説明

接合方法および接合体

【課題】2つの基材を、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合し、さらに各基材に設けられた導電部同士を電気的に接続することができる接合方法、および、かかる接合方法により、2つの基材間を電気的に接続しつつ接合してなる接合体を提供すること。
【解決手段】本発明の接合方法は、配線パターン212が設けられた基材21と、配線パターン222が設けられた基材22とを用意する工程と、基材21に、シリコーン材料と導電性粒子32を含有する液状材料30を供給し、液状被膜31を形成する工程と、液状被膜31を介して基材21と基材22とを重ね合わせて仮接合体5とした後、それを厚さ方向に加圧する工程と、液状被膜31を乾燥して接合膜3を得る工程と、接合膜3にエネルギーを付与して、接合膜3に接着性を発現させ、基材21と基材22とを接合して接合体1を得るとともに、各配線パターン212、222間を導通する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法および接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器における実装工程において、電子部品の電極と配線パターンとを接続する接続材には、従来、はんだが広く用いられている。しかし、はんだは、実装温度、実装電極ピッチ、取り付け高さ等に制約があり、高密度実装に対しては不利である。
一方、熱硬化性樹脂中に導電性粒子を分散させた異方導電性接着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。異方導電性接着剤組成物は、はんだに比べて接続に要する処理温度が低いため、接続に際して電子部品の熱劣化を抑えることができる。また、異方導電性接着剤組成物は、圧縮したときに厚さ方向にのみ導電性が発現し、面方向では絶縁性が保持されることから、例えば、狭ピッチで並設された複数の電極同士を一括して接続する場合、対向する電極同士を電気的に接続する一方、隣接する電極同士を絶縁することができる。また、接着する電極の一方にあらかじめこのような異方導電性接着剤組成物を塗布しておくことにより、厳密な位置合わせをすることなく、対向する電極に対して接着することができる。したがって、電極ピッチを比較的狭く設定することが可能になる。さらに、複数の電極間を一括して接続することが容易であり、はんだに比べて厚さを薄く抑えることもできる。これらのことから、異方導電性接着剤組成物は、高密度実装に適する接続材として注目されている。
また、この異方導電性接着剤組成物を剥離フィルム上に塗布してなる異方導電性フィルムも用いられている。
【0003】
ところが、このような異方導電性接着剤組成物では、以下のような問題がある。
・接着強度が低い
・硬化時間が長いため、接着に長時間を要する
・有機溶剤に対する耐久性が低い
これらの問題は、いずれも異方導電性接着剤組成物に含まれる熱硬化性樹脂の材料そのものの特性に起因したものであるため、解決するのは容易ではない。
【0004】
【特許文献1】特開平7−268303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、2つの基材を、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合し、さらに各基材に設けられた導電部同士を電気的に接続することができる接合方法、および、かかる接合方法により、2つの基材間を電気的に接続しつつ接合してなる接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合方法は、接合膜を介して接合される基材として、表面に第1の導電部を有する第1の基材と表面に第2の導電部を有する第2の基材とを用意する第1の工程と、
前記第1の導電部および第2の導電部の少なくとも一方の表面上に、シリコーン材料と導電性粒子とを含有する液状材料を供給することにより、液状被膜を形成する第2の工程と、
前記液状被膜を介して前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせて仮接合体とした後、該仮接合体を前記液状被膜の厚さ方向に加圧する第3の工程と、
前記仮接合体中の前記液状被膜を乾燥して、前記接合膜を得る第4の工程と、
前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜に接着性を発現させ、この接着性により、前記第1の基材と前記第2の基材とを接合して接合体を得るとともに、前記接合膜中の前記導電性粒子を介して前記第1の導電部と前記第2の導電部との間を電気的に接続する第5の工程とを有することを特徴とする。
これにより、2つの基材を、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合し、さらに2つの基材間を電気的に接続することができる。
【0007】
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成されることが好ましい。
かかる化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、かかる化合物を含有する接合膜にエネルギーを付与することにより、化合物を構成するメチル基が容易に切断されて、その結果として、接合膜に確実に接着性を発現させることができるため、シリコーン材料として好適に用いられる。
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、シラノール基を有することが好ましい。
これにより、液状材料を乾燥させて接合膜を得る際に、隣接するシリコーン材料が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜の膜強度が優れたものとなる。
【0008】
本発明の接合方法では、前記導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する金属膜とを有するものであることが好ましい。
これにより、基材粒子の構成材料や導電膜の構成材料を適宜選択することにより、導電性粒子の形状、大きさ(平均粒径等)、物性(導電性、密度等)等の調整が容易となる。
本発明の接合方法では、前記導電膜は、Ni、CuまたはAuを主材料として構成されていることが好ましい。
これらの導電性材料は、導電性に優れているため、導電性の高い導電性粒子が得られ、第1の導電部と第2の導電部との間の導電性を高めることができる。
【0009】
本発明の接合方法では、前記基材粒子は、樹脂材料で構成されていることが好ましい。
樹脂材料は一般にシリコーン材料の比重に近いため、導電性粒子は液状材料中において沈降したり浮上したりし難くなる。すなわち、液状材料中に均一に分散し得る導電性粒子を得ることができる。このため、仮接合体を圧縮したときに、導電性粒子が、第1の導電部と第2の導電部との間に挟まれる確率を一定にすることができ、これらの間が確実に導通する。また、樹脂材料の比重は比較的小さいので、速やかな泳動が可能な導電性粒子が得られる。
【0010】
本発明の接合方法では、前記導電性粒子は、弾力性を有していることが好ましい。
これにより、圧縮力を付与することにより、容易に扁平状に変形し得る導電性粒子が得られる。したがって、導電性粒子として柔軟な粒子を用いることにより、第1の導電部と第2の導電部との間で導電性粒子が容易に扁平になるため、第1の導電部および第2の導電部に対する導電性粒子の接触面積を広くすることができる。その結果、接合体において、各導電部間の導電性をより高めることができる。また、導電性粒子が柔軟性を有することにより、導電性粒子の粒径が不均一であっても、導電性粒子が変形することによって粒径のバラツキを補完することができる。さらに、各導電部の表面に凹凸がある場合でも、導電性粒子が変形することによって、各導電部と各導電性粒子とを確実に接触させることができる。
【0011】
本発明の接合方法では、前記導電性粒子の平均粒径は、0.5〜100μmであることが好ましい。
これにより、導電性粒子の平均粒径が小さ過ぎて、液状材料中において導電性粒子の凝集を防止することができる。また、導電性粒子の平均粒径が大き過ぎて、圧縮しなくても液状被膜中で導電性粒子同士や導電性粒子と各基材とが接触する確率が高くなるのを防止することができる。
【0012】
本発明の接合方法では、前記接合膜中における前記導電性粒子の含有量は、1〜50質量%であることが好ましい。
これにより、第1の導電部と第2の導電部との間に導電性粒子が挟まる確率が低下するのを防止する一方、圧縮しなくても液状被膜に意図しない導電性が発現してしまい、異方導電性が損なわれるのを防止することができる。
【0013】
本発明の接合方法では、前記第1の基材は、第1の絶縁性基板と、前記第1の導電部として、前記第1の絶縁性基板の前記接合膜側に位置する面から突出するように設けられた第1の導電膜とを有しており、
前記第2の基材は、第2の絶縁性基板と、前記第2の導電部として、前記第2の絶縁性基板の前記接合膜側に位置する面から突出するように設けられた第2の導電膜とを有しており、
前記接合膜を介して、前記第1の基材と前記第2の基材とを接合するとともに、前記接合膜中の前記導電性粒子を介して、前記第1の導電膜と前記第2の導電膜とを選択的に電気的に接続することが好ましい。
【0014】
これにより、仮接合体を圧縮したときに、第1の絶縁性基板と第2の絶縁性基板との離間距離は、第1の導電部と第2の導電部との離間距離よりも大きくなっている。したがって、仮接合体において、第1の絶縁性基板の接合面と第2の絶縁性基板の接合面との間にも液状被膜は存在するものの、離間距離が大きいので、導電性粒子は第1の絶縁性基板および第2の絶縁性基板に接触する確率が特に低くなるとともに、各導電性粒子は、絶縁性材料であるシリコーン材料で被覆され、互いに絶縁される。このため、第1の絶縁性基板と第2の絶縁性基板との間は、絶縁状態となる。以上のことから、液状被膜において、導電性を発現させる領域を、第1の導電部と第2の導電部との間に、容易かつ自動的に選択することができる。
【0015】
本発明の接合方法では、前記接合膜中の前記導電性粒子は、前記第1の導電膜および前記第2の導電膜のうち、互いに対向している領域同士を選択的に電気的に接続することが好ましい。
これにより、第1の導電膜と第2の導電膜との間で、互いに対向する領域のみが導通し、それ以外の領域を絶縁することができる。その結果、例えば、同じパターンの電極同士を接続する場合に、対向する電極同士を接続するとともに、対向していない電極同士を絶縁することができるので、回路形成を簡単に行うことができる。
【0016】
本発明の接合方法では、前記第5の工程における前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜の表面を効率よく活性化させることができる。また、接合膜中の分子構造を必要以上に切断しないので、接合膜の特性が低下してしまうのを避けることができる。
【0017】
本発明の接合方法では、前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
エネルギー線として前記範囲内の紫外線を用いることにより、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、接合膜から表面付近の分子結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜の特性が低下するのを防止しつつ、接合膜に接着性を確実に発現させることができる。
【0018】
本発明の接合方法では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、接合体が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
本発明の接合方法では、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、圧力が高すぎて各基材に損傷等が生じるのを防止しつつ、接合体の接合強度を確実に高めることができる。
【0019】
本発明の接合方法では、前記第5の工程における前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
本発明の接合方法では、前記接合膜の平均厚さは、100nm〜100μmであることが好ましい。
これにより、接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、第1の基材と第2の基材とをより強固に接合することができる。
【0020】
本発明の接合方法では、前記第2の工程において、前記第1の基材および前記第2の基材の双方の表面上に、前記液状被膜を形成し、
前記第3の工程において、前記液状被膜同士が密着するように、前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせることが好ましい。
これにより、第1の基材と第2の基材との間をより強固に接合することができる。
【0021】
本発明の接合方法では、前記第5の工程の後に、さらに、前記接合体に対して、前記第1の基材と前記第2の基材との接合強度を高める処理を行う工程を有することが好ましい。
これにより、接合体の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
本発明の接合方法では、前記接合強度を高める処理を行う工程は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合体の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0022】
本発明の接合体は、前記第1の基材および前記第2の基材は、互いに対向する面に、それぞれ導電部を有しており、
前記第1の基材と前記第2の基材との間が、本発明の接合方法により接合されてなり、かつ、前記各導電部間が電気的に接続されてなることを特徴とする。
これにより、2つの基材間を電気的に接続しつつ接合してなる接合体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の接合方法および接合体を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の接合方法は、2つの基材(第1の基材21および第2の基材22)間を、接合膜3、3’を介して接合し、かつ、電気的に接続する方法である。
この接合膜3、3’は、シリコーン材料中に導電性粒子が分散してなる複合物を主材料とする被膜であり、エネルギーを付与することにより、その表面のエネルギーを付与した領域に、接着性が発現するという特徴を有するものである。
このような特徴を有する接合膜3、3’によれば、2つの基材21、22を、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合し、かつ、電気的に接続することが可能である。そして、本発明によれば、2つの基材21、22が強固に接合し、かつ、電気的に接続してなる信頼性の高い接合体1が得られる。
【0024】
<接合方法>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の接合方法および本発明の接合体の各第1実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1および図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0025】
本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21と第2の基材22とを用意する工程と、第1の基材21上の接合膜形成領域41に、シリコーン材料中に導電性粒子32が分散してなる液状材料30を供給し、液状被膜31を形成する工程と、液状被膜31を介して第1の基材21と第2の基材22とを重ね合わせて仮接合体5とした後、この仮接合体5を液状被膜31の厚さ方向に加圧する工程と、仮接合体5中の液状被膜31を乾燥して、接合膜3を得る工程と、接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合膜3の表面および裏面付近に接着性を発現させ、第1の基材21と第2の基材22とを接合して接合体1を得る工程とを有する。
【0026】
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、第1の基材21と第2の基材22とを用意する。
本発明の接合方法により接合される第1の基材21および第2の基材22は、それぞれ、いかなる材料で構成されたものでもよいが、本実施形態では、図1(a)に示すように、第1の基材21が、絶縁性基板211(第1の絶縁性基板)とその表面上の一部に設けられた3つの導電膜212a(第1の導電膜)とにより構成されており、また、第2の基材22が、絶縁性基板221(第2の絶縁性基板)とその表面上の一部に設けられた3つの導電膜222a(第2の導電膜)とにより構成されている。なお、各導電膜212aおよび各導電膜222aは、導電性を有しており、それぞれの導電膜212aおよびそれぞれの導電膜222aは互いに離間して設けられている。
【0027】
また、3つの導電膜212aは、それぞれ帯状をなしており、帯状の導電膜212aがストライプ状に配設されていることにより第1の配線パターン212が構成されている。一方、3つの導電膜222aも、それぞれ帯状をなしており、帯状の導電膜222aがストライプ状に配設されていることにより第2の配線パターン222が構成されている。また、これらの第1の配線パターン212および第2の配線パターン222は、その寸法およびピッチがほぼ同じであり、後述する工程を経ることにより、各導電膜212aとその各々に対応する各導電膜222aとが接合膜を介して電気的に接続される。
【0028】
各導電膜212aおよび各導電膜222aを構成する導電性材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、モリブデン、タンタルまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾールまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルブチラール、ポリビニルカルバゾール、酢酸ビニル等のマトリックス樹脂中に、イオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープした錫酸化物(FTO)、錫酸化物(SnO)、インジウム酸化物(IO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
その他、導電性材料としては、それぞれ、例えば、ガラス材料、ゴム材料、高分子材料等の導電性を有さない材料中に、金、銀、ニッケル、カーボン等の導電性材料(導電性粒子)を混合して、導電性を付加したような各種複合材料も使用することができる。
【0029】
また、絶縁性基板211および絶縁性基板221の構成材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、ガリウムヒ素のような金属系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0030】
また、半導体基材の構成材料としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのような元素半導体、ガリウムヒ素のような化合物半導体、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
これらの絶縁性基板211および絶縁性基板221は、それぞれ、その表面に、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
なお、これらの第1の基材21の構成および第2の基材22の構成は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0031】
また、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。これらの熱膨張率がほぼ等しければ、第1の基材21と第2の基材22とを接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。
なお、後に詳述するが、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率が互いに異なる場合でも、後述する工程において、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際の条件を最適化することにより、これらを高い寸法精度で強固に接合することができる。
【0032】
また、2つの基材21、22のうち、少なくとも一方は、樹脂材料を主材料として構成されているのが好ましい。樹脂材料は、その柔軟性により、2つの基材21、22を接合した際に、その接合界面に発生する応力(例えば、熱膨張に伴う応力等)を緩和することができる。このため、接合界面が破壊し難くなり、結果的に、接合強度の高い接合体1を得ることができる。
なお、上記のような観点から、2つの基材21、22のうちの少なくとも一方は、可撓性を有しているのが好ましい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。さらに、2つの基材21、22の双方が可撓性を有している場合には、全体として可撓性を有し、機能性の高い接合体1が得られる。
【0033】
また、各基材21、22の形状は、それぞれ、液状被膜を支持する面を有するような形状であればよく、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
各基材21、22がそれぞれ板状をなしていることにより、各基材21、22は撓み易くなり、2つの基材21、22を重ね合わせたときに、互いの形状に沿って十分に変形し得るものとなる。このため、2つの基材21、22を重ね合わせたときの密着性が高くなり、最終的に得られる接合体1における接合強度が高くなる。
【0034】
また、各基材21、22が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和する作用が期待できる。
この場合、各基材21、22の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態では、図1(a)に示すように、各基材21、22がそれぞれ板状をなしており、このうち第1の基材21の一主面(接合面23)の周縁部を除いた領域が、接合膜3が形成される接合膜形成領域41として設定されている。ここで、この接合膜形成領域41は、第1の配線パターン212を構成する各導電膜212aの一部と重なっているものとする。
【0035】
次に、必要に応じて、第1の基材21の接合面23、すなわち第1の絶縁性基板211および各導電膜212aの上面に、接合膜3との密着性を高める表面処理を施す。これにより、接合面23が清浄化および活性化され、接合面23に対して接合膜3が化学的に作用し易くなる。その結果、後述する工程において、接合面23上に接合膜3を形成したとき、接合面23と接合膜3との接合強度を高めることができる。また、各導電膜212aと接合膜3との間の電気抵抗を低減することができる。
【0036】
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
なお、表面処理を施す第1の絶縁性基板211が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、表面処理として、特にプラズマ処理または紫外線照射処理を行うことにより、接合面23を、より清浄化および活性化することができる。その結果、接合面23と接合膜3との接合強度を特に高めることができる。また、各導電膜212aと接合膜3との間の電気抵抗を特に低減することができる。
【0037】
また、第1の絶縁性基板211および第1の配線パターン212の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第1の絶縁性基板211の構成材料としては、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられ、第1の配線パターン212の構成材料としては、例えば、各種金属系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0038】
このような材料で構成された第1の基材21は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第1の基材21を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基材21の接合面23と接合膜3との接合強度を高めることができる。
なお、この場合、第1の絶縁性基板211および第1の配線パターン212の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合面23付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0039】
また、表面処理に代えて、第1の基材21の接合面23に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層上に接合膜3を成膜することにより、最終的に、信頼性の高い接合体1を得ることができる。
【0040】
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、第1の基材21と接合膜3との間の接合強度を特に高めることができる。
【0041】
なお、以上のような中間層は、接合面23のうち、第1の絶縁性基板211の表面および第1の配線パターン212の表面の双方に設けてもよく、いずれか一方に設けるようにしてもよい。また、第1の絶縁性基板211の表面および第1の配線パターン212の表面の双方に中間層を設ける場合、各表面に設ける中間層は同じであっても異なっていてもよい。また、各表面に設ける中間層は、その導電性を考慮して選択するのが好ましい。すなわち、第1の絶縁性基板211の表面には絶縁性の中間層を設け、第1の配線パターン212の表面には導電性の中間層を設けるのが好ましい。
【0042】
一方、第1の基材21と同様、第2の基材22の接合面24、すなわち第2の絶縁性基板221および各導電膜222aにも、必要に応じて、あらかじめ接合膜3との密着性を高める表面処理を施してもよい。これにより、接合面24を清浄化および活性化する。その結果、第2の基材22の接合面24と接合膜3との接合強度を高めることができる。
この表面処理としては、特に限定されないが、前述の第1の基材21の接合面23に対する表面処理と同様の処理を用いることができる。
【0043】
また、第1の基材21の場合と同様に、第2の絶縁性基板221および第2の配線パターン222の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との密着性が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2の絶縁性基板221の構成材料としては、例えば、前述したような各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられ、第2の配線パターン222の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0044】
すなわち、このような材料で構成された第2の基材22は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第2の基材22を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第2の基材22の接合面24と接合膜3との接合強度を高めることができる。
なお、この場合、第2の絶縁性基板221および第2の配線パターン222の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合面24付近が上記のような材料で構成されていればよい。
また、第2の基材22の接合面24に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第2の基材22の接合面24と接合膜3との接合強度を十分に高くすることができる。
【0045】
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような各種官能基、各種ラジカル、開環分子または、2重結合、3重結合のような不飽和結合を有する脱離性中間体分子、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離してなる終端化されていない結合手(未結合手、ダングリングボンド)が挙げられる。
このうち、脱離性中間体分子は、開環分子または不飽和結合を有する炭化水素分子であるのが好ましい。このような炭化水素分子は、開環分子および不飽和結合の顕著な反応性に基づき、接合膜3に対して強固に作用する。したがって、このような炭化水素分子を有する接合面24は、接合膜3に対して特に強固に接合可能なものとなる。
【0046】
また、接合面24が有する官能基は、特に水酸基が好ましい。これにより、接合面24は、接合膜3に対して特に容易かつ強固に接合可能なものとなる。
また、このような基や物質を有するように、接合面24に対して上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、接合膜3に対して強固に接合可能な第2の基材22が得られる。
このうち、第2の基材22の接合面24には、水酸基が存在しているのが好ましい。このような接合面24には、水酸基が露出した接合膜3との間に、水素結合に基づく大きな引力が生じる。これにより、最終的に、第1の基材21と第2の基材22とを特に強固に接合することができる。
【0047】
また、表面処理に代えて、第2の基材22の接合面24に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、前記第1の基材21の場合と同様に、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。
かかる中間層の構成材料には、例えば、前記第1の基材21の接合面23に形成する中間層の構成材料と同様の材料を用いることができる。
また、この表面処理および中間層の形成は、必要に応じて行えばよく、特に高い接合強度を必要としない場合には、省略することができる。
【0048】
[2]次に、図1(b)に示すように、第1の基材21の接合膜形成領域41に、シリコーン材料と導電性粒子32を含有する液状材料30を供給し、接合膜形成領域41に液状被膜31を形成する。
具体的には、第1の基材21上に、接合膜形成領域41の形状に対応する形状をなす窓部を有するマスクを設け、このマスクを介して、液状材料を供給する。このようにすれば、接合膜形成領域41に対して液状材料が選択的に供給され、接合膜形成領域41に液状被膜31が形成される。
【0049】
液状材料30を接合膜形成領域41に供給する方法としては、例えば、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法のような各種塗布法が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、インクジェット法を用いるのが好ましい。かかる方法によれば、比較的容易に、かつ優れた精度で、液状材料を、第1の基材21の接合膜形成領域41に選択的に供給することができる。
その後、各種エッチング法を用いて、マスクを除去する。
【0050】
また、前述のようなマスクを用いずに、第1の基材21の接合膜形成領域41に、インクジェット法によって液状材料30を選択的に供給し、液状被膜31を形成するようにしてもよい。これにより、マスクの形成および除去が不要になるので、液状被膜31の形成工程を簡易化することができる。
なお、このとき、接合面23に供給する液状材料30の量を適宜設定することにより、形成される接合膜3の厚さの制御を比較的容易に行うことができる。
【0051】
ここで、液状材料30は、シリコーン材料を含有するものである。
「シリコーン材料」とは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物であり、通常、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物のことを言い、主鎖の一部から突出する分枝状の構造を有するものであってもよく、主鎖が環状をなす環状体であってもよく、主鎖の末端同士が連結しない直鎖状のものであってもよい。
例えば、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物において、オルガノシロキサン単位は、その末端部では下記一般式(1)で表わされる構造単位を有し、連結部では下記一般式(2)で表わされる構造単位を有し、また、分枝部では下記一般式(3)で表わされる構造単位を有している。
【0052】
【化1】

[式中、各Rは、それぞれ独立して、置換または無置換の炭化水素基を表し、各Zは、それぞれ独立して、水酸基または加水分解基を表し、Xはシロキサン残基を表し、aは0または1〜3の整数を表し、bは0または1〜2の整数を表し、cは0または1を表す。]
【0053】
なお、シロキサン残基とは、酸素原子を介して隣接する構造単位が有するケイ素原子に結合しており、シロキサン結合を形成している置換基のことを表す。具体的には、−O−(Si)構造(Siは隣接する構造単位が有するケイ素原子)となっている。
このようなシリコーン材料において、ポリオルガノシロキサン骨格は、分枝状をなすもの、すなわち上記一般式(1)で表わされる構造単位、上記一般式(2)で表わされる構造単位および上記一般式(3)で表わされる構造単位で構成されているのが好ましい。この分枝状をなすポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物(以下、「分枝状化合物」と略すこともある。)は、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物であり、主鎖の途中でオルガノシロキサン単位の繰り返しが分枝するとともに、主鎖の末端同士が連結しないものである。
この分枝状化合物を用いることにより、次工程において、液状材料中に含まれるこの化合物の分枝鎖同士が互いに絡まり合うようにして接合膜3が形成されることから、得られる接合膜3は特に膜強度に優れたものとなる。
【0054】
なお、上記一般式(1)〜上記一般式(3)中、基R(置換または無置換の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部が、I)フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子、II)グリシドキシ基のようなエポキシ基、III)メタクリル基のような(メタ)アクリロイル基、IV)カルボキシル基、スルフォニル基のようなアニオン性基等で置換された基等が挙げられる。
【0055】
加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基等が挙げられる。
また、分枝状化合物は、その分子量が、1×10〜1×10程度のものであるのが好ましく、1×10〜1×10程度のものであるのがより好ましい。分子量をかかる範囲内に設定することにより、液状材料の粘度を上述したような範囲内に比較的容易に設定することができる。
【0056】
このような分枝状化合物は、シラノール基を有するものであるのが好ましい。すなわち、上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位において、各基Zは水酸基であるのが好ましい。これにより、次工程において、液状被膜31を乾燥させて接合膜3を得る際に、隣接する分枝状化合物が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜3の膜強度が優れたものとなる。さらに、第1の基材21として、前述したように、その接合面(表面)23から水酸基が露出しているものを用いた場合には、分枝状化合物が備える水酸基と、第1の基材21が備える水酸基とが結合することから、分枝状化合物を物理的な結合ばかりでなく、化学的な結合によっても第1の基材21に結合させることができる。その結果、接合膜3は、第1の基材21の接合面23に対して、強固に結合したものとなる。
【0057】
また、シラノール基が有するシリコン原子に連結している炭化水素基は、フェニル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが水酸基である上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、フェニル基であるのが好ましい。これにより、シラノール基の反応性がより向上するため、隣接する分枝状化合物が有する水酸基同士の結合がより円滑に行われるようになる。
【0058】
さらに、シラノール基が存在しないシリコン原子に連結している炭化水素基は、メチル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、メチル基であるのが好ましい。このように、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rがメチル基である化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、後工程において、接合膜3に接合用エネルギーを付与することにより、メチル基が容易に切断されて、その結果として、接合膜3に確実に接着性を発現させることができるため、分枝状化合物(シリコーン材料)として好適に用いられる。
以上のことを考慮すると、分枝状化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表わされる化合物が好適に用いられる。
【0059】
【化2】

[式中、nは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表す。]
【0060】
さらに、上述した分枝状化合物は、比較的柔軟性に富む材料である。そのため、後工程において、接合膜3を介して第1の基材21に第2の基材22を接合して接合体1を得る際に、例えば、第1の基材21と第2の基材22との各構成材料が互いに異なるものを用いる場合であったとしても、各基材21、22間に生じる熱膨張に伴う応力を確実に緩和することができる。これにより、最終的に得られる接合体1において、剥離が生じるのを確実に防止することができる。
【0061】
また、分枝状化合物は、耐薬品性に優れているため、薬品類等に長期にわたって曝されるような部材の接合に際して効果的に用いることができる。具体的には、例えば、樹脂材料を浸食し易い有機系インクが用いられる工業用インクジェットプリンタの液滴吐出ヘッドを製造する際に、接合膜3を用いて接合すれば、その耐久性を確実に向上させることができる。また、分枝状化合物は、耐熱性にも優れていることから、高温下に曝されるような部材の接合に際しても効果的に用いることができる。
【0062】
また、導電性粒子32は、少なくとも表面付近が導電性材料によって構成されたものである。このような導電性粒子32としては、具体的には、例えば、その全体が導電性材料によって構成されたものであってもよく、基材粒子と、この基材粒子の表面を被覆する導電膜とによって構成されたものであってもよい。このうち、導電性粒子32を後者の構成とすることにより、導電性粒子32の形状、大きさ(平均粒径等)、物性(導電性、密度等)等の調整が容易となる。
【0063】
基材粒子の構成材料としては、特に限定されないが、各種金属材料、各種セラミックス材料、各種樹脂材料等が挙げられる。このうち、特に樹脂材料を用いるのが好ましい。樹脂材料は一般にシリコーン材料の比重に近いため、導電性粒子32は液状材料30中において沈降したり浮上したりし難くなる。すなわち、液状材料30中に均一に分散し得る導電性粒子32を得ることができる。このため、後述する工程において仮接合体5を圧縮したときに、導電性粒子32が、各導電膜212aと各導電膜222aとの間に挟まれる確率を一定にすることができ、これらの間が確実に導通する。また、樹脂材料の比重は比較的小さいので、速やかな泳動が可能な導電性粒子32が得られる。
【0064】
また、樹脂材料のような材料は一般に柔軟性に富むため、このような柔軟性に富む材料で構成された粒子は、圧縮力を付与することにより、容易に扁平状に変形することができる。したがって、導電性粒子32として柔軟な粒子を用いることにより、第1の基材21と第2の基材22との間で導電性粒子32が容易に扁平になるため、第1の導電パターン212および第2の導電パターン222に対する導電性粒子32の接触面積を広くすることができる。その結果、接合体1において、各導電パターン212、222間の導電性をより高めることができる。また、導電性粒子32が柔軟性を有することにより、導電性粒子32の粒径が不均一であっても、導電性粒子32が変形することによって、粒径のバラツキを補完することができる。さらに、第1の導電パターン212の表面および第2の導電パターン222の表面に凹凸がある場合でも、導電性粒子32が変形することによって、各導電パターン212、222と各導電性粒子32とを確実に接触させることができる。
【0065】
また、導電性粒子32の導電膜の構成材料には、前述の各導電膜212aおよび各導電膜222aの構成材料と同様の導電性材料が挙げられるが、特に、Ni、Cu、またはAuを主材料とする導電性材料が好ましく用いられる。これらの導電性材料は、導電性に優れているため、導電性の高い導電性粒子32が得られ、各導電パターン212、222間の導電性を高めることができる。
なお、導電性粒子32の具体的な形態としては、Ni粒子や、Auめっき処理が施されたNi粒子、Auめっき処理が施されたCu粒子、Auめっき処理が施された樹脂製粒子等が挙げられる。
【0066】
また、導電性粒子の粒子形状は、特に限定されず、例えば、球状、扁平状、針状、不定形状等のいずれでもよい。
また、導電性粒子32は、弾力性を有しているのが好ましい。弾力性を有する導電性粒子32は、圧縮された際に、元の形状に戻ろうとする復元力が発生する。この復元力は、導電性粒子32が各導電パターン212、222間で圧縮されているときには、導電性粒子32の表面を各導電パターン212、222に押し付けるように作用する。このため、各導電パターン212、222と導電性粒子32との接触抵抗を低減することができ、各導電パターン212、222間の導電性をより高めることができる。
【0067】
このような導電性粒子32の平均粒子径は、0.5〜100μm程度であるのが好ましく、2〜50μm程度であるのがより好ましい。導電性粒子32の平均粒径が前記下限値より小さいと、液状材料30中において導電性粒子32が凝集し易くなり、導電性粒子32を均一に分散させるのが困難になる。その結果、得られる接合膜3において、厚さ方向および面方向における電気抵抗が不均一になる可能性がある。一方、導電性粒子32の平均粒径が前記上限値を超えると、圧縮しなくても液状被膜31中で各導電性粒子32同士や導電性粒子32と各基材21、22とが接触する確率が高くなり、接合膜3に意図しない導電性が発現するおそれがある。
【0068】
このような液状材料30の粘度(25℃)は、通常、0.5〜200mPa・s程度であるのが好ましく、3〜20mPa・s程度であるのがより好ましい。液状材料30の粘度が前記範囲内であれば、液状材料30がある程度の粘性を有したものとなり、より厚さの厚い液状被膜31を形成することが可能となる。さらに、この液状材料30で構成される液状被膜31を次工程で乾燥させた際に、接合膜3を形成するのに十分な量のシリコーン材料および導電性粒子32を液状材料30中に含有したものとすることができる。
一方、液状材料30の粘度が前記上限値を上回った場合、液状被膜31の厚さや形状の精度が著しく低下するおそれがある。
【0069】
また、液状材料30は、前述のようにシリコーン材料と導電性粒子32を含有するものであるが、シリコーン材料単独で、液状をなし、これに導電性粒子32を分散させた状態で目的とする粘度範囲である場合、シリコーン材料に導電性粒子32を分散させた分散液を、そのまま液状材料30として用いることができる。また、シリコーン材料単独で、固形状または高粘度の液状をなす場合には、液状材料30中に別途溶媒または分散媒を追加するようにしてもよい。
【0070】
このような溶媒または分散媒としては、例えば、アンモニア、水、過酸化水素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
また、液状材料30中には、導電性粒子32の分散性を高める分散剤が含まれていてもよい。この分散剤により、液状材料30中において導電性粒子32が凝集するのを防止することができる。
【0071】
[3]次に、図1(c)に示すように、液状被膜31を介して第1の基材21と第2の基材22とを重ね合わせる。これにより、図1(d)に示す仮接合体5を得る。
なお、この仮接合体5の状態では、第1の基材21と第2の基材22とは接合されていないので、互いの位置を容易に調整することができる。したがって、一旦、第1の基材21と第2の基材22とを重ね合わせた後、これらの相対的な位置をずらして微調整することができ、最終的に得られる接合体の寸法精度をより高めることができる。
【0072】
次いで、得られた仮接合体5を、図2(e)に示すように厚さ方向に加圧する。これにより、第1の基材21と第2の基材22とが接近するとともに、液状被膜31が面方向に広がって徐々に薄くなる。そして、最終的には、図2(f)に示すように、各導電膜212aと各導電膜222aとの間に導電性粒子32が挟まった状態となる。この状態では、導電性粒子32は、導電膜212aとそれに対向する導電膜222aの双方に接触しているので、導電性粒子32を介して導電膜212aとそれに対向する導電膜222aとの間を選択的に導通させることができる。このため、例えば、同じパターンの電極同士を接続する場合に、対向する電極同士を接続するとともに、対向していない電極同士を絶縁することができるので、回路形成を簡単に行うことができる。
【0073】
ここで、図1に示す各導電膜212aおよび各導電膜222aは、各絶縁性基板211、221の表面から突出するように設けられているので、仮接合体5を圧縮したときには、第1の絶縁性基板211と第2の絶縁性基板との離間距離は、各導電膜212aと各導電膜222aとの離間距離よりも大きくなっている。したがって、仮接合体5において、第1の絶縁性基板211の接合面23と第2の絶縁性基板221の接合面24との間にも液状被膜31は存在するものの、離間距離が大きいので、導電性粒子32は第1の絶縁性基板211および第2の絶縁性基板221に接触する確率が特に低くなるとともに、各導電性粒子32は、絶縁性材料であるシリコーン材料で被覆され、絶縁される。このため、第1の絶縁性基板211と第2の絶縁性基板221との間は、絶縁状態となる。
【0074】
以上のことから、各導電膜212aおよび各導電膜222aが、各絶縁性基板211、221の表面から突出するように設けられていることにより、液状被膜31には、上述したような導電性を発現させる領域を容易かつ自動的に選択することができる。
また、仮接合体5を厚さ方向に圧縮しても、液状被膜31には面方向の導電性は発現しない。このため、各導電膜212a間の絶縁性を確保することができ、電極間の短絡を防止することができる。
なお、液状被膜31を形成する液状材料30は、前述したようにある程度の粘性を有しているため、仮接合体5は、圧縮力を解除しても、圧縮された状態を維持することができる。
【0075】
[4]次に、仮接合体5中の液状被膜31を乾燥する(溶媒または分散媒を揮発させる)。これにより、接合膜形成領域41の形状(所定形状)に対応してパターニングされた接合膜3が形成される。
このようにして得られた接合膜3は、エネルギーを付与することにより接着性が発現するものとなる。かかる接合膜3は、例えばシリコーン材料としてシラノール基を有するものを用いた場合には、シリコーン材料が有するシラノール基同士を、さらには、このシラノール基と第1の基材21が有する水酸基とを、確実に結合させることができるため、形成される接合膜3を膜強度に優れ、かつ第1の基材21および第2の基材22に対して強固に結合することができる。
また、この接合膜3では、導電性粒子32が、厚さ方向では各導電膜212aおよび各導電膜222aに接触しているが、面方向では絶縁性材料であるシリコーン材料を介して互いに絶縁されている。このため、接合膜3は、厚さ方向では導電性を有し、面方向では絶縁性を有するもの、いわゆる異方導電性を有するものとなる。
【0076】
液状材料30を乾燥させる際の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
また、乾燥させる時間は、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、15〜30時間程度であるのがより好ましい。
さらに、乾燥させる際の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよいが、減圧下であるのが好ましい。具体的には、減圧の程度は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。これにより、液状材料30の乾燥を促進させるとともに、接合膜3の膜密度が緻密化して、接合膜3をより優れた膜強度を有するものとすることができる。
【0077】
以上のように、接合膜3を形成する際の条件を適宜設定することにより、形成される接合膜3の膜強度等を所望のものとすることができる。
なお、接合膜3中における導電性粒子32の含有率は、1〜50質量%程度であるのが好ましく、5〜30質量%程度であるのがより好ましい。導電性粒子32の含有率が前記下限値より少ないと、各導電膜212aと各導電膜222aとの間に導電性粒子32が挟まる確率が低下し、これらの間の導電性が低下するおそれがある。一方、導電性粒子32の含有率が前記上限値を超えると、圧縮しなくても液状被膜31に導電性が発現してしまい、前述したように圧縮量を適宜調整することによって導電性領域と絶縁性領域とを選択することが困難になる。また、面方向にも導電性が発現してしまい、各導電膜212a間および各導電膜222a間の絶縁を保持することができないおそれがある。接合膜3中におけるシリコーン材料の割合が少なくなるため、接合体1の接合強度が小さくなる可能性がある。
【0078】
また、接合膜3の平均厚さは、導電性領域では導電性粒子32の粒径に依存するものの、絶縁性領域では、100nm〜100μm程度であるのが好ましく、200nm〜10μm程度であるのがより好ましい。供給する液状材料30の量を適宜設定して、形成される接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、第1の基材21と第2の基材22とを接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、より強固に接合することができる。
なお、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回ると、接合体1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
【0079】
また、接合膜3の平均厚さをかかる範囲とすることにより、第1の基材21と第2の基材22とを重ね合わせた際に、接合膜3と接触させる第2の基材22の接合面24にパーティクル等が付着していても、このパーティクルを接合膜3で包み込むようにして接合膜3と接合面24とを接合することができる。したがって、このパーティクルが存在することによって、接合膜3と接合面24との界面における接合強度が低下したり、接合界面において剥離が生じたりするのを的確に抑制または防止することができる。
【0080】
[5]次に、仮接合体5中の接合膜3にエネルギーを付与する。
接合膜3にエネルギーを付与すると、この接合膜3では、表面および裏面付近の分子結合の一部が切断され、表面および裏面が活性化されることに起因して、第1の基材21および第2の基材22に対する接着性が発現する。その結果、接合膜3を介して、第1の基材21と第2の基材22とを、化学的結合に基づいて強固に接合することができる。
【0081】
ここで、本明細書中において、表面および裏面が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面および裏面の分子結合の一部、具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断されて、接合膜3中に終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
【0082】
接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与するものであってもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。これにより、接合膜3の表面および裏面を効率よく活性化させることができる。また、接合膜3中の分子構造を必要以上に切断しないので、接合膜3の特性が低下してしまうのを避けることができる。
【0083】
上記の方法の中でも、本実施形態では、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
【0084】
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図2(g)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、接合膜3から表面付近の分子結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を確実に発現させることができる。
【0085】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、分子結合の切断を効率よく行うことができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0086】
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面付近の分子結合を切断し得る程度の時間、すなわち、接合膜3の表面付近に存在する分子結合を選択的に切断し得る程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、1秒〜30分程度であるのが好ましく、1秒〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
【0087】
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、接合膜3のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による接合膜3の変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、接合膜3の内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを、防止することができる。
【0088】
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って接合膜3に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
【0089】
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、表面付近の分子結合を選択的に切断することができる。
【0090】
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇するのを防止して、表面付近の分子結合を選択的に切断することができる。
また、接合膜3に照射するレーザ光は、その焦点を、接合膜3の表面に合わせた状態で、この表面に沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、表面付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、接合膜3の表面に存在する分子結合を選択的に脱離させることができる。
【0091】
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、大気雰囲気(特に、露点が低い雰囲気下)中で行うのが好ましい。これにより、接合膜3の表面付近にオゾンガスが生じて、表面の活性化がより円滑に行われることとなる。さらに、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0092】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による第1の基材21の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3で切断される分子結合の量を調整することが可能となる。このように切断される分子結合の量を調整することにより、第1の基材21と第2の基材22との間の接合強度を容易に制御することができる。
【0093】
すなわち、表面付近で切断される分子結合の量を多くすることにより、接合膜3の表面付近に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、表面付近で切断される分子結合の量を少なくすることにより、接合膜3の表面付近に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
【0094】
以上のようにして、第1の基材21と第2の基材22とが接合膜3を介して化学的に結合され、図2(h)に示すような接合体1が得られる。
このようにして得られた接合体1では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、2つの基材21、22が接合されている。このため、接合体1は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
【0095】
また、このような接合方法によれば、高温(例えば180℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された第1の基材21および第2の基材22をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合しているため、各基材21、22の構成材料に制約がないという利点もある。
以上のことから、本発明によれば、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
【0096】
また、接合体1では、第1の配線パターン212を構成する各導電膜212aと第2の配線パターン222を構成する各導電膜222aとの間に、接合膜3中に分散した導電性粒子32が挟まることによって、各導電膜212aと各導電膜222aとの間が電気的に接続されている。
また、接合体1では、互いに対向していない導電膜212aと導電膜222aとの間は、接合膜3中のシリコーン材料によって絶縁されている。また、隣接する導電膜212a同士の間、および、隣接する導電膜222a同士の間も、それぞれ絶縁されている。
【0097】
以上のことから、接合体1では、接合膜3(液状被膜31)の圧縮量を適宜調整することによって、導電性領域と絶縁性領域とを簡単に形成することができる。
また、接合膜3は、前述したように、隣接する導電膜212a、222a同士を絶縁する機能を有しているので、導電膜212a、222aのピッチを比較的狭く設定した場合でも、導電膜212a、222a間の絶縁性を確保することができる。また、接合膜3は、適正な膜厚範囲が比較的薄いので、接続材が占有するスペースを極めて小さく抑えることができる。これらのことから、電気回路の高密度化に貢献することができる。
【0098】
また、接合膜3は、異方導電性フィルム等で用いられる接着剤に比べて、耐有機溶剤性に優れるため、製造工程や動作に際して、接続材に有機溶剤が接触する可能性のある場合でも好適に用いることができる。
さらに、接合膜3は、複数の導電膜212aと複数の導電膜222aとの間を一括して接続することができるため、接続工程に要する時間を短縮することができる。
【0099】
また、接合膜3は、厚さ方向の導電性を高めると同時に、熱伝導性も高めることができる。
また、接合膜3は、従来の接着剤等に比べて、熱膨張係数が極めて小さい。このため、接合膜3は、環境温度が変化してもその厚さが変化し難いものとなり、その結果、接合体1は寸法精度の極めて高いものとなる。
【0100】
また、本実施形態では、接合すべき領域(接合膜形成領域41)のみに部分的に接合膜3を形成するようにしたため、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差に基づいて接合界面に生じる応力が、接合面23全体に接合膜3を形成した場合に比べて小さく抑えられる。その結果、第1の基材21と第2の基材22の剥離を確実に抑制または防止することができる。
【0101】
また、例えば、接合膜形成領域41の面積や形状を制御することによって、接合体1の接合強度を容易に調整することができる。その結果、例えば、第1の基材21と第2の基材22とを容易に分離可能な接合体1が得られる。すなわち、接合体1の接合強度を調整可能であると同時に、接合体1を分離する際の強度(割裂強度)を調整可能である。
かかる観点から、容易に分離可能な接合体1を作製する場合には、接合体1の接合強度は、人の手で容易に分離可能な程度の大きさであるのが好ましい。これにより、接合体1を分離する際、装置等を用いることなく、簡単に行うことができる。
【0102】
また、第1の基材21と第2の基材22の接合膜3と接触する領域の面積や形状を制御することにより、接合膜3に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第1の基材21と第2の基材22との間で熱膨張率差が大きい場合でも、各基材21、22を確実に接合することができる。
さらに、本実施形態にかかる接合方法によれば、接合膜3が形成されていない領域では、第1の基材21と第2の基材22との間に、接合膜3の厚さに相当する距離(高さ)の空間3cが形成される。このような空間3cを活かすため、接合膜形成領域41の形状を適宜調整することにより、第1の基材21と第2の基材22との間に、閉空間や流路を形成したりすることができる。
【0103】
また、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差にもよるが、第1の基材21および第2の基材22の温度が25〜50℃程度である状態下で、第1の基材21と第2の基材21とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
また、この場合、具体的な第1の基材21と第2の基材22との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
【0104】
ここで、本工程において、第1の基材21と第2の基材22とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、第2の基材22の接合面24に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、第1の基材21に形成された接合膜3と、第2の基材22の接合面24とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面に存在する水酸基と、第2の基材22の接合面24に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の基材21と第2の基材22とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合する。その結果、第1の基材21と第2の基材22との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士または該結合手同士が酸素原子を介して結合する。これにより、第1の基材21と第2の基材22とがより強固に接合されると推察される。
【0105】
また、第1の基材21の接合膜3の表面や内部、および、第2の基材22の接合面24や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、接合膜3と第2の基材22とが特に強固に接合される。
以上のようにして、図2(h)に示す接合体(本発明の接合体)1を得ることができる。
【0106】
また、このようにして得られた接合体1は、第1の基材21と第2の基材22との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体1は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。また、本発明の接合方法によれば、第1の基材21と第2の基材22とが上記のような大きな接合強度で接合された接合体1を効率よく作製することができる。
【0107】
また、接合膜3の厚さ方向での体積抵抗率は、導電性粒子32を介して電気的に接続された領域(導電性領域)では、1×10Ω・cm以下であるのが好ましく、1×10Ω・cm以下であるのがより好ましい。これに対し、シリコーン材料で絶縁された領域(絶縁性領域)では、接合膜3の厚さ方向の体積抵抗率は、1×10Ω・cm以上であるのが好ましく、1×10Ω・cm以上であるのがより好ましい。また、接合膜3の面方向の体積抵抗率も、同様に、1×10Ω・cm以上であるのが好ましく、1×10Ω・cm以上であるのがより好ましい。このような抵抗率の接合膜3であれば、各導電膜212aと各導電膜222aとの間を確実に導通させるとともに、隣接する導電膜212a同士の間、および、隣接する導電膜222a同士の間を、それぞれ確実に絶縁することができる。その結果、接合体1を用いて、損失や短絡を確実に防止し得る電気回路を構築することができる。また、本発明の接合方法によれば、このような優れた異方導電性を発現する接合膜3を効率よく作製することができる。
なお、接合体1を得る際、または、接合体1を得た後に、この接合体1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([6A]および[6B])のうちの少なくとも1つの工程(接合体1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0108】
[6A] 図2(h)に示すように、得られた接合体1を、第1の基材21と第2の基材22とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第1の基材21の表面および第2の基材22の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、接合体1における接合強度をより高めることができる。
また、接合体1を加圧することにより、接合体1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合体1における接合強度をさらに高めることができる。
【0109】
さらに、導電性粒子32が柔軟性を有している場合、圧縮されてさらに扁平状となり、導電性粒子32と各導電膜212a、222aとの接触面積をより広げることができる。また、導電性粒子32がより扁平状になることにより、各導電性粒子32が元の形状に戻ろうとする復元力が生じるため、各導電性粒子32と各導電膜212a、222aとの間がより密着する。以上のようなことにより、各導電膜212aと各導電膜222aとの間の導電性をより高めることができる。
【0110】
なお、この圧力は、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料によっては、各基材21、22に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0111】
[6B] 図2(h)に示すように、得られた接合体1を加熱する。
これにより、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
【0112】
また、前記工程[6A]、[6B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図2(h)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、接合体1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0113】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の接合方法の第2実施形態について説明する。
図3および図4は、本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図3および図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0114】
以下、接合方法の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21と第2の基材22の双方に、それぞれ接合膜を形成し、これら接合膜を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合して接合体1’を得るようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0115】
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21と第2の基材22とを用意し、第1の基材21上の接合膜形成領域(第1の接合膜形成領域41a)、および、第2の基材22上の接合膜形成領域(第2の接合膜形成領域41b)に、それぞれ、液状材料30を供給し、各接合膜形成領域41a、41bに液状被膜31a、31bを形成する工程と、液状被膜31aと液状被膜31bとが密着するように、第1の基材21と第2の基材22とを重ね合わせて仮接合体5’とした後、この仮接合体5’を厚さ方向に加圧する工程と、仮接合体5’中の各液状被膜31a、31bを乾燥して、接合膜3’を得る工程と、仮接合体5’中の接合膜3’にエネルギーを付与することにより、接合膜3’の表面および裏面付近に接着性を発現させ、第1の基材21と第2の基材22とを接合して接合体1を得る工程とを有する。
【0116】
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、第1の絶縁性基板211と第1の配線パターン212とよりなる第1の基材21、および、第2の絶縁性基板221と第2の配線パターン222とよりなる第2の基材22を用意する。なお、本実施形態では、図3(a)に示すように、第1の基材21の一方の面(接合面23)の周縁部以外の領域が、接合膜が形成される第1の接合膜形成領域41aとして設定され、第2の基材22の一方の面(接合面24)の周縁部以外の領域が、接合膜が形成される第2の接合膜形成領域41bとして設定されている。ここで、第1の接合膜形成領域41aは、第1の配線パターン212を構成する各導電膜212aの一部と重なっており、第2の接合膜形成領域41bは、第2の配線パターン222を構成する各導電膜222aの一部と重なっているものとする。
【0117】
[2]次に、図3(b)に示すように、第1の基材21の第1の接合膜形成領域41aに、シリコーン材料と導電性粒子32とを含有する液状材料30を供給し、液状被膜31aを得る。また、それと同様に、第2の基材22の第2の接合膜形成領域41bに、シリコーン材料と導電性粒子32とを含有する液状材料30を供給し、液状被膜31bを得る。
【0118】
この場合、第1の接合膜形成領域41aに供給する液状材料30と、第2の接合膜形成領域41bに供給する液状材料30とは、互いにシリコーン材料の組成や重合度、導電性粒子の種類、平均粒径、含有量等が異なる液状材料であってもよいが、好ましくは同種の液状材料とされる。これにより、液状被膜31aと液状被膜31bとの親和性が向上する。その結果、後述する工程を経ることにより、液状被膜31aと液状被膜31bとがより一体化し易くなるので、第1の基材21と第2の基材22との間をより強固に接合することができる。
【0119】
[3]次に、図3(c)に示すように、液状被膜31aと液状被膜31bとが密着するように、第1の基材21と第2の基材22とを重ね合わせる。これにより、図3(d)に示す仮接合体5’を得る。
次いで、得られた仮接合体5’を、図4(e)に示すように厚さ方向に加圧する。これにより、第1の基材21と第2の基材22とが接近するとともに、各液状被膜31a、31bが面方向に広がって徐々に薄くなる。そして、最終的には、各導電膜212aと各導電膜222aとの間に導電性粒子32が挟まった状態となる。この状態では、導電性粒子32は、導電膜212aとそれに対向する導電膜222aの双方に接触しているので、導電性粒子32を介して導電膜212aと導電膜222aとの間を導通させることができる。
【0120】
このようにして圧縮された仮接合体5’では、図4(f)に示すように、液状被膜31aと液状被膜31bとが一体化する。
また、本実施形態では、2層の液状被膜31a、31bを重ね合わせているので、これらが一体化することにより得られた液状被膜は、各接合膜形成領域41a、41bよりも外側に広がることとなる。したがって、この広がり量を考慮して、あらかじめ各接合膜形成領域41a、41bの大きさを設定しておくのが好ましい。
【0121】
[4]次に、仮接合体5’中の各液状被膜31a、31bを乾燥する。これにより、接合膜3’が形成される。
[5]次に、仮接合体5’中の接合膜3’にエネルギーを付与する(図4(g)参照)。
接合膜3’にエネルギーを付与すると、この接合膜3’では、表面および裏面付近の分子結合の一部が切断し、表面および裏面が活性化されることに起因して、第1の基材21および第2の基材22に対する接着性が発現する。その結果、接合膜3’を介して、第1の基材21と第2の基材22とを、化学的結合に基づいて強固に接合することができる。
【0122】
以上のようにして、第1の基材21と第2の基材22とが接合膜3’を介して化学的に結合され、図4(h)に示すような接合体1’が得られる。
また、接合体1’では、第1の配線パターン212を構成する各導電膜212aと第2の配線パターン222を構成する各導電膜222aとの間に、接合膜3’中に分散した導電性粒子32が挟まることによって、各導電膜212aと各導電膜222aとの間が電気的に接続されている。
【0123】
また、各導電膜212aとそれに対向していない各導電膜222aとの間は、接合膜3’中のシリコーン材料によって絶縁されている。また、隣接する導電膜212a同士の間、および、隣接する導電膜222a同士の間も、それぞれ絶縁されている。
なお、接合体1’を得た後、この接合体1’に対して、必要に応じて、前記第1実施形態における2つの工程([6A]および[6B])のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。これにより、接合体1’の接合強度、および、接合膜3’の厚さ方向における導電性のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0124】
このような第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
また、本実施形態では、特に、第1の基材21と第2の基材22の両方に、同じパターンで各液状被膜31a、31bが形成されているが、各液状被膜31a、31bのパターンは互いに異なっていてもよい。
【0125】
以上のような前記各実施形態にかかる接合方法は、種々の複数の部材同士を接合するのに用いることができる。
このような接合に供される部材としては、例えば、トランジスタ、ダイオード、メモリのような半導体素子、水晶発振子のような圧電素子、反射鏡、光学レンズ、回折格子、光学フィルターのような光学素子、太陽電池のような光電変換素子、半導体基板とそれに搭載される半導体素子、絶縁性基板と配線または電極、インクジェット式記録ヘッド、マイクロリアクタ、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサ、加速度センサのようなセンサ部品、半導体素子や電子部品のパッケージ部品、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体のような記録媒体、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品、燃料電池用部品等が挙げられる。
また、特に、各種半導体装置や電子部品の回路基板への実装、回路基板同士や配線同士の接続に対しては、高密度実装が可能な本発明の接合方法を、より効果的に適用することができる。
【0126】
<液晶表示装置>
ここでは、本発明の接合体を透過型液晶表示装置に適用した場合の実施形態について説明する。
図5は、透過型液晶表示装置を示す平面図、図6は、図5に示す透過型液晶表示装置が備える液晶パネルの分解斜視図、図7は、図5中A−A線断面図、図8は、図5中B−B線断面図である。なお、各図では、図が煩雑になるのを避けるため、一部の部材を省略している。また、以下の説明では、図5中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言い、図6〜図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0127】
各図に示す透過型液晶表示装置(以下、単に「液晶表示装置」と言う)501は、液晶パネル(表示パネル)502と、液晶パネル502を駆動するための複数のドライバICパッケージ503と、2つの入力用配線基板505と、バックライト(光源手段)506とを有している。この液晶表示装置501は、バックライト506からの光を液晶パネル502に透過させることにより画像(情報)を表示し得るものである。
【0128】
液晶パネル502は、互いに対向して配置された第1の基材507と第2の基材508とを有し、これらの第1の基材507と第2の基材508との間には、表示領域を囲むようにしてシール材509(図7参照)が設けられている。
そして、これらの第1の基材507、第2の基材508およびシール材509により画成される空間には、電気光学物質である液晶が収納され、図6および図7に示すように、液晶層(中間層)510が形成されている。
【0129】
第1の基材507および第2の基材508は、それぞれ、例えば、各種ガラス材料、各種樹脂材料等で構成されている。
第1の基材507は、その上面(液晶層510側の面)に、マトリックス状(行列状)に配置された複数の画素電極511と、X方向に延在する信号電極512とが設けられ、1列分の画素電極511の各々が1本の信号電極512に、それぞれ、TFD素子やTFT素子のようなスイッチング素子513を介して接続されている。
また、第1の基材507の下面には、偏光板514が設けられている。
【0130】
一方、第2の基材508の下面(液晶層510側の面)には、複数の帯状をなす走査電極515が設けられている。これらの走査電極515は、信号電極512とほぼ直交するY方向に沿って、互いに所定の間隔をおいてほぼ平行に配置され、かつ、画素電極511の対向電極となるように配列されている。
画素電極511と走査電極515とが重なる部分(この近傍の部分も含む)が1画素を構成し、これらの電極間において、各画素毎に液晶層510の液晶が駆動、すなわち、液晶の配向状態が変化する。
【0131】
ここで、第1の基材507は、図5に示すように、平面視で第2の基材508の外縁より外側(図5中、左側および上側)へ張り出した張出領域(額縁)507Aを有している。
この張出領域507Aの上面には、信号電極512および走査電極515に連続する配線パターン522が形成されている。
【0132】
各走査電極515の下面には、それぞれ、赤(R)、緑(G)、青(B)の有色層(カラーフィルター)516が設けられ、これらの各有色層516がブラックマトリックス517によって仕切られている。
また、第2の基材508の上面には、前記偏光板514と偏光軸が異なる偏光板518が設けられている。
【0133】
このような構成の液晶パネル502では、バックライト506から発せられた光は、偏光板514で偏光された後、第1の基材507および各画素電極511を介して、液晶層510に入射する。液晶層510に入射した光は、各画素毎に配向状態が制御された液晶により強度変調される。強度変調された各光は、有色層516、走査電極515および第2の基材508を通過した後、偏光板518で偏光され、外部に出射する。これにより、液晶表示装置501では、第2の基材508の液晶層510と反対側から、例えば、文字、数字、図形等のカラー画像動画および静止画の双方を含む)を視認することができる。
【0134】
図5および図7に示すように、各ドライバICパッケージ503は、それぞれ、駆動用配線パターン519が設けられた可撓性基板520と、該可撓性基板520内に収納され、駆動用配線パターン519と電気的に接続されたドライバIC521とを有している。
ドライバIC521は、信号電極512および走査電極515に供給すべき駆動信号を生成する機能を有するものであり、半導体チップで構成されている。
【0135】
また、図8に示すように、駆動用配線パターン519は、配線パターン522に対応するようにストライプ状に設けられ、駆動用配線パターン519の各配線519aの一端部が、それぞれ、配線パターン522の各配線522aと接続(接合)されている。
各入力用配線基板505は、それぞれ、入力用配線パターン523を有するプリント配線基板であり、電源用ICや制御用ICが実装された回路基板(図示せず)からの信号(画像信号等)を、その入力用配線パターン523を介して、各ドライバIC521に伝達する。
各入力用配線パターン523は、各駆動用配線パターン519に対応するように設けられ、入力用配線パターン523の各配線の一端部は、それぞれ、駆動用配線パターン519の各配線519aと接続(接合)されている。また、入力用配線パターン523の各配線の他端部は、それぞれ、回路基板が有する各配線と接続されている。
【0136】
このように構成された液晶表示装置501の駆動系では、回路基板からの信号が、各入力用配線パターン523および各駆動用配線パターン519を介して各ドライバIC521に入力され、これら各ドライバIC521によって信号電極512および走査電極515に供給すべき駆動信号が生成される。信号電極側のドライバIC521(図5中Y方向に沿って並列するドライバIC521)によって生成された駆動信号は、駆動用配線パターン519および信号電極512を介してスイッチング素子に供給される。スイッチング素子は、供給された駆動信号に応じて画素電極511に電流を供給する。また、走査電極515側のドライバIC521(図5中X方向に沿って並列するドライバIC521)によって生成された駆動信号は、駆動用配線パターン519を介して走査電極515に供給される。これにより、画素電極511と走査電極515との間で、各画素毎に、液晶層510の液晶が駆動、すなわち、液晶の配向状態が変化する。
【0137】
以上のような液晶表示装置において、図8に示すように、配線パターン522が設けられた張出領域507Aと、駆動用配線パターン519が設けられたドライバICパッケージ503とを接合する際、および、入力用配線基板505とドライバICパッケージ503とを接合する際に、少なくとも1箇所において本発明の接合方法が適用されている。
換言すれば、張出領域507AとドライバICパッケージ503との接合体、入力用配線基板505とドライバICパッケージ503との接合体のうち、少なくとも1箇所に本発明の接合体が適用されている。
【0138】
なお、本実施形態では、図8に示すように、張出領域507Aに設けられた配線パターン522とドライバICパッケージ503に設けられた駆動用配線パターン519との間と、この駆動用配線パターン519と入力用配線基板505に設けられた入力用配線パターン523との間が、それぞれ接合膜3を介して接合されるとともに電気的に接続されている。
【0139】
このような液晶表示装置501は、配線パターン522、駆動用配線パターン519、入力用配線パターン523の各ピッチが比較的狭く設定されていても、配線パターン522と駆動用配線パターン519、および、駆動用配線パターン519と入力用配線パターン523とが、接合膜3を介して、隣接する配線間の絶縁性を確実に保持しつつ、導電性よく接続されている。その結果、液晶表示装置501は、小型化を図りつつ、高い信頼性を得ることができる。
以上、本発明の接合方法および接合体について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
【実施例】
【0140】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.接合体の製造
(実施例1)
まず、第1の基材として、ストライプ状の配線パターンが設けられたPET(ポリエチレンテレフタレート)基板を用意し、第2の基材として、ストライプ状の配線パターンが設けられた石英ガラス基板を用意した。なお、各配線パターンは、それぞれ基板表面から突出するように形成されている。
また、PET基板および石英ガラス基板の寸法は、それぞれ、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmであり、また、各配線パターンは、いずれも銅薄膜によって構成され、配線の幅が200μm、ピッチが200μmである。
【0141】
次に、シリコーン材料としてポリジメチルシロキサン骨格を有するものを含有し、溶媒としてトルエンおよびイソブタノールを含有する溶液(信越化学工業社製、「KR−251」:粘度(25℃)18.0mPa・s)に、導電性粒子として金めっきが施されたポリスチレン粒子を、最終的に得られる接合膜中での含有率が10質量%になるよう溶液中に分散させ、液状材料を用意した。なお、用いた導電性粒子は、平均粒径5μmの弾力性のある球形状粒子であった。
そして、PET基板およびガラス基板の上に、接合膜形成領域(周縁部の枠状の領域を除いた領域)の形状に対応する形状をなす窓部を有するマスクを設け、このマスクを介して、ロールコート法によって液状材料を供給した。これにより、両基板の配線パターンを覆うように液状被膜を形成した。
【0142】
次に、マスクを除去した後、液状被膜同士が密着するように、また、両基板に設けられた配線パターン同士が向き合うようにして、両基板を重ね合わせた。これにより、仮接合体を得た。続いて、仮接合体を厚さ方向に3MPaの圧力で圧縮した。
次に、仮接合体を、常温(25℃)で、24時間乾燥させた。これにより、接合膜を得た。
【0143】
次に、得られた接合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
次に、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
【0144】
(実施例2)
接合体を加圧しつつ加熱する際の加熱温度を80℃から25℃に変更した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
(実施例3〜4)
第1の基材の基板材料および第2の基材の基板材料を、それぞれ表1に示す材料に変更した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
【0145】
(実施例5)
導電性粒子を、平均粒径が1μmのものに変更した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
(実施例6)
仮接合体に対して紫外線を照射する方法に代えて、仮接合体を100℃で加熱するようにした以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
【0146】
(実施例7)
導電性粒子として、銅粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
(実施例8)
導電性粒子として、表面に金めっき処理が施されたニッケル粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
【0147】
(実施例9)
導電性粒子として、ニッケル粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
(実施例10)
ガラス基板には接合膜を形成せず、PET基板にのみ接合膜を形成した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
【0148】
(比較例1〜3)
第1の基材の基板材料および第2の基材の基板材料を、それぞれ表1に示す材料とし、実施例1の接合膜形成領域(導電性パターンを包含する領域)と同様の領域を、以下の異方導電性フィルムで接着した以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
<異方導電性フィルム>
メーカー :日立化成工業(株)
品名 :異方導電フィルム「ANISOLM」AC−7000系
接着剤 :スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)系ホットメルト
導電性粒子:ニッケル粒子
【0149】
2.接合体の評価
2.1 接合強度(割裂強度)の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体について、それぞれ接合強度を測定した。
接合強度の測定は、各基材を引き剥がしたとき、剥がれる直前の強度(荷重)を測定することにより行った。
その結果、各実施例で得られた接合体の接合強度は、いずれも各比較例で得られた接合体の接合強度とほぼ同等かまたは各比較例より大きかった。
【0150】
2.2 接合膜および導電性接着材の導電性の評価
各実施例で形成した接合膜および比較例1〜3で用いた異方導電性フィルム(導電性接着剤)について、厚さ方向および面方向における電気抵抗を測定した。
ここでは、各実施例および各比較例で得られた接合体において、接合膜または導電性接着剤を介して接続された導電パターン間の電気抵抗を測定することにより、接合膜および導電性接着剤の厚さ方向の電気抵抗をそれぞれ測定した。
そして、測定した接合膜および導電性接着剤の厚さ方向の電気抵抗に基づいて算出した抵抗率を、以下の評価基準にしたがって評価した。
【0151】
<抵抗率の評価基準>
◎:1×10Ω・cm未満
○:1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm未満
△:1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm未満
×:1×10Ω・cm以上
【0152】
2.3 耐薬品性の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体を、80℃に維持したインクジェットプリンタ用インク(エプソン社製、「HQ4」)に、以下の条件で3週間浸漬した。その後、各基材を引き剥がし、接合界面にインクが浸入していないかを確認した。そして、その結果を以下の基準にしたがって評価した。
【0153】
<耐薬品性の評価基準>
◎:全く浸入していない
○:角部にわずかに浸入している
△:縁部に沿って浸入している
×:内側に浸入している
以上、2.2〜2.3の各評価結果を表1に示す。
【0154】
【表1】

【0155】
表1から明らかなように、各実施例で得られた接合体は、その導電パターン間の導電性が、各比較例で得られた接合体とほぼ同等かまたはやや優れていた。
また、各実施例で得られた接合体は、優れた耐薬品性を示した。一方、各比較例で得られた接合体は、耐薬品性が十分ではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図2】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】本発明の接合体を適用して得られた透過型液晶表示装置を示す上面図である。
【図6】図5に示す液晶表示装置が備える液晶パネルの分解斜視図である。
【図7】図5中A−A線断面図である。
【図8】図5中B−B線断面図である。
【符号の説明】
【0157】
1、1’……接合体 21……第1の基材 211……第1の絶縁性基板 212……第1の配線パターン 212a……導電膜 22……第2の基材 221……第2の絶縁性基板 222……第2の配線パターン 222a……導電膜 23、24……接合面 3、3’……接合膜 3c……空間 30……液状材料 31、31a、31b……液状被膜 32……導電性粒子 41……接合膜形成領域 41a……第1の接合膜形成領域 41b……第2の接合膜形成領域 5、5’……仮接合体 501……液晶表示装置 502……液晶パネル 503……ドライバICパッケージ 505……入力用配線基板 506……バックライト 507……第1の基材 507A……張出領域 508……第2の基材 509……シール材 510……液晶層 511……画素電極 512……信号電極 513……スイッチング素子 514……偏光板 515……走査電極 516……有色層 517……ブラックマトリックス 518……偏光板 519……駆動用配線パターン 519a、522a……配線 520……可撓性基板 521……ドライバIC 522……配線パターン 523……入力用配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合膜を介して接合される基材として、表面に第1の導電部を有する第1の基材と表面に第2の導電部を有する第2の基材とを用意する第1の工程と、
前記第1の導電部および第2の導電部の少なくとも一方の表面上に、シリコーン材料と導電性粒子とを含有する液状材料を供給することにより、液状被膜を形成する第2の工程と、
前記液状被膜を介して前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせて仮接合体とした後、該仮接合体を前記液状被膜の厚さ方向に加圧する第3の工程と、
前記仮接合体中の前記液状被膜を乾燥して、前記接合膜を得る第4の工程と、
前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜に接着性を発現させ、この接着性により、前記第1の基材と前記第2の基材とを接合して接合体を得るとともに、前記接合膜中の前記導電性粒子を介して前記第1の導電部と前記第2の導電部との間を電気的に接続する第5の工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成される請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記シリコーン材料は、シラノール基を有する請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する金属膜とを有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記導電膜は、Ni、CuまたはAuを主材料として構成されている請求項4に記載の接合方法。
【請求項6】
前記基材粒子は、樹脂材料で構成されている請求項4または5に記載の接合方法。
【請求項7】
前記導電性粒子は、弾力性を有している請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記導電性粒子の平均粒径は、0.5〜100μmである請求項1ないし7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記接合膜中における前記導電性粒子の含有量は、1〜50質量%である請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
前記第1の基材は、第1の絶縁性基板と、前記第1の導電部として、前記第1の絶縁性基板の前記接合膜側に位置する面から突出するように設けられた第1の導電膜とを有しており、
前記第2の基材は、第2の絶縁性基板と、前記第2の導電部として、前記第2の絶縁性基板の前記接合膜側に位置する面から突出するように設けられた第2の導電膜とを有しており、
前記接合膜を介して、前記第1の基材と前記第2の基材とを接合するとともに、前記接合膜中の前記導電性粒子を介して、前記第1の導電膜と前記第2の導電膜とを選択的に電気的に接続する請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
前記接合膜中の前記導電性粒子は、前記第1の導電膜および前記第2の導電膜のうち、互いに対向している領域同士を選択的に電気的に接続する請求項10に記載の接合方法。
【請求項12】
前記第5の工程における前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし11のいずれかに記載の接合方法。
【請求項13】
前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項12に記載の接合方法。
【請求項14】
前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項12に記載の接合方法。
【請求項15】
前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項12に記載の接合方法。
【請求項16】
前記第5の工程における前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項1ないし15のいずれかに記載の接合方法。
【請求項17】
前記接合膜の平均厚さは、100nm〜100μmである請求項1ないし16のいずれかに記載の接合方法。
【請求項18】
前記第2の工程において、前記第1の基材および前記第2の基材の双方の表面上に、前記液状被膜を形成し、
前記第3の工程において、前記液状被膜同士が密着するように、前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせる請求項1ないし17のいずれかに記載の接合方法。
【請求項19】
前記第5の工程の後に、さらに、前記接合体に対して、前記第1の基材と前記第2の基材との接合強度を高める処理を行う工程を有する請求項1ないし18のいずれかに記載の接合方法。
【請求項20】
前記接合強度を高める処理を行う工程は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項19に記載の接合方法。
【請求項21】
前記第1の基材および前記第2の基材は、互いに対向する面に、それぞれ導電部を有しており、
前記第1の基材と前記第2の基材との間が、請求項1ないし20のいずれかに記載の接合方法により接合されてなり、かつ、前記各導電部間が電気的に接続されてなることを特徴とする接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−50238(P2010−50238A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212280(P2008−212280)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】