説明

接合体

【課題】接合強度が高く、放熱特性および耐熱性にも優れる接合体を提供する。
【解決手段】本発明は、半導体素子30と、半導体素子30を実装する回路層20が形成された絶縁性を有するセラミックス基板10と、を備え、半導体素子30と回路層20は、アルミニウムを主成分とし、ゲルマニウム、マグネシウム、珪素、銅からなる群より選択される少なくも1種類を含有するアルミニウム系ろう材60により、真空中または不活性雰囲気中でろう付けすることにより接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路層が形成された絶縁基板に半導体素子を実装した接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、産業用、自動車用などの電力制御からモータ制御まで、幅広い分野に使用される省エネルギー化のキーデバイスとして、パワーモジュールが知られている。パワーモジュールは、基材である絶縁基板(例えばセラミックス基板)の一方の面に、ろう付された金属板からなる回路パターン上に半導体チップ(トランジスタ)を実装し、他方の面に、ろう付された金属板を介して放熱板を配設した装置である(例えば、特許文献1参照)。このようなパワーモジュールにおいて、半導体チップは、回路パターン上に半田付けにより接合されている。
【0003】
一方、半導体素子を金属基板に接合する方法として、平均直径が100nm以下の金属微粒子を有機系の溶剤に分散させた金属ナノペーストを用いた方法(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−258416号公報
【特許文献2】特開2006−202938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、半導体チップを半田により接合した場合、半田は耐熱性が低いため、熱サイクルでクラックが発生してしまうおそれがあった。
【0006】
また、特許文献2の接合方法では、金属ナノペーストは耐熱性に優れるものの、接合時にボイドが発生するおそれがあり、ボイドが生じた場合、接合部の熱抵抗が増大し放熱性が低下するという問題を有していた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、接合強度が高く、放熱特性および耐熱性にも優れる接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る接合体は、半導体素子と、前記半導体素子を実装する回路層が形成された絶縁性を有するセラミックス基板と、を備え、前記半導体素子と前記回路層とはアルミニウム系ろう材により接合されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る接合体は、上記発明において、前記セラミックス基板は窒化物系セラミックスからなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る接合体は、上記発明において、前記半導体素子は、炭化珪素素子であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る接合体は、上記発明において、前記アルミニウム系ろう材は、ゲルマニウム、マグネシウム、珪素、銅からなる群より選択される少なくとも1種類を含有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る接合体は、上記発明において、前記回路層は、銅、銀、または金からなる群から選択される金属、または該金属を含む合金からなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る接合体は、上記発明において、前記セラミックス基板と前記回路層との間に、アルミニウム、銀、ニッケル、金、または銅からなる群から選択される金属、または該金属を含む合金からなる金属部材を備え、前記金属部材と前記セラミックス基板とはアルミニウム系ろう材で接合され、前記回路層は、マスクを介して、前記金属部材の表面に、金属又は合金からなる粉末をガスと共に加速し、前記表面に固相状態のままで吹き付けて堆積させることによって形成されたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る接合体は、上記発明において、前記半導体素子と前記回路層を接合する第1のアルミニウム系ろう材の接合温度は、前記金属部材と前記セラミックス基板とを接合する第2のアルミニウム系ろう材の接合温度以下であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る接合体は、上記発明において、前記セラミックス基板は、DBC基板であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る接合体は、上記発明において、前記セラミックス基板は、アルミニウム系ろう材により銅または銅合金からなる回路層を接合した活性金属接合基板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回路層が形成された絶縁性を有するセラミックス基板上に形成された回路層と半導体素子とを、アルミニウム系ろう材により接合することにより、接合強度が高く、放熱特性および耐熱性に優れる接合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る接合体であるパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示すパワーモジュールの作製方法を示すフローチャートである。
【図3】図3は、コールドスプレー装置の概要を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態の変形例1に係るパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態の変形例2に係るパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る接合体であるパワーモジュールの構成を示す断面図である。図1に示すパワーモジュール100は、絶縁基板であるセラミックス基板10と、セラミックス基板10の一方の面に金属部材50を介して形成された回路層20と、回路層20上に実装された半導体素子30と、セラミックス基板10の回路層20とは反対側の面に金属部材50を介して設けられた放熱部材40とを備える。
【0021】
セラミックス基板10は、絶縁性材料からなる略板状の部材である。絶縁性材料としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化珪素等の窒化物系セラミックスや、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、ステアタイト、フォルステライト、ムライト、チタニア、シリカ、サイアロン等の酸化物系セラミックスが用いられる。耐熱性、熱伝導性等の観点から窒化物系セラミックスが好ましい。
【0022】
回路層20は、例えば、アルミニウムや銅、銀等の良好な電気伝導度を有する金属または前記金属を含む合金からなる。回路層20は、後述するコールドスプレー法によって形成される。この回路層20には、半導体素子30等に対して電気信号を伝達するための回路パターンが形成されている。
【0023】
半導体素子30は、ダイオード、トランジスタ、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の半導体素子によって実現される。なお、半導体素子30は、高電圧で使用が可能なパワーデバイス、特に耐熱性に優れる炭化珪素チップであることが好ましく、使用の目的に合わせてセラミックス基板10上に複数個設けられても良い。
【0024】
放熱部材40は、回路層20と同様に、後述するコールドスプレー法によって形成された金属皮膜層であり、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金等の良好な熱伝導性を有する金属又は合金からなる。放熱部材40を介して、半導体素子30から発生した熱がセラミックス基材10を介して外部に放出される。放熱効率を高めるために、放熱部材40のセラミックス基板10と接合される面と反対の面には、切削加工により放熱部材40の表面積を増大させる多数の溝部を設けてもよい。
【0025】
金属部材50は、セラミックス基板10の表面にアルミニウム系ろう材60により接合されている。金属部材50は、セラミックス基板10と金属または合金からなる回路層20、またはセラミックス基板10と金属または合金からなる放熱部40とを接合する際の、接合強度を向上しうる。
【0026】
金属部材50は、厚さが例えば0.01mm〜0.2mm程度の箔状の圧延部材である。本実施の形態においては、このように厚さの小さい部材を用いることにより、セラミックス基板10との接合や、その他の熱処理工程の際、金属部材50とセラミックス基板10との間における熱膨張率の差に起因する破損を防止することとしている。なお、アルミニウム系ろう材60上に配置する金属部材50としては、箔状に限定されず、厚さが約1mm以下であれば、板状の金属部材を配置しても良い。
【0027】
金属部材50としては、セラミックス基板10に対してろう付による接合が可能であり、且つ、後述するコールドスプレー法による皮膜形成が可能な程度の硬度を有する金属または合金が用いられる。この硬度の範囲はコールドスプレー法における成膜条件等によっても異なるため、一概には定められないが、概ね、ビッカース硬度が100HV以下の金属部材であれば適用することができる。具体的には、アルミニウム、銀、ニッケル、金、銅、又はこれらの金属を含む合金等が挙げられる。
【0028】
アルミニウム系ろう材60は、セラミックス基板10の種類や、金属部材50の種類に応じて適宜選択することができる。アルミニウム系ろう材60は、アルミニウムを主成分とし、ゲルマニウム、マグネシウム、珪素、銅の内の少なくとも1種を含有するものが好ましい。なお、本明細書において、アルミニウムを主成分とするとは、アルミニウムの配合割合を50質量%以上とすることを意味する。
【0029】
本実施の形態で使用されるアルミニウム系ろう材60として、たとえば、特許第3977875号公報に記載される、5〜45質量%のゲルマニウム、5〜15質量%の珪素、2〜10質量%のマグネシウム、残部がアルミニウムであるろう材が好適に使用できる。
【0030】
また、たとえば、特許第3398204号公報に記載される、12〜22質量%の銅、7〜9質量%の珪素、0.2〜1質量%のマグネシウム、69〜77質量%のアルミニウムを含有するろう材が好適に使用できる。
【0031】
さらに、たとえば、特許第3168227号公報に記載される、50〜80質量%のアルミニウム、5〜50質量%のゲルマニウム、4〜10質量%の珪素、0.5〜5質量%のマグネシウム、0.5〜25質量%の銅、0.5〜10質量%のニッケルを含有するろう材が好適に使用できる。
【0032】
さらにまた、特許第3398203号公報に記載される、10〜40質量%の銅、10〜40質量%の銀、0.1〜5質量%のマグネシウム、40〜49質量%のアルミニウムを含有するろう材や、10〜40質量%のゲルマニウム、10〜40質量%の銀、2〜10質量%の珪素、0.1〜5質量%のマグネシウム、40〜49質量%のアルミニウムを含有するろう材が好適に使用できる。
【0033】
上記に例示したアルミニウム系ろう材60において、ゲルマニウム、珪素、銅、銀は、いずれもアルミニウム系ろう材60に添加することによりろう材の融点を下げる効果を有するため、アルミニウム系ろう材60の添加成分として適している。また、アルミニウム−銅−銀、およびアルミニウム−ゲルマニウム−銀は、各3元系で融点の低い共晶を生成するため、アルミニウム系ろう材60の主成分として適している。
【0034】
また、上記に例示したアルミニウム系ろう材60において、マグネシウムは、金属部材50としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を使用する場合、ろう付け時に揮発したマグネシウムによりアルミニウムまたはアルミニウム合金表面の酸化物を還元して、ろう材の濡れ性を向上するため、接合強度を向上できる。また、セラミックス基板10として、アルミナ系セラミックスが使用される場合も、セラミックス表面の酸化膜を分解して、濡れ性を向上できるため接合強度の向上を図ることができる。したがって、マグネシウムはアルミニウム系ろう材60の添加成分として適している。
【0035】
アルミニウム系ろう材60をセラミックス基板10表面に配置する方法としては、公知の種々の方法が用いられる。例えば、有機溶剤及び有機バインダーを含むペースト状のろう材をスクリーン印刷法によってセラミックス基板10に塗布しても良い。また、箔状のろう材(ろう材箔)をセラミックス基板10上に載置しても良い。或いは、蒸着法やスパッタ法等によりろう材をセラミックス基板10の表面に付着させても良い。
【0036】
金属部材50とセラミックス基板10とのろう付けは、使用するアルミニウム系ろう材60、金属部材50およびセラミックス基板10によっても変動するが、真空中または窒素ガス等の不活性雰囲気中で、500℃〜630℃の温度範囲、好ましくは550℃〜600℃の温度範囲で加熱することにより行う。
【0037】
次に、パワーモジュール100の製造方法について、図2および図3を参照しながら説明する。図2は、図1に示すパワーモジュール100の製造方法を示すフローチャートである。図3は、コールドスプレー装置の概要を示す模式図である。
【0038】
まず、スクリーン印刷等によりセラミックス基板10の表面にアルミニウム系ろう材60を配置する(ステップS1)。
【0039】
続いて、アルミニウム系ろう材60上に金属部材50を配置する(ステップS2)。本実施の形態では、セラミックス基板10の両面にアルミニウム系ろう材60を介して金属部材50を接合する。セラミックス基板10の両面にアルミニウム系ろう材60を配置後、金属部材50を配置してもよく、またセラミックス基板10の片面にアルミニウム系ろう材60および金属部材50を配置した後、もう一方の面にアルミニウム系ろう材60および金属部材50を配置してもよい。
【0040】
アルミニウム系ろう材60および金属部材50を表面に配置したセラミックス基板10を所定時間、所定温度に保持して真空中において熱処理を施す(ステップS3)。この熱処理により、アルミニウム系ろう材60が溶融し、セラミックス基板10と金属部材50との接合体が得られる。
【0041】
図1に示すように、セラミックス基板10の両面に金属部材50を接合する場合には、アルミニウム系ろう材60を両面に配置したセラミックス基板10を2枚の金属部材50によって挟んだものを熱処理することにより、セラミックス基板10の両面に金属部材50を接合することができる。
【0042】
続いて、コールドスプレー法により金属部材50上に金属皮膜層を積層し、放熱部材40を形成する(ステップS4)。図3は、金属皮膜層の形成に使用されるコールドスプレー装置の概要を示す模式図である。
【0043】
図3に示すコールドスプレー装置70は、圧縮ガスを加熱するガス加熱器71と、金属皮膜層の材料の粉末を収容し、スプレーガン73に供給する粉末供給装置72と、加熱された圧縮ガス及びそこに供給された材料粉末を基材に噴射するガスノズル74と、ガス加熱器71及び粉末供給装置72に対する圧縮ガスの供給量をそれぞれ調節するバルブ75及び76とを備える。
【0044】
圧縮ガスとしては、ヘリウム、窒素、空気などが使用される。ガス加熱器71に供給された圧縮ガスは、例えば50℃以上であって、金属皮膜層の材料粉末の融点よりも低い範囲の温度に加熱された後、スプレーガン73に供給される。圧縮ガスの加熱温度は、好ましくは300〜900℃である。
一方、粉末供給装置72に供給された圧縮ガスは、粉末供給装置72内の材料粉末をスプレーガン73に所定の吐出量となるように供給する。
【0045】
加熱された圧縮ガスは末広形状をなすガスノズル74により超音速流(約340m/s以上)にされる。この際の圧縮ガスのガス圧力は、1〜5MPa程度とすることが好ましい。圧縮ガスの圧力をこの程度に調整することにより、金属部材50に対する金属皮膜層の密着強度の向上を図ることができるからである。より好ましくは、2〜4MPa程度の圧力で処理すると良い。スプレーガン73に供給された粉末材料は、この圧縮ガスの超音速流の中への投入により加速され、固相状態のまま、セラミックス基板10上の金属部材50に高速で衝突して堆積し、皮膜を形成する。なお、材料粉末をセラミックス基板10に向けて固相状態で衝突させて皮膜を形成できる装置であれば、図3に示すコールドスプレー装置70に限定されるものではない。
【0046】
放熱部材40を形成後、セラミックス基板10の他方の面にコールドスプレー法により回路層20を形成する(ステップS5)。回路層20は、例えば、金属部材50の上層に回路パターンが形成されたメタルマスク等を配置し、コールドスプレー装置70等により、回路層20を形成する金属または合金の粉末を用いて皮膜形成を行えば良い。
【0047】
回路層20の形成後、回路層20上にアルミニウム系ろう材60を配置する(ステップS6)。
【0048】
その後、アルミニウム系ろう材60上に半導体素子30を配置し(ステップS7)、熱処理して(ステップS8)、半導体素子を回路層20上に接合する。これにより、図1に示すパワーモジュール1が完成する。
【0049】
なお、半導体素子30を回路層20に接合するアルミニウム系ろう材60は、金属基板50をセラミックス基板10に接合するアルミニウム系ろう材60と、配合する金属およびその割合が同一のものを使用することも可能である。しかしながら、半導体素子30を回路層20に接合するアルミニウム系ろう材60のろう付け温度が、金属基板50とセラミックス基板10とを接合するアルミニウム系ろう材60のろう付け温度より低くなるものを選択することが好ましい。
【0050】
本実施の形態では、セラミックス基板10上に形成された回路層20に、アルミニウム系ろう材60により半導体素子30を接合することにより、接合強度が高く、放熱特性および耐熱性に優れる接合体を得ることができる。
【0051】
また、本実施の形態の変形例として、セラミックス基板10として、回路層20がセラミックス基板10に直接接合されたDBC基板(「Direct Bonded Copper基板」、以下、DBC基板という)を使用したパワーモジュールを例示することができる。図4は、本発明の実施の形態の変形例1に係るパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【0052】
図4に示すパワーモジュール200は、回路層20および銅板81が直接セラミックス基板10に接合されたDBC基板80と、回路層20上に実装された半導体素子30と、銅板81を介して設けられた放熱部材40とを備える。
【0053】
DBC基板80の回路層20は、銅または銅合金から形成される。実施の形態と同様に、回路層20上にスクリーン印刷法等によりアルミニウム系ろう材60を配置した後、アルミニウム系ろう材60上に半導体素子30を配置して、真空中または不活性雰囲気中で熱処理することにより、半導体素子30を回路層20上に接合する。
【0054】
放熱部材40は、アルミニウム系ろう材60により銅板81と接合される。放熱部材40の銅板への接合は、アルミニウム系ろう材60以外のろう材も使用しうる。また、ろう付けのほか、機械締結部材等を使用して放熱部材40を銅板81に接合してもよい。
【0055】
本変形例において、DBC基板80上に直接接合された回路層20に、アルミニウム系ろう材60により半導体素子30を接合することにより、接合強度が高く、放熱特性および耐熱性に優れる接合体を得ることができる。
【0056】
さらに、本実施の形態の変形例として、セラミックス基板10として、回路層20および銅板81がセラミックス基板10にろう材により接合されたAMC基板(「Active Metal Brazed Copper基板」、以下、AMC基板という)を使用したパワーモジュールを例示することができる。図5は、本発明の実施の形態の変形例2に係るパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【0057】
図5に示すパワーモジュール300は、回路層20および銅板81が、アルミニウム系ろう材60によりセラミックス基板10に接合されたAMC基板82と、回路層20上に実装された半導体素子30と、銅板81を介して設けられた放熱部材40とを備える。なお、セラミックス基板10と、回路層20および銅板81とを接合するろう材は、アルミニウム系ろう材60以外の他の金属系のろう材も使用しうる。
【0058】
AMC基板82の回路層20は、銅または銅合金から形成される。実施の形態と同様に、回路層20上にスクリーン印刷法等によりアルミニウム系ろう材60を配置した後、アルミニウム系ろう材60上に半導体素子30を配置して、真空中または不活性雰囲気中で熱処理することにより、半導体素子30を回路層20上に接合する。
【0059】
放熱部材40は、アルミニウム系ろう材60により銅板81と接合される。放熱部材40の銅板への接合は、アルミニウム系ろう材60以外のろう材も使用しうる。また、ろう付けのほか、機械締結部材等を使用して放熱部材40を銅板81に接合してもよい。
【0060】
本変形例において、AMC基板82上に直接接合された回路層20に、アルミニウム系ろう材60により半導体素子30を接合することにより、接合強度が高く、放熱特性および耐熱性に優れる接合体を得ることができる。
【実施例】
【0061】
本実施の形態に係る接合体に使用されるアルミニウム系ろう材等によりテストピースを作製し、引張強度を測定した。
【0062】
(実施例1)
アルミニウム系ろう材(Ge 35mass%−Si 12mass%−Mg 0.7mass%−Cu 0.7mass%−Al 残部、固相線温度 721K、液相線温度
783K)から長さ40mm、幅15mm、厚さ0.17mmのテストピースを作製し、JIS Z2241に基づき引張試験を行った。表1に、試験結果を示す。なお、表1に示す引張強度は、n=5での平均値である。
【0063】
(比較例1)
Pb−Sn系半田(Pb 50mass%−Sn 50mass%)から長さ40mm、幅10mm、厚さ0.09mmのテストピースを作製し、JIS Z2241に基づき引張試験を行った。表1に、試験結果を示す。なお、表1に示す引張強度は、実施例1と同様にn=5での平均値である。
【0064】
(比較例2)
Ag−Sn系半田(Ag 2.5mass%−Sn 97.5mass%)から長さ40mm、幅10mm、厚さ0.11mmのテストピースを作製し、JIS Z2241に基づき引張試験を行った。表1に、試験結果を示す。なお、表1に示す引張強度は、、実施例1と同様にn=5での平均値である。
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示すように、アルミニウム系ろう材は、比較例1および2の半田材に比べて3倍以上の引張強度を示している。この数値からも明らかなように、アルミニウム系ろう材により銅板(回路層)と半導体素子とを接合すると、耐久性を高めることができる。
【0067】
実施例1、ならびに比較例1および2の各材料について、その材料構成により熱伝導率を算出した。表2に算出した熱伝導率を示す。
【0068】
【表2】

【0069】
表2に示すように、アルミニウム系ろう材は、比較例1および2の半田材に比べて、非常に大きな熱伝導率を示す。この数値からも明らかなように、アルミニウム系ろう材により銅板(回路層)と半導体素子とを接合すると、放熱特性を向上することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明にかかる接合体は、高い接合強度、ならびに放熱特性および耐熱性が要求される分野に有用である。
【符号の説明】
【0071】
10 セラミックス基板
20 回路層
30 半導体素子
40 放熱部材
50 金属部材
60 アルミニウム系ろう材
70 コールドスプレー装置
71 ガス加熱器
72 粉末供給装置
73 スプレーガン
74 ガスノズル
75 バルブ
80 DMC基板
81 銅板
82 AMC基板
100、200、300 パワーモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子を実装する回路層が形成された絶縁性を有するセラミックス基板と、
を備え、前記半導体素子と前記回路層とはアルミニウム系ろう材により接合されたことを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記セラミックス基板は窒化物系セラミックスからなることを特徴とする請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記半導体素子は、炭化珪素素子であることを特徴とする請求項1または2に記載の接合体。
【請求項4】
前記アルミニウム系ろう材は、ゲルマニウム、マグネシウム、珪素、銅からなる群より選択される少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の接合体。
【請求項5】
前記回路層は、銅、銀、金からなる群から選択される金属、または該金属を含む合金からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の接合体。
【請求項6】
前記セラミックス基板と前記回路層との間に、アルミニウム、銀、ニッケル、金、または銅からなる群から選択される金属、または該金属を含む合金からなる金属部材を備え、
前記金属部材と前記セラミックス基板とはアルミニウム系ろう材で接合され、
前記回路層は、マスクを介して、前記金属部材の表面に、金属又は合金からなる粉末をガスと共に加速し、前記表面に固相状態のままで吹き付けて堆積させることによって形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の接合体。
【請求項7】
前記半導体素子と前記回路層を接合する第1のアルミニウム系ろう材の接合温度は、前記金属部材と前記セラミックス基板とを接合する第2のアルミニウム系ろう材の接合温度以下であることを特徴とする請求項6に記載の接合体。
【請求項8】
前記セラミックス基板は、DBC基板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の接合体。
【請求項9】
前記セラミックス基板は、アルミニウムろう材により銅または銅合金からなる回路層を接合した活性金属接合基板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の接合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−71873(P2013−71873A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213302(P2011−213302)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】