説明

接合装置、接合方法および半導体装置

【課題】様々な種類の被接合物に対して表面活性化処理を施す際に、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することを防止することが可能な接合技術を提供する。
【解決手段】両被接合物91,92の接合表面が互いに略平行に且つ互いに逆向きに配置されるとともに、Z方向から見て両被接合物91,92の接合表面が重ならないように両被接合物91,92をX方向に互いにずらして配置する。この状態において、ビーム照射部11,21を用いて原子ビーム(あるいはイオンビーム等)を照射して特定物質(アルゴン等)を放出し、両被接合物91,92の接合表面を活性化する。その後、両被接合物91,92をX方向に相対的に移動して当該両被接合物の接合表面を対向状態にし、さらに、対向状態の両被接合物91,92を接近させるようにZ方向に相対的に移動して当該両被接合物を接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接合物の接合表面を活性化して接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの被接合物を対向配置した状態で両被接合物の接合表面をプラズマ洗浄(表面活性化処理)した後に、両被接合物を接合する技術が存在する。
【0003】
しかしながら、このような対向配置状態で両被接合物の表面活性化処理を施すと、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着するという問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解消する技術として、特許文献1に記載の技術が存在する。
【0005】
特許文献1の技術においては、両被接合物同士がその接合面が(上面視にて)重ならない側方位置へ移動した状態で互いに向かう合うように配置され、両被接合物の接合表面がプラズマ洗浄された後に、当該両被接合物が相対的にスライドされて対向する。その後、両被接合物が接合面に垂直な方向に相対的に移動されて、両被接合物が接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−268766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の引き込み型電界プラズマ(以降、単に「プラズマ」とも称する)を用いた接合技術は、金あるいは銅を被接合物とする場合には適用可能であるが、他の種類の物質(例えばサファイア等)を被接合物とする場合には適用することが困難である。
【0008】
ここにおいて、プラズマを用いた接合技術においては、被接合物を保持する電極に交番電圧を印加して電気的な極性(例えば負極性)を付与し、逆極性を有する特定物質(例えばアルゴンイオン)を引き込むことによって、当該特定物質接合表面に衝突させ、その衝突力によって不純物を除去することが行われる。しかしながら、被接合物を保持する電極には交番電圧(交番電界)が付与されるため当該電極はさらに逆極性を有することもあり、特定物質以外のイオン化された物質が存在していれば、その物質も引き込むこととなってしまう。但し、金および銅は、他物質との反応が鈍い物質であるため、プラズマ処理における特定物質(例えばアルゴン)とは異なる他の物質(例えば酸素)が存在しているときでも当該他の物質と反応しにくい。したがって、金あるいは銅を被接合物とする場合には、プラズマによって表面活性化処理を行うことが可能である。一方、他の種類の物質(例えば酸素)と反応しやすい物質の場合には、特定物質(アルゴン等)のみならず、当該他の物質とも反応してしまうため、表面活性化処理を適切に行うことができない。
【0009】
このように、特許文献1に記載のプラズマによる接合技術は、限定された種類の被接合物にしか適用できないという問題がある。
【0010】
そこで、この発明は、様々な種類の被接合物に対して表面活性化処理を施す際に、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することを防止することが可能な接合技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、接合装置であって、第1の被接合物と第2の被接合物との両被接合物の接合表面が互いに略平行に且つ互いに逆向きに配置されるとともに、前記接合表面の法線方向から見て前記両被接合物の接合表面が重ならないように前記両被接合物が第1の方向において互いにずらされて配置される状態において、イオン化された特定物質を電界で加速し前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とのそれぞれに向けて当該特定物質を放出することにより、前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とのそれぞれを活性化する第1および第2の表面活性化手段と、前記第1および第2の表面活性化手段を用いて表面活性化処理が施された前記両被接合物を前記第1の方向に相対的に移動して、前記両被接合物の接合表面を対向させる第1の相対的移動手段と、前記第1の相対的移動手段により対向状態にされた前記両被接合物を接近させるように前記両被接合物を相対的に移動して、前記両被接合物を接合する第2の相対的移動手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明に係る接合装置において、前記対向状態を有する前記両被接合物の対向空間の側方から当該対向空間に向けて、イオン化された特定物質を電界で加速して当該特定物質を放出することにより、前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とを活性化する第3の表面活性化手段、をさらに備え、前記第2の相対的移動手段は、前記第3の表面活性化手段による表面活性化処理が施された後に前記両被接合物を接合することを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2の発明に係る接合装置において、前記第2の相対的移動手段は、前記第3の表面活性化手段による表面活性化処理に並行して、前記両被接合物を接近させるように前記両被接合物を相対的に移動することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明に係る接合装置において、前記両被接合物が配置される処理空間の圧力を、前記第1および第2の表面活性化手段による表面活性化処理の前において、前記第1および第2の表面活性化手段による表面活性化処理時における圧力値よりも低い値にまで低減する減圧手段、をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明に係る接合装置において、前記第1および第2の表面活性化手段による表面活性化処理中においては、前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とは、前記第1の方向において互いにずらされ且つ互いに向かい合う向きで配置されるとともに、前記第1の被接合物の接合表面を含む平面と前記第2の被接合物の接合表面を含む平面とは近接して配置されることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5の発明に係る接合装置において、前記第1および第2の表面活性化手段による表面活性化処理中においては、前記第1の被接合物の接合表面を含む平面と前記第2の被接合物の接合表面を含む平面との距離は20ミリメートル以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明に係る接合装置において、前記第1および第2の表面活性化手段は、イオン化された特定物質を電界で加速した後にイオン化されたまま放出するイオンビーム照射手段と、イオン化された特定物質を電界で加速した後にその電気特性を中和して放出する原子ビーム照射手段と、の少なくとも一方を有することを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、接合方法であって、a)第1の被接合物と第2の被接合物との両被接合物の接合表面が互いに略平行に且つ互いに逆向きに配置されるとともに、当該接合表面の法線方向から見て前記両被接合物の接合表面が重ならないように前記両被接合物が第1の方向において互いにずらされて配置される状態において、イオン化された特定物質を電界で加速し前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とのそれぞれに向けて当該特定物質を放出することにより、前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とのそれぞれを活性化する工程と、b)前記工程a)の後に、前記第1の被接合物と前記第2の被接合物との両被接合物を前記第1の方向に相対的に移動して前記両被接合物の接合表面を対向させるとともに、前記両被接合物を前記法線方向に相対的に移動して前記両被接合物を接合する工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、請求項8の発明に係る接合方法において、前記工程b)は、b−1)前記工程a)の後に、前記第1の被接合物と前記第2の被接合物との両被接合物を前記第1の方向に相対的に移動して前記両被接合物の接合表面を対向させる工程と、b−2)前記両被接合物の接合表面を対向させた状態で、前記両被接合物の対向空間の側方から当該対向空間に向けて、イオン化された特定物質を電界で加速して当該特定物質を放出することにより、前記両被接合物の接合表面を活性化する工程と、b−3)前記工程b−2)の後に、前記両被接合物を接合する工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項9の発明に係る接合方法において、前記工程b−2)は、b−2−1)前記両被接合物に対する表面活性化処理を実行しつつ、前記両被接合物の相互間の距離を低減させるように前記両被接合物を相対的に移動させる工程、を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項8ないし請求項10のいずれかの発明に係る接合方法において、前記工程a)と前記工程b)とはいずれも同一の接合装置内で実行されることを特徴とする。
【0022】
請求項12の発明は、請求項11の発明に係る接合方法において、c)前記工程a)の前において、前記第1の被接合物と前記第2の被接合物とが配置される処理空間の圧力を、前記工程a)における前記処理空間の圧力値よりも低い値にまで低減する工程、をさらに含むことを特徴とする。
【0023】
請求項13の発明は、請求項8ないし請求項12のいずれかの発明に係る接合方法において、前記工程a)においては、前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とは、前記第1の方向において互いにずらされ且つ互いに向かい合う向きで配置されるとともに、前記第1の被接合物の接合表面を含む平面と前記第2の被接合物の接合表面を含む平面とは近接して配置されることを特徴とする。
【0024】
請求項14の発明は、半導体装置であって、請求項8ないし請求項13のいずれかの発明に係る接合方法により接合されて生成された半導体装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1ないし請求項13に記載の発明によれば、両被接合物に対する表面活性化処理は、両被接合物が第1の方向において互いにずらされて配置された状態で行われるため、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することを防止することが可能である。また特に、様々な種類の被接合物を良好に接合することが可能である。
【0026】
また、請求項14に記載の発明によれば、不純物の少ない状態で良好に接合されて生成された半導体装置を得ることができる。
【0027】
特に、請求項2に記載の発明によれば、第1および第2の表面活性化手段による表面活性化処理終了後に付着した付着物を第3の表面活性化手段による表面活性化処理によって低減することができるので、被接合物をさらに良好に接合することが可能である。同様に、請求項9に記載の発明によれば、工程a)の移動後に再付着した付着物を低減することによって、被接合物をさらに良好に接合することができる。
【0028】
また特に、請求項3および請求項10に記載の発明によれば、接合直前まで被接合物を表面活性化することにより再付着の機会が最低限となるため、被接合物をさらに良好に接合することができる。
【0029】
また特に、請求項4および請求項11に記載の発明によれば、あらかじめ真空度を高めておくことによって、不要な浮遊物を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】接合装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】接合装置の横断面図である。
【図3】I−I断面を示す断面図である。
【図4】II−II断面を示す断面図である。
【図5】III−III断面を示す断面図である。
【図6】位置認識部の構成等を示す図である。
【図7】接合装置における動作を示す図である。
【図8】接合装置における動作を示す図である。
【図9】接合装置における動作を示す図である。
【図10】接合装置における動作を示す図である。
【図11】接合装置における動作を示す図である。
【図12】接合装置における動作を示す図である。
【図13】接合装置における動作を示す図である。
【図14】圧力変化を示す図である。
【図15】表面活性化処理の原理を示す模式図で
【図16】イオンビーム照射の原理を示す模式図である。
【図17】原子ビーム照射の原理を示す模式図である。
【図18】プラズマを用いた表面活性化処理を示す図である。
【図19】変形例に係る動作を示す図である。
【図20】変形例に係る接合装置を示す図である。
【図21】変形例に係る動作を示す図である。
【図22】変形例に係る動作を示す図である。
【図23】変形例に係る表面活性化処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
<1.装置>
図1および図2は、本発明に係る接合装置1を示す図である。図1は接合装置1の縦断面図であり、図2は当該接合装置1の横断面図である。なお、各図においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示している。
【0033】
この接合装置1は、減圧下のチャンバ(真空チャンバ)2内で、被接合物91の接合表面と被接合物92の接合表面とを原子ビーム等で活性化させ、両被接合物91,92を接合する装置である。この装置1によれば、両被接合物91,92の接合表面に対して表面活性化処理を施すとともに、当該両被接合物91,92を固相接合することが可能である。なお、両被接合物91,92としては、様々な材料(例えば半導体ウエハーなど)が用いられる。
【0034】
接合装置1は、両被接合物91,92の処理空間である真空チャンバ2と、当該真空チャンバ2に連結されたロードロックチャンバ3とを備える。真空チャンバ2は、排気管6と排気弁7とを介して真空ポンプ5に接続されている。真空ポンプ5の吸引動作に応じて真空チャンバ2内の圧力が低減(減圧)されることによって、真空チャンバ2は真空状態にされる。また、排気弁7は、その開閉動作と排気流量の調整動作とによって、真空チャンバ2内の真空度を調整することができる。
【0035】
両被接合物91,92は、ロードロックチャンバ3内において導入棒4の先端部のクランピングチャック4cで保持された後、真空チャンバ2内に移動される。具体的には、上側の被接合物92は、導入棒4の先端部で保持され、ヘッド22の直下位置PG2にまでX方向に移動された後、ヘッド22によって保持される。同様に、下側の被接合物91は、導入棒4の先端部で保持された状態でX方向においてステージ12に向けて位置PG1にまで移動され、当該ステージ12によって保持される。
【0036】
ヘッド22およびステージ12は、いずれも、真空チャンバ2内に設置されている。また、ヘッド22は、ヒータ24によって加熱され、ヘッド22に保持された被接合物92の温度を調整することができる。同様に、ステージ12は、当該ステージ12に内蔵されたヒータ12h(不図示)によって加熱され、ステージ12上の被接合物91の温度を調整することができる。
【0037】
ヘッド22は、アライメントテーブル23によってX方向およびY方向に移動(並進移動)されるとともに、回転駆動機構25によってθ方向(Z軸回りの回転方向)に回転される。ヘッド22は、後述する位置認識部28による位置検出結果等に基づいてアライメントテーブル23および回転駆動機構25によって駆動され、X方向、Y方向、θ方向におけるアライメント動作が実行される。
【0038】
また、ヘッド22は、Z軸昇降駆動機構26によってZ方向に移動(昇降)される。Z軸昇降駆動機構26は、不図示の圧力検出センサにより検出した信号に基づいて、接合時の加圧力を制御することができる。
【0039】
また、ステージ12は、スライド移動機構14によってX方向に移動(並進移動)可能である。ステージ12は、ビーム照射部11付近の待機位置(位置PG1付近)とヘッド22直下の接合位置(位置PG2付近)との間でX方向において移動する。スライド移動機構14は高精度の位置検出器(リニアスケール)を有しており、ステージ12は高精度に位置決めされる。
【0040】
また、接合装置1は、被接合物91,92の位置を認識する位置認識部18,28を備えている。位置認識部18,28は、それぞれ、被接合物等に関する光像を画像データとして取得する撮像部(カメラ)18b,28bを有する。また、両被接合物91,92には、それぞれ、位置識別用マーク(以下、単にマークとも称する)が付されている。例えば、一方の被接合物91に2つの位置識別用マークが設けられ、他方の被接合物92にも2つの位置識別用マークが設けられる。なお、当該各マークは、特定の形状を有することが好ましい。ただし、これに限定されず、ウエハーのオリフラ、あるいは、ウエハー上に形成された回路パターンなどの一部を位置識別用マークとして流用するようにしてもよい。
【0041】
両被接合物91,92の位置決め動作は、当該位置認識部(カメラ等)により、両被接合物91,92に付されたマークの位置を認識することによって実行される。
【0042】
例えば、位置認識部18は、位置PG1に存在する被接合物91の光像を画像データとして取得する。具体的には、真空チャンバ2の外部上方に配置された光源18aから出射された光は、真空チャンバ2の窓部2aを透過して被接合物91(位置PG1)に到達して反射される。そして、被接合物91で反射された光は、再び真空チャンバ2の窓部2aを透過して進行し、撮像部18bに到達する。このようにして、位置認識部18は、被接合物91に関する光像を画像データとして取得する。そして、位置認識部18は、当該画像データに基づいてマークを抽出するとともに、当該マークの位置を認識し、ひいては被接合物91の位置を認識する。
【0043】
同様に、位置認識部28は、位置PG2に存在する被接合物92の光像を画像データとして取得する。具体的には、真空チャンバ2の外部下方に配置された光源28aから出射された光は、真空チャンバ2の窓部2bを透過して被接合物92(位置PG2)に到達して反射される。そして、被接合物92(詳細にはその一部)で反射された光は、再び真空チャンバ2の窓部2bを透過して進行し、撮像部28bに到達する。このようにして、位置認識部28は、被接合物92に関する光像を画像データとして取得する。また、位置認識部28は、当該画像データに基づいてマークを抽出するとともに、当該マークの位置を認識し、ひいては被接合物92の位置を認識する。
【0044】
さらに、後述するように、この接合装置1においては、ステージ12がX方向に移動することによって、被接合物91が位置PG2に移動し、両被接合物91,92が対向する状態(図10参照)に遷移する。図6に示すように、位置認識部28は両被接合物91,92の対向状態において、両被接合物91,92に関する光像を画像データとして取得することもできる。具体的には、真空チャンバ2の外部下方に配置された光源28aから出射された光は、真空チャンバ2の窓部2bを透過して両被接合物91,92(詳細にはその一部)で反射され、再び真空チャンバ2の窓部2bを透過して進行し、撮像部28bに到達する。位置認識部28は、このようにして取得された両被接合物91,92に関する光像(反射光に関する画像)を画像データとして取得し、当該画像データに基づいてマークの位置を認識する。なお、光源28aとしては、両被接合物91,92およびステージ12等を透過する光(例えば赤外光)が用いられればよい。
【0045】
また、この実施形態においては、図6に示すように、位置認識部28は、別の光源28c,28dをも有している。位置認識部28は、両被接合物91,92が対向する状態において、当該光源28c,28dからの光の透過光に関する画像データを用いて、両被接合物91,92の位置を認識することも可能である。具体的には、真空チャンバ2の外部側方に配置された光源28c,28dから出射された光は、真空チャンバ2の窓部2c,2dをそれぞれ透過し、その後、ミラー28e,28fで反射されてその進行方向が変更され下方に進行する。当該光は、さらに、両被接合物91,92(詳細にはその一部)を透過した後、窓部2bを透過して撮像部28bに到達する。位置認識部28は、このようにして取得された両被接合物91,92に関する光像(透過光に関する画像)を画像データとして取得し、当該画像データに基づいてマークの位置を認識する。
【0046】
このように、接合装置1は、反射光による撮像システム(光源28aおよび撮像部28b等を有する)と、透過光による撮像システム(光源28c,28dおよび撮像部28b等を有する)との2種類の撮像システムを備えている。接合装置1は、状況に応じて、これら2種類の撮像システムを適宜に切り換えて利用し、各マークの位置を認識することが可能である。
【0047】
以上のような位置認識部18,28によって両被接合物91,92の位置が認識される。そして、認識された位置情報に基づいて、アライメントテーブル23および回転駆動機構25によってヘッド22がX方向、Y方向、および/またはθ方向に駆動されることによって、両被接合物91,92の相対的に移動され、アライメント動作が実行される。例えば被接合物91に付された2つのマークと被接合物92に付された2つのマークとが重なるように、両被接合物91,92を微小移動することによって、両被接合物91,92を精密に位置決めすることができる。
【0048】
また、接合装置1は、3つのビーム照射部11,21,31を備えている。接合装置1においては、これらの3つのビーム照射部11,21,31を用いて表面活性化処理が実行される。図1に示すように、ビーム照射部11,21は、真空チャンバ2の奥側(+Y側)の側壁面に設けられており、ビーム照射部31は、真空チャンバ2の右側(+X側)の側壁面に設けられている(図2も参照)。ビーム照射部11,21,31は、それぞれ、真空チャンバ2内部の対応位置に向けて特定物質のビームを照射する。
【0049】
より具体的には、図1および図2に示すように、ビーム照射部11は、真空チャンバ2内の比較的左側(−X側)の位置PG1付近に配置され、ビーム照射部21は、真空チャンバ2内の比較的右側(+X側)の位置PG2付近に配置される。
【0050】
ビーム照射部11は、図3の断面図にも示すように、真空チャンバ2の+Y側壁面の上方寄りの位置において、斜め下方を向いて設置されている。これにより、ビーム照射部11は、ステージ12に保持された被接合物91が位置PG1に存在するときに、当該被接合物91の接合表面に対して、斜め上方からビームを照射する。また、ビーム照射部11によるビーム照射方向は、X軸に垂直な平面(YZ平面)に平行な方向である。なお、図3は、図1のI−I断面における断面図である。
【0051】
ビーム照射部21は、図4の断面図にも示すように、真空チャンバ2の+Y側壁面の下方寄りの位置において、斜め上方を向いて設置されている。これにより、ビーム照射部21は、ヘッド22に保持された被接合物92が位置PG2に存在するときに、当該被接合物92の接合表面に対して、斜め下方からビームを照射する。また、ビーム照射部21によるビーム照射方向も、X軸に垂直な平面(YZ平面)に平行な方向である。なお、図4は、図1のII−II断面における断面図である。
【0052】
ビーム照射部31は、図5の断面図にも示すように、真空チャンバ2の+X側壁面において、水平面に平行に設置されている。これにより、ビーム照射部31は、ステージ12に保持された被接合物91とヘッド22に保持された被接合物92との両者が位置PG2において対向配置される状態において、当該両者91,92の対向空間SP(図11参照)の側方から、当該対向空間SPに向けてビームを照射する。ビーム照射部31によるビーム照射方向は、X軸に平行な方向である。なお、図5は、図2のIII−III断面における断面図である。
【0053】
この接合装置1においては、後述するようなスライド配置状態(図8参照)において、ビーム照射部11,21を用いて特定物質(例えばアルゴン)を放出することにより、両被接合物91,92の接合表面を活性化する表面活性化処理が実行される。そして、接合装置1は、表面活性化処理が施された両被接合物91,92を近接対向状態(図10)にした後に、互いに近接させて両被接合物91,92を接合する(図12および図13)。
【0054】
また、この実施形態においては、両被接合物91,92を近接対向状態にした後に、さらにビーム照射部31を用いて特定物質(例えばアルゴン)を放出することにより、両被接合物91,92の接合表面を活性化する表面活性化処理をも実行する(図11)。
【0055】
ここにおいて、ビーム照射部11,21,31は、イオン化された特定物質(ここではアルゴン)を電界で加速し両被接合物91,92の接合表面に向けて当該特定物質を放出することにより、両被接合物91,92の接合表面を活性化する。
【0056】
この実施形態では、ビーム照射部11,21として原子ビーム照射装置を用い、ビーム照射部31としてイオンビーム照射装置を用いるものとする。
【0057】
図15は、表面活性化処理の原理を示す模式図である。また、図16は、イオンビーム照射の原理を示す模式図であり、図17は、原子ビーム照射の原理を示す模式図である。
【0058】
図15に示すように、この表面活性化処理においては、特定物質(例えばアルゴン)を被接合物の接合表面に衝突させることによって、接合表面の付着物99を除去し、被接合物(例えば91)の表面原子の未結合手であるダングリングボンド(図15では短い線分で示す)が露出した状態を形成する。そして、このような状態を2つの被接合物91,92の双方の接合表面に形成した後に、当該被接合物91の接合表面を互いに接触させることによって、ダングリングボンド同士を接合させる。これにより、両被接合物91,92が原子レベルで接合される。これによれば、非常に強固な接合状態を実現することができる。
【0059】
このように特定物質を接合表面に衝突させる技術としては、例えば、イオンビーム照射技術および原子ビーム照射技術が存在する。
【0060】
図16に示すように、イオンビーム照射においては、イオン化された特定物質(アルゴン等)が電界Eで加速された後にイオン化されたまま放出される。そして、当該特定物質はイオン状態のまま被接合物へと向かう。なお、イオン状態のアルゴン等は、被接合物の表面に到達するまでに電荷と結合して電気的に中和される。
【0061】
一方、図17に示すように、原子ビーム照射においては、イオン化された特定物質(アルゴン等)が電界Eで加速された後に、ビーム照射部内で供給された電荷と直ちに結合して、その電気特性が中和される。そして、電気的に中和された特定物質が高速で被接合物へと向かう。
【0062】
このように、イオンビームと原子ビームとでは、その電気的中和のタイミングが異なっているが、イオン化された特定物質(アルゴン等)が電界Eで加速される点で共通する。そして、加速された特定物質が高速で接合表面に衝突することによって、図15に示すような表面活性化処理が実行される点でも共通する。
【0063】
この実施形態においては、このようなビーム照射を用いて表面活性化処理等を実行する。これによれば、上述のプラズマ洗浄による表面活性化処理に比べて、より多様な種類の被接合物に対して適用することが可能である。以下では、その原理について説明する。
【0064】
図18は、プラズマ洗浄を用いた表面活性化処理について説明する図である。図18に示すように、プラズマ洗浄を用いた表面活性化処理においては、被処理物(被接合物)の接合表面に電気的な極性(例えば負極性)が付与される。そして、当該接合表面の極性とは逆の極性を有する特定物質(例えば正極性を有するアルゴン)が当該接合表面に向けてクーロン力で引き込まれて当該接合表面に衝突し、その衝突力によって不純物の除去が行われる。このとき、当該特定物質(アルゴン等)以外のイオン化された他の物質(例えば正極性を有する酸素)が存在していれば、その物質も引き込むこととなってしまう。すなわち、当該特定物質(アルゴン等)のみならず、他の物質(例えば正極性を有する酸素)もが当該被接合物の表面に衝突する。また、被接合物を保持する電極には交番電圧(交番電界)が付与されるため、当該電極および被接合物の接合表面はさらに逆極性(例えば正極性)を有することもある。したがって、当該逆極性のさらに逆極性を有する他の物質(例えば負極性を有する酸素)もが当該被接合物の表面に衝突する。
【0065】
ここにおいて、金および銅は、プラズマ処理における特定物質(例えばアルゴン)とは異なる他の物質(例えば酸素)が存在しているときでも当該他の物質と反応しにくい。したがって、金あるいは銅を被接合物とする場合には、特定物質のプラズマによって比較的良好に表面活性化処理を行うことが可能である。
【0066】
一方、被接合物が上記特定物質以外の物質(例えば酸素)と反応しやすい物質である場合には、当該被接合物は特定物質(アルゴン等)のみならず当該他の物質とも反応してしまう。そのため、被接合物に関する表面活性化処理を適切に行うことができない。
【0067】
これに対して、この実施形態においては、原子ビームおよびイオンビームが用いられる。これらのビームでは、上述のように、イオン化された特定物質(アルゴン等)が電界で加速されて、被接合物の表面に向けて放出される。したがって、ダングリングボンド生成には不適切な物質(例えば酸素)ではなく所望の特定物質(例えばアルゴン)を、選択的に被接合物の接合表面に照射することが可能である。換言すれば、不適切な物質の供給を抑制しつつ、所望の特定物質を当該接合表面上に潤沢に(多量に)供給することができる。
【0068】
したがって、この実施形態によれば、当該他の種類の物質(酸素等)と反応しやすい物質(酸化しやすい物質等)を被接合物とする場合においても、当該被接合物の接合表面に対する表面活性化処理を良好に行うことが可能である。すなわち、様々な物質の表面活性化処理を良好に実行することが可能である。たとえば、酸化しやすいAl(アルミニウム)などの金属、シリコン、化合物半導体(例えば、GaS(ガリウム砒素))、SiO2(二酸化珪素)、サファイアなどを被接合物とする場合にも、その表面を良好に活性化させて接合することが可能である。また、同種の両被接合物を接合する場合だけでなく、互いに異なる種類の両被接合物を接合する場合にも適用することができる。特に両被接合物が異種材料であるときには、当該両被接合物間の熱膨張差により反りや割れが発生し易いため、当該両被接合物を低温で接合することが好ましい。したがって、異種材料の接合には、上述のようなダングリングボンドによる直接接合が非常に適する。そして、このような各種の両被接合物91,92を接合することによって、各種の半導体装置を生成(製造)することができる。
【0069】
<2.動作>
次に、接合装置1における接合動作について、図7〜図13の模式図を参照しながら説明する。図7〜図13は、当該接合動作(接合方法)における時系列の各工程を順次に示す図である。なお、図7〜図13においては、便宜上、ステージ12およびヘッド22等の図示を省略している。
【0070】
図7は、導入棒4(図1)等を用いて両被接合物91,92が真空チャンバ2内に導入された状態を示している。この導入動作は減圧下において実行される。図7においては、導入直後において、上側の被接合物92が位置PG2においてヘッド22によって保持されており、下側の被接合物91が位置PG1においてステージ12によって保持されている状態を示している。
【0071】
この後、図14に示すように期間TM0において接合装置1は、さらに真空ポンプ5による減圧動作を実行して、真空チャンバ2内の圧力を圧力値PR0にまで低減し高真空状態ないし超高真空状態にする。たとえば、10−10Torr〜10−6Torr程度にまで真空引きする。これにより、真空チャンバ2内における不要な浮遊物(不純物等)を減少させることができる。この期間TM0における圧力値PR0は、図14に示すように、次述するビーム照射(図8)を伴う期間TM1における圧力値PR1(例えば10−4Torr)よりも低い値である。すなわち、期間TM0の真空度は、期間TM1の真空度よりも高い。換言すれば、真空チャンバ2内の真空度は、期間TM1に先立って期間TM0において予め高められる。なお、期間TM0における減圧処理は、ビーム照射(図8)よりも前に実行される処理であることから、「バックグラウンド減圧処理」とも称される。
【0072】
つぎに、図8に示すように、接合装置1は、ビーム照射部11,21を用いた表面活性化処理(以下、第1の表面活性化処理とも称する。)F1を実行する。
【0073】
この第1の表面活性化処理F1においては、両被接合物91,92は次のように配置されている。すなわち、被接合物91,92の接合表面が互いに略平行に且つ互いに逆向きに配置される。詳細には、比較的下側の被接合物91の接合表面はXY平面に略平行に且つ上向きで配置され、比較的上側の被接合物92の接合表面はXY平面に略平行に且つ下向きに配置される。換言すれば、両被接合物91,92は互いに向かい合う向きで配置される。ただし、両被接合物91,92は対向状態を有していない。具体的には、両被接合物91,92の接合表面の法線方向(Z方向)から見て、両被接合物91,92の接合表面が互いに重ならないように、両被接合物91,92は、X方向(Z方向に垂直な方向)において互いにずらされて配置されている。このような配置状態は、対向状態に対して両被接合物91,92が相対的にスライドされた状態であることから、「スライド配置状態」とも称される。
【0074】
そして、ビーム照射部11,21によるビーム照射(ここでは原子ビーム照射)が行われる。具体的には、ビーム照射部11によるビーム照射によって被接合物91の接合表面が活性化され、ビーム照射部21によるビーム照射によって被接合物92の接合表面が活性化される。また、このビーム照射部11,21によるビーム照射は、同時並列的に実行される。
【0075】
ここでは、両被接合物91,92に対しては、それぞれ、各対応位置PG1,PG2付近において、両被接合物91,92の配列方向(X方向)に垂直な平面(YZ平面に平行な平面)に沿ってビーム照射が行われる。
【0076】
具体的には、ビーム照射部11の照射口は、図3に示すように、位置PG1付近において、+Y側の比較的上方の位置から−Y側の比較的下方の位置に向けて、被接合物91の接合表面に対して所定の傾斜角度(例えば45度)で傾斜して配置されている。そして、ビーム照射部11は、被接合物91に対して斜め上方からビーム照射を行う。
【0077】
また、ビーム照射部21の照射口は、図4に示すように、位置PG2付近において、+Y側の比較的下方の位置から−Y側の比較的上方の位置に向けて、被接合物92の接合表面に対して所定の傾斜角度(例えば30度)で傾斜して配置されている。そして、ビーム照射部21は、被接合物92に対して斜め下方からビーム照射を行う。
【0078】
さて、図8に示すような第1の表面活性化処理F1が終了(図9参照)すると、図10に示すように、ステージ12および被接合物91がスライド移動機構14によってX方向に(+X側に向けて)移動される。このようにして、ビーム照射部11,21によるビーム照射によって表面活性化処理が施された両被接合物91,92がX方向に相対的に移動される。そして、移動動作完了後には、両被接合物91,92は、その接合表面が対向する状態(対向状態)を有している。
【0079】
なお、ここでは、図9の状態(すなわち移動前)において大まかな位置計測動作を行っておき、その位置計測動作に基づいて図10の移動動作を行い、移動動作完了後に更に正確な位置決め動作(ファインアライメント動作)を実行するものとする。具体的には、まず、第1の表面活性化処理F1の実行後において、被接合物91が位置PG1に存在し且つ被接合物92が位置PG2に存在する状態で、それぞれの位置を計測しておく。そして、両被接合物91,92をスライド移動させて両被接合物91,92を近接対向状態(図10)に遷移させる。この移動後の近接対向状態において、上述のような反射光による撮像システムと透過光による撮像システムとの一方もしくは双方を用いて位置を計測し、当該計測結果に基づいて微小位置調整動作(ファインアライメント動作)を行う。これによれば、両被接合物91,92の位置を非常に正確に調整することが可能である。
【0080】
次に、図11に示すように、第2の表面活性化処理F2をさらに実行する。
【0081】
第2の表面活性化処理F2は、対向状態を有する両被接合物91,92の対向空間の側方から当該対向空間に向けて、イオン化された特定物質を電界で加速して当該特定物質を放出することにより、両被接合物91,92の接合表面を活性化する処理である。具体的には、ビーム照射部31によるビーム照射によって両被接合物91,92の接合表面を活性化する。ここでは、ビーム照射部31によってイオンビームを照射する場合を例示する。
【0082】
その後、図12に示すように第2の表面活性化処理F2が終了した後に、両被接合物91,92を互いに接近させていく。そして、図13に示すように、両被接合物91,92を接合する。これにより、両被接合物91,92が良好な状態で接合される。
【0083】
この実施形態においては、以上のような動作が実行される。
【0084】
ここにおいて、図8に示すような表面活性化処理を行うことによれば、接合表面が活性化される。そして、当該表面活性化処理後に両被接合物91,92をX方向にスライド移動させ更にZ方向に接近させて接合することによって、両被接合物91,92が良好に接合される。特に、図8に示すように、両被接合物91,92がX方向において互いにずらされて配置された状態で行われるため、一方の被接合物に付着していた付着物が跳ね返ったとしても他方の被接合物へ向けて飛散する可能性が低下する。したがって、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物に再付着することを防止することが可能である。
【0085】
また特に、特定物質のビーム照射(ここでは原子ビーム照射)を用いた表面活性化処理が実行されるため、プラズマを用いた表面活性処理を実行する場合に比べて、様々な種類の被接合物を良好に接合することが可能である。詳細には、上記実施形態においては、特定物質のみがイオン化されて加速され、イオンのままあるいは中和されて原子の状態で被接合物に衝突する照射方式が採用されるため、当該特定物質以外の物質の再付着を防止することが可能である。
【0086】
また、特定物質としては例えば他の物質と反応しないアルゴンが使用されることが好ましい。また、アルゴンは、分子重量も大きいため、被接合物の表面分子を衝突により切り離して結合手を露出させること(ダングリングボンドを生成すること)、すなわち表面活性化処理に特に適している。そして、このようなダングリングボンドが適切に生成された両被接合表面を接合することによって、良好な接合状態を実現することが可能である。
【0087】
なお、上記のようなビーム照射部11,21を用いた表面活性化処理(図8)中においては、被接合物91の接合表面を含む平面PL1と被接合物92の接合表面を含む平面PL2とは、近接して配置されることが好ましい。これによれば、一方の被接合物に付着していた付着物が跳ね返ったとしても他方の被接合物へ向けて飛散する可能性がさらに低下する。したがって、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物に再付着することを、より確実に防止することが可能である。
【0088】
より詳細には、被接合物91の接合表面を含む平面PL1と被接合物92の接合表面を含む平面PL2との距離D1(図8参照)は20ミリメートル以下であることが好ましい。
【0089】
対向配置された両被接合物に対してプラズマ洗浄による表面活性化処理を行った後に被接合物を接合する上述の従来技術に係る装置においては、通常、対向する両被接合物91,92が少なくとも30mm程度離して配置される。
【0090】
これに対して、平面PL1,PL2の相互間の距離D1が20ミリメートル以下である場合には、さらに接近した状態で第1の表面活性化処理F1が実行される。したがって、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することを、より確実に防止することが可能である。
【0091】
また、距離D1が比較的大きいときには、Z軸の傾き等に起因して、ヘッド下降時に位置ずれが発生することがある。これに対して、当該両平面PL1,PL2相互間の距離を20ミリメートル以下にすることによれば、ヘッド下降時における位置ずれを抑制して、アライメント精度の向上を図ることも可能である。
【0092】
以上のように、距離D1は小さいことが好ましい。
【0093】
また、この距離D1はさらに小さいことが好ましく、例えば5μm以下であることが好ましい。これによれば、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することを、さらに確実に防止することが可能である。
【0094】
また、この実施形態においては、第1の表面活性化処理F1において、図3、図4および図8に示すように、両被接合物91,92の配列方向(X方向)に垂直な平面(YZ平面に平行な平面)に沿って、斜め上方および斜め下方からビーム照射が行われる。そのため、一方の被接合物から除去された物質は、Y方向およびZ方向を中心に飛散し、他方の被接合物が存在するX方向には飛散しにくい。これによれば、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することを、さらに確実に防止することが可能である。
【0095】
なお、第1の表面活性化処理F1において、仮に被接合物に対して真横からビーム照射を行う場合には、被接合物に対して均一な処理を施すことが困難である。特に、第1の表面活性化処理F1においては比較的大きな出力でのビーム照射を伴うことが好ましく、そのような状況では、ビーム照射口に近い部分とビーム照射口から離れた部分とで表面活性化処理の程度を同程度にすることは困難である。これに対して、上記実施形態においては、両被接合物91,92に対して斜めからビーム照射が行われる。したがって、被接合物に対して均一な表面活性化処理を施すことが比較的容易である。これにより、比較的大きな接合表面を有する被接合物を処理対象とする場合にも、良好な接合を実現することができる。例えば、チップ単位ではなく基板(半導体ウエハー)単位での接合を良好に行うことが可能である。さらには、より大きな基板に関する接合を良好に行うことが可能である。
【0096】
また、この実施形態においては、第1の表面活性化処理F1(図8)が終了して対向状態への移動動作が実行された後に、第2の表面活性化処理F2(図11)が実行される。すなわち、両被接合物91,92に対する表面活性化処理が移動期間後に再び実行される。そして、その後に被接合物92が接合される。そのため、仮に、表面活性化処理F1後の移動期間(図10)等において、不要な物質が両被接合物91,92の各接合表面に再付着する場合であっても、表面活性化処理F1の終了後に付着した付着物等をビーム照射部31による表面活性化処理によってさらに除去できる。端的に言えば、ビーム照射部31による表面活性化処理が接合直前に実行され、表面活性化処理終了時点から接合時点までの期間が短くなるため、付着物を抑制した状態で接合を行うことができる。したがって、両被接合物91,92を非常に良好な状態で接合することが可能である。
【0097】
また、この実施形態のように、第1の表面活性化処理F1と第2の表面活性化処理F2との2回に分けて表面活性化処理を実行することによれば、両被接合物91,92の温度上昇を抑制することが可能である。
【0098】
例えば、仮に、1回の表面活性化処理のみで同程度の効果を得るために所定時間T10(例えば10分程度)の処理を行う場合を想定する。この場合には両被接合物91,92の温度が例えば比較的高い温度(例えば120℃程度)にまで上昇する。
【0099】
これに対して、上記実施形態のように、2回に分けて表面活性化処理を実行することによれば両被接合物91,92の温度上昇を抑制することが可能である。例えば、1回目の時間T11(例えば8分)の処理では100℃程度、そして2回目の時間T11(例えば2分)の処理では80℃程度に抑制することが可能である。
【0100】
また、この実施形態では、第1の表面活性化処理F1にて原子ビームが用いられ、第2の表面活性化処理F2にてイオンビームが用いられている。ここにおいて、イオンビームによるエネルギーは、原子ビームによるエネルギーよりも小さい。そのため、特に、接合直前における両被接合物91,92の温度上昇、より詳細にはファインアライメント(図10)後における両被接合物91,92の温度上昇を抑制できる。したがって、両被接合物91,92の温度上昇に起因する変形等を抑制することが可能である。
【0101】
仮に、比較的大きな温度上昇が生じた場合には、基板の反り或いは割れが発生することがある。このような反りは接合時の位置ずれ等を誘発する。また、反りが発生しないとしても、例えば、両被接合物91,92が互いに異なる種類の材料であるときには、当該両被接合物91,92の熱膨張率の差異に起因して、両被接合物91,92の相互間に位置ずれが生じることがある。これに対して、両被接合物91,92の温度上昇を抑制することによれば、このような事態を回避することができる。特に、異種材料間での熱膨張差によるそりや割れを防ぐことができるとともに、被接合物同士での位置合わせ精度であるアライメント精度を向上することができる。
【0102】
また、上記実施形態においては、ビーム照射部11,21,31は、同一の接合装置1内(詳細には同一の真空チャンバ2内)に設けられている。換言すれば、この実施形態においては、第1の表面活性化処理F1と第2の表面活性化処理F2と接合処理とが同一の装置内において実行される。そのため、両被接合物91,92を別の装置に移動することを要さず、第1の表面活性化処理F1の終了後の比較的短い期間において、第2の表面活性化処理F2をも実行して両被接合物91,92を接合することができる。例えば表面活性化処理F1を行う処理室と接合処理を行う接合室とが別個に設けられ且つ搬送ロボット等を用いて当該処理室から当該接合室へと被接合物を搬送する場合に比べて、第1の表面活性化処理の終了時点から接合完了までの時間が短縮される。したがって、再付着を抑えて良好な接合を行うことが可能である。
【0103】
また特に、第1の表面活性化処理F1が終了した後に、同一の接合装置1内において両被接合物をスライドさせることによって両被接合物を対向させ接合可能な状態にすることができるので、接合までの時間をさらに短縮することができる。したがって、再付着をさらに抑制して良好な接合を行うことが可能である。
【0104】
また、上記実施形態においては、ビーム照射部11,21,31は、それぞれ、接合装置1に固定されている。そして、ビーム照射部11,21,31に対する電力供給は、真空チャンバ2の外部から行うことが可能である。そのため、真空チャンバ2内に電力供給経路を設けることを要しない。一方、上記特許文献1に記載の技術においては、プラズマ処理のために可動ステージ等に電力を供給する必要があるため、電気的構成が比較的複雑である。このように、上記実施形態によれば、特許文献1に記載の技術よりも電気的構成を簡易に構築することができる。
【0105】
また、上記実施形態においては、期間TM0においてバックグラウンド減圧処理(図14)を予め実行しているため、不要な浮遊物等を予め低減することができる。そのため、非常に良好に両被接合物91,92を接合することができる。また特に、このバックグラウンド減圧処理が実行されることによって、第2の表面活性化処理F2の際に比較的大きな浮遊物、不純物が存在する確率は、非常に低くなる。そして、第2の表面活性化処理F2においては、比較的小さな衝撃力で除去することが可能な不純物(例えば水分やハイドロカーボン(水とカーボンとの反応物)等)が主要な浮遊物になる。そのため、第2の表面活性化処理F2における照射エネルギーを低減し、両被接合物91,92の温度上昇を抑制しつつ、ビーム照射部31による比較的小さなエネルギーのビーム照射によって付着物を除去することが可能である。このように、バックグラウンド減圧処理は、上述のような第1の表面活性化処理F1と第2の表面活性化処理F2とを有する2段階処理には特に有効な手法である。
【0106】
また、原子ビーム照射処理およびイオンビーム照射処理は、プラズマ処理に比べて、比較的高い真空状態(比較的低圧力)での処理が可能である。したがって、バックグラウンド減圧処理と原子ビーム照射処理(および/またはイオンビーム照射処理)とを組み合わせて実行することによれば、不要な浮遊物等を予め低減した後において当該浮遊物等が少ない状態を維持しつつ、表面活性化処理および接合処理を非常に良好に行うことが可能である。
【0107】
さらに、ビーム照射処理とバックグラウンド減圧処理との組み合わせに係る思想は、プラズマ処理とバックグラウンド処理とを組み合わせる思想に比べて、複数組の両被接合物の連続処理に対しても良好に適用される。具体的には、或る両被接合物に対する表面活性化処理と次の両被接合物に対するバックグラウンド減圧処理とが引き続いて実行される技術において、当該表面活性化処理としてビーム照射処理が採用される場合には、当該表面活性化処理としてプラズマ処理が採用される場合に比べて、比較的高い真空状態での表面活性化処理が実行されるため、当該表面活性化処理時の圧力と当該バックグラウンド減圧処理時の圧力との差(圧力差)は比較的小さい。そのため、或る両被接合物に対する表面活性化処理後において、再び真空引きし、次の両被接合物に対するバックグラウンド減圧処理での所定の圧力状態(高真空状態等)を実現するための時間を短縮することが可能である。このように、バックグラウンド減圧処理とビーム照射処理とを組み合わせる技術は、複数組の両被接合物の連続処理、すなわち量産に適している。
【0108】
また、上記実施形態に係る処理は、金(および銅)以外の上述のような物質(アルミニウム等)の接合にも適しているが、金(および銅)の接合にも好適に用いることが可能である。
【0109】
<3.変形例等>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0110】
たとえば、上記実施形態においては、第2の表面活性化処理F2中は、両被接合物91,92を移動させず、第2の表面活性化処理F2が終了した後に、両被接合物91,92を互いに接近させる動作を開始する場合(図11〜図13)を例示したが、これに限定されない。
【0111】
具体的には、図19に示すように、ビーム照射部31による第2の表面活性化処理F2を実行しつつ両被接合物91,92を互いに接近させていき、両被接合物91,92を接合するようにしてもよい。換言すれば、ビーム照射部31による第2の表面活性化処理F2に並行して、両被接合物91,92を互いに接近させるように両被接合物91,92を相対的に移動するようにしてもよい。これによれば、接合完了時点もしくは当該接合完了時点の直前の時点まで表面活性化処理が継続される。そのため、付着物が再付着する機会が最低限となるため、さらに良好な状態で両被接合物91,92を接合することができる。なお、特に、接合完了時点まで表面活性化処理が継続されることが好ましい。
【0112】
また、このような変形例において、さらに、両被接合物91,92のZ方向における相対移動に応じてビーム照射部31をZ方向に移動するように改変してもよい。
【0113】
具体的には、図20に示すように、接合装置1において、ビーム照射部31をZ方向に駆動する駆動部33を設ける。そして、図21および図22に示すように、第2の表面活性化処理F2と両被接合物91,92の接近動作とが並行して実行される際には、ビーム照射部31の照射口が両被接合物91,92相互間の中央位置CTに存在するように、当該照射口と両被接合物91,92とが相対的に移動される。
【0114】
より詳細には、例えば、まずZ方向の移動直前(図19参照)においてビーム照射部31の照射口を両被接合物91,92相互間の中央位置に配置した後、ヘッド22の下降開始に応じてビーム照射部31をヘッド22の下降速度の半分の速度で下降させればよい。このとき、ステージ12は停止したままである。これによれば、ヘッド22とビーム照射部31とが下降する際において、常に、ビーム照射部31の照射口が両被接合物91,92相互間の中央位置CTに存在する(図21参照)。したがって、ビーム照射部31からのビームを両被接合物91,92に対して均等に照射することができる。
【0115】
また、上記実施形態においては、ビーム照射部11,21によって原子ビームを照射し、ビーム照射部31によってイオンビームを照射する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、ビーム照射部11,21,31が全てイオンビームを照射するものであってもよい。あるいは、逆に、ビーム照射部11,21,31が全て原子ビームを照射するものであってもよい。換言すれば、第1の表面活性化処理F1と第2の表面活性化処理F2とは、同じ種類のビームを照射する処理であってもよい。
【0116】
また、特にこのような場合においては、ビーム照射部31によるビーム照射時間(特定物質の放出時間)は、ビーム照射部11,21によるビーム照射時間よりも短いことが好ましい。換言すれば、第2の表面活性化処理F2におけるビーム照射時間は、第1の表面活性化処理F1におけるビーム照射時間よりも短いことが好ましい。例えば、ビーム照射部31のビーム照射時間T3を、ビーム照射部11,21のビーム照射時間T1,T2よりも短く設定すればよい。例えば、値T1,T2がそれぞれ8分であるときには、値T3は2分に設定されればよい。これによれば、接合直前における両被接合物91,92の温度上昇、特に、ファインアライメント(図10)後における両被接合物91,92の温度上昇を抑制できる。したがって、両被接合物91,92の温度上昇に起因する変形等を抑制することが可能である。
【0117】
同様に、ビーム照射部31によるビーム照射出力(特定物質の放出強度)は、ビーム照射部11,21によるビーム照射出力よりも小さいことが好ましい。換言すれば、第2の表面活性化処理F2におけるビーム照射出力は、第1の表面活性化処理F1におけるビーム照射出力よりも小さいことが好ましい。具体的には、ビーム照射部31のビーム照射出力電圧V3を、ビーム照射部11,21のビーム照射出力電圧V1,V2よりも小さく設定すればよい。例えば、値V1,V2がともに80V(ボルト)であるときには、値V3は20V(ボルト)に設定されればよい。これによれば、特に、接合直前における両被接合物91,92の温度上昇、より詳細にはファインアライメント後における両被接合物91,92の温度上昇を抑制できる。したがって、両被接合物91,92の温度上昇に起因する変形等を抑制することが可能である。
【0118】
また、上記実施形態においては、ビーム照射部11,21によるビーム照射は、それぞれ、両被接合物91,92の配列方向(X方向)に垂直な平面(YZ平面に平行な平面)に沿って行われる場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図23に示すように、両被接合物91,92の配列方向(X方向)に平行な平面(XZ平面に平行な平面)に沿って、斜め上方および斜め下方からビーム照射が実行されるようにしてもよい。この場合においても両被接合物91,92の接合表面を互いに近接させることによって、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することをより確実に防止することが可能である。
【0119】
ただし、上記実施形態のような態様(図3、図4および図8参照)でビーム照射が行われることがより好ましい。上記実施形態によれば、ビームの照射方向には他方の被接合物が存在しないため、図23のような態様に比べて、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着することをより確実に防止することが可能である。
【0120】
また、上記実施形態においては、ビーム照射部11,21を用いた表面活性化処理中においては、両被接合物91,92の接合表面は、X方向において互いにずらされた状態において互いに向かい合う向きで近接して配置される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、被接合物92の接合表面が被接合物91の接合表面よりも下側に存在する状態で、両被接合物91,92が配置されるようにしてもよい。具体的には、被接合物92の接合表面は、被接合物91の接合表面よりもZ方向下向き(−Z方向)に所定距離(例えば数ミリメートル)シフトして配置されるようにしてもよい。これによれば、上記と同様に、一方の被接合物に付着していた付着物が他方の被接合物へと再付着するという問題を回避することが可能である。
【0121】
なお、この場合には、ビーム照射部11,21を用いた表面活性化処理F1後において、両被接合物91,92をX方向とZ方向との双方に相対的に移動することによって、両被接合物91,92の接合表面を対向させた後に、両被接合物91,92を接合するようにすればよい。詳細には、被接合物91を+X方向に移動するとともに被接合物92を+Z方向に移動(上昇)することによって、両被接合物91,92を対向させればよい。ただし、動作簡略化等の観点からは、Z方向の移動を伴うことなく、両被接合物91,92を対向状態に遷移させることが好ましい。
【0122】
また、上記実施形態においては、被接合物91を+X方向にスライド移動させて両被接合物91,92を対向状態にする場合を例示したが、これに限定されない。例えば、逆に、被接合物92をX方向にスライド移動させることによって、両被接合物91,92をX方向に相対的に移動して両被接合物91,92を対向状態にするようにしてもよい。
【0123】
また、上記実施形態においては、被接合物92を−Z方向に移動させて両被接合物91,92を接合する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、逆に被接合物91を+Z方向に移動させて両被接合物91,92をZ方向に相対的に移動させるようにしてもよい。
【0124】
また、上記実施形態においては、第1の表面活性化処理F1の後に第2の表面活性化処理F2をさらに実行する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、第2の表面活性化処理F2を実行することなく両被接合物91,92を接合するようにしてもよい。具体的には、第1の表面活性化処理F1を実行した後に、両被接合物91,92をX方向にスライド移動させて対向させる。そして、第2の表面活性化処理F2を伴うことなく、対向状態の両被接合物91,92をZ方向に相対移動して接合するようにしてもよい。このような変形例によっても両被接合物91,92を良好に接合することができる。また、当該変形例に係る処理は、金(および銅)以外の上述のような物質(アルミニウム等)の接合にも適しているが、金(および銅)の接合にも好適に用いることが可能である。
【0125】
例えば、第1の表面活性化処理F1としてイオンビーム照射等を用いた当該変形例に係る処理は、次述する比較例に係るプラズマ処理を用いた表面活性化処理に比べても、良好な接合状態を実現することが可能である。ここで、当該比較例は、第1の表面活性化処理F1を「プラズマ」を用いて実行した後に、両被接合物91,92をX方向にスライド移動させて対向させて、第2の表面活性化処理F2を伴うことなく、対向状態の両被接合物91,92をZ方向に相対移動して接合する技術である。例えば、当該比較例に係る処理(接合温度=25℃)による接合結果においては比較的大きな面積のボイド(両被接合物相互間に生じる空隙)が生じるとしても、当該変形例に係る処理(接合温度=25℃)による接合結果においてはボイドの面積を比較的小さくすることが可能である。
【0126】
なお、ボイドを小さくためには、両被接合物91,92の温度は室温(25℃)よりも高い方が好ましい。例えば、ヒータ12h,24(図1)を用いて両被接合物91,92の温度を適切な温度(ボイド消滅温度とも称する)TEにまで上昇させた状態で、当該両被接合物を接合することにより、ボイドをほぼ消滅させることが可能である。比較例に係るボイド消滅温度TEは比較的高い温度TE2(例えば150℃)であるのに対して、当該変形例に係るボイド消滅温度TEは比較的低い温度TE1(例えば80℃)(<TE2)である。すなわち、このような加熱処理を行う場合において、当該変形例によれば、比較的低い温度TE1でボイドをほぼ消滅させることが可能である。換言すれば、ボイドをほぼ消滅をさせるための温度が比較的低い温度TE1で済む。したがって、被接合物における反り等の発生を抑制ないし回避しつつ、良好な接合状態を実現することが可能である。
【0127】
また、上記実施形態においては、ビーム照射において放出される特定物質としてアルゴン(Ar)を例示したが、これに限定されず、クリプトン(Kr)あるいはキセノン(Xe)などの他の物質であってもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 接合装置
2 真空チャンバ
5 真空ポンプ
6 排気管
7 排気弁
11,21,31 ビーム照射部
12 ステージ
14 スライド移動機構
18,28 位置認識部
22 ヘッド
23 アライメントテーブル
25 回転駆動機構
26 Z軸昇降駆動機構
28e,28f ミラー
33 駆動部
91,92 被接合物
99 付着物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被接合物と第2の被接合物との両被接合物の接合表面が互いに略平行に且つ互いに逆向きに配置されるとともに、前記接合表面の法線方向から見て前記両被接合物の接合表面が重ならないように前記両被接合物が第1の方向において互いにずらされて配置される状態において、イオン化された特定物質を電界で加速し前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とのそれぞれに向けて当該特定物質を放出することにより、前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とのそれぞれを活性化する第1および第2の表面活性化手段と、
前記第1および第2の表面活性化手段を用いて表面活性化処理が施された前記両被接合物を前記第1の方向に相対的に移動して、前記両被接合物の接合表面を対向させる第1の相対的移動手段と、
前記第1の相対的移動手段により対向状態にされた前記両被接合物を接近させるように前記両被接合物を相対的に移動して、前記両被接合物を接合する第2の相対的移動手段と、
を備えることを特徴とする接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の接合装置において、
前記対向状態を有する前記両被接合物の対向空間の側方から当該対向空間に向けて、イオン化された特定物質を電界で加速して当該特定物質を放出することにより、前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とを活性化する第3の表面活性化手段、
をさらに備え、
前記第2の相対的移動手段は、前記第3の表面活性化手段による表面活性化処理が施された後に前記両被接合物を接合することを特徴とする接合装置。
【請求項3】
請求項2に記載の接合装置において、
前記第2の相対的移動手段は、前記第3の表面活性化手段による表面活性化処理に並行して、前記両被接合物を接近させるように前記両被接合物を相対的に移動することを特徴とする接合装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の接合装置において、
前記両被接合物が配置される処理空間の圧力を、前記第1および第2の表面活性化手段による表面活性化処理の前において、前記第1および第2の表面活性化手段による表面活性化処理時における圧力値よりも低い値にまで低減する減圧手段、
をさらに備えることを特徴とする接合装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の接合装置において、
前記第1および第2の表面活性化手段による表面活性化処理中においては、前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とは、前記第1の方向において互いにずらされ且つ互いに向かい合う向きで配置されるとともに、前記第1の被接合物の接合表面を含む平面と前記第2の被接合物の接合表面を含む平面とは近接して配置されることを特徴とする接合装置。
【請求項6】
請求項5に記載の接合装置において、
前記第1および第2の表面活性化手段による表面活性化処理中においては、前記第1の被接合物の接合表面を含む平面と前記第2の被接合物の接合表面を含む平面との距離は20ミリメートル以下であることを特徴とする接合装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の接合装置において、
前記第1および第2の表面活性化手段は、
イオン化された特定物質を電界で加速した後にイオン化されたまま放出するイオンビーム照射手段と、
イオン化された特定物質を電界で加速した後にその電気特性を中和して放出する原子ビーム照射手段と、
の少なくとも一方を有することを特徴とする接合装置。
【請求項8】
a)第1の被接合物と第2の被接合物との両被接合物の接合表面が互いに略平行に且つ互いに逆向きに配置されるとともに、当該接合表面の法線方向から見て前記両被接合物の接合表面が重ならないように前記両被接合物が第1の方向において互いにずらされて配置される状態において、イオン化された特定物質を電界で加速し前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とのそれぞれに向けて当該特定物質を放出することにより、前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とのそれぞれを活性化する工程と、
b)前記工程a)の後に、前記第1の被接合物と前記第2の被接合物との両被接合物を前記第1の方向に相対的に移動して前記両被接合物の接合表面を対向させるとともに、前記両被接合物を前記法線方向に相対的に移動して前記両被接合物を接合する工程と、
を含むことを特徴とする接合方法。
【請求項9】
請求項8に記載の接合方法において、
前記工程b)は、
b−1)前記工程a)の後に、前記第1の被接合物と前記第2の被接合物との両被接合物を前記第1の方向に相対的に移動して前記両被接合物の接合表面を対向させる工程と、
b−2)前記両被接合物の接合表面を対向させた状態で、前記両被接合物の対向空間の側方から当該対向空間に向けて、イオン化された特定物質を電界で加速して当該特定物質を放出することにより、前記両被接合物の接合表面を活性化する工程と、
b−3)前記工程b−2)の後に、前記両被接合物を接合する工程と、
を含むことを特徴とする接合方法。
【請求項10】
請求項9に記載の接合方法において、
前記工程b−2)は、
b−2−1)前記両被接合物に対する表面活性化処理を実行しつつ、前記両被接合物の相互間の距離を低減させるように前記両被接合物を相対的に移動させる工程、
を含むことを特徴とする接合方法。
【請求項11】
請求項8ないし請求項10のいずれかに記載の接合方法において、
前記工程a)と前記工程b)とはいずれも同一の接合装置内で実行されることを特徴とする接合方法。
【請求項12】
請求項11に記載の接合方法において、
c)前記工程a)の前において、前記第1の被接合物と前記第2の被接合物とが配置される処理空間の圧力を、前記工程a)における前記処理空間の圧力値よりも低い値にまで低減する工程、
をさらに含むことを特徴とする接合方法。
【請求項13】
請求項8ないし請求項12のいずれかに記載の接合方法において、
前記工程a)においては、前記第1の被接合物の接合表面と前記第2の被接合物の接合表面とは、前記第1の方向において互いにずらされ且つ互いに向かい合う向きで配置されるとともに、前記第1の被接合物の接合表面を含む平面と前記第2の被接合物の接合表面を含む平面とは近接して配置されることを特徴とする接合方法。
【請求項14】
請求項8ないし請求項13のいずれかに記載の接合方法により接合されて生成された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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