説明

接合構造

【課題】簡単な構成で、部品点数、加工工数が少なく、製造工程を簡素化することができ、高歩留まりで量産性に優れ、用途が限定されることがなく、汎用性、材料選択の自在性に優れると共に、簡便かつ確実に部材を機械的に接合することができ、接合強度の安定性と均一性、耐久性に優れた接合構造の提供。
【解決手段】(a)接合面側に開口した中空凹部を有し接合面と反対側に突出した1以上の突部を備え、各々の突部同士が中空凹部の開口側で対向するように接合面で密接した2つの部材と、(b)2つの部材の対向した突部の中空凹部で囲まれた空間部に配設された連結体と、を有し、各々の突部が、中空凹部の内部で連結体に係合する係合部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属や合成樹脂などの部材の接合構造に関し、特に溶接ができない金属製の部材同士、加工時に孔開けや加熱ができない部材同士を簡便かつ確実に接合できる接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材を接合する方法として、接着、粘着、圧着、ボルト(リベット)止め、溶着、溶接などが用いられているが、接合する部材が金属の場合、その組合せによっては溶接ができないという問題点があった。また、ボルト(リベット)止めでは部材に孔が開くので、液体を扱う場合には使えないなど、用途によって制約を受けるという問題点があった。さらに、接合する部材が溶融する金属であっても、用途によっては熱をかけずに接合しなければならない場合もあり、接合方法が限定されたり、接合部分の強度が不足したり、あるいは接合自体が困難になったりするという問題点があった。
特に、異種金属同士の接合は困難であり、様々な接合方法が検討されているが、例えば、(特許文献1)には、銅板とステンレス鋼板を銅・ニッケル合金で突き合せ溶接して銅−ステンレス鋼板とし、銅−ステンレス鋼板の両面に銅板を爆発して部分的にステンレス銅板を介層させる多層クラッド板の製造方法が開示されている。
また、(特許文献2)には、リベットにかしめ用の凹部を形成し、リベット軸部を軽合金材に埋め込み、貫通させる際に、軽合金材料を凹部内に塑性流動させて、軽合金材をこのリベットにかしめておき、その上で、リベット軸部と鋼材との界面範囲内のみで溶接ナゲットを形成させるスポット溶接を行って、異材接合体を製作する鋼材と軽合金材との異材接合方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−66359号公報
【特許文献2】特開2009−285678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)では、部材が限定され、汎用性に欠けると共に、構成が複雑で、突き合せ溶接と爆着の2つの工程を行う必要があり、量産性に欠けるという課題があった。
(2)(特許文献2)では、かしめとスポット溶接の2つの工程を行う必要があり、工程が複雑で、量産性に欠けると共に、鋼材と軽合金材との間はスポット溶接のみの強度で接合されているため、接合強度の安定性と均一性、耐久性に欠けるという課題があった。
(3)合成樹脂を溶着する場合には、加熱によって部材が変形する可能性があるだけでなく、位置ずれが発生し易く、形状安定性及び寸法精度や位置決めの信頼性に欠けるという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するもので、簡単な構成で、部品点数、加工工数が少なく、製造工程を簡素化することができ、高歩留まりで量産性に優れ、用途が限定されることがなく、汎用性、材料選択の自在性に優れると共に、簡便かつ確実に部材を機械的に接合することができ、接合強度の安定性と均一性、耐久性に優れた接合構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の接合構造は以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の接合構造は、部材の接合構造であって、(a)接合面と反対側に突出し前記接合面側に開口した中空凹部を有する1以上の突部を備え、各々の前記突部同士が前記中空凹部の開口側で対向するように前記接合面で密接した2つの部材と、(b)2つの前記部材の対向した前記突部の前記中空凹部で囲まれた空間部に配設された連結体と、を有し、各々の前記突部が、前記中空凹部の内部で前記連結体に係合する係合部を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)接合面と反対側に突出し接合面側に開口した中空凹部を有する1以上の突部を備え各々の突部同士が中空凹部の開口側で対向するように接合面で密接した2つの部材と、2つの部材の対向した突部の中空凹部で囲まれた空間部に配設された連結体を有し、各々の突部が中空凹部の内部で連結体に係合する係合部を有するので、突部の中空凹部の内部で係合部に係合された連結体を介して2つの部材を機械的に強固に接合することができ、均一で安定した接合強度を得ることができ、接合の確実性と安定性、耐久性に優れる。
(2)2つの部材が、各々の突部同士が中空凹部の開口側で対向するように接合面で密接して配置されることにより、接合面の反対側には開口部がなく、連結体が外表面に露出せず、部材によって保護されるため、変形、破損、腐食などが発生し難く、用途が限定されず、耐久性、長寿命性、汎用性に優れる。
(3)2つの部材の各々の突部が、中空凹部の内部で連結体に係合する係合部を有するので、2つの部材が位置ずれしたり、接合面で剥がれたりすることがなく、高強度で、接合強度の安定性に優れる。
(4)2つの部材の対向した突部の中空凹部で囲まれた空間部に連結体が配設され、中空凹部の内部で係合部と連結体が係合することにより、2つの部材が機械的に接合されるので、加熱などを不要として部材へのダメージを低減することができ、材質の選択範囲が広く、汎用性に優れる。
【0007】
ここで、この接合構造は、溶接ができない異種金属で形成された部材の接合に特に好適に用いられるが、孔開けや加熱などの加工ができない部材や形状や寸法の精度が要求される部材の接合にも用いることができる。よって、接合する2つの部材の材質は、異種金属に限らず、同種の金属でもよいし、合成樹脂でもよい。合成樹脂としては熱硬化性樹脂やFRPなどが好適に用いられる。
中空凹部の底部の形状は、円形状や多角形状など、適宜、選択することができる。
係合部は、連結体に係合して中空凹部から連結体が抜けることを防止できればよく、中空凹部の内側に突起状、凸条、くびれ状などの様々な形状で形成することができる。各々の部材に突部を形成する際に、円筒状や多角筒状などの中空凹部を形成しておき、対向する2つの中空凹部で囲まれた空間部に連結体を配設した後、突部と一緒に連結体をかしめなどによって変形させ、係合部を形成してもよいし、予め中空凹部の内部に係合部を形成しておき、突部の周壁部や中空凹部の底部に穿設した充填孔から、溶融状態の連結体を充填して固めてもよい。
【0008】
連結体の材質は、接合する2つの部材の材質や用途等に応じて、適宜、選択することができる。2つの中空凹部で囲まれた空間部に固体状の連結体を詰めてから突部と共に変形させる場合は、金属が好適に用いられる。特に、変形し易い銅や鉛などの軟質性の材料が好ましいが、鉄或いはその他の材料でもよい。また、中空凹部の内部に予め係合部を形成しておき、溶融状態の連結体を充填する場合は、接合する2つの部材の材質に応じて、金属や合成樹脂等を用いることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の接合構造であって、前記突部と前記連結体を一緒に変形させて前記係合部が形成された構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)突部と連結体を一緒に変形させて係合部が形成されるので、2つの部材の中空凹部で囲まれた空間部に固体の連結体を詰めて、突部を変形させるだけで、短時間で簡便に係合部を形成して2つの部材と連結体を一体化させることができ、量産性、接合の確実性に優れる。
ここで、係合部は、突部の少なくとも一部をプレスなどで圧縮変形させたり、絞り加工したりして形成することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の接合構造であって、前記突部の前記係合部が、前記突部を上下方向に圧縮し、前記中空凹部の底部を外周方向に広げて形成された構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)突部の係合部が、突部を上下方向に圧縮し、中空凹部の底部を外周方向に広げて形成されたことにより、連結体の端部外周が中空凹部の凹条の係合部と係合し、連結体が中空凹部から抜けることがなく、接合の安定性、確実性に優れる。
【0011】
ここで、中空凹部の形状は、適宜、選択することができるが、突部を上下方向に圧縮した際に、中空凹部の底部外周が外周方向に張り出すように、突部の周縁部に接合面と反対側に膨出した膨出部を形成したものが好適に用いられる。また、突部を圧縮した際に、連結体の上下の周縁部が突部の膨出部と一緒に変形し、中空凹部の底部外周に形成される凹条の係合部に入り込むように、連結体の上下の周縁部に中空凹部の底部よりも突出して形成された凸条変形部を有することが好ましい。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の接合構造であって、前記連結体が、2つの前記部材の対向した前記突部の各々の前記中空凹部の底部側に配設された軟質性部材と、前記軟質性部材で挟持された硬質性部材と、を有する三層構造を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)連結体が、2つの部材の対向した突部の各々の中空凹部の底部側に配設された軟質性部材と、軟質性部材で挟持された硬質性部材と、を有する三層構造であることにより、突部を上下方向に圧縮し、中空凹部の底部を外周方向に広げて係合部を形成する際に、連結体の軟質性部材は中空凹部と共に外周方向に広がるように変形するが、硬質性部材はほとんど変形せず、大きなくびれを形成して係合部と確実に係合させることができ、加工性、接合の確実性、安定性に優れる。
【0013】
ここで、軟質性部材としては、変形し易い銅や鉛などの金属を好適に用いることができる。また、硬質性部材としては、軟質性部材よりも硬くて変形し難い材質で、軟質性部材と溶接などによって強固に固定(接合)することができるものであればよいが、鉄やステンレスなどの金属を好適に用いることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の接合構造であって、前記突部の前記係合部が、前記突部の周壁部の少なくとも一部を前記中空凹部の内側に変形させて形成された構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)突部の係合部が、突部の周壁部の少なくとも一部を中空凹部の内側に変形させて形成されたことにより、連結体の胴体部外周が中空凹部の突起状や凸条の係合部と係合し、連結体が中空凹部から抜けることがなく、接合の安定性、確実性に優れる。
【0015】
ここで、係合部の形状、数、配置は、適宜、選択することができる。突部の周壁部を部分的に凹ませることにより、中空凹部の内側に突起状の係合部を形成してもよいし、突部の周壁部の高さ方向の1乃至複数箇所を絞ることにより、中空凹部の内側に凸条の係合部を形成してもよい。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の接合構造であって、前記連結体が、前記突部に穿設された充填孔から溶融状態で前記空間部に充填されて固化された構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)連結体が、突部に穿設された充填孔から溶融状態で空間部に充填されて固化されたことにより、プレス装置などを用いて突部を変形させる必要がなく、簡便かつ確実に空間部に連結体を充填して2つの部材と連結体を一体化させることができ、量産性、接合の確実性に優れる。
(2)予め形成された空間部に溶融状態の連結体が充填されて固化されるので、部材自体の変形が発生し難く、位置決めが容易で位置ずれも発生せず、形状安定性及び寸法精度や位置決めの信頼性に優れる。
ここで、中空凹部の内部には、予め連結体に係合する係合部が形成されるが、連結体が流れ易く、確実に連結体に係合して固定できる形状を選択することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の接合構造によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)突部の中空凹部の内部で係合部に係合された連結体を介して2つの部材を機械的に強固に接合することができ、均一で安定した接合強度を得ることができ、接合の確実性と安定性、耐久性に優れると共に、接合面の反対側に開口部がなく、連結体が外表面に露出せず、部材によって保護され、変形、破損、腐食などが発生し難く、用途が限定されず、耐久性、長寿命性、汎用性に優れた接合構造を提供することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)2つの部材の中空凹部で囲まれた空間部に固体の連結体を詰めて、突部と一緒に変形させるだけで、短時間で簡便に係合部を形成して2つの部材と連結体を一体化させることができる量産性、接合の確実性に優れた接合構造を提供することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)連結体の端部外周が中空凹部の底部内周に形成された凹条の係合部と係合することにより、連結体が中空凹部から抜けることがなく、接合の安定性、確実性に優れた接合構造を提供することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)連結体が硬質性部材の両側を軟質性部材で挟持した三層構造を有することにより、連結体の軟質性部材を中空凹部と共に外周方向に変形させ、硬質性部材によって大きなくびれを形成することができ、連結体と係合部を確実に係合させることができる加工性、接合の確実性、安定性に優れた接合構造を提供することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)連結体の胴体部外周が中空凹部の突起状や凸条の係合部と係合することにより、連結体が中空凹部から抜けることがなく、接合の安定性、確実性に優れた接合構造を提供することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)プレス装置などを用いて突部を変形させる必要がなく、簡便かつ確実に空間部に連結体を充填して2つの部材と連結体を一体化させることができ、変形や位置ずれが発生し難い量産性、接合の確実性、形状の安定性に優れた接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1における接合構造を示す要部断面模式図
【図2】実施の形態1における接合構造の接合前の状態を示す要部断面模式図
【図3】実施の形態2における接合構造を示す要部断面模式図
【図4】実施の形態2における接合構造の接合前の状態を示す要部断面模式図
【図5】実施の形態3における接合構造を示す要部断面模式図
【図6】実施の形態3における接合構造の接合前の状態を示す要部断面模式図
【図7】実施の形態4における接合構造を示す要部断面模式図
【図8】実施の形態4における接合構造の接合前の状態を示す要部断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における接合構造について、以下図面を参照しながら説明する。
図1は実施の形態1における接合構造を示す要部断面模式図である。
図1中、1aは後述する2つの部材10,20を接合して得られる実施の形態1における接合構造、10はチタンやアルミニウム等の金属で板状に形成され接合構造1aによって接合された一方の部材、10aは部材10の接合面、11aは接合面10a側に開口した中空凹部12を有し接合面10aと反対側に突出した部材10の突部、12aは中空凹部12の底部、13aは中空凹部12の内部で後述する連結体30aの外周に係合する凹条の係合部、20はニッケルや鉄等の金属で板状に形成され部材10と対向配置されて接合構造1aによって部材10と接合された他方の部材、20aは部材10の接合面10aと密接した部材20の接合面、21aは接合面20a側に開口した中空凹部22を有し接合面20aと反対側に突出した部材20の突部、22aは中空凹部22の底部、23aは中空凹部22の内部で後述する連結体30aの外周に係合する凹条の係合部、30aは変形し易い銅や鉛などの軟質性の金属で形成され2つの部材10,20の対向した突部11a,21aの中空凹部12,22で囲まれた空間部に配設された連結体、31aは連結体30の上下の周縁部に凸条に形成され中空凹部12,22の係合部13a,23aと係合した連結体係合部である。
【0025】
次に、実施の形態1における接合構造の加工方法について説明する。
図2は実施の形態1における接合構造の接合前の状態を示す要部断面模式図である。
図2中、11Aは部材10の変形前の突部、12Aは変形前の突部11Aの中空凹部、12bは突部11Aの周縁部に接合面10aと反対側に膨出して形成された膨出部、21Aは部材20の変形前の突部、22Aは変形前の突部21Aの中空凹部、22bは突部21Aの周縁部に接合面20aと反対側に膨出して形成された膨出部、30Aは変形前の連結体、31Aは連結体30Aの上下の周縁部に中空凹部11A,21Aの底部12a,22aよりも外方へ突出して形成された凸条変形部である。2つの部材10,20はプレス加工などによって形成することができる。
【0026】
図2に示すように、2つの部材10,20の対向した突部11A,21Aの中空凹部12A,22Aで囲まれた空間部に連結体30Aを挟持した後、突部11A,21Aの膨出部12b,22bをプレス機などで上下方向に圧縮し、中空凹部12A,22Aの底部12a,22aを外周方向に広げる。これにより、図1に示したように、中空凹部12,22の内部に連結体30aの外周に係合する凹条の係合部13a,23aが形成される。このとき、図2における突部11A,21Aの膨出部12b,22bと一緒に連結体30Aの凸条変形部31Aも外周方向に広がるように潰され、図1に示した連結体係合部31aが形成されて、2つの部材10,20が連結体30aで連結される。
【0027】
実施の形態1の接合構造は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(1)接合面側に開口した中空凹部を有し接合面と反対側に突出した1以上の突部を備え各々の突部同士が中空凹部の開口側で対向するように接合面で密接した2つの部材と、2つの部材の対向した突部の中空凹部で囲まれた空間部に配設された連結体を有し、各々の突部が中空凹部の内部で連結体に係合する係合部を有するので、突部の中空凹部の内部で係合部に係合された連結体を介して2つの部材を機械的に強固に接合することができ、均一で安定した接合強度を得ることができ、接合の確実性と安定性、耐久性に優れる。
(2)2つの部材が、各々の突部同士が中空凹部の開口側で対向するように接合面で密接して配置されることにより、接合面の反対側には開口部がなく、連結体が外表面に露出せず、部材によって保護されるため、変形、破損、腐食などが発生し難く、用途が限定されず、耐久性、長寿命性、汎用性に優れる。
(3)2つの部材の各々の突部が、中空凹部の内部で連結体に係合する係合部を有するので、2つの部材が位置ずれしたり、接合面で剥がれたりすることがなく、高強度で、接合強度の安定性に優れる。
(4)2つの部材の対向した突部の中空凹部で囲まれた空間部に連結体が配設され、中空凹部の内部で係合部と連結体が係合することにより、2つの部材が機械的に接合されるので、加熱などを不要として部材へのダメージを低減することができ、材質の選択範囲が広く、汎用性に優れる。
(5)突部と連結体を一緒に変形させて係合部が形成されるので、2つの部材の中空凹部で囲まれた空間部に固体の連結体を詰めて、突部を変形させるだけで、短時間で簡便に係合部を形成して2つの部材と連結体を一体化させることができ、量産性、接合の確実性に優れる。
(6)突部の係合部が、突部を上下方向に圧縮し、中空凹部の底部を外周方向に広げて形成されたことにより、連結体の端部外周が中空凹部の凹条の係合部と係合し、連結体が中空凹部から抜けることがなく、接合の安定性、確実性に優れる。
【0028】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における接合構造について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図3は実施の形態2における接合構造を示す要部断面模式図である。
図3において、実施の形態2における接合構造1bが実施の形態1と異なるのは、2つの部材10,20の突部11b,21bの中空凹部12,22の内側に突起状や凸条の係合部13b,23bが形成され、連結体30bの胴体部の外周に係合部13b,23bと係合する凹状や凹条の連結体係合部31bが形成されている点である。
【0029】
次に、実施の形態2における接合構造の加工方法について説明する。
図4は実施の形態2における接合構造の接合前の状態を示す要部断面模式図である。
図4中、11Bは円筒状や角筒状に形成された部材10の変形前の突部、12Bは変形前の突部11Bの中空凹部、21Bは円筒状や角筒状に形成された部材20の変形前の突部、22Bは変形前の突部21Bの中空凹部、30Bは中空凹部12B,22Bの形状に合わせて円柱状や角柱状に形成された変形前の連結体である。
【0030】
実施の形態2における接合構造の加工方法が実施の形態1と異なるのは、突部11B,21Bをプレス機などで上下方向に圧縮する変わりに、突部11B,21Bの周壁部の少なくとも一部をかしめや絞り加工などによって中空凹部12B,22Bの内側に変形させる点である。これにより、図3に示したように、中空凹部12,22の内部に連結体30bの外周に係合する突起状や凸条の係合部13b,23bが形成される。このとき、図4における突部11B,21Bの周壁部と一緒に連結体30Bの胴体部凸もくびれるように変形し、図3に示した連結体係合部31bが形成されて、2つの部材10,20が連結体30bで連結される。
【0031】
実施の形態2の接合構造は、実施の形態1の(1)乃至(5)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)突部の係合部が、突部の周壁部の少なくとも一部を中空凹部の内側に変形させて形成されたことにより、連結体の胴体部外周が中空凹部の突起状や凸条の係合部と係合し、連結体が中空凹部から抜けることがなく、接合の安定性、確実性に優れる。
【0032】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における接合構造について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1又は2と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図5は実施の形態3における接合構造を示す要部断面模式図である。
図5において、実施の形態3における接合構造1cが実施の形態1及び2と異なるのは、2つの部材10,20がメラニン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂製やFRP製で、突部11c,21cが周壁部を中空凹部12,22の内側にくびれさせて成型した係合部13c,23cを有し、突部11c,21cの中空凹部12,22で囲まれた空間部に合成樹脂製の連結体30cが充填、固化されている点である。尚、12cは突部11cに穿設された連結体30cの充填孔12cである。
【0033】
次に、実施の形態3における接合構造の加工方法について説明する。
図6は実施の形態3における接合構造の接合前の状態を示す要部断面模式図である。
図6において、2つの部材10,20を接合面10a,20aで圧接し、突部11c,21cの中空凹部12,22で囲まれた空間部を形成した状態で、溶融状態の連結体30cの材料を充填孔12cから充填し、固化させることにより、図5に示したように、空間部を連結体30cで埋めることができ、2つの部材10,20が連結体30cで連結される。
【0034】
実施の形態3の接合構造は、実施の形態1の(1)乃至(5)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)連結体が、突部に穿設された充填孔から溶融状態で空間部に充填されて固化されたことにより、プレス装置などを用いて突部を変形させる必要がなく、簡便かつ確実に空間部に連結体を充填して2つの部材と連結体を一体化させることができ、量産性、接合の確実性に優れる。
(2)予め形成された空間部に溶融状態の連結体が充填されて固化されるので、部材自体の変形が発生し難く、位置決めが容易で位置ずれも発生せず、形状安定性及び寸法精度や位置決めの信頼性に優れる。
【0035】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4における接合構造について、以下図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態1又は2と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図7は実施の形態4における接合構造を示す要部断面模式図である。
図7において、実施の形態4における接合構造1dが実施の形態1と異なるのは、2つの部材10,20の突部11d,21dの中空凹部12,22の内側に実施の形態1における係合部13a,23aよりも大きな係合部13d,23dが形成されている点と、連結体30dが鉄やステンレスなどで形成された硬質性部材32の上下に鉛や銅で形成された軟質性部材33が溶接された三層構造を有し、軟質性部材33の外周に係合部13d,23dと係合する連結体係合部33aが形成されている点である。
【0036】
次に、実施の形態4における接合構造の加工方法について説明する。
図8は実施の形態4における接合構造の接合前の状態を示す要部断面模式図である。
図8中、11Dは円筒状や角筒状に形成された部材10の変形前の突部、12Dは変形前の突部11Dの中空凹部、21Dは円筒状や角筒状に形成された部材20の変形前の突部、22Dは変形前の突部21Dの中空凹部、30Dは中空凹部12D,22Dの形状に合わせて円柱状や角柱状に形成された変形前の連結体、32Aは変形前の連結体30Dの硬質性部材、33Aは変形前の連結体30Dの軟質性部材である。
【0037】
実施の形態4における接合構造の加工方法は実施の形態1と同様であり、突部11D,21Dをプレス機などで上下方向に圧縮した際に、図7に示したように、中空凹部12D,22Dの底部12a,22aが外周方向に広がり、凹条の係合部13d,23dが形成されるが、連結体30Dが硬質性部材32Aの上下を軟質性部材33Aで挟んだ三層構造であることにより、連結体30Dの軟質性部材33Aのみが中空凹部12D,22Dの周壁部と共に大きく変形し、硬質性部材32Aがほとんど変形しないので、実施の形態1より大きな係合部13d,23d及び連結体係合部33aが形成され、2つの部材10,20が連結体30dで強固に連結される。
【0038】
実施の形態4の接合構造は、実施の形態1の(1)乃至(6)と同様の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)連結体が、2つの部材の対向した突部の各々の中空凹部の底部側に配設された軟質性部材と、軟質性部材で挟持された硬質性部材と、を有する三層構造であることにより、突部を上下方向に圧縮し、中空凹部の底部を外周方向に広げて係合部を形成する際に、連結体の軟質性部材は中空凹部と共に外周方向に広がるように変形するが、硬質性部材はほとんど変形せず、大きなくびれを形成して係合部と確実に係合させることができ、加工性、接合の確実性、安定性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、簡単な構成で、部品点数、加工工数が少なく、製造工程を簡素化することができ、高歩留まりで量産性に優れ、用途が限定されることがなく、汎用性、材料選択の自在性に優れると共に、簡便かつ確実に部材を機械的に接合することができ、接合強度の安定性と均一性、耐久性に優れた接合構造の提供を行って、従来の接合方法では接合できなかった部材間の接合を実現することができる。
【符号の説明】
【0040】
1a,1b,1c,1d 接合構造
10,20 部材
10a,20a 接合面
11a,11A,11b,11B,11c,11d,11D,21a,21A,21b,21B,21c,21d,21D 突部
12a,22a 底部
12b,22b 膨出部
12c 充填孔
13a,13b,13c,13d,23a,23b,23c,23d 係合部
12,12A,12B,12D,22,22A,22B,22D 中空凹部
30a,30A,30b,30B,30c,30d,30D 連結体
31a,31b,33a 連結体係合部
31A 凸条変形部
32A 硬質性部材
33A 軟質性部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の接合構造であって、
(a)接合面側に開口した中空凹部を有し前記接合面と反対側に突出した1以上の突部を備え、各々の前記突部同士が前記中空凹部の開口側で対向するように前記接合面で密接した2つの部材と、
(b)2つの前記部材の対向した前記突部の前記中空凹部で囲まれた空間部に配設された連結体と、
を有し、
各々の前記突部が、前記中空凹部の内部で前記連結体に係合する係合部を備えたことを特徴とする接合構造。
【請求項2】
前記突部と前記連結体を一緒に変形させて前記係合部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記突部の前記係合部が、前記突部を上下方向に圧縮し、前記中空凹部の底部を外周方向に広げて形成されたことを特徴とする請求項2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記連結体が、2つの前記部材の対向した前記突部の各々の前記中空凹部の底部側に配設された軟質性部材と、前記軟質性部材で挟持された硬質性部材と、を有する三層構造を備えたことを特徴とする請求項3に記載の接合構造。
【請求項5】
前記突部の前記係合部が、前記突部の周壁部の少なくとも一部を前記中空凹部の内側に変形させて形成されたことを特徴とする請求項2に記載の接合構造。
【請求項6】
前記連結体が、前記突部に穿設された充填孔から溶融状態で前記空間部に充填されて固化されたことを特徴とする請求項1に記載の接合構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−241841(P2011−241841A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111552(P2010−111552)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(305009234)伸興テクノ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】