説明

接合部の放射線検査装置、接合部の放射線検査方法、電子部品の生産装置

【課題】接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品を検査対象として複数のスライス画像の中から接合部の検査に最適な画像を自動で抽出することができる接合部の放射線検査装置、接合部の放射線検査方法、電子部品の生産装置を提供する。
【解決手段】はんだ接合部のX線検査装置30のパーソナルコンピュータ(PC)は、パワーモジュールMpを変位させながらX線を照射して受光器32によってはんだ接合部についての複数のX線画像を撮像し、複数のX線画像から3次元再構成データを生成し、生成した3次元再構成データからパワーモジュールMpの接合面に沿った各層のスライス画像を抽出する。パーソナルコンピュータ(PC)は、各層のスライス画像について輝度ヒストグラムの平均値を算出して、算出した輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像をはんだ接合部の状態の検査に最適な画像として抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品における接合部の放射線検査装置、接合部の放射線検査方法、電子部品の生産装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造工程において非破壊検査が行われている。例えば、特許文献1においては、多層配線基板の放射線検査方法が開示されている。詳しくは、多層配線基板の各配線パターンの層間を接続する導通部に放射線を照射して異なる位置に配設した検出器によって複数の放射線画像を撮像し、撮像した複数の放射線画像から3次元再構成データを生成する。さらに、生成した3次元再構成データから多層配線基板の基板面に水平な各層の水平スライス画像を抽出し、抽出された水平スライス画像より導通部の状態を得るための処理を行い、得られた処理結果と基準値とを比較して多層配線基板の良否を判定する。また、多数の水平スライス画像から層間接続部の検査対象画像を抽出するために画像の輝度変化率をみている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−14693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図9に示すように、半導体素子100の下面に絶縁基板101をはんだ付けするとともに半導体素子100の上面に金属部材102をはんだ付けした電子部品のように、はんだによる接合部が多層にわたり形成された電子部品に対して、はんだ接合部の状態(ボイドや濡れ拡がり性など)を検査する場合は次のようにしている。
【0005】
図10に示すように、複数の透過画像を取得し、3次元データを再構成するとともにスライス画像を抽出し、その中から検査画像を抽出し、検査画像を用いて良否判定を行う。ここで、検査画像の抽出以外は自動で行っているが、検査画像の抽出については3次元データの中から、該当検査箇所を人の手により指定する必要があった。また、該当検査箇所の画像は複数のスライス画像に渡っており、その中で検査対象に対して一番ピントの合ったスライス画像を選択する必要があった。そのため、多くの時間が必要であり自動化の妨げとなっていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品を検査対象として複数のスライス画像の中から接合部の検査に最適な画像を自動で抽出することができる接合部の放射線検査装置、接合部の放射線検査方法、電子部品の生産装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品を変位させながら放射線を照射して検出器によって前記接合部についての複数の放射線画像を撮像する放射線画像取得手段と、前記放射線画像取得手段において撮像した複数の放射線画像から3次元再構成データを生成する再構成データ生成手段と、前記再構成データ生成手段において生成した3次元再構成データから前記電子部品の接合面に沿った各層のスライス画像を抽出するスライス画像抽出手段と、前記スライス画像抽出手段において抽出された各層のスライス画像について輝度ヒストグラムの平均値を算出し、算出した輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像を前記接合部の状態の検査に最適な画像として抽出する検査画像抽出手段と、を備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、放射線画像取得手段により、接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品を変位させながら放射線が照射されて検出器によって接合部についての複数の放射線画像が撮像される。再構成データ生成手段により、放射線画像取得手段において撮像した複数の放射線画像から3次元再構成データが生成される。スライス画像抽出手段により、再構成データ生成手段において生成した3次元再構成データから電子部品の接合面に沿った各層のスライス画像が抽出される。
【0009】
そして、検査画像抽出手段により、スライス画像抽出手段において抽出された各層のスライス画像について輝度ヒストグラムの平均値が算出され、算出した輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像が接合部の状態の検査に最適な画像として抽出される。輝度ヒストグラムの平均値が最大となるスライス画像は該当検査箇所にピントが合った画像となる。
【0010】
その結果、接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品を検査対象として複数のスライス画像の中から接合部の検査に最適な画像を自動で抽出することができる。
請求項2に記載の発明では、接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品を変位させながら放射線を照射して検出器によって前記接合部についての複数の放射線画像を撮像するとともに、当該複数の放射線画像から3次元再構成データを生成する第1工程と、前記生成した3次元再構成データから前記電子部品の接合面に沿った各層のスライス画像を抽出する第2工程と、前記抽出された各層のスライス画像について輝度ヒストグラムの平均値を算出し、算出した輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像を前記接合部の状態の検査に最適な画像として抽出する第3工程と、を有することを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明と同様の作用効果を奏し得る。
請求項3の記載の発明では、接合材による接合部が多層にわたり形成される電子部品の生産ラインにおける前記多層にわたる接合材による接合を施す工程の後段に、請求項1に記載の接合部の放射線検査装置を備えてなることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の接合部の放射線検査装置が、接合材による接合部が多層にわたり形成される電子部品の生産ラインにおける多層にわたる接合材による接合を施す工程の後段に備えられ、請求項1に記載の接合部の放射線検査装置をインライン装置として生産ラインに組み込んで使用することができる。つまり、請求項1に記載の接合部の放射線検査装置を生産装置(生産ライン)の一部として使用することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の接合部の放射線検査装置において、前記スライス画像抽出手段は、前記電子部品の接合面に合わせて傾きを多方向から調整して得た複数の3次元データから前記電子部品の接合面に沿った各層のスライス画像を抽出することを要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、電子部品の接合面についてのずれがあったとしても好ましいスライス画像を抽出することができる。
請求項5に記載のように、請求項1に記載の接合部の放射線検査装置において、前記電子部品は、半導体素子の一方の面に基板を接合する接合材による接合部が形成されているとともに前記半導体素子の他方の面に金属部材を接合する接合材による接合部が形成されているものに適用するとよい。
【0015】
また、請求項6に記載のように、請求項1,4,5のいずれか1項に記載の接合部の放射線検査装置において、前記接合材は、はんだであるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品を検査対象として複数のスライス画像の中から接合部の検査に最適な画像を自動で抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における生産ラインのはんだ付け工程を説明するための斜視図。
【図2】パワーモジュールの正面図。
【図3】はんだ接合部のX線検査工程を説明するための工程図。
【図4】はんだ接合部のX線検査装置の概略構成図。
【図5】(a)〜(f)ははんだ接合部のX線検査工程を説明するための斜視図。
【図6】(a)はスライス画像を示す画像図、(b)は輝度についての頻度を示すヒストグラム。
【図7】(a)はスライス画像を示す画像図、(b)は輝度についての頻度を示すヒストグラム。
【図8】(a)はスライス画像を示す画像図、(b)は輝度についての頻度を示すヒストグラム。
【図9】はんだによる接合部が多層にわたり形成された電子部品を説明するための正面図。
【図10】X線CT検査によりはんだ接合部を検査するときの工程図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1には、本実施形態での生産ラインにおけるはんだ付け工程を示し、はんだ付けにより図2のパワーモジュールMpが製造される。図2のパワーモジュールMpにおいては、パワースイッチングデバイスよりなるパワー素子12のオン時にパワー素子12が発熱し、オン時においてヒートシンク10から放熱されるとともにヒートマス13において一時的に蓄熱されてオフ時にヒートマス13の熱がヒートシンク10から放熱される。
【0019】
図1の第1の工程Pr1において、ヒートシンク10の上面に絶縁基板11が接合されたものが送られてくる。絶縁基板11は、図2に示すようにセラミック基板11aの下面に第1の金属層11bが形成されているとともにセラミック基板11aの上面に第2の金属層11cが形成されている。ヒートシンク10は板状の金属板よりなる。ヒートシンク10の上面に絶縁基板11の第1の金属層11bがろう付け等により接合されている。
【0020】
図1の第2の工程Pr2において、絶縁基板11の上に、はんだ14を介して半導体素子としてのパワー素子12が配置されるとともに、パワー素子12の上に、はんだ15を介して金属部材としてのヒートマス13が配置される。
【0021】
そして、図1の第3の工程Pr3において、はんだ14,15が溶融され、これにより、絶縁基板11の第2の金属層11cの上にパワー素子12がはんだ付けされるとともに、パワー素子12の上にヒートマス13がはんだ付けされる。なお、はんだ14,15の溶融は同タイミングでなく順番に実施してもよい。
【0022】
このように電子部品としてのパワーモジュールMpは、図2に示すように、半導体素子としてのパワー素子12の一方の面に基板としての絶縁基板11を接合するはんだ接合部20が形成されているとともに、パワー素子12の他方の面に金属部材としてのヒートマス13を接合するはんだ接合部21が形成されている。このパワーモジュールMpにおいては、接合材としてのはんだ14,15による接合部(はんだ接合部)20,21が2層にわたり形成された構成となっている。
【0023】
パワーモジュールMpの生産ラインにおけるはんだ14,15による接合(多層にわたる接合材による接合)を施す工程の後段に、図4に示すはんだ接合部のX線検査装置30が備えられている。
【0024】
図4に示すように、接合部の放射線検査装置としてのはんだ接合部のX線検査装置30は、X線源31と、受光器32と、X線管コントローラ33と、ステージコントローラ34と、画像キャプチャーボード35と、パーソナルコンピュータ(PC)36を備えている。
【0025】
図4において右側にX線源31が配置されるとともに左側に受光器32が配置されている。図4におけるX線源31と受光器32との間において、ワークWとしてのパワーモジュールMpがステージ(図示略)にセットすることができるようになっている。ステージは回転可能であり、ステージの回転に伴いワークWとしてのパワーモジュールMpをZ軸を中心として回転させることができるようになっている。ステージの制御にはステージコントローラ34が用いられる。
【0026】
また、X線源31は、X線管の内部においてフィラメントからの電子をターゲットに衝突させることによりX線をワークWに向かって放出させることができるようになっている。このX線源31の制御にはX線管コントローラ33が用いられる。X線源31から出力されるX線はステージ上のパワーモジュールMpを透過する。
【0027】
受光器32はX線検出面32aにおいてパワーモジュールMpを透過したX線を受けて電気信号に変換する。受光器32において変換された電気信号は画像キャプチャーボード35に送られ、デジタル画像として記録される。
【0028】
X線管コントローラ33、ステージコントローラ34および画像キャプチャーボード35はパーソナルコンピュータ(PC)36と接続されている。パーソナルコンピュータ(PC)36は、はんだ接合部のX線検査装置30の全体を制御している。
【0029】
そして、放射線画像取得手段としてのパーソナルコンピュータ(PC)36は、ワークとしてのパワーモジュールMpを変位させながら放射線としてのX線を照射して検出器としての受光器32によってはんだ接合部20,21についての複数のX線画像を撮像する。即ち、図5(a)に示すようにワークWとしてのパワーモジュールMpがステージ上に配置されており、図5(b)に示すように、はんだ接合部20,21についての3次元のX線画像を得る。
【0030】
3次元データは数百枚のスライス画像で構成されており、その内、パワーモジュールMpのはんだ接合部20,21の情報が含まれる画像は数枚である。数枚の中ではんだ画像のピントは大きく変化(ボケた画像から合った画像まで)する。
【0031】
本実施形態においては、パワーモジュールMpのはんだ接合部20,21の検査を3次元データから抽出した2次元データ(スライス画像)で実施する。そして、3次元データに含まれる多数の2次元データ(スライス画像)から、はんだ接合部20,21のピントが合った画像を自動で抽出する機能を有する。詳細は後述する。
【0032】
次に、はんだ接合部のX線検査装置30の作用について説明する。
パーソナルコンピュータ(PC)36は図3の処理を実行する。
まず、パーソナルコンピュータ(PC)36は、ステップS10において、複数の透過データより3次元データを再構成する。つまり、再構成データ生成手段としてのパーソナルコンピュータ(PC)36は、撮像した複数のX線画像から3次元再構成データを生成する。
【0033】
このとき、3次元再構成データは、図4において直交するX,Y,Z軸で示した機械軸(設備)を基準とした画像となる。
さらに、受光器32のX線検出面32aに対して検出対象が検査装置の機械軸に対して倒れ方向や回転方向に傾いていた場合、図5(b)に示すような傾いた状態のままの3次元データが得られる。そこで、傾いた状態を補正すべく、パーソナルコンピュータ(PC)36は、図3のステップS20において、はんだ接合面に合わせて3次元データ(画像)の傾きを調整して、図5(c)に示すように、はんだ接合部20,21に合わせた新基準面を得る。
【0034】
傾いた状態を補正した後の3次元データにおいても微妙なずれが生じている可能性がある。そのため、図3のステップS30において複数の角度を振った3次元データを取得する。詳しくは、パーソナルコンピュータ(PC)36は、新基準面を0°として、図5(d)に示すように、機械軸であるY軸を基準に3次元データの倒れ方向について正・逆方向への傾き(あおり角)をn種類変化させる。ただし、nは所定の整数である。また、パーソナルコンピュータ(PC)36は、新基準面を0°として、図5(e)に示すように、機械軸であるZ軸を基準に3次元データを正・逆方向に回転角度をm種類変化させる。ただし、mは所定の整数である。
【0035】
これにより、パーソナルコンピュータ(PC)36は、計(n×m)通りの3次元データを取得する。即ち、前後および左右方向に振った3次元データを複数種類作成する。
より詳しくは、多数のスライス画像を作成すべく、機械軸(設備)を基準とした3次元データにより、前後および左右方向に角度を振った3次元データを複数種類作成するが、その際に、例えば、あおり角、回転角を共に±0.5°、±1.0°、±1.5°だけ変化させる。この場合は、あおり角と回転角の組み合わせにより計36種類の3次元データが得られる。
【0036】
このようにして、パーソナルコンピュータ(PC)36は、パワーモジュールMpのはんだ接合面に合わせて傾きを多方向から調整して複数の3次元データを得る。
引き続き、パーソナルコンピュータ(PC)36は、3次元データの基準点からのスライス画像の切り出し位置の指定により、パワーモジュールMpにおけるはんだ接合部20について、図3のステップS40において、角度を変化させた3次元データを切断してスライス画像を作成する。これにより、スライス画像数をpとし、3次元データごとに得られたスライス画像のまとまりを1群とすると、pの枚数の画像が作成される。例えば、上述したように36種類の3次元データを基準面で切断して10枚のスライス画像を作成する場合には、36群において各10枚のスライス画像が得られる。
【0037】
このようにして、スライス画像抽出手段としてのパーソナルコンピュータ(PC)36は、生成した3次元再構成データから、図5(f)に示すように、パワーモジュールMpのはんだ接合部20について、はんだ接合面に沿った各層のスライス画像を抽出する。
【0038】
さらに、パーソナルコンピュータ(PC)36は、図3のステップS50において、各群においてp枚の各スライス画像について輝度ヒストグラムの平均値を算出し、各群においてp枚の画像の中から、最も輝度ヒストグラムの平均値の高いスライス画像を1枚抽出する。その結果、上述した例では各群1枚ずつの計36枚のスライス画像が抽出される。
【0039】
次に、パーソナルコンピュータ(PC)36は、図3のステップS60において、前工程のステップS50で抽出した画像の中から、さらに輝度ヒストグラムの平均値が最も高いスライス画像を抽出する。
【0040】
このようにして、検査画像抽出手段としてのパーソナルコンピュータ(PC)36は、抽出された各層のスライス画像について輝度ヒストグラムの平均値を算出し、算出した輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像をはんだ接合部20の状態の検査に最適な画像として抽出する。
【0041】
図6,7,8を用いて、最適なる検査画像の抽出について説明する。
図6(a)と図7(a)と図8(a)は、それぞれスライス画像を示す。図6(b)は、図6(a)のスライス画像における輝度についての頻度を示すヒストグラムである。同様に、図7(b)は、図7(a)のスライス画像における輝度についての頻度を示すヒストグラムである。図8(b)は、図8(a)のスライス画像における輝度についての頻度を示すヒストグラムである。
【0042】
その結果、図6(a)のスライス画像における輝度ヒストグラムの平均値は129であった。また、図7(a)のスライス画像における輝度ヒストグラムの平均値は136であった。図8(a)のスライス画像における輝度ヒストグラムの平均値は135であった。
【0043】
よって、算出した輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像である図7(a)が、はんだ接合部の状態の検査に最適な画像として抽出される。
パーソナルコンピュータ(PC)36は、パワーモジュールMpにおけるはんだ接合部21についても同様に処理する。
【0044】
つまり、パーソナルコンピュータ(PC)36は、3次元データの基準点からのスライス画像の切り出し位置の指定により、パワーモジュールMpにおけるはんだ接合部21について、ステップS40において、角度を変化させた3次元データを切断してスライス画像を作成する。そして、パーソナルコンピュータ(PC)36は、ステップS50において、各群においてp枚の各スライス画像について輝度ヒストグラムの平均値を算出し、各群でのp枚の画像の中から最も輝度ヒストグラムの平均値の高いスライス画像を1枚抽出する。さらに、パーソナルコンピュータ(PC)36は、ステップS60において、前工程で抽出した画像の中から、さらに輝度ヒストグラムの平均値が最も高いスライス画像を抽出する。
【0045】
検査画像を抽出すると、パーソナルコンピュータ(PC)36は、図3のステップS70において、検査画像からはんだ接合部20,21の状態の良否判定を行う。この良否判定において、ボイドや濡れ拡がり性などが判定される。例えば、ボイドについての判定においては、検査画像中に、はんだ接合面とボイドを抽出して、はんだ接合面の面積とボイドの面積の比率を算出して、その比率と閾値を比較することにより良否を判定する。
【0046】
このようにして、人による目視を介さずに、検査画像を3次元データより自動抽出可能であるため、(A)X線CT撮像工程、(B)3次元データの再構成工程、(C)2次元検査画像の抽出工程、(D)検査画像の自動判定処理工程の一連のプロセスを自動で実施可能となる。また、上記プロセスを一連で自動実施できることにより、X線CT検査装置をインライン装置として生産ラインに組み込むことが可能となる。つまり、評価装置ではなく、生産装置としての使用が可能となる。なお、(D)検査画像の自動判定処理工程については、別に独立したシステムで実施してもよい。
【0047】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)はんだ接合部のX線検査装置30の構成として、抽出された各層のスライス画像について輝度ヒストグラムの平均値を算出して、算出した輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像を接合部の状態の検査に最適な画像として抽出するようにした。
【0048】
輝度ヒストグラムの平均値が最大となるスライス画像は該当検査箇所にピントが合った画像である。これは実験により確かめられている。
検査画像の抽出の際に、試料が検出器の検出面(図4におけるX線検出面32a)に対して倒れ方向や試料回転方向に傾いていてもピントがあった検査画像を抽出することができる。その結果、パワーモジュールMp(接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品)を検査対象として複数のスライス画像の中からはんだ接合部20,21の検査に最適な画像を自動で抽出することができる。
【0049】
(2)電子部品の生産装置の構成として、(1)のはんだ接合部のX線検査装置30が、パワーモジュールMpの生産ラインにおけるはんだ14,15によるはんだ接合を施す工程の後段に備えられ、はんだ接合部のX線検査装置30をインライン装置として生産ラインに組み込んで使用することができる。つまり、はんだ接合部のX線検査装置30を生産装置(生産ライン)の一部として使用することができる。
【0050】
(3)スライス画像抽出手段としてのパーソナルコンピュータ(PC)36は、図3のステップ30,40において、パワーモジュールMpのはんだ接合面に合わせて傾きを多方向から調整して得た複数の3次元データからパワーモジュールMpのはんだ接合面に沿った各層のスライス画像を抽出する。よって、パワーモジュールMpのはんだ接合面についてのずれがあったとしても好ましいスライス画像を抽出することができる。
【0051】
(4)はんだ接合部20,21のX線検査方法として、第1工程〜第3工程を有する。第1工程においては、パワーモジュールMp(接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品)を変位させながらX線を照射して受光器32によってはんだ接合部20,21についての複数のX線画像を撮像するとともに、複数のX線画像から3次元再構成データを生成する。第2工程においては、生成した3次元再構成データからパワーモジュールMpの接合面に沿った各層のスライス画像を抽出する。第3工程においては、抽出された各層のスライス画像について輝度ヒストグラムの平均値を算出し、算出した輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像をはんだ接合部20,21の状態の検査に最適な画像として抽出する。これにより、パワーモジュールMpを検査対象として複数のスライス画像の中からはんだ接合部20,21の検査に最適な画像を自動で抽出することができる。
【0052】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・放射線としてX線を用いたが、放射線は例えばγ線等を用いてもよい。
・図2のパワーモジュールMp、即ち、はんだ接合部20とはんだ接合部21が形成された電子部品を検査対象としたが、これに限るものではなく、3層以上にわたりはんだ接合部が形成された電子部品を検査対象としてもよい。例えば、図2において、ヒートシンク10の下面にも絶縁基板11が接合され、絶縁基板11の下面にパワー素子12がはんだ付けされ、パワー素子12の下面にヒートマス13がはんだ付けされた電子部品を検査対象としてもよい。
【0053】
・接合材としてはんだを用いたが、接合材はろう材等であってもよい。
・図3におけるステップS50とステップS60の処理は一度に行ってもよい。つまり、枚数がn×m×pの画像の中から、一度に、輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像を接合部の状態の検査に最適な画像として抽出してもよい。
【符号の説明】
【0054】
11…絶縁基板、12…パワー素子、13…ヒートマス、14…はんだ、15…はんだ、20…はんだ接合部、21…はんだ接合部、32…受光器、36…パーソナルコンピュータ(PC)、Mp…パワーモジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品を変位させながら放射線を照射して検出器によって前記接合部についての複数の放射線画像を撮像する放射線画像取得手段と、
前記放射線画像取得手段において撮像した複数の放射線画像から3次元再構成データを生成する再構成データ生成手段と、
前記再構成データ生成手段において生成した3次元再構成データから前記電子部品の接合面に沿った各層のスライス画像を抽出するスライス画像抽出手段と、
前記スライス画像抽出手段において抽出された各層のスライス画像について輝度ヒストグラムの平均値を算出し、算出した輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像を前記接合部の状態の検査に最適な画像として抽出する検査画像抽出手段と、
を備えたことを特徴とする接合部の放射線検査装置。
【請求項2】
接合材による接合部が多層にわたり形成された電子部品を変位させながら放射線を照射して検出器によって前記接合部についての複数の放射線画像を撮像するとともに、当該複数の放射線画像から3次元再構成データを生成する第1工程と、
前記生成した3次元再構成データから前記電子部品の接合面に沿った各層のスライス画像を抽出する第2工程と、
前記抽出された各層のスライス画像について輝度ヒストグラムの平均値を算出し、算出した輝度ヒストグラムの平均値が最大のスライス画像を前記接合部の状態の検査に最適な画像として抽出する第3工程と、
を有することを特徴とする接合部の放射線検査方法。
【請求項3】
接合材による接合部が多層にわたり形成される電子部品の生産ラインにおける前記多層にわたる接合材による接合を施す工程の後段に、請求項1に記載の接合部の放射線検査装置を備えてなることを特徴とする電子部品の生産装置。
【請求項4】
前記スライス画像抽出手段は、前記電子部品の接合面に合わせて傾きを多方向から調整して得た複数の3次元データから前記電子部品の接合面に沿った各層のスライス画像を抽出することを特徴とする請求項1に記載の接合部の放射線検査装置。
【請求項5】
前記電子部品は、半導体素子の一方の面に基板を接合する接合材による接合部が形成されているとともに前記半導体素子の他方の面に金属部材を接合する接合材による接合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の接合部の放射線検査装置。
【請求項6】
前記接合材は、はんだであることを特徴とする請求項1,4,5のいずれか1項に記載の接合部の放射線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−21942(P2012−21942A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161793(P2010−161793)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(506382792)コムスキャンテクノ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】