説明

接合方法および止水構造構築方法

【課題】連続気泡タイプの発泡樹脂の接着に好適で、基材が連続気泡タイプの軟質ウレタンフォームで構成された止水材同士の接合に好適な接合方法およびこの接合方法を用いた止水構造構築方法を提供する。
【解決手段】互いに接合されるボックスカルバート1のうちの一方の接合端面2の溝4に第1の止水性弾性体5が抜き差し自在に挿入されている。ボックスカルバート1のうちの他方の接合端面3に前記第1の止水性弾性体5と対応するように第2の止水性弾性体6が接合されている。これら止水性弾性体5,6は、水膨張性ポリウレタンフォームからなる。第1及び第2の止水性弾性体5,6に前記親水性ポリウレタン用プレポリマを浸透させた状態で、これらが圧縮された状態となるようにボックスカルバート1同士を隣接して配置する。これにより、第1及び第2の止水性弾性体5,6が一体に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の連続気泡型軟質発泡樹脂を一体に接合する接合方法およびこの接合方法を用いた止水構造構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道や共同溝等の埋設管路(管渠)を構築する際に、例えば、ボックスカルバート、アーチカルバート、ヒューム管等の筒状構造体を連接して管路を形成する方法が知られている。このような管路においては、地震等の耐震対策として、筒状構造体同士の接合部において、引っ張り力がかかる可能性のある部分は伸びることが可能な構造とし、曲げ力がかかる可能性のある部分は曲がることが可能な構造とすることが求められている。
【0003】
そこで、上述のような構造体同士の間に柔軟性を有する弾性体からなる止水材を介在させることにより構成され、かつ、筒状構造体同士の接合部に上述の引っ張り力や曲げ力に対応して柔軟に弾性変形する可橈継手の開発が進められている。
一方、上述のような柔軟性を有する弾性体からなる止水材として、連続気泡タイプの軟質ウレタンフォームに高吸水性樹脂を含有させた水膨張性ウレタンフォームが知られている。
【0004】
このような止水材は、例えば、筒状構造体に接着するために、両面粘着テープが用いられる。両面粘着テープにより必要十分な強度で筒状構造体にウレタンフォームを基材とする止水材を筒状構造体に接着することができる。
また、ウレタンフォームの接着に好適に用いられる水系接着剤も開発されている(例えば、特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】特開2006−83302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者らは、上述の構造体同士の間にウレタンフォームを基材とする止水材を挟みこむように配置する場合に、互いに隣接して配置すべき構造体の互いに対向する部分にそれぞれ前記止水材を保持しておき、一方の構造体に他方の構造体を付き合わせるように配置する際に止水材同士を接合する方法を開発している。
この場合に、ウレタンフォームを基材とする止水材同士の接合部分が十分に接着されるとともに、止水材同士の接着部分でも止水材とほぼ同等の性質、例えば、弾性や柔軟性や止水性を有することが好ましいが、従来の両面粘着テープや、ウレタンフォーム同士を接着可能な各種接着剤(粘着剤)では、止水材本体と止水材同士の接合部分でほぼ同等の性質とすることが困難であった。
【0007】
この発明は、上記の背景に鑑み為されたもので、連続気泡タイプの発泡樹脂の接着に好適で、さらに、基材が連続気泡タイプの軟質ウレタンフォームで構成された止水材同士の接合に好適な接合方法およびこの接合方法を用いた止水構造構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、連続気泡型軟質発泡樹脂から形成される部材同士を接合するための接合方法であって、
接合される前記部材同士のうちの少なくとも一方の部材の接合部分に水と反応して硬化する液状の親水性ポリウレタン用プレポリマを浸透させ、
前記部材同士を当接させるとともに、これら部材が圧縮するように圧力をかけ、
親水性ポリウレタン用プレポリマが少なくとも気中の湿気等の水分と反応して硬化するまで圧力をかけた状態を保持することを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、連続気泡型発泡樹脂から形成され、互いに接合される部材の少なくとも一方の部材の接合部分に親水性ポリウレタン用プレポリマを浸透させた状態で、これら部材が圧縮するように圧力をかけることで、部材に浸透した親水性ポリウレタン用プレポリマが部材同士の接合部分に染み出すことになる。また、部材の一方だけに親水性ポリウレタン用プレポリマに浸透させた場合には、圧力をかけた際に、一方の部材から他方の部材に親水性ポリウレタン用プレポリマが染み込むことになる。また、両方の部材に親水性ポリウレタン用プレポリマを浸透させた場合には、両方の部材からこれら部材の接合部分に親水性ポリウレタン用プレポリマが染み出すことにより親水性ポリウレタン用プレポリマが一体となる。
そして、この親水性ポリウレタン用プレポリマは、気中の湿気等の水分で硬化することになる。これにより、親水性ポリウレタン用プレポリマが浸透した部材同士が接合されることになる。この際に親水性ポリウレタン用プレポリマが硬化した親水性ポリウレタンが柔軟性を有することから、軟質発泡樹脂の柔軟性に対応して変形可能であり、部材同士をほぼ一体に接合することができるとともに、部材と部材同士の接合部分を含む全体で柔軟な弾性変形が可能となる。
【0010】
特に部材を連続気泡型軟質ポリウレタンフォームとした場合に、部材と接着剤として作用する親水性ポリウレタンが比較的均質となるとともに、部材に親水性ポリウレタンが染み込んだ状態で硬化しているので、より、均質に近い状態で部材同士を接合することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の接合方法において、
前記部材が、ポリウレタンフォームに吸水性樹脂を含有させた水膨張性ポリウレタンフォームからなる止水材であることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、上述のように部材の基材となる部分がポリウレタンフォーム(連続気泡型軟質ポリウレタンフォーム)であることから、上述のように部材同士を均質に近い状態で接合することが可能となる。
また、親水性ポリウレタンも止水材として用いられるものであり、部材及びその接合部全体で止水性を発現することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載される接合方法を用いた構造体同士の間の止水構造構築方法であって、
構造体同士を隣接して配置する際に、互いに隣接して配置される構造体の互いに対向する部分にそれぞれ前記部材を保持させ、
前記部材の少なくとも一方に前記親水性ポリウレタン用プレポリマを浸透させた状態で、前記部材が圧縮された状態となるように前記構造体同士を隣接して配置することにより、前記構造体同士の間を一体に接合された前記部材で止水することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明によれば、例えば、構造体同士の接合時に構造体同士の間で止水材として機能する部材を連結した状態に取り付ける場合に、一方の構造体に取り付けられた止水材(部材)を他方の構造体に接合するのではなく、予め接合される両方の構造体に保持させておいた部材同士(同じ物質同士)を接合するので、構造体の接合時に異質な物質を接合するよりも、より確実に構造体同士の間に止水材を連結した状態に保持させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の連続気泡型発泡樹脂を確実に一体に接合できるとともに、本発明の接合方法は、特に止水材として使用され、ポリウレタンフォームに高吸水性樹脂を含有させた水膨張性ポリウレタンフォームの接合に好適に用いることができる。したがって、この接合方法を用いた止水構造構築方法において、構造体同士の間を容易な作業により確実に止水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
この実施の形態は、連続気泡型軟質発泡樹脂から形成される部材同士を接合するための接合方法である。
そして、接合される前記部材同士のうちの少なくとも一方の部材の接合部分に水と反応して硬化する液状の親水性ポリウレタン用プレポリマを浸透させ、前記部材同士を当接させるとともに、これら部材が圧縮するように圧力をかけ、親水性ポリウレタン用プレポリマが少なくとも気中の湿気等の水分と反応して硬化するまで圧力をかけた状態を保持する
ものである。
【0017】
前記部材としては、可橈性を有する止水材として開発され、連続気泡型軟質発泡樹脂に高吸水性樹脂を含有させた水膨張性発泡樹脂を好適に用いることができる。
この水膨張性発泡樹脂は、独立気泡体ではなく、連続気泡体からなり、内部に高吸水性樹脂を含有している。すなわち、水膨張性発泡樹脂は、連続気泡体であり、かつ柔軟性に富んだ軟質の発泡樹脂となっている。この水膨張性発泡樹脂は、連続気泡体であることから、水を浸透させるものであるが、水が浸透すると水膨張性発泡樹脂(連続気泡型発泡樹脂)内の高吸水性樹脂が吸水して少なくとも数百倍以上に膨張し内圧を生じ、水膨張性発泡樹脂も膨張することになる。これにより例えば、水膨張性樹脂が構造体間に挟まれた状態となっていると、内圧を生じた状態となり外部からの水圧に抵抗し、確実に止水することが可能となる。
【0018】
すなわち、上記連続気泡型軟質発泡樹脂としては、例えば、ポリウレタンフォームを好適に使用することができ、特に気泡の平均径が1ミリ以下、例えば、100μm代のマイクロセルウレタンフォームを好適に用いることができる。
また、高吸水性樹脂としては、例えば、周知のポリアクリル酸系の高吸水性樹脂を用いることができる。
【0019】
以上のような水膨張性発泡樹脂(水膨張性ポリウレタンフォーム)は、柔軟性が高く、後述の構造体がプレキャストコンクリートからなり表面に微小な凹凸があっても確実に接合することができ、かつ、ブチルゴムや、水膨張性ゴムに比較して極めて軽量なため、厚みがあり、かつ、長尺な形状としても容易に人手で扱える範囲内の重量となり、極めて施工性に優れたものとなる。なお、上述のような水膨張性ポリウレタンフォームとしては、止水材として市販のものを使用可能である。
【0020】
液状の親水性ポリウレタン用プレポリマとしては、例えば、止水滑剤(信越産業株式会社製 商品名 レジルーブSW−2)や、止水材として1液型親水性ポリウレタンとして市販されているものを用いることができる。
この親水性ポリウレタン用プレポリマは、水(例えば、気中の湿気)と反応し、ゴム状に硬化するもので、また、急激に水と反応させると発泡して硬化する。
【0021】
この親水性ポリウレタン用プレポリマは、例えば、止水性や、滑性と止水性とを必要とするような部分に塗布して硬化させて使用するものであるが、本発明では、連続気泡型軟質発泡樹脂、特にウレタンフォームの接着に使用する点が従来と異なる。
【0022】
次に連続気泡型軟質発泡樹脂からなる部材の接合方法およびこの接合方法を用いた止水構造構築方法を以下のボックスカルバート1による埋設管路の構築を例にとって説明する。
図1は、構造体(筒状構造体)としてのプレキャストコンクリート製のボックスカルバート1の接合端面2,3を示すものである。なお、図1において、ボックスカルバート1の前後の接合端面2,3を左半分と右半分とにそれぞれ図示している。
また、図2は、矩形枠状の接合端面2,3の例えば、上辺部のボックスカルバート1の軸方向に沿った断面を示すものである。
【0023】
この例のボックスカルバート1の基本的な構造は、周知のものであり、四角筒状に形成されたプレクキャストコンクリート製となっている。そして、本発明にかかるのはボックスカルバート1の接合端部を突き合わせた継手構造である。
ボックスカルバート1の前後の接合端面2,3のうちの一方の接合端面2は、ボックスカルバート1の径方向に沿った平面にボックスカルバート1の周方向に沿った溝4が形成された状態となっている。すなわち、矩形枠状の接合端面2の上辺部及び下辺部は、水平方向に沿って溝4が形成され、左辺部及び右辺部では、鉛直方向に沿って溝4が形成されている。したがって、矩形枠状(環状)の接合端面2に沿って、溝4は全体として矩形枠状(環状)に形成されている。また、溝4の外周側と内周側とに接合端面2の平面部分が形成されるように、溝4は、接合端面2の内外の幅のほぼ中央部分に形成されている。
【0024】
また、一方の接合端面2の溝4は、例えば、その幅となる長さより深さとなる長さの方が長いものとなっている。後述のようにこの溝4の深さに対応してボックスカルバート1同士の接合部分の伸びの許容範囲が決まることになり、後述のように接合部が変形した場合の許容範囲として溝4は必要十分な深さを有する必要がある。また、溝4の断面形状は、略矩形状となっているが、詳細には、後述の第1の止水性弾性体5を挿入し易いように、奥の幅より開口側の幅の方が僅かに広くなった台形状となっている。
ボックスカルバート1の前後の接合端面2,3のうちの他方の接合端面3は、溝4が形成されることなく、ボックスカルバート1の径方向に沿った平面となっている。
【0025】
そして、ボックスカルバート1同士を接合する際には、一方のボックスカルバート1の一方の接合端面2、他方のボックスカルバート1の他方の接合端面3を突き合わせるようになっており、上述の一方の接合端面2の平面部分と他方の接合端面3とが互いに接触する状態となる。
【0026】
そして、ボックスカルバート1同士を接合する場合に、一方の接合端面2には、その溝4内部に第1の止水性弾性体5が挿入されることになる。この第1の止水性弾性体5は、上述の連続気泡型軟質発泡樹脂である水膨張性ポリウレタンフォームにより構成される。そして、第1の止水性弾性体5は、その断面形状が矩形状とされ、溝4の形状に対応して、溝4の幅方向の長さよりも溝の深さ方向の長さの方が長くなっている。
また、第1の止水性弾性体5の溝4の幅方向の長さは、例えば、溝4の台形状の断面の長辺(底辺)側、すなわち、溝の開口側の幅の長さとほぼ等しくされている。したがって、溝4に第1の止水性弾性体5を挿入した状態で、第1の止水性弾性体5の奥側は僅かに弾性変形してその幅が縮められた状態となっている。
【0027】
また、第1の止水性弾性体5の溝4の深さ方向に沿った長さは、溝4の深さより僅かに長くなっており、ボックスカルバート1の接合端面2,3同士を突き合わせる前の段階では、第1の止水性弾性体5を溝4に挿入した状態で、第1の止水性弾性体5の端部が溝4から出た状態となっており、第1の止水性弾性体5は、第2の接合端面2から突出した状態となっている。
【0028】
また、第1の止水性弾性体5は、全体として矩形枠状(環状)の接合端面2に対応して矩形枠状(環状)となるが、第1の止水性弾性体5は、ボックスカルバート1にセットする前は、コーナー用のL字状のものと、真っ直ぐな棒状のものとがあり、矩形枠状の接合端面2のコーナー部分にL字状の第1の止水性弾性体5をセットし、コーナー部同士の間に真っ直ぐな棒状の第1の止水性弾性体5をセットすることにより、全体として矩形枠状とすることができる。このように第1の止水性弾性体5を分割することにより、異なるサイズのボックスカルバート1においても、棒状の第1の止水性弾性体の長さや本数を調整することで容易に対応することができる。
【0029】
また、第1の止水性弾性体5は、接合端面2の溝4内に挿入されることで、接合端面2にセットされるようになっており、接合端面2や溝4に対して接合(接着、粘着)されておらず、溝4に対して抜き差し自在な状態となっている。
また、図2(b)、(c)において、第1の止水性弾性体5は、溝4の長さ方向に3つ積み重ねて接合した状態、すなわち、複数の分割体を溝4の深さ方向に積み重ねて連接した状態となっているが、これは例えば、第1の止水性弾性体5として後述の水膨張性発泡樹脂の規格品を溝4の深さ以上の長さとするために積み重ねるように接合したものである。このような構成とすることにより、溝4の深さに対して容易に、第1の止水性弾性体5の厚みを調整することができる。なお、第1の止水性弾性体5は一体に接合されている必要があり、最初から一体に形成されたものを用いてもよい。
【0030】
他方の接合端面3には、その内外の幅の略中央部に環状の他方の接合端面3に沿って第2の止水性弾性体6が接合されている。第2の止水性弾性体6は、基本的に一方の接合端面2にセットされた第1の止水性弾性体5と厚みを除いて同形状となり、かつ、ボックスカルバート1同士を接合するために、一方の接合端面2と他方の接合端面3を突き合わせた場合に、第1の止水性弾性体5の接合面(径方向に沿った面)の略全体と第2の止水性弾性体6の接合面の略全体とが重なるようにセットされる。この第2の止水性弾性体6は、第1の止水性弾性体5と同様に、上述の連続気泡型軟質発泡樹脂である水膨張性ポリウレタンフォームにより構成される。
【0031】
また、第2の止水性弾性体6は、その厚さが第1の止水性弾性体5の溝4の深さ方向の長さ(厚さ)よりかなり薄いものとされ、かつ、第1の止水性弾性体5の溝4からの突出部分の厚みよりは僅かに厚いものとされている。
また、第2の止水性弾性体6は、他方の接合端面3に接合されるが、例えば、予め第2の止水性弾性体6には、その一方の接合面(径方向に沿った面で他方の接合端面3に接合される面)に、両面粘着テープの一方の面が接合され、他方の面に剥離紙が取り付けられた状態となっており、この両面粘着テープにより、他方の接合端面3に粘着されて接合される。
【0032】
以上のように、図2(a)に示すように溝4が形成された一方の接合端面2に図2(b)に示すように溝4に挿入することで第1の止水性弾性体5を抜き差し自在にセットし、図2(a)に示すように平面状の他方の接合端面3に図2(b)に示すように第2の止水性弾性体6を接着することになる。
そして、筒状構造体としてのボックスカルバート同士を突き合わせて発泡樹脂からなる第1の止水性弾性体5と、第2の止水性弾性体6とを接合する場合に、その前に第1の止水性弾性体5および第2の止水性弾性体6の接合面の少なくとも一方に前記親水性ポリウレタン用プレポリマを塗布することにより、第1及び大2止水性弾性体5,6を構成する水膨張性発泡樹脂内に親水性ポリウレタン用プレポリマを染み込ませる。
【0033】
そして、互いに接合される一方のボックスカルバート1の一方の接合端面2と、他方のボックスカルバート1の他方の接合端面3とを突き合わせる。これにより、一方の接合端面2と他方の接合端面3が略接触した状態では、第1及び第2の止水性弾性体5,6の第1および第2の接合端面2,3からそれぞれ突出した分だけ、第1の止水性弾性体5と第2の止水性弾性体6とを合わせた長さが溝4の深さより長くなるので、その分弾性変形により第1の止水性弾性体5と第2の止水性弾性体6とを合わせた長さがボックスカルバート1の軸方向に圧縮された状態となる。
これにより、第1の止水性弾性体5と第2の止水性弾性体6の接合面が圧着された状態となる。
【0034】
そして、上述のように圧縮されることで、第1の止水性弾性体5および第2の止水性弾性体6との間に少なくとも一方の止水性弾性体5,6に染み込んでいた親水性ポリウレタン用プレポリマが染み出すことになる。また、第1の止水性弾性体5と第2の止水性弾性体6との一方にだけ親水性ポリウレタン用プレポリマを塗布した場合には、一方の止水性弾性体から染み出した親水性ポリウレタン用プレポリマが他方の止水性弾性体に染み込むことになる。
【0035】
そして、例えば、空気中の湿気等の水分により、第1の止水性弾性体5と第2の止水性弾性体6との接合部とその周囲の第1及び第2止水性弾性体5,6に染み込んだ親水性ポリウレタン用プレポリマがゴム状に硬化することになり、第1の止水性弾性体5と第2の止水性弾性体6が一体かつ強固に接合されるとともに、親水性ポリウレタン用プレポリマがゴム状に硬化することで、第1及び第2止水性弾性体5,6の接合部分およびその周囲で、第1及び第2止水性弾性体5,6を構成する水膨張性発泡樹脂の弾性および柔軟性が失われてしまうの防止することができる。
【0036】
特に、第1及び第2の止水性弾性体5,6および親水性ポリウレタン用プレポリマが硬化した樹脂が共にウレタン樹脂であり、親和性があり、第1及び第2止水性弾性体5,6が強固に一体となり、かつ、弾性や柔軟性を保持することができる。
特に、親水性ポリウレタン用プレポリマが第1及び第2の止水性弾性体5,6の接合面同士の間だけではなく、第1及び第2の止水性弾性体5,6の接合面の周囲に染み込んだ部分も含めて一体に硬化することから、例えば、通常の接着剤、粘着剤、上述の両面粘着テープのように接合面同士の間だけが他の部分と異質の状態となり、外部から力が加わった場合に、接合面同士の間(粘着剤)と水膨張性発泡樹脂との境界部分に力が集中するのを防止することができる。
【0037】
以上のように第1及び第2の止水性弾性体5,6が接合されると、第1および第2の接合端面2,3の接合部分において、第1の止水性弾性体5と第2の止水性弾性体6とが一体となって止水性を確保した状態となる。
そして、ボックスカルバート1同士を接合した状態では、上述のように、第1の止水性弾性体5と第2の止水性弾性体6とが一体に接合された状態となる。これにより、ボックスカルバート1同士の接合部に引っ張り力や曲げ力がかかり、一方の接合端面2と他方の接合端面3の全体もしくは一部が離れた状態となっても、一方の接合端面2に抜き差し自在に挿入された状態の第1及び第2の止水性弾性体5,6の一部が引き出された状態となる。
【0038】
これにより、溝4から一体に接合された第1および第2の止水性弾性体5,6が完全に抜けた状態とならなければ、一方の接合端面2と他方の接合端面3とが離れた状態となっても、その離れた部分に一体となった第1および第2の止水性弾性体5,6が配置されて止水性を維持することができる。
また、溝4に先に第1の止水性弾性体5を挿入しておくので、ボックスカルバート1同士の接合時に、他方の接合端面3に軸方向に長い止水性弾性体を接合しておき、一方の接合端面2の溝4に挿入するような作業をする必要がない。これにより、ボックスカルバート1同士の接合時に止水性弾性体5,6の破損を確実に防止できるし、万が一、第1の止水性弾性体5を溝4に挿入する際に破損せてもボックスカルバート1同士の接合前なので容易に破損した第1の止水性弾性体5を交換できる。
【0039】
さらに、ボックスカルバート1同士の接合の際に、コンクリート面と例えば後述のような樹脂からなる止水性弾性体とを接合するのではなく、第1の止水性弾性体5と、先に他方の接合端面3に取り付けられた第2の止水性弾性体6とを接合するので、より確実に他方の接合端面3側に止水性弾性体5,6を接合することができる。
【0040】
なお、構造体は、ボックスカルバート1に限られるものではなく、接合部分に止水材を配置する必要がある構造体に適用することができる。また、構造体は、プレキャストコンクリート製に限られるものではなく、鋼製や複数の材質からなる複合素材であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態係る接合方法を用いた止水構造構築方法より接合されるボックスカルバートを示す側面図である。
【図2】前記ボックスカルバート同士の接合(継手構造)を説明するための図面である。
【符号の説明】
【0042】
1 ボックスカルバート(構造体)
5 第1の止水性弾性体(連続気泡型軟質発泡樹脂である水膨張性ポリウレタンフォームからなる止水材、部材)
6 第2の止水性弾性体(連続気泡型軟質発泡樹脂である水膨張性ポリウレタンフォームからなる止水材、部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡型軟質発泡樹脂から形成される部材同士を接合するための接合方法であって、
接合される前記部材同士のうちの少なくとも一方の部材の接合部分に水と反応して硬化する液状の親水性ポリウレタン用プレポリマを浸透させ、
前記部材同士を当接させるとともに、これら部材が圧縮するように圧力をかけ、
親水性ポリウレタン用プレポリマが少なくとも気中の湿気等の水分と反応して硬化するまで圧力をかけた状態を保持することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記部材が、ポリウレタンフォームに吸水性樹脂を含有させた水膨張性ポリウレタンフォームからなる止水材であることを特徴とする請求項1記載の接合方法。
【請求項3】
請求項2に記載される接合方法を用いた構造体同士の間の止水構造構築方法であって、
構造体同士を隣接して配置する際に、互いに隣接して配置される構造体の互いに対向する部分にそれぞれ前記部材を保持させ、
前記部材の少なくとも一方に前記親水性ポリウレタン用プレポリマを浸透させた状態で、前記部材が圧縮された状態となるように前記構造体同士を隣接して配置することにより、前記構造体同士の間を一体に接合された前記部材で止水することを特徴とする止水構造構築方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−297515(P2007−297515A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126533(P2006−126533)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(593012402)SMCコンクリート株式会社 (16)
【Fターム(参考)】