説明

接点構造、及びこの接点構造を用いたスイッチ装置

【課題】潤滑剤の供給過多を確実に防止しつつ、固定コンタクトに対し可動コンタクトを良好に滑動させることができる接点構造、及びこの接点構造を用いたスイッチ装置を提供する。
【解決手段】可動コンタクト41の接点部42には、グリスGを貯留するグリス溜42aが設けられている。この接点部42には、固定コンタクト40側へグリス溜42aのグリスGを滲み出させる孔部44a,44bが形成されている。このため、固定コンタクト40にグリス等の潤滑剤を別途、塗布する必要が無く、又、潤滑が必要な部位へ孔部44a,44bから局部的にグリスGを供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチに用いられる固定コンタクトと、この固定コンタクトに対して接離する接点部を有する可動コンタクトとを備えた接点構造、及びこの接点構造を用いたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用のスイッチ装置や電気機器のスイッチ装置等、各種のスイッチ装置にあっては、図6に示すような固定コンタクト(固定接点)1と可動コンタクト(可動接点)2とを備えたものが供されている(例えば特許文献1参照)。即ち、図6においてスイッチ装置3の基板4には固定コンタクト1が埋め込まれており、基板4の上面と固定コンタクト1の上面1aとが略面一となっている。他方、可動コンタクト2は基板4に対し矢印方向に移動可能に配置されており、可動コンタクト2の接点部2aが、基板4の上面と固定コンタクト1の上面1aとの間を摺動しながら往復動する。こうして、スイッチ装置3は、固定コンタクト1に対し可動コンタクト2の接点部2aが接離することにより、オンオフ動作を行うようになっている。
【特許文献1】特開平10−208585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記スイッチ装置3では、基板4の上面と固定コンタクト1の上面1aにグリス(図示せず)が塗布されることにより、可動コンタクト2の接点部2aにおける摺動性を向上させている。
しかしながら、固定コンタクト1の上面1aに接触(摺接)するのは、接点部2a外面の接触点Pにすぎず、上記のグリスの塗布方法では、これとの対比から当然にグリスの供給過多になることになる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、潤滑剤の供給過多を確実に防止しつつ、固定コンタクトに対し可動コンタクトを良好に滑動させることができる接点構造、及びこの接点構造を用いたスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、スイッチに用いられる固定コンタクトと、この固定コンタクトに対して接離する接点部を有する可動コンタクトとを備えた接点構造であって、前記可動コンタクトの前記接点部にグリスを貯留するグリス溜が設けられていると共に、当該接点部には、前記固定コンタクト側へ前記グリス溜のグリスを滲み出させる孔部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の接点構造においては、可動コンタクトの接点部に、固定コンタクト側へグリスを供給するためのグリス溜が設けられているので、別途、固定コンタクトにグリス等の潤滑剤を塗布する必要が無い。また、接点部において可動コンタクト側から固定コンタクト側にグリスを滲み出させることで、潤滑が必要とされる部位へ局部的にグリスを供給することができる。従って、グリスの供給過多を確実に防止することができると共に、固定コンタクトに対し可動コンタクトを良好に滑動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<第1実施例>
以下、本発明の第1実施例につき、図1乃至図3を参照して説明する。ここで、図2は操作部材である操作レバー21の中間部を省略して示すスイッチ装置全体の断面図を示している。
【0008】
本実施例のスイッチ装置は、例えばターンシグナルスイッチと、ディマ・パッシングスイッチと、ライトスイッチとをユニット化した自動車用のスイッチ(以下、スイッチ装置20と称す)に適用されるものであり、スイッチ装置20のユニットケース22は、インシュレータ23と、インシュレータ23の上部に組み付けられるアッパーケース24とから構成されている。
【0009】
ユニットケース22内には、ターン用のブラケット25が配設されている。このブラケット25は、ユニットケース22に軸部26を中心に、図2で紙面と直交する方向に回動可能に取り付けられている。インシュレータ23の上部には、ブラケット25の内部に位置させるようにして、ディテントプレート27が固定状態に取り付けられている。このディテントプレート27には、ターン用とディマ・パッシング用の節度用凹凸部28が設けられている。
【0010】
ブラケット25内には、前記操作レバー21の一端部が挿入されていて、その一端部が、軸部30を介してブラケット25に取り付けられている。操作レバー21は、その軸部30を支点にして図2中、矢印A方向に回動可能となっている。操作レバー21の他端部(図1において右端部)は、ユニットケース22およびブラケット25から外方へ突出している。ブラケット25の一端部の先端部には、節度ピース31およびこれを付勢する節度スプリング32が設けられていて、節度ピース31の先端部が、上記ディテントプレート27の節度用凹凸部28に当接している。ここで、ディテントプレート27の節度用凹凸部28と、節度ピース31と、節度スプリング32とにより、節度機構を構成している。
【0011】
この場合、操作レバー21を紙面と直交する方向へ回動操作した際には、当該操作レバー21とブラケット25が一体に軸部26を中心にして同方向へ回動される。このとき、前記節度機構により節度感が与えられる。また、操作レバー21を矢印A方向へ回動操作した際には、当該操作レバー21が、ブラケット25を残して軸部30を支点にして同矢印A方向へ回動される。このときも、前記節度機構により節度感が与えられる。
【0012】
インシュレータ23の上面側の略中央部には、ディマ・パッシング用のスライダ33が配設されている。インシュレータ23の上面側には図2中、左右方向に延びるガイド凸部34が設けられている。スライダ33は、そのガイド凸部34に沿って矢印B方向にスライド移動可能に設けられている。スライダ33の上部には、上面側が開口した溝部35が形成されている。上記操作レバー21の一端部の先端部には、アームホルダ36の凸部36aが、溝部35に挿入されている。
【0013】
インシュレータ23の上面部(以下、基板部23aと称す)において、スライダ33の下方付近に位置させて固定コンタクト40が設けられている。スライダ33はコンタクトホルダとして、その下部に板バネ製の可動コンタクト41を備えている。この可動コンタクト41は、側面視にて(図2において)略「へ」の字状をなし、その中央の取付部43においてスライダ33に固定されると共に、両端部に固定コンタクト40に対して接離する接点部42を一体に有している。詳しい図示は省略するが、固定コンタクト40及び可動コンタクト41は、何れも紙面と直交する方向に複数(例えば3個)並べて設けられている。これら固定接点たる固定コンタクト40と可動接点たる可動コンタクト41とによりディマ・パッシングスイッチを構成している。
【0014】
ここで、ブラケット25に対して操作レバー21を矢印A方向へ回動操作すると、アームホルダ36の凸部36aを介してスライダ33が矢印B方向へスライド移動され、可動コンタクト41の接点部42が固定コンタクト40に接離することによりディマ・パッシングスイッチの状態が切り替えられる。
この他、本実施例のスイッチ装置20は、インシュレータ23の上面側に、前記ライトスイッチ用のスライダ等を備えているが、当該スライダやその余の構成につき説明を省略し、以下、可動コンタクト41の接点構造につき詳述する。
【0015】
図3は、固定コンタクト40及び可動コンタクト41の一部の構成を、模式的に示す斜視図である。同図に示すように、インシュレータ23の基板部23aには固定コンタクト40が設けられており、基板部23aの上面と固定コンタクト40の摺動面40aとが略面一になっている。可動コンタクト41は金属板からなり、前述した先端側の接点部42は下方(固定コンタクト40側)へ突出する凸状をなす。可動コンタクト41の取付部43がスライダ33の下部に取付け固定されることにより、可動コンタクト41自身の弾性によって、接点部42の外面(図3において下方)が固定コンタクト40側(図3中、下側)に接触する方向へ付勢されている。
【0016】
上記のように操作レバー21の操作に基づいて、スライダ33が矢印B方向へ往復動する際(詳細には図3中、矢印B1方向への往路と矢印B2方向への復路とを移動する際)、可動コンタクト41も同方向へ往復動する。このとき、接点部42の外面が、固定コンタクト40の摺動面40a及び基板部23aの上面を摺動し、固定コンタクト40に接離することでオンオフ動作(ディマ・パッシングスイッチの状態の切り替え)が行われる。
【0017】
本実施形態の可動コンタクト41における接点部42の構成について図1も参照しながら説明する。ここで、図1(a)は接点部42の平面図、図1(b)は同縦断面図を示している。
【0018】
接点部42は上面側が開放された略半球面状(ドーム状)をなしており、その中空をなす内部はグリス溜42aとされている。図1(b)に示すように、グリス溜42aには、グリスGが貯留されるようになっている(尚、図1(a)では説明の便宜上、グリスGを省略している)。可動コンタクト41は、例えば、金属板をプレスにより打ち抜き加工及び曲げ加工して形成したものであり、接点部42には一対の孔部44a,44bが穿設されている。孔部44a,44bは例えば平面視にて長円状をなし、孔部44a,44bの寸法は、夫々固定コンタクト40側にグリス溜42aのグリスGを滲み出させる大きさに設定されている。尚、孔部44a,44bの形状や大きさ(接点部42に対する寸法比)等は図示したものに限定されるものではなく、グリスGの粘度等に応じて適宜変更してもよい。
【0019】
孔部44a,44bは、固定コンタクト40に対して接触する接点部42の外面の接触点Pを挟んだ位置に形成されている。具体的には、図1(b)に示すように、孔部44a,44bは、接点部42において、接触点Pを通る略垂直方向の中心線L1に対し、摺動方向(矢印B1,B2方向)に線対称となる位置に設けられている。図1(a)にも示すように、一方の孔部44aは、接点部42において接触点Pから矢印B1方向へずれており、他方の孔部44bは、接点部42において接触点Pから矢印B2方向へずれている。
【0020】
上記構成において、スライダ33のスライド移動に伴い、可動コンタクト41が同方向へ移動する際には、接点部42の外面のうち最下点となる接触点Pが、固定コンタクト40の摺動面40aに接触しながら、矢印B1,B2方向に沿ったラインL2(図3参照)上を摺動する。この場合、接点部42には、グリスGを滲み出させる孔部44a,44bが形成されているので、ラインL2上で接点部42を円滑に摺動させることができる。
【0021】
上記実施例によれば、次のような効果を奏する。
可動コンタクト41の接点部42に、グリスGを貯留するグリス溜42aを設けると共に、当該接点部42に、固定コンタクト40側へグリス溜42aのグリスGを滲み出させる孔部44a,44bを形成した。従って、従来とは異なり別途、固定コンタクト40の摺動面40aにグリスG等の潤滑剤を塗布する必要が無い。また、接点部42において可動コンタクト41側から固定コンタクト40側にグリスGを滲み出させることで、潤滑が必要なラインL2上に局部的にグリスGを供給することができる。従って、グリスGの供給過多を確実に防止することができると共に、固定コンタクト40の摺動面40a及び基板部23aの上面において可動コンタクト41を良好に滑動させることができる。
【0022】
可動コンタクト41の孔部44a,44bを、固定コンタクト40に対して接触する接触点Pから摺動方向にずれた位置に形成した。よって、接点部42においてグリスGを供給するのに妥当な接触点Pの摺動方向側にグリスGを滲みださせることができ、より的確な給油を行うことができる。
【0023】
ここで、一般的なスイッチは可動コンタクトが所定方向に往復動するのが通常である。この点、本実施例の一対の孔部44a,44bは、接点部42において、接触点Pを中心として摺動方向に対称となる位置に形成されているので、接触点Pの両摺動方向側に(つまり接触点Pの矢印B1側とB2方向側とに)にグリスGを供給することができ、総じて、必要最小限のグリスG量で、固定コンタクト40上における可動コンタクト41の往復動を円滑なものとすることができる。
【0024】
従って、上述した可動コンタクト41の接点構造を有するスイッチ装置20にあっては、接点部42(接触点P)の摺動軌跡たるラインL2上にのみグリスGが介在するので、本発明を各種のスイッチ装置に適用することで好適なものとすることができる。
【0025】
<その他の実施例>
図4及び図5は、本発明の第2及び第3実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
第2実施例のスイッチ装置48は、2個の接点部42を有するスライドスイッチとして構成されている。即ち、図4に示すように、スイッチ装置48の基板部49には、一対の固定コンタクト40が紙面と直交する方向へ延設されている。他方、可動コンタクト50は、一対の固定コンタクト40に対応する2個の接点部42と、左右両側部に上へ向けて立ち上がる外側壁51とを有している。これら外側壁51は、コンタクトホルダ52の下端部に嵌め込まれることにより取り付けられている。コンタクトホルダ52の下部に形成されたバネ収容部52aと可動コンタクト50の内面との間には、付勢手段たる圧縮コイルバネ53が設けられており、この圧縮コイルバネ53によって、接点部42の外面(図4において下方)が固定コンタクト40側へ付勢されている。
【0027】
コンタクトホルダ52は、図示しない操作部材の操作に基づいて、紙面と直交する方向へスライド移動(往復動)され、このコンタクトホルダ52の移動に伴い、可動コンタクト50も同方向へスライド移動される。このとき、2個の接点部42の外面が、固定コンタクト40の摺動面40a及び基板部49の上面を摺動し、固定コンタクト40に接離することでオンオフ動作が行われる。従って、本実施例によれば、夫々の接点部42において接触点Pから摺動方向側へずれた位置にグリスGを滲みださせることができ、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0028】
尚、コンタクトホルダ52を、2個の接点部42の並び方向(矢印C1,C2方向)へ移動させることにより、接点部42も同方向へ摺動させるようにしてもよい。この場合、第1実施例と異なり、接点部42の孔部44a,44b(図4では孔部44bのみ図示)は、接触点Pを基準として摺動方向と直交する方向にずれた位置に存することとなるが、当該摺動方向に沿ってグリスGを滲みださせることができ、接点部42を円滑に摺動させることができる。
【0029】
図5は、第3実施例を示す可動コンタクト55の拡大斜視図である。
この可動コンタクト55は、第1実施例の可動コンタクト41と以下の点で相違する。即ち、可動コンタクト55の接点部56は、側面視にて上面側が開放された「U」の字状をなし、全体として小円筒を軸方向に半分に切断したような形体に形成されている。接点部56の内側はグリス溜56aとされ、当該グリス溜56aにグリス(図示せず)が貯留されるようになっている。
【0030】
図5に示すように、接点部56には一対の孔部57a,57bが穿設されている。孔部57a,57bは例えば、第1実施例の孔部44a,44bと同様に長円状をなし、夫々固定コンタクト40側へグリス溜56aのグリスを滲み出させるように形成されている。この孔部57a,57bは、固定コンタクト40に対して接触する接点部56の外面の接触線L3を挟んだ位置に形成されている。具体的には、孔部57a,57bは、接点部56において、接触線L3を対称軸として線対称となる位置に設けられており、一方の孔部57aは、接触線L3から矢印B1方向へずれており、他方の孔部57bは、接触線L3から矢印B2方向へずれている。
【0031】
上記構成において、スライダ33のスライド移動に伴い、可動コンタクト55が同方向へ移動する際には、接点部56の外面のうち最下点となる接触線L3が、固定コンタクト40の摺動面40aに接触しながら、矢印B1,B2方向に沿ったラインL2上を摺動する。この場合、接点部56において、接触線L3から摺動方向側へずれた位置にグリスGを滲み出させることができ、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0032】
本発明は、上述の自動車用のスイッチ装置20やスライドスイッチたるスイッチ装置48に限定されるものではなく、電気機器などのスイッチ装置全般に適用できるものである。グリス溜のグリスを滲み出させる接点部の孔部の数は、各接点部において単数(1つ)でもよいし上記実施例のように2つ若しくは3つ以上の複数であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施例を示す接点構造であって、(a)及び(b)は可動コンタクトにおける接点部の近傍を拡大した平面図及び縦断面図
【図2】スイッチ装置を一部破断して示す縦断面図
【図3】固定コンタクト及び可動コンタクトの一部を拡大して示す斜視図
【図4】本発明の第2実施例を示す接点構造の縦断面図
【図5】本発明の第3実施例を示す可動コンタクトであって、接点部の近傍の拡大斜視図
【図6】従来例を示す図1(b)相当図
【符号の説明】
【0034】
図面中、20,48はスイッチ装置、40は固定コンタクト(固定接点)、41,50,55は可動コンタクト(可動接点)、42,56は接点部、42a,56aはグリス溜、44a,44b,57a,57bは孔部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチに用いられる固定コンタクトと、この固定コンタクトに対して接離する接点部を有する可動コンタクトとを備えた接点構造であって、
前記可動コンタクトの前記接点部にグリスを貯留するグリス溜が設けられていると共に、当該接点部には、前記固定コンタクト側へ前記グリス溜のグリスを滲み出させる孔部が形成されていることを特徴とする接点構造。
【請求項2】
前記固定コンタクトは摺動面を有し、
前記可動コンタクトは、前記接点部の外面が前記固定コンタクトの摺動面を所定方向へ摺動してその固定コンタクトに対して接離し、
前記孔部は、前記固定コンタクトの摺動面に対して接触する前記接点部の外面の接触点から、前記可動コンタクトの前記摺動方向にずれた位置に形成されていることを特徴とする請求項1記載の接点構造。
【請求項3】
前記接点部には、前記接触点を中心として前記摺動方向に対称となる位置に一対の前記孔部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の接点構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の接点構造を有することを特徴とするスイッチ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−67440(P2010−67440A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232149(P2008−232149)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】