説明

接点と半田付け端子を有する電子部品及びその表面処理方法

【課題】接点と半田付け端子を有する電子部品の表面処理方法において、電子部品を回路基板に半田付け実装する時に、接点方向への半田吸い上がりを防止すると共に、耐腐食性能の向上と低コスト化を図る。
【解決手段】金属板の一端に接点部を、他端に回路基板に半田付け実装される端子部を有する電子部品の表面処理方法において、金属板を下地ニッケルめっき処理する工程と(S1)、下地めっき処理された金属板の表層に、接点部と端子部は厚い皮膜となり、それ以外の部分は薄い皮膜となるように貴金属めっき層を形成する工程と(S2)、均一に熱処理を施すことにより、めっき皮膜厚み差を利用して選択的に薄い貴金属めっき層の表層に下地ニッケル拡散により、半田バリアとなる酸化膜を成膜する工程と(S3)を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ等として使用される、接点と半田付け端子を有するコンタクト等の電子部品及びその表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回路基板の表面にコンタクト等の電子部品の端子を半田付で接続する場合に、部品の小形化につれて、半田が端子を駆け上がり易くなり、その部品の機能や性能を損なうことが発生する。電子部品の接点に半田が付着すると、接続信頼性を損なうことになる。そこで、半田の駆け上がり防止策として、電子部品の端子近傍の表面に酸化膜を設けて半田に対する濡れ性を小さくし、回路基板から駆け上ってきた半田を酸化膜で停止させ(半田バリアと称される)、接点部に至ることがないようにしたものがある。ここに、端子近傍の表面に酸化膜を形成するために、レーザ光線等を部分的に照射する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−213070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記公報に示される方法においては、半田バリア性は確保されるが、酸化膜形成のために部分的に加熱するために、耐腐食性が低下する問題があった。また、レーザ光線装置を用いる場合、コスト高となっていた。
【0004】
本発明は、上記問題を解消するものであり、電子部品を回路基板に半田付け実装する時に、接点方向への半田吸い上がりを防止すると共に、耐腐食性能の向上と低コスト化を図った、接点と半田付け端子を有する電子部品の表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述目的を達成するため、請求項1の発明は、金属板を加工することにより形成され、一端に接点部を、他端に回路基板に半田付け実装される端子部を有する電子部品の表面処理方法において、金属板を下地ニッケルめっき処理する工程と、下地めっき処理された金属板の表層に、接点部と端子部は厚い皮膜となり、それ以外の部分は薄い皮膜となるように貴金属めっき層を形成する工程と、均一に熱処理を施すことにより、めっき皮膜厚み差を利用して選択的に薄い貴金属めっき層の表層に下地ニッケル拡散により、半田バリアとなる酸化膜を成膜する工程と、を備えたものである。
【0006】
この方法においては、接点部と半田付け端子部には厚い皮膜の貴金属めっき層が電着し、それ以外の部分には薄い貴金属めっき層が電着する。このような、貴金属めっき厚み差が存在するので、均一に熱処理を実施すると、表層の皮膜が薄い部分には下地ニッケル拡散による酸化膜が成膜するが、接点部と半田付け端子部は表層の皮膜が分厚いため、酸化膜が析出しない。これにより、接点部と半田付け端子部は半田濡れが良好であるが、それ以外の部位は半田バリアとなる。また、こうして熱酸化により生成した酸化膜は、腐食電流を絶縁するため、耐腐食性の抑制にも有効となる。
【0007】
また、請求項2の発明は、前記の酸化膜成膜工程において、熱処理を施すことに代えて、化学酸化剤に接触させることにより、選択的に薄い貴金属めっき層の表層に酸化膜を成膜するものである。この方法においても、前記と同等の作用が得られる。また、化学酸化剤により生成した酸化膜は、腐食電流を絶縁するため、耐腐食性の強化にも有効となる。
【0008】
また、請求項3の発明は、前記の下地ニッケルめっき処理工程において、めっき皮膜が酸化され易くなるためのニッケルめっき添加剤を含有した浴中でニッケルめっき処理するものである。この方法においても、前記と同等の作用が得られると共に、ニッケルめっきに添加する添加剤の種類を適正な種類を選択することで、その添加剤により析出するニッケルめっき粒子径のサイズが小さくなり、より表面にニッケルが拡散し易くなる。
【0009】
また、請求項4の発明は、前記の酸化膜成膜工程における均一な熱処理としてプラズマ処理を用いるものである。この方法において、プラズマ処理により生成した酸化膜は、腐食電流を絶縁するため、耐腐食性の強化にも有効となる。
【0010】
また、請求項5の発明は、前記の下地ニッケルめっき処理工程において、下地ニッケル層と、その表層に下地パラジウム−ニッケル層とを形成し、前記の酸化膜成膜工程において、下地パラジウム−ニッケルの拡散により酸化膜を成膜するものである。この方法においては、下地にパラジウム合金層を使用していることより、より耐腐食性が強化される。
【0011】
また、請求項6の発明は、前記の下地ニッケルめっき処理工程において、下地ニッケル−リン層を形成し、前記の酸化膜成膜工程において、下地ニッケル−リンの拡散により酸化膜を成膜するものである。この方法においては、下地ニッケル層へリンを導入し合金層としていることから、より耐腐食性が強化される。
【0012】
また、請求項7の発明は、上記下地ニッケルめっき処理工程において、下地ニッケル−リン層の下地にニッケル層を形成しているものである。この方法においては、ニッケル−リン層は半田付け強度がニッケル層と比較すると劣るが、ニッケル−リン層下地にニッケルを配置することで、半田付け強度を確保し、また、ニッケル−リン合金層はそのめっき液の性質上、生産性を向上できないが、ニッケルめっき層を下地に厚くめっきすることで生産性を向上できる。
【0013】
また、請求項8の発明は、前記の下地ニッケルめっき処理工程において、硫黄を含有しない下地ニッケル層を形成し、前記の酸化膜成膜工程において、硫黄を含有しない下地ニッケルの拡散により酸化膜を成膜するものである。この方法においては、下地ニッケル層が硫黄を含有しないことより、より耐腐食性が強化される。
【0014】
また、請求項9の発明は、前記の接点部が狭ピッチコネクタ用の接点であり、前記の端子部が回路基板にSMD実装されているものである。この方法においては、SMD実装を行う狭ピッチコネクタの実装時に、半田バリア性確保と耐腐食性向上が得られる。
【0015】
また、請求項10の発明は、金属板を加工することにより形成され、一端に接点部を、他端に回路基板に半田付け実装される端子部を有する電子部品の表面処理方法において、金属板を下地ニッケルめっき処理する工程と、下地めっき処理された金属板の表層に、接点部は厚い皮膜となり、それ以外の端子部を含む部分は極薄皮膜となるように、それぞれ異なる電着条件で貴金属めっき層を形成する工程と、めっき皮膜厚み差を利用して選択的に極薄貴金属めっき層の表層に下地ニッケル拡散により、半田バリアとなる酸化膜を成膜する工程と、を備えたものである。この方法においては、例えば、接点部分は通常の貴金属めっき液にて厚膜めっきするが、端子部分は極薄貴金属めっき液にて極薄めっきを行うことで、端子部分での半田バリア作用を高めることができる。
【0016】
また、請求項11の発明は、金属板を加工することにより形成され、一端に接点部を、他端に回路基板に半田付けによりSMD実装される端子部を有する電子部品であって、金属板をニッケルめっき処理した下地めっき層と、前記下地めっき層の表層に、接点部と端子部は厚い皮膜となり、それ以外の部分は薄い皮膜となるように形成された貴金属めっき層と、前記薄い貴金属めっき層の表層に下地ニッケル拡散により成膜した半田バリアとなる酸化膜と、を備えたものである。この電子部品においては、請求項9と同様の作用が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、均一な熱処理又は化学酸化処理を用いて、下地めっき皮膜成分を最表層に拡散させて酸化させることで、電子部品実装時の接点方向への半田吸い上がり防止、つまり半田バリア性が得られると共に、熱酸化により生成した酸化膜は腐食電流を絶縁することから、耐腐食性能の向上が確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る接点と端子を有する電子部品及びその表面処理方法について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るコネクタ等の電子部品に用いられるコンタクトを示す。コンタクト1は、バネ性を有する例えば、銅等の帯状の金属板を所定形状に折り曲げて形成され、一端側に回路基板へ半田付けされる端子部2を有し、他端側に接点部3を有する。コンタクト1の表面には、全体的にニッケルめっきによる下地めっきが施されている。この下地めっきの上には、貴金属めっきとして、例えば金めっきが施された端子部2側の金めっき領域4、及び接点部3側の金めっき領域5と、金めっき領域4と5の間に形成した、溶融半田の拡散(半田上がり)を防止するための半田バリア部(後述する酸化膜の領域)6が形成されている。
【0019】
図2は同コンタクト1が内装されたソケットを回路基板に実装した状態を示す。ソケット100は、絶縁性樹脂により枠体に形成されたソケットベース101と、このソケットベース101にインサートされた複数対のコンタクト1等で構成され、回路基板110に実装される。コンタクト1の端子部2は、ソケットベース101の下面よりも下側に突出されており、回路基板110上の配線パターンの表面に半田付けされる。これにより、ソケット100が回路基板110上に固定される。その際、端子部2の表面には、金めっきが施されているので、金と半田の濡れ性の高さにより、溶融された半田111が端子部2の表面と回路基板110上の配線パターンの表面との間に流れ込み、付着する。一方、端子部2の表面に付着した半田は、金めっき領域4の上を拡散するが、半田バリア部6の存在により、他の金めっき領域5までは拡散できない。その結果、接点部3に半田111が付着することはなくなる。なお、コネクタを構成する、ソケット100の相手側であるヘッダ(図示なし)についても同様の構成を有する。
【0020】
図3(a)(b)(c)は、ソケットにインサートされる前の、多数のコンタクト1が配列された半加工品12を示す。コンタクト1は、例えば携帯機器用のコネクタに使用されるものでは、形状が極めて小さいので、帯状の金属板の側部を櫛歯状に成形し、その櫛歯状部分を所定形状に折り曲げ加工することにより、多数のコンタクト1が所定ピッチで配列される。そして、半加工品12をガイド孔20により位置決めしつつ搬送させ、ニッケル浴に浸漬させることにより、コンタクト1の表面全面にニッケルの下地めっき層が形成される。さらに半加工品12を搬送しながら、金めっき浴に浸漬させることにより、下地めっき層の上から全面に金めっき層が形成される。
【0021】
このようにして、端子部2と接点部3を含むコンタクト1の表面に金めっき層が形成された後、端子部2と接点部3との間に、後述する各実施の形態による処理を施すことにより、所定の半田バリア部6(図1参照)が形成される。半田バリア部6は、配線パターンとの接合強度等を考慮すると、端子部2に近い箇所に設けることが好ましい。半田バリア部6を形成した後、半加工品12は、ソケットベース101(図2)にインサートされ、各コンタクト1が半加工品12から切り離され、ソケット100が完成される。その後、ソケット100が回路基板110の上に配置され、コンタクト1の端子部2が配線パターンに半田付けされることにより、ソケット100が回路基板110の上に実装される。
【0022】
次に、コンタクト1の下地めっきと金めっき領域4,5、及び半田バリア部6の構成及び表面処理方法の各実施の形態について説明する。
【0023】
図4は、第1乃至第2実施形態の表面処理方法の工程手順を示す。本処理は、金属板を下地ニッケルめっき処理する工程と(S1)、下地めっき処理された金属板の表層に、接点部と端子部は厚い皮膜となり、それ以外の部分は薄い皮膜となるように貴金属めっき層を形成する工程と(S2)、均一な熱処理又は化学酸化処理などを施すことにより、薄い貴金属めっき層の表層に下地ニッケル拡散による酸化膜を成膜する工程と(S3)、を備える。本処理は、めっき皮膜厚み差を利用して選択的酸化膜を成膜するものである。接点部と端子部の厚い皮膜の貴金属めっき層は金めっき領域4,5となり(貴金属として金を用いた場合)、それ以外の薄い皮膜の貴金属めっき層に成膜された酸化膜は、半田バリア部6となる。
【0024】
図5は、図4の表面処理が施された下地めっき層よりも表層側の構成を模式的に示す。aは下地ニッケルめっき、bは厚い金めっき、cは薄い金めっき、dは酸化膜である。以下の各実施形態では、上記説明した基本的な処理についての説明は省略し、特徴部分のみを挙げて説明する。
【0025】
<第1実施形態>
この表面処理は、最表面貴金属めっき皮膜厚み差を利用して選択的酸化膜を成膜することを特徴とする。実装時の半田吸い上り防止及び貴金属経費削減効果を狙って、接点や半田付け端子部など最表層貴金属皮膜が必要な部分に主としてめっきを行う(以下、これを部分めっきという)。最表層貴金属皮膜は金めっきなどが挙げられる。部分めっきを実施する部品が微細な場合には、めっき狙い箇所からめっき液がにじむことがある。めっき液がにじんだ部分にも皮膜が電着されるため貴金属皮膜が成膜する。このため、接点及び半田付け端子部は皮膜が分厚く電着し、それ以外の部分は薄く電着する。このような、めっき厚みに濃淡差が存在する製品に対して、均一に熱処理等を実施すると、最表層皮膜が薄い部分には下地ニッケル拡散による酸化膜が成膜するが、接点及び半田付け端子部は最表層が分厚いため酸化膜が析出しない。このような酸化膜を設けることで、接点及び半田付け端子部は半田濡れが良好であるが、それ以外の部位は半田バリアとなる。そして、熱酸化により生成した酸化膜は、腐食電流を絶縁するため、耐腐食性の抑制にも有効となる。
【0026】
<第2実施形態>
この表面処理は、最表面貴金属めっき皮膜が薄い部分へ、化学酸化剤を利用し酸化膜を成膜することを特徴とする。めっき厚みに濃淡差が存在する製品に対して均一に化学酸化処理等を実施すると、最表層皮膜が薄い部分には下地ニッケル拡散による酸化膜が成膜するが、接点及び半田付け端子部は最表層が分厚いため酸化膜が析出しない。この酸化膜は、例えば、次の化学酸化剤を利用し成膜可能である。化学酸化剤の一例:硝酸、次亜塩素酸等、温度:室温以上、攪拌を行うとより効果的である。
【0027】
<第3実施形態>
この表面処理は、めっき皮膜が酸化され易いように、ニッケルめっきを改質することを特徴とする。酸化膜は、汎用的に利用するワット浴ニッケルめっきやスルファミン酸ニッケルでも得られるが、ニッケルめっきに添加する添加剤の種類を最適な種類を選択することで、酸化され易いニッケルめっきとすることができる。この添加剤により析出するニッケルめっき粒子径のサイズが小さくなり、より表面に拡散し易くなると考えられる。
【0028】
<第4実施形態>
この表面処理は、最表面貴金属めっき皮膜が薄い部分へ、プラズマ処理を利用し酸化膜を成膜することを特徴とする。プラズマ処理により生成した酸化膜は、腐食電流を絶縁するため耐腐食性の強化にも有効となる。また、貴金属めっき皮膜を極薄皮膜とし、そこに酸化膜を成膜するものとしてもよい。貴金属経費削減効果を狙って、ニッケルめっき上の最表面貴金属めっき層を極薄にすることがある。このような、極薄貴金属めっきへ熱加工処理等を実施すると、下地ニッケル拡散による酸化膜が成膜する。その一例を挙げる。酸化源:ハロゲランプ・高周波加熱・プラズマ処理などによる熱処理等。
【0029】
<第5実施形態>
この表面処理は、貴金属めっき皮膜にある下地パラジウム−ニッケル層を拡散酸化処理することにより、貴金属皮膜上に酸化膜を成膜し、半田バリア効果及び耐腐食性強化を実現することを特徴とし、狭ピッチコネクタに適用した。下地にパラジウム合金層を使用していることより、より耐腐食性が強化される。
【0030】
<第6実施形態>
この表面処理は、貴金属めっき皮膜にある下地ニッケル−リン層を拡散酸化処理することにより、貴金属皮膜上に酸化膜を成膜し、半田バリア効果及び耐腐食性強化を実現することを特徴とし、狭ピッチコネクタに適用した。下地ニッケル層へリンを導入し合金層としていることから、より耐腐食性が強化される。
【0031】
<第7実施形態>
この表面処理は、上記実施形態に、さらに、ニッケル−リン層の下地にニッケル層を設け、半田付け強度及び生産性向上を図ったもので、狭ピッチコネクタに適用した。ニッケル−リン層は半田付け強度がニッケル層と比較すると劣るが、ニッケル−リン層下地にニッケルを配置することで、半田付け強度を確保し、またニッケル−リン合金層はそのめっき液の性質上、生産性を向上できないが、ニッケルめっき層を下地に厚くめっきすることで生産性も向上する。
【0032】
<第8実施形態>
この表面処理は、貴金属めっき皮膜にある硫黄を含有しない下地ニッケル層を拡散酸化処理することにより、貴金属皮膜上に酸化膜を成膜し、半田バリア効果及び耐腐食性強化を実現することを特徴とし、狭ピッチコネクタに適用した。下地ニッケル層が硫黄を含有しないことより、より耐腐食性が強化される。
【0033】
<第9実施形態>
この表面処理は、貴金属めっき皮膜にある下地ニッケルを拡散酸化処理することにより、貴金属皮膜上に酸化膜を成膜し、半田バリア効果及び耐腐食性強化を実現することを特徴とし、表面実装(SMD実装)の狭ピッチコネクタに適用した。SMD実装を行う狭ピッチコネクタの実装時、半田バリア性確保と耐腐食性向上が図れる。なお、上記各実施形態においても、SMD実装を基本とするが、それに限られるものではない。
【0034】
<第10実施形態>
この表面処理は、コネクタ端子及び接点を、電着条件を変えて処理することで、半田バリア部に金めっきが滲まないことを特徴とする。滲んだ金めっき厚みでも、実装時には半田が這い上がり、半田バリアとはならない。そこで、例えば、接点部分は通常の厚付け金めっき液にて処理するが、端子部分は極薄金めっき液にて極薄めっきを行う。通常の厚付け金めっき:0.2um程度、極薄金めっき:0.05um以下とする。これにより、半田バリア部分に金めっきが滲み付着しないため、金剥離処理や熱加工などの処理が不要となる。電着条件を変える他の方法としては、接点と端子部の電流密度を高くし、半田バリア部の電流密度を極小にする方法がある。
【0035】
以下に、具体的な実施例を示す。
実施例1:貴金属系皮膜/ニッケル系/銅系素材又は最表層貴金属めっきA/貴金属めっきB/ニッケル系金属/銅系素材で構成される部品へ熱照射すると、実装時の半田吸い上り防止(=半田バリア性)および耐腐食性能が向上した。その加工条件を示す。
(熱加工条件)
熱源:近赤外線ヒーター利用(ハイベック社製:HYL−2520)、照射条件:部品までのワークデイスタンス24mm、ランプ:200V,2500W、出力:12.1A、スポット径:2mm、ワーク温度:400℃〜800℃
(サンプルワーク条件)
サンプルA:Au(0.06−0.3um)/Ni(1.5um)/Cu(0.1mm)、サンプルB:Au(0.06−0.3um)/Pd−Ni(8:2,0.3um)/Ni(1.5um)/Cu(0.1mm)、
(実験結果)
サンプルA及びBについての結果を、下表に示す。この実験結果からは、熱加工ピーク温度が約700℃のところで最適結果が得られた。
【表1】

【0036】
なお、上記実験において、ピーク温度:260度、半田:Sn−Ag2.0−Cu0.5、窒素リフロー CASS試験 塩水噴霧試験 5wt%−塩化ナトリウム溶液 亜硫酸ガス 10ppm濃度、40℃、95%RHとした。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るコネクタ等の電子部品に用いられるコンタクトの斜視図。
【図2】同コンタクトが内装されたソケットを回路基板に実装した状態を示す断面図。
【図3】(a)(b)(c)は、ソケットにインサートされる前の多数のコンタクトが配列された半加工品を示す側面図、正面図、側面図。
【図4】第1乃至第2実施形態の表面処理方法の工程手順を示す図。
【図5】表面処理が施された下地めっき層よりも表層側の構成を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0038】
1 コンタクト(金属板を含む)
2 端子部
3 接点部
4 金めっき領域(貴金属層)
5 金めっき領域(貴金属層)
6 半田バリア部(酸化膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を加工することにより形成され、一端に接点部を、他端に回路基板に半田付け実装される端子部を有する電子部品の表面処理方法において、
金属板を下地ニッケルめっき処理する工程と、
下地めっき処理された金属板の表層に、接点部と端子部は厚い皮膜となり、それ以外の部分は薄い皮膜となるように貴金属めっき層を形成する工程と、
均一に熱処理を施すことにより、めっき皮膜厚み差を利用して選択的に薄い貴金属めっき層の表層に下地ニッケル拡散により、半田バリアとなる酸化膜を成膜する工程と、
を備えたことを特徴とする電子部品の表面処理方法。
【請求項2】
前記酸化膜成膜工程において、熱処理を施すことに代えて、化学酸化剤に接触させることにより、選択的に薄い貴金属めっき層の表層に酸化膜を成膜することを特徴とする請求項1記載の電子部品の表面処理方法。
【請求項3】
前記下地ニッケルめっき処理工程において、めっき皮膜が酸化され易くなるためのニッケルめっき添加剤を含有した浴中でニッケルめっき処理することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子部品の表面処理方法。
【請求項4】
前記酸化膜成膜工程における均一な熱処理としてプラズマ処理を用いることを特徴とする請求項1記載の電子部品の表面処理方法。
【請求項5】
前記下地ニッケルめっき処理工程において、下地ニッケル層と、その表層に下地パラジウム−ニッケル層とを形成し、
前記酸化膜成膜工程において、下地パラジウム−ニッケルの拡散により酸化膜を成膜することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子部品の表面処理方法。
【請求項6】
前記下地ニッケルめっき処理工程において、下地ニッケル−リン層を形成し、
前記酸化膜成膜工程において、下地ニッケル−リンの拡散により酸化膜を成膜することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子部品の表面処理方法。
【請求項7】
前記下地ニッケルめっき処理工程において、下地ニッケル−リン層の下地にニッケル層を形成していることを特徴とする請求項6記載の電子部品の表面処理方法。
【請求項8】
前記下地ニッケルめっき処理工程において、硫黄を含有しない下地ニッケル層を形成し、
前記酸化膜成膜工程において、硫黄を含有しない下地ニッケルの拡散により酸化膜を成膜することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子部品の表面処理方法。
【請求項9】
前記接点部が狭ピッチコネクタ用の接点であり、前記端子部が回路基板にSMD実装されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子部品の表面処理方法。
【請求項10】
金属板を加工することにより形成され、一端に接点部を、他端に回路基板に半田付け実装される端子部を有する電子部品の表面処理方法において、
金属板を下地ニッケルめっき処理する工程と、
下地めっき処理された金属板の表層に、接点部は厚い皮膜となり、それ以外の端子部を含む部分は極薄皮膜となるように、それぞれ異なる電着条件で貴金属めっき層を形成する工程と、
めっき皮膜厚み差を利用して選択的に極薄貴金属めっき層の表層に下地ニッケル拡散により、半田バリアとなる酸化膜を成膜する工程と、
を備えたことを特徴とする電子部品の表面処理方法。
【請求項11】
金属板を加工することにより形成され、一端に接点部を、他端に回路基板に半田付けによりSMD実装される端子部を有する電子部品であって、
金属板をニッケルめっき処理した下地めっき層と、
前記下地めっき層の表層に、接点部と端子部は厚い皮膜となり、それ以外の部分は薄い皮膜となるように形成された貴金属めっき層と、
前記薄い貴金属めっき層の表層に下地ニッケル拡散により成膜した半田バリアとなる酸化膜と、
を備えたことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−2205(P2006−2205A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178926(P2004−178926)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】