説明

接地凸部を備える合成樹脂製容器

【課題】内容物の充填後に容器口部をシール材で密封した合成樹脂製容器にキャップを装着する工程において、キャップの斜め掛かり不良が生じない合成樹脂製容器を提供すること。
【解決手段】少なくとも口部、胴部及び底部を備える合成樹脂製容器であって、底部が、容器の内方に凹む底部凹面、該底部凹面を連続して囲み、該底部凹面より容器の外方にある帯状の接地補助部、及び、該接地補助部から容器の外方に膨出する接地凸部を備え、かつ、該接地凸部が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する合成樹脂からなる前記の合成樹脂製容器、好ましくは(A)は、HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH− (−CH−)−CH;またはHN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(n、m、kは、6〜10の整数)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器に関し、特に、その底部が、底部凹面を囲む接地補助部から容器外方に膨出する接地凸部を備える合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズ、ケチャップ、ソースなどの粘稠な内容物が充填される合成樹脂製容器は、主に、筒状の合成樹脂製のパリソンが押し出され、続いて、冷却金型内で容器の形状にブロー成形されるダイレクトブロー成形によって製造されることが多い。該合成樹脂製容器の層構成としては、単層の容器または多層の容器があり、合成樹脂材料としては、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミドなどが用いられている。多層の合成樹脂製容器としては、表層(外層及び/または内層)として、ポリオレフィン、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどを使用し、中間層に、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのバリア層を備えた多層構造のものが広く使用されている。
【0003】
例えば、特開平6−72422号公報(特許文献1)、特開平6−72424号公報(特許文献2)には、ポリプロピレン等のポリオレフィンを用いてブロー成形される単層ボトルまたは多層ボトルが開示され、更にポリオレフィンの最外層、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のガスバリヤー性樹脂の芯層を含む多層材により構成され、ダイレクトブロー成形などにより作成される多層ボトルが開示されている。
【0004】
合成樹脂製容器の滑り性を改善するために、例えば、先の特許文献1や特開2005−307122号公報(特許文献3)などに示されるように、従来、原料樹脂に、滑剤(スリップ剤)を添加することが行われている。滑剤は、通常、原料樹脂に、マスターバッチ方式で添加されたり、練り込まれたりする。合成樹脂製容器が多層容器である場合は、表面層(最外層または最内層)に滑剤を添加することが多い。滑剤としては、例えば、脂肪酸アミドが汎用され、具体的には、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド(ベヘニン酸アミド)などが使用される。これらの滑剤は、2種以上を混合して使用することも行われてきた。例えば、先の特許文献3には、天然物由来の油脂を原料とするスリップ剤(滑剤)として、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドなどが開示されている。
【0005】
合成樹脂製容器は、容器成形工程、容器の移送工程、ユーザーによる食品等の内容物充填工程、内容物充填後の移送工程、キャップ装着工程、更に容器包装工程などを経て、最終製品が製造される。
【0006】
食品等の内容物充填工程からキャップ装着工程までについて、更に説明する。内容物充填工程において、食品等の内容物を、例えば、口部、肩部、胴部及び底部を有する成形された容器に充填し、必要に応じて熱処理及び冷却を行い、充填量等の検査を行った後に、該容器の口部をシール材で密封して密封容器とする。次いで、内容物充填後の移送工程において、内容物が充填された該密封容器を整列させながら、キャップ装着装置(以下、「キャッパー」ということがある。)まで移送し、キャップ装着工程において、キャップ装着装置が、該密封容器の口部にキャップを巻き締める。
【0007】
内容物充填後の移送工程とキャップ装着工程の具体的な方法及び装置について、図面に基づいて説明する。
【0008】
内容物が充填された密封容器は、図1に示すように、順次、複数の搬送ホイールからなる挿入ステーションに引き渡される。該密封容器は、重量(充填された内容物の重量の過不足を含む。)、寸法、密封性状(シール材の変形やシール操作の異常等を含む。)などにおいて、規格範囲を満たさないものが含まれていることがある。これら規格範囲を満たさない密封容器は、通常、挿入ステーションの前工程で排出されることがあるため、挿入ステーションには、密封容器が不連続に渡される。
【0009】
挿入ステーションにおける複数の搬送ホイール(図示では、3つの搬送ホイールがある。)は、図示しないセンサーを備える制御手段により、密封容器の不連続な並びを連続な並び、すなわち、等間隔の並びに整えるために、間欠回転しながら搬送ホイール間で、密封容器の受渡しを繰り返す。この繰り返しによって、密封容器は、連続的に、すなわち、等間隔に並んだ状態となって、キャッパーの前に置かれた受渡ホイールに渡される。受渡ホイールには、密封容器の底部を把持して案内する底部グリッパ(「袴グリッパ」ということもある。)が同一円周上(受渡ホイールの外方の円周上でよい。)に等間隔で複数備えられている。搬送ホイールから供給された密封容器は、図2に示すように、該底部グリッパで底部を把持され、連続な並び、すなわち、等間隔に並んだ状態で、キャップ装着装置のキャッパーホイールに供給される。
【0010】
キャッパーホイールには、密封容器の胴部を把持して案内する胴部グリッパ、及び/または密封容器の肩部を把持して案内する肩部グリッパが、同一円周上に等間隔で複数備えられている。前記の底部グリッパで底部を把持されて受渡しホイールから供給された密封容器は、底部グリッパによる把持が解除されるのとほぼ同時に、図2に示すように、該胴部グリッパ及び/または肩部グリッパで速やかに把持され、正立した状態で、キャッパーホイールの回転方向に案内される。キャッパーホイールに載置される密封容器の正立状態を助けるために、キャッパーホイールには、図示しない案内板や案内溝を備えることができる。
【0011】
キャッパーホイールは、胴部グリッパ及び/または肩部グリッパの上方に、密封容器にキャップを装着するためのキャップ装着装置(キャッパー)を、1つまたは複数備えている。キャッパーは、キャッパーホイールと同期して、同じ角速度で回転しつつ、キャップ供給装置(図示せず)が、密封容器の上方からキャップを供給し、キャップ巻き締め装置(図示せず)が、胴部グリッパ及び/または肩部グリッパで把持された密封容器の口部にキャップを巻き締めする。
【0012】
キャップが装着された密封容器は、底部グリッパと同じ作用をする取出しグリッパを備える第2の受渡しホイールに渡される。その後、密封容器は、所定の本数毎にキャップが装着された密封容器を包装するラッパー装置などを備える送出ステーションに渡される。
【0013】
近年、生産性向上のために、合成樹脂製容器製造装置の高速化が進んでいる。キャッパーホイールに載置される密封容器は、キャップ装着の処理量を増すためにキャッパーホイールの回転の角速度が大きくなると、回転に伴う機械的振動や、受渡しホイール上で密封容器が獲得する慣性力とキャッパーホイール上で密封容器が獲得する慣性力との差が生じることにより、正立状態が崩れて密封容器が傾いたり、場合によっては倒れたりすることもあり、また、密封容器が種々の方向に揺動して、正常なキャップ装着がされないことがある。
【0014】
合成樹脂製容器の底部には、例えば、実公昭62−29377号公報(特許文献4)に開示されるように、耐圧性や自立性を向上させるために、脚部を突出形成したり、環状接地補助部を設けたりすることが行われていたが、キャップを装着する工程において、確実に正立状態を確保することが困難であったり、または、密封容器全体が変形した状態でキャップが装着されたりすることがあった。密封容器が正立状態でなく、何らかの傾きや変形がある状態で、または、揺動状態で、キャッパーが密封容器にキャップを装着すると、キャップの装着に失敗したり、キャップが斜めに掛かったままになる装着不良、いわゆるキャップの斜め掛かり不良が生じたりすることがある。キャップの斜め掛かり不良が生じると、外観不良はもちろん、キャップの締め込み不足による密封不良の懸念もある。また、キャップに不正開封防止帯が形成されている場合は、不正開封防止帯が切れて商品として使い物にならなくなる問題点がある。
【0015】
そこで、キャップの斜め掛り不良の発生本数が、生産効率上、百分率表示で0.1%未満に抑えられるよう、改善が求められていた。例えば、密封容器へのキャップの装着不良を防止するために、特開2007−269423号公報(特許文献5)には、合成樹脂製容器の搬送方向に沿って延在し、該容器の側面部、ネック部または頭部に接触して支持する第1の支持部と、該容器の搬送方向に沿って延在し、該容器の底部の外縁部に接触して支持する第2の支持部とを備えるとともに、前記第1及び第2の支持部の少なくとも一方における容器の接触面が該容器の搬送方向に駆動する合成樹脂製容器搬送装置が開示されている。また、キャップの斜め嵌合検査装置として、特開2007−69909号公報(特許文献6)には、キャップに対して該キャップの輪郭部によって一部遮られるように所定幅の光束を照射する投光手段と、該投光手段とキャップを隔てて反対側に配置され投光手段から照射される光束を受光する受光手段と、容器を支持し口頸部の中心軸を中心にして投光手段及び受光手段に対して相対回転させる回転支持手段と、受光装置によって受光された受光量を読み込んで容器の回転中における受光量の最大値と最小値の差を求めこの差が基準値より大きい場合に傾き嵌合と判定する判定手段とを備えるキャップの斜め嵌合検査装置が開示されている。
【0016】
これらの高度かつ複雑な制御機能を備えた製造装置や検査装置の設置を要することなく、簡便な方法で、確実に合成樹脂製容器の正立姿勢を維持することができ、生産性向上を図ることができる合成樹脂製容器が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平6−72422号公報
【特許文献2】特開平6−72424号公報
【特許文献3】特開2005−307122号公報
【特許文献4】実公昭62−29377号公報
【特許文献5】特開2007−269423号公報
【特許文献6】特開2007−69909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、内容物の充填後に容器口部をシール材で密封した合成樹脂製容器にキャップを装着する工程において、キャップが斜めに掛かったままになる装着不良、すなわち、キャップ装着工程におけるキャップの斜め掛かり不良が生じない合成樹脂製容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記の課題を解決することについて鋭意研究した結果、少なくとも口部、胴部及び底部を備える合成樹脂製容器の底部に、いわゆる環状の接地補助部を備えるとともに、該接地補助部に、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有する合成樹脂からなる接地凸部を設けることによって、内容物の充填後に容器口部をシール材で密封した合成樹脂製容器にキャップを装着するキャップ装着工程において、該合成樹脂製容器が正立状態に保たれることにより、課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
【0020】
すなわち、本発明によれば、少なくとも口部、胴部及び底部を備える、一体に成形された合成樹脂製容器であって、
該底部が、容器の内方に凹む底部凹面、該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む帯状の接地補助部、及び、該接地補助部から容器の外方に膨出する接地凸部を備え、かつ、
該接地凸部が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する合成樹脂からなることを特徴とする前記の合成樹脂
製容器が提供される。
【0021】
また、本発明によれば、実施の態様として、以下(1)〜(16)の合成樹脂製容器が提供される。
(1)前記の接地凸部が、前記接地補助部に3〜10個設けられている前記の合成樹脂製容器。
(2)前記の接地凸部の前記接地補助部から容器の外方に膨出する高さが、隣接する接地凸部間の2つの距離のうちの小さい方の該距離の0.4〜5.0%である前記の合成樹脂製容器。
(3)前記の接地凸部の前記接地補助部から容器の外方に膨出する高さが、いずれも同一である前記の合成樹脂製容器。
(4)前記の接地凸部が、合成樹脂製容器の表層の一部であり、該合成樹脂製容器の表層が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有する前記の合成樹脂製容器。
(5)前記の合成樹脂製容器の表層が、該合成樹脂製容器の最外層及び最内層である前記の合成樹脂製容器。
(6)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、以下の(A)、(A)及び(A):
(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
(A)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドを含有する前記の合成樹脂製容器。
(7)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、前記の(A)または(A)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である前記の合成樹脂製容器。
(8)前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるmが、m=n+1またはm=n−1である前記の合成樹脂製容器。
(9)前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるkが、k=nである前記の合成樹脂製容器。
(10)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、以下の(A11):
(A11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。);
の式で表される脂肪酸アミドとの混合物である前記の合成樹脂製容器。
(11)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物を含有する前記の合成樹脂製容器。
(12)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有する合成樹脂が、更に飽和脂肪酸アミドを含有する前記の合成樹脂製容器。
(13)更にバリア層を備える前記の合成樹脂製容器。
(14)更に回収層を備える前記の合成樹脂製容器。
(15)表層、バリア層、接着層、及び、回収層を備える前記の合成樹脂製容器。
(16)最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層の層構成を有する前記の合成樹脂製容器。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、少なくとも口部、胴部及び底部を備える、一体に成形された合成樹脂製容器であって、該底部が、容器の内方に凹む底部凹面、該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む帯状の接地補助部、及び、該接地補助部から容器の外方に膨出する接地凸部を備え、かつ、該接地凸部が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する合成樹脂からなることを特徴とする前記の合成樹脂製容器であることによって、内容物の充填後に容器口部をシール材で密封した合成樹脂製容器のキャップ装着工程において、該合成樹脂製容器が正立状態に保たれることによって、キャップが斜めに掛かったままになる装着不良、いわゆるキャップの斜め掛かり不良が生じない合成樹脂製容器が提供されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】内容物充填後の移送工程とキャップ装着工程の概念図である。
【図2】キャップ装着工程における密封容器の把持装置の概念図である。
【図3】(a)は、合成樹脂製容器の底面図であり、(b)は、該合成樹脂製容器の底部のX−X方向の部分略断面図である。
【図4】(a)は、合成樹脂製容器の他の具体例の底面図であり、(b)は、該合成樹脂製容器の他の具体例の底部のX−X方向の部分略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
I.少なくとも口部、胴部及び底部を備える、一体に成形された合成樹脂製容器
本発明の合成樹脂製容器は、少なくとも口部、胴部及び底部を備える、一体に成形された合成樹脂製容器である。
【0025】
1.少なくとも口部、胴部及び底部を備える容器
本発明の合成樹脂製容器は、少なくとも、該容器に自立性を与える底部と、該底部の周縁から立ち上がる略筒状の胴部と、上部に開口して設けられた口部とを備える容器である。本発明の合成樹脂製容器は、口部、胴部及び底部に加えて、胴部から次第に縮径されて口部に至る肩部を備えてもよく、また、胴部と口部との境界領域に胴部及び口部よりも小径の環状凹部を備えてもよいし、更に、胴部及び口部よりも大径のフランジ部を備えてもよい。容器の強度、容器の成形性または取扱い性等の観点から、肩部、環状凹部またはフランジ部等を備える容器が好ましいことが多く、これらを組み合わせて備える容器、例えば、肩部とフランジ部を併せ備える容器でもよく、通常、ブロー成形や射出成形などによって製造される合成樹脂製容器をほぼすべて包含する。
【0026】
2.合成樹脂
本発明の合成樹脂製容器は、合成樹脂を主たる材料として一体に成形された合成樹脂製容器である。該合成樹脂としては、一体に成形された合成樹脂製容器において通常使用される合成樹脂を採用することができる。具体的には、エチレン系(共)重合体やプロピレン系(共)重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリグリコール酸やポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン66やナイロン612等のポリアミド;ポリカーボネート;などを採用することができる。本発明の合成樹脂製容器は、これらの合成樹脂のほかに、種々の添加剤や配合剤を併せて使用して形成される。後述する多層の合成樹脂製容器(以下、「合成樹脂製多層容器」ということがある。)においては、合成樹脂を主たる材料としない層を備えてもよい。
【0027】
マヨネーズ、ケチャップなどの粘稠な内容物を充填する合成樹脂製容器としては、合成樹脂として、好ましくはポリオレフィンを採用することができる。ポリオレフィンとして、より好ましくは、(1)低密度ポリエチレンや、(2)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体または該共重合体と他のポリオレフィンとの組成物を採用することができる。特に好ましい(1)及び(2)のポリフィンについて更に説明する。
【0028】
(1)低密度ポリエチレン
本発明の合成樹脂製容器を形成する合成樹脂として、特に好ましく採用される低密度ポリエチレンは、通常使用される低密度ポリエチレンを意味し、一般に、密度が0.910〜0.930g/cmのポリエチレンであり、好ましくは0.912〜0.928g/cmである。なお、ポリエチレンの密度は、JIS K6922−2に従って測定したものである。
【0029】
該低密度ポリエチレンは、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.3〜5g/10分、更に好ましくは0.5〜2g/10分の範囲内のものを使用することができる。また、低密度ポリエチレンは、分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn)が、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.7以上の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。多分散度(Mw/Mn)の上限は、3.0程度である。なお、ポリエチレンのMFRは、JIS K6922−2に従って測定したものであり、多分散度(Mw/Mn)は、JIS K7252に従って測定したものである。
【0030】
低密度ポリエチレンとしては、いわゆる、チーグラー・ナッタ触媒(後に詳述する。)を用いて得られた高圧法低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」ということがある。)のほか、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などエチレンと他のオレフィン単量体との共重合体も使用することができる。低密度ポリエチレンとしては、合成品を使用することもできるが、市販品を使用してもよい。市販品としては、住友化学株式会社製のスミカセン(登録商標)、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックLD(登録商標)、三井・デュポンポリケミカル株式会社製の低密度ポリエチレンなどがある。
【0031】
(2)チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体
本発明の合成樹脂製容器を形成する合成樹脂として、特に好ましく採用されるチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(以下、「チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体」ということがある。)は、α−オレフィンの立体規則性重合用触媒として周知のチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体である。
【0032】
チーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)触媒は、α−オレフィンの立体規則性重合用触媒として周知のものであって、元素周期律表第IV〜VIII族の遷移金属化合物と、周期律表第I〜II族の典型金属の有機化合物と、好ましくは電子供与性化合物の第3成分とからなるものを使用する触媒であり、溶剤重合法または気相重合法など、いずれの重合方法によるα−オレフィンの重合にも用いることができる。チーグラー・ナッタ触媒としては、例えば、四塩化チタンを有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンを電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルとからなる触媒、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体からなる担持型触媒等が挙げられる。チーグラー・ナッタ触媒の配位金属としては、元素周期律表の第4周期の遷移金属である第IV族のTiのほか、第4周期の遷移金属である第Va族のV、第4周期の遷移金属である第VIa族のCrなど周知の元素を選ぶことができる。
【0033】
本発明におけるチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、共重合体中におけるプロピレンから得られるモノマー単位の含有率(以下、「プロピレン含有率」ということがある。)が、100〜94質量%(ただし100質量%を除く。)、好ましくは99.7〜95質量%、より好ましくは99.5〜95.5質量%であり、共重合体中のα−オレフィンから得られるモノマー単位の含有率(以下、「α−オレフィン含有率」ということがある。)が、0〜6質量%(ただし0質量%を除く)、好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜4.5質量%の割合であるものである。プロピレンと共重合されるコモノマーであるα−オレフィンとしては、エチレン及び/または炭素数4〜20のα−オレフィンなどが挙げられ、具体的には、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。該α−オレフィンは、2種以上を併用することもできる。α−オレフィン含有率が上記範囲内にあると、合成樹脂製容器が、実用上良好な剛性を保つことができる。特に好ましい共重合体は、エチレン含有率0.3〜5質量%、特に0.5〜4.5質量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体である。α−オレフィン含有率が多すぎると、結晶融点の温度が低くなり、所要の強度が得られなかったり、重合体の流動性が低下したりすることがある。なお、プロピレン含有率及びα−オレフィン含有率は、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定できる。具体的には、日本電子株式会社製FT−NMRの270MHzの装置により測定することができる。
【0034】
チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、密度が、通常0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.885〜0.925g/cmの範囲であり、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が、通常0.5〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分の範囲である。MFRが上記範囲を上回ると合成樹脂製容器の衝撃強度が不足する傾向があり、MFRが上記範囲を下回ると成形性が不良となることがある。また、分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn)は、通常1.2〜5、好ましくは1.5〜4.5、より好ましくは2〜4の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。なお、密度及びMFRは、先に述べたJIS K6922−2に従って測定したものであり、多分散度(Mw/Mn)は、JIS K7252に従って測定したものである。
【0035】
チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体の結晶融点(Tm)は、通常125〜165℃の範囲であり、好ましくは127〜163℃、より好ましくは130〜161℃の範囲である。結晶融点は、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)を使用して、試料を200℃まで昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で40℃まで降温して結晶化させ1分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度として求めたものである。結晶融点は、共重合モノマーの含有量の増減などにより調節可能である。チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体の結晶融点が低すぎる場合は、所要の強度が得られなかったり、溶融成形性が低下したり、得られる合成樹脂製容器の表面光沢や滑り性が悪化したりすることがある。結晶融点が高すぎる場合は、例えばダイレクトブロー成形による成形性が悪化する。
【0036】
本発明における合成樹脂製容器が、前記のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体を含有することは、以下の方法で確認することができる。すなわち、樹脂ペレットを厚み100μmにガラスにて切断して試料とし、走査電子顕微鏡SEMに敷設して、生じた蛍光X線をエネルギー分配する分析器として、エネルギー分散型X線検出器を装着した走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、FE−SEM−EDX,S−800、検出器Kevex社製)を使用して定性分析を行い、検体に残存する微量の触媒の元素種を検出する。元素周期律表の第4周期の遷移金属である第IVa族のTi(チタニウム)、第4周期の遷移金属である第Va族のV(バナジウム)または第4周期の遷移金属である第VIa族のCr(クロミウム)のエネルギーに相当する出現ピークを確認することにより、チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合したポリオレフィンであると判定することができる。該樹脂ペレットは、合成樹脂製容器から削りだしたものでもよく、該合成樹脂製容器が合成樹脂製多層容器である場合は、例えば、表層から削りだしたものでもよく、または、合成樹脂製多層容器の層間を剥離した表面の層を用いてもよい。
【0037】
チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体としては、合成品を使用することもできるが、市販品を使用してもよい。市販品としては、日本ポリエチレン株式会社製の商品名ノーブレン(登録商標)などがある。
【0038】
〔チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体と他のポリオレフィンとの組成物〕
チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、単独で使用することもできるが、他のポリオレフィンとの組成物として使用することが更に好ましい。他のポリオレフィンとしては、メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、後に詳述するエチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体(以下、単に「メタロセン触媒ブロック共重合体」ということがある。)との組成物として使用することが、特に好ましい。チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体と他のポリオレフィンとの組成物における、チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体の含有量は、特に限定されないが、該チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体及び他のポリオレフィンの合計量を100質量%としたときに、通常60〜99.5質量%、好ましくは62〜99質量%、より好ましくは65〜98質量%の範囲である。組成物中のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体の含有量が少なすぎると、合成樹脂製容器の表面光沢が不良となることがあり、その含有量が多すぎると、合成樹脂製容器の滑り性が低下することがある。
【0039】
〔メタロセン触媒ブロック共重合体〕
他のポリオレフィンとして好ましく使用されるメタロセン触媒ブロック共重合体は、ポリプロピレンからなる重合体のブロック(以下「PPブロック」ということがある。)と、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロック(以下「EPブロック」ということがある。)とが、それぞれ1ブロック以上結合してなる、メタロセン触媒を用いて得られたブロック共重合体であって、ポリプロピレンの剛性を保持しつつ、エチレン・プロピレン共重合体により耐衝撃性を改良した高剛性、耐衝撃性をバランスよく発揮する、それ自体公知のブロック共重合体である。
【0040】
該メタロセン触媒ブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、初段重合をポリプロピレンからなる重合体のブロックの重合とし、次いで、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックの重合を行う、2段階重合方法を採用することができる。すなわち、メタロセン触媒ブロック共重合体を構成する一方のブロックであるPPブロックを、メタロセン触媒を用いて、該ブロック共重合体調製時の第一段階目の重合(初段重合)により製造する。該PPブロックは、プロピレン単独重合体、または、プロピレンとプロピレン以外の炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体である。該ランダム共重合体におけるα−オレフィンの例としては、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。該ランダム共重合体中のこれらα−オレフィン単位の含有率は、10質量%以下、好ましくは0〜5質量%である。また、通常、第一段階目で得られる重合体の量が、全重合体生成量の50〜95質量%となるように重合温度及び重合時間が選ばれる。次に、第一段階目の重合で生成した重合体の存在下に、第二段階目の重合として、エチレンとプロピレンとの共重合を行い、EPブロック共重合体を製造する。該EPブロック共重合体は、エチレン単位10〜80質量%、好ましくは25〜75質量%、及び、プロピレン単位90〜20質量%、好ましくは75〜25質量%からなる共重合体であり、好ましくは、エチレン・プロピレンランダム共重合体からなる重合体である。いわゆるエチレン・プロピレンゴムは、EPブロック共重合体として、好ましく使用することができる。通常、第二段階目の重合で得られる重合体の量が、全重合体生成量の5〜50質量%となるように重合温度及び重合時間が選ばれる。
【0041】
メタロセン触媒は、一般に、メタロセン(Metallocene)、すなわち、置換または未置換のシクロペンタジエニル環2個と各種の遷移金属で構成されている錯体からなる遷移金属成分と、有機アルミニウム成分、特にアルミノキサンとからなる触媒の総称である。遷移金属成分としては、周期律表第IVb族、第Vb族または第VIb族の金属、特にジルコニウムまたはハフニウムが挙げられる。触媒中の遷移金属成分としては、一般に下記式
(Cp) MR
(式中、Cpは置換または未置換のシクロペンタジエニル環であり、Mは遷移金属であり、Rはハロゲン原子またはアルキル基である。)で表されるものが一般的に使用されている。アルミノキサンとしては、有機アルミニウム化合物を水と反応させることにより得られたものであり、線状アルミノキサン及び環状アルミノキサンがある。これらのアルミノキサンは、単独でも、他の有機アルミニウムとの組み合わせでも使用できる。
【0042】
メタロセン触媒としては、好ましくは、前記のCpが置換シクロペンタジエニル環であって、該シクロペンタジエニル環に対して縮合するアズレン骨格を2個架橋縮合してなる架橋アズレン型メタロセン触媒を使用することができる。該架橋アズレン型メタロセン触媒においては、粘土鉱物を助触媒として使用することもできる。前記のメタロセン触媒ブロック共重合体は、前記メタロセン触媒の存在下、有機溶剤中、液状単量体中または気相法での重合により合成されるが、これら公知のいずれの重合方法によるものでも、前記条件を満足するものは本発明の目的に使用できる。重合温度は通常0〜100℃、好ましくは20〜90℃である。分子量調節剤としては水素が好ましい。これら第一段階及び第二段階の重合の後、更に第三段階以降の重合として、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合、エチレンの単独重合またはエチレンと他のα−オレフィンとの共重合を行うこともできる。
【0043】
メタロセン触媒ブロック共重合体は、通常、密度が0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.885〜0.925g/cm程度であり、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が0.5〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分程度である。MFRが上記範囲を上回ると衝撃強度が不足する傾向があり、MFRが上記範囲を下回ると成形性が不良となることがある。(メタロセン触媒ブロック共重合体の結晶融点(Tm)は、80〜120℃の範囲であり、好ましくは85〜115℃、より好ましくは90〜110℃の範囲である。結晶融点は、DSCを使用して、測定したものである。なお、結晶融点は、共重合モノマーの含有量の増減などにより調節可能である。メタロセン触媒ブロック共重合体の結晶融点が低すぎる場合は、得られる合成樹脂製容器の所要の強度が得られなかったり、溶融成形性が低下したり、合成樹脂製容器の表面光沢や滑り性が悪化したりすることがある。結晶融点が高すぎる場合は、成形性が悪化する。
【0044】
本発明における合成樹脂製容器が、メタロセン触媒ブロック共重合体を含有することは、以下の方法で確認することができる。すなわち、樹脂のペレットを厚み100μmにガラスにて切断して試料とし、走査電子顕微鏡SEMに敷設して、生じた蛍光X線をエネルギー分配する分析器で測定し、Zr(ジルコニウム)またはHf(ハフニウム)のエネルギーに相当するピークの存在を確認する。該樹脂ペレットは、合成樹脂製容器から削りだしたものでもよく、該合成樹脂製容器が合成樹脂製多層容器である場合は、例えば、表層から削りだしたものでもよく、または、合成樹脂製多層容器の層間を剥離した表面の層を用いてもよい。
【0045】
メタロセン触媒ブロック共重合体は、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、例えば、日本ポリエチレン株式会社製のカーネル(登録商標)などがある。
【0046】
メタロセン触媒ブロック共重合体を、前記のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体との組成物として使用する場合は、該メタロセン触媒ブロック共重合体及び前記のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体の合計量を100質量%としたときに、通常40〜0.5質量%、好ましくは38〜1質量%、より好ましくは35〜2質量%の範囲である。該メタロセン触媒ブロック共重合体の含有量が少なすぎると、合成樹脂製容器の滑り性が低下することがある。該メタロセン触媒ブロック共重合体の含有量が多すぎると、合成樹脂製容器の表面光沢が不良となることがある。
【0047】
(3)添加剤
本発明の合成樹脂製容器を形成する合成樹脂には、必要に応じて、補強材、充填剤、抗酸化剤、光劣化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、または核剤などの添加剤を配合することができる。補強材または充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ等を使用することができる。これら添加剤の配合量は、合成樹脂100質量部に対して、通常0.01〜100質量部の範囲で添加剤の目的に応じて最適な範囲の量を選定すればよい。例えば、補強材または充填剤は、通常10〜100質量部、好ましくは15〜80質量部、より好ましくは20〜60質量部配合することができる。合成樹脂として、前記のメタロセン触媒ブロック共重合体を、チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体との組成物成分として使用する場合には、補強材または充填剤の使用が好ましい。添加剤の種類によっては、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部の配合でよいことがある。
【0048】
(4)エラストマー
さらに、本発明の合成樹脂製容器を形成する合成樹脂には、低温耐衝撃性、伸度特性及び成形性を改良するために、エラストマーを配合することもできる。該エラストマーとしては、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴム、スチレン含有熱可塑性エラストマー等が挙げられ、エラストマーは、合成樹脂100質量部に対して、通常0.5〜50質量部、好ましくは1〜40質量部配合することができる。
【0049】
該エチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴムは、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体であり、α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができ、なかでも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンが好ましい。α−オレフィン単位の含有率は、15〜70質量%、好ましくは20〜55質量%である。α−オレフィン単位の含有率が上記範囲よりも少なすぎると低温衝撃強度が劣り、一方、多すぎると伸度特性や成形性が低下するばかりでなく、このエラストマーの形状をペレット状に保持しにくくなって生産する際のハンドリングが著しく低下することがある。
【0050】
スチレン含有熱可塑性エラストマーは、ポリスチレン部を5〜60質量%、好ましくは10〜30質量%含有するエラストマーである。スチレン含有熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)を挙げることができる。本発明で用いられるSEBSは、ポリスチレン単位を10〜40質量%の量で含有していることが望ましい。SEBSとともに、SBR、SBS、SIS及びSIS水添物などを使用することもできる。
【0051】
エラストマー成分としては、上述したエチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴムまたはスチレン含有熱可塑性エラストマーを、各々単独で用いてもよいし、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。
【0052】
3.一体に成形された合成樹脂製容器
本発明の、少なくとも口部、胴部及び底部を備える、一体に成形された合成樹脂製容器は、ブロー成形(延伸ブロー成形を含む。)、射出成形、シートの真空成形及び/または圧空成形などによって、様々な形状に、一体に成形された合成樹脂製容器である。該一体に成形された合成樹脂製容器は、単層の合成樹脂製容器でもよいし、多層の合成樹脂製容器でもよい。合成樹脂製容器の厚みは、特に限定されないが、胴部の厚みは、通常20μm〜5mm、好ましくは100μm〜3mm、より好ましくは200μm〜1mmの範囲である。合成樹脂製容器の容積は、特に限定されないが、好ましくは100〜3000cm、より好ましくは200〜2000cm、更に好ましくは300〜1000cmの範囲である。
【0053】
これらの中でも、ブロー成形によって製造される合成樹脂製容器が好ましく、単層または多層のパリソンを、容器形状のキャビティ壁を備える割型内でブロー成形することによって、ブロー成形品である単層または多層の合成樹脂製容器を得ることができる。ブロー成形は、該単層または多層のパリソンを製造した後、常温または室温に冷却しておき、ブロー成形を行うときに所定温度まで加熱するコールドパリソン方式によってもよいし、該単層または多層のパリソンを製造し、続いてブロー成形を行うホットパリソン方式によってもよい。該単層または多層パリソンは、射出成形により製造することもできるが、溶融押出成形によって筒状(以下、「管状」または「パイプ状」ということがある。)の単層または多層パリソンを製造する方法が好ましく、押出した単層のパリソンまたは共押出した多層のパリソンを、続けて容器形状にブロー成形するダイレクトブロー成形によって製造して得られる一体に成形された合成樹脂製容器が好ましい。
【0054】
(1)多層の合成樹脂製容器
前記の一体に成形された合成樹脂製容器が、多層の合成樹脂製容器、すなわち、合成樹脂製多層容器である場合、該合成樹脂製多層容器は、少なくとも、容器の最外面または最内面に現れる表層を備える合成樹脂製容器である。該合成樹脂製多層容器は、表層のほか、更にバリア層または回収層の一方または両方を備えることが好ましく、更に加えて、これらの層の間の所望の箇所に接着層を備えることが好ましい。
【0055】
(2)表層
合成樹脂製多層容器における表層としては、該容器の最外層と最内層とがある。合成樹脂製多層容器の表層である最外層と最内層は、同一の組成のものでもよいし、異なる組成のものでもよい。例えば、合成樹脂製多層容器の最外層を滑り性が良い組成のものとすると、容器の製造中、搬送中または内容物の充填中に、隣接する容器同士または装置類との接触等によって、不良品の発生、製造ラインの停止、装置の故障等が生じることを防止できる効果があるとともに、表面光沢も優れたものとなることがある。他方、合成樹脂製多層容器の最内層を滑り性が良い組成のものとすると、容器の内表面の滑り性が向上するので、内容物の充填がスムーズに行われ、消費者の使用時に内容物の液切れ性が優れるなどの効果が得られることがある。本発明の合成樹脂製容器は、底部に備えられる接地凸部を、該合成樹脂製容器の表層の一部とすることができ、また、該表層が合成樹脂製容器の最外層及び最内層であるものとすることができる。
【0056】
(3)バリア層
バリア層は、合成樹脂製多層容器の内容物の保存性を高めるために、これを備えることが好ましく、酸素バリア性、炭酸ガスバリア性等のガスバリア性や、水または水蒸気に対するバリア性を有するものを使用することができる。バリア層は、特に限定されず、容器の種類により、金属または無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムの層、金属箔やバリア性樹脂の層などを使用することもできる。
【0057】
バリア層を形成するバリア性樹脂の好ましい例として、エチレン・ビニルアルコール共重合体またはエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物(以下、これらを総称して「EVOH」ということがある。)を挙げることができる。また、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から形成される芳香族ポリアミド(MXD6)、塩化ビニリデン系共重合体やポリグリコール酸などを使用することもできる。
【0058】
EVOHとしては、エチレン含有率が20〜60モル%、好ましくは25〜55モル%、より好ましくは30〜50モル%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは97モル%以上、特に好ましくは99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。このEVOHは、フィルムを形成し得るに足りる分子量を有するものであり、一般に、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が6g/10分以下、好ましくは5g/10分以下、より好ましくは4g/10分以下である。
【0059】
(4)回収層
回収層は、合成樹脂製多層容器の強度を高め、また、資源のリサイクル性を高めるために、これを備えることが好ましい。該回収層は、本発明の合成樹脂製容器、特に、合成樹脂製多層容器それ自体から回収される材料(バリや製品容器の不要部分、製品規格外の容器の回収品など)、または、本発明の合成樹脂製容器を製造する工程において回収される材料を、主成分として含有する層である。特に、合成樹脂製多層容器が、ブロー成形によって製造される多層ブロー成形容器
である場合には、予備成形品であるパリソンにブローエアーを導入した後に成形容器の頭部(以下、「袋部」ということがある。)を切除する必要があるが、該切除された袋部を、破砕機にて粉末化した回収樹脂を原料として、回収層とすることができる。また、ブロー成形容器の前記の袋部以外の部分を切除して回収した樹脂や、成形前のパリソン、更には、合成樹脂製多層容器の各層を形成する材料や原料などを、主成分として含有するものでもよい。回収層には、更に合成樹脂製多層容器の各層を形成するための原材料、例えば、種々の樹脂原料や配合剤、接着剤等を含有させてもよい。
【0060】
(5)接着層
接着層は、合成樹脂製多層容器を構成する各層の層間剥離強度を高める目的で、各層間に介在させることができる。接着層としては、押出加工が可能で、かつ、各樹脂層に良好な接着性を示すものであることが好ましい。合成樹脂製多層容器が、ブロー成形や射出成形などによって製造される合成樹脂製多層容器である場合には、耐熱性や成形加工性の観点から、接着層を介在させなくてもよい場合もあるが、機械的特性や耐衝撃性などが要望される用途には、接着層を介在させることが好ましい。
【0061】
接着層に用いる樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン;グリシジル基含有エチレンコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド・アイオノマー、ポリアクリルイミドなどを挙げることができる。接着層に用いる樹脂には、所望により、無機フィラー、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染料などの各種添加剤を含有させることができる。
【0062】
(6)合成樹脂製多層容器の構成
合成樹脂製多層容器は、少なくとも1層の表層を備える2層、3層、4層、5層またはそれ以上の数の層からなる層構成を備える合成樹脂製多層容器である。好ましくは、層構成として、表層、バリア層、接着層、及び、回収層を備える樹脂製多層容器である。更に好ましくは、最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層からなる層構成を備える合成樹脂製多層容器である。
【0063】
合成樹脂製多層容器の厚みは、特に限定されないが、胴部の全層厚みは、通常20μm〜5mm、好ましくは100μm〜3mm、より好ましくは200μm〜1mmの範囲内である。
【0064】
全層厚みに対する表層の厚み(最外層及び/または最内層の合計厚みを意味する。)は、全層厚みに対して通常50〜90%(厚み比率、以下同様である。)、好ましくは55〜85%、より好ましくは60〜80%である。回収層は、通常5〜30%、好ましくは10〜25%、より好ましくは15〜25%である。バリア層は、通常1〜10%、好ましくは2〜8%、より好ましくは3〜6%である。接着層は、合計で、通常0.005〜2%、好ましくは0.007〜1.5%、より好ましくは0.008〜1.2%である。
【0065】
合成樹脂製多層容器における表層(最外層及び最内層)のうち最外層の表層全体に占める比率は、特に限定されないが、通常10〜80%、好ましくは15〜75%、より好ましくは20〜70%、特に好ましくは25〜65%である。
【0066】
合成樹脂製多層容器は、容器全体の厚みが、均一でもよいが、部分により厚みを変化させてもよい。合成樹脂製多層容器の底部は、一般に、厚みを大きくすることが好ましい。
【0067】
II.底部
本発明の合成樹脂製容器は、底部が、容器の内方に凹む底部凹面、該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む帯状の接地補助部、及び、該接地補助部から容器の外方に膨出する接地凸部を備え、かつ、該接地凸部が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する合成樹脂からなることを特徴とする。なお、先に述べたとおり、本発明の合成樹脂製容器は、該容器に自立性を与える底部を一体成形によって形成した容器であるので、自立性がない底部を一体成形して形成した合成樹脂製容器は、本発明の合成樹脂製容器に含まれない。
【0068】
1.底部の輪郭形状
本発明の合成樹脂製容器における底部の輪郭形状は、特に限定がなく、略円形、略楕円形、略多角形など、合成樹脂製容器において通常採用される、自立可能な底部の輪郭形状とすることができる。略多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形等を採用することができる。また、長方形の4隅を切り欠いて形成される八角形などの形状でもよい。例えば、図3(a)では、容器底部の輪郭1は、半径Rの略円形であり、図4(a)では、容器底部の輪郭1は、長径D、短径Dの略楕円形である。本発明の合成樹脂製容器における底部の大きさは、特に限定がなく、例えば、容器底部の輪郭形状が、半径Rの円形である場合、該半径Rは、通常2〜20cmの範囲、多くの場合3〜15cmの範囲である。
【0069】
2.容器の内方に凹む底部凹面
本発明の合成樹脂製容器における底部は、容器の内方に凹む底部凹面を備える。例えば、図3(a)及び図4(a)では、それぞれ略円形または略楕円形の輪郭形状を有する容器の内方に凹む底部凹面2を備えている。該容器の内方に凹む底部凹面2は、容器の内方に凹んだ略水平面であってもよいし、半径方向において容器の内方に凹む距離が変化するものでもよい。また、円周方向に分離して配置され半径方向に延びるリブを設けたものでもよい。底部の機械的強度や合成樹脂製容器の自立性の観点から、前記リブを備える底部であることが好ましい。また、後述のようにダイレクトブロー成形によって合成樹脂製容器を製造する場合、底部凹面2には、管状のパリソンの下端をブロー金型によって挟み込み喰い切った痕跡であるピンチオフ部5がパーティングライン上に形成されている。また、射出成形によってパリソンを形成した場合は、通常、底部にパリソン成形用の射出成形金型に溶融樹脂を注入した痕跡であるゲート痕が形成される。なお、底部凹面2の立ち上がり部(沈み込み部)は、直線状(階段状)であってもよいし、曲線状(スロープ状)であってもよい。ダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製容器などにおいては、成形金型のキャビティ面の加工の難易度、成形品である合成樹脂製容器の型抜きの難易度等の観点から、底部凹面の前記立ち上がり部(沈み込み部)を、曲線状とすることが好ましいことが多い。
【0070】
3.該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む帯状の接地補助部
本発明の合成樹脂製容器における底部は、該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む帯状の接地補助部を備える。接地補助部は、後述する接地凸部と共同して、合成樹脂製容器の製造中または移送中、特に、製造工程におけるキャップ装着工程において、合成樹脂製容器の転倒を防ぐ機能を果たす。接地補助部は、例えば、図3(a)(b)では、略円形の輪郭形状を有する底部凹面2の周囲に、該底部凹面2より容器の外方にあり、該底部凹面2を連続して囲む、中心半径r及び幅aの略円形帯状の接地補助部3である。該略円形帯状の接地補助部3の中心半径rは、容器底部の輪郭1の半径Rの0.4〜0.98倍程度、好ましくは0.5〜0.95倍、より好ましくは0.6〜0.92倍、更に好ましくは0.7〜0.9倍の範囲である。なお、該略円形帯状の接地補助部3の中心半径rが、容器底部の輪郭1の半径Rの1倍であるということは、接地補助部2が容器底部の輪郭1まで延長されており、容器底部から立ち上がる胴部に接続していることを意味する。接地補助部3の幅aは、該接地補助部3の中心半径rの0.5倍以下、好ましくは0.1〜0.48倍、より好ましくは0.15〜0.45倍、更に好ましくは0.2〜0.4倍の範囲である。帯状の接地補助部3の中心半径r及び幅aが、前記した範囲内であることにより、内容物充填後の移送工程やキャップ装着工程等において、合成樹脂製容器を載置した面が水平から若干傾斜したり、合成樹脂製容器を若干の傾斜がある面に載置したり、合成樹脂製容器に若干の振動や揺動や遠心力が加わったりしても、該接地補助部3の少なくとも一部分が合成樹脂製容器を載置した面に接地することにより、該合成樹脂製容器の転倒を防ぐことができる。該接地補助部3の中心半径rや幅aが小さすぎると、該合成樹脂製容器の転倒を防ぐことができなくなることがある。該接地補助部3の中心半径rが大きすぎる場合、例えば、容器底部の輪郭1にほぼ完全に沿うような場合や、該接地補助部3の幅aが大きすぎる場合は、合成樹脂製容器に不均等な力がかかったときに、合成樹脂製容器全体が変形するおそれがある。
【0071】
帯状の接地補助部の断面形状は、後述する接地凸部と共同して、キャップ装着工程等において合成樹脂製容器の転倒を防ぐ機能を果たすことができる限り、特に制限はなく、平面状のほか、台形状、蒲鉾状、馬蹄状などの形状を採用することができ、また表面に凹凸を設けることもできる。したがって、接地補助部3の底部凹面2からの立ち上がり部は、直線状(階段状)であってもよいし、曲線状(スロープ状)であってもよい。ダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製容器などにおいては、成形金型のキャビティ面の加工の難易度、成形品である合成樹脂製容器の型抜きの難易度等の観点から、接地補助部3の前記立ち上がり部を、曲線状とすることが好ましいことが多い。同様に、接地補助部3の容器外方の終端部である胴部との接続部は、直線状でもよいし、曲線状でもよい。例えば、図3(b)に示す例では、接地補助部3は、底部凹面2から曲面状に立ち上がる接地補助部3’の部分と、平面状に延在し、次いで容器底部の輪郭1に連接していく接地補助部3の部分とを有している。なお、図3(a)では、作図の便宜上、接地補助部3’及び3の輪郭が、実線の同心円として表記されている。
【0072】
接地補助部及び容器底部の輪郭の形状が、図4(a)に示すように、略楕円形である場合は、図3(a)に示すような略円形である場合に準じて、楕円の長径同士の比や短径同士の比を適宜調整すればよい。また、この場合も、接地補助部3の底部凹面2からの立ち上がり部または胴部との接続部は、直線状でもよいし、曲線状でもよく、図4(b)では、接地補助部3の底部凹面2からの立ち上がり部及び容器底部の輪郭1との接続部は、ともに曲線状である。また、図4(a)では、作図の便宜上、接地補助部3の輪郭が、実線の2つの楕円として表記されている。
【0073】
接地補助部は、後述する接地凸部と共同して、キャップ装着工程等において合成樹脂製容器の転倒を防ぐ機能を果たすことができる限り、均一な幅の輪郭形状を有する必要はなく、部分的または周期的に、幅狭部(くびれ部)や幅広部を設けてもよい。また、接地補助部は、一部分に切れ目を有していてもよい。例えば、略円形帯状または略楕円形帯状の接地補助部3に、周方向に均等間隔で複数の帯状の切れ目を有すると、該接地補助部3が半径方向のリブを複数備えるものとなる結果、その強度が向上する。したがって、本発明における「該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む帯状の接地補助部」とは、該接地補助部が、その機能を果たすことができる限り、切れ目がある接地補助部も含むものである。
【0074】
接地補助部の輪郭形状は、その機能を果たすことができる限り、特に限定されず、容器底部の輪郭の形状と同一または相似するものでなくてもよい。例えば、容器底部の輪郭の形状が略楕円形で、接地補助部が円形帯状であってもよいし、その逆の関係にあってもよい。また、容器底部の輪郭の形状が略円形で、接地補助部が五角形の帯状であってもよい。なお、接地補助部は、前記底部凹面を連続して囲むものであることから、少なくとも帯状の接地補助部の内側(容器底部の中心側)の輪郭形状は、該底部凹面の輪郭形状と基本的に同じ形状である。
【0075】
4.該接地補助部から容器の外方に膨出する接地凸部
本発明の合成樹脂製容器における底部は、前記の接地補助部から容器の外方に膨出する接地凸部を備える。該接地凸部は、前記の接地補助部から容器の外方に膨出しているので、該合成樹脂製容器を載置する面にほぼ常時接触している。特に、該接地凸部が3個以上設けられている場合は、合成樹脂製容器は、それら接地凸部のみが、該合成樹脂製容器を載置した面に接触して、自立することが可能である。合成樹脂製容器の製造中または移送中、特に、製造工程におけるキャップ装着工程において、合成樹脂製容器を載置した面が水平から若干傾斜したり、合成樹脂製容器を若干の傾斜がある面に載置したり、合成樹脂製容器に若干の振動や揺動が加わったりした場合は、接地凸部が合成樹脂製容器を載置した面から離間することがあるが、そのときは、接地凸部(のいくつか)と接地補助部とが該合成樹脂製容器を載置した面に接触することによって、該合成樹脂製容器の転倒が防止され、接地凸部が該合成樹脂製容器を載置した面に接触して、通常の自立姿勢である正立状態に復帰することができる。
【0076】
(1)接地凸部の数
接地凸部を設ける数は、特に限定されず、1個または2個設ければ、先に述べたように、接地補助部と共同して、合成樹脂製容器の転倒を防止することが可能であるが、接地凸部のみが、該合成樹脂製容器を載置した面に接触して、自立する、すなわち正立状態となることが可能であるものとするために、3個以上設けることが好ましく、より好ましくは4〜8個、更に好ましくは4〜6個である。接地凸部を設ける数の上限は特にないが、接地凸部の数が多すぎると、合成樹脂製容器の転倒を防止するために、接地補助部と共同することがむしろ困難となることがあるので、10個以下設けることが好ましい。
【0077】
(2)接地凸部の位置
接地凸部の位置は、帯状の接地補助部と共同して、合成樹脂製容器の転倒を防止することが可能である限り、特に限定されない。例えば、帯状の接地補助部の帯の中心に当たる位置から接地凸部を膨出させてもよいし、帯状の接地補助部の帯の中心からずれた位置から接地凸部を膨出させてもよい。
【0078】
接地凸部を複数個設ける場合、帯状の接地補助部における位置の配置は、様々な合成樹脂製容器を載置した面の傾斜や合成樹脂製容器に加わる振動や揺動によっても、該合成樹脂製容器の転倒を防止することができる観点から、点対称または線対称となる位置に設けることが好ましい。接地凸部を奇数個設ける場合は、通常、該容器の底部の中心点に対して点対称に均等間隔で接地凸部を設けることが好ましい。接地凸部を偶数個設ける場合は、点対称に均等間隔で接地凸部を設けてもよいし、互いに線対称となるいくつかの群に属するように接地凸部を設けることが好ましい。例えば、図3(a)においては、円の中心に対して互いに90°で点対称であるように、4個の接地凸部を均等間隔で設けており、隣接する接地凸部4間の距離dとdは同一である。また、図4(a)では、楕円の長軸及び短軸について線対称となるように、4個の接地凸部4を設けており、隣接する接地凸部4間の距離dとdは同一ではない。
【0079】
(3)接地凸部の高さ
接地凸部の接地補助部から容器の外方に膨出する高さ(以下、「接地凸部の高さ」ということがある。)は、特に限定されないが、前記の接地補助部と共同して、合成樹脂製容器の転倒を防止することが可能である観点から、隣接する接地凸部間の2つの距離のうちの小さい方の該距離の0.4〜5.0%であることが好ましい。より好ましくは0.6〜4.0%、更に好ましくは0.8〜3.0%の範囲である。接地凸部の高さは、図3(b)及び図4(b)では、tとして示されるものであり、該接地凸部が膨出している帯状接地補助部の部位の平均水平面を基準として測定した高さである。例えば、断面形状が蒲鉾状である帯状の接地補助部の蒲鉾形の頂点から膨出している場合は、接地凸部の高さは、該蒲鉾状の頂点から膨出する高さである。
【0080】
接地凸部を複数個設ける場合、該接地凸部の高さは、様々な合成樹脂製容器を載置した面の傾斜や合成樹脂製容器に加わる振動や揺動によっても、該合成樹脂製容器の転倒を防止することができる観点から、すべて同一であることが好ましい。接地凸部を、互いに線対称となるいくつかの群に属するように設ける場合は、前記の接地補助部と共同して、合成樹脂製容器の転倒を防止することが可能である範囲で、それらの群毎に接地凸部の高さを異なるものとすることもできる。
【0081】
(4)接地凸部の断面形状及び大きさ
接地凸部の断面形状及び大きさは、帯状の接地補助部と共同して、合成樹脂製容器の転倒を防止することが可能である限り、特に限定されない。例えば、接地凸部の断面形状は、円弧状、水滴状、放物線状、棒状(杭状)、多角形状(三角形状等)等々の形状をとることができるが、合成樹脂製容器が揺動または傾斜したときの接地面積を確保する観点から、頂点が、三角形状等の鋭角ではないことが好ましい。接地凸部の大きさ、すなわち、接地凸部の底面積は、該接地凸部の強度の観点から、該接地凸部の高さに対して、通常0.2〜4倍程度、好ましくは0.5〜3.5倍、より好ましくは0.8〜3倍の範囲で選定すればよい。なお、接地凸部の接地補助部からの立ち上がり部は、直線状でもよいし、曲線状でもよく、また、複数の階段状でもよい。
【0082】
(5)接地凸部の形成方法
接地凸部を設ける方法は、前記の接地補助部と共同して、合成樹脂製容器の転倒を防止することが可能である限り、特に限定されない。塗布や肉盛りによって設けてもよいし、合成樹脂製容器本体を一体成形して製造する際に、金型の所定箇所に、接地凸部となる材料を予め固定しておいて、成形時の熱と圧力により合成樹脂製容器の表層と一体化させる、いわゆるインモールドラベル成形法によってもよい。しかし、合成樹脂製容器をブロー成形等により一体成形するときに、底部の形状に対応する成形金型内面の所定箇所に接地凸部に対応する凹部を刻設しておいて、合成樹脂製容器の表層に、容器底部の形状、すなわち、容器の内方に凹む底部凹面、該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む帯状の接地補助部、及び、該接地補助部から容器の外方に膨出する接地凸部を一挙に成形することによって、接地凸部を形成する方法が、製造効率上、最も好ましい。この場合、接地凸部は、合成樹脂製容器の表層の一部である。
【0083】
III.不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する合成樹脂からなる接地凸部
本発明の合成樹脂製容器における底部は、前記の接地凸部が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する合成樹脂からなる。
【0084】
1.合成樹脂
本発明の合成樹脂製容器の底部の接地凸部を形成する合成樹脂は、先に「I.少なくとも口部、胴部及び底部を備える、一体に成形された合成樹脂製容器」の「2.合成樹脂」において述べたと同一の合成樹脂を用いることが好ましい。特に、前記したように、接地凸部が、合成樹脂製容器の表層の一部であるように一体成形される場合は、接地凸部は、合成樹脂製容器の表層と同一の組成を有する。なお、接地凸部を、前記したように、塗布や肉盛りによって設ける場合、またはインモールドラベル成形法によって設ける場合は、合成樹脂製容器本体との接着性が良好である限り、合成樹脂製容器本体と異なる合成樹脂を使用することができるが、合成樹脂製容器本体と同一の合成樹脂を使用することが好ましい。
【0085】
2.不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)
本発明の合成樹脂製容器の底部の接地凸部は、前記の合成樹脂中に、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する。不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)(以下、「(A)の不飽和脂肪酸アミド」ということがある。)は、脂肪酸アミドの分子構造中に少なくとも1結合の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸アミドであって、該炭素二重結合のすべてが不飽和cis構造の炭素二重結合である不飽和脂肪族アミドである。不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)は、滑剤として機能する。不飽和脂肪酸アミドが、trans構造の炭素二重結合を有するものであると、樹脂材料の均一配合が不十分となったり、該trans構造を有する不飽和脂肪酸アミドが前記の接地凸部表面に析出したりすることがあり、その結果、内容物の充填後に容器口部をシール材で密封した合成樹脂製容器のキャップ装着工程において、キャップの斜め掛かり不良を十分防止できないことがある。また、前記の接地凸部が、合成樹脂製容器の表層の一部である場合には、合成樹脂製容器の滑り性が悪化したり、表面光沢が悪くなる場合がある。
【0086】
3.接地凸部
本発明の合成樹脂製容器の底部の接地凸部における(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量は、該接地凸部を形成する合成樹脂の質量部に対して、100〜4000ppmである。(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量は、好ましくは103〜3900ppm、より好ましくは105〜3800ppm、更に好ましくは107〜3700ppm、特に好ましくは109〜3600ppmである。なお、前記(A)の不飽和脂肪酸アミドが、後述するように2種類以上の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの混合物である場合は、脂肪酸アミドの合計含有量が上記の範囲に含まれる必要がある。
【0087】
(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量が上記の範囲であることにより、内容物の充填後に容器口部をシール材で密封した合成樹脂製容器のキャップ装着工程において、キャップの斜め掛かり不良が生じない。(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量が上記の範囲を外れると、前記の合成樹脂製容器のキャップ装着工程において、キャップの斜め掛かり不良を十分防止することができず、該キャップ装着工程や合成樹脂製容器の移送工程等において、合成樹脂製容器が転倒したりすることがあるばかりでなく、得られる合成樹脂製容器表面の滑り性が不足して、容器の製造中、搬送中または内容物の充填中に、隣接する容器同士または装置類との接触等によって、不良品の発生、製造ラインの停止、装置の故障等が生じるおそれがある。
【0088】
4.その他の配合剤
本発明の合成樹脂製容器の底部の接地凸部には、必要に応じて、その他の配合剤として、更に熱安定剤、光安定剤、着色用顔料、無機フィラーなどの各種添加剤を含有させることができる。また、接地凸部には、その他の配合剤として、本発明の目的を損なわない範囲内において、所望により、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどの他のポリマーを含有することができる。これら各種添加剤や他のポリマーの含有量は、接地凸部を形成する合成樹脂組成物中に、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。なお、前記したように、接地凸部が、合成樹脂製容器の表層の一部であるように一体成形される場合は、接地凸部は、合成樹脂製容器の表層と同一の組成を有することとなる。
【0089】
各種添加剤としては、他の滑剤を使用することもできる。該他の滑剤としては、飽和脂肪酸アミドが好ましく、該飽和脂肪酸アミドを併用することにより、滑り性や表面光沢を更に改善できるなどの効果が奏される。飽和脂肪酸アミドとしては、通常、滑剤として使用されている化合物を使用することができ、例えば、ブチルアミド、吉草酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミドなどが挙げられ、好ましくは、ステアリン酸アミド(stearic acid amide)、ベヘン酸アミド(behenic acid amide)である。飽和脂肪酸アミドを含有する場合の含有量は、(A)の不飽和脂肪酸アミドと該飽和脂肪酸アミドの合計量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下であり、その含有量の下限は、0.5質量%程度であり、1質量%であれば十分な効果が実現できる。
【0090】
5.接地凸部の作用
本発明の合成樹脂製容器は、底部が、容器の内方に凹む底部凹面、該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む帯状の接地補助部、及び、該接地補助部から容器の外方に膨出する接地凸部を備え、かつ、該接地凸部が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する合成樹脂からなることを特徴とするものであることによって、以下の作用により、密封容器のキャップ装着工程において、キャップの斜め掛かり不良が生じない。
【0091】
すなわち、
i)密封容器のキャップ装着工程において、受渡ホイールからキャッパーホイールへの密封容器の受渡時のグリップ不良等による密封容器の傾斜や揺動、
ii)キャッパーホイールの回転による密封容器の揺動や位置ずれ、
iii)キャッパーホイールの回転遠心力による密封容器の傾斜、
iv)キャッパー軸線と密封容器の軸線とのずれや傾斜、
v)キャッパーの押圧による密封容器の傾斜、振動や揺動、などの要因によって、密封容器が正立状態から外れると、該密封容器は、通常状態である(複数の)接地凸部による接地が失われる。しかし、該密封容器は、接地凸部のいくつかと接地補助部の一部分によって、接地することができるので、転倒や更なる振動、揺動または傾斜が回避される。加えて、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する合成樹脂からなる接地凸部は、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が滑剤として機能する結果、該密封容器が、該容器を載置した面であるキャッパーホイール面上を滑動して、通常の(複数の)接地凸部による接地という安定した正立状態に復帰することができる。該密封容器が、キャッパーホイール面上を滑動して、安定した正立状態に復帰するまでの間には、該密封容器の振動、揺動または傾斜が繰り返し発生する場合があるが、本発明の合成樹脂製容器は、接地凸部の作用により、振動、揺動または傾斜が拡大することなく、短時間で収束することができる。その結果、密封容器は、安定した正立状態で、キャップを装着することができるのでキャップの斜め掛かり不良が生じることがない。
【0092】
IV.不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)
本発明の合成樹脂製容器の底部の接地凸部に含有される不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)について、更に詳述する。
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)〔(A)の不飽和脂肪酸アミド〕は、先に述べたように、脂肪酸アミドの分子構造中に少なくとも1結合の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸アミドであって、該炭素二重結合のすべてが不飽和cis構造の炭素二重結合である不飽和脂肪族アミドである。
【0093】
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)は、好ましくは、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を1結合有する不飽和脂肪酸アミドである。また、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)は、分子構造中に複数の不飽和cis構造の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸アミドでもよく、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を、好ましくは6結合以下、より好ましくは5結合以下、更に好ましくは4結合以下有する化合物である。したがって、本発明において最も好ましく使用される不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)は、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を1結合〜4結合有する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドである。
【0094】
1.分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を1結合有する不飽和脂肪酸アミド
不飽和cis構造炭素二重結合を1結合有する不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、以下の式(A)〜(A):
(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
(A)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミド化合物が挙げられる。(以下、(A)の式で表される脂肪酸アミドを、「式(A)の脂肪酸アミド」ということがあり、更に単に「式(A)」ということがある。(A)または(A)の式で表される脂肪酸アミドについても同様である。)
【0095】
好ましい不飽和cis構造炭素二重結合を1結合有する(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、以下の式(A)〜(A)で表される化合物が挙げられる。
【0096】
式(A):HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)
cis−8,9−hexadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=6に相当)
cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)
cis−10, 11−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=8に相当)
cis−11, 12− ethaeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=9に相当)
cis−12, 13− tetraeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)10−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(n=10に相当)
【0097】
式(A):HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)
cis−6,7−tetradecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=6に相当)
cis−7,8−hexadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=7に相当)
cis−8,9−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=8に相当)
cis−9,10−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=9に相当)
cis−10, 11− ethaeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(m=10に相当)
【0098】
式(A):HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数)
cis−12,13− eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)10−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=6に相当)
cis−13,14−docosenoamide〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=7に相当)
cis−14,15− tetracosenoamide〔HN−CO−(−CH−)12−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=8に相当)
cis−15,16−hexacosenoamide〔HN−CO−(−CH−)13−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=9に相当)
cis−16,17− octacosenoamide〔HN−CO−(−CH−)14−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(k=10に相当)
【0099】
2.分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を2結合〜4結合有する不飽和脂肪酸アミド
また、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物である(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を4結合有する以下の化合物が挙げられる。
【0100】
cis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH
【0101】
分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物である(A)の不飽和脂肪酸アミドは、単独で、または、他の(A)の不飽和脂肪酸アミドとの混合物として使用することもできる。
【0102】
3.(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物
(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、前記式(A)〜式(A)の脂肪酸アミド、または、前記の分子構造中に2結合〜4結合の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド等から選ばれる1種類の不飽和脂肪酸アミドを使用すれば、十分所期の効果を奏することができる。また、2種以上の(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物を使用してもよい。該(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物としては、前記の式(A)の脂肪酸アミドを含有するものであることが好ましい。
【0103】
したがって、好ましい(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物は、前記の式(A)の脂肪酸アミドと、前記の(A)または(A)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である。該混合物中の式(A)の脂肪酸アミドの割合は、0.05〜99.95質量%、好ましくは0.1〜99.9質量%、より好ましくは0.15〜99.85質量%である。したがって、前記の式(A)の脂肪酸アミド、または、式(A)の脂肪酸アミドの割合は、99.95〜0.05質量%、好ましくは99.9〜0.1質量%、より好ましくは99.85〜0.15質量%である。
【0104】
特に、(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物が、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)であって、m=n+1またはm=n−1である該脂肪酸アミドとの混合物であることが好ましい。
【0105】
具体的には、
式(A)が、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)であり、
式(A)が、cis−6,7−tetradecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=6=n−1に相当)、または、cis−8,9−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=8=n+1に相当)である組み合わせの混合物などが好ましく使用できる。
【0106】
また、(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物が、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数)であって、k=nである該脂肪酸アミドとの混合物であることが好ましい。
【0107】
具体的には、
式(A)が、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)であり、式(A)が、cis−13,14−docosenoamide〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=7=nに相当)である組み合わせの混合物などが好ましく使用できる。
【0108】
さらに、(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物としては、前記の式(A)の脂肪酸アミドに属し、nの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することができる。すなわち、(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と(A11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。)との混合物を使用することができる。
【0109】
具体的には、例えば、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)と、cis−10, 11−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(j=8に相当)との混合物などが好ましく使用できる。
【0110】
さらにまた、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物である(A)の不飽和脂肪酸アミドを、他の(A)の不飽和脂肪酸アミドとの混合物として使用することもできる。該他の(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、前記の式(A)〜(A)の脂肪酸アミドが好ましく用いられ、特に、式(A)の脂肪酸アミドが好ましい。具体的には、cis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH〕と、式(A)で表されるcis−9,10−octadecenoamideとの混合物などが好ましく使用できる。
【0111】
4.(A)の不飽和脂肪酸アミドの製造方法
本発明の合成樹脂製容器の底部の接地凸部に含有される(A)の不飽和脂肪酸アミドは、市販品を使用してもよいし、市販品が混合物であったり、不純物を含有する場合は、抽出等の操作により、所望の不飽和脂肪酸アミドを分離して得てもよい。また、例えば、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)は、以下の方法により製造することができるので、合成品として得てもよい。
【0112】
α,ω位にCHO−CO−末端基と水酸基末端またはカルボン酸末端とを有し、(m−1)連鎖のメチレン基(−CH−)m−1を有する以下の(式a)で表される化合物を出発原料とする。((式a)では、水酸基末端を有する化合物を例示している。)
【0113】
(式a)CHO−CO−(−CH−)m−1−OH
【0114】
(式a)で表される化合物の水酸基末端を、四臭化炭素(CBr)を用いて臭素置換し、次いで、トリフェニルフォスフィン(PPh,triphenylphosphine)を用いてシアン化メチル(CHCN)溶媒中で、臭素をPPhと反応させ、(式b)で表されるイオン性中間体を得る。
【0115】
(式b)[CHO−CO−(−CH−)m−1−PPh]+Br
【0116】
イオン性中間体(式b)に、デシルアルデヒド(decyl aldehyde)を反応させて、PPh基を不飽和cis構造の炭素二重結合を有するアルキル基末端とした(式c)で表されるα,ω構造化合物とする。
【0117】
(式c)CHO−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH
【0118】
次いで、(式c)のα,ω構造化合物のCHO−CO−末端基に水酸化リチウムを反応させて水酸基末端とし、これを塩化オキサリル(oxalyl chrolide)と塩化メチレンの溶媒中で飽和アンモニウムと反応させることでアミド基末端に変更し、以下の(式d)で表される不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド、すなわち、(A)の脂肪酸アミドを合成する。
【0119】
(式d)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH
【0120】
m(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)を変更することにより、この合成経路を用いて所望の炭素数を有する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを得ることができる。
【0121】
なお、不飽和炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの合成においては、周知のように、不飽和cis構造炭素二重結合を有する化合物と不飽和trans構造炭素二重結合を有する化合物とが同時に得られるので、酢酸エチルとヘキサンとを100質量%(初展開)〜40質量%の濃度勾配を付けた混合溶媒を用いて、クロマトグラフィー展開を行い、不飽和cis構造と不飽和trans構造の異性体を分離する。その際、あらかじめ、クロマトグラフィー展開時間毎の分画液に対して、プロトンH−NMR核磁気共鳴装置を使用して、化学シフト値に応じた同定をAldorich製標準物質を基に行い、分画液を特定する。その分画液を減圧乾燥して、所望する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを回収する。
【0122】
V.合成樹脂製容器の一体成形方法
本発明の合成樹脂製容器は、少なくとも口部、胴部及び自立した底部を備える、一体に成形された合成樹脂製容器が得られる限り、ブロー成形(延伸ブロー成形を含む。)、射出成形、フィルムまたはシートの折り曲げ及び接着、シートの真空成形及び/または圧空成形などによって様々な形状の容器を一体成形して製造することができる。例えば、あらかじめ製造した単層または多層のシートまたはフィルムの三方または四方をシールして、合成樹脂製包装容器を製造することができる。また、あらかじめ製造した単層または多層のシートまたはフィルムを、シート成形法(真空成形及び/または圧空成形)により、所要形状の一体に成形された単層または多層の合成樹脂製容器を製造することができる。
【0123】
これらの中でも、ブロー成形によって合成樹脂製多層容器を製造することが好ましく、多層のパリソン(以下、「多層パリソン」ということがある。)を、容器形状のキャビティ壁を備える割型内でブロー成形することによって、ブロー成形品である合成樹脂製多層容器を製造する。ブロー成形は、多層パリソンを製造した後、常温または室温に冷却しておき、ブロー成形を行うときに所定温度まで加熱するコールドパリソン方式によってもよいし、多層パリソンを製造し、続いてブロー成形を行うホットパリソン方式によってもよい。多層パリソンは、多層射出成形により製造することもできるが、溶融共押出によって筒状(以下、「管状」または「パイプ状」ということがある。)の多層パリソンを製造する方法が好ましく、共押出した多層のパリソンを続けてブロー成形するダイレクトブロー成形によって製造することが好ましい。以下、本発明の合成樹脂製多層容器をダイレクトブロー成形によって製造する場合について説明する。
【0124】
1.多層パリソンの製造
所定の多層構成を有する多層パリソンを共押出によって製造する方法としては、管状ダイを用いた共押出法、Tダイを用いた共押出法、インフレーション成形による共押出法などの方法が挙げられるが、いわゆるボトル形状の容器をブロー成形によって製造する場合は、管状ダイを用いた共押出法により筒状(パイプ状)の多層パリソンを製造することが好ましい。管状ダイを用いた共押出法で多層パリソンを製造する場合は、樹脂の種類に対応する数の押出機を使用し、各層に対応する樹脂をそれぞれ管状に展開しながら、ダイ通路内で溶融樹脂を積層体の順序となるように合流させる。表層である最内層と最外層が同種の樹脂からなる場合には、更に分岐チャンネルを経て、他の層を形成する樹脂原料等を挟み込むように分岐させ、その後、押出ダイ内で合流させ、管状形状のダイヘッドから所定の層構成に整列積層した状態で樹脂を押し出す。ダイヘッドの温度は通常120〜240℃であり、好ましくは130〜230℃、より好ましくは140〜220℃の範囲の温度を採用することができる。ダイオリフィスの形状としては、円形のほか偏平形状のものも使用可能である。管状ダイを用いた共押出法によれば、多層パリソンの肉厚の変更制御を比較的容易に行うことができる。
【0125】
なお、先に述べたように、多層パリソンを共射出成形によって製造することもできる。複数台の射出シリンダを備えた成形機を用いて、単一のパリソン用射出成形金型のキャビティ内に、一回の型締め動作で、1つのゲートから、溶融した表層(最外層及び/または最内層)を形成する樹脂組成物及び他の層を形成する樹脂材料を共射出して有底の多層パリソンを形成する。多層パリソンの底部の一部若しくは全部には、バリア層が存在していなくてもよい。一般に、底部の厚みは胴部の厚みに比べて大きいため、底部が実質的に熱可塑性樹脂組成物層だけでもバリア性を発揮することができる。胴部のみにバリア層を配置することにより、多層容器の機械的強度の低下を防ぐとともに、バリア層の厚みを均一に制御することが容易になる。
【0126】
2.ブロー成形
ブロー成形によってパリソンを成形する場合には、前記の方法で共押出した筒状のパリソンを、割金型で挟んで、下端を必要に応じて融着して塞ぐとともに、上端を切断した後、開口した上端から加圧流体を吹き込んで容器形状に成形した後、不要となる容器口部の上部(頭部または袋部)を切除して、ブロー成形によって製造される合成樹脂製容器を得る。該ブロー成形によって一体成形した容器の底部には、筒状のパリソンを、割金型で挟んで下端を融着して塞いだ痕跡として、ピンチオフ部がパーティングラインの一部として形成される。なお、射出成形によってパリソンを成形する場合には、成形容器の底部にゲート痕が形成される。
【0127】
ブロー成形用の割金型としては、鏡面仕上げのものでも、サンドブラスト加工したものでも使用でき、割金型の表面温度は一般に10〜50℃の範囲にあることが好ましい。また、ブロー成形用の流体としては、滅菌処理した空気を用いることが好ましく、その圧力は1.0〜15kg/cmの範囲にあるのが適当である。
【0128】
本発明の合成樹脂製容器は、ダイレクトブロー成形または延伸ブロー成形して製造することもできる。延伸ブロー成形工程では、パリソンを延伸可能な温度に調整した後、ブロー成形用金型のキャビティ内に挿入し、空気などの陽圧流体または加圧流体を吹き込んで延伸ブロー成形を行う。長さ方向の延伸を行うためには、延伸ロッドを使用してもよい。延伸ブロー成形は、ホットパリソン方式またはコールドパリソン方式のいずれかの方式により行うことができる。全延伸倍率は、通常6〜9倍、耐圧ボトルでは8〜9.5倍、耐熱ボトルでは6〜7.5倍、大型ボトルでは7〜8倍程度である。ダイレクトブロー成形工程では、パリソンを膨張可能な温度に調整した後、ブロー成形用金型のキャビティ内に挿入し、空気などの陽圧流体または加圧流体を吹き込んでダイレクトブロー成形を行う。ダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製容器における全膨張倍率は、通常6〜9倍、耐熱容器または耐熱ボトルでは6〜7.5倍、大型容器または大型ボトルでは7〜8倍程度である。
【0129】
内容物の熱充填に適した耐熱性の合成樹脂製多層容器を製造する場合には、熱充填時の容器の熱収縮・変形を防止するために、ブロー成形用金型の温度を100℃以上に昇温し、金型内で熱処理(熱固定)してもよい。金型温度は、100〜165℃であり、一般耐熱容器の場合は145〜155℃、高耐熱容器の場合には、160〜165℃の範囲とすることが好ましい。熱処理時間は、多層容器の厚みや熱処理温度により変動するが、通常1〜30秒間、好ましくは2〜20秒間である。
【0130】
VI.合成樹脂製容器のキャップ装着工程
本発明の合成樹脂製容器は、上記した合成樹脂製容器の成形工程に続いて、合成樹脂製容器の移送工程、ユーザーによる食品等の内容物充填工程、内容物充填後の移送工程、キャップ装着工程、更に容器包装工程などを経ることにより、最終製品が製造される。
【0131】
食品等の内容物充填工程からキャップ装着工程までについて、更に説明する。内容物充填工程において、食品等の内容物を、例えば、口部、肩部、胴部及び底部を有する一体に成形された合成樹脂製容器に充填し、必要に応じて熱処理及び冷却を行い、充填量等の検査を行った後に、該合成樹脂製容器の口部をシール材で密封して密封容器とする。次いで、内容物充填後の移送工程において、内容物が充填された該密封容器を整列させながら、キャップ装着装置まで移送し、キャップ装着工程において、キャップ装着装置が、該密封容器の口部にキャップを巻き締める。
【0132】
内容物充填後の移送工程とキャップ装着工程の具体的な方法及び装置について、図面に基づいて説明する。内容物が充填された密封容器は、図1に示すように、順次、複数の搬送ホイールからなる挿入ステーションに引き渡される。該密封容器は、重量(充填された内容物の重量の過不足を含む。)、寸法、密封性状(シール材の変形やシール操作の異常等を含む。)などにおいて、規格範囲を満たさないものが含まれていることがある。これら規格範囲を満たさない密封容器は、通常、挿入ステーションの前工程で排出されることがあるため、挿入ステーションには、密封容器が不連続に渡される。
【0133】
挿入ステーションにおける複数の搬送ホイール(図示では、3つの搬送ホイールがある。)は、図示しないセンサーを備える制御手段により、密封容器の不連続な並びを連続な並び、すなわち、等間隔の並びに整えるために、間欠回転しながら搬送ホイール間で、密封容器の受渡しを繰り返す。この繰り返しによって、密封容器は、連続的に、すなわち、等間隔に並んだ状態となって、キャッパーの前に置かれた受渡ホイールに渡される。
【0134】
受渡ホイールには、密封容器の底部を把持して案内する底部グリッパ(「袴グリッパ」ということもある。)が同一円周上(受渡ホイールの外方の円周上でよい。)に等間隔で複数備えられている。搬送ホイールから供給された密封容器は、図2に示すように、該底部グリッパで底部を把持され、連続な並び、すなわち、等間隔に並んだ状態で、キャップ装着装置のキャッパーホイールに供給される。
【0135】
キャッパーホイールには、密封容器の胴部を把持して案内する胴部グリッパ、及び/または密封容器の肩部を把持して案内する肩部グリッパが、同一円周上に等間隔で複数備えられている。前記の底部グリッパで底部を把持されて受渡しホイールから供給された密封容器は、底部グリッパによる把持が解除されるのとほぼ同時に、図2に示すように、該胴部グリッパ及び/または肩部グリッパで速やかに把持され、正立した状態で、キャッパーホイールの回転方向に案内される。キャッパーホイールに載置される密封容器の正立状態を助けるために、キャッパーホイールには、図示しない案内板や案内溝を備えることができる。
【0136】
キャッパーホイールは、胴部グリッパ及び/または肩部グリッパの上方に、密封容器にキャップを装着するためのキャップ装着装置(キャッパー)を、1つまたは複数備えている。キャッパーは、キャッパーホイールと同期して、同じ角速度で回転しつつ、キャップ供給装置(図示せず)が、密封容器の上方からキャップを供給し、キャップ巻き締め装置(図示せず)が、胴部グリッパ及び/または肩部グリッパで把持された密封容器の口部にキャップを巻き締めする。
【0137】
キャップが装着された密封容器は、底部グリッパと同じ作用をする取出しグリッパを備える第2の受渡しホイールに渡される。その後、密封容器は、所定の本数毎にキャップが装着された密封容器を包装するラッパー装置などを備える送出ステーションに渡される。
【0138】
VII.合成樹脂製容器の特性
本発明の、接地凸部が(A)の不飽和脂肪酸アミドを含有する合成樹脂からなることを特徴とする合成樹脂製容器が備える諸特性は以下のものである。
【0139】
〔キャップの斜め掛かり不良〕
キャップ装着工程におけるキャップの斜め掛かり不良が生じていないことの評価は、内容物が充填された密封容器を、キャップ装着工程に連続して5000本流して、該密封容器の口部にキャップを螺着することによって行う。キャップを螺着した密封容器について、光学センサーにより、キャップが正規の位置に固定されていない、キャップが傾斜している、キャップと容器の間に想定外の隙間があるなど、キャップの斜め掛かり不良に随伴して生じる現象を検知して、キャップの斜め掛かり不良の合成樹脂製容器を検出して計数する。なお、キャップ装着工程において、キャップを装着することができなかった密封容器も、キャップの斜め掛かり不良の合成樹脂製容器として計数する。キャップの斜め掛かり不良が検出された合成樹脂製容器の数が、百分率表示で0.1%未満(容器の数としては、4本以下)であるとき、キャップの斜め掛かり不良に関する評価を「○」とし、キャップの斜め掛かり不良が検出された合成樹脂製容器の数が、百分率表示で0.1%以上(容器の数としては、5本以上)であるとき、キャップの斜め掛かり不良に関する評価を「×」とする。
【0140】
〔底部滑り性〕
合成樹脂製容器の底部滑り性は、JIS K7125に準じる方法で測定した底部滑り摩擦係数によって評価することができる。具体的には、合成樹脂製容器に温度23℃の水を略満充填した後、低密度ポリエチレン(LDPE)を熱融着層に備えるシール材を、容器の口部に加熱溶着させて密封する。該容器をステンレス鋼(SUS404)の平板上に鉛直に正立させ、容器を引っ張るためのワイヤを容器の胴部に巻き回し、引張圧縮試験機を使用して、容器の胴部に取り付けたワイヤを、容器のパーティングライン方向に、速度50mm/分で約2cm、水平に引っ張ったときの最大引張荷重値を容器の底部摩擦抵抗値(荷重値)とする。試験を10回繰り返して、平均値を求める。底部摩擦抵抗値が小さいことが好ましく、例えば、容器の容積が500cm程度である場合は、底部摩擦抵抗値が150gf以下、好ましくは145gf以下、より好ましくは140gf以下であると、密封容器のキャップ装着工程において、容器が傾斜したとき、小さい力で正立状態に復帰しやすいので、キャップの斜め掛かり不良が防止される。
【0141】
また、該底部摩擦抵抗値を容器の総質量(容器、シール材及び水の合計質量)で割り算して、容器の底部滑り摩擦係数とする。試験を10回繰り返して、平均値を求める。底部滑り摩擦係数が、0.30以下であれば、底部滑り性が良好であるといえ、好ましくは0.295以下、より好ましくは0.29以下である。底部滑り性が良好であることにより、キャッピング工程におけるキャップの斜め掛かり不良が防止されるので、キャッピング工程の速度増加及び工程全体の速度増加が可能となるので、生産効率向上の観点から好ましい。
【0142】
〔胴部滑り性〕
合成樹脂製容器の胴部滑り性は、JIS K7125に準じる方法で測定することができる。具体的には、容器に温度23℃の水を略満充填した後、LDPEを熱融着層に備えるシール材を、容器の口部に加熱溶着させて密封する。該容器の口部は、該口部の外周部に蓋を螺着するための螺条を備えている。容器を引っ張るためのワイヤを蓋に固着し、次いで、蓋を容器の口部に螺着する。該容器を、ステンレス鋼(SUS404)の平板上に水平に横置きして、引張圧縮試験機を使用して、蓋に固着したワイヤを、速度50mm/分で約2cm水平に引っ張ったときの最大引張荷重値を容器の胴部摩擦抵抗値(荷重値)とし、該胴部摩擦抵抗値を容器の総質量(容器、シール材及び水の合計質量)で割り算して、容器の胴部滑り摩擦係数とする。試験を10回繰り返して、平均値を求める。胴部滑り摩擦係数が、0.40以下であれば、胴部滑り性が良好であるといえ、好ましくは0.38以下、より好ましくは0.36以下、特に好ましく0.30以下である。胴部滑り性が良好であることにより、合成樹脂製容器の移送や充填などの工程において、該合成樹脂製容器同士、または、該合成樹脂製容器と装置との接触等により、該合成樹脂製容器が転倒したり、その移送が滞ったりすることがなくなるので、好ましい。
【0143】
〔底部の安定性〕
合成樹脂製容器の底部の安定性は、正立させた水を充填した容器に手で揺動を加えたときの回復によって評価することができる。具体的には、合成樹脂製容器に温度23℃の水を略満充填した後、LDPEを熱融着層に備えるシール材を、容器の口部に加熱溶着させて密封する。この水を充填した合成樹脂製容器のパーティングライン方向に印を付けて、該容器を、ステンレス鋼(SUS404)の平板上に鉛直に正立させ、該容器のパーティングライン方向に、鉛直から(正立状態から)12°の角度に傾けて離し、容器の揺れが止まるまでの時間と、揺れが止まったときの容器のパーティングライン方向からの円周方向のずれ角度を測定する。試験を10回繰り返して、平均値を求める。容器の揺れが止まるまでの時間が、2.7秒間以下であれば、取出しグリッパが容器を安定して把持できるといえ、好ましくは2.6秒間以下、より好ましくは2.5秒間以下である。また、容器の円周方向のずれ角度が、5.0°以下であれば、安定性が良好であるといえ、好ましくは4.5°以下、より好ましくは4.0°以下である。底部の安定性が良好であることにより、キャッピング工程におけるキャップの斜め掛かり不良が防止されるので、キャッピング工程の速度増加及び工程全体の速度増加が可能となるので、生産効率向上の観点から好ましい。
【実施例】
【0144】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における樹脂原料及び容器の特性または物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0145】
〔密度及びMFR〕
合成樹脂の密度及びMFR(温度190℃、荷重21.18N)は、JIS K6922−2に従って測定した。
【0146】
〔結晶融点〕
合成樹脂の結晶融点は、JIS K7121に従って測定した。
【0147】
〔多分散度(Mw/Mn)〕
合成樹脂の分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn)は、JIS K7252に従って測定した。
【0148】
〔α−オレフィン含有率〕
チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体中のα−オレフィン含有率(質量%)は、日本電子株式会社製FT−NMRの270MHzの装置を使用して、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定した。
【0149】
〔キャップの斜め掛かり不良〕
キャップ装着工程におけるキャップの斜め掛かり不良が生じてないことの評価は、内容物が充填された密封容器を、キャップ装着工程に連続して5000本流して、該密封容器の口部にキャップを螺着することによって行った。キャップを螺着した密封容器について、光学センサーにより、キャップが正規の位置に固定されていない、キャップが傾斜している、キャップと容器の間に想定外の隙間があるなど、キャップの斜め掛かり不良に随伴して生じる現象を検知して、キャップの斜め掛かり不良の合成樹脂製容器を検出して計数した。なお、キャップ装着工程において、キャップを装着することができなかった密封容器も、キャップの斜め掛かり不良の合成樹脂製容器として計数した。キャップの斜め掛かり不良が検出された合成樹脂製容器の数が、百分率表示で0.1%未満(容器の数としては、4本以下)であるとき、キャップの斜め掛かり不良に関する評価を「○」とし、キャップの斜め掛かり不良が検出された合成樹脂製容器の数が、百分率表示で0.1%以上(容器の数としては、5本以上)であるとき、キャップの斜め掛かり不良に関する評価を「×」とした。
【0150】
〔胴部滑り性〕
合成樹脂製容器の胴部滑り性は、JIS K7125に準じる方法で測定した。具体的には、容器に温度23℃の水を満充填した後、LDPEを熱融着層に備えるシール材を、容器の口部に加熱溶着させて密封した。容器の総質量(容器、シール材及び水の合計質量)は、480gとなるようにした。この容器の口部は、該口部の外周部に蓋を螺着するための螺条を備えている。容器を引っ張るためのワイヤを蓋に固着し、次いで、蓋を容器の口部に螺着した。該容器を、ステンレス鋼(SUS404)の平板上に水平に横置きした。株式会社今田製作所製引張圧縮試験機(製品名SV50)を使用し、蓋に固着したワイヤを、速度50mm/分で約2cm水平に引っ張ったときの最大引張荷重値を求め、容器の総質量で割り算して、容器の胴部滑り摩擦係数とした。試験を10回繰り返して、平均値を求めた。
【0151】
〔底部滑り性〕
合成樹脂製容器の底部滑り性は、JIS K7125に準じる方法で測定した底部滑り摩擦係数によって評価した。具体的には、合成樹脂製容器に温度23℃の水を略満充填した後、LDPEを熱融着層に備えるシール材を、容器の口部に加熱溶着させて密封した。容器の総質量は、480gとなるようにした。該容器をステンレス鋼(SUS404)の平板上に鉛直に正立させ、容器を引っ張るためのワイヤを容器の胴部に巻き回し、株式会社今田製作所製引張圧縮試験機(製品名SV50)を使用して、容器の胴部に取り付けたワイヤを、容器のパーティングライン方向に、速度50mm/分で約2cm、水平に引っ張ったときの最大引張荷重値を底部摩擦抵抗値(荷重値)とした。また、該底部摩擦抵抗値を容器の総質量で割り算して、容器の底部滑り摩擦係数とした。試験を10回繰り返して、平均値を求めた。
【0152】
〔底部の安定性〕
合成樹脂製容器の底部の安定性は、正立させた水を充填した容器に手で揺動を加えたときの回復によって評価した。具体的には、前記の底部滑り性の試験に使用した水を充填し、口部を密封した合成樹脂製容器を試験用サンプルとした。この水を充填した合成樹脂製容器のパーティングライン方向に印を付けて、該容器を、ステンレス鋼(SUS404)の平板上に鉛直に正立させ、該容器のパーティングライン方向に、鉛直から(正立状態から)12°の角度に傾けて離し、容器の揺れが止まるまでの時間と、揺れが止まったときの容器のパーティングライン方向からの円周方向のずれ角度を測定した。試験を10回繰り返して、平均値を求めた。
【0153】
[実施例1〕
複数の押出機と多層ダイを用いて、層構成が、それぞれ以下の組成からなる最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層である筒状パリソンを押し出し、ロータリー式のダイレクトブロー成形機により、口部、胴部及び底部を一体成形した内容積が500cmである多層構成のダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製容器(以下、「多層容器」という。)を成形した。多層容器の質量は、20gであった。ブロー成形金型の内面には、容器の底部形状に対応する形状の刻設がされている。
【0154】
すなわち、底部金型は、全体が、長径75mm、短径45mmの楕円形状である。底部金型の中央部は、容器の凹部平面及び該凹部平面に設けられた半径方向に延び周方向に分離された底部リブに対応する形状に刻設されている。該中央部を連続して取り囲むように、接地補助部の形状に対応して、中心線が長径58mm、短径30mmの楕円形で、幅11mm深さ5mmの断面蒲鉾状の楕円帯状の刻設がされている。さらに、底部金型の該楕円帯状の刻設箇所には、該楕円中心線に内接する長辺40mm短辺21mmの長方形の4頂点の位置に、底面直径1mm深さ0.4mmの断面水滴形状の刻設がされている。
【0155】
この結果、ダイレクトブロー成形によって一体成形された多層容器の底部は、図4(a)の底面図に示す底部形状を有し、図4(b)の略断面図に示す断面形状を有する。該多層容器の表層(最外層)の表面部に、該容器の内方に凹む楕円形の底部凹面、該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む幅11mmの楕円形帯状の接地補助部、及び、該接地補助部から容器の外方に膨出する底面直径1mm高さ0.4mmの断面水滴形状の接地凸部を4個備えるものとなっていた。表層(最外層)の一部である隣接する接地凸部の距離は、d=40mm及びd=21mmであり、接地凸部の高さは、隣接する接地凸部間の2つの距離のうちの小さい方(d)の該距離21mmの1.9%である。また、底部中央には、パーティングラインに沿う方向に、長さ約28mmのピンチオフ部が形成されていた。
【0156】
(1)表層(最外層及び最内層)〔接地凸部の組成と同じである。〕:
合成樹脂として、低密度ポリエチレン〔住友化学株式会社製のスミカセン(登録商標);密度0.920g/cm、MFR(温度190℃、荷重21.18N)1.4g/10分〕を、また、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)として、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(99.0質量%)及びcis−8,9−octadecenoamide 〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(1.0質量%)の混合物を,低密度ポリエチレンに対して、1500ppmとなるように配合した。
【0157】
(2)バリア層:株式会社クラレ製の商品名エバール(登録商標)〔エチレン含有率が44モル%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体。密度1.140g/cm、MFR(温度190℃、荷重21.18N)1.7g/10分、結晶融点165℃〕
【0158】
(3)回収層:本実施例により製造した多層容器をダイレクトブロー成形する際に生じる容器の頭部(=袋部)を切除して、破砕機にてそれを粉末化した樹脂(回収樹脂)を原料とした。
【0159】
(4)接着層:三菱化学株式会社製の無水マレイン酸変性ポリオレフィン、商品名モディック(登録商標)
【0160】
(1)〜(4)の層の厚み比率は、75:4:20:1とした。成形された容器の胴部表面滑り摩擦係数(以下、「胴部滑り摩擦係数」という。)及びキャップの斜め掛かり不良の評価の結果(以下、「キャップの斜め掛かり不良評価」という。)を表1に示す。
【0161】
[実施例2〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕 (85.0質量%)及びcis−10,11−eicosenoamide 〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A11)の不飽和脂肪酸アミド〕(15.0質量%)の混合物に変更し、低密度ポリエチレンに対して、350ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0162】
[実施例3〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕 (98.0質量%)及びcis−13,14−docosenoamide 〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(2.0質量%) の混合物に変更し、低密度ポリエチレンに対して、3500ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0163】
[実施例4〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)〕(99.8質量%)及びcis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH〕;不飽和cis構造炭素二重結合を4結合有する脂肪酸アミド〕(0.2質量%)の混合物に変更し、低密度ポリエチレンに対して、130ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0164】
[実施例5〕
表層(最外層及び最内層)の組成、及び接地凸部の組成を、以下のとおり変更したことを除いて、実施例3と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0165】
表層は、合成樹脂を、チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体〔日本ポリエチレン株式会社製の商品名ノーブレン(登録商標);密度0.905g/cm、MFR(温度190℃、荷重21.18N)3.5g/10分、結晶融点132℃、多分散度(Mw/Mn)=3、α−オレフィン含有率=4質量%〕90質量%、及び、メタロセン触媒ブロック共重合体〔日本ポリエチレン株式会社製の商品名カーネル(登録商標);密度0.905g/cm、MFR(温度190℃、荷重21.18N)3.5g/10分、結晶融点97℃〕10質量%のブレンド物〔ただし、各々の質量%は、ブレンド物の合計を100質量%としたときの値である。〕とした。不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)は、cis−13,14−docosenoamide 〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(98.0質量%)及び cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(2.0質量%) の混合物であり、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)の合計量を、前記合成樹脂ブレンド物に対して、3500ppmとなるように配合した。
【0166】
[実施例6〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕 (95.0質量%)及びcis−13,14−docosenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(3.0質量%)の割合の混合物に変更し、更に飽和脂肪酸アミドであるbehenic acid amideを2.0質量%の割合で含有させ、これら不飽和脂肪酸アミドと飽和脂肪酸アミドとの合計含有量を、合成樹脂ブレンド物に対して、1000ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例5と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0167】
[実施例7〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕 (92.0質量%)及びcis−13,14−docosenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕 (3.0質量%)の割合の混合物に変更し、更に飽和脂肪酸アミドであるstearic acid amideを5.0質量%の割合で含有させ、これら不飽和脂肪酸アミドと飽和脂肪酸アミドとの合計含有量が、合成樹脂ブレンド物に対して、1000ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例5と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0168】
[実施例8〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕 (99.0質量%)及びcis−8,9−octadecenoamide 〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(1.0質量%)の混合物に変更し、合成樹脂ブレンド物に対して、400ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例5と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0169】
[実施例9〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)の混合物を、合成樹脂ブレンド物に対して、110ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例8と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0170】
[実施例10]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)〕 (85.0質量%)及びcis−10,11−eicosenoamide 〔式(A11)の不飽和脂肪酸アミド〕(15.0質量%)の混合物に変更し、合成樹脂ブレンド物に対して、350ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例5と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0171】
[比較例1]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、trans−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミドのtrans構造に相当する。〕 (単独使用)に変更した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例3と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0172】
[比較例2]
trans−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミドのtrans構造に相当する。〕 (単独使用)を、trans−9,10−octadecenoamide(98.0質量%)と飽和脂肪酸アミドであるstearic acid amide(2.0質量%)との混合物に変更し、これら不飽和脂肪酸アミドと飽和脂肪酸アミドとの合計含有量が3000ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、比較例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0173】
[比較例3]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)の混合物を、低密度ポリエチレンに対して、5000ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0174】
[比較例4]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)の混合物を、低密度ポリエチレンに対して、80ppmとなるように配合した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器の胴部滑り摩擦係数及びキャップの斜め掛かり不良評価を表1に示す。
【0175】
【表1】

【0176】
表1の結果から、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を110〜3500ppm含有する合成樹脂からなる表層及び底部の接地凸部を備える実施例1〜10の合成樹脂製容器は、底部の接地凸部によって、キャップ装着工程における容器の正立状態が維持されるので、いずれもキャップ装着工程においてキャップの斜め掛かり不良が生じていないことが分かった。さらに、胴部滑り摩擦係数が0.21〜0.38で、胴部表面の滑り性が良好であるので、合成樹脂製容器の移送や充填などの工程において、該合成樹脂製容器同士、または、該合成樹脂製容器と装置との接触等により、該合成樹脂製容器が転倒したり、その移送が滞ったりする懸念もなかった。
【0177】
これに対し、接地凸部並びに表層(最外層及び最内層)に、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)に代えて、不飽和trans構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有させた比較例1の合成樹脂製多層容器、及び、不飽和trans構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドとともに従来滑剤として知られる飽和脂肪酸アミドを含有する比較例2の合成樹脂製多層容器は、いずれもキャップ装着工程におけるキャップの斜め掛かり不良の発生頻度が高く、また、胴部滑り摩擦係数が0.44または0.43と大きく、ベタ付き感があり、滑り性が不足するものであった。
【0178】
また、接地凸部並びに表層(最外層及び最内層)が、本発明において使用する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有するものの、合成樹脂に対する含有量が100〜4000ppmの範囲より多い比較例3の合成樹脂製多層容器は、胴部表面の滑り性が良好であるものの、キャップ装着工程におけるキャップの斜め掛かり不良の発生頻度が高かった。さらに、合成樹脂に対する含有量が100〜4000ppmの範囲より少ない比較例4の合成樹脂製多層容器は、キャップ装着工程におけるキャップの斜め掛かり不良の発生頻度が高く、また、胴部滑り摩擦係数が0.41と大きく、ベタ付き感があり、滑り性が不足するものであった。
【0179】
[実施例11]
実施例1のダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製容器について、胴部滑り摩擦係数、底部摩擦抵抗値、底部滑り摩擦係数、揺れが止まるまでの時間(以下、「揺れ時間」という。)、及び、揺れが止まったときの容器のパーティングライン方向からの円周方向のずれ角度(以下、「ずれ角度」という。)を測定した。結果を表2に示す。
【0180】
[比較例5]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有しない低密度ポリエチレンを使用した表層の変更(及び接地凸部の変更)を除いて、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製容器を得て、胴部滑り摩擦係数、底部摩擦抵抗値、底部滑り摩擦係数、揺れ時間、及び、ずれ角度を測定した。結果を表2に示す。なお、比較例5の合成樹脂製多層容器についてのキャップの斜め掛かり不良の評価は「×」であった。
【0181】
【表2】

【0182】
表2の結果から、本発明の合成樹脂製容器である実施例11の多層容器は、揺れが止まるまでの時間(揺れ時間)が2.4秒間と短く、かつ、揺れが止まったときの容器のパーティングライン方向からの円周方向のずれ角度が3.9°と小さいことから、キャップ装着工程において、容器が傾斜しようとしたとき、短時間で正立状態に復帰し、かつ、円周方向のずれも小さいので、キャップの斜め掛かり不良が防止され、さらに、密封容器のターレット間の受渡における角度のずれも生じにくいことが分かった。これらの結果から、生産効率が優れることが推察された。また、その理由に関連して、実施例11の多層容器は、底部摩擦抵抗値が137gfと小さく、また、底部滑り摩擦係数が0.29と小さいため、キャップ装着工程において、容器が傾斜しようとしたとき、小さい力で正立状態に復帰しやすいからであることが分かった。
【0183】
これに対して、接地凸部が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有しない合成樹脂からなる比較例5の多層容器は、キャップの斜め掛かり不良の評価が「×」であり、揺れ時間が2.8秒間で、かつ、円周方向のずれ角度が6.7°と大きいことから、キャップ装着工程において、容器が傾斜しようとしたとき、短時間で正立状態に復帰しにくく、かつ、姿勢のずれが大きいので、正規の位置でキャップの装着を行うことができなくなる場合が多く、その結果、キャップの斜め掛かり不良が生じやすいことが分かった。さらに、密封容器のターレット間の受渡に際しても角度のずれが生じやすいので、生産効率が劣ることが推察された。その理由に関連しては、比較例5の多層容器は、底部摩擦抵抗値が153gfと大きく、また、底部滑り摩擦係数が0.32と大きいため、キャップ装着工程において、容器が傾斜しようとしたとき、小さい力では正立状態に復帰しにくいからであることが分かった。加えて、比較例5の多層容器は、胴部滑り摩擦係数が0.33と大きいので、合成樹脂製容器の移送や充填などの工程において、該合成樹脂製容器同士、または、該合成樹脂製容器と装置との接触等により、該合成樹脂製容器が転倒したり、その移送が滞ったりする懸念があることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明は、少なくとも口部、胴部及び底部を備える、一体に成形された合成樹脂製容器であって、該底部が、容器の内方に凹む底部凹面、該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む帯状の接地補助部、及び、該接地補助部から容器の外方に膨出する接地凸部を備え、かつ、該接地凸部が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する合成樹脂からなることを特徴とする前記の合成樹脂製容器であることによって、内容物の充填後に容器口部をシール材で密封した合成樹脂製容器のキャップ装着工程において、キャップの斜め掛かり不良が生じない合成樹脂製容器を提供することができる。したがって、高度かつ複雑な制御機能を備えた製造装置や検査装置の設置を要することなく、簡便な方法で、確実に合成樹脂製容器の正立姿勢を維持することができ、生産性向上を図ることができるので、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0185】
1 容器底部の輪郭
2 底部凹面
3、3’ 接地補助部
4 接地凸部
5 ピンチオフ部
a 帯状の接地補助部の幅
r 略円形帯状の接地補助部の中心半径
R 略円形底部の輪郭の半径
略楕円形底部の輪郭の長径
略楕円形底部の輪郭の短径
接地凸部間の距離
接地凸部間の距離
t 接地凸部の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも口部、胴部及び底部を備える、一体に成形された合成樹脂製容器であって、
該底部が、容器の内方に凹む底部凹面、該底部凹面より容器の外方にあり、該底部凹面を連続して囲む帯状の接地補助部、及び、該接地補助部から容器の外方に膨出する接地凸部を備え、かつ、
該接地凸部が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する合成樹脂からなることを特徴とする前記の合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記の接地凸部が、前記接地補助部に3〜10個設けられている請求項1記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記の接地凸部の前記接地補助部から容器の外方に膨出する高さが、隣接する接地凸部間の2つの距離のうちの小さい方の該距離の0.4〜5.0%である請求項1または2記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記の接地凸部の前記接地補助部から容器の外方に膨出する高さが、いずれも同一である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
前記の接地凸部が、合成樹脂製容器の表層の一部であり、
該合成樹脂製容器の表層が、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
前記の合成樹脂製容器の表層が、該合成樹脂製容器の最外層及び最内層である請求項5記載の合成樹脂製容器。
【請求項7】
前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、以下の(A)、(A)及び(A):
(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
(A)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドを含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項8】
前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、前記の(A)または(A)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である請求項7記載の合成樹脂製容器。
【請求項9】
前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるmが、m=n+1またはm=n−1である請求項8記載の合成樹脂製容器。
【請求項10】
前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるkが、k=nである請求項8記載の合成樹脂製容器。
【請求項11】
前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、以下の(A11):
(A11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。);
の式で表される脂肪酸アミドとの混合物である請求項8記載の合成樹脂製容器。
【請求項12】
前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物を含有する請求項1乃至11のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項13】
前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有する合成樹脂が、更に飽和脂肪酸アミドを含有する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項14】
更にバリア層を備える請求項1乃至13のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項15】
更に回収層を備える請求項1乃至14のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項16】
表層、バリア層、接着層、及び、回収層を備える請求項1乃至15のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項17】
最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層の層構成を有する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−35589(P2013−35589A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175182(P2011−175182)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】