説明

接地極付きコンセントの誤接続判別方法および接地極付きコンセントの誤接続判別試験器

【課題】TNシステムにおける接地極付きコンセントにコンセントプラグを差し込むだけで誤接続の判別試験を簡便に行える誤接続判別試験器を提供する。
【解決手段】モード切替スイッチ12がN−E誤接続判定モードにセットされた誤接続判別試験器1のコンセントプラグ11が試験対象のコンセントに差し込まれると、線路P,線路N,線路Eを介してコンセントのP相,N相,E極が計測制御手段14に接続され、短絡計測用スイッチ16aを閉成してP−N間に負荷インピーダンスZLを接続し、P−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNESを計測し、地絡計測用スイッチ16bを閉成してP−E間に負荷インピーダンスZLを接続して、P−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGを計測し、求めた短絡電流Isが地絡電流Igよりも大で無かった場合、N相とE極が誤接続されていると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホット相(P相)と中性相(N相)に加えて接地極(E極)を備えるコンセントに給電線路が正しく接続されているか誤接続されているかを判別する接地極付きコンセントの誤接続判別方法と、この誤接続判別方法を適用した誤接続判別試験器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、我国における配線システムは、給電側で接地し、負荷側においても大地に接地することで接地を施すTTシステムが主流であった。TTシステムにおいては、例えば、DMM(ディジタルマルチメータ)のような汎用測定器を用いて商用電源のニュートラルラインと、アースライン間の電圧を測定し、ほぼ0Vに近いことから地絡を確認し、誤接続がないことを判別するようにしていた。
【0003】
しかし、近来の配線システムでは、より安全を目指して、接地極も別に並行して配線するTNシステムが増加しつつある。TNシステムにおいては、中性相(N相)と接地極(E極)は、ほとんど0.05〜1Ω程度の非常に低い抵抗値であるため、コンセントの接地極にN相が接続される誤接続が生じていても、汎用の測定器では区別が困難である。
【0004】
しかも、昨今の電気工事においては、工期短縮要求による品質低下、品質管理不足といった要因から、TNシステムにおける接地極付きコンセントの誤接続、特に中性相(N相)と接地極(E極)を誤接続してしまう不具合例が多発している。誤接続の不具合が発生した場合、工事の手戻りとなり、大きなロスが発生するとともに、必然的に客先への信頼も低下することになってしまう。
【0005】
上記のようなN相とE極の誤接続を防止するために、コンセントへ試験信号を送出して、CTトランスで試験信号の検出を行い、その検出状態からN相とE極の誤接続や誤切断を判別するようにした発明が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−220180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の判別方法においては、コンセントへ試験信号を送出しなければならないため、活線状態での判別を行えないという問題がある。これに加えて、CTトランスをクランプさせる場所が試験器の設置場所から離れていると、一人で判別試験を行うのは困難であるし、二人以上で試験を行う場合でも、作業効率が良いとは言えない。
【0008】
以上のような問題点に鑑み、本発明は、TNシステムにおける接地極付きコンセントの誤接続を活線状態で簡便に判別できる誤接続判別方法と、接地極付きコンセントにコンセントプラグを差し込むだけで誤接続の判別試験を簡便に行える誤接続判別試験器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ホット相(P相)と中性相(N相)に加えて接地極(E極)を備えるコンセントに給電線路が正しく接続されているか誤接続されているかを判別する接地極付きコンセントの誤接続判別方法であって、P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して、P−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNESを計測し、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して、P−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGを計測し、少なくとも、P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続したときの短絡電流Isと、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続したときの地絡電流Igとを求め、短絡電流Isが地絡電流Igよりも大であるという判定条件を満たさないことに基づいて、N相とE極に誤接続があると判別するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の接地極付きコンセントの誤接続判別方法において、前記P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して計測したP−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNES、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して計測したP−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGに対して、各々定めた適正接続判定条件を満たすか否かを判定し、全て適正接続判定条件を満たすことに基づいて、N相とE極が正しく接続されていると判別するようにしたことを特徴とする。
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項3に係る発明は、ホット相(P相)と中性相(N相)に加えて接地極(E極)を備えるコンセントに給電線路が正しく接続されているか誤接続されているかを判別する接地極付きコンセントの誤接続判別試験器であって、P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して、P−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNESを計測する短絡計測手段と、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して、P−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGを計測する地絡計測手段と、前記P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続したときの短絡電流Isと、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続したときの地絡電流Igとを求める判定値取得手段と、前記判定値取得手段により求めた短絡電流Isが地絡電流Igよりも大であるという判定条件を満たさないことに基づいて、N相とE極に誤接続があると判別する誤接続判別手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、前記請求項3に記載の接地極付きコンセントの誤接続判別試験器において、前記誤接続判別手段は、短絡電流Isが地絡電流Igよりも大であって、尚且つ、前記短絡計測手段により計測したP−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNES、前記地絡計測手段により計測したP−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGに対して、各々定めた適正接続判定条件を満たすことに基づいて、N相とE極が正しく接続されていると判別するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、前記請求項3又は請求項4に記載の接地極付きコンセントの誤接続判別試験器において、P相とN相との間の給電状態を取得するP−N間給電状態取得手段と、P相とE極との間の給電状態を取得するP−E間給電状態取得手段と、N相とE極との間の給電状態を取得するN−E間給電状態取得手段と、を備え、前記誤接続判別手段は、前記P−N間給電状態取得手段とP−E間給電状態取得手段とN−E間給電状態取得手段の取得結果に基づいて、P相とN相の誤接続およびP相とE極の誤接続を判別するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る接地極付きコンセントの誤接続判別方法によれば、N相とE極に誤接続があることを活線状態で簡便に判別することができる。
【0015】
また、請求項2に係る接地極付きコンセントの誤接続判別方法によれば、P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して計測したP−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNES、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して計測したP−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGに対して、各々定めた適正接続判定条件を満たすか否かを判定し、全て適正接続判定条件を満たすことに基づいて、N相とE極が正しく接続されていると判別するので、これら適正接続判定条件を満たす各値から求められるP−N間の故障ループインピーダンスZsが、過電流時に過電流継電器が確実に動作するように充分低いことが確認できると共に、P−E間のループインピーダンス及びN−E間のループインピーダンスから接地抵抗が充分低い状態にあることも確認できるので、極めて信頼性の高い接続判定を実現できる。
【0016】
請求項3に係る接地極付きコンセントの誤接続判別試験器によれば、N相とE極に誤接続があることを活線状態で簡便に判別することができる。しかも、判定すべきコンセントの場所にて、一人だけで判別試験を行えるので、作業効率も良い。
【0017】
また、請求項4に係る接地極付きコンセントの誤接続判別試験器によれば、誤接続判別手段は、短絡電流Isが地絡電流Igよりも大であって、尚且つ、前記短絡計測手段により計測したP−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNES、前記地絡計測手段により計測したP−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGに対して、各々定めた適正接続判定条件を満たすことに基づいて、N相とE極が正しく接続されていると判別するようにしたので、極めて信頼性の高い接続判定を実現できる。
【0018】
また、請求項5に係る接地極付きコンセントの誤接続判別試験器によれば、P相とN相との間の給電状態を取得するP−N間給電状態取得手段と、P相とE極との間の給電状態を取得するP−E間給電状態取得手段と、N相とE極との間の給電状態を取得するN−E間給電状態取得手段と、を備え、前記誤接続判別手段は、前記P−N間給電状態取得手段とP−E間給電状態取得手段とN−E間給電状態取得手段の取得結果に基づいて、P相とN相の誤接続およびP相とE極の誤接続を判別するようにしたので、P相とN相の誤接続、P相とE極の誤接続も同時に判別でき、P相,N相,E極の全ての誤接続及び断線を判定可能な、極めて実用性の高い試験器となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る接地極付きコンセントの誤接続判別方法を適用した誤接続判別試験器1の概略構成を示すもので、この誤接続判別試験器1は、TNシステムにおける接地極付きコンセントに対応したコンセントプラグ11を備え、電力線路のP相,N相,E極と接続して使用するものである。
【0020】
コンセントプラグ11の各差込刃は、夫々ホット相(P相),中性相(N相),接地極(E極)とコンタクトするもので、各接続線は、モード切替スイッチ12によって2分岐し、一方は通常試験モードにて用い、他方はN−E誤接続判定モードにて用いる。このモード切替スイッチ12は、標準で通常試験モード(図1中、実線で示す状態)にセットされているものとし、コンセントプラグ11を試験対象のコンセントに差し込むと、先ず通常試験が実行される。
【0021】
上記モード切替スイッチ12の通常試験モードにて導通する線路Pは、P−E間給電状態表示手段13aとP−N間給電状態表示手段13bに、線路NはP−N間給電状態表示手段13bと誤配線表示手段13cに、線路EはP−E間給電状態表示手段13aと誤配線表示手段13cに各々接続される。
【0022】
上記P−E間給電状態表示手段13aは、P相とE極との間の給電状態を取得するP−E間給電状態取得手段として機能するもので、PとEを2入力とする演算増幅器に商用交流(50Hzまたは60Hzの交流100V)が印加されると、演算増幅器の出力によってP−E間給電状態表示LEDが点灯する。
【0023】
上記P−N間給電状態表示手段13bは、P相とN相との間の給電状態を取得するP−N間給電状態取得手段として機能するもので、PとEを2入力とする演算増幅器に商用交流(50Hzまたは60Hzの交流100V)が印加されると、演算増幅器の出力によってP−N間給電状態表示LEDが点灯する。
【0024】
上記誤配線表示手段13cは、N相とE極との間の給電状態を取得するN−E間給電状態取得手段として機能するもので、NとEを2入力とする演算増幅器に商用交流(50Hzまたは60Hzの交流100V)が印加されると、演算増幅器の出力によって誤配線表示LEDが点灯する。
【0025】
そして、P−E間給電状態表示LEDとP−N間給電状態表示LEDと誤配線表示LEDの点灯・消灯の組合せにより、表1に示す如く、配線状態の適否を知ることができるのである。
【0026】
【表1】

【0027】
すなわち、P−E間給電状態表示LEDとP−N間給電状態表示LEDが点灯し、誤配線表示LEDが消灯であれば、正常接続と判定でき、全LEDが消灯であれば、P相が未接続であると判定でき、P−E間給電状態表示LEDが消灯でP−N間給電状態表示LEDと誤配線表示LEDが点灯であれば、E極が未接続あるいはP相とN相が逆接続であると判定でき、P−E間給電状態表示LEDと誤配線表示LEDが点灯でP−N間給電状態表示LEDが消灯であれば、N相が未接続あるいはP相とE極が逆接続であると判定できる。
【0028】
しかしながら、N相とE極が逆接続されていた場合には、P−E間給電状態表示LEDとP−N間給電状態表示LEDが点灯で誤配線表示LEDが消灯P−N間給電状態表示LEDが点灯となり、正常接続と判別できない。
【0029】
そこで、P−E間給電状態表示LEDとP−N間給電状態表示LEDと誤配線表示LEDの点灯・消灯状態から、正常接続と判定された場合には、モード切替スイッチ12によってN−E誤接続判定モード(図1中、破線で示す状態)に切り替え、N相とE極が逆接続になっていないかを試験する。
【0030】
上記モード切替スイッチ12がN−E誤接続判定モードにて導通する線路P,線路N,線路Eは、計測制御手段14に接続され、P−E間電圧,P−N間電圧,N−E間電圧を計測すると共に、この計測したアナログ値をディジタル値に変換し、計測値に基づいて後述する演算を行い、演算結果が所定の判定基準を満たすか否かに基づいて、N相とE極の正常接続あるいは誤接続を判定する。
【0031】
なお、判定結果は、表示用ディスプレイや表示ランプ等を備える入出力手段15によって使用者へ視覚的に報知する。また、入出力手段15がスピーカを備えていれば、音声出力による聴覚報知を行っても良い。また、入出力手段15は、誤接続判別試験器1の使用者が操作入力するための各種ボタンや操作パネルを備えるもので、この入出力手段15から試験モードの切替が指示されたときに、計測制御手段14によってモード切替スイッチ12のスイッチングが行われるようにしたり、判別試験に際しての判定条件となる各種パラメータを入力する機能を有している。
【0032】
N−E誤接続判定試験に際して、計測制御手段14は、短絡計測用スイッチ16aをONすることで、値が既知の負荷インピーダンスZL1を線路Pと線路Nの間に接続して行う短絡計測と、地絡計測用スイッチ16bをONすることで、値が既知の負荷インピーダンスZL2を線路Pと線路Eの間に接続して行う地絡計測を行う。なお、短絡計測用の負荷インピーダンスZL1と地絡計測用の負荷インピーダンスZL2を別々に設けず、一つの負荷インピーダンスZLを短絡計測と地絡計測で共用できるように、線路Pに一端が接続された負荷インピーダンスZLの他端接続先を線路Nと線路Eと開放の3点で切り替えるような構成としても構わない。
【0033】
例えば、図2(a)、図3(a)に示すように、電源トランス2によって100Vが給電される電源路のP相がコンセント3のP端子3aに、電源路のN相がコンセント3のN端子3bに、保護用接地線のE極がコンセント3のE端子3cに、各々接続されているとき、誤接続判別試験器1のコンセントプラグ11をコンセント3に差し込むと、P相が誤接続判別試験器1内の線路Pに、N相が誤接続判別試験器1内の線路Nに、E極が誤接続判別試験器1内の線路Eに各々導通するので、線路PをP相、線路NをN相、線路EをE極と看做すことができ、誤接続判別試験器1内の負荷インピーダンスZL1を線路Pと線路Nとの間に接続することで短絡計測を、誤接続判別試験器1内の負荷インピーダンスZL2を線路Pと線路Eとの間に接続することで地絡計測を行うことができる。
【0034】
すなわち、誤試験判別試験器1は、P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZL1を接続して、P−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNESを計測する短絡計測手段と、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZL2を接続して、P−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGを計測する地絡計測手段と、を備えるものである。
【0035】
先ず、P−N間に負荷インピーダンスZL1を接続して行う短絡計測における等価回路は、図2(b)に示すようになり、電源トランス2による供給電圧をVP、P−N間の合計インピーダンスをZSとすると、短絡電流ISを以下のように求めることができる。なお、短絡計測用スイッチ16aが開いているとき、P−N間の電圧VPNは供給電圧VPに等しいので、VP=VPNとして、予め計測しておく。
【0036】
図2(b)の等価回路のように、給電電圧VPは、P−N間合計インピーダンスZSと負荷インピーダンスZL1により分圧されるので、短絡時のP−N間電圧であるVPNSは、式1により求まる。
【0037】
PNS=ZL1/(ZS+ZL1)×VP …式1
【0038】
式1において、VPNSは計測結果として得られ、ZL1は既知であるから、P−N間合計インピーダンスZSは、式2により求まる。
【0039】
S=ZL1×(VP−VPNS)/VPNS …式2
【0040】
そして、P−N間合計インピーダンスZSが求まれば、短絡電流ISは、式3により求めることができる。
【0041】
S=VP/ZS …式3
【0042】
次に、P−E間に負荷インピーダンスZL2を接続して行う地絡計測における等価回路は、図3(b)に示すようになり、地絡電流Igを以下のように求めることができる。なお、地絡計測用スイッチ16bが開いているとき、P−E間の電圧VPEは供給電圧VPに等しいので、VP=VPEとして、予め計測しておく。
【0043】
また、P−E間合計インピーダンスZgは、P−N間合計インピーダンスZSと接地側インピーダンスZEの和として求まる。
【0044】
g=ZS+ZE …式4
【0045】
図3(b)の等価回路のように、供給電圧VPは、P−N間合計インピーダンスZSと接地側インピーダンスZEと負荷インピーダンスZL2により分圧されるので、短絡時のP−E間電圧であるVPEGは、式5により求まる。
【0046】
PEG=ZL2/(ZS+ZE+ZL2)×VP …式5
【0047】
式5において、VPEGは測定結果として得られ、ZL2は既知であるから、P−E間合計インピーダンスZgは、式6により求まる。
【0048】
g=ZS+ZE=ZL2×(VP−VPEG)/VPEG …式6
【0049】
そして、P−N間合計インピーダンスZgが求まれば、地絡電流Igは、式7により求めることができる。
【0050】
g=VP/Zg …式7
【0051】
このように算出した短絡電流IS,地絡電流Ig、短絡計測にて実測したP−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNES、地絡計測にて実測したP−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGに対して、表2に示す判定基準を適用し、この適用条件を満たすか否かで誤接続の有無を判別する。
【0052】
【表2】

【0053】
この判定条件において、短絡電流IS>地絡電流Igという条件は、P−E間合計インピーダンスZg>P−N間合計インピーダンスZSという給電回路における前提条件から必然的に成立するものである。すなわち、接地側インピーダンスZEは、接地抵抗+N−E間の配線の抵抗であり、通常0.05Ω〜100Ω程度の値であるもの、確実に存在する有限の値であるから、短絡電流IS≦地絡電流Igであった場合には、N−E間に誤配線があると判定できるのである。
【0054】
すなわち、計測制御手段14が、P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZL1を接続したときの短絡電流Isと、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZL2を接続したときの地絡電流Igとを求める判定値取得手段と、前記判定値取得手段により求めた短絡電流Isが地絡電流Igよりも大であるという判定条件を満たさないことに基づいて、N相とE極に誤接続があると判別する誤接続判別手段としての機能を備えることで、N−E誤接続判定モードでの的確な誤接続の判定を実現できるのである。
【0055】
このように、本実施形態の誤接続判別試験器1を用いてコンセント3の誤接続判別試験を行えば、P相,N相,E極の全ての誤接続及び断線を、瞬時に判定できる。しかも、誤接続判別試験器1による誤接続判別試験の操作は一人で簡便に行えるものであるから、旧来の如く複数人で協働して検査を行うような煩雑さが無いので、効率良くコンセントの試験を行うことができる。これにより、電気工事の工期短縮に寄与できるし、安全と信頼性確保にも貢献できる。
【0056】
なお、N−E間の誤接続の判定条件である「短絡電流IS≦地絡電流Ig」は、実質的に「P−E間合計インピーダンスZg≦P−N間合計インピーダンスZS」であるから、これをN−E間の誤接続の判定条件として用いても良い。また、計測制御手段14による演算過程で、P−N間の故障ループインピーダンスに等しいP−N間合計インピーダンスZsが求まるので、過電流時に過電流継電器が確実に動作するように充分低いインピーダンスに抑制されているか確認できる。加えて、計測制御手段14による演算過程で、アースループインピーダンスに等しいP−E間合計インピーダンスZgも求まるので、接地抵抗が充分低い状態にあるかも確認できる。
【0057】
また、N−E間の誤接続の判定に際しては、表2に示した判定条件の全て満たすことで適正接続状態であると判定したり、或いは幾つかの判定条件を適宜に組み合わせて適正接続状態の判定に用いることで、一層、信頼性の高い誤接続判定を行うことが可能となる。例えば、ノイズ等の混入による計測誤差に起因して、N−E間が誤接続されているにもかかわらず「短絡電流IS>地絡電流Ig」を満たす判定値が算出された場合に、他の計測値が判定条件を満たさないことで、適正接続状態ではないと判別できれば、誤接続判別試験器1としての信頼性を高められるのである。
【0058】
表2に示す判定条件として、コンセント3に誤接続が無い場合の短絡計測においては、P−N間電圧VPNS≒0、50≦P−E間電圧VPES≦100、0≦N−E間電圧VNES≦50、地絡計測においては、P−N間電圧VPNG≒100V、P−E間電圧VPEG≒0V、N−E間電圧VNEG≒100Vを例示した。これらの条件は、検査対象である給電系の給電電圧等によって変わるので、判定用のパラメータを適宜変更できるようにしておくと、汎用性の高いものとなる。
【0059】
ここで、N相とE極が誤接続されたコンセント3′を誤接続判別試験器1にて試験する場合を図4に基づき説明する。
【0060】
このように誤接続されていると、図4(a)に示す短絡計測時には、P−N間電圧VPNSとしてP−E間電圧VPESが計測され、逆にP−E間電圧VPESの値としてP−N間電圧VPNSが計測されるので、上述した判定条件を満たさないことが明らかである。
【0061】
同様に、図4(b)に示す地絡計測時には、P−E間電圧VPEGとしてP−N間電圧VPNGが計測され、逆にP−N間電圧VPNGとしてP−E間電圧VPEGが計測されるので、上述した判定条件を満たさないことが明らかである。
【0062】
このように、短絡電流Isや地絡電流Igの算出には不要でも、短絡計測時のP−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNES、地絡計測時のP−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGについて、夫々計測結果を計測制御手段14が記憶しておき、更なる適正接続判定条件を満たすか否かの判別に用いるようにすれば、極めて信頼性の高い誤接続あるいは適正接続の判定を行うことができる。
【0063】
また、計測制御手段14による計測結果を履歴として保存する計測結果記憶手段を設けておくと共に、この計測結果を外部へ出力する機能を設けておけば、誤接続判別試験器1の計測結果を外部のコンピュータに取り込んで、より詳細な記録・解析を行うようにしても良い。
【0064】
以上、本発明に係る接地極付きコンセントの誤接続判別方法および接地極付きコンセントの誤接続判別試験器の実施形態を説明したが、本発明の包摂範囲は、この実施形態に限定されるものではない。例えば、前述した誤接続判別試験器1の如く、モード切替スイッチ12を設けて判別試験のモード切替を行わず、コンセントプラグ11を試験対象のコンセントに接続すると直ぐに通常試験が実行されるように、P−E間給電状態表示手段13a,P−N間給電状態表示手段13b,誤配線表示手段13cの各接続ラインを、N−E誤接続判定用の線路P,N,Eと並列に接続しても良い。このとき、P−E間給電状態表示手段13a,P−N間給電状態表示手段13b,誤配線表示手段13cの各入力インピーダンスは、N−E誤接続判定試験用の負荷インピーダンスZL1,ZL2に比べて十分大きな値であることから、そのまま計測制御手段14によってN−E誤接続判定試験が実行されても、判定精度に及ぼす影響は無視できる。或いは、P−E間およびP−N間の誤接続を判別する通常試験を行うためのP−E間給電状態表示手段13a,P−N間給電状態表示手段13b,誤配線表示手段13cを設けないで、N相とE極の誤接続の判別を行う機能のみを搭載したN−E誤接続判別試験器としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る誤接続判別試験器の概略構成図である。
【図2】誤接続判別試験器による短絡計測説明図である。
【図3】誤接続判別試験器による地絡計測説明図である。
【図4】N相とE極が誤接続されたコンセントを誤接続判別試験器により試験する際の計測説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 誤接続判別試験器
11 コンセントプラグ
12 モード切替スイッチ
13a P−E間給電状態表示手段
13b P−N間給電状態表示手段
13c 誤配線表示手段
14 計測制御手段
15 入出力手段
16a 短絡計測用スイッチ
16b 地絡計測用スイッチ
2 電源トランス
3 コンセント
3a P端子
3b N端子
3c E端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホット相(P相)と中性相(N相)に加えて接地極(E極)を備えるコンセントに給電線路が正しく接続されているか誤接続されているかを判別する接地極付きコンセントの誤接続判別方法であって、
P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して、P−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNESを計測し、
P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して、P−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGを計測し、
少なくとも、P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続したときの短絡電流Isと、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続したときの地絡電流Igとを求め、短絡電流Isが地絡電流Igよりも大であるという判定条件を満たさないことに基づいて、N相とE極に誤接続があると判別するようにしたことを特徴とする接地極付きコンセントの誤接続判別方法。
【請求項2】
前記P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して計測したP−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNES、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して計測したP−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGに対して、各々定めた適正接続判定条件を満たすか否かを判定し、全て適正接続判定条件を満たすことに基づいて、N相とE極が正しく接続されていると判別するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の接地極付きコンセントの誤接続判別方法。
【請求項3】
ホット相(P相)と中性相(N相)に加えて接地極(E極)を備えるコンセントに給電線路が正しく接続されているか誤接続されているかを判別する接地極付きコンセントの誤接続判別試験器であって、
P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して、P−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNESを計測する短絡計測手段と、
P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続して、P−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGを計測する地絡計測手段と、
前記P相とN相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続したときの短絡電流Isと、P相とE相との間に既知の負荷インピーダンスZLを接続したときの地絡電流Igとを求める判定値取得手段と、
前記判定値取得手段により求めた短絡電流Isが地絡電流Igよりも大であるという判定条件を満たさないことに基づいて、N相とE極に誤接続があると判別する誤接続判別手段と、
を備えることを特徴とする接地極付きコンセントの誤接続判別試験器。
【請求項4】
前記誤接続判別手段は、短絡電流Isが地絡電流Igよりも大であって、尚且つ、前記短絡計測手段により計測したP−N間電圧VPNS,P−E間電圧VPES,N−E間電圧VNES、前記地絡計測手段により計測したP−N間電圧VPNG,P−E間電圧VPEG,N−E間電圧VNEGに対して、各々定めた適正接続判定条件を満たすことに基づいて、N相とE極が正しく接続されていると判別するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の接地極付きコンセントの誤接続判別試験器。
【請求項5】
P相とN相との間の給電状態を取得するP−N間給電状態取得手段と、
P相とE極との間の給電状態を取得するP−E間給電状態取得手段と、
N相とE極との間の給電状態を取得するN−E間給電状態取得手段と、
を備え、
前記誤接続判別手段は、前記P−N間給電状態取得手段とP−E間給電状態取得手段とN−E間給電状態取得手段の取得結果に基づいて、P相とN相の誤接続およびP相とE極の誤接続を判別するようにしたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の接地極付きコンセントの誤接続判別試験器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−278751(P2007−278751A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103054(P2006−103054)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(390025623)共立電気計器株式會社 (7)
【Fターム(参考)】