説明

接合体および接合体の製造方法

【課題】被着体と粘着剤層との接着信頼性を高める技術を提供する。
【解決手段】接合体10は、被着体12と、被着体12の上に形成されたプライマー層14と、プライマー層14の上に設けられている粘着剤層16と、を備える。プライマー層14は、有効成分として塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレンの少なくとも一方を含み、その単位面積当たりの量が0.5[mg/cm]以下である。被着体12は、その表面が、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)の少なくともいずれかの材料で構成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体および接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着の難しい被着体への適用が可能な接着方法の開発が進められている。例えば、特許文献1には、ゴム製品と他の部品との間に耐久性のある結合を実現するために、感圧接着剤層とゴム製品との間に、下塗層を有する熱活性化接着材成分を備える集成材が開示されている。また、特許文献2には、接着性が乏しいポリオレフィン系材料からなる基材に他の部材を接着剤を介して接合する場合に、基材の表面にプライマーを塗布する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−525481号公報
【特許文献2】特開2008−184542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プライマーの種類、塗布方法、塗布量などによっては、適切な接着性能が得られない可能性がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被着体と粘着剤層との接着信頼性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の接合体は、被着体と、被着体の上に形成されたプライマー層と、プライマー層の上に設けられている粘着剤層と、を備える。プライマー層は、有効成分として塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレンの少なくとも一方を含み、その単位面積当たりの量が0.5[mg/cm]以下である。
【0007】
この態様によると、被着体と粘着剤層との接着信頼性を向上することができる。
【0008】
被着体は、その表面が、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)の少なくともいずれかの材料で構成されていてもよい。粘着剤層は、微粒子および/又は気泡含有アクリル系粘着剤組成物で構成されていてもよい。粘着剤層を被着体からはく離した際に、粘着剤層の一部が被着体の表面に残っていてもよい。
【0009】
本発明の別の態様は、接合体の製造方法である。この方法は、被着体の表面に、有効成分として塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレンの少なくとも一方を含むプライマー溶液を塗布しプライマー層を形成する工程と、プライマー層の上に粘着剤層を貼り付ける工程と、を備えた接合体の製造方法であって、プライマー層を形成する工程では、プライマー層の有効成分の単位面積当たりの量が0.5[mg/cm]以下となるように、プライマー溶液の塗布量が設定されている。
【0010】
この態様によると、被着体と粘着剤層との接着信頼性が向上した接合体を製造できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被着体と粘着剤層との接着信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る接合体の構成を示す概略断面図である。
【図2】実施の形態に係る粘着剤層の構成の一例を示す概略断面図である。
【図3】各実施例および各比較例に係る接合体における、プライマー層の単位面積当たりの量とはく離強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面や表を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図における各層の厚みや大きさの比率は、必ずしも実際の態様を正確に表しているものではなく、説明の便宜上、適宜変更されている。
【0014】
(接合体)
図1は、実施の形態に係る接合体10の構成を示す概略断面図である。接合体10は、被着体12と、被着体12の上に形成されたプライマー層14と、プライマー層14の上に設けられている粘着剤層16と、粘着剤層16の上に設けられているはく離ライナー18と、を備える。粘着剤層16およびはく離ライナー18は、粘着テープ20を構成する。
【0015】
接合体10は、例えば、家電製品や自動車用外装部品の組立てにおいて、接合対象となる部品へ被着体12を貼り付ける際の作業性を容易にすべく、予め粘着剤層16を被着体12に設けたものである。
【0016】
(1:被着体)
本実施の形態に係る技術は、特に、粘着剤層との接着が難しい材料からなる被着体に好適である。このような材料の被着体は、様々なものがあり得るが、例えば、表面エネルギーの低い材料が相当する。具体的には、その表面の少なくとも一部が、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンジエン−スチレンなどの材料から構成されている被着体に好適な技術である。
【0017】
(2:プライマー層)
プライマー層14は、有効成分として塩素化ポリオレフィンを含むことを特徴とするプライマーにより形成される。プライマーは、有効成分として塩素化ポリオレフィンを含み、有機溶剤中に均一に分散した状態が好ましい。プライマーは、脂肪族イソシアネート含有化合物、および有機官能基含有非ハロゲン化炭化水素ポリマーを含有しても良い。より好ましくは、プライマーは、有効成分として、塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレンの少なくとも一方を含むとよい。有機溶剤は、脂肪族エステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、およびハロゲン化芳香族または脂肪族炭化水素を含めた広範囲の種類の有機溶剤を使用することができる。
【0018】
例としては、限定するものではないが、シクロヘキサン、キシレン、ヘプタン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、およびメチルエチルケトンが挙げられる。塩素化ポリオレフィンは、好ましくは、プライマー組成物の全重量に対して約0.25重量%〜約25重量%の量が含まれ、より好ましくは、約1重量%〜約10重量%の量が含まれる。有機溶剤は、組成物の全重量に対して、プライマー組成物の少なくとも約75重量%含まれることが好ましい。プライマー層14は、粘着テープ20の粘着剤層16と被着体12との化学的な結合力や接着力を向上させる機能のほか、被着体12からにじみ出す低分子量成分などから粘着テープ20を保護する機能も有する。
【0019】
(3:粘着テープ)
前述のように、粘着テープ20は、粘着剤層16とはく離ライナー18とを有する。図2は、実施の形態に係る粘着剤層16の構成の一例を示す概略断面図である。
【0020】
(3−1:粘着剤層)
粘着剤層16は、芯層22と、芯層22の一方の面に設けられた表層24aと、芯層22の他方の面に設けられた表層24bとを備える。以下、表層24a、24bをまとめて表層24とよぶ。芯層22は、粘着剤組成物26と、粘着剤組成物26に含有されている微粒子28と、粘着剤組成物26の内部に形成されている気泡30とを有する。なお、粘着剤組成物26は、微粒子28及び気泡30のいずれか一方を含んでいてもよい。本実施の形態に係る粘着剤層16は、より接着信頼性の高い接合体とする観点から、微粒子および/又は気泡含有アクリル系粘着剤組成物で構成されていることが好ましい。以下、芯層22の各構成要素について詳述する。
【0021】
(3−1−1:粘着剤組成物)
芯層22を構成する粘着剤組成物26としてアクリル系ポリマー(A)が用いられる。アクリル系ポリマー(A)は、例えば、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として約50重量%以上含有する。また、アクリル系ポリマー(A)は、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが単独で又は2種以上が組み合わされた構成とすることができる。アクリル系ポリマー(A)は、重合開始剤とともに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合(例えば、溶液重合、エマルション重合、UV重合)させることにより得ることができる。
【0022】
炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、アクリル系ポリマー(A)を調整するためのモノマー成分全量に対して約50重量%以上99.9重量%以下、好ましくは約60重量%以上95重量%以下、より好ましくは約70重量%以上93重量%以下である。
【0023】
炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル(2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C2−14アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2−10アルキルエステル、最も好ましくは(メタ)アクリル酸C4−8アルキルエステル]等が挙げられる。中でもアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチルが好適に用いられる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルをいい、「(メタ)・・・」は全て同様の意味である。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル;
等が挙げられる。
【0025】
なお、アクリル系ポリマー(A)は、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な、他のモノマー成分(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。したがって、アクリル系ポリマー(A)は、主成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、共重合性モノマーを含んでいてもよい。共重合性モノマーとしては、極性基を有するモノマーを好適に使用することができる。
【0026】
共重合性モノマーの具体的な例としては、
アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等の水酸基含有モノマー;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;
スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;
2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(t−ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン等の(N−置換)アミド系モノマー;
N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシヘキサメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;
N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;
N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルへキシルイタコンイミド、N−シクロへキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;
N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルモルホリン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−ビニルピラゾール、N−ビニルイソオキサゾール、N−ビニルチアゾール、N−ビニルイソチアゾール、N−ビニルピリダジン等の窒素含有複素環系モノマー;
N−ビニルカルボン酸アミド類;
N−ビニルカプロラクタム等のラクタム系モノマー;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;
スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;
(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;
(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;
イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;
ビニルトルエン、スチレン等の芳香族ビニル化合物;
エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のオレフィン又はジエン類;
ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;
塩化ビニル;
ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー;
シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;
2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有モノマー;
N−アクリロイルモルホリン等のアミド基含有ビニルモノマー;
等が挙げられる。なお、これらの共重合性モノマーは1種又は2種以上使用できる。
【0027】
共重合性モノマーの使用量としては、特に制限されないが、通常、前記アクリル系ポリマー(A)を調整するためのモノマー成分全量に対して、共重合性モノマーを約0.1〜約40重量%、好ましくは約0.5〜約30重量%、さらに好ましくは約1〜約20重量%含有することができる。
【0028】
共重合性モノマーを約0.1重量%以上含有することで、芯層22を構成するアクリル系粘着剤の凝集力の低下を防ぎ、高いせん断力を得ることができる。また、共重合性モノマーの含有量を約40重量%以下とすることで、芯層22を構成するアクリル系粘着剤の凝集力が高くなりすぎるのを防ぎ、常温(25℃)でのタック感を向上させることができる。
【0029】
また、アクリル系ポリマー(A)には、アクリル系粘着テープの凝集力を調整するために必要に応じて多官能性モノマーを含有してもよい。
【0030】
多官能性モノマーとしては、例えば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。多官能(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
多官能性モノマーの使用量としては、その分子量や官能基数等により異なるが、アクリル系ポリマー(A)を調整するためのモノマー成分全量に対して、約0.01〜約3.0重量%、好ましくは約0.02〜約2.0重量%であり、さらに好ましくは約0.03〜約1.0重量%となるように添加する。
【0032】
多官能性モノマーの使用量が、アクリル系ポリマー(A)を調整するためのモノマー成分全量に対して約3.0重量%を超えると、例えば、芯層22を構成するアクリル系粘着剤の凝集力が高くなりすぎ、接着力が低下したりする場合等がある。一方、約0.01重量%未満であると、例えば、芯層22を構成するアクリル系粘着剤の凝集力が低下する場合等がある。
【0033】
(3−1−2:重合開始剤)
アクリル系ポリマー(A)の調製に際して、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)等の重合開始剤を用いた熱や紫外線による硬化反応を利用して、アクリル系ポリマー(A)を容易に形成することができる。特に、重合時間を短くすることができる利点等から、光重合開始剤を好適に用いることができる。重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド等]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルマレエート、過酸化ラウロイル等)、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。
【0035】
熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0036】
光重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。
【0037】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[商品名:イルガキュアー651、チバスペシャルティケミカルズ社製]、アニソールメチルエーテル等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製]、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン[商品名:イルガキュア2959、チバスペシャルティケミカルズ社製]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[商品名:ダロキュア1173、チバスペシャルティケミカルズ社製]、メトキシアセトフェノン等が挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等が挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。
【0038】
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジル等が含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタール等が含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
【0039】
アシルフォスフィン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−t−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)オクチルホスフィンオキシド、ビス(2−メトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2−メトキシベンゾイル)(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエトキシベンゾイル)(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジブトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)(2,4−ジペントキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルエチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルエチルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルベンジルブチルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルベンジルオクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジイソプロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2−メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−4−メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジエチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,3,5,6−テトラメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジ−n−ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)イソブチルホスフィンオキシド、2,6−ジメチトキシベンゾイル−2,4,6−トリメチルベンゾイル−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジブトキシフェニルホスフィンオキシド、1,10−ビス[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド]デカン、トリ(2−メチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、などが挙げられる。
【0040】
光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマー(A)を調整するモノマー成分100重量部に対して約0.01〜約5重量部、好ましくは約0.05〜約3重量部の範囲内の量で配合される。
【0041】
ここで、光重合開始剤の使用量が、0.01重量部より少ないと、重合反応が不十分になる場合がある。光重合開始剤の使用量が、5重量部を超えると、光重合開始剤が紫外線を吸収することにより、紫外線が粘着剤層内部まで届かず、重合率の低下を生じたり、生成するポリマーの分子量が小さくなることによって、形成される粘着剤層の凝集力が低くなり、粘着剤層をフィルムからはく離する際に、粘着剤層の一部がフィルムに残り、フィルムの再利用ができなくなる場合がある。なお、光重合性開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
凝集力を調整するには、前記した多官能性モノマー以外に架橋剤を用いることも可能である。架橋剤は通常用いる架橋剤を使用することができ、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。特に、好適には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を使用することができる。
【0043】
具体的には、イソシアネート系架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパン等のポリオールとのアダクト体を挙げることができる。
【0044】
エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン及び1,3−ビス(N,N'−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0045】
本実施の形態において、アクリル系ポリマー(A)は、前記モノマー成分と重合開始剤を配合した混合物に紫外線(UV)を照射させて、モノマー成分を一部重合させた部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)として調整することもできる。また、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、例えば、30000〜5000000である。
【0046】
(3−1−3:微粒子)
本実施の形態において、芯層を構成するアクリル系ポリマー(A)には、微粒子を添加することができる。微粒子の作用効果としては、アクリル系粘着剤からなるアクリル系粘着テープ又はシートのせん断接着力や加工性の向上が挙げられる。
【0047】
微粒子としては、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属粒子、金属酸化物粒子;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素等の炭化物粒子、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物粒子;ガラス、アルミナ、ジルコニウム等酸化物に代表されるセラミック粒子;炭化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス、シリカ等の無機微粒子;火山シラス、砂等の天然原料粒子;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド等のポリマー粒子;塩化ビニリデン、アクリル等の有機中空体、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコーンビーズ等の有機球状体、等を挙げられる。
【0048】
微粒子として、好ましくは、中空微粒子状体を使用することができる。さらに中空微粒子状体の中でも、紫外線反応を用いる重合の効率や重み等の観点から、中空の無機系微粒子状体を好ましく用いることができる。その例として、中空ガラスバルーン(中空ガラス微小球ともいう)等のガラス製のバルーン;中空アルミナバルーン等の金属化合物製の中空バルーン;中空セラミックバルーン等の磁器製の中空バルーン等を挙げることができる。前記中空ガラスバルーンを用いることでせん断力、保持力等の他の特性を損なうことなく、高温接着力を向上させることができる。
【0049】
中空ガラスバルーン(中空ガラス微小球)としては、例えば、商品名「ガラスマイクロバルーン」(富士シリシア化学(株)製)や商品名「セルスターZ−20」「セルスターZ−27」「セルスターCZ−31T」「セルスターZ−36」「セルスターZ−39」「セルスターZ−39」「セルスターT−36」「セルスターPZ−6000」(いずれも東海工業(株)製)、商品名「サイラックス・ファインバルーン」(ファインバルーン(有)製)等を挙げられる。
【0050】
微粒子の粒径(平均粒子径)として特に制限されていないが、例えば1〜500μm、好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜150μmの範囲から選択することができる。
【0051】
微粒子の比重としては、特に制限されないが、例えば、0.1〜1.8g/cm、好ましくは0.2〜1.5g/cm、さらに好ましくは0.2〜0.5/cmの範囲から選択することができる。
【0052】
微粒子の比重が0.1g/cmよりも小さいと、微粒子をアクリル系粘着剤中に配合して混合する際に、浮き上がりが大きくなり、均一に分散させることができにくい場合がある。また、ガラス強度が低く容易に割れてしまう。逆に、1.8g/cmよりも大きいと、紫外線の透過率が低下して紫外線反応の効率が低下する恐れがある。また、アクリル系粘着剤が重くなり、作業性が悪くなる。
【0053】
微粒子の使用量としては、特に限定されず、例えば、芯層の全体積に対して10体積%未満となるような使用量であると、微粒子を添加した効果が低く、一方、50体積%を超えるような使用量であると接着力が低下する。
【0054】
(3−1−4:気泡)
本実施の形態において、芯層を構成するアクリル系ポリマー(A)には、気泡を添加することができる。芯層が気泡を含有することにより、アクリル系粘着剤(アクリル系粘着テープ)は曲面や凹凸面に対して良好な接着性を発揮することができ、また、良好な耐反発性を発揮することができる。
【0055】
芯層中に含有される気泡は、基本的には、独立気泡タイプの気泡であることが望ましいが、独立気泡タイプの気泡と連続気泡タイプの気泡とが混在していてもよい。
【0056】
また、気泡は、通常、球状(特に真球状)の形状を有しているが、球状上に凹凸がある等、真球状である必要はない。前記気泡の平均気泡径(直径)は、特に制限されず、例えば、1〜1000μm、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜300μmの範囲から選択することができる。
【0057】
なお、気泡中に含まれる気体成分(気泡を形成するガス成分;「気泡形成ガス」と称する場合がある)としては、特に制限されず、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガスの他、空気等の各種気体成分を用いることができる。気泡を形成するガスとしては、気泡を形成するガスが含まれた状態で、重合反応等を行う場合は、その反応を阻害しないものを用いることが重要である。気泡を形成するガスとしては、重合反応等を阻害しないことや、コストの観点等から、窒素を好適に使用できる。
【0058】
芯層中に含有される気泡の量としては、特に制限されず、使用用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、気泡を含有する芯層の全体積に対して5〜50体積%、好ましくは8〜40体積%である。混合量が5体積%より少なくなると気泡を混合した効果が得られず、50体積%より多くなると芯層を貫通する気泡が入り、接着性能や外観が低下する。
【0059】
気泡を含有する芯層において、気泡が形成される形態は特に制限されない。気泡を含有する芯層としては、例えば、(1)予め、気泡を形成するガス成分(気泡形成ガス)が混合された芯層を用いることにより、気泡が形成された形態の芯層や、(2)芯層に発泡剤を混合することにより、気泡が形成された形態の芯層を形成することができる。なお、前記(2)の、発泡剤を含有する芯層を用いることにより、気泡が形成された形態の芯層の場合、該発泡剤としては、特に制限されず、例えば、公知の発泡剤から適宜選択することができる。発泡剤としては、例えば、熱膨張性微小球等を用いることができる。
【0060】
(他の成分)
上述した成分以外に、必要に応じて増粘剤、チキソトロープ剤、増量剤等が芯層に添加されていてもよい。増粘剤の例としては、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。チキソトロープ剤の例としては、コロイドシリカ、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。増量剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー等が挙げられる。その他、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤等を適宜添加してもよい。これらに限定されるものではない。
【0061】
本実施の形態において、粘着剤層としては、単層構造以外にも、2層以上の粘着剤層を積層した多層構造とすることもできる。具体的には、前述した芯層のみから粘着剤層を形成してもよく、芯層の少なくとも一方の表面に他の粘着剤層(表層)を積層した多層構造の粘着剤層とすることもできる。
【0062】
粘着剤層を多層構造とする場合、各々の粘着剤層は異なる組成からなる粘着剤層とすることが好ましい。
【0063】
(表層)
表層24の成分としては、粘着剤組成物としてのアクリル系ポリマー(A)と、粘着付与樹脂としての重量平均分子量が1000以上30000未満の(メタ)アクリル系重合体(B)とを含むことが好ましい。
表層24に用いられるアクリル系ポリマー(A)は、芯層22のアクリル系ポリマー(A)として例示した化合物(各種モノマー成分)から選ぶことができる。表層24に用いられるアクリル系ポリマー(A)は、芯層22のアクリル系ポリマー(A)と成分及び組成比が同等であってもよく、芯層22のアクリル系ポリマー(A)と成分及び組成比が異なっていてもよい。また、アクリル系ポリマー(A)は、芯層を構成するアクリル系ポリマー(A)と同様の重合開始剤を使用し、同様の重合方法にて調製することができる。以下、(メタ)アクリル系重合体について詳述する。
【0064】
((メタ)アクリル系重合体(B))
(メタ)アクリル系重合体(B)は、アクリル系ポリマー(A)よりも重量平均分子量が小さい重合体であり、粘着付与樹脂として機能し、かつUV重合の際に重合阻害を起こしにくいという利点を有する。表層を構成する粘着剤組成物に(メタ)アクリル系重合体(B)を配合することで、ポリエチレンやポリプロピレン等からなる低極性被着体に対するアクリル系粘着テープの接着性を顕著に向上させることができる。(メタ)アクリル系重合体(B)は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として含む。
【0065】
このような(メタ)アクリル酸エステルの例としては、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルのような(メタ)アクリル酸の脂環族アルコールとのエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;
テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル;
等を挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0066】
また、(メタ)アクリル系重合体(B)は、前記(メタ)アクリル酸エステル成分単位のほかに、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマー成分(共重合性モノマー)を共重合させて得ることも可能である。
【0067】
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーとしては、
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩等の塩;
エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルモノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステルモノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;
塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;
2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;
(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;
アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニルモノマー;
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニルモノマー;
フッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステルのような含フッ素ビニルモノマー;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物系モノマー;
2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニルモノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンのようなアミド基含有ビニルモノマー;
N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシヘキサメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;
N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;
N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルへキシルイタコンイミド、N−シクロへキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;
N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルモルホリン、N−ビニルピラゾール、N−ビニルイソオキサゾール、N−ビニルチアゾール、N−ビニルイソチアゾール、N−ビニルピリダジン等の窒素含有複素環系モノマー;
N−ビニルカルボン酸アミド類;
N−ビニルカプロラクタム等のラクタム系モノマー;
(メタ)アクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;
シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;
2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有モノマー;
ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素含有ビニルモノマー;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等の水酸基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;
イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;
エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のオレフィン又はジエン類;
ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;
塩化ビニル;
その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類;
等を挙げることができる。これらのモノマーは、単独であるいは組み合わせて前記(メタ)アクリル酸エステルと共重合させることができる。
【0068】
本実施の形態のアクリル系粘着剤組成物において、(メタ)アクリル系重合体(B)としては、例えば、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とイソブチルメタクリレート(IBMA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とイソボルニルメタクリレート(IBXMA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とアクリロイルモルフォリン(ACMO)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とジエチルアクリルアミド(DEAA)の共重合体、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)とイソボルニルメタクリレート(IBXMA)の共重合体、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1−アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1−アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体等を挙げることができる。
【0069】
また、(メタ)アクリル系重合体(B)としては、t−ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を持った(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸イソボルニルのような(メタ)アクリル酸の脂環式アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸フェニルや(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルなどの環状構造を持った(メタ)アクリレートに代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが好ましい。このような嵩高い構造を(メタ)アクリル系重合体(B)に持たせることで、アクリル系粘着テープの接着性をさらに向上させることができる。特に嵩高さという点で環状構造を持ったものは効果が高く、環を複数含有したものはさらに効果が高い。また、(メタ)アクリル系重合体(B)の合成の際や粘着剤組成物作製の際にUV重合を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、飽和結合を有したものが好ましく、アルキル基が分岐構造を持った(メタ)アクリレート、あるいは脂環式アルコールとのエステルを、(メタ)アクリル系重合体(B)を構成するモノマーとして好適に用いることができる。
【0070】
さらに、(メタ)アクリル系重合体(B)は、例えば、三環以上の脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいてもよい。三環以上の脂環式構造のような嵩高い構造を(メタ)アクリル系重合体(B)に持たせることで、アクリル系粘着テープの接着性をより向上させることができる。特に、ポリエチレンやポリプロピレンなどの低極性被着体に対する接着性をより顕著に向上させることができる。(メタ)アクリル系重合体(B)は、この三環以上の脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体であってもよく、あるいは三環以上の脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマーと前記(メタ)アクリル酸エステルモノマー、又は共重合性モノマーとの共重合体であってもよい。
【0071】
(メタ)アクリル系モノマーは、例えば、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルである。
CH=C(R)COOR (1)
[式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、三環以上の脂環式構造を有する脂環式炭化水素基である]
【0072】
脂環式炭化水素基は、橋かけ環構造等の立体構造を有することが好ましい。このように、橋かけ環構造を有する三環以上の脂環式構造を(メタ)アクリル系重合体(B)に持たせることで、アクリル系粘着テープの接着性をより向上させることができる。特に、ポリエチレンやポリプロピレンなどの低極性被着体に対する粘着力をより顕著に向上させることができる。さらに、耐反撥特性と、保持特性との両立を図ることができる。すなわち、橋かけ環構造を有する三環以上の脂環式構造を(メタ)アクリル系重合体(B)に持たせることで、粘着力と、耐反撥特性と、保持特性とを高い次元で兼ね備えたアクリル系粘着テープを得ることができる。橋かけ環構造を有する脂環式炭化水素基としては、例えば、下記式(2a)で表されるジシクロペンタニル基、下記式(2b)で表されるジシクロペンテニル基、下記式(2c)で表されるアダマンチル基、下記式(2d)で表されるトリシクロペンタニル基、下記式(2e)で表されるトリシクロペンテニル基等を挙げることができる。なお、(メタ)アクリル系重合体(B)の合成の際や粘着剤組成物作製の際にUV重合を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、橋かけ環構造を有する三環以上の脂環式構造を持った(メタ)アクリル系モノマーの中でも特に、下記式(2a)で表されるジシクロペンタニル基や、下記式(2c)で表されるアダマンチル基、下記式(2d)で表されるトリシクロペンタニル基等の飽和構造を有した(メタ)アクリル系モノマーを(メタ)アクリル系重合体(B)を構成するモノマーとして好適に用いることができる。
【0073】
【化1】

【0074】
また、このような橋かけ環構造を有する三環以上の脂環式構造を持つ(メタ)アクリル系モノマーの例としては、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、トリシクロペンタニルメタクリレート、トリシクロペンタニルアクリレート、1−アダマンチルメタクリレート、1−アダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。この(メタ)アクリル系モノマーは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
さらに(メタ)アクリル系重合体(B)は、エポキシ基又はイソシアネート基と反応性を有する官能基が導入されていてもよい。このような官能基の例としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基を挙げることができ、(メタ)アクリル系重合体(B)を製造する際にこうした官能基を有するモノマーを使用することが好ましい。
【0076】
(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量は、1000以上30000未満、好ましくは1500以上20000未満、さらに好ましくは2000以上10000未満である。分子量が30000以上であると、粘着テープにおける粘着力の向上効果が充分には得られない場合がある。また、1000未満であると、低分子量となるため粘着テープの粘着力や保持特性の低下を引き起こす場合がある。
【0077】
重量平均分子量の測定は、GPC法によりポリスチレン換算して求めることができる。具体的には東ソー株式会社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH−H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5ml/分の条件にて測定される。
【0078】
(メタ)アクリル系重合体(B)の含有量は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して2〜70重量部であることが好ましく、5〜50重量部であることがより好ましい。(メタ)アクリル系重合体(B)を70重量部を超えて添加すると、本実施形態に係るアクリル系粘着剤組成物で形成した粘着剤層の弾性率が高くなり低温での接着性が悪くなったり、室温においても粘着力を発現しなくなる場合がある。また、添加量が2部より少ない場合はその効果が得られない場合がある。
【0079】
(メタ)アクリル系重合体(B)は、ガラス転移温度(Tg)が約20℃以上300℃以下、好ましくは約30℃以上300℃以下、さらに好ましくは約40℃以上300℃以下であることが望ましい。ガラス転移温度(Tg)が約20℃未満であると粘着剤層の室温以上での凝集力が低下し、保持特性や高温での接着性が低下する場合がある。本実施の形態において、(メタ)アクリル系重合体(B)として使用可能な代表的な材料のガラス転移温度を表1に示す。表1に示すガラス転移温度は、文献、カタログ等に記載された公称値であるか、あるいは、下記式(3)(Fox式)に基づいて計算された値である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn (3)
[式(3)中、Tgは(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度(単位:K)、Tgi(i=1、2、・・・n)はモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(単位:K)、Wi(i=1、2、・・・n)はモノマーiの全モノマー成分中の重量分率を表す。]
上記式(3)は、(メタ)アクリル系重合体(B)が、モノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
【0080】
【表1】

【0081】
表1中の略語は以下の化合物を示す。
DCPMA:ジシクロペンタニルメタクリレート
DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート
IBXMA:イソボルニルメタクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
ADMA:1―アダマンチルメタクリレート
ADA:1―アダマンチルアクリレート
DCPMA/IBXMA40:DCPMA60重量部とIBXMA40重量部の共重合体
DCPMA/MMA40:DCPMA60重量部とMMA40重量部の共重合体
DCPMA/MMA60:DCPMA40重量部とMMA60重量部の共重合体
IBXMA/MMA60:IBXMA40重量部とMMA60重量部の共重合体
ADMA/MMA40:ADMA60重量部とMMA40重量部の共重合体
ADA/MMA40:ADA60重量部とMMA40重量部の共重合体
CHMA//IBMA40:CHMA60重量部とIBMA40重量部の共重合体
【0082】
((メタ)アクリル系重合体(B)の作製方法)
(メタ)アクリル系重合体(B)は、例えば、上述した構造を有する(メタ)アクリル系モノマーを、溶液重合法やバルク重合法、乳化重合法、懸濁重合、塊状重合等により重合することで作製することができる。
【0083】
((メタ)アクリル系重合体(B)の分子量の調整方法)
(メタ)アクリル系重合体(B)の分子量を調整するためにその重合中に連鎖移動剤を用いることができる。使用する連鎖移動剤の例としては、オクチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−チオグリセロール等のメルカプト基を有する化合物;チオグリコール酸、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステルが挙げられる。金属腐食性の観点から、特に好ましい連鎖移動剤としては、α−チオグリセロール、メルカプトエタノール、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸イソオクチルが挙げられる。
【0084】
連鎖移動剤の使用量としては、特に制限されないが、通常、(メタ)アクリル系モノマー100重量部に対して、連鎖移動剤を約0.1〜約20重量部、好ましくは、約0.2〜約15重量部、さらに好ましくは約0.3〜約10重量部含有する。このように連鎖移動剤の添加量を調整することで、好適な分子量の(メタ)アクリル系重合体(B)を得ることができる。なお、連鎖移動剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
アクリル系ポリマー(A)や(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量の測定は、GPC法によりポリスチレン換算して求められる。具体的には東ソー株式会社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH−H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速0.5ml/分の条件にて測定される。
【0086】
(粘着剤層の厚み)
本実施の形態において、粘着剤層の厚み(芯層と表層がある場合は全体の厚み)は、0.2〜2.0mm、好ましくは0.6〜2.0mmである。
【0087】
(層厚比)
芯層22の厚さと表層24a(又は表層24b)の厚さとを合わせた総厚に対する表層24a(又は表層24b)の厚さの比率は、好ましくは約3〜約70%である。当該比率が約3%未満であると、所望の接着性が得られない場合がある。また、当該比率が70%より高くなると、粘着テープとしての応力緩和性や段差吸収性といった、気泡を含有する芯層22を有する場合に期待される効果が得られない場合がある。
【0088】
(多層化方法)
芯層22と表層24とを積層する方法は特に限定されないが、例えば、以下に示す方法を適用することができる。
(1)芯層22及び表層24を別々に硬化させた後、芯層22の一方の面に表層24aをラミネートし、芯層22の他方の面に表層24bをラミネートすることにより多層化する方法:当該方法は、各層の厚み精度を高くすることができるという利点を有する。
(2)予め硬化させた表層24a(又は表層24b)に芯層22を塗工した後、芯層22を硬化させ、続いて芯層22に表層24b(又は表層24a)を塗工した後、表層24b(又は表層24a)を硬化させる方法、あるいは、予め硬化させた芯層22の一方の面に表層24a(又は他方の面に表層24b)を塗工した後、表層24a(又は表層24b)を硬化させ、続いて芯層22の他方の面に表層24b(又は一方の面に表層24a)を塗工した後、表層24b(又は表層24a)を硬化させる方法:当該方法では、硬化させた層に別の層を塗布するため、各層の厚み精度を高くすることができる。また、硬化させた層に別の層を一括塗工することができるため、製造工程の簡素化や製造時間の短縮を図ることができる。
(3)塗布された表層24(又は芯層22)に芯層22(又は表層24)を逐次あるいは同時に塗布して硬化させる方法:当該方法では、表層24、芯層22ともに一括塗工が可能である。
【0089】
各層の形成方法は、ロールコーター、コンマコーターなどコーティングロールを使用したものでもよいし、スロットダイなどを使用してもよい。特に、上記(3)の方法では、各層を塗布する多層スロットダイを使用してもよい。
【0090】
以上説明したアクリル系粘着テープによれば、アクリル系ポリマー(A)及び(メタ)アクリル系重合体(B)を含有する表層と芯層とが積層した多層構造を備えることにより、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリスチレン、ABS、ポリカーボネートなどの低極性被着体に対する接着力を向上させることができる。
【0091】
なお、上述した実施の形態のアクリル系粘着テープでは、芯層の両側にそれぞれ表層が設けられているが、表層は芯層のいずれか一方の側に設けられていてもよい。
【0092】
(3−2:はく離ライナー)
本実施の形態に係るはく離ライナーは、基層の少なくともいずれか一方の側にはく離層としての表層を有する、少なくとも2層の層構成を有している。はく離層は、基層の表面に直接設けられていてもよいし、接着層などの他の層を介して積層されていてもよい。
【0093】
(3−2−1:表層)
本実施の形態に係るはく離ライナー18ーは、粘着剤層16と接する側の表層である第1のはく離層が、低密度ポリエチレン及びオレフィン系エラストマーを主成分として構成されていることが好ましい。低密度ポリエチレン及びオレフィン系エラストマーの合計量は、表層全体に対して、60重量%以上が好ましく、より好ましくは90重量%以上である。かかるポリマー構成とすることによってはく離性が向上する。
【0094】
本実施の形態における「低密度ポリエチレン(LDPE)」とは、JIS K 6922−2に基づく密度が900(kg/m)以上930(kg/m)未満であるポリエチレンをいう。本実施の形態における「低密度ポリエチレン」には、エチレンモノマーを高圧法により重合して得られる、長鎖分岐を有する、いわゆる「低密度ポリエチレン」や「超低密度ポリエチレン」、及び、エチレンと炭素数が3〜8のα−オレフィンモノマーとを低圧法により重合して得られる「直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)」(短鎖分岐の長さは炭素数1〜6が好ましい)が含まれる。本実施の形態に係るはく離ライナーの表層に用いられる低密度ポリエチレンとしては、上記の中でも、α−オレフィンの共重合により、はく離性などの物性の制御が容易である観点から、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。なお、上記LLDPEにおいて、エチレンとともに用いられるコモノマー成分としては、1−ヘキセン、1−オクテンが好適である。
【0095】
また、上記オレフィン系エラストマーとは、α−オレフィン又はα−オレフィンを含む共重合体でありエラストマー性を示す化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。
【0096】
上記オレフィン系エラストマーの中でも、はく離性、相溶性の観点から、特に好ましくは、エチレン−α−オレフィン共重合体エラストマーである。なお、本実施の形態においては、JIS K 6922−2に基づく密度が900(kg/m)未満(例えば、860(kg/m)以上900(kg/m)未満)であるエチレン−α−オレフィン共重合体は、オレフィン系エラストマーに含まれるものとする。エチレン−α−オレフィン共重合体エラストマーのα−オレフィン成分としては、特に限定されないが、プロピレン、ブテンなどの炭素数3〜10程度のα−オレフィンが好ましく、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、及びオクテン−1からなる群から選択された少なくとも1種のα−オレフィン(コモノマー)を用いることができる。
【0097】
上記低密度ポリエチレン、オレフィン系エラストマーとしては、市販品を用いることも可能であり、例えば、低密度ポリエチレンとしては、(株)プライムポリマー製「モアテック0628D、0218CN」(LLDPE)などが挙げられる。オレフィン系エラストマーとしては、三井化学(株)製「タフマーP」(エチレン−プロピレン共重合体)などが挙げられる。成膜性の観点から、中でも、「タフマーP P0180、P0280」が好適に用いられる。
【0098】
上記低密度ポリエチレン、オレフィン系エラストマーは、それぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0099】
本実施の形態に係るはく離ライナーの表層において、低密度ポリエチレン100重量部に対して、オレフィン系エラストマーの含有量は10〜200重量部が好ましく、より好ましくは25〜100重量部、さらに好ましくは50〜75重量部である。オレフィン系エラストマーを添加することにより軽はく離性が向上する。一方、添加量が増えるに従って表層が柔軟となるため、加工性が低下したり、ブロッキングが生じたりする場合がある。
【0100】
本実施の形態に係るはく離ライナーの表層には、上記低密度ポリエチレン、オレフィン系エラストマーの他にも、着色剤(顔料、染料)、充填剤、滑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤などの各種添加剤が、本発明の効果を損なわない範囲内で配合されていてもよい。
【0101】
本実施の形態のはく離ライナーにおいて、基層の両表面に表層を有する3層構造の場合、両側の表層は、上記を満たす限り、異なるポリマー、異なる配合組成で構成されていてもよい。また、はく離ライナーのカールを防止する観点からは、両側の表層は、同一ポリマーを含んでいることが好ましく、同一組成であることがさらに好ましい。
【0102】
(3−2−2:基層)
本実施の形態のはく離ライナー18における基層は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として構成されている。ポリオレフィン系樹脂の含有量は、基層全体に対して、50重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上である。ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂に対して比較的柔軟であるため、該樹脂をはく離ライナーの基層に用いることによって、はく離ライナーの被着体の変形に対する追従性が向上し、保存時や高温環境での使用時におけるはく離ライナーの浮き、剥がれが抑制される。基層にポリエステル系樹脂を用いたはく離ライナーでは、例えば、樹脂製の自動車用エンブレムに貼着した状態で保存される場合などに、エンブレムのわずかな変形に追従できず、はく離ライナーの浮きや剥がれが生じて生産性が低下する場合がある。
【0103】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、はく離ライナーの強度を保ち、加工性を向上させる観点から、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。すなわち、本実施の形態に係るはく離ライナーにおける基層は、ポリプロピレン(PP)及び/又は高密度ポリエチレン(HDPE)を、基層全体に対して、50重量%以上含有することが好ましく、より好ましくは80重量%以上である。中でも、例えば、加工時などに対向面側の視認性が要求される用途においては、透明又は半透明の樹脂であることが好ましく、ランダムポリプロピレンであることが好ましい。なお、本実施の形態における「高密度ポリエチレン」とは、JIS K 6922−2に基づく密度が930(kg/m)以上(好ましくは942〜960(kg/m))であるポリエチレンをいう。
【0104】
上記オレフィン系樹脂としては、市販品を用いることも可能であり、例えば、住友化学(株)製「ノーブレン WF836DG3、FS3611」、日本ポリプロ(株)製「ノバテックPP EG6D」(以上PP)、(株)プライムポリマー製「ハイゼックス 3300F」、東ソー(株)製「ニポロンハード4050」(以上HDPE)などが挙げられる。
【0105】
本実施の形態のはく離ライナーの基層には、着色による品番などの識別性及び取扱い性向上の観点から、顔料などの着色剤が添加されていてもよい。顔料としては、所望の色の種類などに応じて、公知慣用の有機、無機顔料を用いることが可能である。例えば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、チタンイエロー、コバルトブルー、カドミウムレッド、アゾレーキ系(赤、黄)、フタロシアニン系、キナクリドン系顔料などが挙げられる。
【0106】
本実施の形態のはく離ライナーの基層には、作業性向上、はく離層の破壊防止の観点から、帯電防止剤が添加されていてもよい。帯電防止剤としては、公知慣用の非イオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤を使用することができる。
【0107】
本実施の形態のはく離ライナーの基層には、上記樹脂成分、着色剤、帯電防止剤の他にも、充填剤、滑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤などの各種添加剤が、本発明の効果を損なわない範囲内で配合されていてもよい。
【0108】
本実施の形態のはく離ライナーにおいて、表層の層厚みは、それぞれ80μm以下であり、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。本実施の形態の表層が、オレフィン系エラストマーを含んでいる場合、柔軟な層となる。このため、表層厚みが厚くなるにしたがい、はく離ライナー全体の強度、剛性が低下するとともに、切断時に表層が伸びて「切れ」が悪くなる傾向にある、すなわち、表層の層厚みが80μmを超えると、打ち抜き加工性が低下して、加工時に「ヒゲ」や「切り残し」などの加工不良が生じやすくなる。層厚みの下限は特に限定されないが、表層が共押出により設けられている場合には、共押出による均一積層の観点から、5μm以上好ましい。表層がコーティングにより設けられている場合には、0.1〜5μm程度が好ましい。
【0109】
なお、基層の両表面に表層を有する3層構造の場合、両側の表層の厚みの比(厚みが大きい方の表層厚み/厚みが薄い方の表層厚み)は、5以下が好ましく、より好ましくは3以下である。両側の表層厚みの比が5より大きい場合には、はく離ライナーにカールが生じる場合がある。
【0110】
本実施の形態のはく離ライナーにおいて、基層の層厚みは、30〜190μmが好ましく、より好ましくは50〜170μmである。基層は、はく離ライナーの強度を担う役割を有する。基層の層厚みが、30μm未満の場合には、はく離ライナーの強度や剛性が低くなり、打ち抜き加工性や取扱い性が低下する場合がある。また、200μmを超えると、剛性が強くなり、曲面を持ったエンブレムなどに追従しにくく、浮きや剥がれが生じる場合がある。
【0111】
本実施の形態のはく離ライナーの厚み(総厚み)は、50〜200μmが好ましく、より好ましくは100〜180μmである。
【0112】
本実施の形態のはく離ライナーのヤング率は、打ち抜き加工性の観点から、150〜700MPaが好ましく、より好ましくは200〜500MPaである。
【0113】
本実施の形態のはく離ライナーは、溶融製膜法(Tダイ法、インフレーション法)、溶液製膜法などの公知慣用のシート形成手法によって製造することができる。本実施の形態のはく離ライナーの積層方法としても、特に限定されず、共押出法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法など公知慣用の方法を用いることができる。中でも、生産性の観点から、共押出法が好ましい。
【0114】
本実施の形態のはく離ライナーの表層には、マット加工が施されていてもよい。表面にマット加工を施すことにより、粘着面に対する端末はく離性やブロッキング防止性が向上する。上記マット加工の方法としては、例えば、バフやサンドペーパーで表層表面を研磨する方法、ガラスビーズ、カーボランダム、金属粒子などの粉粒を圧搾空気とともに表層表面に強力に吹き付けて、表面に細かい傷をつけるサンドブラスト処理、エンボスロールによるエンボス加工、薬品処理によるケミカルマットなどの方法が挙げられる。
【0115】
(接合体の製造方法)
本実施の形態に係る接合体の製造方法は、被着体12の表面に、有効成分として塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレンの少なくとも一方を含むプライマー溶液を塗布しプライマー層14を形成する工程と、プライマー層14の上に粘着剤層16を貼り付ける工程と、を有している。プライマー層14を形成する工程では、プライマー層の有効成分の単位面積当たりの量が0.5[mg/cm]以下となるように、プライマー溶液の塗布量が設定されている。
【実施例】
【0116】
以下に、実施例に基づいて本実施の形態をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0117】
以下では、プライマーが塗布されている被着体(ポリ塩化ビニル)と粘着剤層とを接着した接合体を作製し、被着体と粘着剤層との接着信頼性を確認した。各実施例および各比較例においては、プライマー層の有効成分の単位面積当たりの量が異なっている。表2は、実施例1〜6、比較例1〜6に係る接合体におけるプライマー層の単位面積当たりの塗布量およびはく離強度との関係を示している。
【0118】
【表2】

【0119】
(接合体試料の作製)
はじめに、被着体12として50mm×60mm×2.0mm(厚み)の大きさのポリ塩化ビニル(PVC:リケンテクノス社製)を用意する。次に、被着体12の一方の面にプライマー(商品名「RC−1017」ロードコーポレーション製)を塗布する。塗布面積は、35mm×50mmとする。また、被着体へのプライマーの塗布は、塗布量が多い場合は刷毛で、塗布量が少〜中の場合はウェスやワイピングクロス(例えば、商品名「ザヴィーナ」セーレン社製)で行われる。
【0120】
本実施例に係るプライマーは、溶剤としてのトルエン(82〜87[wt%])の他、イソプロピルアルコール(5〜10[wt%])、シクロヘキサン(1〜5[wt%])、変性ポリプロピレン(1〜5[wt%])を含んでいる。変性ポリプロピレンは、有効成分としての塩素化ポリプロピレンを含んでいる。
【0121】
プライマーを塗布した後30分乾燥しプライマー層14が形成される。乾燥後、被着体12のプライマー層14が形成されている領域に、以下の製造方法により作製されたアクリル系の粘着テープ20(商品名「ハイパージョイント A4008」日東電工(株)製)の粘着剤層16を貼り付け、粘着テープ20の上面から5kgローラを用いて片道圧着し、接合体10の試料が作製される。ここで、粘着テープ20の幅は25mmである。
【0122】
(アクリル系粘着テープの作製)
モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート:90重量部、およびアクリル酸:10重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤として、商品名「イルガキュアー651」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部、商品名「イルガキュアー184」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部を配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が約15Pa・sになるまで紫外線(UV)を照射して、一部が重合した組成物(シロップ、以下、「部分重合モノマーシロップ」と称する場合がある)を作製した。
【0123】
この部分重合モノマーシロップ100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を0.08重量部添加した後、さらに中空ガラスバルーン(平均粒径40μm、商品名「フジバルーン H−40」(富士シリシア化学株式会社製))を、部分重合モノマーシロップ100重量部に対して12.5重量部となるような割合で添加した。
【0124】
中空ガラスバルーン添加後の部分重合モノマーシロップに、フッ素系界面活性剤(商品名「サーフロンS−393」(AGCセイケミカル株式会社製))を0.7重量部添加して、中空無機微粒子を含有した粘着性組成物を得た。その後、前述の細かい歯がついたステータとローターとを備えた気泡混合装置を用いて、粘着性組成物を装置の貫通孔から導入された窒素ガスとともに攪拌することで、気泡が分散混合された粘着性組成物が得られた。なお、気泡は粘着性組成物あるいは粘着剤層の全体積に対して約20体積%であった。
【0125】
気泡を含有した粘着性組成物を、セパレータのはく離処理面に塗布した。セパレータとしては、片面がはく離処理されているポリエチレンテレフタレート製基材(商品名「MRF」、三菱ポリエステルフィルム株式会社製、又は、商品面「MRN」、三菱ポリエステルフィルム株式会社製)を使用した。
【0126】
セパレータに塗布された粘着性組成物を、照度5mW/cmの紫外線(東芝株式会社製「ブラックライト」)を用いて両面から3分間照射し[UVチェッカー(商品名「UVR−T1」、株式会社トプコン製)、最大感度:350nmで測定]、粘着性組成物を硬化させて、厚さ800μmの粘着剤層(アクリル系粘着テープ)を得た。この際、商品名「イルガキュアー651」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.04重量部を光重合開始剤として追加した。また、その他の添加成分として、酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」(チバ・スペシャリティーケミカルズ):0.5重量部)、顔料(商品名「AT DN101」(大日精化):0.02重量部)、顔料分散溶媒(2−エチルヘキシルアクリレート:0.18重量部)を添加した。
【0127】
なお、プライマー層の単位面積当たりの塗布量は、以下の方法によって算出される。表2に示すように、はじめに、被着体12であるポリ塩化ビニル(PVC)の質量を測定する。その後、プライマーを塗布して乾燥させた後の被着体12とプライマー層14との合計質量を測定する。これにより、プライマー層14の質量が算出され、プライマー層の質量を塗布面積で割ることでプライマー層の単位面積当たりの塗布量が算出される。
【0128】
(90°はく離試験)
プライマー層の単位面積当たりの塗布量が異なる各実施例および各比較例に係る接合体において、30分間エージング後、23℃の雰囲気下、90°はく離方向に引張速度300mm/分にて、粘着テープ20をはく離することにより被着体に対するはく離強度[N/25mm]を測定した。測定結果を表2に示す。
【0129】
図3は、各実施例および各比較例に係る接合体における、プライマー層の単位面積当たりの量とはく離強度との関係を示すグラフである。図3、表2に示すように、プライマー層の単位面積当たりの量が0.5[mg/cm]以下である実施例1〜6に係る接合体においては、はく離強度が38.4[N/25mm]以上であり、比較例1〜6に係る接合体よりも大きい。特に、プライマー層の単位面積当たりの量が0.22[mg/cm]以下である実施例1〜4に係る接合体においては、はく離強度が約60[N/25mm]以上である。
【0130】
また、各実施例に係る接合体においては、粘着テープ(粘着剤層)を被着体からはく離しようとすると、粘着剤層自体が凝集破壊され、粘着剤層の少なくとも一部が被着体の表面に残るように構成されている。つまり、プライマー層を介した被着体と粘着剤層との粘着力が非常に高いため、被着体と粘着剤層との間でのはく離(破壊)が起こらず、最終的に粘着テープ自体が凝集破壊するものと考えられる。
【0131】
一方、比較例に係る接合体においては、粘着テープを被着体からはく離しようとすると、被着体とプライマー層との間で破壊が生じている。
【0132】
このように、接合体におけるプライマー層の単位面積当たりの量を0.5[mg/cm]以下、より好ましくは、0.22[mg/cm]以下とすることで、被着体と粘着剤層との接着信頼性を向上することができる。
【0133】
以上、本発明を実施の形態や実施例をもとに説明した。この実施の形態や実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0134】
10 接合体、 12 被着体、 14 プライマー層、 16 粘着剤層、 18 はく離ライナー、 20 粘着テープ、 22 芯層、 24 表層、 26 粘着剤組成物、 28 微粒子、 30 気泡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体と、
前記被着体の上に形成されたプライマー層と、
前記プライマー層の上に設けられている粘着剤層と、を備え、
前記プライマー層は、有効成分として塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレンの少なくとも一方を含み、その単位面積当たりの量が0.5[mg/cm]以下である、
ことを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記被着体は、その表面が、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)の少なくともいずれかの材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記粘着剤層は、微粒子および/又は気泡含有アクリル系粘着剤組成物で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の接合体。
【請求項4】
前記粘着剤層を前記被着体からはく離した際に、前記粘着剤層の少なくとも一部が前記被着体の表面に残ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項5】
被着体の表面に、有効成分として塩素化ポリプロピレンおよび塩素化ポリエチレンの少なくとも一方を含むプライマー溶液を塗布しプライマー層を形成する工程と、
前記プライマー層の上に粘着剤層を貼り付ける工程と、
を備えた接合体の製造方法であって、
前記プライマー層を形成する工程では、プライマー層の有効成分の単位面積当たりの量が0.5[mg/cm]以下となるように、プライマー溶液の塗布量が設定されている、
ことを特徴とする接合体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−18163(P2013−18163A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152192(P2011−152192)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】