説明

接合材料

【課題】現状市場に大量に流通している、Sn−3Ag−0.5CuやSn−3AgのSn−Ag系はんだボールが搭載されている半導体装置を、基板に対し180度以下の低温で安定して実装でき、機械的な信頼性を向上させるとともに、経時による電気抵抗の上昇を低減することが可能な接合材料を得ることができる。
【解決手段】本発明に係る接合材料は、融点が180℃以下であるはんだ合金と、BiまたはInのいずれか1種以上を90wt%以上含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と半導体装置とを接合する接合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品装置の小型化・薄型化の要求が増加し、それに対応するため、装置に搭載される半導体装置についても、小型化・薄型化の要求がなされている。現在、小型・薄型を実現するために、CSP(ChipSizePackage)やBGA(BallGridArray)に代表される、基板と接合する電極へ、はんだボールが搭載されたパッケージが採用されることが多い。
【0003】
また、鉛フリーへの対応も求められており、これについては、はんだボールの組成を、Sn−Ag−CuやSn−Agにして対応されることが多い。通常、この様なパッケージを搭載する際には、はんだボールと同じ組成の合金粒子がフラックスと混合された、はんだペースト(接合材料)を基板のパッドに供給し、半導体装置に形成されたはんだボールを接触させるように仮搭載した後、リフロ炉で、はんだボールの合金の融点より高い温度にまで加熱し、接合することが行われている。
【0004】
合金が、Sn−Ag−Cuの場合は、融点が約220度であるので、リフロ炉において、基板とこれに仮搭載された半導体装置を、約250度にまで加熱することがある。線膨張係数は、基板が約12ppmであり、半導体装置には約3ppmのシリコンが搭載されている。このため、リフロでの加熱中、はんだ融点の半導体装置よりも大きく基板が膨張した状態で固定され、この後、常温にまで冷却される際の、基板と半導体装置の収縮量の差によって、実装品に顕著な反りが現われる。
【0005】
この様な反りを低減するために、例えば、特許文献1および特許文献2に示されるように、Sn−Bi系はんだと、フラックスとが混合された接合材料を使用して、低温で接合することが行われる。
【0006】
例えば、特許文献1には、低温条件下にてフリップチップを実装できる電子部品実装用基板の接合部を形成するための、基板の電極部位にはんだボールを搭載する方法、及びこのようなはんだボールを搭載した電子部品実装用基板が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、低温条件下にて、樹脂製基板に半導体素子を実装する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−277777
【特許文献2】特開2009−283628
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献に記載される通りに実装すると、はんだボールのSn−Ag系はんだの一部とSn−Bi系はんだが、混合した合金とSn−Ag系はんだの組成がそのまま残る部分が、図3に示すように分離した状態になる。図3は、Sn−Ag系はんだボールが搭載されたBGA−PKGを従来のSn−Bi系はんだを使って接合した時の接合部の断面図である。
【0010】
図3に示すような接合状態では、経時により、Sn−Bi系はんだからSn−Ag系はんだ中へ、Biが拡散するとともに、電気抵抗の上昇が現われるという問題がある。
【0011】
また、はんだボールのSn−Ag系はんだと、はんだペーストのSn−Bi系はんだは、それぞれ融点が最低温度になるような組成比に近づけているが、接合後は、両はんだが混合して組成比が崩れ、融点が上昇するという問題がある。
【0012】
この現象から推測できるように、リフロ中のはんだの融点は、昇温される時と降温される時とで異なり、冷却時の方が高くなる。よって、半導体装置と基板との固定は、目的としていたSn−Bi系はんだの融点よりも高い、冷却時の融点で完了するので、Sn−Bi系はんだだけで接合するときよりも、実装品の反りは大きくなるという問題がある。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、現状市場に大量に流通している、Sn−3Ag−0.5CuやSn−3AgのSn−Ag系はんだボールが搭載されている半導体装置を、基板に対し180度以下の低温で安定して実装でき、組織の不均一による加熱時の複数材料の膨張率差による応力を分散することにより、機械的な信頼性を向上させるとともに、組織の分布の均一化によって、経時による電気抵抗の上昇を低減することが可能な接合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る接合材料は、融点が180℃以下であるはんだ合金の粒子と、BiまたはInのいずれか1種以上を90wt%以上含有する金属粒子とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、Sn−3Ag−0.5CuやSn−3AgのSn−Ag系はんだボールが搭載されている半導体装置を、基板に対し180度以下の低温で安定して実装でき、機械的な信頼性を向上させるとともに、経時による電気抵抗の上昇を低減することが可能な接合材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る接合材料により接合する際の温度プロファイル例を示す図である。
【図2】Sn−Ag系はんだボールが搭載されたBGA−PKGを、本発明に係る接合材料を使って接合した時の接合部の断面図を示す図である。
【図3】Sn−Ag系はんだボールが搭載されたBGA−PKGを、従来のSn−Bi系はんだを使って接合した時の接合部の断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0018】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態に係る接合材料は、融点が180℃以下であるはんだ合金としてのSn−Bi系はんだ合金(粒子)と、Bi粒子と、フラックスとが混合されたものである。融点が180℃を超えると、大部分の有機基板において、ガラス転移点を越える温度となり、線膨張係数が高い領域(α2)に達する。これにより、基板と搭載デバイスとの線膨張係数の差によって、接続部に発生する応力や反りが顕著となり、信頼性や実装性が低下することになる。Sn−Bi系はんだ合金の(共晶時の)融点は、約140℃である。
【0019】
また、Sn−Bi系はんだ合金において、Snの含有率は45〜65wt%である。Snの含有率がこの範囲を外れると、Sn−Bi系はんだ合金の融点が150℃を越え、ガラス転移点の比較的低い有機基板において線膨張係数がα2の領域に達するため好ましくない。
【0020】
基板に実装されるBGA−PKGに搭載されるSn−Ag系はんだボールに含有されるSnに対し、接合材料の金属成分に含まれるBi粒子は、20〜120wt%である。Bi粒子の含有量が20wt%未満であると、Sn−Ag系はんだボールに含有されるSnと合金化したとき、SnリッチなSn−Bi系はんだとなり、融点が180℃以上になるので好ましくなく、含有量が120wt%を超えると、BiリッチのSn−Bi系はんだとなり、融点が180℃以上になるので好ましくない。
【0021】
その他の金属成分としては、Sn−Bi系はんだであり、共晶はんだであると、金属成分が溶融し、別個にあるはんだボール中の固体のSnと、Bi粒子との間に介在して、これらの材料の共晶化を進展させるので好ましい。特に、温度が低い共晶はんだであると、進展を容易にするのでより好ましい。
接合材料の組成比を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
以下、本実施の形態に係る接合材料を用いて、BGA−PKGの実装工程を示す。
まず、基板上のパッドへ、接合材料を印刷等により供給する。次に、BGA−PKGをSn−Ag系はんだボールがパッドに接触するように搭載する。その後、BGA−PKGが搭載された基板を、リフロー炉へ投入し、実装を完了する。
【0024】
図1に、この時のリフロー温度プロファイルの例を示す。
BGA−PKGが搭載された基板をリフロー炉へ投入する工程において、BGA−PKGに搭載されたSn−Ag系のはんだボールと接合材料のリフロー炉中での挙動は、次のようになる。
【0025】
図1に示すリフロ炉中の温度プロファイルで、約140℃に達しても、はんだボール中のSnと、接合材料中のBiは、それぞれ融点が約230℃と約270℃であるため、単独では溶融しない。しかし、接合材料に含有するSn−Bi共晶はんだは、溶融し、はんだボール中のSnと接合材料中のBiとの間に入り込む。
【0026】
その結果、Sn−Ag系はんだ中のSnと、Biとの接触面積が増し、全体の融点が150℃〜170℃にまで低下する。この時、Bi粒子の比率が高いほど、全体の融点が低下するので、Sn−Ag系のはんだボールと混合し易くなり、接合後の均質化を顕著に高めることができる。
【0027】
従来のように、Sn−Bi系はんだのみの接合材を使った場合、Sn−AgはんだとSn−Biの合金とが、分離された状態となる。その結果、時効により、Sn−AgへのBiの拡散が進み、それと同時に、電気抵抗が高くなる。
【0028】
これに対し、発実施の形態に係る接合材料では、接合当初からSnとBiが均一化されるので、拡散による抵抗の変化を抑制できる。
【0029】
本実施の形態に係る接合材料と、従来のSn−Bi系はんだ材料を使い、基板へBGA−PKGをリフロ時のピーク温度を180度として搭載した時、接合部の組成について接合部を調査した結果を、図2および図3に示す。
【0030】
図2は、Sn−Ag系はんだボールが搭載されたBGA−PKGを、本発明に係る接合材料を使って接合した時の接合部の断面図を示し、図3は、Sn−Ag系はんだボールが搭載されたBGA−PKGを、従来のSn−Bi系はんだを使って接合した時の接合部の断面図を示す。図2および図3ともに、上側がBGA−PKG、下側が基板である。
【0031】
図3に示すように、従来のSn−Bi系はんだを使った場合の接合部においては、BGA−PKG側に搭載されていたはんだボールが、部分的に溶けないで残っている。これにより、基板へ供給されていたSn−Bi系はんだへ、はんだボールの一部が溶け込んだ部分との間の組織の違いを確認できた。
【0032】
一方、図2の場合においては、BGA−PKGのはんだボールと基板側に供給された接合材料とが、ほぼ完全に融合し、均一な組織状態になっていることが確認できた。
【0033】
なお、本実施の形態に係る接合材料には、活性化樹脂を含有することができる。具体的には、フラックス、これを含有する加熱硬化性液状樹脂等を用いることができる。これにより、はんだボール表面の酸化膜を除去したり、本低温接合材料中の合金およびBi粒子の酸化防止効果を得ることができる。
【0034】
本実施の形態によれば、Sn−Bi系はんだ合金の粒子と、Bi粒子と、フラックスとが混合された接合材料を、基板上パッドへ適量供給し、Sn−Ag系はんだボールが搭載されたBGA−PKGをパッドに接触するように搭載する。その後、ピーク温度が200℃以下に設定されたリフロー炉を通して拡散接合させることにより、従来のSn−Bi系はんだ合金とフラックスとの混合物よりも、信頼性を向上できる。すなわち、Sn−Ag系はんだボールを端子とするBGA−PKGにおいて、低温実装に使用される接合材料を得ることができる。
【0035】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態においては、実施の形態1と同様の部分についての説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0036】
本実施の形態に係る接合材料は、融点が180℃以下であるはんだ合金としてのSn−In系はんだ合金(粒子)と、In粒子と、フラックスとが混合されたものである。In−Sn系はんだ合金は、融点約120℃である。また、In−Sn系はんだ合金において、Snの含有率は、10〜60wt%である。Snの含有率がこの範囲を外れると、Sn−In系はんだ合金の融点が150℃を越え、ガラス転移点の比較的低い有機基板において線膨張係数がα2の領域に達するため好ましくない。
【0037】
基板に実装されたBGA−PKGに搭載されるSn−Ag系はんだボールに含有されるSnに対し、金属粒子中のIn粒子は、30wt%である。In粒子の含有量が30wt%未満であると、Sn−Ag系はんだボールに含有されるSnと合金化したとき、SnリッチなSn−In系はんだとなり、融点が180℃以上になるので好ましくない。含有量が30wt%以上であれば、180℃を越えないので問題はない。
【0038】
その他の金属成分としては、Sn−In系はんだであり、共晶はんだであると、金属成分が溶融し、別個にあるはんだボール中の固体のSnと、In粒子との間に介在し、これらの材料の共晶化を進展させることができる。特に、温度が低い共晶はんだであると、進展を容易にするので好ましい。
【0039】
なお、本実施の形態に係る接合材料には、活性化樹脂を含有することができる。これについては、実施の形態1と同様である。
【0040】
本実施の形態においては、InとSnとの組成比を調整することにより、リフロー時のピーク温度を更に下げて、約150℃としても接合することが可能となる。これにより、接合後のはんだ組織を均一にでき、時効による抵抗変化も抑制できる。
【0041】
本実施の形態においては、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 Sn−Ag系はんだボールが搭載されたBGA−PKGを接合材料を使って接合した
時の接合部の断面
2、102 BGA−PKGのパッド
3、103 BGA−PKGの絶縁層
4、104 基板のパッド
100 Sn−Ag系はんだボールの一部とSn−Bi系はんだとが混合された部分
101 Sn−Ag系はんだボールが混合せずに残った部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が180℃以下であるはんだ合金と、BiまたはInのいずれか1種以上を90wt%以上含有する金属粒子とを含む接合材料。
【請求項2】
前記はんだ合金が、BiおよびSnを含有することを特徴とする請求項1に記載の接合材料。
【請求項3】
Snの含有率が、45〜65wt%であることを特徴とする請求項2記載の接合材料。
【請求項4】
前記はんだ合金が、InおよびSnを含有することを特徴とする請求項1に記載の接合材料。
【請求項5】
Snの含有率が、10〜60wt%であることを特徴とする請求項4に記載の接合材料。
【請求項6】
さらに、活性化樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の接合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−61508(P2012−61508A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208985(P2010−208985)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】