説明

接合体を投与する方法

本発明は、宿主動物を治療して病原性細胞を除去する方法に関する。上記方法は、ハプテン−担体接合体を宿主動物に投与するステップと、T−1偏向化アジュバントを前記宿主動物に投与するステップと、ハプテンに接合したリガンドを前記宿主動物に投与するステップであって、ハプテン−担体接合体による前記治療の第1サイクル中に前記リガンド−ハプテン接合体を投与するステップとを具える。本発明は、T−1偏向化アジュバントに対するハプテン−担体接合体の比率が重量対重量基準で約1:10から約1:1である同様の方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法(35U.S.C.)第119条(e)に基づいて、2007年11月15日に提出した米国仮特許出願第61/003,212号、2007年11月16日に提出した第60/988,621号、2007年11月28日に提出した第60/990,815号及び2008年4月10日に提出した第61/043,833号の優先権の利益を主張する。ここで言及することによってこれらの出願を組み込む。
【0002】
本発明は、病原性細胞によって引き起こされる疾病状態の治療に用いるリガンド接合体を投与する方法に関する。より詳細には、ターゲットとするリガンド−免疫原接合体を病気を有する宿主に投与して、癌、炎症、及び、活性化免疫細胞によって引き起こされる他の疾病等の病気を治療する。
【背景技術】
【0003】
哺乳類の免疫系は、腫瘍細胞及びその他の病原性細胞を認識して除去する手段を提供する。通常は免疫系が強い防衛線を与えているが、癌細胞及びその他の病原性細胞が宿主の免疫反応を回避して、宿主に対する付随的病原性を持続する多数の事例がなお存在している。化学療法剤及び放射線治療は、複製する癌細胞を除去するために開発されてきた。しかしながら、すべてではないにしても、現在利用可能な化学療法剤及び放射線治療療法のほとんどは、癌細胞を破壊するように機能するだけでなく、造血系細胞等の正常な細胞にも影響するので、不利益な副作用を有する。さらに、化学療法剤に対する耐性が進化することがある。治療薬に対する耐性を進化させる癌細胞の能力、及び、現在入手可能の抗癌剤の不利益な副作用によって、宿主に対する毒性が低く特異性がある新規なターゲット治療の開発の必要性が強調される。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載する方法は、そのような細胞群に対する宿主の免疫系の認識及び反応を強化することによって、宿主において病原性細胞群を除去することに関する。効果的に病原性細胞の抗原性を高めて内因性の免疫反応で媒介される病原性細胞の除去を強化する。上記方法は、リガンド−免疫原接合体を投与するステップを具え、上記リガンドが、リガンド結合部位を独自に発現するか、優先的に発現するか、又は、過剰発現する病原性細胞群にインビボにおいて特異的に結合することができる。リガンドに接合した免疫原は、抗体産生を誘発することができるか、又は、宿主動物において内因性抗体又は共投与した外因性抗体によって認識され得る。免疫系で媒介される病原性細胞の除去は、レセプタ、トランスポータ、又は、病原性細胞で独自に発現されるか、過剰発現されるか、若しくは、優先的に発現されるその他の表面提示タンパクに、免疫原が接合したリガンドが結合することによって指示される。病原性細胞で独自に発現されるか、過剰発現されるか、又は、優先的に発現される表面提示タンパクは、非病原性細胞に存在しないか又は少量で存在するレセプタであり、病原性細胞を優先的に除去する手段を与える。例えば、免疫系刺激剤、殺細胞剤、腫瘍浸透促進剤、化学療法剤又は細胞毒性免疫細胞等の少なくとも1つの治療因子をさらに宿主動物に共投与して治療効果を高めてもよい。
【0005】
1つの実施形態においては、宿主動物を治療して病原性細胞を除去する方法を提供する。上記方法は、宿主動物にハプテン−担体接合体を投与するステップと、宿主動物にT−1偏向化アジュバントを投与するステップであって、T−1偏向化アジュバントに対するハプテン−担体接合体の重量対重量基準の比率がおよそ1:10〜およそ1:1であるステップと、宿主動物にハプテンに接合したリガンドを投与するステップであって、前記リガンド−ハプテン接合体をハプテン担体接合体の投与の第1週、又は、その後であって、前記ハプテン−担体接合体による前記治療の第1サイクルの完了前に投与するステップとを具える。追加的実施形態において、病原性細胞が癌細胞であるか、若しくは、病原性細胞が活性化免疫細胞であり、又は、活性化免疫細胞がマクロファージ又は単球である。1つの別な実施形態においては、ハプテン−担体接合体の投与の第1週、第2週、第3週又は第4週にリガンド−ハプテン接合体を投与する。
【0006】
さらに別の実施形態においては、前記リガンドがビタミンレセプタに結合するリガンドであるか、前記リガンドが葉酸レセプタ及び他のフォレートレセプタに結合するリガンドからなる群より選択されるか、前記リガンドがリガンドのグルタミルγ−カルボキシル部位のみを介して共有結合でハプテンに連結されているグルタミル部位を有する葉酸類似化合物であるか、前記リガンドがリガンドのグルタミルα−カルボキシル部位のみを介して共有結合でハプテンに連結されているグルタミル部位を有する葉酸類似化合物であるか、又は、前記リガンドがレセプタに結合可能な有機小分子であり、前記レセプタが前記病原性細胞群の表面で優先的に発現されるか、独自に発現されるか、若しくは、過剰発現されるものである。他の態様においては、ハプテンが20,000ダルトン未満の分子量を有する有機分子であり、及び/又は、有機分子がフルオレセイン、ニトロフェニル及びポリニトロフェニルからなる群より選択される。
【0007】
他の例示的態様において、上記方法が免疫刺激剤を宿主動物に投与するステップをさらに具え、上記免疫刺激剤がサイトカインであり、上記サイトカインがIL−2、IL−12、IL−15若しくはこれらの組み合わせを具えているか、又は、上記サイトカインがIFN−γ又はIFN−αと組み合わせてIL−2、IL−12、IL−15又はこれらの組み合わせを具える。他の実施形態においては、リガンド−ハプテン接合体組成物は、複数回の注射に分けて投与し、前記ハプテン−担体接合体の投与はワクチン接種を行うステップを具え、及び/又は、T−1偏向化アジュバントに対するハプテン−担体接合体の重量対重量基準の比率がおよそ1:8〜およそ1:1、およそ1:6〜およそ1:1、およそ1:4〜およそ1:1、およそ1:3〜およそ1:1、およそ1:3〜およそ1:2.5である。
【0008】
別の1つの例示的実施形態においては、上記アジュバントがキラヤサポニンアジュバントであるか、上記アジュバントが修飾されたサポニンアジュバントであるか、上記担体がキーホールリンペットヘモシニアンであるか、又は、前記ハプテン−担体接合体が下記式:

(上記式においてKLHはキーホールリンペットヘモシニアンである。)で表される。前記リガンド−ハプテン接合体は下記式:

で表されるか又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0009】
上記実施形態のいずれにおいても、宿主動物を治療して病原性細胞を除去する方法において、ハプテン−担体接合体を宿主動物に投与するステップと、T−1偏向化アジュバントを宿主動物に投与するステップと、ハプテンに接合したリガンドを前記宿主動物に投与するステップであって、リガンド−ハプテン接合体をハプテン−担体接合体による前記治療の第1サイクル中に投与するステップとを具える方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、早期又は後期にフォレート−FITCを投薬して、フォレート−FITCと共にビス−EDA−FITCを注射したマウスにおける直腸温度の分析結果を示している。1μg用量のKLH−FITCを用いてマウスに予め免疫を与えた。
【図2】図2は、早期又は後期にフォレート−FITCを投薬すると共に、フォレート−FITCと共にビス−EDA−FITCを注射したマウスにおける直腸温度を示している。35μg用量のKLH−FITCを用いてマウスに予め免疫を与えた。
【図3】図3は、早期又は後期にフォレート−FITCを胸壁腫瘍移植片を有するマウスに投与した場合の生存に対するフォレートターゲット免疫療法の効果を示している。35μg用量のKLH−FITCを用いてマウスに予め免疫性を与えた。
【図4】図4は、フォレート−FITCの例示的構造を示している。
【図5】図5は、KLH−FITCの例示的構造を示している。
【図6】図6は、KLH−FITC対フォレート−FITCで投薬プロトコルを示している。
【図7】図7は、例示的な投薬の概要を示している。パネルA:第23日に1用量のEC17を静脈内に投与した。パネルB:8日〜12日、15日〜19日及び22日にEC17を複数回皮下投与してマウスを脱感作した。
【図8】図8は、免疫を付与したマウスにおける抗FITC IgE抗体産生を示している。
【図9】図9は、免疫を付与したモルモットにおけるアナフィラキシーアッセイを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記方法を、癌又はマクロファージ若しくは単球等の活性化免疫細胞によって引き起こされる疾病状態を有する宿主の治療的処置用に提供する。上記方法は、病原性細胞を抗原性にラベルして結果的に宿主の免疫系によってそれらを認識及び除去させることによって、免疫反応によって媒介される病原性細胞の除去を強化する。上記方法は、癌細胞又は活性化免疫細胞などの他の病原性細胞に対して高い親和性で結合できるリガンド−免疫原接合体を用いる。上記リガンド−免疫原接合体は、前記細胞が抗原性を示し、宿主自身の免疫系によって又は例えば共投与した抗体によって除去されるように、病原性細胞を修飾する。上記方法は、リガンド−免疫原接合体と、内因性免疫反応を刺激することができるさらなる治療因子(例えば、サイトカイン等の免疫刺激剤)とを使用する併用療法を用いてもよい。
【0012】
ここに記載されている方法を使用して、病原性細胞群を有する宿主動物において、内因性免疫反応で媒介される病原性細胞群の除去を強化する。本発明は、癌及び炎症等の様々な病状を引き起こす病原性細胞群に適用できる。様々な態様においては、病原性細胞群は、良性腫瘍及び悪性腫瘍を含む腫瘍形成性の癌細胞群であってもよく、あるいは、非腫瘍形成性であってもよい。他の実施形態においては、癌細胞群は、自然に、又は、宿主動物の生殖細胞系に存在する突然変異若しくは体細胞突然変異などのような過程によって生じたものであってもよく、あるいは、突然変異は、化学的に、ウイルスによって、又は、放射線によって生じたものであってもよい。他の例示的実施形態においては、上記方法を使用して、上皮性悪性腫瘍、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、上咽頭癌、白血病及び骨髄腫などの癌を治療できる。他の様々な実施形態においては、癌細胞群は、限定されないが、口腔、甲状腺、内分泌、皮膚、胃、食道、喉頭、膵臓、結腸、膀胱、骨、卵巣、頚部、子宮、胸、睾丸、前立腺、直腸、腎臓、肝臓及び肺の癌を含んでいてもよい。
【0013】
ここに記載されている方法は、ヒト臨床医学及び獣医学のいずれの用途にも使用できる。様々な例示的態様において、病原性細胞群を有し、リガンド−免疫原接合体を用いて治療する宿主動物は、人間(例えばヒト患者)であってもよく、あるいは、獣医学用途の場合は、研究用動物、農業用動物、家畜、又は、野生動物であってもよい。
【0014】
様々な例示的実施形態において、例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内のように非経口的に上記リガンド−免疫原接合体を宿主動物に投与してもよい。他の実施形態においては、上記接合体を、医学的に有用な他のプロセスによって宿主動物に投与してもよく、持続的に放出する投薬形態を含む任意の有効用量及び適切な治療的投薬形態も用いることができる。例えば、ここに記載されている方法は、腫瘍の外科的除去、放射線治療、化学療法、又は、モノクローナル抗体療法、免疫調整剤、免疫作動細胞の養子移入を用いた治療、造血成長因子、サイトカイン及びワクチン接種を用いた治療を含む(これらに限定されない)他の免疫療法等の生物学的治療と組み合わせて用いてもよい。
【0015】
ここに記載されている方法によれば、上記リガンド−免疫原接合体を、広範で様々なリガンド及び免疫原から選択してもよい。上記リガンドは、(リガンド結合のために近づくことができる)リガンドに対するレセプタが病原性細胞上で優先的に発現させることによって、宿主動物において病原性細胞に特異的に結合できる。様々な例示的実施形態において、許容可能なリガンドには、葉酸、葉酸の類似化合物及び他のフォレートレセプタ結合分子、他のビタミン、ライブラリー検査から同定されたペプチドリガンド、腫瘍特異的炭水化物、腫瘍特異的アプタマー、腫瘍特異的炭水化物、腫瘍に特異的なモノクローナル又はポリクローナル抗体、抗体のFab又はscFv(すなわち、単一鎖可変領域)断片又は他の特異的に発現されるか若しくは転移癌細胞に独自に近接し得るタンパク、組み合わせライブラリーに由来する有機小分子、EGF、FGF、インスリン及びインスリン様成長因子等の成長因子、及び、同族のポリペプチド、ソマトスタチン及びその類似化合物、トランスフェリン、リポタンパク複合体、胆汁酸塩、セレクチン、ステロイドホルモン、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(Arg−Gly−Asp)を含むペプチド、レチノイド、様々なガレクチン、γ−オピオイドレセプタリガンド、コレシストキニンAレセプタリガンド、アンギオテンシンAT1又はAT2レセプタに対して特異的なリガンド、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプタγリガンド、及び、腫瘍細胞又は活発化免疫細胞の表面で優先的に発現されるレセプタに特異的に結合する他の分子、又は、これらの分子のいずれかの断片が含まれる。ここで用いられているように、「フォレートレセプタ結合リガンド」は、フォレートレセプタに結合する類似体及び誘導体を含む、フォレートレセプタに対して高親和性結合が可能な任意のリガンドも含む。
【0016】
様々な実施形態において、フォレートレセプタ結合リガンドは、葉酸、葉酸類似化合物、又は、他のフォレートレセプタに結合する分子であってもよい。使用可能なフォレート類似化合物は、フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、並びに、テトラヒドロプテリン、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸及びこれらのデアザ及びジデアザ類似化合物等のフォレートレセプタ結合プテリジンを含む。「デアザ」及び「ジデアザ」類似化合物という用語は、天然に存在する葉酸構造中の1つ又は2つの炭素原子が窒素原子で置換された(当業界で知られている)類似化合物を表す。例えば、デアザ類似化合物は、1−デアザ、3−デアザ、5−デアザ、8−デアザ及び10−デアザ類似化合物を含む。ジデアザ類似化合物は、例えば、1,5−ジデアザ、5,10−ジデアザ、8,10−ジデアザ、及び、5,8−ジデアザ類似化合物を含む。前記葉酸類似化合物は、フォレートレセプタに結合する能力を示して、慣用的に「フォレート」と称されている。他のフォレートレセプタ結合類似化合物は、アミノプテリン、アメトプテリン(メトトレザト)、N10−メチルフォレート、2−デアミノ−ヒドロキシフォレート、(1−デアザメトプテリン又は3−デアザメトプテリン)等のデアザ類似化合物、及び、3’,5’−ジクロロ−4−アミノ−4−デオキシ−N10−メチルプテロイルグルタミン酸(ジクロロメトトレキセート)を含む。ここで言及することによって組み込まれている米国特許第2,816,110号、第5,140,104号、第5,552,545号、又は、第6,335,434号に記載されているような他のフォレートレセプタ結合類似化合物又は誘導体も用いることができる。ここで言及することによって組み込まれている「Westerhof,et al.,Mol Pharm.48 第459−471頁(1995年)」に記載されてるように、当業界において周知の任意のフォレート類似化合物又は誘導体を用いることができる。
【0017】
さらなる葉酸の例示的類似化合物であって、葉酸レセプタ(すなわち、フォレートレセプタ結合リガンド)に結合するものは、ここで言及することによって組み込まれている米国特許公開公報第2005/0227985号及び第2004/0242582号に記載されている。例示的に、そのような葉酸類似化合物は、下記一般式を有する。

上記式において、*は、さらなる二価のリンカーラジカルの付着部位を表す。
X及びYは、ハロ基、R、OR、SR及びNRからなる群よりそれぞれ独立して選択され;
U、V及びWは、−(R6a)C=、−N=、−(R6a)C(R7a)−、及び、−N(R4a)−からなる群よりそれぞれ独立して選択される二価の部位を表し;Qは、C及びCHからなる群より選択され;Tは、S、O、N及び−C=C−からなる群より選択され;
及びAは、酸素、硫黄、−C(Z)−、−C(Z)O−、−OC(Z)−、−N(R4b)−、−C(Z)N(R4b)−、−N(R4b)C(Z)−、−OC(Z)N(R4b)−、N(R4b)C(Z)O−、−N(R4b)C(Z)N(R5b)−、−S(O)−、−S(O)−、−N(R4a)S(O)−、−C(R6b)(R7b)−、−N(C=CH)−、−N(CHC=CH)−、C−C12アルキレン基、及び、C−C12アルキレンオキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択され、Zが酸素又は硫黄であり;
は、水素、ハロ基、C−C12アルキル基及びC−C12アルコキシ基からなる群より選択され;R、R、R、R4a、R4b、R、R5b、R6b及びR7bは、水素、ハロ基、C−C12アルキル基、C−C12アルコキシ基、C−C12アルカノイル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、(C−C12アルコキシ)カルボニル基、及び、(C−C12アルキルアミノ)カルボニル基からなる群よりそれぞれ独立して選択され;
及びRは、水素、ハロ基、C−C12アルキル基及びC−C12アルコキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択されるか;又は、R及びRは一体でカルボニル基を形成しており;
6a及びR7aは、水素、ハロ基、C−C12アルキル基及びC−C12アルコキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択されるか;又は、R6a及びR7aが一体でカルボニル基を形成しており;
ここに記載されているように、Lは二価のリンカーであり;
n、p、r、s及びtは、それぞれ独立して、0又は1である。
そのようなフォレートレセプタに結合するフォレートの類似化合物の一態様においては、sが1であるときにtが0であり、sが0であるときにtが1である。そのようなフォレート類似化合物の別の一態様においては、n及びrの両方が1であり、リンカーLは、α−アミノ基においてAに共有結合でアミド結合を介して連結された天然に存在するアミノ酸である。例示的なアミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸などを含む。
【0018】
前述の葉酸類似化合物及び/又は誘導体は、フォレートレセプタと結合する能力を表して慣用的に「フォレート」と称する。また、ここに記載されているように、そのようなリガンドが外因性分子に接合すると、フォレートによって媒介されるエンドサイトーシスなどの膜透過輸送を強化するのに有効である。従って、ここで用いられているように、「フォレート」という用語は、接合体を形成するのに用いる葉酸、又は、代替的にフォレートレセプタ又は葉酸レセプタに結合可能なフォレート類似化合物又は誘導体(すなわち、フォレートレセプタ結合リガンド)の両方をそれぞれ指すことが理解されるであろう。
【0019】
1つの別な実施形態においては、他のビタミンをリガンドとして用いることができる。例えば、ここに記載されている方法に従って用いることができるビタミンは、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、リボフラビン、チアミン、ビオチン、ビタミンB12、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE及びビタミンK、他の関連ビタミン分子、これらの類似化合物及び誘導体、並びに、これらの組み合わせを含む(ここで言及することによって組み込まれている米国特許第5,108,921号、第5,416,016号及び第5,635,382号をを参照されたい。)。
【0020】
1つの例示的態様においては、リガンドのための結合部位は、レセプタに特異的に結合できる任意の分子のためのレセプタを含んでいてもよく、そのレセプタ又は他のタンパクは、例えば、癌細胞又は活性化免疫細胞を含む病原性細胞群において優先的に発現される。
様々な実施形態において、上記結合部位は、成長因子、ビタミン、オピオイドペプチドを含むペプチド、ホルモン、抗体、炭水化物又は有機小分子のためのレセプタであってもよいし、あるいは、上記結合部位は、腫瘍特異的抗原であってもよい。1つの実施形態においては、リガンド−免疫原接合体の組合せを用いて、宿主の免疫反応又は共投与した抗体によって病原性細胞を除去するためのターゲティングを最大化することができる。
【0021】
ここに記載されている方法の様々な実施形態において、既存の免疫又は先天的免疫系の一部を構成する免疫を使用できる。1つの別な実施形態においては、免疫原を対象とする抗体を宿主動物に投与して受動的免疫を構築してもよい。例示的態様においては、本発明において使用するのに適した免疫原は、標準的に予定したワクチン接種、又は、ポリオウイルス、破傷風、チフス、風疹、麻疹、ムンプス、百日咳、結核及びインフルエンザ抗原などの病原体及びα−ガラクトシル基への以前の自然曝露を通じて既存の免疫が発展した抗原又は抗原ペプチドを含む。そのような場合、リガンド−免疫原接合体を用いて、以前に獲得した体液性免疫又は細胞性免疫を再び病原性細胞に向けさせて、宿主動物において外来細胞又は病原体を除去する。他の実施形態において、免疫原は、抗原又は抗原ペプチドであって、非天然抗原又はハプテン(例えばフルオレセインイソチオシアネート、ジニトロフェニル、又は、トリニトロフェニル)に対する免疫化を通じて宿主動物が新たな免疫を構築したもの、及び、先天的免疫が存在する抗原(例えばスーパー抗原及びムラミールジペプチド)、又は、例えば、20,000ダルトン未満の分子量を有する有機小分子であってもよい。ここで用いられているように、「免疫原」は、抗体でない化合物であり、免疫原は、IgG又はIgM抗体反応を誘発して治療方法において治療的効果をもたらすために医師が投与する化合物である。
【0022】
様々な例示的態様において、本発明のリガンドと免疫原とは、リガンドから免疫原への共有結合、イオン性結合、又は、水素結合を含む当該技術分野で知られている任意の接合体形成方法を用いて接合させてもよく、又は、二価のリンカー等の直接的又は間接的リンク基を介して接合させてもよい。例えば、接合体は、一般的には、合成物のそれぞれの構成分子上の酸基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、アミノ基又はヒドラゾ基間におけるアミド、エステル又はイミノ結合の形成を介して、リガンドが免疫原に共有結合することによって形成される。リガンドを免疫原に連結させる方法は、ここで言及することにより組み込まれているPCT公開公報番号WO2006/012527号に記載されている。
【0023】
さらに、様々な実施形態において、上記接合体のリンカー部分を構造的に修飾する。例えば、接合体のリンカー部分には、天然に存在するアミノ酸及び慣用的合成法によって得られるアミノ酸(これらに限定されない)を含む複数のアミノ酸置換がなされていてもよい。一態様においては、1つ以上のα−アミノ酸に代えて、β−、γ−及び長鎖アミノ酸を用いてもよい。別の一態様においては、そのような分子にみられる不斉中心に対する原子配置は、全分子の光学純度の様々な混合物を形成するように選択されるか、又は、不斉中心の亜群のみが存在する。別の一態様においては、リンカーに含まているペプチド鎖の長さは、その鎖に含まれるアミノ酸の数を変更することによって、又は、より多くの若しくはより少ないβ、γ又は長鎖アミノ酸を含むことによって、短くするか又は長くしてもよい。別の一態様においては、ペプチド部分中のアミノ酸側鎖を選択して、リンカー部分の相対的な親水性を特異的に増大又は低下させてもよいし、あるいは、分子全体の親水性を全体的に増大又は低下させてもよい。
【0024】
同様に、ここに記載されているリンカーの他の化学的断片の長さ及び形を修飾してもよい。一態様においては、リンカーはアルキレン鎖を含む。上記アルキレン鎖は、長さが変わってもよく、あるいは、分岐基を含んでいてもよく、あるいは、環式部位を含んでいてもよく、該環式部位は、アルキレン鎖に対して直鎖又はスピロであってもよい。
【0025】
1つの実施形態においては、リガンドは、葉酸、葉酸類似化合物、又は、他の任意のフォレートレセプタ結合分子である。フォレートリガンドをトリフルオロ酢酸無水物を用いた手順によって免疫原に接合させ、プテロイルアジド中間体を経て、葉酸のγ−エステルを調製し、結果的にフォレートのグルタミン酸基のカルボキシ基のみを介して免疫原に接合されたフォレートリガンドが合成される。前記γ−接合体は、高親和性を有するフォレートレセプタに結合しており、γ−接合体とα−接合体との混合物が生成するのを回避する。
【0026】
1つの別な実施形態においては、α−接合体は、γ−カルボキシ基が優先的にブロックされた中間体から調製することができる。前記α−接合体を形成し、次いで、当該技術分野で知られている有機合成プロトコル及び手順を用いてγ−カルボキシ基をブロック解除する。
【0027】
ここに記載されている方法において、リガンド−免疫原接合体は、内因性免疫反応によって媒介される病原性細胞除去を促進する。例えば、内因性免疫反応は、体液性反応、細胞性免疫反応、及び、補体媒介性細胞融解と、抗体依存性細胞媒介性細胞障害作用(ADCC)と、貪食に至る抗体オプソニン作用と、抗増殖、アポトーシス又は分化のシグナリングに至る抗体結合におけるレセプタのクラスタ化と、送達した抗原/ハプテンの直接的な免疫細胞認識とを含む宿主動物における他の内因性免疫反応を含んでいてもよい。様々な態様において、内因性免疫反応は、B細胞、ヘルパーT細胞及びキラーT細胞を含むT細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、好中球、LAK細胞等の免疫細胞種が関与するものであってもよい。
【0028】
1つの実施形態においては、体液性反応は、標準的にスケジュールしたワクチン接種などのプロセス、又は、新規な免疫を誘導する非天然抗原又はハプテンと共に天然抗原若しくは非天然抗原若しくはハプテン(例えばフルオレセインイソチオシアネート、ニトロフェニル又はポリニトロフェニル(例えばジニトロフェニル又はトリニトロフェニル))を用いた能動免疫化によって誘導される反応であってもよい。例えば、能動免疫化は、標準的なワクチン接種療法外でスケジュールした、天然抗原、非天然抗原又はハプテンの複数回の注射を含み、新規な免疫を誘導することができる。ここに記載されている方法によれば、天然抗原、非天然抗原又はハプテンを、キラヤサポニンアジュバント(例えばGPI−0100)又は他の任意のT−1偏向化アジュバント等の(同じか又は異なる溶液中の)アジュバントと組み合わせて投与することができる。
【0029】
1つの実施形態においては、ハプテン−担体(例えばKLH又はBSA)接合体及びT1偏向化アジュバントを用いて宿主を予め免疫化して、ハプテンに対する既存の免疫を引き起こす。その後、リガンド−ハプテン接合体を宿主に投与して、標的とする病原性細胞に結合したリガンド−ハプテン接合体に対する、体液性免疫反応若しくは細胞性媒介免疫反応又はこれらの両方を生じさせる。一態様においては、同一の又は異なる溶液中においてハプテン−担体接合体及びT1偏向化アジュバントの組合せを用いて宿主に予め免疫性を与える。この実施形態において、T1偏向化アジュバントは、続いてリガンド−ハプテン接合体を投与したときのハプテンに対する免疫反応を強める。
【0030】
使用できる例示的担体は、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、セイヨウトコブシヘモシアニン(HtH)、不活性化されたジフテリア毒素、不活性化された破傷風トキソイド、結核菌の精製タンパク誘導体(PPD)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オバルブミン(OVA)、g−グロブリン、チログロブリン、ペプチド抗原、及び、ポリ−L−リジン、デンドリマー及びリポソーム等の合成担体を含む。
【0031】
ハプテンを用いる実施形態においては、一般に、ハプテンが担体に接合してハプテン−担体接合体を形成する。ハプテン及び担体は、上記方法のいずれを用いても接合できる。例えば、当該技術分野で知られている任意の方法であって、担体とハプテンとの共有結合、イオン結合、又は、水素結合を含む複合体を形成する方法を用いて、二価のリンカー等のリンク基を介して直接的又は間接的に、担体(例えばKLH又はBSA)をハプテンに接合できる。ハプテン−担体接合体は、一般的に、接合体のそれぞれの構成要素上の酸基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、アミノ基又はヒドラゾ基間のアミド、エステル又はイミノ結合の形成による共有結合によって形成される。リンカーを用いる実施形態において、リンカーは、一般的には約1個から約30個の炭素原子を具え、より一般的には約2個から約20個の炭素原子を具える。低分子量リンカー(すなわち、約20から約500の近似分子量を有するもの)を一般的に使用する。1つの別な実施形態においては、リンカーは、仲介リンカー、スペーサアーム又は架橋分子を介した連結などによってハプテンに担体を連結させる間接的手段を具えていてもよい。
【0032】
ハプテン−担体接合体を用いる実施形態(例えば、図5を参照されたい。)において、T−1偏向化アジュバントに対するハプテン−担体接合体の比率は、重量対重量基準で、約1:10〜約1:1、約1:8〜約1:1、約1:6〜約1:1、約1:4〜約1:1、約1:3〜約1:1に変動してもよいし、又は、約1:3若しくは約1:2.5であってもよい。ハプテン−担体接合体を用いる他の例示的態様においては、T−1偏向化アジュバントに対するハプテン−担体接合体のモル比が、約1.0×10−3〜約6×10−5で変動してもよい。
【0033】
1つの実施形態においては、免疫反応をT1反応に偏らせるアジュバントを用いることができる。アジュバントでT1に偏るように誘導した免疫は、マウスにおいて免疫グロブリンアイソタイプ分散分析によって測定できる。免疫反応をT1反応に偏らせるアジュバントは、マウスにおいてIgG1抗体レベルに対するIgG2a抗体レベルを優先的に上昇させるアジュバントである。抗原特異的なIgG2a/IgG1比(≧1)は、T1様抗体サブクラスパターンを示すことができる。しかしながら、本発明によれば、マウスにおいて抗原に特異的な抗体の産生を増加させ、同時に相対的IgG2a/IgG1比を約0.3を超えて上昇させる任意のアジュバントも免疫反応をT1に偏らせる。様々な態様において、そのようなアジュバントは、サポニンアジュバント(例えば脂質修飾されたキラヤサポニンアジュバントを含むキラヤサポニン)、CpG、3−脱アシル化したモノホスホリルリピドA(MPL)、ウシのカルメット−ゲラン桿菌(BCG)、二重ステムループ免疫修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド(d−SLIM)、熱殺菌したウシ流産菌(HKBA)、熱殺菌したミコバクテリウム−ヴァッケ(SRL172)、不活性化したワクシニアウィルス、シクロホスファミド、プロラクチン、サリドマイド、アクチミド、レビミド等を含んでいてもよい。サポニンアジュバント並びにそれらの調製及び使用は、ここで言及することによって組み込まれている米国特許第5,057,540号、第5,273,965号、第5,443,829号、第5,508,310号、第5,583,112号、第5,650,398号、第5,977,081号、第6,080,725号、第6,231,859号及び第6,262,029号に詳細に記載されている。
【0034】
1つの別な実施形態においては、宿主動物がα−ガラクトシル基に対する免疫などの既存の生来的免疫を有する場合には、結果的に先天性免疫から体液性反応が生じてもよい。1つの別な例示的態様においては、血清から回収した天然抗体又は遺伝子操作されているか若しくは遺伝子操作されていないモノクローナル抗体(ヒト化抗体を含む)等の抗体を宿主動物に投与することによって受動的免疫を構築してもよい。受動的免疫を発現させるための特定量の抗体試薬の使用、及び、リガンド−免疫原接合体の使用であって、受動的に投与された抗体が免疫原を対象としている使用は、患者における他の潜在的な抗原に対する既存の抗体価が治療的に有用でない場合に用いる試剤の標準セットに優位性を与える。1つの実施形態においては、受動的に投与する抗体を、リガンド−免疫原接合体と共に共投与してもよい。共投与は、リガンド−免疫原接合体の投与前に、同時に、又は、その後に抗体を投与することとして定義される。
【0035】
既存の抗体、誘導された抗体、又は、受動的に投与された抗体は、リガンド−免疫原接合体が腫瘍細胞又は他の病原性細胞に優先的に結合することによって、これらの浸潤細胞を再び対象とする。例えば、病原性細胞を、補体媒介性溶解、ADCC、抗体依存性貪食、又は、レセプタの抗体クラスタ化によって除去できる。細胞毒性プロセスは、細胞媒介性免疫等の他の種類の免疫反応、及び、引き寄せられた抗原提示細胞が望ましくない細胞を貪食し、抗原を有する細胞又は器官を除去する免疫系に対して天然腫瘍抗原を提示するときに発生する二次反応を含んでいてもよい。ここで用いられているように、疾病状態に関する「除去された」及び「除去する」という用語は、症状を抑えるか若しくは疾病状態の症状をなくすこと、又は、疾病の進行若しくは再発を防止することを意味する。ここで用いられているように、リガンドレセプタを発現する免疫細胞群の「除去」及び「不活性化」という用語は、この細胞群を死滅させるか又は完全に若しくは部分的に不活性化させて、治療している病状の免疫細胞媒介性発病特性を低減することを意味する。
【0036】
1つの例示的態様においては、詳細に上述した方法と組み合わせて、少なくとも1つの治療因子を具えるさらなる組成物を宿主に投与して、内因性免疫反応によって媒介される病原性細胞除去を強化してもよい。あるいは、1より多いさらなる治療因子を投与してもよい。治療因子は、内因性免疫反応、化学療法剤、又は、投与したリガンド−免疫原複合体の有効性を補完することができる他の治療因子を刺激することができる化合物から選択されてもよい。この実施形態において、さらなる治療因子によって、インターロイキン1−18、幹細胞因子、塩基性FGF、EGF、G−CSF、GM−CSF、FLK−2リガンド、HILDA、MIP−1α、TGF−β、TGF−α、M−CSF、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、可溶性CD23、LIF、及び、これらの組み合わせ等のサイトカイン又は免疫細胞成長因子等の内因性免疫反応を刺激することができる。
【0037】
1つの実施形態においては、例えば、治療的有効量のIL−2(例えば、およそ5000IU/用量/日からおよそ500,000IU/用量/日を毎日複数回投与する療法)、及び、IFN−α(例えば、およそ7500IU/量/日からおよそ150,000IU/量/日を毎日複数回投与する療法)を、フォレート−FITC(図4参照)と共に用いて、そのような細胞群を有する宿主動物において病原性細胞を除去する。別の一態様においては、治療的有効量のIL−2を、およそ0.1MIU/m/用量/日からおよそ60MIU/m/用量/日の量で毎日複数回投与する療法で用いることができ、また、IFN−αを、例えばおよそ0.1MIU/m/量/日からおよそ10MIU/m/量/日の量で毎日複数回投与する療法で用いることができる(MIU=100万国際単位;m=平均的なヒトの体表面積の近似値)。1つの別な実施形態においてはIL−2及びIFN−αを治療的有効量(例えば、それぞれ7MIU及び3MIU)で用い、さらに別の実施形態においては治療的有効量でIL−15及びIFN−γを用いる。1つの代替的実施形態においては、IL−2、IFN−γ又はIFN−α、及び、GM−CSFを組み合わせて用いる。他の実施形態においては、他のインターロイキン及びインターフェロン及びコロニー刺激因子の組合せを含むサイトカインの他の有効な組合せも用いることができる。
【0038】
他の例示的実施形態おいて、それ自体が細胞毒性を有し、腫瘍透過性を強化するか又はアレルゲン性を低減するように機能し得る、ここに記載する方法で使用するのに適している化学療法剤には、副腎皮質ステロイド、アルキル化剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン剤、コルチコステロイド、ジフェンヒドラミン、アンドロゲン、エストロジェン、(シトシンアラビノシド、プリン類似化合物、ピリミジン類似化合物及びメトトレザト等の)代謝拮抗物質、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブチル、シスプラチン及び他の白金化合物、タモキシフェン、タキソール、シクロホスファミド、植物アルカロイド、プレドニゾン、ヒドロキシ尿素、テニポシド、マイトマイシンC及びブレオマイシン等の抗生物質、ナイトロジェンマスタード、ニトロスレアス、ビンクリスチン、ビンブラスチン、炎症性剤及び炎症誘発性炎症性剤、抗ヒスタミン剤、並びに、当該技術分野で知られている他の化学療法剤又はアレルゲン性を低減する薬剤が含まれる。
【0039】
例えば、病原性細胞の除去は、腫瘍塊又は病原性免疫細胞の縮小又は除去を具えて治療反応をもたらしてもよい。腫瘍の場合において、上記除去は、原発腫瘍又は転移したか若しくは原発腫瘍から分離する工程中に存在する細胞の除去であってもよい。1つの実施形態においては、腫瘍の外科的除去、放射線治療、化学療法又は生物学的療法を含む任意の治療的アプローチによって、腫瘍除去後の腫瘍再発を防ぐ予防療法も提供する。予防療法は、毎日複数回の投与を行う療法等のリガンド−免疫原接合体を用いた初期治療、及び/又は、その初期治療から数日又は数ヶ月のインターバル後におけるさらなる治療若しくは一連の治療であってもよい。
【0040】
様々な実施形態において、リガンド−免疫原接合体の単位1日量は、宿主の状態、治療する病状、接合体の分子量、該接合体の投与経路及び生体内分布、及び、放射線治療等の他の治療的処置の併用の可能性に著しく依存して変化し得る。患者に投与する有効量は、体表面積、患者の体重、患者状態の医師評価に基づく。様々な例示的実施形態において、上記有効量を、約1ng/kg〜約1mg/kg、約1μg/kg〜約500μg/kg、又は、約100μg/kg〜約400μg/kg(例えば約300μg/kg)の範囲で変えてもよい。
【0041】
例えば、アジュバント及びハプテン−担体接合体の投薬量は、宿主の状態、治療する疾病状態、接合体の分子量、投与経路及び生体内分布、並びに、放射線治療等の他の治療的処置の併用の可能性に依存して変化し得る。患者に投与する有効量は、体表面積、患者の体重、及び、患者状態の医師評価に基づく。1つの例示的態様において、アジュバントの有効量は、1用量当たり約0.01μg〜約100mg、1用量当たり約100μg〜約50mg、1用量当たり約500μg〜約10mg、又は、1用量当たり約1mg〜10mgに変動することがある。1つの実施形態において、ハプテン−担体接合体の有効量は、1用量当たり約1μg〜約100mg、1用量当たり約10μg〜約50mg、1用量当たり約50μg〜約10mg、又は、1用量当たり約0.5mg〜約5mg(例えば1用量当たり約3mg)に変動することがある。
【0042】
1偏向化アジュバント及びハプテン−担体接合体を投与する任意の効果的な療法を用いることができる。例えば、T1偏向化アジュバント及びハプテン−担体接合体を1回量として投与することもでき、又は、これらを毎日複数回投与する療法で分けて(すなわち、分割)投与することもできる。さらに、毎日の治療に代えて、時間差療法(例えば1週当たり1日〜5日)を用いることができる。
【0043】
例示的実施形態において、リガンド−免疫原接合体及び治療因子は1回量として投与することができ、あるいは、これらを毎日複数回投与する療法として分割して投与することができる。さらに、毎日の治療に代えて、時間差療法(例えば、1週当たり1日〜6日)を用いることができる。本発明の1つの実施形態においては、リガンド−免疫原接合体及び治療因子を複数回注射して宿主を治療し、病原性細胞群を除去する。1つの実施形態においては、宿主に、リガンド−免疫原接合体を、例えば、12〜72時間間隔又は48〜72時間間隔で複数回(例えば約2回から約50回以内で)注射する。最初の注射後に、数日又は数か月の間隔で、さらなる注射によってリガンド−免疫原接合体を患者に投与することができ、さらなる注射によって疾病の再発を防止する。代替的に、リガンド−免疫原接合体の初期の注射は、病気の再発を防止する可能性がある。
【0044】
1つの実施形態においては、宿主動物を治療して病原性細胞を除去する方法を提供する。上記方法は、T−1偏向化アジュバントを宿主動物に投与するステップと、ハプテン−担体接合体を宿主動物に投与するステップであって、T−1偏向化アジュバントに対するハプテン−担体接合体の比率が重量対重量基準で約1:10〜約1:1であるステップと、ハプテンに接合したリガンドを宿主動物に投与するステップであって、ハプテン−担体接合体による治療の第1サイクル中にリガンド−ハプテン接合体の投与を開始するステップとを具える。例えば、この方法を用いてアレルギー反応を示す副作用(例えば、発疹、かゆみ、顔面潮紅)の発生の可能性を低くすることができる。ここで用いられているように、「治療の第1サイクル」は、ハプテン−担体接合体の投与が治療の第1サイクルにおいて連続的であるか否かに関わらず、ハプテン−担体接合体の投与の第1週、第2週、第3週又は第4週を意味する。
【0045】
例えば、この実施形態において、病原性細胞は、癌細胞又は(マクロファージ若しくは単球等の)活性化免疫細胞であってもよい。1つの実施形態においては、リガンド−ハプテン接合体の投与をハプテン−担体接合体による治療の第1週に開始する。1つの別な実施形態においては、リガンド−ハプテン接合体の投与をハプテン−担体接合体による治療の第2週に開始する。他の実施形態においては、ハプテン−担体接合体による治療の第1サイクルが完了する前にリガンド−ハプテン接合体の投与を開始する限り、ハプテン−担体接合体の投与の任意の週の開始時にリガンド−ハプテン接合体を投与してもよい。様々な実施形態において、リガンド−ハプテン接合体と共にサイトカイン等の他の治療因子を投与することができる。1つの別な実施形態においては、リガンド−ハプテン接合体の用量(例えば0.3mg/kg(1日1回×5日))を分割することができ、リガンド−ハプテン接合体を一日当たり(例えば0.3mg/kgの60%、30%及び10%の量)の分割量として投与することができる。
【0046】
様々な例示的実施形態において、T1偏向化アジュバントに対するハプテン−担体接合体の比率は、重量対重量基準で、およそ1:8〜およそ1:1、およそ1:6〜およそ1:1、およそ1:4〜およそ1:1、およそ1:3〜およそ1:1の範囲で変動するか、又は、およそ1:3若しくはおよそ1:2.5(例えば、1日当たり1.2mg〜3mg)である。1つの実施形態においては、ハプテン−担体接合体とアジュバントとを、およそ1:3、およそ1:2.5又はおよそ1:2の重量対重量比で、患者に投与する約5分から約1時間前に混合してミセル形成を回避することができる。
【0047】
1つの実施形態において、ハプテン−担体接合体は下記式:

(上記式において、KLHはキーホールリンペットヘモシニアンである。)で表される。上記リガンド−ハプテン接合体は下記式:

で表されるか又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0048】
1つの別な実施形態において、宿主動物を治療して病原性細胞を除去する方法を提供する。上記方法は、ハプテン−担体接合体を宿主動物に投与するステップと、T−1偏向化アジュバントを宿主動物に投与するステップと、ハプテンに接合したリガンドを宿主動物に投与するステップであって、ハプテン−担体接合体による治療の第1サイクル中にリガンド−ハプテン接合体を投与するステップとを具える。リガンドがフォレート又はフォレートの類似化合物若しくは誘導体である実施形態においては、99mTeを用いて放射性標識したキレート剤であって、フォレートをターゲットにするキレート剤を用いて、患者がフォレート−レセプタ陽性腫瘍を有しているか否かを判断することができる(ここで言及することによって組み込まれている米国特許公開公報第20040033195号を参照されたい。)。
【0049】
例えば、この方法を用いてアレルギー反応を示す副作用(例えば発疹、かゆみ、顔面潮紅)の発生の可能性を低くすることができる。様々な態様において、病原性細胞が癌細胞又は(マクロファージ若しくは単球等の)活性化免疫細胞であってもよい。
【0050】
1つの実施形態においては、リガンド−ハプテン接合体の投与をハプテン−担体接合体による治療の第1週に開始する。1つの別な実施形態においては、リガンド−ハプテン接合体の投与をハプテン−担体接合体による治療の第2週に開始する。他の実施形態においては、ハプテン−担体接合体による治療の第1サイクルが完了する前にリガンド−ハプテン接合体の投与を開始する限り、ハプテン−担体接合体の投与の任意の週の開始時にリガンド−ハプテン接合体を投与してもよい。様々な実施形態において、リガンド−ハプテン接合体と共にサイトカイン等の他の治療因子を投与することができる。1つの別な実施形態においては、リガンド−ハプテン接合体の用量(例えば0.3mg/kg(1日1回×5日))を分割することができ、リガンド−ハプテン接合体を一日当たり(例えば0.3mg/kgの60%、30%及び10%の量)の分割量として投与することができる。例示的態様においては、ハプテン−担体接合体(1つの態様中においてはGPI−0100などのアジュバントと組み合わせる)、リガンド−ハプテン接合体、及び、治療因子を、週1回、週3回(TIW)、毎日、又は、他の有用な投与スケジュールも用いて投与することができる。
【0051】
この方法の1つの実施形態においては、ハプテン−担体接合体とアジュバントとを、患者に投与する約5分から約1時間前に混合してミセル形成を回避することができる。1つの実施形態において上記ハプテン−担体接合体は下記式:

(上記式において、KLHはキーホールリンペットヘモシニアン(KLH−FITCと呼ばれる接合体)である。)で表される。上記リガンド−ハプテン接合体は下記式:

で表されるもの(フォレート−FITCと呼ばれる接合体)又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0052】
様々な実施形態において、治療因子を、リガンド−免疫原接合体よりも前に、同時に、又は、後で宿主動物に投与してもよく、また、治療因子を、その接合体を含む同じ組成物の一部として又はリガンド−免疫原接合体以外の異なる組成物の一部として投与してもよい。本発明においては、治療的有効量で治療因子を含むそのような治療的組成物のいずれも用いることができる。1つの実施形態においては、1より多い種類のリガンド−免疫原接合体を用いてもよい。例えば、宿主動物をフルオレセインイソチオシアネート及びジニトロフェニルの両方を用いて予め免疫を付与し、次いで、共投与プロトコルで同一の又は異なるリガンドに連結されたフルオレセインイソチオシアネート及びジニトロフェニルを用いて治療してもよい。
【0053】
例えば、リガンド−免疫原(例えばハプテン)接合体、治療因子、アジュバント、及び、ハプテン−担体接合体を、非経口的に注射することができ、そのような注射剤は、腹膜腔内注射、皮下注射、筋肉内注射、静脈注射又は髄腔内注射であってもよい。1つの別な実施形態においては、リガンド−免疫原(例えばハプテン)接合体、治療因子、アジュバント、及び、ハプテン−担体接合体を、スローポンプを用いて送達できる。非経口の投薬形態の例には、液体アルコール、グリコール(例えばポリエチレングリコール)、グルコース溶液(例えば5%)、エステル、アミド、滅菌水、緩衝食塩水(リン酸塩又はアセタートのような緩衝剤を含む;例えば等張食塩水)等の薬学的に許容可能な周知の液体担体中の活性薬剤の水性溶液が含まれる。さらなる例示的成分には、植物油、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、パラフィンなどが含まれる。別の一態様においては、非経口の投薬形態は、リガンド−免疫原(例えばハプテン)接合体、治療因子、アジュバント、ハプテン−担体接合体の用量を具える再構成可能な凍結乾燥体の形態であってもよい。様々な態様において、可溶化剤、局所麻酔(例えばリドカイン)、賦形剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、塩及び潤滑剤を用いることができる。一態様においては、例えば、米国特許第4,713,249号、第5,266,333号及び第5,417,982号(これらの開示はここで言及することによって組み込まれている。)に記載されている生物分解性炭水化物マトリックスのように、当業界で知られている数多くの持続的放出投薬形態のいずれを用いても投与することができる。
【0054】
実施例1
BALB/Cマウスにおける温度分析
メスのBalb/cマウスを、100μgのGPI−0100を用いて調剤したEC90(KLH−FITC、図5参照)の1μg(図1)又は35μg(図2)に対して、1週間間隔で3回免疫化した。EC17(フォレート−FITC;図4を参照されたい。)組成物(1500nmol/kgのEC17及び350nmol/kgビスフルオレセイン)にビスフルオレセインを加えた。ビスフルオレセインを添加して組成物のアレルゲン性を高めた。1500nmol/kgのEC17及び350nmol/kgのビスフルオレセインをマウスの静脈内に投与した。その後、直腸探針を通してマウスの体温変化をすべてモニターし、明らかなアレルゲン性をすべて検知した。
注射液の調製:各ワクチン接種前にEC90(KLH−FITC)/GPI−0100溶液を新調してミセル形成を回避した。pH7.4(0.1ml当たり用量が1μgのKLH−FITC及び100μgのGPI−0100を供給した。)のPBS中で、0.01mg/mlのEC90と1mg/mlのGPI−0100とを混合することによって、1μgのEC90/GPI−0100注射液(図1)を調製した。pH7.4(0.1ml当たり用量が35μgのKLH−FITC及び100μgのGPI−0100を供給した。)のPBS中で、0.35mg/mlのEC90と1mg/mlのGPI−0100とを混合することによって、35μgのEC90/GPI−0100注射液(図2)を調製した。それぞれ5mlの体積となるように、0.244mlのEC17貯蔵溶液と、2.331mlのビスフルオレセイン貯蔵溶液及び2.425mlのPBS(pH7.4)とを混合することによって、ビスフルオレセイン添加EC17注射液を調製した。静脈投与(IV)又は皮下投与(SC)用に、マウス20g当たり0.1ml中に、1500nmol/kgのEC17と350nmol/kgのビスフルオレセインを与えた。
ワクチン接種:1μg又は35μgのEC90/GPI−0100を含む注射液100μlを用いて、マウスの尾の付け根に隣接する部位(50μl/部位)の皮下において免疫化した。7日後及び14日後に2追加用量をマウスの背中又は首の後部に注射して与えた。
ビスフルオレセイン添加EC17注射液を用いた早期投与:1500nmol/kgのEC17及び350nmol/kgのビスフルオレセインを用いて、第7日〜第11日、第14日〜第18日及び第21日にマウスを治療した。
ビスフルオレセイン添加EC17注射液を用いた後期投与:第22日前後に、PBS、又は、350nmol/kgのビスフルオレセイン及び1500nmol/kgのEC17をマウスの静脈内に投与した。マウス用に特別に設計された直腸探針(RET−3、熱電対温度計)を用いて各マウスの体温を測定した。静脈内注射のために各動物を暖める前、注射直前、及び、(必要な頻度で)投与後の約30分間に、ベースライン体温を得た。
結果:ビスフルオレセイン(350nmol/kg)を加えたEC17(1500nmol/kg)は、EC17+ビスフルオレセインを用いた早期投与を行った場合以外において、EC90の2用量に対して免疫化したマウスの温度を低下させた。ビスフルオレセインを混合したEC17をマウスに早期投与することによって、添加したビスフルオレセインに対する明らかなアレルギー反応を示す応答を防止した。また、EC90単独(すなわち、EC17及びビスフルオレセインを投与せずに、EC17のみを加え、EC17を後期投与プロトコルで加えた。)を、1μg(EC90とGPI−0100との比が重量対重量基準でおよそ1:100となるように)投与したときにはマウスの体温を低下させたが、35μg(EC90とGPI−0100との比が重量対重量基準でおよそ1:2.5)のときは体温を低下させなかった。
【0055】
実施例2
胸壁腫瘍移植片を有するマウスにおける腫瘍体積に対するリガンド接合体の効果
2つの投与方法を試験した。第1の投与方法においては、第1日、第15日、及び第29日に、サポニンアジュバント(例えばGPI−0100、100μg/用量)を用いて、35μg/用量のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)でラベルしたキーホールリンペットヘモシニアン(KLH、図5参照)で6〜8週齢の(20〜22グラム)メスのBalb/cマウスに免疫を与えた。第23日に、各動物に2.5×10個の4T1c2細胞(胸壁腫瘍細胞系)を注射した。その後、癌部位の増殖を放置した。第42日〜第60日に、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)、又は、γカルボキシル基で連結されたエチレンジアミン架橋(図4参照)介して葉酸に結合したFITC(500nmol/kg)を、毎日(1日1回×5日×3週間:第42日〜第46日、第49日〜第53日及び第56日〜第60日)動物に注射した。同じ日に20,000U/用量の組み換えヒトIL−2を動物に注射した。フォレート−FITCを注射したのと同じ週に、動物にIL−2を週3回で3週間注射した。
第2の投与方法においては、第1日、第15日、及び第29日に、サポニンアジュバント(例えばGPI−0100、100μg/用量)を用いて、35μg/用量のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)でラベルしたキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)で6〜8週齢の(20〜22グラム)メスのBalb/cマウスに免疫を与えた。第5日に、各動物に2.5×10個の4T1c2細胞(胸壁腫瘍細胞系)を注射した。その後、癌部位の増殖を放置した。第8日〜第50日に、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)、又は、γカルボキシル基で連結されたエチレンジアミン架橋(図4参照)介して葉酸に結合したFITC(500nmol/kg)を、毎日(1日1回×5日×6週間)動物に注射した。20,000U/用量の組み換えヒトIL−2を毎日(第32日〜第50日)動物に注射した。フォレート−FITCを注射したのと同じ週に、動物にIL−2を週3回で3週間注射した。
その後、フォレート−FITCで治療したマウスについて、腫瘍体積を時間関数に対してモニタリングして対照動物と比較することによって、この免疫療法の有効性を評価した。図3に示すように免疫療法によってマウスの腫瘍体積が減少した。また、腫瘍体積は、フォレート−FITCを投与するのに用いた投与プロトコル(早期又は後期)に関わりなく類似していた。従って、フォレート−FITCを用いた「早期投与プロトコル」は、腫瘍体積を縮小させるのに有効だった。
【0056】
実施例3
KLH−FITC及びフォレート−FITCの合成
ここで言及することによって組み込まれている「Kennedy, et al.Pharmaceutical Research,Vol.20(5),2003年」及びWO2006/101845号国際公開公報に記載されているようにフォレト−FITCを合成及び精製した。PBS(pH7.4)中で5.5mg/mlの凍結溶液としてEC17を保存した。EC90(KLH−FITC)固体(タンパク含有量83%)は、KLHのグラム当たり129μmol以下のFITCのラベル比を有していた。貯蔵溶液を2.5mg/mlのPBS(pH7.4)中に作り、0.22μmシリンジフィルターを用いて除菌した。フォレート−FITCの合成方法と類似の方法を用いてKLH−FITCを合成した。
【0057】
実施例4
投与プロトコル
図6は、ここに記載されている方法用に、ヒトにおいてアレルギーを示す副作用(例えば発疹、顔面潮紅、かゆみ)の可能性を低くするために用いる例示的な「初期投与プロトコル」を示している。V1〜V10は、EC90(KLH−FITC)を用いた注射剤を示している。治療サイクルを行う週が示されている。また、そのサイクル中の週の日をD1、D8、D15等のように示す。サイクルをCl、C2、C3等のように示す。EC90(Vl、V2等)、EC17(フォレート−FITC)、及び、EC17+サイトカインを投与した週、サイクル及び日を示する。薬剤用量及び投与頻度を示す表も図6に含まれている。EC90、GPI−0100、EC17、IL−2及びIFN−αを1.2mg、3mg、0.3mg/kg、7MIU及び3MIUでそれぞれ投与した。
【0058】
実施例5
投与プロトコル
1つの別の例示的な「早期投与プロトコル」は下記ステップを含む。フォレートをターゲットとするキレート剤(0.1mgを静脈注射で(静脈中に)投与した)であって、99mTeを用いて放射性同位体識別したキレート剤を用いて、患者がフォレートレセプタ陽性腫瘍を有しているか否か判定した(ここで言及することによって組み込まれている米国特許公開公報第20040033195号を参照されたい。)。KLH−FITC(アジュバントGPI−0100と組み合わせて1.2mg)を、治療の第1サイクル中に毎週(すなわち、週1回)4週連続で皮下投与し、第2サイクル中に毎週2週連続で皮下投与し、さらなるサイクルのそれぞれにおいて1回皮下投与する。KLH−FITC(GPI−0100は3.0mg)と組み合わせて、GPI−0100アジュバントを、治療の第1サイクル中に4週連続で皮下投与し、第2サイクル中に週1回の2週連続で皮下投与し、さらなるサイクルのそれぞれにおいて1回皮下投与する。最初の2つの治療サイクル中に週5日(月曜日から金曜日)4週連続でフォレート−FITC(0.3mg/kg)を皮下投与し、さらに、さらなるサイクルのそれぞれにおいて週3日(月曜、水曜及び金曜)3週連続でフォレート−FITC(0.3mg/kg)を皮下投与する。治療の最初の2サイクル中に週3日(月曜、水曜及び金曜)4週連続でIL−2(7.0MIU)を皮下投与し、次いで、さらなるサイクルのそれぞれにおいて週3日(月曜、水曜及び金曜)3週連続で2.5MIUのIL−2を皮下投与する。治療の最初の2サイクル中に週3回(月曜、水曜及び金曜)4週連続でIFN−α(3.0MIU)を皮下投与し、次いで、さらなるサイクルのそれぞれにおいて週3回(月曜、水曜及び金曜)3週連続で3.0MIUのIFN−αを皮下投与する。
【0059】
実施例6
GPI−0100と共に調剤したEC90に対して免疫化したマウスにおける全身アナフィラキシー陽性分析
第1日、第8日及び第15日にメスのBalb/cマウスを3回免疫化した。第23日に1用量のEC17を静脈内に投与した(図7、パネルa)。第8日〜第12日、第15日〜第19日及び第22日にEC17を複数回皮下投与してマウスを脱感作した(図7、パネルb)。第23日に、EC17をマウスの静脈内に通常通りに投与した。EC17投与後に直腸探針(RET−3、熱電対温度計)を用いて体温を測定した。静脈注射のために各動物を暖める前、注射直前、及び、(必要な頻度で)投与後の約30分間に、ベースライン体温を得た。刺激後に活動がなく、ショックの兆候(通常、体温低下が3℃以上である。)を示したときに動物を二酸素炭素によって安楽死させた。
【0060】
実施例7
FITCに対して免疫化しマウスにおける抗FITC IgE抗体の産生
第1日、第8日及び第15日に、メスのBalb/cマウス(n=3)を様々な用量のEC90及び100μgのGPI−0100に対して免疫化させた。第29日に各グループにおいて各動物から等しい体積で血清を採取した。抗FITC IgE抗体の相対的レベルを捕捉ELISA分析を用いて比較した(図8)。簡潔に、96穴プレートをラット抗マウスIgE捕捉モノクローナル抗体でコートした。非特異的結合をブロックした後に、プレートを、FITC抗血清と共に培養し、次いで、ビオチン化したBSA−FITC及びストレプトアビジンワサビペルオキシダーゼと共に培養した。
【0061】
実施例8
EC90及びGPI−0100アジュバントに対して免疫化されたモルモットにおける全身アナフィラキシー陽性分析
オス及びメスのモルモット(グループ当たり各1性別)を、様々な用量のEC90と0.5mgのGPI−0100とを用いて、第1日、第8日及び第15日に3回免疫化した。被験物質の1用量(EC17+/−ビス−FITC−eda)を第22日に投与した(皮下注射)。第8日〜第12日及び第15日〜第19日に、10モル%のビス−FITC−edaが入ったEC17を複数回投与することによってモルモットを脱感作した。第22日にこれらの動物に同じEC17/ビス−FITC−eda製剤を皮下注射で投与した。投与後1.5時間〜2時間に一般的に臨床観察を行った。アナフィラキシーショックの兆候を示したときに動物を安楽死させた。すべての動物について完全な目視的解剖分析を行った(図9)。その結果は、EC17を用いた早期投与及びKLH−FITCの用量を増加させることが、動物中のアレルゲン性を低減させることを示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主動物を治療して病原性細胞を除去する方法において、
ハプテン−担体接合体を前記宿主動物に投与するステップと、
−1偏向化アジュバントを前記宿主動物に投与するステップであって、前記T−1偏向化アジュバントに対する前記ハプテン−担体接合体の比率が重量対重量基準で約1:10から約1:1であるステップと、
ハプテンに接合したリガンドを前記宿主動物に投与するステップであって、前記ハプテン−担体接合体による前記治療の第1のサイクル中にリガンド−ハプテン接合体の投与を開始するステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記病原性細胞が癌細胞であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記病原性細胞が活性化免疫細胞であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記活性化免疫細胞がマクロファージ又は単球であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記ハプテン−担体接合体による治療の第1週若しくは第2週に、又は、それらの後であって前記ハプテン−担体接合体による前記治療の第1のサイクルが完了する前に、前記リガンド−ハプテン接合体の投与を開始することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記リガンドがビタミンレセプタ結合リガンドであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記リガンドが、葉酸レセプタ及び他のフォレートレセプタに結合するリガンドからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記リガンドが、前記リガンドのグルタミルγ−カルボキシル部位のみを介して共有結合でハプテンに連結されているグルタミル部位を有する葉酸類似化合物であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記リガンドが、前記リガンドのグルタミルα−カルボキシル部位のみを介して共有結合でハプテンに連結されているグルタミル部位を有する葉酸類似化合物であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記リガンドが、レセプタに結合可能な有機小分子であり、前記レセプタが、前記病原性細胞群の表面上において優先的に発現するか、独自に発現するか又は過剰発現することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記ハプテンが20,000ダルトン未満の分子量を有する有機分子であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記有機分子がフルオレセイン、ニトロフェニル及びポリニトロフェニルからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記ポリニトロフェニルがジニトロフェニル又はトリニトロフェニルであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、免疫刺激剤を前記宿主動物に投与するステップをさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記免疫刺激剤がサイトカインであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記サイトカインがIL−2、IL−12、IL−15又はこれらの組み合わせを具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、前記サイトカインが、IFN−α又はIFN−γと組み合わせて、IL−2、IL−12、IL−15又はこれらの組み合わせを具えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記リガンド−ハプテン接合体の組成物を複数回の注射で投与することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、前記ハプテン−担体接合体の投与がワクチン接種を具えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、前記T−1偏向化アジュバントに対する前記ハプテン−担体接合体の比率が重量対重量基準で約1:8〜約1:1であることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、前記T−1偏向化アジュバントに対する前記ハプテン−担体接合体の比率が重量対重量基準で約1:6〜約1:1であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法において、前記T−1偏向化アジュバントに対する前記ハプテン−担体接合体の比率が重量対重量基準で約1:4〜約1:1であることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法において、前記T−1偏向化アジュバントに対する前記ハプテン−担体接合体の比率が重量対重量基準で約1:3〜約1:1であることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法において、前記T−1偏向化アジュバントに対する前記ハプテン−担体接合体の比率が重量対重量基準で約1:3〜約1:2.5であることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法において、前記アジュバントがキラヤサポニンアジュバントであることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、前記アジュバントが修飾されたサポニンアジュバントであることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法において、前記担体がキーホールリンペットヘモシニアンであることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法において、前記ハプテン−担体接合体が下記式:

(KLHはキーホールリンペットヘモシニアンである。)で表され、
前記リガンド−ハプテン接合体が下記式:

で表されるか又は薬学的に許容可能なその塩であることを特徴とする方法。
【請求項29】
宿主動物を治療して病原性細胞を除去する方法において、
ハプテン−担体接合体を前記宿主動物に投与するステップと、
−1偏向化アジュバントを前記宿主動物に投与するステップと、
ハプテンに接合したリガンドを前記宿主動物に投与するステップであって、前記ハプテン−担体接合体による前記治療の第1のサイクル中に前記宿主動物へのリガンド−ハプテン接合体の投与を開始するステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、前記病原性細胞が癌細胞であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法において、前記病原性細胞が活性化免疫細胞であることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、前記活性化免疫細胞がマクロファージ又は単球であることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項29に記載の方法において、前記ハプテン−担体接合体による治療の第1週に、又は、その後であって前記ハプテン−担体接合体による前記治療の第1のサイクルが完了する前に、前記リガンド−ハプテン接合体の投与を開始することを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項29に記載の方法において、前記リガンドがビタミンレセプタ結合リガンドであることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、前記リガンドが、葉酸レセプタ及び他のフォレートレセプタに結合するリガンドからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、前記リガンドが、前記リガンドのグルタミルγ−カルボキシル部位のみを介して共有結合でハプテンに連結されているグルタミル部位を有する葉酸類似化合物であることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法において、前記リガンドが、前記リガンドのグルタミルα−カルボキシル部位のみを介して共有結合でハプテンに連結されているグルタミル部位を有する葉酸類似化合物であることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項29に記載の方法において、前記リガンドが、レセプタに結合可能な有機小分子であり、前記レセプタが、前記病原性細胞群の表面において優先的に発現するか、独自に発現するか、又は、過剰発現することを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項29に記載の方法において、前記ハプテンが20,000ダルトン未満の分子量を有する有機分子であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、前記有機分子がフルオレセイン、ニトロフェニル又はポリニトロフェニルであることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法において、前記ポリニトロフェニルがジニトロフェニル又はトリニトロフェニルであることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項29に記載の方法において、免疫刺激剤を前記宿主動物に投与するステップをさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法において、前記免疫刺激剤がサイトカインであることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法において、サイトカインがIL−2、IL−12、IL−15又はこれらの組み合わせを具えることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項43に記載の方法において、前記サイトカインが、IFN−α若しくはIFN−γと組み合わせた、IL−2、IL−12、IL−15又はこれらの組み合わせを具えることを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項29に記載の方法において、前記リガンド−ハプテン接合体の組成物を複数回の注射で投与することを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項29に記載の方法において、前記ハプテン−担体接合体の投与がワクチン接種を具えることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項29に記載の方法において、前記アジュバントがキラヤサポニンアジュバントであることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法において、前記アジュバントが修飾されたサポニンアジュバントであることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項29に記載の方法において、前記担体がキーホールリンペットヘモシニアンであることを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項29に記載の方法において、前記ハプテン−担体接合体が下記式:

(上記式においてKLHがキーホールリンペットヘモシニアンである。)で表され、
前記リガンド−ハプテン接合体が下記式:

で表されるか又は薬学的に許容可能なその塩であることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−503203(P2011−503203A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534210(P2010−534210)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083580
【国際公開番号】WO2009/065002
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(510134282)エンドサイト,インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】ENDOCYTE,INC.
【Fターム(参考)】