柱状の基準試料を用いて計測して得られたデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して精度よく計測された探針の外形形状を用いて、計測対象の試料の外形形状を表わすデータを補正することにより、精度よく試料の形状を計測することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施の形態では、試料の試料情報、例えば外形形状としての表面形状を得るプローブ顕微鏡に本発明を適用した場合について説明する。
【0029】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るプローブ顕微鏡10は、観察対象となる試料12の表面との間で原子間力が作用されるプローブ(探針)14が先端に設けられたカンチレバー16と、試料12の試料情報を得るために情報検出レーザ光19を照射すると共に、カンチレバー16の変位を検出する情報検出光学系18と、情報検出レーザ光19の照射状態を観察する観察照明光学系20と、波長選択素子24と、情報検出光学系18及び観察照明光学系20に関して共通の対物レンズ28とを備えている。
【0030】
カンチレバー16は、例えば一端支持型構成を有し、その遊端(カンチレバー16の支持側とは反対側の先端)に、プローブ14を有する。また、試料12の表面に対してプローブ14の先端が近接ないしは軽く接触するようにカンチレバー16が配置されている。なお、プローブ顕微鏡10は、コンタクトモード制御、ノンコンタクトモード制御、タッピングモード制御、又はステップインモード制御によって、プローブ14を試料12の表面に対して走査して試料12の外形形状を計測する。
【0031】
カンチレバー16は、プローブ14の先端と、試料12の観察がなされる表面との原子間力の作用によって支持端側を支点として撓曲変位する構成であり、カンチレバー16は、その長さが例えば100μm、厚さ400nm〜800nmを有し、所定のばね定数を有する。カンチレバー16及びプローブ14は、光透過性の材料、例えばSiNより形成されている。
【0032】
プローブ14は、試料12に向かって凸の凹状、例えば四角錐凹状に形成され、この凹状プローブ14の内周面と、このプローブ14の周辺の対物レンズ28と対向する面に、例えばAuあるいはAl金属膜等による反射膜22Rが被着形成される。そして、このプローブ14の先端には、反射膜が被着されていないか、あるいは被着されていても極薄とされることなどによる光学的細孔が形成されている。
【0033】
情報検出光学系18は、カンチレバー16の変位の検出、すなわち原子間力の大きさの検出によって、試料12の例えば表面形状等の情報を検出する。すなわち、情報検出光学系18は、カンチレバー16を介して試料の表面形状を検出する。
【0034】
情報検出光学系18は、カンチレバー16のプローブ14の先端に照射するための例えば500nmの緑の波長である情報検出レーザ光19を発生する情報検出レーザ光源32と、集光レンズ等の光学レンズ36と、ハーフミラー38と、情報検出レーザ光19のカンチレバー16からの戻り光を検出する情報検出装置34とを備えている。
【0035】
情報検出装置34は、この情報検出装置34に導入される試料12からの戻り光の態様、又は目的とする検出信号態様に応じて、例えばフォトダイオード、光電子増倍管(フォトマルチプライヤ)、又は分光器などによって構成される。
【0036】
観察照明光学系20は、カンチレバー16に対する情報検出レーザ光19の照射状態や、プローブ14と試料12との位置関係等を観察する光学系であり、例えば白色の照明光62を発生する白色光源による照明光源60と、照明光62を対物レンズ28の光軸もしくは近軸上に導入するハーフミラー66と、試料12からの戻り光の光学像を観察する観察装置64と、この観察装置64に戻り光を向かわせるミラー68と、集光レンズ等の光学レンズ70とを備えている。
【0037】
観察装置64は、例えばCCDカメラなどの固体撮像素子による撮像素子72と、撮像素子72によって撮像された撮像光学像を映出するモニタ74とを備えている。
【0038】
また、照明光62と情報検出レーザ光19とを共に対物レンズ28に導入する光路上に、例えばダイクロイックミラーで構成された波長選択素子24が配置されている。波長選択素子24は、白色光の照明光62から、情報検出レーザ光19の波長の光成分、すなわちこの例では500nmの緑の光成分を反射させて排除すると共に、この情報検出レーザ光19の波長以外の波長光を透過して、照明光62を情報検出レーザ光19とともに対物レンズ28に向かわせる波長選択性を有する光学素子である。
【0039】
また、プローブ顕微鏡10は、表面の観察がなされる試料12に対して、プローブ顕微鏡10の光軸、すなわちその対物レンズ28の光軸と直交する面に沿って相対的に移動する走査型プローブ顕微鏡である。プローブ顕微鏡10には、試料12を上面に載置するための載置台である移動ステージ86が設けられ、移動ステージ86は、プローブ顕微鏡10の上述した光軸方向に沿うz軸方向と、これとほぼ直交する面上で、互いに直交するx軸およびy軸方向に移動可能に構成されている。また、移動ステージ86の移動は、制御装置88によって制御される。
【0040】
移動ステージ86上には、図2に示すように、複数の基準試料50が設けられている。この基準試料50は、図4(B)に示すように、円柱部材で形成されている。
【0041】
次に、本実施の形態の原理について説明する。図3(A)に示すように、形状が未知の探針を、先端が非常に尖った針状の試料の表面に対して走査して、AFM(Atomic Force Microscope)画像を取得し、取得したAFM画像に対して傾斜補正を行うと、図3(B)に示すようなAFM画像が得られる。このAFM画像が、探針の形状を表わしている。このように、先端が非常に尖った針状の試料を用いると、探針の外形形状を計測することができる。
【0042】
しかし、図4(A)に示すように、理想的な針状の試料は、強度が弱いため、現実的に作ることができない。そこで、本実施の形態では、基準試料50を、図4(B)に示すように、プローブ14の側面に接する程度の上面半径を持つ円柱部材で形成し、基準試料50を用いて、プローブ14の外形形状を計測する。なお、基準試料50は、側壁が垂直に切り立ったものが好ましい。
【0043】
ここで、図5に示すように、プローブ14を基準試料50の表面に対して走査して、プローブ14の外形形状を計測する場合、基準試料50の上面の半径は、プローブ14の水平分解能に影響し、プローブ14の側壁の面内分解能として、基準試料50の上面の半径に相当する水平分解能以下の分解能は得られない。従って、基準試料50の上面の半径は、できるだけ小さい半径であることが好ましい。
【0044】
また、図6に示すように、プローブ14を基準試料50の表面に対して走査して、プローブ14の外形形状を計測する場合、基準試料50の平面である上面から得られる計測データには、プローブ14の外形形状に関する情報が含まれない。また、基準試料50の端部の半径は、プローブ14の垂直分解能に影響する。従って、基準試料50の端部のエッジは、鋭いエッジであることが好ましい。
【0045】
本実施の形態では、プローブ14を、移動ステージ86に設けられた基準試料50に対して走査して、基準試料50の外形形状を計測し、計測して得られたデータから、基準試料50の円柱形状を表わすデータを除くように補正して、基準試料50の部分を除くことにより、上述した理想的な針状の試料を用いてプローブの外形形状を計測する場合と同様な計測結果を得る。即ち、外形形状が既知の基準試料50を用いて、計測対象のプローブ14を基準試料50の表面に対して走査して、基準試料50の外形形状を計測する。この計測データから、既知の基準試料50の外形形状を表わすデータを差し引いて、基準試料50の部分を除くことにより、プローブ14の外形形状を取得する。
【0046】
次に、第1の実施の形態に係るプローブ顕微鏡10の作用について説明する。プローブ顕微鏡10は、以下に説明するように、試料12の表面形状を計測する。まず、照明光62をカンチレバー16及び試料12に照射すると共に、情報検出レーザ光19をカンチレバー16に照射して、照明光62の戻り光により、これらの照射状態等を観察照明光学系20の観察装置64によって観察する。そして、この観察結果に応じて、移動ステージ86を、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向に移動させて、試料12の基準位置の調整を行う。また、必要に応じてカンチレバー16の設定位置の調整を行なう。
【0047】
そして、移動ステージ86をx軸方向およびy軸方向に移動させて、プローブ14を試料12の表面に対して走査する。
【0048】
このとき、情報検出光学系18のレーザ光源17からの情報検出レーザ光19が、波長選択素子24によって反射された後、対物レンズ28によってカンチレバー16の反射膜22Rで反射される。そして、この反射による戻り光が、情報検出装置34に導入される。
【0049】
この戻り光は、カンチレバー16の撓曲、すなわち変位に応じて、対物レンズ28への入射角が変化し、情報検出装置34への入射位置が変化することから、情報検出装置34における光電変換の各部の入射光量の変化が生じる。したがって、情報検出装置34における光電変換の各部からの出力の演算によって、カンチレバー16における撓みを検出し、ひいては原子間力を検出することができる。つまり、プローブ14と試料12の表面との間隔を検出することができる。
【0050】
この間隔を検出した信号が、移動ステージ86の制御装置88に入力され、移動ステージ86のz軸方向の移動が調整され、常時、プローブ14と試料12の表面との間隔が、微小間隙をもって一定に保持される。このように、カンチレバー16の傾きの変化によって、原子間力を測定し、測定される原子間力により試料12の表面形状の測定を行うことができる。
【0051】
また、オペレータによって、制御装置88に対して、計測処理が指示されると、制御装置88において、図7に示す計測処理ルーチンが実行される。まず、ステップ100において、試料形状の計測が指示されているか否かを判定する。プローブ14の磨耗モニタ又はプローブ14の外形形状の計測が指示されている場合には、ステップ102で、プローブ14の磨耗モニタが指示されているか否かを判定し、プローブ14の外形形状の計測が指示されている場合には、ステップ104へ移行する。
【0052】
ステップ104では、移動ステージ86の移動により、プローブ14を基準試料50の表面に対して走査させて、情報検出装置34から計測して得られる3次元のAFM画像を取得し、ステップ106において、上記ステップ104で取得したAFM画像が表わす3次元形状のz軸方向が傾斜しているため、z軸方向が鉛直方向を向くように、AFM画像に対して傾斜補正を行い、図8(A)に示すような基準試料50の3次元形状を表わすAFM画像を取得する。
【0053】
次のステップ108では、上記ステップ106で得られたAFM画像が表わす3次元形状を、頂点から順番に水平面で切り出して、切り出した形状が最初に円形になる部分を抽出し、抽出した円形部分から基準試料50の頂面のエッジを抽出する。そして、ステップ110において、図8(B)に示すように、上記ステップ108で抽出されたエッジが表わす頂面の重心を算出して、算出した重心を、基準試料50の頂面の中心として取得する。
【0054】
次のステップ112では、上記ステップ106で得られたAFM画像から、プロファイルを表わす曲線を全周にわたって抽出し、ステップ114で、図8(C)に示すように、抽出された曲線の端部が、上記ステップ110で算出された頂面の重心に一致するように、曲線を平行移動して、基準試料50の外形形状を表わすデータを差し引いて、基準試料50の部分を除く。これによって、基準試料50の外形形状を表わす部分を除いて縮小した、図8(D)に示すような形状を表わすAFM画像を取得する。
【0055】
そして、ステップ116で、上記ステップ114で取得した縮小した形状を表わすAFM画像から、プローブ14の外形形状を表わすデータを算出し、メモリ(図示省略)に記憶して、計測処理ルーチンを終了する。
【0056】
また、上記ステップ100で、試料形状の計測が指示されていると判定すると、ステップ118において、プローブ14の外形形状が既に算出されているか否かを判定し、プローブ14の外形形状を表わすデータが算出されていない場合には、ステップ104へ移行するが、一方、プローブ14の外形形状を表わすデータが既に算出され、メモリに記憶されており、図9(A)に示すように、プローブ14の外形形状が既知の場合には、ステップ120へ移行する。
【0057】
ステップ120では、プローブ14を、移動ステージ86上の試料12の表面に対して走査させて、計測して得られる3次元のAFM画像を取得し、ステップ122において、上記ステップ120で取得したAFM画像の傾斜補正を行い、図9(B)に示すような試料12の外形形状を表わすAFM画像を取得する。
【0058】
そして、ステップ124において、図9(C)に示すように、メモリに記憶されているプローブ14の外形形状を表わすデータに応じて、プローブ14の外形形状の影響を取り除くように、上記ステップ122で取得したAFM画像を補正して、正確な試料12の外形形状を表わすAFM画像を取得し、ステップ126で、補正したAFM画像をディスプレイ(図示省略)によって出力して、計測処理ルーチンを終了する。
【0059】
また、上記ステップ102において、プローブ14の磨耗モニタが指示されていると判定された場合には、ステップ127において、プローブ14の外形形状が既に算出されているか否かを判定し、プローブ14の外形形状を表わすデータが算出されていない場合には、ステップ104へ移行するが、一方、プローブ14の外形形状を表わすデータが既に算出され、メモリに記憶されている場合には、ステップ128へ移行する。
【0060】
ステップ128では、プローブ14を、基準試料50の表面に対して走査させて、計測して得られる3次元のAFM画像を取得し、ステップ130において、上記ステップ128で取得したAFM画像の傾斜補正を行い、基準試料50の外形の3次元形状を表わすAFM画像を取得する。
【0061】
そして、ステップ132において、メモリに記憶されているプローブ14の外形形状を表わすデータに応じて、プローブ14の外形形状による影響を取り除くように、上記ステップ130で取得したAFM画像を補正して、基準試料50の外形形状を表わすAFM画像を取得する。
【0062】
次のステップ134では、初期値として予め求められた基準試料50の外形形状を表わすAFM画像と、上記ステップ132で取得されたAFM画像とを比較して、形状が一致するか否かを判定する。そして、ステップ136において、上記ステップ134で形状が一致すると判定された場合には、プローブ14の外形形状に磨耗による変化が起きていないと評価し、正しくAFM画像の補正が行われていることをディスプレイによって出力する。また、上記ステップ134で形状が一致しないと判定された場合には、磨耗によりプローブ14の外形形状が変化していると評価し、正しくAFM画像の補正が行われていないことをディスプレイによって出力して、計測処理ルーチンを終了する。
【0063】
以上説明したように、第1の実施の形態に係るプローブ顕微鏡によれば、円柱の基準試料を用いて計測して得られたAFMデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して基準試料の部分を除いて、プローブの外形形状を計測することにより、精度よくプローブの形状を計測することができる。
【0064】
また、円柱の基準試料を用いて計測して得られたAFMデータから、基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して基準試料の部分を除いて得られたプローブの外形形状を用いて、計測対象の試料の外形形状を表わすAFMデータを補正することにより、精度よく試料の外形形状を計測することができる。
【0065】
また、接触のためにプローブの曲率半径が大きくなるが、プローブの外形形状を評価して、プローブの形状変化を監視することができるため、プローブ交換時期を決定することができ、また、プローブ先端の磨耗やプローブの破損などが分かる。また、プローブ装着時のプローブ中心軸の倒れなどの姿勢が分かる。
【0066】
なお、本実施の形態では、磨耗モニタにおいて、初期値として予め求められた基準試料の外形形状を表わすAFM画像と、計測して得られたAFM画像とを比較する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、過去の計測によって得られた基準試料の外形形状を表わすAFM画像と、計測して得られたAFM画像とを比較して、プローブの形状変化を監視するようにしてもよい。
【0067】
また、カンチレバーを、大気中に配置する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、カンチレバーを、液中に浸漬するか、真空中に配置するか、又はガス中に配置するようにしてもよい。
【0068】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0069】
第2の実施の形態は、基準試料が四角柱部材によって形成されている点が第1の実施の形態と異なっている。
【0070】
第2の実施の形態に係るプローブ顕微鏡10では、移動ステージ86上に、図10に示すような四角柱部材で形成された基準試料250が設けられている。基準試料250は、鋭いコーナーエッジを持っていることが好ましい。
【0071】
なお、プローブ顕微鏡10の他の構成や、作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
また、上記の実施の形態では、四角柱部材で、基準試料を形成した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、四角柱以上の多角柱部材で形成されていてもよい。また、側壁が切り立った他の柱状部材で、基準試料を形成してもよい。
【0073】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0074】
第3の実施の形態は、近接場光を用いて試料情報を観察している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0075】
図11に示すように、本発明の第3の実施の形態に係るプローブ顕微鏡310は、カンチレバー316と、試料12の試料情報を得るために情報検出レーザ光19を照射する情報検出光学系318と、観察照明光学系20と、カンチレバーの変位を検出するカンチレバー変位検出光学系322と、第1の波長選択素子324と、第2の波長選択素子326と、情報検出光学系318、観察照明光学系20、及びカンチレバー変位検出光学系322に関して共通の対物レンズ28とを備えている。
【0076】
カンチレバー316は、例えば一端支持型構成を有し、その遊端(カンチレバー16の支持側とは反対側の先端)に、プローブ314を有する。プローブ314は、試料12の先端に向かうに従って狭窄した凹状、例えば円錐凹状に形成され、プローブ314の内面には、表面プラズモン共鳴が起きるように、金属蒸着によって、金、銀、アルミ等の金属膜コート330がプローブ314の先端まで形成されている。
【0077】
また、プローブ314の周辺の対物レンズ28と対向する面にも、金属膜コート330が被着形成されている。
【0078】
このプローブ314において、情報検出光学系318から照射される情報検出レーザ光19のファーフィールド光を、プローブ314の先端にフォーカスさせると、金属膜コート330の表面でプラズモン共鳴を起こし、金属膜コート330の表面を先端側に伝播し、先端から近接場光(ニアフィールド光)331が発生し、近接場光331が試料12に照射される。この近接場光331によるスポット径は、回折限界に規制されず、対物レンズ28の開口数および情報検出レーザ光19の波長に依存しないため、近接場光331によるスポット径を、微小な照射スポット径とすることができる。
【0079】
情報検出光学系318は、カンチレバー316のプローブ314の先端に照射するための情報検出レーザ光19を発生する情報検出レーザ光源32と、光学レンズ36と、ハーフミラー338と、近接場光331の試料12への照射による試料12からの戻り光によって、試料情報を検出する情報検出装置334とを備えている。
【0080】
情報検出装置334は、この情報検出装置334に導入される試料12からの戻り光の態様や、目的とする検出信号態様に応じて、例えばフォトダイオード、光電子増倍管(フォトマルチプライヤ)、分光器等によって構成される。
【0081】
また、情報検出光学系318には、例えば凹状のプローブ14の凹状内周面から情報検出装置334への不要反射光を排除する不要反射光排除手段340と、光路を形成するミラー342とが設けられている。
【0082】
不要反射光排除手段340は、例えば共焦点光学系344によって構成される。この共焦点光学系344は、プローブ314の先端との共焦点を形成する共焦点レンズ346と、その共焦点位置に配置されたアパーチャ348とから構成されている。
【0083】
カンチレバー変位検出光学系322は、例えば650nmの赤の波長である変位検出レーザ光350を発するレーザ光源352と、カンチレバー316からの変位検出レーザ光350の戻り光によってカンチレバー316の変位を検出するカンチレバー変位検出装置354と、集光レンズ等による光学レンズ356とを備えている。カンチレバー変位検出装置354は、例えば2分割フォトダイオード、4分割フォトダイオード、PSD等によって構成されている。
【0084】
情報検出レーザ光19と変位検出レーザ光350とは、上述したように、例えば緑のレーザ光と赤のレーザ光とを用い、互いに異なる波長のレーザ光を用いており、一方、照明光源60としては、情報検出レーザ光19の波長及び変位検出レーザ光350の波長以外の波長にわたる波長帯、この例では緑および赤の波長以外の波長にわたる波長帯であって、照明光として好適な白色光の照明光62を発光する白色光源を用いている。
【0085】
また、照明光62と変位検出レーザ光350とを共に対物レンズ28に導入する光路上に、例えばダイクロイックミラーで構成された第1の波長選択素子324が配置されている。第1の波長選択素子324は、白色光の照明光62から、変位検出レーザ光350の波長の光成分、すなわちこの例では650nmの赤の光成分を反射させて排除すると共に、この変位検出レーザ光350の波長以外の波長光を透過して、照明光62を変位検出レーザ光350とともに対物レンズ28に向かわせる波長選択性を有する光学素子である。
【0086】
また、照明光62と変位検出レーザ光350と情報検出レーザ光源32からの情報検出レーザ光19とを共に対物レンズ28に導入する光路上に、例えばダイクロイックミラーで構成された第2の波長選択素子326が配置されている。第2の波長選択素子326は、白色光の照明光62から、情報検出レーザ光19の波長光、すなわちこの例では500nmの緑の光を反射させて排除すると共に、この情報検出レーザ光19の波長以外の波長光を透過して、照明光62を情報検出レーザ光19とともに対物レンズ28に向かわせる波長選択性を有する光学素子である。
【0087】
次に、第3の実施の形態に係るプローブ顕微鏡310の作用について説明する。プローブ顕微鏡310は、以下に説明するように、試料12の外形形状を計測する。
【0088】
まず、照明光62をカンチレバー316および試料12に照射すると共に、変位検出レーザ光350をカンチレバー316に照射して、照明光62の戻り光により、これらの照射状態等を観察照明光学系20の観察装置64によって観察する。そして、この観察結果に応じて、移動ステージ86をx軸方向、y軸方向、及びz軸方向に移動させ、試料12の基準位置を調整する。また、必要に応じてカンチレバー316の設定位置の調整を行なう。
【0089】
そして、移動ステージ86をx軸方向及びy軸方向に移動させて、情報検出光学系318からの情報検出レーザ光19によるプローブ314の先端からの近接場光331のスポットを、試料12の表面に対して走査する。
【0090】
このとき、情報検出光学系318による情報検出レーザ光19が、光学レンズ36、ハーフミラー338を通じて、第2の波長選択素子326によって反射された後、対物レンズ28によってカンチレバー316のプローブ314の先端にフォーカスされるように集光される。また、情報検出レーザ光19の波長λより半分以下の内径dでは、通常の光(空気中を伝播する光)は、透過せずに反射されてしまう。通常の光が反射される部分よりプローブ314先端側には、近接場光しか伝播しない。プローブ314内面の金属膜コート330の表面でプラズモン共鳴を起こし、金属膜コート330の表面をプローブ314の先端側に伝播し、先端から近接場光が滲み出る。このとき、プローブ314の先端が試料12の表面に充分近接されていることによって、この微小スポットの近接場光331が試料12の表面に照射される。このように、近接場光によって、分解能10nm以下が得られ、近接場光探針径が実現できる。
【0091】
そして、この試料12に照射された近接場光331が、試料12の表面の、例えば光学的特性、すなわち反射率又は透過率によって変調される。この変調されたレーザ光は、戻り光として、対物レンズ28に導入され、第2の波長選択素子326、ハーフミラー338、及びミラー342によって情報検出装置334に導入され、情報検出装置334によって試料情報が検出される。
【0092】
このとき、プローブ314におけるλ≫dの領域からの不要反射光も、上述した経路を辿って情報検出装置334に向かうが、この不要反射光は、共焦点レンズ346による共焦点関係にないことから、その共焦点位置にあるアパーチャ348によって遮断され、この不要反射光がカットされる。つまり、ノイズが改善される。
【0093】
また、カンチレバー変位検出光学系322のレーザ光源352からの変位検出レーザ光350は、第1の波長選択素子324によって反射され、第2の波長選択素子326を透過した後、対物レンズ28によってカンチレバー316の金属膜コート330で反射される。そして、この反射による戻り光が、カンチレバー変位検出装置354に導入される。この戻り光は、カンチレバー316の撓曲、すなわち変位に応じて、対物レンズ28への入射角が変化し、すなわちカンチレバー変位検出装置354への入射位置が変化することから、カンチレバー変位検出装置354における光電変換の各部の入射光量の変化が生じる。したがって、光電変換の各部による出力の演算によって、カンチレバー316における撓みの検出ひいては原子間力を検出することができる。つまり、プローブ314と試料12の表面との間隔を検出することができる。
【0094】
この間隔を検出した信号が、移動ステージ86を制御する制御装置88に入力され、移動ステージ86のz軸方向の移動が調整され、常時、プローブ314と試料12の表面との間隔が、微小間隙をもって一定に保持される。これによって、近接場光331が、常時、試料12の表面に一定条件で照射される。
【0095】
また、オペレータによって、制御装置88に対して、計測処理が指示されると、制御装置88において、第1の実施の形態と同様に計測処理ルーチンが実行される。プローブ314の形状の計測が指示された場合、プローブ314の外形形状が計測され、試料12の形状の計測が指示された場合に、試料12の外形形状が計測される。また、プローブ314の磨耗モニタが指示されると、プローブ314の磨耗による形状変化が計測される。
【0096】
なお、上記の実施の形態では、光てこ方式によって、カンチレバーの変位を計測する場合を例に説明したが、これに限定するものではなく、例えば、カンチレバーに設けた歪みゲージなどのセンサ、あるいは容量変位センサ、光干渉型センサ、音さ(チューニングフォーク)型センサによって、カンチレバーの変位を計測し、試料の外形形状を計測するようにしてもよい。
【0097】
本具体例では、たわみによるカンチレバー変位を、レンズ内通過(TTL)型光てこ方法を用いて計測する場合を例に説明したが、アウタレンズタイプの通常用いられる光てこ方法を用いても同様なことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプローブ顕微鏡の構成を示す概略図である。
【図2】移動ステージ上に設けられた基準試料を示す斜視図である。
【図3】(A)非常に尖った試料を用いて計測する様子を示すイメージ図、及び(B)計測して得られたAFM画像を補正して、プローブの形状を表わすAFM画像が得られた様子を示すイメージ図である。
【図4】(A)理想的な針状の試料を示す図、及び(B)円柱の基準試料を示す図である。
【図5】基準試料の上面の半径と、プローブの水平分解能との関係を説明するための図である。
【図6】基準試料の端部の半径と、プローブの垂直分解能との関係を説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るプローブ顕微鏡における計測処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】(A)基準試料の形状を計測した結果を示すイメージ図、(B)基準試料の頂面の中心を算出する様子を示すイメージ図、(C)曲線の端部を中心に平行移動させる様子を示すイメージ図、及び(D)基準試料の部分を除いて縮小した様子を示すイメージ図である。
【図9】(A)未知の試料を計測する様子を示すイメージ図、(B)計測して得られたAFM画像を示すイメージ図、及び(C)補正して得られるAFM画像を示すイメージ図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るプローブ顕微鏡で用いる基準試料を示す斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係るプローブ顕微鏡の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0099】
10、310 プローブ顕微鏡
12 試料
14、314 プローブ
16、316 カンチレバー
18、318 情報検出光学系
34、334 情報検出装置
50、250 基準試料
86 移動ステージ
88 制御装置
322 カンチレバー変位検出光学系
354 カンチレバー変位検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先鋭化した探針が端部に設けられたカンチレバーを含み、前記探針と試料の表面との間に原子間力が作用するように前記探針を前記試料の表面に対して走査して、前記試料の外形形状を計測するプローブ顕微鏡であって、
基準試料として円柱部材あるいは四角柱部材の一つあるいは二つ以上を設けたことを特徴とするプローブ顕微鏡。
【請求項2】
前記探針の外形形状を計測する探針計測手段を更に含む請求項1記載のプローブ顕微鏡。
【請求項3】
前記探針の外形形状を除くように補正してプローブ顕微鏡像を取得する補正手段を更に含む請求項1又は2記載のプローブ顕微鏡。
【請求項4】
先鋭化した探針が端部に設けられたカンチレバーを含み、前記探針と試料の表面との間に原子間力が作用するように前記探針を前記試料の表面に対して走査して、前記試料の外形形状を計測するプローブ顕微鏡の探針の形状計測方法であって、
柱状部材で形成された基準試料の外形形状を計測し、
前記計測して得られた前記基準試料の外形形状を表わすデータから、前記基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、前記探針の外形形状を計測する
ことを特徴とする探針の形状計測方法。
【請求項5】
先鋭化した探針が端部に設けられたカンチレバーを含み、前記探針と試料の表面との間に原子間力が作用するように前記探針を前記試料の表面に対して走査して、前記試料の外形形状を計測するプローブ顕微鏡の試料の形状計測方法であって、
計測して得られた基準試料の外形形状を表わすデータから、前記基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して得られた前記探針の外形形状を表わすデータを記憶するステップと、
計測対象の試料の外形形状を計測するステップと、
前記記憶された前記探針の外形形状を表わすデータを用いて、前記計測して得られた前記計測対象の試料の外形形状を表わすデータを補正するステップと、
を備えた試料の形状計測方法。
【請求項6】
前記探針の外形形状を表わすデータを記憶した後に、前記基準試料の外形形状を計測するステップと、
前記記憶された前記探針の外形形状を表わすデータを用いて、前記計測して得られた前記基準試料の外形形状を表わすデータを補正するステップと、
前記補正された前記基準試料の外形形状を表わすデータと、既に求められた前記基準試料の外形形状を表わすデータとを比較して、前記探針の外形形状を評価するステップと
を更に備えた請求項5記載の試料の形状計測方法。
【請求項7】
先鋭化した探針が端部に設けられたカンチレバーの前記探針を、前記探針と柱状部材で形成された基準試料の表面との間に原子間力が作用するように、前記基準試料の表面に対して走査して、前記基準試料の外形形状を計測する基準試料計測手段と、
前記基準試料計測手段によって計測して得られた前記基準試料の外形形状を表わすデータから、前記基準試料の外形形状を表わすデータを除くように補正して、前記探針の外形形状を計測する探針計測手段と、
を含むプローブ顕微鏡。
【請求項8】
前記探針計測手段によって計測して得られた前記探針の外形形状を表わすデータを記憶する記憶手段と、
前記探針を、計測対象の試料の表面に対して走査して、前記計測対象の試料の外形形状を計測する試料計測手段と、
前記記憶手段に記憶された前記探針の外形形状を表わすデータを用いて、前記試料計測手段によって計測して得られた前記計測対象の試料の外形形状を表わすデータを補正する補正手段と
を更に含む請求項7記載のプローブ顕微鏡。
【請求項9】
前記カンチレバーを、液中に浸漬するか、大気中に配置するか、真空中に配置するか、又はガス中に配置した請求項1〜3、7、及び8の何れか1項記載のプローブ顕微鏡。
【請求項10】
コンタクトモード制御、ノンコンタクトモード制御、タッピングモード制御、又はステップインモード制御によって、試料の外形形状の計測を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3及び請求項7〜請求項9の何れか1項記載のプローブ顕微鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−58473(P2009−58473A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228066(P2007−228066)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)